北 海 道 の 雪 氷
N022(2003)
現地観測 による吹 き止め式防雪柵の防雪効果について
○伊東靖彦、松沢勝 、加治屋安彦 (北海道開発土木研究所)
1
は じめに北海道のよ うな積雪寒冷地の道路では、吹雪による視程障害や吹きだま りが、道路交通の安全 確保に とって大きな障害 となっている。
吹雪対策施設の うち防雪柵には、写真1のよ うに大きく分けて、吹きだめ柵、吹き払い柵、吹 き止めlPrの
3種
類 ある。吹 きだめ柵は、道路の風上側 に数十 メー トルほど離れた位置に設置 し、柵の前後に雪 を溜めることで道路上への飛雪の吹き込みを防 ぐもので、吹きだま り防止効果が高 い。吹き払い柵は、風上側の路側に道路に近接 して設置 し、柵の下部間隙から吹き抜ける強い風 で、道路上の雪を吹き飛ばす ことで、主 として視程障害を防ぐ機能を持つ。吹き止め柵は、柵の 下部間隙をな くし、空隙率を低 くして柵高を高 くす ることによ り、道路上に吹き込む飛雪を止め ると共に風速 を低下させ、吹きだま りだけでな く視程障害 も緩和するものである。しかし視程障 害緩和の度合いについては、継続的に観根」した例が無 く、定量的な把握は行われていない。そこ で本研究では、防雪柵前後で一冬期間を通 して視程および風速の観測を行ったものである。
写真
:
防口綱(左 :吹きため槽、中:吹き払い●、右:吹き止め綱)2
観測場所 と防雪精設置観測は北海道天塩町雄信 内の町道に隣接 した牧草地内に観測のため防雪柵 を設置 した。全道吹 きだま り分布 図〈図1)こよると、雄信内地区の最大吹 きだま り量は 30〜40mγ
mで
、全道の中で も中程度〜比較的吹雪の多い地域に分類 され る(エラー!参
照元が見つか りません。)。 ここでい う最大吹きだま り量 とはその地域における最大 となる吹きだま り箇所での吹 きだま り量であ り、平均的な吹 きだま り量 とは意を異にする。設置 した雪柵 は北海道開発局が国道で用いている柵高
5mの
標準的なもので、下方が無孔板、上方2分
の 1が有孔板で構成 されている(写真1の右写真)。 福 沢 ら(2001)五によると、柵端部か らの風や飛雪の巻 き込み延長 は20m程
度 とされていることか ら、設 置延長は60mと
した。設置位置は北海道内の幹線 道路における設置位置に準 して、道路端か ら85m
の距離に、方向は道路 と平行(南〜北方向)に設置 し た。北北西約
lkmに
ある北海道開発局雄信内道路 気象観測所の風向風速計によると冬期間で気温―2℃以下、風速
5m以
上の吹雪の発生が予想 され る‑53‑
観瀾●所
北 海道 の雪氷
No.22(2003)
強風 時 の主風 向は西で ある。そ こで機能 を十分発揮 で き、設置延長 も短 くな るよ う、風上側 の開 けた場所 を選 定 し、主風 向 に直交 して柵 を設置
した。
なお 、風 向風速 について解析 を行 うにあた り、
風 向の表現方法 は北 を
0度
とし、時計回 りに360 度 とす る。 なお、柵 の方位 は 175‐355度
となっ てい る。 また正風 とは柵 に直交す る293度
方 向 とし逆風 とは113度方 向の風 を言 うこ とにす る。3.風
速・視程 の計測観測機器 は、反射型視程計(明星電気製 TZE‐4) と風 向風速計(横河 ウエザ ック製 A7401)をそれ
ぞれ
2台
用意 し、各1台を道路上の視程環境 を計測す るため、防 雪柵 の風 下側 の道路脇 に高 さ2.2mに
設置 した。 また も う1台
づ つ を防雪柵か ら十分 に離 した牧草地上 に高 さ2.7mに
基準点 とし て設置 した(図2)(写真2)。反射型視程計 は、投受光器 が一体 とな っていて、飛雪 か らに反 射光 に比例 した出力電圧 が得 られ る。以 下、本文 にお ける視程 と は、出力電圧 に対す る視程 との換算式(福沢 ら
(19"→
V=26.33Vo‐
087
鮮 視程(m),Vo:出 力電圧lVy)によ り、反射型視程計を用いて得たのである。
吹雪時の視程は、飛雪流量 と逆比例関係がある。その関係式は 竹内(1980〉 Vなどにより導かれている。同 じ飛雪空間濃度であって
も、風速によ り視程は変化 し、風 速が大きいほど視程が悪い ことに なる。
視程の計測では、反射光による 出力電圧 を対数関数で換算 して視 程 とするため、視程値で考えると 変動が大 きくな り、わずかの電圧 差が視程値になる と大 きく影響を 及ぼす。そこで視程計測を補完す る意味か ら、風速の測定を同時同 位置で行つた。
測定期間は、平成15年 12月 27 日〜平成
15年
3月 17日 の一冬期 間で、測定間隔は1秒
ごとに測定し、解析では
10秒
ごとに平均化 した値を使用 した。4.測
定結果QD
□
3
凰速 階級 別の 出現錮 度目 2防口槽、観測機器の配置平面図
(上 :遭路脇、下:基準点)
100%
%
%
%
%
%
0
0
0
0
0
8 現 出
率 2
= さ く E o o N ヽり
E 0 0
tO.ゆ
r▼ 証 くE︒
面 メ 港 りヽEO 焔 寸
2
∞ 0 F さ く E 鋼 o.
239% o.o%
r.5%12% ・ ° % °.o%
‑54‑
││
北海道 の雪氷
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図
3に
風速 階級別 の出現頻度 を示す。吹雪 の発生 限界風速 は温度、雪質等 によ り異 なるが、一般 に発 生 限界Vと され る5耐s以
上 の風速頻度 を見 る と、基 準地点 が24.2%に対 して、柵地点では 2.5%と 10分 の1程
度 に激減 してお り、吹雪 の抑制 に貢献 してい るこ とがわか る。図
4は
、基準地点 での風速 を1と した場合 の柵地 点 での風速 比 を風 向別 に平均化 した ものである。柵 と直行方 向では風速 が大幅 に低下 し、柵 とほぼ直行 の270度
では0.3に低 下 してい るのに対 して、平行 方 向の360度
では 1.0と 風速 の低下は見 られ ない。図
4よ
り、概ね柵 の直行方 向を中心 として左右 45 度合計90度
の風 向に対 して、風速低減効果 が確認 で きた。図
5は
、基準地点 が風速5m/s以
上 の場合 の基準 地点 と柵地点 の同時刻 の風速 をプ ロッ トした もので ある。いずれ の観測 で も基準地点 に比べ 、柵地点 の 方 が、風速 が低下 してい る。また、柵 に直交風 では、風速 が一定割 合で低下 しているのに対 して、
5度
程 度 の入射角 の場合斜行風 では低下率のば らつ きが大 きい。 しか し、最大風速12mrs程度 で あった今 回の 観測 では、概 ね5耐 s以
下 に低下 してい ることがわ か る。5.観
測結果 観a
視程観測 デー タにつ い て は測 定 ノイ ズ 除去 を 目 的 として得 られた電圧値 を10秒平均化 した後 、視 程換算 を行 つて解析 を行 つた。換算後 の視程 500
m以
上 につ い ては、観測器 の特性 を考慮 し500m
とした。
羽
6は
得 られ た2地
点 の視程 の階級別頻度分布 である。運転 が不安定 となる視程200m以
下 となる頻度は、基準地点が 28.8時 間に対 して、柵地点が 21.6時 間にと
25%ほ
ど減少 している。しか し著 しい視程障害である視程100m未
満では、頻度の減少は見 られない。表1は、代表風向(正風、逆風、平行励 での視程障害階級別視程改善比である。基準地点の視 程が悪い方が、逆に改善比は高ま り、階級別の頻度か らは、改善の状況が認め られなかった視程
100m未
満の著 しい視程障害時のほ うが視程改善比は大きいことがわかる。視程障害の著 しい方 が視程改善比が大きいのは、石本 ら(1980)宙の道路防雪林の視程障害緩和効果 と同様の傾向であ る。また、逆風の場合でも主風向時 とほぼ同様な視程改善効果が確認できる。冬期間を通 じて一方
風 向別風遺比(糧地 点鳳 逮/基準地 点風速)
(毎時■ の風 向Bl平均饉 全データ)
口
4
風向別基準地点に対する 槽地点の風遠比● 地
¨
∞
∞
∞
ね
︒
︵E
︶
⁚
視■●●
□6吹き止め槽前後での視程階級別出現時間
基準地点の日 勘 /s以 上のら
140 120 100 30 60 40 20
0000 20 40 60 80 100 120 140
基準地点鵬逮輛/81 口 5"キ :トハ 爆 飾6のの ■ 薇 ヒ 齢
‑55‑
北海道 の雪氷
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向か ら風 を受 ける箇所 はまれ であ り、一時的 に逆風 を受 ける こ とも多いが、その場合 で も視程悪化す ることはな く、柵設置 が視程環境 に とつて逆効果 にな らない とい う こ とを示す。
平行風 の場合 で も、直交風(正風 。逆風)に比べれ ば小 さいが、多少の視程改善効果 が見込 めることがわか った。
特 に
360度
方 向では風 上 に吹 き溜 ま りの形成 も確 認 で きてお り、防雪柵 が抵抗 となって風上 に吹 き溜 ま りを形 成す るこ とに よ り、飛雪流量 が減少 したた め と考 え られる。
表1 風向別、視程別の視程改善比 風の方 向 聾準地点に
おける視程値 13度
(ESE) 度 (WNW)
80度
(S) 度
200m以 上 5001n未満
視程比 1 1 1 1
標本数 (3,302) (516) (740)
nh以上 狐h未満
視程比 1 1 1
際本数 (460) (321)
CKh未満
況程比 3 3 1
朦本数 (24) (44) (Ol
6.ま
とめこれまで、定量的に明 らかでなかった吹き止 め柵の視程環境改善効果について、以下のことが 明 らか となった。(1)風速では柵 との入射角によ り低減率が大きく異なる。α)概ね柵直交に対 し て
45度
以内であれば、風速の低減は大きい。 (3)直交風では線形的な風速の低下を示すが、斜 行風の場合はば らつ きが大きい。(4)視程の悪い状況の方が、柵 による視程改善比は大きい。(61 逆風でも正風同様の視程改善効果が得 られる。今回、視程の計測には反射型の視程計を用いたが、観測用に設置 した柵の延長 よりも視程計の 計測範囲の方が長いため、十分に柵の延長 を確保できればよ り視程の改善は高まる可能性がある。
さらに、反射型視程計の出力電圧か らの視程値への換算は石狩吹雪実験場における経験式を用 いているが、この経験式には風速に関す る項が無い。吹雪時の視程(対数
0は
飛雪流量(対数値) に反比例する。すなわち、同 じ飛雪濃度であれば風速によって実際の人間の 日で測定 した視程は 変化す る と考 え られ るが、本文 では機械値 をそのまま採用 してい る。経験式の平均風速 は 105m〜15mで
あ り、今回の観測期間における平均的な風速条件 よりも速いことか ら、この点を 考慮 した解析を行 うことで、より正確な視程の改善効果が今後明 らかにしてゆきたい。7. おわ りに
本文をとりま とめるに当た り、(財)日本気象協会北海道支社の石本敬志氏、金 田安弘氏、鉄) 雪研スノーイーターズの竹内政夫氏、福沢義文氏か らは貴重な助言をいただいた。また現地調査 に当たつては、α)日本気象協会北海道支社の協力を得た。 ここに記 して感謝の意を表す。
i福沢義文、加治屋安彦、小林利章、苫米地 司:北海道全域の吹 きだま り量分布 の推定,雪氷,62,(社)日本雪氷 学会,pp291 3∞ ,2∞0
五福沢義文、加治屋安彦、畠山拓司:防雪柵端部付近にお ける視程障害 と対策、第24回日本道路会議一般論文集lAI、
日フト道路協づ贅,p358‐359、200110
面 福沢義文、竹内政夫、石本敬志:反射式視程計による視程計測,北海道の雪氷,6,日本雪氷学会北海道支 部,p7,1987.8
■ 竹内政夫:吹雪時の視程に関す る研究,土木試験所報告,74,pp31北 海道開発局土木試験所,1980
V竹内政夫、石本敬志、野原他喜男、福沢義文,1986:降雪時の高い地吹雪の発生限界風速,昭和61年度 日本雪 氷学会全国大会予稿集
宙 石本敬志、竹内政夫、福澤義文、野原他喜男,1980:道路防雪林 による吹雪時の視程障害緩和効果,土木試験所月 事1,320,7‐18