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(1)

2014.March

Vol.477

3

R&D NEWS KANSAI

巻頭言

Made by Japan

研究紹介

(2)

2014.March

Vol.477

3

CONTENTS

Made by Japan 電力流通事業本部 系統制御グループ 自励式BTBを用いた系統安定化手法の開発 研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(ネットワーク・系統) 蓄電池を用いた需給制御システムに関する研究 研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(工務) 紫外線の細胞影響に対する超低周波数磁界の補助作用評価 電力流通事業本部 ネットワーク技術高度化グループ 高圧用遠隔検針端局の開発 研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(ネットワーク・系統) 堺太陽光発電所の実測で得られた出力変動特性について(第2報) 電力システム技術センター変電グループ 油入ブッシング部分放電診断装置 研究開発室 電力技術研究所 構築研究室 三次元数値流体解析(CFD)のダム洪水吐流れへの適用性評価 土木建築室 建築設備エネルギーグループ アースチューブを用いた外気負荷低減手法に関する研究 研究開発室 電力技術研究所 プロジェクト研究室 高効率電力用SiC CVCFの開発 研究開発室 エネルギー利用技術研究所 ホームエネルギー分野 家庭用電気製品の省エネに関する研究−エアコンの省エネ手法事例 研究開発室 エネルギー利用技術研究所 ホームエネルギー分野 小容量ヒートポンプ床暖房機とエアコンの組み合わせによる起動性能向上研究 研究開発室 エネルギー利用技術研究所 ホームエネルギー分野 代表的なLDKにおけるエアコン暖房時の室内機や家具の配置について 研究開発室 エネルギー利用技術研究所 都市・産業エネルギー分野 施設園芸における環境制御システムの実用化 研究開発室 エネルギー利用技術研究所 新エネルギー分野 高効率タンデム太陽電池に関する研究 研究開発室 エネルギー利用技術研究所 新エネルギー分野 日射量予測システムの予測信頼度把握に関する取り組み その1 研究所における自主技術力向上に向けた取り組み紹介(二次電池編) 水素エネルギー社会に向けた技術開発動向 火力原子力発電大会で論文賞を受賞 太陽熱発電システムについて 液体クロマトグラフィー

平成 25 年度 R&D News Kansai 総目次 巻 頭 言 トピックス ミニ解説 研究紹介

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 昨年 12 月、「和食−日本人の伝統的な食文化」 がユネスコの無形文化遺産に登録された。伝統的 な日本料理は、四季折々の新鮮な食材をその器を 含めて色彩豊かに調理されたもので、自然を尊重 する日本人の社会的慣習が認められたためである。 日本列島は、亜寒帯から亜熱帯に渡って分布し、 主要な4島の中央には急峻な山がそびえ、海岸線 に沿う分断された狭い平野部でのみ人々の活動が 営まれてきた。島国ゆえに外敵からも保護され、 開国まで各地域に適した繊細で優美な独特の文化 を育んできた。閉じた文化であったが、浮世絵が 印象派に大きな影響を与えた事などから分かるよ うに非常に高度に発達した。  一時期、日本の携帯電話、地上デジタルテレビ 放送方式などが、世界のグローバル化に負けて敗 退した。これを、ガラパゴス化と言うが、ダーウ インによって一躍有名になったガラパゴス諸島の 名を冠するこの言葉は、適応性あるいは生存能力 の面でマイナスのイメージを持つ意味で使われる。 確かに、世界標準が世界を制覇している分野では、 日本でのみ通じる製品、例えば PC-9801 などは姿 を消してしまった。しかし、ガラパゴス化は一様 にマイナスの面のみを持つものであろうか。  1973 年、1979 年の石油危機は、日本における エネルギーの構成を多様化し、省エネルギー機器 の開発の原動力となった。電力業界では 1984 年 12 月に世界初の LNG 焚き大型複合発電設備を稼 働させた。この発電設備は、1150℃級 701D 形ガ スタービンと蒸気タービンからなり、総出力 109 万 kW、熱効率 48%(LHV 基準)以上で、当時の 最新の火力に比べ 10% 以上高い効率を達成した。 その後、我が国では複合発電は官産電力の協力の 下で独自の発展を遂げる。ガスタービンが蒸気ター ビンと異なるのは、圧縮機、燃焼器、タービン冷 却翼を有する所にある。長い歴史のある蒸気ター 大阪大学大学院 基礎工学研究科 機能創成専攻 招へい教授      大阪府生まれ。 1972 年 大阪大学基礎工学部機械工学科卒業 1974 年 同修士課程修了 1995 年 同博士課程修了 工学博士 1974 年 三菱重工業(株)高砂研究所に入社。      ガスタービン、航空宇宙機器の研究開発に従事 2004 年 大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻教授 2013 年 現職 略 歴 大阪大学大学院 基礎工学研究科 機能創成専攻 招へい教授

武 石 賢一郎

Made by Japan

巻頭言

ビンに加え、この三つの技術開発がガスタービン 開発の成功の鍵を握る。圧縮機、タービン冷却翼 は航空機の推進機であるジェットエンジンと共通 であるが、燃焼器は我が国の厳しい環境規制をク リアーするため、世界初の予混合燃焼器が開発さ れ 701D 形ガスタービンの初号器に組み込まれ成 功裏に運転された。予混合燃焼器は、現在では世 界の産業用高温ガスタービンの標準的な燃焼方式 になっている。  複合発電技術の高効率化はその後も進み、特に 2004 年からエネ庁の国家プロジェクトとして 「1700℃級ガスタービンの開発」が始まった。産 官学電力が協力した研究開発が進められ、その成 果を反映した世界最高温度の 1600℃級 501J 形ガ スタービンが開発された。1600℃級低 NOx 燃焼 器と、微細な冷却構造を持つタービン冷却翼の開 発が成功の鍵であった。この初号機を用いた複合 発電が関西電力(株)姫路第二発電所で昨年8月、 出力 48.65 万 kW 熱効率約 60%(LHV 基準)の 商用運転を順調に開始した。順次運転が開始され 最終的には 291.9 万 kW の発電所となる。資源に 乏しい我が国のエネルギー状況、厳しい環境規制 の中で育った産業用ガスタービン技術はガラパゴ ス化すること無く、省エネルギー、地球環境問題 に適合した技術としてこれからも発展していくと 信じている。

(4)

1.研究背景および目的 

 3.11 東日本大震災は当社の需 給運用、系統運用に大きな影響を 与えました。原子力の再稼動が見 通せず、保有する火力発電設備は 昼夜を問わず高稼働を続けている ため、基幹系統が恒常的に重潮流 化しました。  その影響で、一部系統において は系統安定度面の問題が顕在化し たため、電源制限装置の設置や改 良による系統安定化対策を講じて きましたが、需給を安定に維持し つつ、系統安定度も維持するため には犬山開閉所に設置している STATCOM のように電源を制限 することなく発電機の脱調を防止 し、系統を安定化できる機器の適 用が求められます。しかしながら、 STATCOM などの自励式変換器 を用いた FACTS 機器は適用例が 少なく、技術的課題も多いため、 より低容量で低コストな安定化機 器を開発するため、自励式 BTB を用いた系統安定化手法の開発に ついて本研究に取り組みました。

2.新しい系統安定化手法

 発電機の脱調を防止し、安定度 を維持するためには、系統故障に よって発電機に蓄積される加速エ ネルギーや減速エネルギーをうま く低減させる必要があります。  STATCOM は、系統へ無効電 力の注入、吸収を適切なタイミン グで繰り返し行うことで電圧を変 動させ、発電機に蓄積される加速 エネルギーや減速エネルギーを低 減しやすい状態にして安定度を維 持しています。  第2図に今回検討に用いた系統 概略図を示します。異なる系統に 発電機を分散連系している発電所 の母線間を自励式 BTB で直流連 系することで系統間の有効電力融 通が可能になります。今回提案の 制御手法は、自励式 BTB により、 安定化対象の系統へ無効電力の注 入、吸収を行うことに加えて、異 系統側から融通した有効電力の注 入、吸収をあわせて行うことで、 発電機に蓄積される加速エネル ギーや減速エネルギーを直接低減 させるというものです。

3.研究内容と成果

 系統故障時に安定度を維持する ためには、系統の固有値(動揺周 波数、ダンピング)を求め、加速、 減速を繰り返す系統動揺に対して 最適なタイミングで有効電力、無 効電力を注入、吸収を行う必要が あります。  第3図に系統固有値解析の結果 を示します。送電線に発電機を5 台連系したケースではダンピング が正の値となり、系統動揺が収束 しない不安定なケースということ がわかります。そこで、発電機を 5台連系したケースを想定して制 御系を設計し、必要な設備容量を 求めることにしました。  第4図に系統故障を模擬してシ ミュレーションした安定度解析結 果を示します。自励式 BTB の有 効 電 力、無 効 電 力 の 制 御 量 が 140MVA の場合は想定故障に対 して安定度維持ができませんが、 有効電力、無効電力の制御量を 150MVA にすると安定度維持が 可能になります。  この場合、必要な設備容量は二 乗の和の平方根より 212MVA、 加えて異系統側と有効電力を融通 し あ う た め の 150MVA、合 計 362MVA の総設備容量が必要と いうことになります。そこで、さ らに自励式 BTB の容量低減およ び異系統側への有効電力融通によ る影響低減を図るため、有効電力 制御量を減らす検討を行いまし た。  そ の 結 果、有 効 電 力 は 90MVA、無効電力は 230MVA の制御量で安定度維持が可能で、 総設備容量を 337MVA まで低減 することができました。  有効電力の制御量をゼロとした 場合、すなわち STATCOM のよ うに無効電力の制御のみで安定度 を維持するためには 410MVA の 制御量が必要であったため、これ は 337MVA の自励式 BTB が、 410MVA の STATCOM と同等 の系統安定化効果を有するという ことになります。

4.まとめと今後の取組み

 異系統に発電機を分散連系して いる系統の特徴に合わせて考案し た左右非対称の自励式 BTB(第 5図)による系統安定化手法は、 STATCOM と比べて2割弱の変 換器容量低減が可能で同等の系統 安定化効果を得ることができ、低 コスト化を見込むことも可能とい うことがわかりました。  今後は、系統安定化対策として の技術を確立できるよう有効電力 融通時に異系統側へ与える影響評 価や、設備のさらなる低容量化、 低コスト化を可能とする制御方式 の検討を進めることとしていま す。 安全に安定な電気をお客さまへお届けするには、電力系統の「安定度」を維持することが不可欠です。「安定度」 を維持向上させる設備として、従来から直列コンデンサ、発電機の超速応励磁、制動抵抗、タービン高速バ ルブ制御などがありますが、近年では、パワーエレクトロニクス技術を応用した FACTS(Flexible AC Transmission Systems)機器の適用が増加しつつあります。その中で今回、自励式 BTB を用いた系統安 定化手法を開発したので紹介します。

自励式 BTB を用いた系統安定化手法の開発

第1図 パワーエレクトロニクス技術を応用した FACTS 機器の例 第2図 系統概略図

研究紹介

電力流通事業本部 系統制御グループ

(5)

1.研究背景および目的 

 3.11 東日本大震災は当社の需 給運用、系統運用に大きな影響を 与えました。原子力の再稼動が見 通せず、保有する火力発電設備は 昼夜を問わず高稼働を続けている ため、基幹系統が恒常的に重潮流 化しました。  その影響で、一部系統において は系統安定度面の問題が顕在化し たため、電源制限装置の設置や改 良による系統安定化対策を講じて きましたが、需給を安定に維持し つつ、系統安定度も維持するため には犬山開閉所に設置している STATCOM のように電源を制限 することなく発電機の脱調を防止 し、系統を安定化できる機器の適 用が求められます。しかしながら、 STATCOM などの自励式変換器 を用いた FACTS 機器は適用例が 少なく、技術的課題も多いため、 より低容量で低コストな安定化機 器を開発するため、自励式 BTB を用いた系統安定化手法の開発に ついて本研究に取り組みました。

2.新しい系統安定化手法

 発電機の脱調を防止し、安定度 を維持するためには、系統故障に よって発電機に蓄積される加速エ ネルギーや減速エネルギーをうま く低減させる必要があります。  STATCOM は、系統へ無効電 力の注入、吸収を適切なタイミン グで繰り返し行うことで電圧を変 動させ、発電機に蓄積される加速 エネルギーや減速エネルギーを低 減しやすい状態にして安定度を維 持しています。  第2図に今回検討に用いた系統 概略図を示します。異なる系統に 発電機を分散連系している発電所 の母線間を自励式 BTB で直流連 系することで系統間の有効電力融 通が可能になります。今回提案の 制御手法は、自励式 BTB により、 安定化対象の系統へ無効電力の注 入、吸収を行うことに加えて、異 系統側から融通した有効電力の注 入、吸収をあわせて行うことで、 発電機に蓄積される加速エネル ギーや減速エネルギーを直接低減 させるというものです。

3.研究内容と成果

 系統故障時に安定度を維持する ためには、系統の固有値(動揺周 波数、ダンピング)を求め、加速、 減速を繰り返す系統動揺に対して 最適なタイミングで有効電力、無 効電力を注入、吸収を行う必要が あります。  第3図に系統固有値解析の結果 を示します。送電線に発電機を5 台連系したケースではダンピング が正の値となり、系統動揺が収束 しない不安定なケースということ がわかります。そこで、発電機を 5台連系したケースを想定して制 御系を設計し、必要な設備容量を 求めることにしました。  第4図に系統故障を模擬してシ ミュレーションした安定度解析結 果を示します。自励式 BTB の有 効 電 力、無 効 電 力 の 制 御 量 が 140MVA の場合は想定故障に対 して安定度維持ができませんが、 有効電力、無効電力の制御量を 150MVA にすると安定度維持が 可能になります。  この場合、必要な設備容量は二 乗の和の平方根より 212MVA、 加えて異系統側と有効電力を融通 し あ う た め の 150MVA、合 計 362MVA の総設備容量が必要と いうことになります。そこで、さ らに自励式 BTB の容量低減およ び異系統側への有効電力融通によ る影響低減を図るため、有効電力 制御量を減らす検討を行いまし た。  そ の 結 果、有 効 電 力 は 90MVA、無効電力は 230MVA の制御量で安定度維持が可能で、 総設備容量を 337MVA まで低減 することができました。  有効電力の制御量をゼロとした 場合、すなわち STATCOM のよ うに無効電力の制御のみで安定度 を維持するためには 410MVA の 制御量が必要であったため、これ は 337MVA の自励式 BTB が、 410MVA の STATCOM と同等 の系統安定化効果を有するという ことになります。

4.まとめと今後の取組み

 異系統に発電機を分散連系して いる系統の特徴に合わせて考案し た左右非対称の自励式 BTB(第 5図)による系統安定化手法は、 STATCOM と比べて2割弱の変 換器容量低減が可能で同等の系統 安定化効果を得ることができ、低 コスト化を見込むことも可能とい うことがわかりました。  今後は、系統安定化対策として の技術を確立できるよう有効電力 融通時に異系統側へ与える影響評 価や、設備のさらなる低容量化、 低コスト化を可能とする制御方式 の検討を進めることとしていま す。 執筆者 第4図 安定度解析結果 第3図 固有値解析結果 第5図 自励式 BTB 構成概略 執 筆 者:長友 義信 所   属:電力流通事業本部 系統制御グループ 主な業務:電力系統解析業務に従事 電力流通事業本部 系統制御グループ

自励式 BTB を用いた系統安定化手法の開発

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1.背景

 近年、再生可能エネルギーの利 用が推し進められており、特に太 陽光発電については 2020 年に 2,800 万 kW、2030 年 に は 5,300 万 kW という政府目標が 設定され、普及が進んでいます。 太陽光発電は天候に左右され、そ の出力変化は大きく速いという特 徴があります。現状では、火力・ 水力発電機で行っている周波数調 整により影響は表れていません が、このまま普及が進めば周波数 を一定に維持することが困難にな ることが懸念されます。そこで、 周波数調整の新しい仕組みとして 蓄電池を適用することを検討して います。

2.概要

 蓄電池を周波数制御に適用する 場合、常に充放電ができる状態に しておく必要があります。そのた め に は、SOC(State Of Charge: 充電状態)を把握し、空状態に近 づけば充電し、満状態に近づけば 放電する制御を行うことを考えま す。しかし、このような SOC 調 整を目的とした蓄電池の充放電 は,周波数調整としては外乱にな りますので、火力発電機の出力を 協調して変化させることで周波数 に影響しないロジックを作成しま したが、蓄電池が周波数調整のた めに充放電した電力を火力発電機 に振り替える方法と振り替えない 方法が考えられることから、両方 のケースでシミュレーションを行 い、変動抑制効果は同様ですが、 SOC の推移が大きく異なること を確認しました。  

3.シミュレーションモデル

(1)全体  周波数変動のシミュレーション モデルの概要を図1に示します。 火力・水力発電機モデルには、実 機の特性を反映し、使用する負荷 や原子力・融通などのデータは実 績データを用いることで、現実に 近いシミュレーションができるよ うにしています。 (2)太陽光発電変動  2020 年 に 全 国 で 2,800 万 kW が導入されたとし、当社管内 相当として 450 万 kW を想定し ます。そして、これが関西戸建分 布に従って比例普及したと仮定 し、関西を1 km 四方のメッシュ に区切り、各メッシュ内の日射量 を国の補助事業(経済産業省分散 型新エネルギー大量導入促進系統 安定対策事業)で設置した当社管 内 60 か所の日射量計のうち、最 寄の日射量計が測定した値と同じ として太陽光発電出力を求めまし た(図2)。シミュレーションで はこの太陽光発電出力から周期が 20 分以内の変動を抽出して用い ました(図3)。 (3)蓄電池  当社では、石津川変電所に蓄電 池を設置して実証試験に取り組ん でいますが、そこで明らかになっ た特性(効率、応答速度など)を 蓄電池モデルに反映しました。  

4.制御ロジック

(1)LFC(Load Frequency Control)制御  周波数制御としての LFC は, 数分から十数分の変動抑制を分担 しており、エリア内の需給不平衡 量を表すAR(Area Requirement) を監視し、これが小さくなるよう に発電機の出力を調整します。具 体的には、AR が不感帯を超えた 時間と量を計測し、その値が設定 値を超えるとパルス信号を発電所 に送ります。発電所では、この信 号を受けて出力を変化させます。 (2) ELD(Economic Load Dispatching Control)制御  ELD は、LFC よりも長い周期 の変動に対応しており、火力発電 機の予定出力パターンと実出力と の差を3分毎に補正しながら経済 的な運用となるように火力発電機 の出力配分を行います。 (3)SOC 制御  蓄電池は、充放電できる電力量 が決まっていますので、充電ある いは放電のどちらかが長時間継続 すると、満状態あるいは空状態に なり周波数調整ができなくなりま す。そのような状態になることを 避けるため、充電残量に閾値を設 定し、その値を超えた場合は周波 数調整の指令値に一定のバイアス を加え、SOC が 50% に近づく ように制御します。ただし、この バイアスは電力系統には外乱とな りますので、火力発電機と持ち替 え、つまり充電バイアスの場合は 火力出力増、放電バイアスの場合 は火力出力減として周波数調整へ 影響しないようにします。火力発 電機への持ち替えは、ELD の補 正量に加算することで実現しま す。

5.シミュレーションの概要

 蓄電池を LFC 制御した場合、 パルスによる出力変化後の出力を 次のパルスが来るまで保持します ので、充電あるいは放電が継続す ることになり、SOC 制御が働き ます。そして、SOC が 50% に 近づき SOC 制御が終了すると、 その間にパルスによる LFC 指令 値の変化がなければ、また元の LFC 指令値を出力し続け、SOC 制御が働くというような状況を繰 り返してしまうことになります。 その対策として、蓄電池の LFC 指令値をあるタイミングで0にリ セットすることを考えますが、こ れには2通りの考え方がありま す。一つは SOC 制御が停止した 時にリセットを行い、火力持ち替 えとして出力配分回路に戻しま す。もう一つは ELD の制御間隔 に合わせ3分毎にリセットし、負 荷予測回路に戻します。この2 ケースについてシミュレーション を行い、変動抑制効果や SOC 推 移の違いを検証しました。

6.シミュレーションの結果

 2種類のタイミングで LFC 指 令値をリセットした場合の AR の 1 時 間 ご と の RMS(Root Mean Square)を図4に示しま す。ほぼ同様の値であり、変動抑 制効果に差は無いといえます。一 方、SOC の推移を図5に示しま す。SOC 制御停止時リセットで は、SOC の広い領域を使用して い ま す が、3 分 リ セ ッ ト で は SOC の狭い領域で収まることが 分かりました。蓄電池の MWh 容量が少なくて済むということは 設備コストとしては有利と言えま す。  

7.今後の予定

 今回のシミュレーションは蓄電 池が1台としたものであり、今後 は複数台とした場合の制御方法や 太陽光の導入量に応じた蓄電池の 必要量についても検討を進めてい く予定です。 太陽光発電が電力系統に大量導入された場合の周波数調整の新しい仕組みとして蓄電池を適用することを検 討していますが、蓄電池が満状態や空状態になり充放電できなくなることを防ぐため、常に充電残量を管理 しておくことが必要になります。そのための蓄電池の制御方法について、シミュレーションモデルを用いて 検討していますので紹介します。

蓄電池を用いた需給制御システムに関する研究

第 1 図 シミュレーションモデルの概要 第 3 図 太陽光発電出力変動 第 2 図 太陽光発電出力

研究紹介

研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(ネットワーク・系統)

(7)

1.背景

 近年、再生可能エネルギーの利 用が推し進められており、特に太 陽光発電については 2020 年に 2,800 万 kW、2030 年 に は 5,300 万 kW という政府目標が 設定され、普及が進んでいます。 太陽光発電は天候に左右され、そ の出力変化は大きく速いという特 徴があります。現状では、火力・ 水力発電機で行っている周波数調 整により影響は表れていません が、このまま普及が進めば周波数 を一定に維持することが困難にな ることが懸念されます。そこで、 周波数調整の新しい仕組みとして 蓄電池を適用することを検討して います。

2.概要

 蓄電池を周波数制御に適用する 場合、常に充放電ができる状態に しておく必要があります。そのた め に は、SOC(State Of Charge: 充電状態)を把握し、空状態に近 づけば充電し、満状態に近づけば 放電する制御を行うことを考えま す。しかし、このような SOC 調 整を目的とした蓄電池の充放電 は,周波数調整としては外乱にな りますので、火力発電機の出力を 協調して変化させることで周波数 に影響しないロジックを作成しま したが、蓄電池が周波数調整のた めに充放電した電力を火力発電機 に振り替える方法と振り替えない 方法が考えられることから、両方 のケースでシミュレーションを行 い、変動抑制効果は同様ですが、 SOC の推移が大きく異なること を確認しました。  

3.シミュレーションモデル

(1)全体  周波数変動のシミュレーション モデルの概要を図1に示します。 火力・水力発電機モデルには、実 機の特性を反映し、使用する負荷 や原子力・融通などのデータは実 績データを用いることで、現実に 近いシミュレーションができるよ うにしています。 (2)太陽光発電変動  2020 年 に 全 国 で 2,800 万 kW が導入されたとし、当社管内 相当として 450 万 kW を想定し ます。そして、これが関西戸建分 布に従って比例普及したと仮定 し、関西を1 km 四方のメッシュ に区切り、各メッシュ内の日射量 を国の補助事業(経済産業省分散 型新エネルギー大量導入促進系統 安定対策事業)で設置した当社管 内 60 か所の日射量計のうち、最 寄の日射量計が測定した値と同じ として太陽光発電出力を求めまし た(図2)。シミュレーションで はこの太陽光発電出力から周期が 20 分以内の変動を抽出して用い ました(図3)。 (3)蓄電池  当社では、石津川変電所に蓄電 池を設置して実証試験に取り組ん でいますが、そこで明らかになっ た特性(効率、応答速度など)を 蓄電池モデルに反映しました。  

4.制御ロジック

(1)LFC(Load Frequency Control)制御  周波数制御としての LFC は, 数分から十数分の変動抑制を分担 しており、エリア内の需給不平衡 量を表すAR(Area Requirement) を監視し、これが小さくなるよう に発電機の出力を調整します。具 体的には、AR が不感帯を超えた 時間と量を計測し、その値が設定 値を超えるとパルス信号を発電所 に送ります。発電所では、この信 号を受けて出力を変化させます。 (2) ELD(Economic Load Dispatching Control)制御  ELD は、LFC よりも長い周期 の変動に対応しており、火力発電 機の予定出力パターンと実出力と の差を3分毎に補正しながら経済 的な運用となるように火力発電機 の出力配分を行います。 (3)SOC 制御  蓄電池は、充放電できる電力量 が決まっていますので、充電ある いは放電のどちらかが長時間継続 すると、満状態あるいは空状態に なり周波数調整ができなくなりま す。そのような状態になることを 避けるため、充電残量に閾値を設 定し、その値を超えた場合は周波 数調整の指令値に一定のバイアス を加え、SOC が 50% に近づく ように制御します。ただし、この バイアスは電力系統には外乱とな りますので、火力発電機と持ち替 え、つまり充電バイアスの場合は 火力出力増、放電バイアスの場合 は火力出力減として周波数調整へ 影響しないようにします。火力発 電機への持ち替えは、ELD の補 正量に加算することで実現しま す。

5.シミュレーションの概要

 蓄電池を LFC 制御した場合、 パルスによる出力変化後の出力を 次のパルスが来るまで保持します ので、充電あるいは放電が継続す ることになり、SOC 制御が働き ます。そして、SOC が 50% に 近づき SOC 制御が終了すると、 その間にパルスによる LFC 指令 値の変化がなければ、また元の LFC 指令値を出力し続け、SOC 制御が働くというような状況を繰 り返してしまうことになります。 その対策として、蓄電池の LFC 指令値をあるタイミングで0にリ セットすることを考えますが、こ れには2通りの考え方がありま す。一つは SOC 制御が停止した 時にリセットを行い、火力持ち替 えとして出力配分回路に戻しま す。もう一つは ELD の制御間隔 に合わせ3分毎にリセットし、負 荷予測回路に戻します。この2 ケースについてシミュレーション を行い、変動抑制効果や SOC 推 移の違いを検証しました。

6.シミュレーションの結果

 2種類のタイミングで LFC 指 令値をリセットした場合の AR の 1 時 間 ご と の RMS(Root Mean Square)を図4に示しま す。ほぼ同様の値であり、変動抑 制効果に差は無いといえます。一 方、SOC の推移を図5に示しま す。SOC 制御停止時リセットで は、SOC の広い領域を使用して い ま す が、3 分 リ セ ッ ト で は SOC の狭い領域で収まることが 分かりました。蓄電池の MWh 容量が少なくて済むということは 設備コストとしては有利と言えま す。  

7.今後の予定

 今回のシミュレーションは蓄電 池が1台としたものであり、今後 は複数台とした場合の制御方法や 太陽光の導入量に応じた蓄電池の 必要量についても検討を進めてい く予定です。 執筆者 第 5 図 SOC の推移 第 4 図 AR の RMS 執 筆 者:岡内 健年 所   属:研究開発室 電力技術研究所        電力基盤技術研究室(ネットワーク・系統) 主な業務:電力系統解析業務に従事 (研究に携わった人) 電力流通事業本部 系統制御グループ        須羽 泰行 エネルギー利用技術研究所 商品評価研究室         山野井 俊行 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(ネットワーク・系統) 柴田 勝彦 研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(ネットワーク・系統)

蓄電池を用いた需給制御システムに関する研究

(8)

1.研究の背景

 電力設備や住宅内の配線、家電 製品などから発生する超低周波数 の磁界が単独で発がんなどの健康 影響をおよぼす可能性について、 実験動物またはヒトの細胞などを 用いた生物学的研究や統計手法を 用いた疫学研究により今日まで多 くの評価が行われています。一方、 他の発がん物資などによる既知の 健康影響に対し、磁界がその影響 を促進または抑制するといった補 助作用をおよぼす可能性を評価し た例は多くありません。世界保健 機関が刊行した環境保健基準(ク ライテリア)No.238 では、これ までの動物研究が磁界単独では発 がん作用がないことを示している ことから、さらなる研究が必要な 分野のひとつとして「細胞研究お よび動物研究を用いた発がん補助 作用の評価」を挙げています。  当社では、世界中で行われてい る超低周波数磁界に関する研究の 内容や結果あるいは専門機関の活 動や評価について最新情報の収集 に努めております。今回、その取 り組みのひとつとして細胞研究を 用いた発がん補助作用の評価に取 り組みましたので紹介します。

2.研究概要

 細胞内には遺伝情報をになうデオ キシリボ核酸(deoxyribonucleic acid; DNA)があります。この DNA が 損傷を受けると、細胞はその損傷 を修復する機能を働かせます。損 傷が全て正しく修復されると細胞 は元通りの正常な状態に戻りま す。また、損傷を修復しきれなかっ た場合や修復不可能であった場合 には、損傷をかかえた異常な細胞 は自らを死滅させる機能(アポ トーシス)を働かせます。これら の機能により、ほとんどの場合、 異常な細胞が存続しつづけること はありません。しかし、これらの 機能が何らかの理由によりうまく 働かなかった場合には、異常な細 胞は生き残り、変異と増殖が進行 し、最終的に健康影響の可能性に つながります。紫外線では、この ような健康影響のひとつの例とし て皮膚がんがあります(第 1 図)。  本研究では発がん補助作用の評 価として、身近な発がん物質であ る紫外線を用い、紫外線によって 生じた DNA 損傷が修復される過 程において、超低周波数磁界が修 復を促進または抑制するといった 補助作用をおよぼす可能性を評価 しました。 (1)紫外線照射装置  本研究で用いた紫外線照射装置 を第 2 図に示します。紫外線は 波長によって UV-C 波長(100 ∼ 280nm)、UV-B 波 長(280 ∼ 315nm)、UV-A 波 長(315 ∼ 400nm)の3つに区分されま す。UV-C 波長の紫外線はオゾン 層などで完全にさえぎられて地表 に は 届 き ま せ ん。こ れ に 対 し、 UV-B および UV-A 波長の紫外線 は地表に到達し、特に UV-B 波長 の紫外線が日焼けや皮膚がんの原 因となることが知られています。 本研究では 306nm にピークを持 つ UV-B 波長の紫外線ランプを使 用しました。 (2)磁界ばく露装置  磁界ばく露装置を第3図に示し ます。細胞の培養には安定した温 度や湿度、二酸化炭素濃度などの 培養環境が必要不可欠であり、そ のために CO₂インキュベータが 一般に用いられています。この磁 界ばく露装置は、CO₂インキュ ベータ内部に磁界発生器を内包す ることで安定した細胞の培養環境 を確保するとともに、5ミリテス ラの強度、周波数 60 ヘルツの磁 界を発生させることが可能です。 (3)評価方法  UV-B 波長の紫外線を細胞に照 射すると紫外線量に応じて生き残 る細胞の数は減少します。また、 UV-B 波長の紫外線照射によりシ クロブタン型ピリミジンダイマー とよばれる DNA 損傷が生じるこ とが知られています。本研究では、 細胞生存率とピリミジンダイマー 形成量を指標として評価を行いま した。  評価手順は以下のとおりです。 まず2つの細胞サンプルを準備 し、同時に UV-B 波長の紫外線 ( 線 量:20, 40, 60 または 80J/m²) を照射します。その後、一方のサ ンプルには超低周波数磁界を浴び せ(磁界ばく露サンプル)、もう 一方のサンプルは別の CO₂イン キュベータ中で培養します(比較 サンプル)。最後に、これら両サ ンプルの細胞生存率またはピリミ ジンダイマー形成量を評価・比較 することで磁界の補助作用の有無 やその程度を評価することが出来 ます。  

3.研究結果

 細胞生存率の評価結果を第4図 に、ダイマー形成量の評価結果を 第5図に示します。それぞれの UV-B 紫外線量条件について同じ 実験を3回繰り返しており、平均 値 ± 標準偏差の形で結果を表し ています。これらの結果から、い ずれの紫外線量条件においても比 較サンプルと磁界ばく露サンプル との間に有意な差異は見られませ んでした。

4.まとめ

 超低周波数磁界の発がん補助作 用の評価として、UV-B 紫外線に より生じた DNA 損傷が修復され る過程における磁界の補助作用の 可能性を評価した結果、実施した いずれの条件においても磁界によ る補助作用は見られませんでし た。  当社では引き続き、世界中で行 われている研究の内容や結果、あ るいは専門機関の活動や評価につ いて最新情報の収集に努めてまい ります。  最後に、本研究の遂行に当たり 磁界ばく露装置をはじめ細胞研究 環境をご提供いただき、細胞実験 についてご指導いただきました京 都大学生存圏研究所の宮越順二特 定教授および生存圏研究所員の皆 様に厚く御礼申し上げます。 電力設備などから発生する超低周波数磁界による健康影響の可能性について、今日まで多くの研究が行われ ています。一方、他の発がん物質などの健康影響に対する磁界の補助作用の可能性を評価した例は多くあり ません。本研究では、身近な発がん物質である紫外線により生じた細胞影響が修復される過程において、超 低周波数磁界が補助作用をおよぼす可能性を、細胞生存率やDNA損傷の形成量を指標に評価しました。

紫外線の細胞影響に対する超低周波数磁界の補助作用評価

第2図 紫外線照射装置 第1図 DNA 損傷を生じた細胞のその後の流れの例 DNA DNA DNA DNA 5

研究紹介

研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(工務)

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1.研究の背景

 電力設備や住宅内の配線、家電 製品などから発生する超低周波数 の磁界が単独で発がんなどの健康 影響をおよぼす可能性について、 実験動物またはヒトの細胞などを 用いた生物学的研究や統計手法を 用いた疫学研究により今日まで多 くの評価が行われています。一方、 他の発がん物資などによる既知の 健康影響に対し、磁界がその影響 を促進または抑制するといった補 助作用をおよぼす可能性を評価し た例は多くありません。世界保健 機関が刊行した環境保健基準(ク ライテリア)No.238 では、これ までの動物研究が磁界単独では発 がん作用がないことを示している ことから、さらなる研究が必要な 分野のひとつとして「細胞研究お よび動物研究を用いた発がん補助 作用の評価」を挙げています。  当社では、世界中で行われてい る超低周波数磁界に関する研究の 内容や結果あるいは専門機関の活 動や評価について最新情報の収集 に努めております。今回、その取 り組みのひとつとして細胞研究を 用いた発がん補助作用の評価に取 り組みましたので紹介します。

2.研究概要

 細胞内には遺伝情報をになうデオ キシリボ核酸(deoxyribonucleic acid; DNA)があります。この DNA が 損傷を受けると、細胞はその損傷 を修復する機能を働かせます。損 傷が全て正しく修復されると細胞 は元通りの正常な状態に戻りま す。また、損傷を修復しきれなかっ た場合や修復不可能であった場合 には、損傷をかかえた異常な細胞 は自らを死滅させる機能(アポ トーシス)を働かせます。これら の機能により、ほとんどの場合、 異常な細胞が存続しつづけること はありません。しかし、これらの 機能が何らかの理由によりうまく 働かなかった場合には、異常な細 胞は生き残り、変異と増殖が進行 し、最終的に健康影響の可能性に つながります。紫外線では、この ような健康影響のひとつの例とし て皮膚がんがあります(第 1 図)。  本研究では発がん補助作用の評 価として、身近な発がん物質であ る紫外線を用い、紫外線によって 生じた DNA 損傷が修復される過 程において、超低周波数磁界が修 復を促進または抑制するといった 補助作用をおよぼす可能性を評価 しました。 (1)紫外線照射装置  本研究で用いた紫外線照射装置 を第 2 図に示します。紫外線は 波長によって UV-C 波長(100 ∼ 280nm)、UV-B 波 長(280 ∼ 315nm)、UV-A 波 長(315 ∼ 400nm)の3つに区分されま す。UV-C 波長の紫外線はオゾン 層などで完全にさえぎられて地表 に は 届 き ま せ ん。こ れ に 対 し、 UV-B および UV-A 波長の紫外線 は地表に到達し、特に UV-B 波長 の紫外線が日焼けや皮膚がんの原 因となることが知られています。 本研究では 306nm にピークを持 つ UV-B 波長の紫外線ランプを使 用しました。 (2)磁界ばく露装置  磁界ばく露装置を第3図に示し ます。細胞の培養には安定した温 度や湿度、二酸化炭素濃度などの 培養環境が必要不可欠であり、そ のために CO₂インキュベータが 一般に用いられています。この磁 界ばく露装置は、CO₂インキュ ベータ内部に磁界発生器を内包す ることで安定した細胞の培養環境 を確保するとともに、5ミリテス ラの強度、周波数 60 ヘルツの磁 界を発生させることが可能です。 (3)評価方法  UV-B 波長の紫外線を細胞に照 射すると紫外線量に応じて生き残 る細胞の数は減少します。また、 UV-B 波長の紫外線照射によりシ クロブタン型ピリミジンダイマー とよばれる DNA 損傷が生じるこ とが知られています。本研究では、 細胞生存率とピリミジンダイマー 形成量を指標として評価を行いま した。  評価手順は以下のとおりです。 まず2つの細胞サンプルを準備 し、同時に UV-B 波長の紫外線 ( 線 量:20, 40, 60 または 80J/m²) を照射します。その後、一方のサ ンプルには超低周波数磁界を浴び せ(磁界ばく露サンプル)、もう 一方のサンプルは別の CO₂イン キュベータ中で培養します(比較 サンプル)。最後に、これら両サ ンプルの細胞生存率またはピリミ ジンダイマー形成量を評価・比較 することで磁界の補助作用の有無 やその程度を評価することが出来 ます。  

3.研究結果

 細胞生存率の評価結果を第4図 に、ダイマー形成量の評価結果を 第5図に示します。それぞれの UV-B 紫外線量条件について同じ 実験を3回繰り返しており、平均 値 ± 標準偏差の形で結果を表し ています。これらの結果から、い ずれの紫外線量条件においても比 較サンプルと磁界ばく露サンプル との間に有意な差異は見られませ んでした。

4.まとめ

 超低周波数磁界の発がん補助作 用の評価として、UV-B 紫外線に より生じた DNA 損傷が修復され る過程における磁界の補助作用の 可能性を評価した結果、実施した いずれの条件においても磁界によ る補助作用は見られませんでし た。  当社では引き続き、世界中で行 われている研究の内容や結果、あ るいは専門機関の活動や評価につ いて最新情報の収集に努めてまい ります。  最後に、本研究の遂行に当たり 磁界ばく露装置をはじめ細胞研究 環境をご提供いただき、細胞実験 についてご指導いただきました京 都大学生存圏研究所の宮越順二特 定教授および生存圏研究所員の皆 様に厚く御礼申し上げます。 第4図 細胞生存率評価結果 第5図 シクロブタン型ピリミジンダイマー形成量評価結果 第3図 磁界ばく露装置 執筆者 執 筆 者:水野 公平 所   属:電力技術研究所 電力基盤技術研究室(工務) 主な業務:架空送電線に関する研究業務等に従事 CO2 研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(工務)

紫外線の細胞影響に対する超低周波数磁界の補助作用評価

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1.背景および目的  

 現在、低圧のお客さまに対して 計量周辺業務におけるお客さま サービス・作業安全性の向上、業 務効率化、将来のお客さまに対す る新たなサービスの実現を達成す るため、新計量システムの導入に 取り組んでおり、平成 26 年 1 月 末で 200 万台以上のスマート メーターを導入しています。  高圧のお客さまにおいては、低 圧と同様の諸課題があり、新電力 のお客さまや検針困難な箇所に限 定して、携帯電話パケット方式を 用いた遠隔検針端局を導入してい ましたが、本方式は、端局毎に通 信費用が掛かるだけでなく、機器 や施工におけるコストも高かった ため、全ての高圧お客さま(約 12 万軒)に適用するにはコスト が掛かり過ぎるという課題があり ました。  そこで、低圧新計量システム開 発で蓄積した技術とその通信イン フラを活用することにより、導入・ 運用コストの低減を目的とした高 圧用遠隔検針端局を開発しました。

2.高圧用遠隔検針端局の概要と要件

 高圧用遠隔検針端局開発では、 機能・構造の両面において低圧ス マートメーターの通信ユニットを 最大限活用することとしました が、以下の高圧特有の要件があり ました。 (1)機能面 a. 検針機能:高圧計器内の計量 データを適正に処理し、伝送でき ること。 b. 制御機能:高圧特有業務(デ マンドリセット等)を遠隔で実現 できること。 (2)構造面 c. 形状:高圧計器が施設されて いる狭隘なお客さま受電設備内に 設置可能とすること。 d. アンテナ:お客さま受電設備 (キュービクル)内、屋上等の様々 な施設箇所においても通信可能と すること。 e. 拡張性:将来的なお客さまニー ズの高まりにも柔軟に対応可能と すること。   これらを解決する通信端局の開発 を目標としました。(第1図)  

3.開発の概要

  各課題に対して高圧用遠隔検 針端局の仕様を検討し、以下の開 発を行いました。 a. 検針機能  検針値を確定させる時計は計器 が保有し、通信網に伝送させる時 計は端局が保持しているため、両 方の時刻を監視し、適正に処理す ることで、毎時の 30 分検針値を 確実に収集・伝送することができ ました。また、低圧計器に比べて 検針データ量が多いため、検針 データを分割し伝送量を減らすこ とにより、通信網への影響を最小 限に留めることができました。 b. 制御機能  制御要求の「予約実行」を可能 にするとともに、デマンドリセッ トを実行する際、確定値をチェッ クすることにより、電気料金の誤 請求を防止することができました。 c. 形状  受電設備内への設置方法につい ては、計器が設置されている木板 上に取り付けることができるよう に木ネジを採用しました。また、 お客さま受電設備の調査結果よ り、高さを4 cm とすることで全 ての受電設備内に設置することが できる形状が実現しました。さら に、設置環境によっては、狭隘か つ充電部近接作業となることを想 定し、電源部にはコネクタを採用 し、作業の安全性向上および作業 時間の短縮化を実現しました(第 2図)。 d. アンテナ  高圧用遠隔検針端局は、キュー ビクル(鉄製)内、お客さま建物 内や地下といった電波環境的に厳 しい箇所に設置されることが多い ことから、高圧用遠隔検針端局内 蔵とせず、外部アンテナを採用し ました(第3図)。外部アンテナ と低圧通信ユニット(内蔵アンテ ナ)との通信飛距離比較では、ほ ぼ同程度の結果が得られておりま す(第4図)。また、風雨に晒さ れる環境に設置されることが多い ため、過酷環境を模擬した防水試 験等を実施し、問題の無いことを 確認しています(第5図)。  基本性能が良好であることが確 認できたため、平成 23 年度より 実フィールドにて通信性能を評価 した結果、検針値をほぼ 100% 収集できることが確認できました。 e. 拡張性  将来的な新たなニーズに対応で きるよう、拡張用のコネクタを具 備しました。  

4.まとめ

 低圧通信ユニットの技術を活用 し、高圧特有の課題にも対応した 高圧用遠隔検針端局を開発するこ とで、導入・運用コストを大幅に 低減する遠隔検針システムの実現 に目途をつけることができまし た。また、実フィールドへの導入 により、現在運用中の低圧の新計 量システムと遜色ない通信性能を 確認することができており、本格 導入に向けた課題が達成されたと 考えています。 低圧のお客さまについては、平成 20 年度からスマートメータシステム(新計量システム)の導入による計 量周辺業務の改善やお客さまサービス向上に取り組んでいますが、今回、高圧のお客さまにも適用できる高 圧用遠隔検針端局の開発を行いました。

高圧用遠隔検針端局の開発

第1図 高低圧端局の仕様の違い

研究紹介

電力流通事業本部 ネットワーク技術高度化グループ

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1.背景および目的  

 現在、低圧のお客さまに対して 計量周辺業務におけるお客さま サービス・作業安全性の向上、業 務効率化、将来のお客さまに対す る新たなサービスの実現を達成す るため、新計量システムの導入に 取り組んでおり、平成 26 年 1 月 末で 200 万台以上のスマート メーターを導入しています。  高圧のお客さまにおいては、低 圧と同様の諸課題があり、新電力 のお客さまや検針困難な箇所に限 定して、携帯電話パケット方式を 用いた遠隔検針端局を導入してい ましたが、本方式は、端局毎に通 信費用が掛かるだけでなく、機器 や施工におけるコストも高かった ため、全ての高圧お客さま(約 12 万軒)に適用するにはコスト が掛かり過ぎるという課題があり ました。  そこで、低圧新計量システム開 発で蓄積した技術とその通信イン フラを活用することにより、導入・ 運用コストの低減を目的とした高 圧用遠隔検針端局を開発しました。

2.高圧用遠隔検針端局の概要と要件

 高圧用遠隔検針端局開発では、 機能・構造の両面において低圧ス マートメーターの通信ユニットを 最大限活用することとしました が、以下の高圧特有の要件があり ました。 (1)機能面 a. 検針機能:高圧計器内の計量 データを適正に処理し、伝送でき ること。 b. 制御機能:高圧特有業務(デ マンドリセット等)を遠隔で実現 できること。 (2)構造面 c. 形状:高圧計器が施設されて いる狭隘なお客さま受電設備内に 設置可能とすること。 d. アンテナ:お客さま受電設備 (キュービクル)内、屋上等の様々 な施設箇所においても通信可能と すること。 e. 拡張性:将来的なお客さまニー ズの高まりにも柔軟に対応可能と すること。   これらを解決する通信端局の開発 を目標としました。(第1図)  

3.開発の概要

  各課題に対して高圧用遠隔検 針端局の仕様を検討し、以下の開 発を行いました。 a. 検針機能  検針値を確定させる時計は計器 が保有し、通信網に伝送させる時 計は端局が保持しているため、両 方の時刻を監視し、適正に処理す ることで、毎時の 30 分検針値を 確実に収集・伝送することができ ました。また、低圧計器に比べて 検針データ量が多いため、検針 データを分割し伝送量を減らすこ とにより、通信網への影響を最小 限に留めることができました。 b. 制御機能  制御要求の「予約実行」を可能 にするとともに、デマンドリセッ トを実行する際、確定値をチェッ クすることにより、電気料金の誤 請求を防止することができました。 c. 形状  受電設備内への設置方法につい ては、計器が設置されている木板 上に取り付けることができるよう に木ネジを採用しました。また、 お客さま受電設備の調査結果よ り、高さを4 cm とすることで全 ての受電設備内に設置することが できる形状が実現しました。さら に、設置環境によっては、狭隘か つ充電部近接作業となることを想 定し、電源部にはコネクタを採用 し、作業の安全性向上および作業 時間の短縮化を実現しました(第 2図)。 d. アンテナ  高圧用遠隔検針端局は、キュー ビクル(鉄製)内、お客さま建物 内や地下といった電波環境的に厳 しい箇所に設置されることが多い ことから、高圧用遠隔検針端局内 蔵とせず、外部アンテナを採用し ました(第3図)。外部アンテナ と低圧通信ユニット(内蔵アンテ ナ)との通信飛距離比較では、ほ ぼ同程度の結果が得られておりま す(第4図)。また、風雨に晒さ れる環境に設置されることが多い ため、過酷環境を模擬した防水試 験等を実施し、問題の無いことを 確認しています(第5図)。  基本性能が良好であることが確 認できたため、平成 23 年度より 実フィールドにて通信性能を評価 した結果、検針値をほぼ 100% 収集できることが確認できました。 e. 拡張性  将来的な新たなニーズに対応で きるよう、拡張用のコネクタを具 備しました。  

4.まとめ

 低圧通信ユニットの技術を活用 し、高圧特有の課題にも対応した 高圧用遠隔検針端局を開発するこ とで、導入・運用コストを大幅に 低減する遠隔検針システムの実現 に目途をつけることができまし た。また、実フィールドへの導入 により、現在運用中の低圧の新計 量システムと遜色ない通信性能を 確認することができており、本格 導入に向けた課題が達成されたと 考えています。 第3図 外部アンテナ 第4図 高低圧通信端局の通信飛距離試験結果 第5図 防水・耐環境試験の様子 第2図 高圧用遠隔検針端局の形状 執筆者 執 筆 者:稲荷 淳一 所   属:電力流通事業本部 ネットワーク技術高度化グループ (現:守口営業所 枚方ネットワーク技術センター) 主な業務:通信端局の開発に従事 電力流通事業本部 ネットワーク技術高度化グループ

高圧用遠隔検針端局の開発

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1.研究の背景とねらい

 地球環境問題への関心の高まり 等により、太陽光発電の普及と電 力系統への連系が増加していま す。  電力系統から見ると、PV シス テムは、季節、天候等により出力 が大きく変動する問題があるた め、その変動傾向を把握すること が望まれます。  そこで、本研究では、堺太陽光 発電所においてH23 年 10 月∼ H24 年9月までの 361 日間(5 日間は欠測)に得られた発電出力 データの変動の様相と天候の関係 について分析しました。  

2.季節別の発電量

 各月の平均発電量(MWh)と 平均日射量(MJ/㎡)を1日当 たりで比較すると年間では夏季の 値が大きくなりますが月毎の変動 も見られました(第1図)。一方、 各月の最大出力日の出力と日射量 をグラフ化すると滑らかな曲線で 変化しています(第2図)。この 違いは日々の出力変動に起因する ことから、毎日の出力曲線を「全 体的な大きさ・変動の大小・快晴 日を超える過大出力の有無」の3 項目から7種類に分類しました (第1表)。代表的な出力曲線を第 3図、第4図に示します。第3図 に見られる分類①の滑らかな曲線 は、太陽の高度変化による日射強 度変化がそのまま現れた快晴日の もの、分類④の曲線は、晴天でも 小さな雲による変動が加わったも の、第4図の分類⑤⑥の曲線は、 分厚い雲が日射を遮ったものと考 えています。出力曲線の各分類と 気象庁が発表した天気(堺市)の 対応を第1表と第5図に示しま す。分類①から④は、晴天日に対 応し、分類⑤⑥は、曇天・雨天日 に対応しています。  月別の発生日数を見ると、8月 は出力曲線の分類①から④(天候: 晴れ)が多く、第1図の平均日射 量、発電量の高さと符合します。 また、6月は出力曲線の分類⑤⑥ (天候:曇・雨)の日数が多いこ とから、第2図で最大日射量・発 電量が大きいものの、第1図の平 均日射量・発電量が少ない特徴と 符合しています。

3.季節別の出力変動

 短時間に発生する大きな出力変 化に注目し、1 日の出力曲線を 30 分単位で見て定格出力の6割 以上の変動があった回数(増加、 減少で各1回)と、30 分単位の 最大変動幅(最大値と最小値の差) を第6図に示します。  各月の変動回数を比較すると8 月、9月の回数が特に多く、分類 ④の晴天日に発生していました。 これは、夏季の強い日射を小さな 雲が一時的に遮ったものです。一 方、最大変動幅は、夏季に限らず 春季にも大きな値が見られます。 4月の最大変動幅は分類⑥の曇天 日に発生していますが、分厚い雲 に発電エリアに相当する穴が開 き、太陽から直達光に周囲の雲の 側面からの反射光が重なる珍しい 現象(レンズ効果)が発生したと 考えています。  次に、1分毎の細かな出力変動 の絶対値を1日分積算した値を、 同月の快晴日の積算値で除算して 正規化したものを変動率として、 月単位で平均化したグラフを第7 図に示します。1分という短い時 間幅で見ると、各月ともに快晴日 の5倍から7倍程度の変動率があ り、年間を通して細かな出力変動 が継続することが判りました。  

4.年間を通した出力変動

 出力変動の大きさとその頻度の 関係を、通年で分析した結果を第 8図に示します。グラフの横軸は 出力変動の大きさを示します。縦 軸は出力変動の大きさ毎に、その 変動した時間を通年で積算した時 間とその累積頻度を示します。観 測期間中の堺太陽光発電所全体 (10MW)での出力変動は定格出 力の8割以下に収まっていました。

5.出力変動と気象情報

 前述の変動回数・最大変動幅・ 変動率を用いて選定した、年間で 最も変動が激しかった日(H24 年 9 月 17 日)の出力曲線を第9 図に示します。この日は、分類④ の晴天日ですが、午後一杯、急激 な変動が長時間継続しています。  そこで、気象衛星画像を調べる と、台風 16 号の移動に合わせて、 午後から千切れ雲が堺上空を通過 している様子が確認できました (写真1)。 この雲の移動が堺太陽光発電所へ の日射を変動させたことが判ります。

6.おわりに

 堺太陽光発電所の発電出力を分 析して1年間の PV 出力変動の特 徴を捉え、さらに天候(気象)と の関係の深さを確認することが出 来ました。今後、PV 出力変動の 評価に、気象情報を役立てる機会 も出てくると考えています。 また、太陽光発電システムが高圧 配電線に連系された場合の影響に ついては、今回、紹介した堺太陽 光発電所の全体出力以外にパネル 群(250kW)単位の分析結果を 組み合わせて、電圧解析シミュ レーションを行なうことで検討を 進めています。 太陽光発電(PV)システムの普及と電力系統への連系が進んでいますが、PV は日射により発電するため、 季節や天候によって様々な出力変動が発生します。前回報告 (2012 年 470 号 ) では、堺太陽光発電所 (10MW、21 ヘクタール)の広さと出力変動に注目した分析を紹介しました。今回は、1年間の観測データ を用いて季節別の変動傾向と気象との関係を分析した成果を紹介します。

堺太陽光発電所の実測で得られた出力変動特性について(第2報)

第5図 出力曲線の分類別頻度と天候 期間 H23.10.1∼H24.9.30 第1表 1日の出力曲線の分類表 第2図 月別の最大日射量・発電量の推移 第1図 1日の平均日射量・発電量の推移 第4図 出力曲線の例(分類⑤、⑥) 第3図 出力曲線の例(分類①、④)

研究紹介

研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(ネットワーク・系統)

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1.研究の背景とねらい

 地球環境問題への関心の高まり 等により、太陽光発電の普及と電 力系統への連系が増加していま す。  電力系統から見ると、PV シス テムは、季節、天候等により出力 が大きく変動する問題があるた め、その変動傾向を把握すること が望まれます。  そこで、本研究では、堺太陽光 発電所においてH23 年 10 月∼ H24 年9月までの 361 日間(5 日間は欠測)に得られた発電出力 データの変動の様相と天候の関係 について分析しました。  

2.季節別の発電量

 各月の平均発電量(MWh)と 平均日射量(MJ/㎡)を1日当 たりで比較すると年間では夏季の 値が大きくなりますが月毎の変動 も見られました(第1図)。一方、 各月の最大出力日の出力と日射量 をグラフ化すると滑らかな曲線で 変化しています(第2図)。この 違いは日々の出力変動に起因する ことから、毎日の出力曲線を「全 体的な大きさ・変動の大小・快晴 日を超える過大出力の有無」の3 項目から7種類に分類しました (第1表)。代表的な出力曲線を第 3図、第4図に示します。第3図 に見られる分類①の滑らかな曲線 は、太陽の高度変化による日射強 度変化がそのまま現れた快晴日の もの、分類④の曲線は、晴天でも 小さな雲による変動が加わったも の、第4図の分類⑤⑥の曲線は、 分厚い雲が日射を遮ったものと考 えています。出力曲線の各分類と 気象庁が発表した天気(堺市)の 対応を第1表と第5図に示しま す。分類①から④は、晴天日に対 応し、分類⑤⑥は、曇天・雨天日 に対応しています。  月別の発生日数を見ると、8月 は出力曲線の分類①から④(天候: 晴れ)が多く、第1図の平均日射 量、発電量の高さと符合します。 また、6月は出力曲線の分類⑤⑥ (天候:曇・雨)の日数が多いこ とから、第2図で最大日射量・発 電量が大きいものの、第1図の平 均日射量・発電量が少ない特徴と 符合しています。

3.季節別の出力変動

 短時間に発生する大きな出力変 化に注目し、1 日の出力曲線を 30 分単位で見て定格出力の6割 以上の変動があった回数(増加、 減少で各1回)と、30 分単位の 最大変動幅(最大値と最小値の差) を第6図に示します。  各月の変動回数を比較すると8 月、9月の回数が特に多く、分類 ④の晴天日に発生していました。 これは、夏季の強い日射を小さな 雲が一時的に遮ったものです。一 方、最大変動幅は、夏季に限らず 春季にも大きな値が見られます。 4月の最大変動幅は分類⑥の曇天 日に発生していますが、分厚い雲 に発電エリアに相当する穴が開 き、太陽から直達光に周囲の雲の 側面からの反射光が重なる珍しい 現象(レンズ効果)が発生したと 考えています。  次に、1分毎の細かな出力変動 の絶対値を1日分積算した値を、 同月の快晴日の積算値で除算して 正規化したものを変動率として、 月単位で平均化したグラフを第7 図に示します。1分という短い時 間幅で見ると、各月ともに快晴日 の5倍から7倍程度の変動率があ り、年間を通して細かな出力変動 が継続することが判りました。  

4.年間を通した出力変動

 出力変動の大きさとその頻度の 関係を、通年で分析した結果を第 8図に示します。グラフの横軸は 出力変動の大きさを示します。縦 軸は出力変動の大きさ毎に、その 変動した時間を通年で積算した時 間とその累積頻度を示します。観 測期間中の堺太陽光発電所全体 (10MW)での出力変動は定格出 力の8割以下に収まっていました。

5.出力変動と気象情報

 前述の変動回数・最大変動幅・ 変動率を用いて選定した、年間で 最も変動が激しかった日(H24 年 9 月 17 日)の出力曲線を第9 図に示します。この日は、分類④ の晴天日ですが、午後一杯、急激 な変動が長時間継続しています。  そこで、気象衛星画像を調べる と、台風 16 号の移動に合わせて、 午後から千切れ雲が堺上空を通過 している様子が確認できました (写真1)。 この雲の移動が堺太陽光発電所へ の日射を変動させたことが判ります。

6.おわりに

 堺太陽光発電所の発電出力を分 析して1年間の PV 出力変動の特 徴を捉え、さらに天候(気象)と の関係の深さを確認することが出 来ました。今後、PV 出力変動の 評価に、気象情報を役立てる機会 も出てくると考えています。 また、太陽光発電システムが高圧 配電線に連系された場合の影響に ついては、今回、紹介した堺太陽 光発電所の全体出力以外にパネル 群(250kW)単位の分析結果を 組み合わせて、電圧解析シミュ レーションを行なうことで検討を 進めています。 執筆者 第6図 月別の変動回数と最大変動幅 第7図 毎月の平均変動率の推移 写真1 H24 年 9 月 17 日 12:00 の雲画像 第9図 H24 年 9 月 17 日の出力曲線 第8図 出力変動の大きさと出現度数 執 筆 者:中村 淳雄 所   属:研究開発室 電力技術研究所        電力基盤技術研究室(ネットワーク・系統) 主な業務:非破壊検査技術、分散電源の系統連係への対応技術に      関する研究に従事 (研究に携わった人) 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(ネットワーク・系統) 篠崎 孝一 請川 輝和 16 研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(ネットワーク・系統)

堺太陽光発電所の実測で得られた出力変動特性について(第2報)

参照

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