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テニスチームの凝集性向上に関する介入効果の検討

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テニスチームの凝集性向上に関する介入効果の検討

著者 石井 幹人, 中野 史彬

出版者 法政大学スポーツ研究センター

雑誌名 法政大学スポーツ研究センター紀要

巻 32

ページ 15‑19

発行年 2014‑03‑31

URL http://doi.org/10.15002/00009625

(2)

緒言

個人競技を主体とするテニス競技においても、団体戦のよ うな集団単位で戦う試合形式が存在する。そのような中で集 団としての活動を円滑にすることが個人の実力発揮にも大き な影響を及ぼすことが予想される。

チーム凝集性とスポーツ活動やパフォーマンスとの関連性 について、これまで数多くの研究が報告されている。そのこ とについて、松田(1980)は、「チームの業績を高めること、

練習効果を上げること、試合で良い成績を収めることなどは、

チームの凝集性やモラールとは切り離すことのできない関係 にある」と述べている。このようなチーム凝集性とパフォー マンスとの関係性について、阿江(1985)は、パフォーマン ス向上の成功の条件として、①勝つことへの執念を持つこと、

②試合に善戦すること、③試合の見通しの的確さの3条件を挙 げている。また、志向性の違いによる凝集性とパフォーマン スとの関係性について、所属・課題による凝集と試合結果と の間に正の相関を表していたことが報告されている。つまり、

このことは対人関係による凝集よりも課題志向による凝集が パフォーマンス向上につながることを意味している。しかし ながら、チーム凝集性の向上が必ずしもパフォーマンス向上 に寄与するわけではないといったことは従来の研究からも報 告されている。

このように、チーム凝集性とパフォーマンスとの間には複 雑な関係性があると考えられるが、チーム凝集性とパフォー マンスとの関連性について詳細に検討することは必要となる であろう。そこで、本研究においては、競技スポーツにおけ るチーム凝集性に焦点づけた心理的介入を試み、集団凝集性 の向上に資する新たな提言を行うことを目的とした実証研究 を行うこととする。

目的

本研究における一つ目の目的は、関東地域に所属する大学生 テニス部員の男子チーム及び女子チームに対し、チーム凝集性 尺度(石井・中澤, 2014)を用いて、それぞれのチーム特徴を明 らかにすることである。また、二つ目の目的として、男子チー ムを介入群、女子チームを比較対象群に設定し、介入群のチー ム凝集性向上を目指した介入効果の検討を行うことである。

方法

調査対象者は、関東地域に所属する大学生テニス部員40名

(平均年齢20.2±1.2歳)とし、男子チームテニス部員23名(平 均年齢20.2±1.3歳)を介入群、女子チームテニス部員17名

(平均年齢20.1±1.1歳)を比較対象群とした。調査時期は、介 入群のチーム凝集性変化及び介入効果の検討を行うため約2ヶ 月の間隔を設け、平成20年7月上旬から9月中旬に実施した。

本研究では、はじめにフェイスシートへの記入により大学 生テニス部員の基本情報を収集した。続いて、信頼性及び妥 当性の確認された5因子40項目からなる「チーム凝集性尺度」

(石井・中澤, 2014)を用いて、介入群及び比較対象群それぞ れのチーム特徴を調査することとした。そして、先のチーム 特徴それぞれに基づき、介入群のチーム凝集性を向上させる 介入方法を決定した上で、2ヶ月間の介入を実施した。

また、先の介入効果の検討を行うために、チーム活動終了 時の振り返りミーティングについて内省報告を得るようにし た。内省報告については、チーム活動終了時の振り返りで挙 がった言葉を本研究者が逐語起こしを行った。

結果

1.チーム凝集性調査用紙のフェイスシート項目によるチーム 特徴

介入群及び比較対象群のチーム特徴について、フェイス シートに記載された事項を用いて、各群の平均値及びt検定を 行った結果を示したものが表1である。その結果、競技月数及 び団体練習時間、チーム目標達成度に関する項目では、それ ぞれ統計的な有意差が認められた(p<.05)。しかし、それ以外 の項目では有意差が認められなかった。したがって、フェイ スシート項目による両群のチーム特徴は類似していることが 明らかとなった。

2.チーム凝集性尺度によるチーム特徴の群間比較

本調査の実施時期は7月上旬の夏期活動時であり、本格的な 試合シーズン前であった。その時期の介入群及び比較対象群 のチーム特徴について、チーム凝集性尺度を用いての検討を 行い、それぞれの因子得点と総合得点の平均を算出し、一要 因分散分析を行った結果を示したものが表2である。

5つの下位尺度因子について、介入群は「チーム親密性」

テニスチームの凝集性向上に関する介入効果の検討

Examination of the intervention effect about the improvement in cohesiveness of a tennis team

石 井 幹 人(宇都宮大学)

Mikito Ishii 中 澤   史(法政大学)

Tadashi Nakazawa

(3)

法政大学スポーツ研究センター紀要

「チーム雰囲気」「チーム効力感」「チーム士気」のそれぞれに、

比較対象群よりも各因子得点が低いことが分かった。また、

t検定を用いて群間の差を比較した結果、統計的に有意差が認 められた因子は「チーム効力感」(t=4.35, df=38, p<.001)、

「チーム士気」(t=2.24, df=38, p<.05)であった。また、「コー チ・リーダー信頼」因子については統計的な有意差が認めら れなかったものの、因子得点は介入群の方が高かった。

3.介入方法の決定

チーム凝集性尺度得点について比較対象群の方がほとんど の因子で高い得点を示し、総合点も高かったことから、比較 対象群は介入群に比べ、チームとしてまとまっていると判断 し た 。 ま た 、5つ の 下 位 尺 度 因 子 の う ち 「 チ ー ム 効 力 感 」

「チーム士気」については統計的な有意差が認められ、比較対 象群の方が有意に高かったことが明らかとなった。そのため、

「チーム効力感」「チーム志気」の両因子が、介入群のチーム 活動に伴う課題であると判断した。そこで、チーム凝集性向 上によるチームのパフォーマンス向上を目指して、夏期2ヶ月 間(7月上旬から9月上旬)に、「チーム効力感」「チーム士気」

のそれぞれを高める介入を行うことに決定した。

「チーム効力感」の質問内容は、「チームが試合に勝とうと する意欲は十分だとは言えない」「われわれのチームは強い」

「チームには粘り強さがある」といった、集団構成に対する自 信や粘り強さなどを表す項目から構成されている。そのため、

介入群の自信や有能感の向上が必要であろうと判断した。ま た、「チーム士気」の質問内容は、「大きな試合になればなる ほど闘志がわいていて、よいプレーをすることができる」「強

くなるためにどんなつらい練習にも耐えられる」「どんなに長 い試合でも、最後まで投げ出すことなく頑張ることができる」

といった、集団の活動に対する意識や勝利意欲などを表す項 目から構成されている。そのため、介入群の練習意欲や勝利 意欲の向上が必要であろうと判断した。そこで、以下に示す 介入法を課題克服に向けたチーム全体としての取り組みとし て設定した。

1)チームの練習終了時において、小規模の振り返りミー ティングを行っていた。その際、「チームとして勝負に勝 てる気がしない」や「チームの雰囲気が悪い」といった消 極的な発言をする者が多くみられた。そのため、「チーム 効力感」や「チーム士気」を向上させる肯定的発言を本研 究者が促し、ポジティブ思考となるよう介入を行った。

2)チームの練習終了時において、個々人がそれぞれに自身 の活動を振り返り、良かった点を自分自身へ語りかけ、自 己効力感を感じるようなセルフトークを用いた。

3)練習終了時だけではなく、チームの指揮者が部員全体に 対して自信や有能感を向上させるような積極的な言葉がけ を行った。同様にして、チームメンバーそれぞれにも個別 に積極的な言葉がけを行った。

4.介入効果の検討

事前調査から夏期2ヶ月の期間を通して、チーム凝集性に関 する再調査を9月上旬に行った。この期間中に、介入群及び比 較対象群の両群とも、チーム練習頻度及び練習時間の増加、

また、夏期チーム合宿や個人戦公式試合である学生大会が行 われた。介入群の介入効果の検討と比較対象群のチーム凝集 表  1    チーム凝集性調査用紙のフェイスシート項目別得点の群間比較  

項目・グループ  介入群 ( N= 23)  比較対 象 群 ( N=17)  t検定  競技月数 

チーム練習頻度  チーム練習時間  自主練習時間  チーム目標達成度 

個人目標達成度  競技重要度  チームメンバー外親密度  チームメンバー内親密度 

90 .87( 41 .79) 

5.02( 0.31) 

17.63( 4.51) 

3.98( 4.37) 

3.23( 0.95) 

3.55( 0.90) 

3.85( 0.97) 

4.37( 1.00) 

4.22( 1.10) 

125.12( 45. 78) 

5.00( 0.00) 

15 .21( 0.79) 

1.71( 1.98) 

3.94( 0.64) 

3.56( 0.86) 

4.00( 0.77) 

4.18( 0.62) 

4.00( 0.59) 

p< .05*  n.s p< .05* 

n.s.

p< .05*  n.s.

n.s.

n.s.

n.s.

注)数値は平均値, ( )内は標準偏差   

表  2    チーム凝集性尺度によるチーム特徴の群間比較  

因子  / 対象群  介入群  ( N=23 ) 比較対象群 ( N= 17 ) t検定 

チーム親密性  チーム雰囲気  コーチ・リーダー信頼 

チーム効力感  チーム士気 

31.9 ( 6.4 ) 27.8 ( 4.3 ) 25.6 ( 5.4 ) 24.2 ( 5.6 ) 27.6 ( 5.2 )

32.5 ( 3.7 ) 30.8 ( 5.9 ) 23.4 ( 7.9 ) 31.9 ( 5.1 ) 31.2 ( 4.3 )

n.s.

n.s.

n.s.

p< .001* * *  p< .05*  チーム凝集性(総合点)  137.1 ( 20.5 ) 149 .7 ( 22 .9 ) n.s.

注)数値は因子得点平均値 ,(    )内は標準偏差 

(4)

性変化を検討するために、チーム凝集性に関する5つの下位尺 度の因子得点と総合点について、2群(介入群;比較対象群)× 2時期(pre;post)の二要因分散分析(df=1/38)を実施した(表 3)。

介入群のチーム凝集性に関して、5つの下位尺度のうち、

「チーム効力感」及び「チーム士気」の二因子に有意差及び交 互作用が認められたことから、図1の通り夏期2ヶ月間の介入 効果があったことが確認された。

また、介入群及び比較対象群のチーム凝集性尺度総合点と、5 つの下位尺度それぞれの変化量について図2に示した。5つの下位 尺度のうち「チーム雰囲気」「チーム効力感」「チーム士気」では、

介入群の方が比較対象群に比べ変化量は高かった。一方、比較対 象群では「チーム親密性」「コーチ・リーダー信頼」が、介入群 に比べ変化量が高かった。また、チーム凝集性尺度変化について 一要因分散分析を行ったところ、尺度全体の総合点に対する変化 量について統計的な有意差は認められなかったものの、「チーム 効力感」因子では5%水準(t=2.22 , p<.05)で有意差が認められた。

5.内省報告およびパフォーマンス評価

夏期の2ヶ月間を通して、両群とも内省報告に変化がみられ、

その内容を表4示した。介入群では「チーム効力感」「チーム 士気」といった下位尺度因子について、チームとしての課題 表  3  2  群× 2  時期分散分析  

チ ー ム 親 密 性  チ ー ム 雰 囲 気  コ ー チ ・ リ ー ダ ー 信 頼  チ ー ム 効力 感  チ ー ム 志 気 チ ー ム 凝 集 性   群 間 の 主効 果 

( 

介入 群 × 比 較 対 象 群 )  0.48( n.s.)  3.12( p < .10)  0.60( n .s.)  13 .01( p < .01)  2.47 ( n.s.)  2.19( n.s.) 

時 期 の 主効 果 

( pre × pos t )  2.14( n.s.)  5.83( p < .05)  17 .74( p < .01)  12 .59( p < .01)  8.67( p < .01)  13 .13( p < .01) 

交 互 作 用  0.72( n.s.)  0.48( n.s.)  1.15( n .s.)  4.91( p < .05)  3.43( p < .10)  0.77( n.s.) 

t s o p e

r p

介入群 

「もっと盛り上がる」 

「部内でもっとまとまるとよい」 

「みんなが練習に対して全力で取り組んで   いない」 

「チームが一つの目標に向かっているよう  な雰囲気にしたい」 

「諦めるのが早い」 

「試合に向けて士気が高まったと思う」 

「チームがまとまってきたのではないかと思う」    

「以前よりも声を出して雰囲気が良くなってい  ると思う」 

「一人ひとりに責任感が生まれ、つらい練習でも  耐えられる雰囲気がある」 

比較  対象群 

「相互情報の共有」 

「もっと色んな人の意見を聞いて欲しい」 

「もっと言いたいことをはっきり言い合  っていきたい」 

「コーチや監督にプレーを教えてもらい   たい」 

「先輩ともしゃべりやすくなって、試合の準備等   つらいことを乗り越え、互いのことが以前よりも    理解できるようになった」  

「一人ひ と りが自分 の 意見を はっ き り言えるよ  うになった」 

「みんなと親密になることができた」 

表4 時系列(pre ;  post)による内省報告 

2 1  2 2  2 3  2 4  2 5  2 6  2 7  2 8  2 9  3 0  3 1  3 2  3 3  3 4  3 5  3 6  3 7  3 8 

p r e  p o s t 

* *  交互作用 :   p   < . 0 5 

1 0  1 2  1 4  1 6 

親 密 性  雰 囲 気  信 頼 感  効 力 感  士 気  凝 集 性 

介 入 群  比 較 対 象 群 

p   <   . 0 5 

* *  p   <  . 0 1  介 入 群 

比 較 対 象 群 

  p   <   . 0 5 

* *  p   <  . 0 1 

図2 チーム凝集性尺度(総合点と5つの下位尺度)変化  図1 「チーム効力感」の2要因分散分析 

(5)

法政大学スポーツ研究センター紀要

点を克服するような介入を行った結果、その効果を表すよう な報告が示され、介入の効果があったことが明らかとなった。

また、比較対象群では「コーチ・リーダー信頼」の下位尺度 因子が介入群と比べ低かったのだが、夏期の2ヶ月間で改善さ れたことが内省報告から示された。

パフォーマンスによる評価に関しては、公式試合のリーグ 戦結果から判断した。介入群はチーム目標である成績を収め られなかったことから、チーム凝集性の向上が必ずしもパ フォーマンスの向上につながるわけではないことが示唆され た。一方の比較対象群においても、チーム目標である成績を 収めることができなかったことから、比較対象群も介入群と 同様に、チーム凝集性の向上がパフォーマンスの向上に対す る直接的な効果を発揮したわけではなかった。

考察

本研究の目的は、チーム凝集性尺度(石井・中澤, 2014)を 用いて、大学生テニスチームのチーム凝集性についての特徴 を明らかにすることであった。そして、先のチーム特徴を明 らかにした後、チーム凝集性向上のための介入効果を検討す ることであった。

はじめに、介入群、比較対象群のそれぞれのチーム特徴に ついて、フェイスシートにおけるほとんどの項目で統計的な 有意差が認められなかったことから、チーム特徴が類似して いることが確認された。ただし、競技月数、団体練習時間、

チーム目標達成度に関しては、それぞれ5%水準で統計的な有 意差が認められた。競技月数に関して、比較対象群の競技経 験が長いことが示されたのは、チーム人数が介入群に比べ少 人数でありながら、ジュニア期からの競技経験者が多いから だと考えられる。介入群にもジュニア期からの競技経験者は 含まれているが、大学から競技を始めた者や大学入学以前の 競技経験が少ない者がチーム内に半数近くいることが影響し ているのではないかと考えられる。

また、チーム凝集性尺度によるチーム特徴については、5つ の下位尺度のうち「チーム効力感」「チーム士気」の二因子に 統計的な有意差が認められた。「チーム効力感」に関しては 0.1%水準で有意差が認められ、介入群のチームに対する自信や 粘り強さといった心理的能力が低いことが示された。このこ とはチーム目標達成度に対して影響を及ぼしており、介入群 は比較対象群よりも目標達成度に対して自信が低くなってお り、統計的にも5%水準で有意差が認められている。比較対象 群の方が、「チーム効力感」や「チーム士気」、そしてチーム 目標に対する自信が高くなっているのは、以前からのチーム 成績が全国大会水準での高い成績を収めたということから、

「チーム効力感」や「チーム士気」といった心理作用を高める 要因となっていることが推測される。ただし、統計的な有意 差は認められなかったものの、「コーチ・リーダー信頼」因子 では介入群の尺度得点の方が高いことが示された。それには、

チーム戦を戦うレギュラーメンバー構成が要因として考えら れる。介入群では、チーム運営に役割のある最高学年が中心

となって構成されている一方で、比較対象群では下級生中心 に構成されていた。したがって、介入群ではチームの運営責 任がある最高学年にレギュラーメンバーが多いことで、リー ダーやチームに対する信頼性を高める要因であったことが考 えられる。

続いて、介入効果の検討として、介入群および比較対象群 のチーム凝集性変化を比較した。介入群では、5つの下位尺度 因子のうち「チーム雰囲気」「コーチ・リーダー信頼」「チー ム効力感」「チーム士気」にそれぞれ統計的に有意な変化が認 められた。介入方法に関しては、「チーム効力感」や「チーム 士気」を上げるため、中込(1994)に従いセルフトークを用 いて、消極的な思考を積極的な思考に変えるような介入を 行った。介入を行う以前の段階では、個々人のチーム活動に 対する消極的な反省や意見が多かった。そのため、練習終了 後に自己の消極的思考を積極的思考に変えるような反省や意 見を述べ、自己効力感を感じることのできるような言葉がけ を行うことが必要な課題として浮かび上がった。

セルフトークを用いたメンタルトレーニングの試みに関して、

Zinsser(1998)は ①技能習得のためのセルフトーク、②悪い 習慣を修正するためのセルフトーク、③現在に注意を向ける セルフトーク、④感情や気分を変えるセルフトーク、⑤努力 を増進させるためのセルフトーク、⑥自己効力感を向上させ るためのセルフトークなどを目的として行っていたことが報 告されている。また、Weinberg(1992)もテニス選手を対象 とした「セルフトークの改善」など、セルフトークを用いた メンタルトレーニングを導入していることを報告している。

このようなことから、本研究でもセルフトークを用いた介 入を実施した結果、「チーム効力感」及び「チーム士気」にお いて、1%水準で有意に向上していることが明らかとなり、こ のことは介入効果があったことが示していると考えられる。

したがって、セルフトークの目的である出来事や状況に対す る見方を変え、肯定的な感情を醸し出し、結果的にパフォー マンスを高めるといった内容が支持されたことを明らかにし ている。また、内省報告による検討でも介入群の「チーム効 力感」や「チーム士気」の向上に関する報告が多かったこと から、介入効果を支持していたことが確認された。したがっ て、介入群ではチームとしての統一感が生まれ、自信や有能 感が増したことにより公式試合に向けての意欲が向上したと 考えられる。一方で、比較対象群のチーム凝集性に関しても、

時系列による検討を行った結果、チーム凝集性尺度全体では 5%水準で有意差があることが確認された。特に、5つの下位尺 度のうち「チーム親密性」は5%水準、「コーチ・リーダー信頼」

は1%水準で統計的な有意差があったことが確認された。比較 対象群がこのような結果となったのは、夏期の2ヶ月間にチー ム練習量が増加し、部員それぞれのコミュニケーションが取 りやすくなったことが考えられる。このようなチームの凝集 性変化を表しているのは、時系列による内省報告からも確認 された。したがって、比較対象群に直接的な介入はなかった ものの、介入群同様に公式試合に向けての意欲が向上したこ

(6)

とと考えられる。

そして本研究においては、介入群のチーム凝集性向上に関 しては認められたが、競技パフォーマンス向上につながると いう支持は得られなかった。阿江(1985)はチームの凝集性 と競技パフォーマンスの関係性について、チームの成功のた めには凝集性の安定と増加の傾向が望ましく、その条件とし て、①「勝つことへの執念を強く持つこと」、②「試合に善戦 すること」、③「試合への見通しの適確さ」が必要であること を述べている。介入群に関しては、「勝つことへの執念」を表 す「チーム効力感」「チーム士気」に対して介入を行い、介入 効果があったことが確認された一方で、パフォーマンス向上 にはつながる結果は得られなかった。そのことは、チームの 凝集性向上が必ずしもパフォーマンス向上につながるわけで はない(Bird, A.M., 1977)といった先行研究と同様の結果が 得られたことが明らかとなった。つまり、チーム凝集性と競 技パフォーマンスの関係性については関係性が認められるも のの、競技パフォーマンス向上の知見が必ずしも得られるわ けではないといった従来の報告と一致する結果が得られた。

従来からの知見を踏まえ、阿江(1985)は、「心理面のみが強 化されても技能が伴わなければチームの成功はありえない。

したがって、技能と凝集性はチームの成功のために互いに関 連をもつものと考えるべきである」と述べている。したがっ て、今後も心理面と技能面の関連性についての研究が必要と されるであろう。本研究ではパフォーマンス評価に関して試 合結果を用いて検討したわけであるが、今後は試合結果によ る評価ではなくパフォーマンススキル(技能)評価が行える ような尺度の開発を行う必要性が考えられる。また、テニス 競技は個人種目であるという競技特性があるがゆえに、チー ムに対する心理的課題はもとより、個々人の活動に対するモ チベーションの問題が多く報告されていた。つまり、チーム の凝集性を向上させるような環境を整えることと並行して、

チームを構成する個々人に対するアプローチも考えなければ ならない。本研究より得られた結果に基づき、運動部指導者 やチーム指揮を担う役割を持つ競技者は、自身のスポーツ活 動を行う現場において集団単位での活動を促進させる方略だ けではなく、個々人に対する心理的アプローチが重要となる。

したがって、スポーツ現場の課題として、集団及び個人の両 面に対する心理的アプローチ方略の考案が必要であると考え られる。

文献

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参照

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