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待ち行列理論の基礎と応用 共立出版

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Academic year: 2021

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オペレーションズ・リサーチ 352(46)

【書評】

川島幸之助監修,塩田 茂雄,河西 憲一,豊泉 洋,会田 雅樹 著

待ち行列理論の基礎と応用

共立出版 272頁 2014年 定価3,000円+税

本書は構成および説明のきめ細やかさ,いずれも充 実した1冊となっており,待ち行列理論の入門書とし て最適である.特に本書では,待ち行列における基本 的な考え方および諸公式の導出などについて,式の展 開を省略せずに丁寧に説明されており,自習用として の活用も十分に期待できる.さらに本書における待ち 行列の応用例は,経営科学,サービスサイエンス,情 報通信など多岐にわたっている.そのため一度待ち行 列を学んだことのある人にとっても,本書は最新の話 題と共に読み応えのある1冊といえよう.

本書の構成は,基礎編(第1〜7章)と応用編(第 8〜13章)に分かれている.以下,各章について大 まかではあるが紹介させていただく.

・第1, 2章(待ち行列モデルの基礎について)

・第3, 4章(基本的な待ち行列モデルとその解析方 法について)

・第5, 6, 7章(より発展的な待ち行列モデルとそ の解析方法について)

・第8, 9, 10章(待ち行列モデルの応用例)

・第11, 12, 13章(情報通信とその特性について)

第1, 2章では,待ち行列モデルにおける基礎概念お よびモデルの確率的挙動を支配する到着過程および サービス時間分布について解説している.ここでは特 に,待ち行列理論における重要公式について,点過程 論を用いた統一的な導き方を学ぶことができる.その ため点過程論が待ち行列理論の中でいかに強力な道具 であるかということを学ぶことができ,興味深い内容 となっている.

第3, 4章では,待ち行列における基本的なモデル

(特に単一窓口をもつ待ち行列モデル)について詳し く解説している.多くの待ち行列モデルはマルコフ連 鎖による表現をもとにして解析が進められることが多 い.本書ではマルコフ連鎖を含む確率論に関する基本 事項だけでなく点過程論についても付録に解説を与え,

本書のみで十分理解できる構成となっている.この点 からも執筆者の読者に対する気配りを感じることがで

きる.

第5, 6, 7章では,より発展的な待ち行列モデルに ついて解説している.第5章では準出生死滅過程を用 いることでより広い範囲の待ち行列システムがモデル 化できることを示している.第6章ではネットワーク を形成する待ち行列について,定常分布の導出方法を 説明し,特に閉鎖型待ち行列ネットワークに対して,

性能評価指標の数値計算アルゴリズムの詳しい解説を 行っている.第7章では,マルコフ連鎖による表現が 直接得られない一般の待ち行列モデルについて,確率 比較を用いることにより,モデルの確率的特性が待ち 時間に与える影響について解説している.さらに,待 ち時間や待ち行列長などの厳密な解析が困難な場合に ついて,その上下界の導出方法についても学ぶことが できる.

第8, 9, 10章では待ち行列モデルの具体的な応用例 を学ぶことができる.第8章では,待ち行列における 客の並び方(フォーク並びあり,なし,直列型)が待 ち時間に与える影響について,待ち行列理論の観点に よる考察を与えている.この種の並び方は外食産業に おいてたびたび観察され,ここでは並び方の違いがな ぜ待ち時間の差を生じさせるのかについて,待ち行列 モデルを用いて理解することができる.第9章では,

日本を代表する生産管理方式であるかんばん方式につ いて,単純な待ち行列モデルを用いて解説している.

特に,かんばん数がサービス品質(在庫コストおよび 客の待ちの発生確率)に及ぼす影響について示されて おり,生産管理における待ち行列的アプローチについ て学ぶことができる.第10章ではコールセンターを 例にとり,複数窓口の待ち行列モデルを用いたリソー ス設計について解説している.ここではコールセン ターが顧客に対するサービス品質を維持しつつ,従業 員(オペレーター)を効果的に配置する方法について,

待ち行列モデルの漸近解析を用いた方法をわかりやす く説明している.

第11, 12, 13章ではさまざまな情報通信とその特性

(2)

2015年6月号 (47)353 について学ぶことができる.第11章では無線LANの

仕組みについて取り上げられ,その性能評価について 数理モデルを用いた解析例が与えられている.第12 章ではインターネットにおけるデータ転送路の集約

(多重化)がシステム性能に与える効果を検討し,施 設集約の効果の待ち行列モデルを用いた見積もり方法 について学ぶことができる.このような施設集約によ りサービス効率が上がるという事実は,通信分野に限 らずいたる所で見られる現象であり,待ち行列モデル を用いたその効果の評価方法は興味深いといえよう.

第13章ではインターネットにおけるアクセス宛先発 生パターンに関する数理モデルが紹介され,ポアソン

過程とは異なる時間的局所性をもつ到着過程について 学ぶことができる.さらに,キャッシュ性能の評価方 法について,実例も交えてわかりやすく解説している.

本書は待ち行列の初学者だけでなくさらに深く学び たい方にもお薦めしたい本である.特に本書はやや難 しいと思われる箇所についてもその解説を自己充足に 努めていることが随所に読み取ることができる.待ち 行列理論を皆さんの 未来へつなぐ という執筆者の 方々の熱いメッセージを是非,本書を手に取り感じて いただきたい.

(佐久間大)

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