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第4章 Co-Pt高垂直磁気異方性膜と酸化物添加グラニュラ媒体

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Academic year: 2022

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(1)

4.1 緒言

これまで述べてきたCo-Cr-Pt系垂直媒体は、第2章、第3章で詳述したような微細構造制御手法を 用いて、従来方式の急速な性能の進歩と並行して進められた垂直記録方式の著しい記録密度向上に 大きく寄与してきた。しかし、この系の垂直磁気異方性エネルギは3x106 erg/cm3程度であり、次世代の 磁気記録媒体としてさらに記録密度の伸展を図るには、より微細な粒子構造を実現する必要があるた め、この程度の磁気異方性エネルギでは磁化の熱安定性の面で不十分になると予想された。

したがって本章では、より磁気異方性エネルギの大きなCo-Pt系薄膜を用いて、将来のさらなる高密 度記録にも耐えうる記録分解能と熱安定性の確保を同時に可能とする記録媒体を目指した。記録分解 能を向上させ、媒体ノイズを低減するために、より完成度の高い粒子孤立性の実現を目的として、Co-Pt 薄膜に酸化物の添加を試みることにした。すなわち第2章で詳述した高ガス圧力でのスパッタ法や添加 元素などのプロセス技術や材料技術、また第3章で述べた中間層(下地層)導入による界面制御などの ナノ構造制御技術を活用して、この新しい高磁気異方性薄膜の微細構造を制御し、今後の垂直磁気 記録媒体の候補として提案することが狙いである(Fig. 4-1)。

まず初めに、Co-Pt 薄膜の記録材料としてのこれまでの研究の経緯と、垂直磁気記録媒体への応用 の面から考察を行ない、スパッタリングガス圧力や中間層などのプロセスパラメータや膜構造により記録 層の制御を行なう。次に添加物としての酸化物についての材料面からの考察を行ない、いくつかの酸 化物添加による記録層 Co-Pt-(MOx)膜の磁気特性や微細構造を検討し、各特性上の特質を調べてい る。その結果として、TiO2添加Co-Pt媒体を最も優れた記録層材料として提案する。

さらにその先の開発も視野に入れ、記録媒体の Trilemma(S/N 比・分解能向上のための磁性粒子の 微細化、熱安定性の確保のための大きな磁気異方性の実現、記録の容易さ)の克服を可能にする積 層(スタック)構造媒体の提案を試みた。すなわち、TiO2 添加媒体の磁気的な分離構造に加え、孤立性 の高まった粒子間に若干の交換結合を制御性良く導入するため高ガス圧スパッタリングによるCo-Pt膜 を用いた積層構造を検討している。

(2)

Chapter 2

* room temperature

& high gas pressure deposition

* Nb addition & high temperature deposition

Chapter 3

* role of intermediate layer

* stacked intermediate layer Chapter 4

* Co-Pt high K

u

material

* Oxide(TiO

2

) addition Proposals

Control factors

P

Ar

T

sub

thickness Process

Sub. material Lattice matching Structure

composition Material

additives

Performances Crystallography

crystallinity orientation Granularity

boundary distribution grain size

Magnetic property

M

s

, H

k

, H

c

, α, ...

mag. isolation

* S/N (low noise)

* Thermal stability

* Write-ability Recording performance

* Low noise

* Resolution

Chapter 2

* room temperature

& high gas pressure deposition

* Nb addition & high temperature deposition

Chapter 2

* room temperature

& high gas pressure deposition

* Nb addition & high temperature deposition

Chapter 3

* role of intermediate layer

* stacked intermediate layer Chapter 3

* role of intermediate layer

* stacked intermediate layer Chapter 4

* Co-Pt high K

u

material

* Oxide(TiO

2

) addition Chapter 4

* Co-Pt high K

u

material

* Oxide(TiO

2

) addition Proposals

Control factors

P

Ar

T

sub

thickness Process

Sub. material Lattice matching Structure

composition Material

additives

Performances Crystallography

crystallinity orientation Granularity

boundary distribution grain size

Magnetic property

M

s

, H

k

, H

c

, α, ...

mag. isolation

* S/N (low noise)

* Thermal stability

* Write-ability Recording performance

* Low noise

* Resolution

Control factors

P

Ar

T

sub

thickness Process

Sub. material Lattice matching Structure

composition Material

additives Control factors

P

Ar

T

sub

thickness Process

P

Ar

T

sub

thickness Process

Sub. material Lattice matching Structure

Sub. material Lattice matching Structure

composition Material

additives composition

Material

additives

Performances Crystallography

crystallinity orientation Granularity

boundary distribution grain size

Magnetic property

M

s

, H

k

, H

c

, α, ...

mag. isolation

* S/N (low noise)

* Thermal stability

* Write-ability Recording performance

* Low noise

* Resolution

Performances Crystallography

crystallinity orientation Crystallography

crystallinity orientation Granularity

boundary distribution grain size

Granularity

boundary distribution grain size

Magnetic property

M

s

, H

k

, H

c

, α, ...

mag. isolation Magnetic property

M

s

, H

k

, H

c

, α, ...

mag. isolation

* S/N (low noise)

* Thermal stability

* Write-ability Recording performance

* Low noise

* Resolution

* S/N (low noise)

* Thermal stability

* Write-ability Recording performance

* Low noise

* Resolution

Fig. 4-1 Contents of the Chapter 4 of “Development of Co-Pt-Cr Thin Films for High Density Perpendicular Magnetic Recording Media by Controlling Film Microstructure.”

(3)

4.2 高異方性Co-Pt膜と酸化物グラニュラ膜の特性(これまでの研究)

4.2.1 Co-Ptの材料物性と磁気記録媒体への応用

Co-Pt の材料としての物性が他の材料と比べてどのような位置づけにあるのかについては、いくつか

の報告がある。Fig. 4-2にはT. Suzukiらが報告した磁気異方性エネルギと飽和磁化の値をプロットした 図[1]に一部データを付け加えたものを示す。図中の斜めの線は

Ku=2πMs

2 (式4-1) であり、一軸磁気異方性エネルギ(Ku)が静磁エネルギ(2πMs

2)より大きくなることが、その材料が垂直磁

気異方性を安定に保つための最低条件となるため、これより上側にある材料がこの条件を満足するもの である。これまで検討してきた Co-Cr 系材料も、図中にあるように組成や作製条件、添加元素などを選 ぶことにより垂直磁気異方性を示す範囲が存在するので、当初から垂直記録媒体として研究されてき た。しかし、その範囲は(式4-1)で示す直線より若干上側に存在するにすぎず、さらにKuの絶対値として

も高々3x106 erg/cm3程度であることから、将来の記録媒体に要求される値としては小さい。

また、最近提案されている永久磁石材料のSm-CoやNd-Fe-Bなどの材料では、(式4-1)よりかなり上 側(>4x107 erg/cm3)にあることから、熱安定性にも優れた材料であることが分かり、次世代高密度垂直記 録媒体の有力な候補材料であることは確かであるが、第 1 章でも述べたように、その成膜プロセスの困 難さや媒体ノイズの大きさ、耐腐食性が弱いなどの問題がある。

さらに最近様々な観点から多くの研究者により検討が進められている規則合金である L10 構造の Fe-Ptも(式4-1)より上側にあり、その大きな磁気異方性(>6x107 erg/cm3)から4 nm程度の粒子でも熱的 に安定に存在することが確認されている。しかしながらこの材料も成膜プロセスの困難さや媒体ノイズの 大きさなどの課題がある。

人工格子膜である Co/Pt や Co/Pdなどは主にそれぞれの膜厚やその比率、添加物等によりさまざま な磁気特性を有し、高密度記録媒体としてもFig. 4-2に示すように幅広い実現領域を持っているが、全 体としてはMsが小さいこと、膜面内方向の磁気的な結合が強いために媒体ノイズが大きいという欠点の あることも分かっている。

これらに対し、これまで Co-Pt 薄膜は古くは光磁気記録媒体用材料として研究されてきており(1975

年: [2])、室温作製においても厚いPt下地を用いることで高い垂直磁気異方性を得た報告があり(1993

(4)

る1対 1(equi-atom)付近の組成のCo-Pt[5]、およびHcが最大となるCo3Pt付近の組成[6]を用いること

が多い。equi-atomの組成では、Fe-Ptと同様に規則化のためのプロセスの困難さ(高温作製)があるが、

同じ規則化度であればむしろFe-PtよりHcが高いという報告もある[7]。これに対して、Co3Ptの組成付近 では、高い基板温度は必要であるが、この二元系で磁気異方性エネルギが最大になること、および Al2O3(00.1)基板上で 1.5x107 erg/cm3の高い垂直磁気異方性エネルギを有することが報告された[8]。 この時、MgO(111)上での加熱成膜(300 ℃)において、CoPtとCoの規則構造が確認されている。

本研究では、以上のことを踏まえ、Co3Pt組成付近のCo-Pt膜について検討を行なった。

Table 4-1にはD. Wellerらが示した、さまざまな薄膜材料の磁気的なパラメータを示す[9]。Co3Pt膜 では

Ku: 2.0x107 erg/cm3 Ms: 1100 emu/cm3

単磁区となる粒子径: 210 nm

強磁性体として安定に存在する粒子径: 4.8 nm

であることが分かる。さらに前に述べたように、厚いPt下地を用いることで室温作製においても高い垂直 磁気異方性を得たという報告があり[3]、最近もCo3Pt付近の組成において、室温作製で1x107 erg/cm3 以上の高い磁気異方性を有するという薄膜が報告されている(2004 年: [10])。これによると Ru 下地層 からのヘテロエピタキシャル成長、結晶配向性の向上などが高磁気異方性発現のカギとなっている。い ずれにしろ、室温作製でも高い磁気異方性エネルギが得られる点は、記録媒体の量産にとっても極め て有利な条件であり、L10型とは異なるCo3Pt膜の大きな特徴の一つである。

(5)

K

u

=2πM

s2

SmCo

5

CoPt YCo

5

MnBi

SrO

MnAl

6Fe2O3

Co

Fe M

s

(emu/cm

3

)

2πM

s2

(erg/cm

3

)

10

5

10

6

10

7

10

8

10

5

10

6

10

7

10

8

10

9

200 500 1000

Co-Cr

BaO

6Fe2O3

Nd

2

Fe

14

B Sm

2

Co

17

Sm

2

Fe

17

N

3

FePt

CoFe2O4

Fe3O4

CoFe2O4・Fe3O4

SmCo

5

SmCo

5

Sm

2

Co

17

Sm

2

Co

17

FePt FePt Co/Pd(Pt)

Co/Pd(Pt)

Co-Cr Co-Cr

Co-Pt Co-Pt

K

u

=2πM

s2

SmCo

5

t YCo

5

MnBi

SrO

MnAl

6Fe2O3

Co

Fe M

s

(emu/cm

3

)

2πM

s2

(erg/cm

3

)

CoP

10

5

10

6

10

7

10

8

10

5

10

6

10

7

10

8

10

9

200 500 1000

Co-Cr

BaO

6Fe2O3

Nd

2

Fe

14

B Sm

2

Co

17

Sm

2

Fe

17

N

3

FePt

CoFe2O4

Fe3O4

CoFe2O4・Fe3O4

SmCo

5

SmCo

5

Sm

2

Co

17

Sm

2

Co

17

Co/Pd(Pt) FePt

Co/Pd(Pt) Co/Pd(Pt) FePt Co/Pd(Pt)

K

u

(er g /c m

3

)

Co-Cr Co-Cr

Co-Pt Co-Pt

Co-Cr Co-Cr

Co-Pt Co-Pt

(Original diagram is appeared in [1])

Fig. 4-2 Magnetic property map for perpendicular recording medium materials.

(6)

Table 4-1 Magnetic parameters of high magnetic anisotropy materials for high density magnetic recording media [9]

Fig. 4-3 Binary phase diagram of Co-Pt material [4].

(7)

4.2.2 酸化物グラニュラ媒体のこれまでの研究

一方、より微細な偏析構造の実現を目指し、Co 系記録層に酸化物などの非磁性成分を添加する試 みも以前から行なわれている。

長手媒体においては 1990 年代の初めから、Co-Pt-Cr 系媒体に添加物として非磁性金属系材料で はなく、さまざまな酸化物(1992年: [11])を用いた媒体が検討され、その中では、ZrOx(1995年: [12])、 SiO2(1996年: [13])、AlOx(1999年: [14])などが提案された。一例として、K. R. Coffeyら[12]はCo-Ptと ZrOをコスパッタ法で作製した薄膜(ZrOx: 20 vol.%)においては、700 ℃の加熱後でもCoPt結晶粒子 の肥大化が起きず、粒径5 nmの粒子がL10相でできており、ZrOがCoPtに混合しないために微細偏 析しているとの報告をしている。また垂直記録媒体においてはさらに早く、1984年にはCoOを添加した 媒体についての報告がある[15, 16]。また、T. HikosakaらはCo-Ptターゲットをスパッタする際にArに酸 素を加えて成膜することで、磁気特性の向上を図っている(1994年: [17])。さらにS. OikawaらはCoPtCr ターゲットを用いて成膜する際に少量の酸素を添加してスパッタすることで、またRu下地層を用いること で、酸素リッチな粒界に囲まれた偏析構造が形成され、これにより SN 比の向上と急峻な磁化ループが 実現すると報告している(2001年: [18])。そしてT. OikawaらによってCoCrPtにSiO2を添加する酸化 物添加垂直磁気記録媒体が報告された(2002年: [19])。

これらに共通することは、それまでCo-Cr系媒体にTaやB、Nbなどを添加して、Crの微細偏析を促 進する(2.4 節)という、いわば金相学的な手法を取っていたのに対し、酸化物添加や酸素添加スパッタ においては、強磁性相である Co-Pt(-Cr)の微細析出をより効果的に促進するために、金属ではなく、よ り安定と考えられる酸化物を用いるか、成膜時の酸素添加により酸化物を強磁性相の周囲に形成して いる点にある。

(8)

4.3 スパッタガス圧、下地層による室温作製Co-Pt高異方性膜の微細構造制御

4.3.1 下地層制御による磁気特性と結晶配向性 [20]

本検討においてより実用的な垂直記録媒体作製のために、第 2 章で述べた室温・高ガス圧力スパッ タ法と第 3 章で述べた中間層(下地層)制御による記録層の微細構造制御手法を合わせ用いて Co-Pt 薄膜の作製を行なった。Co-Pt 膜は 4.2.1 項で述べた、この合金で磁気異方性エネルギが最大になる Co3Ptに近いCo80-Pt20 (at%)のターゲットを用いてスパッタ成膜した。

第 3 章で述べたように、記録層を成膜する直前の下地層の状態を制御することは、記録層の膜構造、

磁気特性を制御する上で非常に重要な要因となる。そこで、Co-Pt 膜の特性を引き出すためにも下地 層による制御が重要であると考え、いくつかの下地材料の候補について検討を行なった。Co-Cr 系材 料と同様、Co-Pt 膜においても HCP 構造を取ることで大きな一軸磁気異方性を付与できるので、3.2.2 項の中間層選択の指針(a)により、下地材料として HCP構造を有するTi 及びFCC構造を有する Ptと Auについて検討した。なお、全ての成膜は基板加熱せずに行なった。

それぞれの下地層は0.5 Pa程度の低ガス圧力で0-100 nm堆積し、記録層であるCo-Pt膜の作製で は、分離構造を形成させるために成膜ガス圧を7 Paと比較的高い圧力で、また膜厚を15 nmと固定し た。磁気特性はVSM(振動試料型磁力計)で垂直抗磁力(Hc⊥)を測定した。その結果、Fig. 4-4に示す ように、全ての下地材料が厚くなるにつれ、Hc⊥はいったん低下した後増加する傾向が見られるが、Pt下 地層の場合に最も大きな値が得られた[20]。これは FCC-Pt の最近接元素の間隔が HCP-Co のそれと 最も近い、すなわち格子のミスマッチングが最も少ないためと考えられる。ちなみにFig. 4-4内にそれぞ れの元素のHCP-Coに対するミスマッチングの値を示す。

次に結晶配向性と結晶粒子の分離を目的として、Co-Pt膜を高ガス圧力で作製するだけではなく、下 地層においても記録層の分離構造を促進させるために Pt 下地層を分割して、初めに低ガス圧力(ここ

では0.3Pa)、その後高ガス圧力(7 Pa)で作製した。Fig. 4-5に示すのは、初めに堆積した低ガス圧力作

製 Pt 層の膜厚に対する Co-Pt 膜の Hc⊥とそれぞれの結晶配向性(Δθ50)を示す[20]。この膜厚範囲 (0-100 nm)においては、Pt膜厚が厚くなるにつれ、Pt(111)とCo-Pt(00.2)ピークのΔθ50は小さくなって結 晶配向性が向上していること、また Hc⊥は高くなっていることが分かる。よって Co-HCPの結晶配向性は

Pt-FCCの結晶配向性に従い同様な傾向を示し、ヘテロエピタキシャル成長をしていることが分かる。

しかしながら、Pt下地層を100 nm成膜しても結晶配向性は7 deg程度とまだ十分な値ではない。そ こで、さらに Pt 膜の結晶配向性を向上させるために、Pt 膜とヘテロエピタキシャル成長の関係にある Co-Cr膜(非磁性の組成であるCo65-Cr35 (at%)、以下非磁性CoCrと記す)をシード層として用いることに

(9)

した。その結果、Fig. 4-6に示すように非磁性CoCr膜はわずか2 nmという極薄い膜厚領域で磁気特 性ならびに結晶配向性に大きな効果を示すことが明らかになった[20]。さらに非磁性CoCr膜を4ないし 5 nm 堆積することにより、磁気特性と結晶配向性が急激に変化する。すなわち結晶配向性が劣化し、

Hc⊥が低下する。このことはヘテロエピタキシャル成長とはなっていないことを示している。すなわち、非 磁性 CoCr 上の Pt 膜はヘテロエピタキシャル関係にないことになる。3.4 節で述べたように Pt 膜上の

Co-Cr 系記録層は、ヘテロエピタキシャル関係にあるので、それぞれの組み合わせにおいて逆の場合

には成り立たないことがある。これは格子定数が近いだけではなく、その大小関係と成膜順序なども関 係していることも考えられる。2 nm程度の極薄い非磁性CoCr膜は連続膜になる直前の状態と考えられ、

Futamotoらの報告のように[21]、その表面短距離秩序や微結晶性がPt膜の高結晶配向成長に有利に

働いたと推測される。

Co-Pt 膜直下の下地層として、ここまでは Pt 層を用いたが、他にも下地層の候補としていくつかの材

料について検討した。ここでは再度3.2.2項の中間層選択の指針(a)に従い、FCC構造を有するPdおよ びHCP構造のRuについて調べた。またBCC構造を有するTaおよびCrについても同時に検討した。

その結果、Pd層やRu層ではPt層と同様な結果が得られたが、Ta層やCr層では効果がなかった。こ こでも中間層選択の指針通りの結果となった。

以上の検討を踏まえ、これ以降4.3節においてはCo-Pt記録層の下地層の条件として Pt(7 Pa, 5 nm)/Pt(0.3 Pa, 5 nm)/non-mag. Co-Cr(2 nm)/substrate

を用いることにする。

(10)

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

0 20 40 60 80 100 120 Thickness (underlayer) [nm]

Au

Ti Pt

Co-Pt (15 nm) Co-Pt (15 nm) Under layer ( δ nm) Under layer ( δ nm)

Pt -11.12 % Ti -18.19 % Au -15.50 %

lattice mismatching to Co Pt -11.12 %

Ti -18.19 % Au -15.50 %

lattice mismatching to Co Pt -11.12 %

Ti -18.19 % Au -15.50 %

Fig. 4-4 Underlayer thickness dependence of Hc for Co-Pt film deposited at 7 Pa. Underlayers are deposited at 0.5 Pa [20].

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

0 5 10 15 20 25 30

0 20 40 60 80 100 120 Thickness (first Pt layer) [nm]

Hc⊥

Δθ50 ●:Co-hcp(00.2) ▲:Pt-fcc(111)

Co-Pt (15 nm) Pt layer (7 Pa, 5 nm)

Co-Pt (15 nm) Pt layer (7 Pa, 5 nm) Pt layer (0.3 Pa, δ nm) Pt layer (0.3 Pa, δ nm)

Fig. 4-5 1st Pt underlayer thickness dependence of Hc for and crystal orientation (Δθ50) for Co-Pt-HCP(00.2) and Pt under layer FCC(111) [20].

(11)

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

0 5 10 15 20 25 30

0 2 4 6 8 10 12

Thickness (non-mag Co-Cr) [nm]

Hc⊥

Co-Pt (15 nm) Pt layer (7 Pa, 5 nm)

Co-Cr

35

layer ( δ nm) Pt layer (0.3 Pa, 5 nm)

Δθ50

50

●:Co-hcp(00.2)

▲:Pt-fcc(111)

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

0 5 10 15 20 25 30

0 2 4 6 8 10 12

Thickness (non-mag Co-Cr) [nm]

Hc⊥

Co-Pt (15 nm) Pt layer (7 Pa, 5 nm)

Co-Cr

35

layer ( δ nm) Pt layer (0.3 Pa, 5 nm)

Co-Pt (15 nm) Pt layer (7 Pa, 5 nm)

Co-Cr

35

layer ( δ nm) Pt layer (0.3 Pa, 5 nm)

Δθ50

50

●:Co-hcp(00.2)

▲:Pt-fcc(111)

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

0 5 10 15 20 25 30

0 2 4 6 8 10 12

Thickness (non-mag Co-Cr) [nm]

Hc⊥

Δθ50

50

●:Co-hcp(00.2)

▲:Pt-fcc(111)

Fig. 4-6 Dependence of Hc and crystal orientation (Δθ50) of Co and Pt on non-mag Co-Cr seed layer thickness [20].

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

Pd

Co-Pt (15 nm) Under layer (7 Pa, δ nm)

Co-Cr

35

layer (2 nm) Pt layer (0.3 Pa, 5 nm)

Thickness (underlayer) [nm]

Pt Ru

Cr Ta

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

Pd

Co-Pt (15 nm) Under layer (7 Pa, δ nm)

Co-Cr

35

layer (2 nm) Pt layer (0.3 Pa, 5 nm)

Co-Pt (15 nm) Under layer (7 Pa, δ nm)

Co-Cr

35

layer (2 nm) Pt layer (0.3 Pa, 5 nm)

Thickness (underlayer) [nm]

Pt Ru

Cr Ta

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

Pd Ru

Thickness (underlayer) [nm]

Pt

Cr Ta

Fig. 4-7 Dependence of Hc on underlayer thickness for various kinds of underlayer materials [20].

(12)

4.3.2 Co-Pt層制御による磁気特性と結晶配向性 [22]

記録層を制御する下地層の成膜条件が決まったので、次に記録層そのもののプロセスパラメータを 制御することで、記録層の性能向上を検討する。もちろんここでも基板温度は加熱なしの室温とした。

記録層の成膜ガス圧力を変化させた結果を Fig. 4-8に示す[22]。この図にはHc⊥と同時に記録層お よび下地層として用いたPt層の結晶配向性(Δθ50)も示している。Δθ50を載せたのは2.3.3項で述べたよ うに下地層からのヘテロエピタキシャル成長するために結晶配向性が重要だからである。Co-Cr 系垂直 磁気記録膜における高ガス圧力作製では、本図より高い数10 Paのガス圧力でその効果が見られてい るが[23]、Co-Pt薄膜では10 Pa前後で磁気特性向上の効果が現れている。Fig. 4-9には個別のKerr ループを示す[22]。1 Pa程度の比較的低ガス圧力で作製した場合には、Hc⊥が500 Oe程度と小さかっ たのに対し、10 Pa前後で6 kOe近い非常に大きなHc⊥となっており、さらにこれと同時にHnも大きくなっ ている。このことは垂直磁気記録媒体の熱安定性を確保する意味で重要な結果である。さらに成膜ガ ス圧力を50 Paと高くするとHc⊥は急激に低下する。

Fig. 4-8より下地であるPt層のFCC(111)の結晶配向性(Δθ50)はすべての試料でおおむね4 deg.程 度と良好な値を示しており、その上に堆積したCo-Pt膜のHCP(00.2)のΔθ50も低ガス圧力作製では、同 程度の良好な値であった。Co-Pt膜のΔθ50の値は成膜ガス圧力が高くなるにつれ次第に大きく、結晶配 向性が劣化する方向になっているものの、20 Paでの成膜においても5.5 deg.と比較的良好な値となっ ている。これは、2.3.3 項で述べたように本来結晶配向性の良くない条件である高ガス圧力スパッタにお いても、ここではCo-Pt層の膜厚が15 nmと薄いため下地層からのヘテロエピタキシャル成長の効果が 持続しているためである。ただし50 Paもの高ガス圧力になると、さすがに下地層の効果は利かなくなり、

Co-Pt 膜のX 線回折ピーク強度は極端に小さくなる。すなわちCo-Pt 膜はその結晶配向性を維持でき

なくなる。これはFig. 4-10に示すように、高ガス圧力スパッタ膜においては相対的に Pt 量が増えてくる ために FCC 相が生成しやすくなり、HCP 相との結晶が混在することにより結晶粒子の極端な微細化が 起こり、ピーク強度が小さくなったことが磁気異方性劣化の一つの原因と考えられる。このため熱擾乱の 影響を受け、Hc⊥が低下したものと考えられる。

垂直抗磁力以外の磁気特性をまとめて Fig. 4-11 に示す[22]。低ガス圧力作製試料では、Hcは小さ いが、磁気異方性は10 erg/cm3を越えるような大きな値となっており、従来高温で作製して達成されて いた値にほぼ近くなっている。これは結晶配向性が優れているためと考えられる。また飽和磁化もCo3Pt

のバルク(1100 emu/cm3)に近い値となっている。このように下地層の制御を行なうことで、室温作製にお

いても優れた磁気特性を得ることができることが明らかになった。ガス圧力を高くするにつれ、飽和磁化

(13)

の値も磁気異方性エネルギも低下してくるが、10 Pa 程度の高い圧力での作製試料においても、Ms: 750 emu/cm3、Ku: 6x106 erg/cm3と大きな値となっている。同時に磁化ループの傾きを示すαの値[24]も 低ガス圧力(1 Pa)作製膜の10程度から高ガス圧力(10 Pa)作製膜の2程度まで急激に減少した。ただし、

後で述べるように(4.3.3.項)高ガス圧力作製膜は結晶粒子の磁気的な分離が進んでいるが、まだ十分 ではないことが明らかになった。2.4 節でも述べたように完全に磁気的な分離が達成されると、すなわち 理想的な低ノイズ媒体の場合には、この値が1になる。なお、Fig. 4-11に示す磁化ループの傾き(α)は

Fig. 2-20 において定義した値を(1/4π)で規格化した値となっている。また、これらの値は微細構造が示

すような空隙部分(次項参照)の補正をしていない膜全体の値であるため、結晶粒子そのものの磁気異 方性、飽和磁化は、ともにさらに大きな値であると考えられる。

(14)

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

0 2 4 6 8 10 12

0.5 1 10 100

Sputtering gas pressure (Co-Pt) [Pa]

Δθ50

●:Co-hcp (00.2)

▲:Pt-fcc(111) Hc⊥

Fig. 4-8 Dependence of Hc and crystal orientation (Δθ50) for Co-Pt films on sputtering gas pressure.

Film structure is Co-Pt(x Pa, 15 nm)/Pt(7 Pa, 5 nm)/Pt(0.2 Pa, 5nm)/non-mag. Co-Cr(2 nm) [22].

-300 -200 -100 0 100 200 300

-15 -10 -5 0 5 10 15 H [kOe]

1 Pa3 Pa 5 Pa7 Pa 10 Pa 20 Pa

Fig. 4-9 Kerr loops for Co-Pt films deposited at various kinds of Ar gas pressure. Film structure is the same with that designated in Fig. 4-8 [22].

(15)

0 20 40 60 80 100

0.1 1 10 50

Sputtering gas pressure [Pa]

Co m p os itio n [a t% ]

Co

Pt

Fig. 4-10 Composition of Co and Pt in Co-Pt films deposited at various kinds of Ar gas pressure measures by X-ray photoelectron spectroscopy.

0 500 1000 1500 2000

0 5 10 15 20

0.5 1 10 100

Ms Ku α

Sputtering gas pressure [Pa]

Fig. 4-11 Dependences of magnetic properties (Ms, α and Ku) for Co-Pt films on sputtering gas pressure. Film structure is the same with that designated in the figure caption in Fig. 4-8 [22].

(16)

4.3.3 薄膜微細構造 [22]

このようなCo-Pt膜の断面TEM写真をFig. 4-12に示す[22]。1 Paという低ガス圧力で作製した試料

では、Co-Pt 層が膜厚方向にも面内方向にも連続的に成長していることが分かる(Fig. 4-12(a))。これに

対して、高ガス圧力である7 Paや10 Paで作製した試料においては、Co-Pt膜がPt下地層の上で面内 方向には比較的良好な物理的分離構造を形成しており(Fig. 4-12(b), (c))、ちょうど2.3.2項で述べたよ

うにCo-Cr膜の高ガス圧力作製試料の断面写真(Fig. 2-8)と類似の構造になっている。ここで、粒と粒の

間は空隙になっているようにも、低密度の物質が充填されているようにも見えるが、詳細は明らかではな い。結晶粒子の面内方向(横方向)の大きさはおおむね6-10 nmとなっており、2.3.2項で述べたように高 ガス圧力作製での平均自由工程以下の Ar ガスによる衝突によって、運動エネルギが低下した飛来ス パッタリング粒子の基板上での低移動度と、シャドウイング効果によりもたらされた微粒子構造といえる。

微細構造をさらに詳しく調べるために、X 線光電子分光(XPS)を用いて、これらの試料を分析した。

XPS の分析前に、装置内(真空中)でそれぞれの試料を膜厚方向の約半分だけ Arイオンでエッチング し、その後XPS分析を行なった。その結果、Fig. 4-13に示すようにCo-2pのスペクトルには、1 Pa作製 膜、7 Pa 作製膜にほとんど違いは見られなかった。すなわち Co元素は金属のスペクトルのみが検出さ れ、酸化物状態でのスペクトルが検出されなかったことから、金属状態で存在していることが分かる。一 方 O-1s のスペクトルからは両試料に大きな違いが見られた(Fig. 4-14)。すなわち高ガス圧力作製の試 料からは酸素が検出されたが、低ガス圧力作製試料から酸素は検出されなかった。高ガス圧作製の試 料では、粒界に酸素がトラップされていると考えられるが、どのような形で存在するのかについては、分 かっていない。いずれこの明瞭な結晶粒界によって Co-Pt 強磁性相が分離していることは容易に想像 できる。しかしながら、Fig. 4-15に示す平面TEM像からも分かるように、7 Paで作製したCo-Ptにおい ても結晶粒界が物理的に完全に分離されているようには見えず、いたるところで結晶粒同士がつながっ ていたり、極端に粒界が狭くなったりしている様子が見られる。このために磁気的な分離構造はまだ完 全ではないと考えられ、磁気的な分離構造を制御性良く形成するためには、さらに他の要素を加える必 要があることが示唆される結果である。

(17)

Co-Pt (15 nm) Pt (5 nm)/Pt (5 nm) Co-Cr (2 nm)

(a) 1 Pa

Co-Pt (15 nm) Pt (5 nm)/Pt (5 nm) Co-Cr (2 nm)

Co-Pt (15 nm) Pt (5 nm)/Pt (5 nm) Co-Cr (2 nm)

Co-Pt (15 nm) Pt (5 nm)/Pt (5 nm) Co-Cr (2 nm)

(a) 1 Pa

Co-Pt (15 nm) Pt(5 nm)/Pt(5 nm) Co-Cr (2 nm) (b) 7 Pa

Co-Pt (15 nm) Pt(5 nm)/Pt(5 nm) Co-Cr (2 nm) Co-Pt (15 nm) Pt(5 nm)/Pt(5 nm) Co-Cr (2 nm) Co-Pt (15 nm) Pt(5 nm)/Pt(5 nm) Co-Cr (2 nm) (b) 7 Pa

Co-Pt (15 nm) Pt (5 nm)/Pt (5 nm) Co-Cr (2 nm)

(c) 10 Pa

Co-Pt (15 nm) Pt (5 nm)/Pt (5 nm) Co-Cr (2 nm)

Co-Pt (15 nm) Pt (5 nm)/Pt (5 nm) Co-Cr (2 nm)

Co-Pt (15 nm) Pt (5 nm)/Pt (5 nm) Co-Cr (2 nm)

(c) 10 Pa

Fig. 4-12 Cross section TEM images for Co-Pt/Pt/non-mag. Co-Cr films deposited at (a) 1, (b) 7 and (c) 10 Pa [22].

(18)

0 5000 10000 15000 20000

820 800 780 760

(a) 1 Pa (b) 7 Pa

Binding energy [eV]

N(E)/E (arb it rary un it )

Oxide

Co 2p

3/2

Co 2p

1/2

Metal

0 5000 10000 15000 20000

820 800 780 760

(a) 1 Pa (b) 7 Pa

Binding energy [eV]

N(E)/E (arb it rary un it )

Oxide

Co 2p

3/2

Co 2p

1/2

Metal Metal Metal

Fig. 4-13 XPS spectra for Co-2p of Co-Pt films deposited at (a) 1 and (b) 7 Pa [22].

0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000

550 545 540 535 530 525 520

(a) 1 Pa (b) 7 Pa

Binding energy [eV]

N (E )/E (a rb it ra ry un it )

O 1s

Fig. 4-14 XPS spectra of O-1s for Co-Pt films deposited at (a) 1 and (b) 7 Pa [22].

(19)

(a) 1 Pa

(b) 7 Pa

20 nm (a) 1 Pa

(b) 7 Pa

20 nm 20 nm

Fig. 4-15 In-plane TEM images of Co-Pt films deposited at (a) 1 and (b) 7 Pa [22].

(20)

4.3.4 磁化反転機構 [22]

これまで示したCo-Pt薄膜について、その磁化反転機構を調べるために、Fig. 4-15 のTEM写真に 示した1 Paと7 Paのガス圧力で作製した試料について、試料面に対する印加磁場の角度を変えてHc

の角度依存性を測定した。その結果をFig. 4-16に示す[22]。これによると、4.3.3項のTEM 写真からも 想像できるように、1 Pa作製膜では膜面垂直方向に磁場を印加した場合のHcがもっとも低く、角度を面 内に向けていくにつれ、Hc は高くなっていく、いわゆる磁壁移動型の磁化反転機構であることが分かる。

一方、7 Pa で作製した試料では、膜面垂直方向に磁場を印加した際の Hcが最も高く、角度を大きくし て面内に向けていくにつれ、Hcは低下する、すなわちより磁化回転型の磁化反転機構が優勢であると 判断できる。即ち磁気的分離は高ガス圧力での成膜条件によってより促進されたと考えられる。磁気記 録媒体としては、媒体ノイズ低減の観点から磁壁移動に伴う磁気ノイズ発生を抑える意味で、磁化回転 型の磁化反転機構を示す薄膜構造の方が好ましい。したがって、高性能の記録媒体を作製するため には高ガス圧力スパッタリングが有効な手法であることが明らかになった。

以上より、高い垂直磁気異方性エネルギを有するCo-Pt薄膜は高ガス圧力作製において、比較的良 好な物理的分離構造を示し、そのことが磁化回転型の磁化反転機構を有する原因ともなり、低ノイズの 記録媒体としての可能性もあることを明らかにした。一方、低ガス圧力で作製した Co-Pt 膜はその垂直 磁気異方性エネルギの大きさから、また、その均質な連続膜構造から、均一な微細ドットを形成するの に適していると考えられ、次々世代のパターン媒体用のベース材料として利用できるのではないとか考 えられる。実際にこの材料を用いて集束イオンビーム(FIB)によるドット作製を行ない、その磁化反転や 膜構造などを検討している[25]。

本論文ではグラニュラ構造の磁気記録媒体を考えていることから、前者について次節で詳述する。

(21)

Angle

applied field

sample

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 (⊥) Angle [deg] (//)

(b) 7 Pa

(a) 1 Pa

H0/cos(Angle)

Angle

applied field

sample Angle

applied field

sample Angle

applied field

sample

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 (⊥) Angle [deg] (//)

(b) 7 Pa

(a) 1 Pa

H0/cos(Angle)

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 (⊥) Angle [deg] (//)

(b) 7 Pa

(a) 1 Pa

H0/cos(Angle)

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 (⊥) Angle [deg] (//)

(b) 7 Pa

(a) 1 Pa

H0/cos(Angle)

Fig. 4-16 Angular dependence of Hc for Co-Pt films deposited at (a) 1 and (b) 7 Pa [22].

(22)

4.4 酸化物添加による微細構造制御 4.4.1 酸化物添加の指針

高磁気異方性を有する Co-Pt 膜を記録媒体とすることで、熱安定性に優れた媒体を作製することは 可能と考えられるが、課題は微細結晶粒をいかに磁気的に分離できるか、それにより記録分解能の向 上と低ノイズ媒体を実現することである。4.3.3項でも述べたようにCo-Pt膜を高ガス圧力スパッタで作製 しても磁気的な分離構造が完全に実現されているわけではない。そこで磁性粒子のさらなる磁気的孤 立化を促進するために、酸化物添加を検討した。4.2.2 項で述べたように、これまで種々の酸化物添加

がCo-Pr-Cr 系媒体で検討されてきた。しかしながらどの酸化物を添加するかという点については、明確

な指針がなかった。本検討においては、室温スパッタリングとはいえ、固相から気相、そして固相へと、

ターゲットからのスパッタリング粒子はいわば高温プロセスを経たのと同様であるので、スパッタリング後 でも安定な酸化物が存在するかについては熱力学的な指標が必要と考え、標準生成エネルギ(Gibbs の自由エネルギ)に着目して、酸化物選択の指標とした。標準生成エネルギは形成された酸化物を個 別の金属と酸素に分解するために必要なエネルギと解釈される。すなわち、いったん酸化物として形成 された後、どのくらい安定に存在できるかの指標と考えられる。この数字が負に大きいほど安定な酸化 物と言える。実験で用いたいくつかの金属酸化物についての酸素分子 1 個あたりの標準生成エネルギ

をTable 4-2に示す[26]。Co-O生成エネルギに比べ、より大きな値を有する元素ほど、CoOの生成が少

なくなることが予想され、磁化を担う Co-Ptなどの酸化が避けられるとも考えられる。この表によるとMgO、 TiO2、SiO2などが標準生成エネルギの大きな金属として挙げられる。

(23)

Table 4-2 Gibbs free energy of metal oxide materials for magnetic recording media.

Gibbs free energy (ΔG

0

) Oxide

per O2atom

CoO -428.4

NiO -452

Cr

2

O

3

-705.3 Ta

2

O

5

-764.4 B

2

O

3

-795.8

SiO

2

-856.7

TiO

2

-890

MgO -1138.4

[kJ/mol]

Gibbs free energy (ΔG

0

) Oxide

per O2atom

CoO -428.4

NiO -452

Cr

2

O

3

-705.3 Ta

2

O

5

-764.4 B

2

O

3

-795.8

SiO

2

-856.7

TiO

2

-890

MgO -1138.4

[kJ/mol]

(24)

4.4.2 各種酸化物添加による磁気特性への影響

これらの中からTi, Ta, Si, Cr, Mgの各酸化物についてそれぞれのCo-Pt-oxide薄膜を作製した。作 製の方法は、これらの酸化物のペレットをCo-Ptターゲットに乗せてスパッタリングを行なったり、Co-Ptと 酸化物のコンポジットターゲットを使ってスパッタリングしたりすることで行なった。いずれの場合も酸化

物量が 30 vol%程度になるように調整した。下地としては、これまでの検討で実績のある Ru を用いた

(Fig. 4-7)。なお、すべての成膜はいずれの場合も室温、すなわち基板温度を印加しない状態で行ない、

成膜ガス圧力を変えて各種のCo-Pt-oxide薄膜を作製した。膜厚は15 nmに固定した。下地層の膜構 成は全て同じ(Ru/Pt)とし、これも室温作製した。

垂直抗磁力を測定した結果をFig. 4-17(a)に示す[27]。これによるとTi, Ta, Siの各酸化物添加の場 合が比較的大きな Hc⊥を有することが分かる。これに対し、Cr 酸化物や Ni 酸化物(ここには表示してい ない)、MgO を添加した薄膜は全体的に低い Hc⊥であることが分かる。特にこれらの酸化物中最も標準 生成エネルギが大きく、効果が大きいと考えられた MgO 添加膜では磁気的な効果が現れなかった。こ れについては次項で詳述する。MgO 以外の酸化物については、標準生成エネルギとほぼ対応が取れ ており、この指標が予想通りの結果をもたらしていることが明らかになった。特にTiO2添加膜は成膜ガス 圧力7 Pa前後で4 kOeを越える大きなHc⊥を得ていることが分かる。

また、Fig. 4-17(b)に示す磁化ループの傾き(α)についても、最大のHc⊥を取る10 Pa前後でTiO2の傾 きが最も小さくなっていることから、優れた磁気特性を取る領域で磁気的な分離が最も進んでいることが 明らかになった[27]。

したがって、全ての特性が標準生成エネルギによって説明できるわけではないが、この値が Co-Pt 膜 の微細粒子構造と磁気的な分離構造を実現するために添加する酸化物の候補を選定する、重要な指 標のひとつになっていると考えられる。

(25)

0 1000 2000 3000 4000 5000

0.5 1 10 50

Ar gas pressure (Pa)

TiO2

Ta2O5

Cr2O 3 SiO2

MgO

TiO

2

addition:

enhancement of magnetic isolation TiO

2

addition:

enhancement of magnetic isolation 0

5 10 15 20

1 10 100

Ar gas pressure (Pa)

TiO2 Ta2O5

Co-Pt

SiO2

(a) (b)

0 1000 2000 3000 4000 5000

0.5 1 10 50

Ar gas pressure (Pa)

TiO2

Ta2O5

Cr2O 3 SiO2

MgO

TiO

2

addition:

enhancement of 0

5 10 15 20

1 10 100

magnetic isolation TiO

2

addition:

enhancement of magnetic isolation Ar gas pressure (Pa)

TiO2 Ta2O5

Co-Pt

SiO2

(a) (b)

Fig. 4-17 Dependences of (a) perpendicular coercivity (Hc) and (b) M-H loop slope for Co-Pt-oxide films on Ar gas pressure [26].

(26)

4.4.3 酸化物添加膜の微細構造

4.4.2 項で述べたいくつかの Co-Pt-oxide 薄膜について、TiO2がどのような理由で優れた特性を有し

ているのかを、いくつかの観点から検証する。

A. 微細構造の比較

初めに透過型電子顕微鏡による薄膜構造を観察した。試料は TiO2, SiO2 および Ta2O5 を添加した Co-Pt-oxide薄膜である。下地層としてはRu/Ptを用いた。Fig. 4-18に示すように3種類全ての薄膜は それぞれのCo-Ptの平均結晶粒子径が7 nm以下で明瞭な結晶粒界に囲まれたグラニュラ構造をして いることが確認された。このうち Ta2O5添加膜については、成膜ガス圧力が他のふたつの 7 Pa より高い

10 Paであることから、平均粒子径が若干小さくなっているが、基本的な構造について同様であると考え

てよい。これに対し、結晶粒子径の分散は3つの薄膜の中ではTiO2添加膜が最も小さいことがわかる。

ここで分散は結晶粒子径の標準偏差を平均粒子径で割った値と定義している。この分散が小さいとい うことに加え、上述のαが小さく粒子の孤立性が強まったと判断できることを考え合わせると、磁気的なク ラスタサイズも小さいものと予想される。このような場合には、K. Miuraらが指摘しているように[28]、磁化 転移幅が小さく、垂直媒体でのノイズの大きな要因であるジッタノイズを抑制できることになる。

(27)

Ave. dia.: 6.4 nm σ/Ave. dia.: 14.8%

Ave. dia.: 6.4 nm σ/Ave. dia.: 27.3%

Ave. dia.: 5.9 nm σ/Ave. dia.: 24.1%

Ta

2

O

5

SiO

2

grain size (nm)

0 10 20 30 40 50

1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011 12 13 0

0 10 20 30 40 50

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 0

TiO

2

0 10 20 30 40 50

1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011 12 13 0

Frequenc y Fr equenc y Frequenc y

(a)

(b)

(c)

Ave. dia.: 6.4 nm σ/Ave. dia.: 14.8%

Ave. dia.: 6.4 nm σ/Ave. dia.: 27.3%

Ave. dia.: 5.9 nm σ/Ave. dia.: 24.1%

Ta

2

O

5

Ta

2

O

5

SiO

2

SiO

2

grain size (nm)

0 10 20 30 40 50

1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011 12 13

0 0

10 20 30 40 50

1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011 12 13 0

0 10 20 30 40 50

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

0 0

10 20 30 40 50

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 0

TiO

2

TiO

2

0 10 20 30 40 50

1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011 12 13

0 0

10 20 30 40 50

1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011 12 13 0

Frequenc y Fr equenc y Frequenc y

(a)

(b)

(c)

Fig. 4-18 In-plane TEM images and grain size distribution for Co-Pt films with oxide addition of (a) TiO2, (b) SiO2 and (c) Ta2O5 deposited at room temperature. Co-Pt-TiO2 and Co-Pt-SiO2 films were deposited at 7 Pa and Co-Pt-Ta2O5 film was deposited at 10 Pa.

(28)

B. 金属/酸素の存在比率

それぞれの酸化物が記録媒体中でどの程度存在しているかが、微細な強磁性結晶粒子を磁気的に 分離する際の大きな課題となる。そこで、X 線光電子分光(XPS)を用いて各酸化物添加薄膜の組成を 分析した。Fig. 4-19には上記に挙げた6種類の酸化物について、成膜ガス圧力に対しての酸素元素/ 金属元素の存在比を示す。縦軸の 100%の位置が化学量論組成である。実際には後述するように結合 状態が判別できない場合もあるので、たとえばSiO2あるいはSiOになっているというのではなく、膜中に Si元素とO元素がどのくらいの割合で存在するかの値である。グラフで100%の位置より上側にあるほど 酸素リッチな状態、これより下側にあるほど金属リッチな状態であることを示している。

成膜ガス圧力によってこの比は変わるが、図よりNiやTaの酸化物添加では金属リッチな状態になっ ていること、Mgや Cr酸化物添加では酸素リッチな状態になっていることが分かる。また、Ti, Si酸化物 添加ではほぼ化学量論的組成に近いことが分かる。Ta酸化物の場合にはおおむね15 Pa以上の成膜 ガス圧力で化学量論的な組成に近づいている。

Ni酸化物添加では、NiOを構成するだけの酸素原子が足りないために、Ni金属がCo-Ptに入り込ん で磁気異方性の低下をもたらしていると考えられる。

MgO添加の場合には、Mg-O結合に必要とされる量以上のO元素が膜中に存在しており(Fig. 4-20)、

またXPSの結果から、強磁性相を形成するCoの一部が酸化していることが分かっているので、これによ り磁気異方性が低下していると考えられる。また、高ガス圧力作製膜においては相対的に酸化物が多 いため、そのような状態では、後述するように(4.4.3E.項)強磁性結晶粒子の粒径が相対的に小さくなる ことが分かっているので、これにより MgO添加膜の Co-Pt 磁性粒子が微細化しすぎて、熱擾乱の影響 を受け、Hc⊥が低下したとも考えられる。

これらに対し、Ti や Si ではほぼ化学量論的な組成となっていることから、安定な酸化物の形成が達 成されており、これにより磁気的な分離構造が形成されているものと考えられる(実際には少し違うことが 次項で明らかになる)。

Co-Pt-Cr-SiO2の系においても、SiとOの元素比が1対2であることが優れた磁気特性を得る条件で あるという結果を得ており[29]、本検討においても同様であることが分かる。

(29)

100 % --> stoichiometric composition

0 50 100 150 200 250 300

0 5 10 15 20 25

Cr Mg

Si Ta

Ni Ti

Ar gas pressure (Pa)

Oxygen rich

Metal rich 0

50 100 150 200 250 300

0 5 10 15 20 25

Cr Mg

Si Ta

Ni Ti

Ar gas pressure (Pa)

Oxygen rich

Metal rich 0

50 100 150 200 250 300

0 5 10 15 20 25

Cr Mg

Si Ta

Ni Ti

Ar gas pressure (Pa)

Oxygen rich

Metal rich 0

50 100 150 200 250 300

0 5 10 15 20 25

Cr Mg

Si Ta

Ni Ti

Oxygen rich

Metal rich

Ar gas pressure (Pa)

Fig. 4-19 Oxide/metal ratio in Co-Pt films with some kinds of added oxides. A value of 100 % indicates stoichiometric composition for each oxide.

0 20 40 60 80 100

0.1 1 10 50

Sputtering gas pressure [Pa]

Com p o sition [a t% ]

Co Pt O Mg

Fig. 4-20 XPS composition analysis for Co-Pt-MgO films deposited various kinds of Ar gas pressures.

(30)

C. 薄膜中の化学結合状態

実際には薄膜中で金属/酸素の比率よりも、それぞれの金属酸化物がどのような状態で存在している のかが重要な点となる。これを明らかにするために、XPS を用いた分析でスペクトルの形状から酸化度 合いを検討した。

Fig. 4-21にはTi、Si、Taの酸化物を添加した薄膜について、それぞれの成膜ガス圧力を変えて作製

し、そのXPS分析を行なった結果を示す。測定した膜厚は全膜厚(15 nm)のほぼ中央付近である。これ によると、Ta酸化物添加膜[30]においては、低ガス圧力(1 Pa)ではかなりの割合で金属 Taが存在し酸 化物は少ないのに対し、ガス圧力を高くするにしたがって酸化物の割合が多くなり、20 Pa ではほぼす べてが酸化物であることが分かる(Fig. 4-21(c))。Si酸化物添加膜では、実験したスパッタガス圧力の範

囲(0.5-10 Pa)においてほぼ単一のスペクトルから成っているが、これは金属のSiの位置とも酸化物であ

るSiO2の位置とも異なることが分かっている(Fig. 4-21(b))。Ti酸化物添加膜でも、実験したスパッタガス

圧力範囲(1-10 Pa)において酸化物のスペクトルが主となっている。また、Si と同様、金属でも酸化物

(TiO2)でもないピークも見られるが、ガス圧力の増加に伴ってその割合は減少している(Fig. 4-21(c))。 これをFig. 4-17(a)のHc⊥の結果と比べてみると、Ta酸化物については最大のHc⊥が得られるスパッタ ガス圧力(7 Pa)では、Ta 酸化物がかなりできているものの、まだ金属部分もかなり残っていることがわか る。この金属 Ta が Co-Pt 粒子に入っているとすれば、その磁気異方性エネルギの低下をもたらす恐れ がある。

Si 酸化物に関しては、この実験での最大 Hc⊥の得られるスパッタガス圧力ではすでに酸素過剰な状 態に移行しており、化学量論組成とは一致しない。より高い成膜ガス圧力時、すなわち酸素過剰な状 態で粒子の磁気的孤立性の高い領域があることになり、量産時の制御性の幅が狭まることを意味して いる。また、より高いガス圧力作製膜では磁性粒子の酸化も懸念される。

これらに対し、Ti 酸化物については、最大 Hc⊥が得られるスパッタガス圧力(7 Pa)においてはほぼ酸 化物(TiO2)のピークだけになっていることが分かる。すなわち、TiO2添加が粒子の磁気的孤立性の高い 場合と純粋なTiO2の化学量論組成が生成するガス圧力条件が一致している。このことは量産時の制御 の幅が広いことを示唆する結果である。

(31)

0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

480 470 460 450 440

Binding energy [eV]

1 Pa 3 Pa 7 Pa 10 Pa

Ti

2p 3/2 Oxide Metal

0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

480 470 460 450 440

Binding energy [eV]

1 Pa 3 Pa 7 Pa 10 Pa

Ti

2p 3/2 Oxide Metal

0 1 2 3 4 5 6

165 160 155 150 145 140 Binding energy [eV]

0.5 Pa

(x10)

4 Pa 7 Pa 10 Pa

Si

2s Oxide Metal

0 1 2 3 4 5 6

165 160 155 150 145 140 Binding energy [eV]

0.5 Pa

(x10)

4 Pa 7 Pa 10 Pa

Si

2s Oxide Metal

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5

32 30 28 26 24 22 20 18 16 14 Binding energy [eV]

20 Pa 15 Pa 10 Pa 7 Pa 3 Pa 1 Pa Oxide

4f 5/2 4f 7/2

Metal 4f 5/2 4f 7/2

Ta

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5

32 30 28 26 24 22 20 18 16 14 Binding energy [eV]

20 Pa 15 Pa 10 Pa 7 Pa 3 Pa 1 Pa Oxide

4f 5/2 4f 7/2

Metal 4f 5/2 4f 7/2

Ta

(a) (b) (c)

Fig. 4-21 XPS spectra for Co-Pt-oxide ((a) TiO2, (b) SiO2 and (c) Ta2O5) films with various deposition gas pressures. Each figure contains some spectra corresponds to the element as each added oxide.

(32)

D. 膜厚方向の結合状態

次に膜厚方向に関して、この酸化物がどのように存在しているのかを調べるために、高エネルギ分解 能のオージェ電子分光(AES)を用いて分析した。Fig. 4-22にその結果を示す[27]。Fig. 4-21と同様、Ti、 Si、Taそれぞれの酸化物について分析を行なった。ここで、それぞれのグラフには4本のスペクトルを載 せてあるが、それぞれ上から下地層(Ru)との界面付近、極表面層のそれぞれの金属に対応する位置の オージェスペクトル、そして比較のための金属の標準的なスペクトル、および酸化物の標準的なスペクト ルである。

グラニュラ媒体として望ましいのは、記録層がその成長初期から(下地層直上から)強磁性相が酸化 物によって磁気的に分離した構造を有していることである。これにより低ノイズ媒体に必要な微細構造 的な条件がひとつ満たされることになる。このような観点で Fig. 4-22 を見ると、Ta 酸化物添加において は 、Ru 下 地 層 直 上 で は 金 属 と 酸 化 物 が 混 在 し て お り 、 表 面 側 で は ほ ぼ 酸 化 物 の ス ペ ク ト ル (Ta(-O)-LMM)であることが分かる(Fig. 4-22(c))。Si酸化物添加においては、Ru下地層との界面と最表 面側のスペクトルはほぼ同じ形状をしていることが分かるが、前項の XPS 分析と同様、これらのスペクト ルはどちらにおいても、Si-LMMでもSiO2由来のSi(-O)-LMMでもない中間の位置に存在している(Fig.

4-22(b))。

これらに対して、Ti 酸化物添加の場合には(Fig. 4-22(a))、Ru 下地層との界面と最表面側のスペクト ルはほぼ同じ形状をしていることはSi酸化物添加と同様であるが、ピークの位置、形状は参考に示した Ti酸化物のスペクトル(Ti(-O)-LVV)とほぼ一致しており、その成長初期からTi酸化物が形成されており、

磁性膜を構成するCoやPtとの混合が起きておらず、酸化物の粒界析出が理想的に起こっている可能 性があることを示唆している。

シード層の表面酸化状態により、その上に堆積された記録層の結晶粒子径分布が小さくなるという 報告もあり[31]、成長初期から安定な酸化物を形成できるTiO2添加膜がFig. 4-18に示したような均一 性のある結晶粒子形成につながったことが推察できる。

これらの結果より、これら 3 種類の酸化物添加においては、Ti 酸化物の場合のみ、記録層がその成 長初期から酸化物が安定に形成され、磁性膜全体としてその酸化物により磁気的な分離が達成されて いることが明らかになった。

参照

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