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〈研 究 ノー ト〉
国 際 化 の 中 で の 労 働 ・市 民 的 経 済 政 策 の0考 察
一1989年 春闘 と 日本経 済政 策 の課 題 一
清 水 嘉 治
1.な にを 問題にすべ きなのか
2.内 需拡 大 の論 理 と89・ 春闘の 問題 点
α)国 際化 の中で の 日本経済 の 内需拡 大 の性格 (2)労 働 ・市民主 体の 内需拡 大路線
㈲ 内需拡大 の源 泉 としての 日本型 賃金決 定の メカニズム
=4)89・ 賃金 引 き上げ の要求 とそ の結果 3.労 働時間短縮 の課題
(1)週 休二 日制 と有 給年休20日 の経 済学
② 労働時 間の実態 と問題点 4.今 後の課題
一 労働 ・市民 の経済 政策 の課題一
1.な に を 問 題 に す ぺ き な の か 。
日本 経 済 は,国 際 的 に み て も,国 内的 に み て も,大 き な 転 機 に あ る とい う。 だ が そ の 転 機 の 中 味 は き わ め て あ い ま い で あ る。 世 界 経 済 の 中 で,日 本 経 済 の 役 割 が い か に 大 き くな っ て い るか を,い ま問 わ れ て い る 。 と くに 転 機 とは 何 か が こわ さ れ な け れ ば な ら な い 。
世 界 経 済 の 中 でf日 本 経 済 の 役 割 が 大 き くな っ た こ と を 改 め て 考 え て み よ う。 量 的 な 表 現 で い え ぽs次 の こ とが 日本 経 済 の メ リ ッ トと し て 指 摘 さ れ て い る。 日本 のGNPが,い まや 世 界 全 体 のGNPの12%を しめ て い る こ と,1人 当 りの 所 得 が,1ド ル140円 の 換 算 で,世 界 第1位 に な っ て い
184商 経 論 叢 第25巻 第1号
る こ とs1985年 に,ア メ リ カが 世 界 一 の 債 務 国 家 に な った の に 対 し て,日 本 が 世 界 一 の 債 権 国 家 に な った と い うこ と,さ らに,自 動 車 産 業,先 端 技 術 産 業 の 生 産 力 に お い てs世 界 的 に 優 位 の位 置 に あ る こ と,と くに 先 端 技 術 の分 野 で,ア メ リカ,ECの 力 量 を,抜 い て い る こ と,さ らに 消 費 財 サ 0ビ ス 分 野 に お い て
i抜 群 で あ る とい うこ と,さ らに 日本 独 自の 経 営 と労 働 の 「協 調 性 」 が 他 の 先 進 国 よ り うま くい っ て い る こ と,日 本 の 技 術 者 と 労 働 者 の,そ の 質 が か な り良 い こ とな ど な どが 指 摘 され て い る。
だ が 一 方 で,GNPの 質 は ど うな っ て い る の か,日 本 の 成 長 率 はs世 界 一 流 の 水 準 に な っ て い る が
,日 本 は,公 害 ・環 境 問題 を 解 決 し て い な い の で は な い か,と くに 日本 は,自 動 車 公 害,原 子 力 公 害,ハ イテ ク汚 染s基 地 公 害,食 品 公 害 な どに ど の よ うに 対 応 し て い るの か 。 日本 は 世 界 一 の 債 権 国 家 に な った とい うが,貿 易 黒 字 が,土 地,株 式 投 資s海 外 投 資 に まわ っ て,社 会 資 本 や 生 活 者 の 福 祉 向上 に まわ ら な い 矛 盾 を どの よ うに 解 決 し て い くの か,一 人 当 りの 国 民 所 得 が 世 界 一 に な っ て も,労 働 者,生 活 者 に と っ て は,牛 肉,米 そ の 他 生 活 必 需 品 の 物 価 が,国 際 的 に み て 高 価 格 に あ る こ とを,政 府 は わ か っ て い る の か ど うか 。 さ らに,ユ ネ ス コ憲 章 は 高 等 教 育 費 を す べ て 社 会 的 負 担 で ま か な うべ き で あ る と述 べ て い る に も拘 らず, 高 校,大 学 の 教 育 費 の 負 担 増 を ど うみ る か,さ ら に か な り良 くな っ た と は い え 地 域 環 境 の 劣 悪 性 を ど うす る か。 マ ソ シ ョン な どの 住 宅 費,家 賃 の 高arc1",追わ れ て い る市 民 生 活 を ど うす れ ぽ よい か,さ らに 学 生s年 金 生 活 者 な どの 消 費 税 負 担 を ど うす るか な どの 諸 問 題 が あ る。 日本 経 済 の 一 流 性 は,こ うし た 国 民 生 活 に か か わ る諸 問 題 を 克 服 し て い な い 。 い ま な ぜ 日本 経 済 は 一・流 な の か,を 究 明 す べ き で あ ろ う。 と りわ け 日本 の 大 手 企 業 の 収 益 性 の 増 大 に 対 し て,労 働 者 の賃 金 水 準 が 低 い とい う こ と で あ る。 そ れ ば か りか,日 本 の 労 働 者 の 労 働 時 間 が,米 ・欧 と比 較 して,300〜500時 間 以 上 も長 い と い うこ とは ど うい う こ と な の か 。
こ う した 日本 経 済 大 国 と,日 本 人 生 活 中 小 国 の 矛 盾 を どの よ うに,解 決 す るか が 問 わ れ る べ き で あ ろ う。 こ こ で は,日 本 の 大 手 企 業 の収 益 率 増 大
国 際 化 の 中 で の労 働 ・市 民 的 経 済 政策 の一考 察X85
に対 し てs労 働 者 の賃 金 がい か に低 水 準下 に あ るか を問題 に したい
。 その た めf第 一に,89年 の 春闘 は な にを 問題 に した のか。 第 二 に,先 進 国の 中 で 最大 の 労働 時 間を どの よ うに 短縮 すべ き なのか の 問題 を 問い たい
。 もち ろ ん,そ れ だけ ではな い。 こ うした課題 の 中で87年 末 か ら89年 の 日本経 済 の 「好況 」 の性 格は なん であ った の か。 労働 者 ・市 民主 体 の本 格 的 内需拡 大 とは 何 か。 これ が 市民 的 経済 対 策 の課題 では ない か。 本 格的 内需 拡 大 と 賃金 聞題 とは どの よ うな 関連性 を もってい るのか を問 わ なけれ ば な らない。 最後 に,日 本労 働運 動 と地 域経 済 の 関係 が ど うな ってい るの か を問題 に し て結 び と したい。
こ うした 問題 提 起 にあ た って,確 認 した い こ とが あ る。 私た ち に とって 経 済 掌 とは 何 か。 もち ろん従 来 の経 済理 論 を,ひ とつ ひ とつ現 実 に 適用 す る こ とは で きない であ ろ う。 そ の方 法 に も問題 が あ ろ う。 間題 は,現 実が 突 きつ け る問題 に た えず,ど の よ うに対 応 す るか の 「哲学 」 と現 実 経済 の 矛盾 を どの よ うに 究 明 しsそ の 中 で,ど の よ うに 解決 す る か の 「政策 的」
研究 の課 題 をた えず 示 す こ とにあ る。現実 は,た えず 私 た ち の 「知」の 開拓 を必要 としてい る。 い ま重 要 な課 題 は,「知」 の先 見性 と政策 的創 造 であ る。
2・ 内 需 拡 大 の 論 理 と89・ 春 闘 の 問 題 点 (1)国 際 化 の中 で の 日本経済 の 内需 拡 大 の性 格
日本 経済 は1970年 代 の国 際通 貨危 機 と二 つ の石 油危 機 に 直面 しつ つ,そ うした 危機 に しぶ と く対応 して きた。1980年 代 に 入 って 日本経 済 は70年 代 の危機 に対応 して きた 省 エ ネ政 策s構 造不 況 対 策 な どの問 題 を踏 え て
r積 極 的 な輸 出主導 の政 策 を選 択 して きた。1979年 の 第二 次石 油危 機 以後83年 まで の 日本 経 済 は,長 期 不 況 の中 で,自 らを 支}る 産 業 の体 質 を さま ざ ま な形 で変 え て きた。84年 に 入 って,日 本 経 済 はs大 企 業 を 中心 に着 実 にそ の規 模 の拡 大 をみせ た。 日本経 済 の成 長 率 は,3.9%で あ り,第 一次石 油 危 機 以来 の最 高 水準 であ った。 ア メ リカ経済 ・EC経 済 の景 気後 退 があ っ て もs日 本 経 済は 構造 不 況業 種 の生産 の停 滞 をみ せた がa全 体 とし て成長
186商 経 論 叢 第25巻 第1号
した 。85年 に 入 って,輸 出 も増 加 し,景 気 も拡 大 した。1985年 のr経 済 白 書』 は,「 我 が 国は 自由世 界 第二 位 の 国民 総 生産 と世 界最 大規 模 の海 外純 資 産 を保 有す るに 至 ってい る」 と書 い た。 それ だ け でな く,す でに鉱 工業 生 産 の急 速 な増 加に よって企業 収益 も増 大 した が,労 働 者 の賃 金 は抑 制 さ れ てい た 。この状況 は85年 も一 貫 していた 。さ らに86年 に入 って,世 界経 済 の 問題 は,先 進 資 本 主義 間 の 「不 均衡 」の拡 大に あ った 。と くに世 界 経済 は, ア メ リカの 国際収 支 の大 幅赤 字 と 日本 の 国際収 支黒 字,発 展 途上 国 の借金 の増 大 に基づ く国際 収支 の悪化 の増 大 に直 面 した。 しか しなが ら,日 本 経 済 は,「 急激 な 円高 ・ ドル 安」 の 中 で,産 業 の 「構 造 転換 」を 求め られ た が, 好況 業種 の企業 収益 を増 大 させた。 に も拘 らず,ま た し て も賃 金は 抑 制 さ れ た。86,87年 日本経 済 は,大 幅 な貿 易黒 字基 調 を続 け,外 か ら厳 しい 内 需拡 大 を 求 め られ た。 と くに 日本経 済 は87年 以降,高 い速 度 で,景 気拡 大 を続 け た。88年 に入 る と,前 年 の 「金融 自由化 」 の施 行に よ り先進 国の 国際 投資 家 の東 京へ の 投資 集 中に よ り急速 な 土地 と株 価 の 騰貴 現象 を もた らした。 この結 果88年 に 入 る と,政 府 の土地 政策 は 構造 上 の解 決策 を示 す ことが で きず,「 資 産 市場」 を放任 したた めに,「 資 産家 」 中心 の住 宅需 要 を拡 大 した。 つ ま り 「資産 効果 」 に よる 「土 地 囲い 込み 」 的住 宅 投資 を急 増 させ た。 こ うした 「住 宅投 資」 に基づ く関連 大 手企 業 の設備 投 資 を増大 させた。 そ の結果,大 手 企業 中心 の民 間設 備 投資 のGNPに 対す る比 率 は 20%前 後 に な った。 それ は,中 味 は違 うもの の1960年 代 の高 度成 長 以来 の 数字 で あ る。
経 企庁 発表 の 日本 経済 の 成長 率 は4.9%で あ り,88年 約5.9%で あ り, 財界 の い う 「低 成長 ・我慢 」 の経 済 イデオ ロギー一は,非 現実 的 にな るほ ど
であ った。
1987年 の 日本経済 は,内 需 拡大 に よ る成長 を 軸 に展 開 した。87年 の成 長 率4.9%と い う数 字 は,84年 の成 長 率 に 次 ぐもの で,国 内需要 だけ で6.1
%増 であ り,78年 以来 の伸 び であ った。 と くに 民 間需要 の増 加 率は6.9%
であ った。 こ うした背 景に は,日 本 の輸 出拡大 基調 の政 策 か ら部分 的 内需
国 際 化 の 中で の勝 働 ・市 民 的経 済 政策 の一 考 察187
拡 大策 へ の移 行 のあ らわ れ であ る。 それ は全 体 的に は輸 出拡 大 が続 い てい る ものの,外 需 依 存度 も増 加 した。 さ らに 内需主 導 型成 長増 加 を示 す指 標 は 鉱 工業 生産 の増 大 であ り,前 年 比10%以 上 で あ った。 また 景気 上 昇 の過 程 で,そ れ ぞ れ の 輸 出関連 の 企 業 が,貿 易摩 擦 へ の 自己抑 制を 図 った せ い かaわ ず か な が ら輸 出比率 が低 下 した。 例 えば,自 動 車 な どでは,現 地 生産 増 と国 内市場 開拓へ 経営 方針 を変 更 した 結果,内 需 寄与 度を 高 めた。
だ が 問題 は,内 需 主 導型 経済 の 源 泉 は,勤 労 者 ・市 民 の 個 人 支 出に あ る。 だか ら1988年 度 のr経 済 白書』 も次 の よ うな指 摘 を せ ざ るを え なか っ た。 「内需 の 中心 はGNPの56%を 占 め る個 人 消 費支 出 であ る。 した が っ て 内需 主導 型成 長 の持続 に は,個 人 消 費 の着実 な増 加 が不 可 欠 であ る」 と。
だが,そ の 消費支 出は,可 処 分所 得 が,企 業 の成長 に対 して,き わめ て立 ちお くれ てい る。 もち ろん耐 久 消費財 支 出や レジ ャー支 出は増 大 して い る が,勤 労 者一 般 の 消費支 出は緩 慢 な状 況に あ る。 一・方,内 需拡 大 に基 づ く 景気上 昇の 中 で,目 立 った のは,企 業 収 益 であ る。 例 えぽ 大蔵 省 の 「法人 企 業 統計 季報 」(1987年)に よる と,全 産 業 で,86年 度 に,前 年 比1.3%の 増 益 後,87年 度 は,同32.1%の 増 益 に な った。 な ん と急 上 昇ぶ りであ る。
87年 度 を 業種 別 にみ る と,製 造 業 で は,前 年 比45.6%の 大 幅増 で あ り,非 製造 業 で は63%の 増益 であ る。 規模 別 にみ る と,資 本金 一 慮 円以上 の大 企 業 ではs87年 度 は,前 年 比27.8%の 増益 で あ り,資 本 金一 億 円未 満 の 中 小 企業 で は,同38.4%の 増益 で あ る。 もち ろん大 ・中小 企業 は,そ の 資本 規 模 が異っ てお り,中 小 企業 の 増益 は,比 率 的 には 大 きい が,大 企 業 と比 べ て量 的 には 少 ない とい うこ とが で きる。
一 方,資 本 主体 の設 備投 資 を軸 とす る内需 拡 大に 基づ く景気上 昇は,さ ま ざ まな ひず み を作 り出 してい る。87年 か ら88年 に かけ ての特 徴 は,内 需 拡大 の主体 は,大 企業 で あ るが,同 時 に,消 費支 出の動 向をみ る と,一 般 消 費者 の 可処 分所 得 が上 昇 しな い中 で,大 ・中企 業地 主,大 中の企 業株 主 の 資産 が増 大 し,そ れ らの一 部 が消 費需 要を 支}て い る。 だか ら,前 述 の r経 済 自書』 で も,「 拡 大 す る資産 格差 」 を指摘 した の であ る。
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第1表 所得階層別(株 式)資 産価値 の増大
シェア(%)株式残高保有 1轍皿皿∬V
156年157年158年159剣6・ 年16・ 年162年
6.3 8.1 13.0 19.7 52.9
8.0 9.5 11.2 18.4 52.9
鑑盤』 」
鞭 鞠 雛1・6.3△ 鰯i
株 よ値 価るの上資増 に価昇産大
(兆円)
(備 考)
1猛皿WV一L 45834
0AUハU‑凸3
△0.01 00.02 pO.02 pO.03
△0.10
S.2 8.I x.0.3 2D.8 52.6
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17.9
6膚b7・500
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6.3 s.0 1Z.4 18.3 55.0 47
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年62
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総 務 庁統 計局 「貯 蓄動 向調 査」,経 済 企 画 庁 「国民 経 済計 算 」,東 証 株 価 指数 に よ り作 成 。
が 所 得 階 層 別 に 分 配 さ れ る と想 定 。 3尚,所 得 階 層 別 は 全 世 帯 。
昭 和63年,『 経 済 白 書 』(経 企 庁)よ り。
前 年 末 の株 式 残 高 保 有 シ 甚アに応 じて,翌 年 の株 価上 昇 に よ る資産 価 値 の増 大
〔出所〕
「階 層 別 の資産 保 有 をみ る と,ま ず金 融 資産 に つ い ては,勧 労者 の所 得 階 層 別 でみ て,高 い所 得階 層 ほ ど金融 資産 残 高が 高 くな ってい る。 また, 持 ち家 比 率 も所 得 が 高い ほ ど高 くな ってい る。 所 得階 層 間 の格差 をみ る と, 長 期 的 には40年 代 か ら50年 代?,rti‑一一かけ ておおむ ね緩 か な縮 小傾 向を示 してい
る。 な お近年 の動 向を み る と,50年 代 に比べ わず か な が ら拡 大 してい る。
これ は61,62年 の株 価 の急上 昇s地 価 の高 騰に よる資産 価値 の増大 が一 因 とな って生 じた もの と考 え られ よ う」 と。
消費 者一 般 の需 要拡 大 よ りは,中 高所 得者 の資産 価値 の増大 す なわ ち資 産 効果 の消費需 要 の拡 大 に基 づい て内需 拡大 が87年 の傾 向 であ る。 こ こで, 前 述 のr経 済 白書』 に よって構成 し て み よ う。 そ こ で は 「消費 と資産 効 果 」 の 問題 を資産 価 格 の上 昇や物 価 の下 落 に よ る 資産 価値 の増 大(資 産効 果)が 消費 に与 えた イン パ ク トを 分析 して い る。 そ の結果s資 産 価格 の上 昇が 消費 を 高め てい る とい う点 で あ る。 所 得階 層別 の 消 費支 出(第1表)
国際 化 の中 で の労 働 ・市 民 的経 済 政 策 の一 考 察189
第1図 景 気拡大期 にお ける売上高 ・経 常利益率 ・従業 員数 の変化 (88年1〜6月/87年1〜6月)
%201059876543210嚇%
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羅 ト6月
87年1{り6∫ …ヨ
1〔 従 業員 数 の増 率88上/87上 〕 一
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一5 噂
繭
サービス業運輸・通信
不動産業
卸売・小売
糟密機械
輸送用機械
電機機械
一般機械
金属製贔
鉄鋼
化学
繊維・衣服
食料品
製造業小計
建設業
全産業
〔出所 〕 大 蔵 省 「法人 企 業統 計 季 報 」
を み る と・ 勤 労者世 帯 李 均 では実 質 金融資 産残 高 が10%増 加す る とa消 費 の伸 び を1・5%程 度増 大 させ る効果 を もつ。 これ を87年 に適用 す る と,実 質 金融 資産 残 高 が12%増 加 した こ とが 消費 の伸 び1.0%を 支 えた とい え る。
各 階層 とも実 質 資産 残 高 の増 加が 消 費支 出 を高 め る効果 が み られ る こ と, と くに 「高所 得者 が 耐 久 消費財 の消 費を 増 大 させ た」 点 を 重視 しなけ れ ば な らな い。
87年 か ら88年 までの 内需 拡大 を誘 発 させ た もの は,設 備 投資 需 要 と高所 得者 層 の資 産 効果 に よる 消費需 要 に よる もの であ る。 両 者 の需 要循 環 に よ っ て,大 企業 の売上 高 ・生 産 量 が着 実 に増 大 しsく わ え て円高 ドル安 効果
と低原 油価 格 に基 づ くs原 材料 コス トの低 下に よって,企 業 収 益 を増 大 さ
190商 経 論 叢 第25巻 第1号
せ た。89年3月 期 決算 で は,88年 の史 上最 高収 益 の記 録 を さ らに20%も 更 新 した。 と くに大 企 業 の収 益 率 の 増大 が 目立 った(1988年11月12日 「日経」)。
この点 は大蔵 省の 「法 人企 業統 計 季報 」 に も示 され てい る(第1図)。
この 図を み る とs売 上 高経 常利 益 率 の 高 さは 内需 型 ・輸 出 また は素 材 ・ 組立 てのい ずれ の製造 業 で も共 通に み られ た ので あ る。 こ うした企 業収 益
の増 大 の中 で,当 然i雇 用状 勢 の転 換 が お こなわ れた 。製 造 業 の求人 急増 でs求 人 数は 求職 者 数 を上 回 った。 と くに87年 夏以降,製 造 業 にお け る求 人 数 が,30〜50%に 達 した。 建 設 業 の拡 大,サ ー ビス ・流 通業 の求 人増 も 加わ って,88年9月 の有 効 求人倍 率 は,1.08%に な り,労 働市 場 は14年 ぶ
りで,「 逼 迫化」 現 象 が お こった。
もち ろ ん,こ の現 象 も,労 働時 間 の短 縮,賃 金上 昇 率を 伴わ ない 形態 の 労 働市 場 の逼 迫化 で あ って,こ の点 で高度 成長 期 の性 格 と違 ってい る。 高 度成 長期 に おい ては,賃 金 を あげ る こ とが,雇 用 吸収 の基 本 条件 であ った が,89年 の成 長 期 は労 働市 場 は逼 迫 してい るに もか かわ らず,賃 金 抑止 型 の雇 用吸 収 であ る。 企業 の収 益 が増 大 してい るに もか かわ らず,賃 金 は抑 制 され てい る。
総 じて1980年 代 の 日本 経済 の 特色 を み る と,85年 までの政 府,財 界 の
「お しん」の経済 哲学 に よる 「輸 出」拡 大 型成 長 と内需 停 滞に 終始 した 。 そ れ は86年 に も,対 米貿 易 の大 幅黒 字 とい う外需 依 存 と内需 不振 の経済 体 質 をそ の特 色 とした。 だ が,こ うした 日本 の経 済政 策 は,87年 に な って転 換 した。 それ は,当 時 の政 府 の民活 政Yrよ る土地 騰 貴を 誘発 す る中 で のs 内需拡 大政 策 に あ った。 それ は 土地資 産額 の階層 格 差 の急拡 大 とな って表 面化 した(第2図)。87年 以降,住 宅投 資,公 共投 資,民 間設 備投 資iそ し て個 人 消費需 要 の増 大 に よって景気 が 回復 した。 それ は暫 くぶ りで景気 が 軌道 に 乗 った こ とを意 味す る。 それ は89年3月 期 の全 国上場226社 の経 常 利 益 が前年3月 期 に比べ23.4%増 と大 幅 に 増 加 し た(「 日経」1989年5月21
日号)こ とで もわ か る。 同紙 に よれ ば,そ の 理 由は 「輸 出産業 の 内需転 換 が進 みs収 益 力 が向上 した うえに,操 業 度 の上 昇な どに よる生 産増 と合理
国 際 化 の 中で の 労 働 ・市 民 的経 済政 策 の一 考 察191
第2図 土地資産額の階層格差は急拡大
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資産 階展L」L ̲̲」L」
80年85年87年
〔出所 〕88年 版 経企 庁r経 済 白書 』
(注)土 地 資産 額 は 各 階 層 の一 世 帯平 均 。5階 層は 各 年 ご とに全 世 帯 を土 地 資産 額 の少 な い順 に 等 分 した。
化 効果 の い っそ うの進 展 が相 ま って幅広 い業 種 で収 益 が拡大 した。88年3 月期 に続 き,過 去 最 高益 を更 新す るのは確 実 で,企 業 業績 は 安定 した上 昇 軌道 を 歩み続 け よ う」 と。 企業 業績 が 今後 も持 続 す る と強 調 してい る。 詳 細に み る と,「 営 業利 益 の伸 びは製 造 業19.9%増,非 製造 業18.6%増,輸 入 原 材料 価 格 の低 下に 加え,人 員 削減 な どの 合理 化効 果 が浸 透,リ ス トラ ク チ ャ リソ グ(事 業の再構築)の 進展 が営 業 の利 益 の拡 大 につ なが った。 本業 と同時 に,金 余 りを背 景 に金融 収 支 も改 善 して い る」 とい う。 だ が企業 利 益 の増 大 の背 景に は,賃 金 上 昇を 抑制 した こ とに もそ の原 因が あ る と考 え られ る。 企 業 の 内部 の合理 化,人 的 削減,若 年 労 働 力 の吸 収,パ ー ト労 働 の 活用 な どが 企業 収益 を増 大 させ てい る と考 え られ る。
192商 経 論 叢i第25巻 第1号
1988・89年 の 日本経 済 は,80年 代 の貿易 黒字 基調 へ の 反 省 として 内需 主 導 型 に転 換す る方 向を選 択 した。 その結果 経常収 支 黒字 額 が1987年 の870 億 ドル か ら88年 に850億 ドルへ と減少 した。 この減 少ぶ りはわ ず か であ る が,そ の 分,内 需 に 向 った こ とを 示 してい る。 もち ろ ん ここに は 「高値 安 定 」 では あ るが 消費 者物 価 の1%台 の上 昇 率の 好経 済指 標 をみせ た こ とや 円 高 ドル安 に よる輸 入 商品 価格 の 相対 的 低価 格 な どに よ っ て 日本 経済 の
「安 定」 性 が強調 され た。 だ が こ う し た 経 済路 線 は,日 本 の 貿易 収支 の大 幅 黒字 に よる円 高 ・ドル安 に基 づ く,企 業 経営 の合理 化 の推 進に よる輸 出 増 の産 業 構造 を転 換 しえな か った。 この ことは,政 府 の政策 路線 に み られ る内需拡 大策 は,民 間企 業 の 旺盛 な設 備投資 と前 述 した資 産効果 に よる高 所 得 者 層 の消費 と住 宅 投資 に よって支 え られ た。 と くに,金 融 自由化,民 活 に よる土 地 騰貴 は,一 般 庶 民 に とっては,遠 い 存在 に な った。東 京 圏 の 50坪 の土地 と住 宅 を 手に 入れ るには,一 億 円単位 の カネを必 要 とす る。 こ れ は,株 ・土 地所 有 者の 資産 家 しか参 入 で きない状 況 を作 り上 げ た。 内需 拡 大 を求 め て も,一 般 勤 労者 の 消費 主体 では な く,資 産 家 中心 の 消費需 要 増 大 に よる内需拡 大 で あ った。 と くに 目立 った ことは,勤 労者 の賃 金 は,
実質 的 には 凍結 され た ま まであ った。 資産 格 差 を解決 す る ことな く・ 内需 拡 大 に よる景 気振興 はs一 時 的 な ものに な らざ るを え ない。 この点 につ い ての1988年 度 のr経 済 白書』 の分 析は 片手 落 であ る。 問題 を進 め よ う。
② 労 働 ・市 民主 体 の 内需 拡大 路 線
内需拡 大 とい って も,具 体 的 に は 日本 経済 を リー ドす る大手産 業 の設 備 投資 増大 に よ る労働 力,技 術,資 本 の結合 に よる需 要 増 であ る。 た しか に, 前 述 した よ うに,今 回の 景気拡 大 はs一 方 で大 手資 本 に よる設備 投資 拡大
に基 因 してい るが,そ れ を支 え てい るの は 国民 ひ と りひ と りの 消費増 であ る。 この消費 増 の基本 に は,賃 金 上 昇に基 づ く,消 費支 出の増 大 を伴わ な けれ ぽ な らない。88・89年 の景 気拡 大 は,勤 労 者 の 消費需要 の本来 的拡 大 に までい た ってい ない。 こ こに 問題 が あ る。 もち ろ ん,内 需 拡 大に よる景 気 回復 の上 昇局 面 にお い て勤 労 老 の個人 消 費 もか な りの役 割を 果 した。 と
国際 化 の 中 で の労 働 ・市民 的 経 済政 策 の一 考 察193
く..・・年 に 入 る と・ 企業 の設 備投 資増 に基づ く,雇 用 吸 収 力効 果 の増 大, 蛍 働者 の残業 の収 入 増 な どか ら勤 労者 の 消費 はs着 実 に増 大 した。 今後 の
日本 経 済 を支}る の は,一 般 勤 労者 の所 得 増 ・生 活 改善 に よる家庭 需 要 の 増 加 に 加 え てs政 府 に よる公 共 部 門の投 資増 で なけれ ば な らな い。 この点 は今 回 の景 気拡 大 をみ る限 り,不 透 明で あ る とい わ なけれ ば な らな い。 も ちろ ん 日本経 済 の統 計 を み る限 りi1987年 か ら88年 にかけ てs内 需拡 大 の 中味 は,資 産 効 果に よる住 宅 投 資,そ れ に基 づ く消費 財関 連 投資,い わ ゆ る 上 ・下 水道,道 路 な ど社 会資 本 を主 体 とす る公共 投資,私 た ちの生 活 者 中 心 の個人 消 費,企 業 の設 備投 資,そ れ に在 庫投 資 な どを 柱 とす る もの で あ った。 こ うした 内需 拡 大 の方 式 には,い くつ かの パ タ,...,..ンをみ る ことが で きた。87年 か ら88年3月 まで には,6兆 円 の政府 投資 と土地s株 式 保 有者 な どの資産 家 の 消費 需要 が主 体 の 内需 拡大 であ り,88年4月 か ら7月 まで は,住 宅投 資 と公共 投資 主 導 の内需 拡 大 であ り,88年 の夏 以降89年 現在 ま で は,設 備 投資 主導 型 の内需 拡大 であ った。 だ が こ うした方 式 は,大 手企 業,大 手 銀行,大 手 不動 産 業主 体 の 内需 拡大 に よる収益増 で あ り,生 活者 主 体 の 内需拡 大 では なか った。 勤 労者 の個 人 消 費,住 宅 投 資,環 境 整備 の 公 共投 資 な どの 内需 主導 型 の成 長 こそ,日 本 経済 の市民 的 再編成 の道 なの であ る。 この 視点 に立 って考 え る と,労 働 者 の賃 金 引 き上 げ,労 働 時 間の 短 縮 完 全 雇用 体 制,減 税t消 費税 廃止,高 教 育 の公 共 的 負担 に よる家計 費 の 実質 増 に よる生 活 向上 の経 済政 策 を 展 開す べ きなの で あ る。 つ ま り政 府 は,従 来 の資 本主体 の 内需 主 導型成 長 経 済か ら生活 の質的 向上 に よる内 需 主導 型成 長経 済へ の転 換 を 図 るべ きな の であ る。 生 活 者主 体 の経 済 運営 の ため に こそy家 計 部 門 の充 実,企 業 部 門 の活性 化,公 共 部門 の 活力 が バ ラン スを もって,成 長 の質 を創造 す る こ とが で き るの であ る。
い ま国民が 求 め てい るのは,生 活 の質 の 向上,文 化 ・教 育 の質 的転 換, 完 全雇 用体 制 な の であ る。 企業 の存在 は こ うした ニー ズに対 応す る ことに あ る。 つ ま り生 活の ニー ズに対 応 した 産業 の発 展 に あ る。 日本経 済全 体 の 動 きを み る と,こ の 景気拡 大 は,大 手企 業 中心 の 極大 利潤 追 求 の シス テ ム
194商 経 論 叢 第25巻 第1号
を主 体 とす るの では な く,生 活 主導 型景 気拡 大 のた め の企業 と公共 部 門の 成 長 を 目的 と し な け れ ぽ な ら な い。89年 版r通 商 白書』 は,「 生 活大 国」
の 実現 を め ざす とい う。 つ ま り,日 本 の 貿 易構 造 が か って の 「輸 出大 国」
指 向か ら,内 需 主 導 の 「輸 入 大 国」 指 向へ 転換 した点 を強 調 してい る と同 時 に産 業 分野 にお い て 「構造 調 整」 が進 ん でい るの に生活 関連 分 野 では 内 外価 格 差 が存 在 し,消 費 者の 負担 を 強い てい る とい う。 輸 入 品に 関 して は, 家庭 での1988年 の輸 入品 使用 率 はs食 料 品95%,衣 料 品83%,日 用 品70%
な どで,「 輸 入品」 が な い家 庭 はわ ず かに0.5%で あ る とい う。 一 方輸 入 品 の価格 をみ る と円 高が 国内 小売 価 格に 反映 され ず 内外価 格差 が解 消 され な い。 この ことは 消費 者の ニー ズに 答え て ない こ とを意 味す る。 だか ら89年
度r通 商 白書 』 はt流 通 の一 層 の合理 化 や規 制緩 和 の推 進 な どを 通 じて, 輸 入 市場 を さ らに活 発化 す る必要 が あ る こ とを 強調 してい るが,そ の具 体 策 を示 してい ない。 問題 は,勤 労 者 の実 質所 得 を増 加す る ことに よってs
消費需 要 を増 大 させ る方 式 を 明 らかに し,内 需 拡 大 の政策 を持続 すべ きな の であ る。
日本に お け る生 活 向上 は,国 内問題 だけ でな く世 界 にお け る 日本 の輸 入 拡 大 と結 びつ き,日 本経 済 の体 質 改革 を迫 ってい るの であ る。 日本 の先進 国に 比較 し,低 い労 働 分配 率,異 常に 長 い労 働時 間,国 際 公 正労働 基 準 に も
もとる労働 者 の権利 のお くれ な どを改 革 しなけれ ぽ な らない。 この点 につ いて はi拙 稿 「日本経 済再 編成 の論理 一一 世 界 の中 の 日本経 済 の 市民 的 編 成 の論 理 一 」(神 奈川大学創立60周 年記念論文集,1989年10月 刊予定論文)を 参照 され た い。 問題 を 進め たい 。
③ 内需 拡大 の源 泉 としての 日本 型賃 金決 定 の メカ ニズム
日本 経済 の 消費需 要 を左 右 して きた 要 因は 日本 型賃 金決 定 の メカ ニズ ム に あ った。 以下r1989年 国民 春闘 白書 』 を紹 介 しな が ら検 討を進 め る こと に した い。
春 闘 の賃金 決定 は,従 来 日本 の基 幹 産業 であ る金 属 ・化 学 ・交通 の三大 産 別共 闘 を 中心 に,そ の とき どきの経済 状況 と関連 して賃金 引 き上 げを決
国 際 化 の中 で の 労働 ・市民 的経 済 政策 の一 考 察195
定 し て きた。 それ が 中小企 業,公 務 員 ・公 労協 に イソパ ク トを 与 え,さ ら に地場 中小,未 組織 労働 者 の賃 金 引 き上 げへ と波及 し,消 費需要 を形成 す る役割 を果 し て きた。 これ らの賃 金決定 が 最低 賃金 を決 定す る基礎 に な っ た の であ る。 大学 の研 究 者 も,大 学 で の組合 での賃 金決 定 が重 要 な基 礎に な っ てい る。 社 会 的評 論 的 出稼 ぎ労働 をパ ー・トで して も,基 本 は職 場 で の 賃金 決定 の メ カニズ ムに 左右 され る。
と ころ で春 闘 の賃上 げ は,翌 年 の 新規 採用 の学卒 初任 給 の準 拠要 因 に も な る。 さ らに,賃 金 決定 は,年 金 引上 げ,生 活 保護 基準 の 引上 げ な どの基 礎的 要 因に もな ってい る。 そ の点 で賃 金決 定 は 日本 の勤 労 者 の生活 向上 と 密接 なか かわ り方を もってい る。 春 闘 に よる賃金 決定 は,日 本 経済 を担 っ てい る重 化学 工 業,機 械工 業 にお け る大 手企 業 の組織 労 働 者か ら始 って全 労働 者 の賃 金を 決定 す る要 因 とな る。 それ はた えず 日本 経済 の 好景 気,不 況 との関 係 で決定 され る。 それ は 現代資 本主 義 に おけ る労 使 の力 関係 で左 右 され る性 格を もっ てい る。 労働 者 ・国民 諸階 層 の賃 金 ・所 得決 定 は,労 働 者 ・市民 の生 活 向上 に役 立つ ぼ か りでな く内需 拡大 の要 因 とな り,日 本 経 済 だけ でな く世 界 経済 の発展 に 寄 与す る。 とい うのは,勤 労 者 ・市民 の 所 得増 に よる輸 入商 品購 入 の要 因 に な ってい るか らであ る。 それ は 勤 労者 の家庭 に おけ る輸 入商 品購 入 の割 合が80%以 上 に な ってい る こ とで も明 ら か であ る。 と ころが1970年 代 の石 油危機 と高度成 長 の破 綻 に よる不 況 と, 80年 代 前半 の低成 長 の 「定 着」 とい う日本経 済 の条 件 の もとでの賃 金決 定
は,経 営 者 ・資 本 の主導 型 決定 とな り,賃 金 抑 制型 に な って きた の であ る。
この背 景に はい くつ か の要 因が あ った と考 え られ る。
第一 に 高度成 長時 代 の 労働 力不 足 は,賃 金上 昇 の メカニズ ムを作 ったが, そ の後 の低成 長 期に は,労 働 力過 剰 は,賃 金抑 制 の メカニズ ムを作 ら され た。 この点 で組 合 の力 量は 「雇 用 か賃 金か 」 を経 営 側か ら要求 され,組 合 は 「組織 防衛」 の守 勢 に立 た され た。
第二 に,賃 金 引 き上 げ の運 動はs元 来 組合 の協 約 に よる社 会 的規 制や 法 的 規制 の根拠 を もつ もの でな く,労 働 市場 を 通 じた 間接 的波 及方 式 であ る
196商 経 論 叢 第25巻 第1号
た め,労 働市 場 の需要 が 不足 す る と波 及 力 が弱 まる。 これ は,法 的に経 済 の 好景 気 ・不 景気 に拘 らず,「 完 全雇 用体 制」 の方式 を決 め て い ない か ら で あ る。 この点,今 後 の重 要 課題 で あ る。
第三 に,日 本経 済 に とっ て きわ め て良 くな い慣 行 は,公 務 員労働 者 に対 す る人 事院 勧告 方 式 で あ る。 と くに ス ト権 を 奪 った人 事院 勧告 方 式 は,市 民 と公 務 労働 者 を分 断す る性 格 を もってい る。 それ だ け では ない。 と くに 人事 院 勧 告凍 結は 公務 員 労働 者 の賃上 げス トップのみ な らず,中 小 企業 労 働者,未 組 織 労働 者,地 場 中小企 業 労働 者へ の賃上 抑制 に連 動す る。 人 事 院勧 告 の 凍結 は,公 務 労働 の 停 滞 だ け で な く,地 域i=対 す る マ イナ ス の インパ ク トを 与 え る。 と くに 地域 経 済 にお け る需 要 効果 を減 退 させ る。
第 四 に 日経 連 ・企業 に よる初 任 給抑 制 は低成 長 期 に 目立 った。初 任 給 がs 目経連 ・企 業 の連 合 に よって,抑 制 され た ことは,若 年 労 働 力 の活性 化 を 促 進 で きな くな り,経 済 の 停滞 を招 来す る要 因 とな る。
と もあれ,以 上 に示 した問 題 が,そ の 後 の賃金 引上 げ の抑 止作 用 を伴 っ た の であ る。
だが80年 代 後半 に な って,日 本 経済 は貿 易 黒字 を大 幅に 作 り,内 外 か ら 内需 拡大 の 必要性 を 迫 られ た。 ここであ}て 賃 金決 定 につ い て述 ぺ て お く。
経 営 側がs企 業経 営 の拡 大 をは か るた めに,賃 金 抑制 政策 を 労働 者 に強 制 す る こ とは,経 営 に とって もマ イナス であ る。 どん な職 場 で も,経 営 の透 明性 を 示 し,そ の企業 の方 針を 労使 で確 認 しs民 主 的 合理 的賃 金決 定 の シ ス テ ムを確 立す べ きな の であ る。 労働組 合 はs経 営 の 本質 を理 解 しつ つ,
自らの 賃金 の決 定 メカニズ ムを作 る能 力 を も ってい るの であ る。
80年 代 後半 の 日本 経 済 の 好調 性 の 中 で,「 春 闘」 の課題 が 問われ なけれ ぽ な らない。 とい うのはt労 組が 従来 の経 営 側 の賃 金抑 止策 に対 して どの よ うに対応 す るか であ る。 もち ろん,労 働 側 に おけ る 「保 守 的」 メ カニズ ム の改革 も問われ てい る。
こ うした こ とを前 提に,従 来 の低 賃上 げ春 闘か らの脱皮 を どの よ うに は
国 際 化 の 中で の 労 働 ・市 民 的経 済政 策 の一 考 察197
か るか であ る。
第 一に 日本 経済 の改 革 の問題 意 識を もって組合 の 交渉 力 を知 的 に 高め る ためs労 組 自らの賃 金 ・雇用 ・労 働条 件 を再 点検 し,内 外 労働 市場 の接 点 であ る初 任 給 な どを テ コに して,外 の労 働市 場 に対 して も創造 的 規 制力 を 高め る こ とであ る。 この こ とは,若 年 労 働者 の組合 へ の参 加 を刺 激す る こ とに もな る。 それ だけ で な く,労 働 の価値 を客 観 的に 保障 させ る ことに も な り,労 組 の体 質 改革 に もつ な が る。
初 任給 を企業 内,産 業 別 に組 合が 統 治す る こ とに あ る。 同時 に パー トタ イマーs派 遣 労働 者 の賃 金 を 引上 げ てい くこ とも大 切 で あ る。 もち ろ ん, 経営 側 の経営 の革 新 を迫 る と ともに,経 営 の社 会 的責任 を 示す こ とに もな
る。
第 二にt従 来 の労 組 の 日本経 済 を動 かす 春 闘 の パ ター ソを 改革 す る問題 意識 を もつ こ とに あ る。従来 の春 闘 の パ ター ンは,大 手 企業 → 中 小 ・公 務 員
→未 組織 →最 低 賃金 とい う形態 であ った。 もち ろ んそ の方 式 もか な りの 業 績 を あげ た こ とを認 め る。 だ が 国民 春闘 とい うか ぎ り,市 民 的 ニー ズに よ
る春 闘 の新 しい 方式 を 考 え,賃 上 げを 国民 的 課題,日 本経 済 の 運命 を左 右 す る方 式を 考 え るべ きで は ないか。 組 合 が おかれ てい る さま ざまな慣 習, 条件,組 合特 有 の 「エ ゴ イズ ム」 を認 め る と し て も,日 本経 済 の 影 の部 分,つ ま り,最 低 賃 金,パ ー トを含 む女 性 の賃 金,中 小 未組織 の労 働者 の 賃 金 ・労 働 条件 ・社 会 的 弱者 の賃 金s生 活条 件 向上 の た め の春 闘賃上 げ の 問題 を 考}て い くべ き であ ろ う。 一部 中小企 業 では 低 賃金 の 外 国人労 働 者 を雇 用す る傾 向が 現 実 にお こ って い る。 こ うした 問題 を含 めて,同 時 に 中 小 ・零 細企 業 の存 立条 件r経 営 の確 立 の あ り方 を含 め て,賃 金 問題 を 考 え てい く段 階 に き てい る。 もちろ ん,こ の こ とは,資 本 ・経 営 側 の課題 で も あ る。 これ こそ,労 働 者 の 自立 と連 帯 の 問題 で あ る。 もち ろ ん,組 合 員 の 自己 利益 を 守 りなが ら,連 帯 利益 に ど う高め るか の労 資 の 自己 統 治 と相互 統 治を 明 らか に し,社 会 的 に問 うぺ きで あ ろ う。 こ うした 問題 意識 に 立 っ
て こそ春 闘 の賃上 げ を大 幅 に要 求 す る こ とが で きる。 恐 ら く,ど こで も経
198商 経 論 叢 第52巻 第1号
営 者 は 公私 を 問わず,そ れ ぞれ の企業 内保護 主 義 を貫徹す るであ ろ う。 そ れ 自体,自 己矛 盾 な ので あ る。 企 業 の社会 的 責任 を 通 して 労使 の 自己 ・相 互統 治の シス テ ムを考}て い くべ きな ので あ る。
第 三 に,産 業 別 ・大 産業 別に よる春 闘相場 へ の ハ ドメを ど うす るか で あ る。 この ハ ドメを,労 組 の主体 性 で かけ る こ とが 大切 であ る。 その基 準 は, 物価 と定 昇 と社 会 改善 に あ る。 物 価 につ い て も,高 値 安定 の 質を 問 うこと
であ りa社 会 改善 は,年 金,環 境,住 宅,土 地,教 育 費 な どを考 慮に 入れ て考}る ぺ きで あろ う。 もち ろん,軍 事 費,社 会 保障 費,教 育費 負担 増 に つ い て,そ の 量 と質 を点検 すべ きであ る。
第 四は公 務 員 の賃 金 であ る。 この点 も,ス ト権 を奪 われ てい る以上,改 め て,市 民 主体 を ふ まえ て専 門 家に よるオ ソブズ マソ方式 の賃金 決定 方 式 を公 開 を 原則 として決 め るべ きで あろ う。 と くに 上級 公務 員を 除い た公 務 員 が 自主制 を 含 めた 賃金決 定 方式 をつ く りだす ことで あ る。 週休 二 日制 は
当然 であ る。 公 務 員 の退職 金 が高 い こ とが 問題 に な った ことが あ るが,そ れ は市 民 を入 れた 公 平 な客観 的基 準 を作 って決 定す べ きであ る。 もち ろんs
「労使 」交 渉 を前 提 に して,公 務 員 の 賃金 の あ り方 を改 め て考 え るぺ きで あ る。 地 域社 会 を活 性化 す るた め に も,公 務 員 の賃金 引上 げ は,そ の質 を 高め る方 向 で決定 すべ ぎで あ る。 それ こそが地 域 住民 との連 帯 を 図 る こ と にな る。 もちろ ん公 務 員の た めの 賃金 方式 に は 限界が あ る。 公 務員 の あ り 方を 市民 的 に問 い なが ら,そ の賃 金 のあ り方 も問われ るべ きで あ ろ う。 労 組 の市 民化 とs市 民 の 労組 的理 解 こそ大 切 な問題 意識 であ る。 公務 員 は, 国,地 方 の議 会 に対 す る従 属 関係 で は な く,柑 互に対 等 平等 の関係 で,仕 事 をすべ きであ る。 そ の点 では 相互 対等 の依 存 関係 の 中 で賃 金 の方 式 を確 立すべ きで あ る。 一 部保 守 系 の議 員 に よる主 観 的態度 で,公 務 員 の賃 金が 高い か,低 いか で決 め るべ きでは ない。
こ うして,87年 度 以降 の 日本 経済 の好循環 の 中で,労 組 の 賃 金 引 き上 げ はs改 め て再 検 討 し,企 業 の好 収益 の中 で,賃 金 引上 げ こそ,日 本経 済 の 活 性化 に連 動 してい るこ とを 認識 すぺ きな ので あ る。 だ か ら89年 春 闘は,
国 際 化 の 中で の 労働 ・市 民 的 経 済政 策 の 一考 察199
日本 経済 を転 換す る 内需 拡大 の 役割 を 担 った ので あ る。 で はそ の結 果 は ど うか。
(4)89・ 賃 金 引 き上 げ の要 求 とその結 果
日本 経済 の好調 性 を持 続 的に発 揮す るには,勤 労 者 ・市 民 の実 質所 得 の 上昇 に よる内需 拡大 しか あ りえな い。 した が って89年 の 労働 組合 側 は,企 業 の好 景気 の 中 での春 闘 であ るか ら 「追 い風 春 闘」 と呼 んだ 。 そ の労 組 の 賃 金 引 き上 げ要 求は,平 均 して定 昇 込み7%で あ り,88年 と対 比す る とr
1%弱 とな ってい る。89年 は,昨 年 と比 べ て296以 上要 求す るか と思 った が,不 況 下 の中 で,賃 金 抑制 策 に慣 れ て し ま った せい か,製 造 業,非 製造 業 の 平均収 益率18%に 比 して低姿 勢 の要 求 であ った。
もと も と賃 上 げ 要 求 の 基準 は,「 過 年度 消 費者 物価 上 昇率 プ ラス定 期 昇 給 率 プ ラス生 活 改善 分」 に あ る。 物 価は前 年 に比 べ て1%で あ った。 だが 消費者 物価 上 昇率 の 中味 を見 る と,前 述 した よ うに 内外価 格差 が 存在 した り,r円 高 差益 」 が充 分に 還 元 され ず,輸 入価 格 も 割 高で あ る。 他 の先進 国 と比べ て 「物 価 の 高値 安定 」 が定 着 して い る。 前 年 度 と比ぺ て,消 費 者 物 価 上 昇率は,3%程 度 上 昇 して い る と思わ れ る。 さ らに重 要 な点 は,賃 上 げ 要 求 の基 準の 中に あ る生 活改 善 分が 昨年 の 状況 と大 き く違 ってい る。
とい うの は,政 権政 党 は,国 民に 公 約 して いな い 消費税 を 国会 で 強行採 決 し,国 民に3%の 消費税 を負担 させ た こ と と社会 保 険料 の 改定(厚 生年金 の保険料率を10月か ら引 き上げるとい う政府案)の 影 響 が 大 ぎ い。 消 費税導 入 に よって,す でに便 乗値 上 げ と3%の 消費税 負担 は,世 論 調査 で も80%の
国民 が反 対 して い る。 経 企 庁 の予 測 では 消費税 導入 に よって消 費者物 価上 昇率 は1.8%に な る とい っ て い る が,実 質3〜4%に な る可能性 が あ る。
したが って 消 費税 分が そ っ くり家 計 の負担 増 とな る。
この点か ら も労 組 の要 求額 はiも っ と高 くて よい はず であ る。 だが 「過 年 度 の 消費者 物 価上 昇率 」 の制 約 のた めsこ の点,労 組 の要 求が 限界 を も た ざ るを えな い。
89年 春 闘の結 果 は第2表 の通 りであ った。 「連 合」 の 調 べ で はs89年4
200商 経 論 叢 第25巻 第1号
第2表 主 な産 業 ・企業 の賃上 げ(「 連 合」な ど調べ) 88年
鉄 鋼(大 手5社) 電 機(大 手17社)
自 動 車(ト ヨ タ) NTT
電 力(大 手9社) 私 鉄(大 手13社) 主 要企 業(約290社)
Ii, 1.8 9824
4.6 10600
4.4 14200
5.7 12000
4.7
×3300 5.6 10573
4.4
89年 陣 鞭 釧 平均年齢
6100 2.4
×1957 5.4 129QO
5.2 14200
5.5 13900
5.2 100
s.3
250300
221429
x:1'1
259949
266260
245973
41.1
33.9
33,4
38.3 33.7
38.4
〈注 〉 上 段 は 額(円)・ 下 段 は 率(%)で 小 数 点2位 以 下 を4捨5入 。 定 昇(相 当 分)込 み
。 鉄 鋼 は35歳
,勤 続17年 の 標 準 労 働 者 表 示 。
月11日 現 在 で・ 集 計 対 象 の 約1,400組 合 の うち,224組 合(約170万 人)が 妥 結 し た 。 賃 上 げ の 結 果 は,加 重 平 均 で12,600円,5.3%で あ り,昨 年 実 績 に 比 較 し て2,100円0.7%上 回 って い る が 「連 合 」 が 目標 に し た1%ア
ッ プに は み た な か っ た 。 これ が 日本 経 済 に お け る労 働 側 の 現 在 の 実 力 の 実 態 な の で あ る。
89年 春 闘 で は 賃 上 げ と平 行 し てs従 来 か ら の 課 題 で あ る 労 働 時 間 の 短 縮 が 問 題 に な っ た。 あ と で も取 り上 げ るが,労 働 省 は,年 次 五 か 年 計 画 で 労 働 時 間 の 短 縮 を 主 張 し て か ら1992年 に 年 間 労 働 時 間1,SOO時 間 の 達 成 を 目 標 に し て い る。 だ が 現 実 に は この た び の 春 闘 で も きわ め て 厳 し い もの で あ
った 。 とい うの は,経 営 側 が 「労 働 時 間 の 短 縮 を コ ス ト」 とみ て 対 応 した か ら で あ る。 例 え ぽ 年 間 労 働 時 間 を2,000時 間 と し て 計 算 す る と,年 間1
日分 の 時 短 は 約0.4%の 時 間 当 た り コ ス ト増 に 相 当 す る と い う。 今 次 春 闘 で は,鉄 鋼 労 連 が 年 間s1日 な い し3日 程 度 の 時 間 短 縮 を 獲 得 した と い う が,こ れ は 依 然 と し て 経 営 側 ペ ー ス の 時 短 と賃 上 げ を パ ッ ケ ー ジ に した 解 答 で あ った 。 これ は 労 働 側 の 本 来 的 要 求 とは 違 っ て い た 。 だ か ら私 鉄 労 連
国際 化 の 中 で の労 働 ・市 民的 経 済 政策 の一 考 察201
はi「 賃 上 げ と時 短 セ ッ ト論 」 に 反 対 し た 。
に も拘 らず,今 春 闘 の 結 果 は 「連 合 」 の 山 田事 務 局 長 は こ うい った 。 「賃 上 げ に つ い て は 景 気 絶 好 調 の 中 で,昨 年 実 績 を 大 幅 に 上 回 る こ とが で き な か っ た の は 率 直 に 反 省 し な け れ ぽ な ら な い 」(1989年4月11日r目 経』)と 。 この 背 景 に は,さ ま ざ ま な こ とが 考 え られ る。 基 本 的 に は 労 働 運 動 の あ り 方 が 問 わ れ て い る の で あ る。 現 代 日本 資 本 主 義 の 中 で,労 働 組 合 運 動 が 好
・不 況 の 経 済 循 環 に ビル ト ・イ ン され て し ま っ た こ と を あ げ な け れ ぽ な ら な い 。 だ が 労 組 は 同 時 に 賃 上 げ と時 短 の 要 求 を 通 じ て 現 代 資 本 主 義 の 限 界 を 認 識 す る こ とが で き る。
今 次 の 春 闘 が 盛 り上 が りを 欠 い た の は,こ うした 限 界 を 客 観 的 に もた ざ る を え な か った 点 に あ る。 そ れ は 労 組 の 組 織 率 が 低 下 し た こ とに あ る。
1988年6月 末 でf26.8%で,前 年 同 月 比 よ り0.8%低 下 した 。1949年 に 55.8%と い う大 き い 組 織 率 で あ った の が,1975年 に は34.4%,88年26.8%,
80年 代 に 入 っ て,中 所 得 階 層 の 増 大 の 中 で 組 織 率 が 低 下 した 。1988年 の 労 組 の 組 織 率 の 総 数 は1,222万7,000人 で あ る。 ち な み に 組 織 率 が 若 干 上 回 っ た 企 業 を 産 業 別 に み る と,建 設 業27,000人,金 融 ・保 険w不 動 産 業 21,000人,卸 売 ・小 売 ・飲 食 店 計17,000人,サ ー ビス 業6,000人 な ど で あ
り,組 織 率 が 減 少 し た 産 業 は 製 造 業 で59,QQO人,運 輸 ・通 信 業25,000人f 公 務 員12,000人 減 少 した 。 製 造 業 で は 繊 維,一 般 機 械 で1万 人 以 上,運 輸 ・通 信 業 で はJR関 係 で9,500人 が 目立 った 。 さ ら に 民 間 企 業 の 労i組員 941万4,000人 に つ い て の 企 業 規 模 別 組 織 率 を み る と,1,000人 以 上 の 企 業 は66・1%,100人 以上1,000人 未 満 の 企 業 で26.8%,30人 以 上100人 未 満 の 企 業 で5.9%で あ る。 い ず れ も,昨 年 の そ れ ぞ れ の 同 規 模 企 業 の 組 織 率 と比 べ て 後 退 し,た だ し30人 以 下 の 小 企 業 は0.4%で 昨 年 と 同 じ で あ る (第3表)。 労 働 団 体 別 で は,「 連 合 」 が532万7,000人 で,全 組 織 労 働 者 の 43.6%,89年 秋 解 散 す る総 評 は400万 人 を 割 っ た の で あ る。 労 働 組 合 の 組 織 率 が低 下 す る 中 で,好 況 の影 響 も あ っ た せ い か,建 築 業 ・サ0ビ ス業 で 若 干 の 組 織 率 が 上 昇 し た。 総 体 的 に み て,労 働 組 合 の 組 織 率 が 低 下 し た 理 由
商 経 論 叢 第25巻 第1号 202
匿 繍 数{講
第3表 主要団体別労組員数
it
主要団体名弓 ︒ ユ ︒ 1 ﹄ ︒ ︒ ︒ 端 で 塊 ︒ ︒ d ︒ 暢 ︒ 招 巧 }m ︒ ︒ 級 ︒ ︒ 粥 迦 1
認 狙 訂 ‑︒ 正 鵬 訓 翻 妬 % 悌 諦 茄 弱 嶺 認 q 萎 討 認 討 p 鈴 路 m m 3︒ 3︒ " 舘 聡
1継 繊 霧
耀 皿 撚 蠣 熱
陣 醐 譜簾
主要団体名
将杓棚招o↓ヨィヨ柳o昭招弓4弓40︒o↓枕弓づ絡↓砲4弓od↓鎚縁畷q
溜魍粥鵬姻謝鎚皿佃m拠搦聯m魏圏6︒騒妬銘狙盤訂%脚鋤悦蜘9︒茄鎗肪留皿訂m沸魏m魏
FD
創 謙 犠 騰 員灘 鱗 講 磯 講 驚 講 陥螺 解 諮講
連 自 電 ゼ 生 全 電 造 藩 一 鉄 交 全 商 化 食 紙 茎 全 相 石 全 精 簗 笈 . 途 墜 婆 噺 総 日 総 建
く現 在,単 位 千 人,以 下 は 四 捨 五 入,*印 は 総 評 に も 加 盟,☆ 印 は 新 産 別 に も :金連 合 な どは62年7月 以 降 の 結 成 の た め 前 年 と の 比 較 は で き な い 。
昭 和63年6月 末 加 盟 。 連 合,全
国際 化 の 中で の 労働 ・市 民 的経 済 政 策 の 一考 察203
には,第 一に70年 代 後半 の不 況期 に,経 営 に よる合 理 化 と配転 が 着実 に行 われ,労 働 側 にお け る主体 的 な 組織 率拡 大 の運 動 がみ られ ず,守 勢 に立 た
された ことに あ る。 と くに経営 悪 化 が 自立 った 繊維 等,一 般 機 械工 業a造 船 業 では 組織 率 が激 減 した。 第 二 にi新 入 社員 の組合 加入 が 激減 した。 新 入社 員の 「保守 的 」意 識 が強 くかつ 「連 帯」意識 が 希薄 に な った こ とi従 来 の労組 の 運動 の成 果 として初 任 給 が相対 的 に高 くな った こ とな どを あげ る こ とが で きる。 第三 に 労働 組合 自体 の運動 方 針 が,新 しい時 代 に対 応 しs 職 場 の現 実感 覚 か ら離れ て い る こ と,と くに組 合幹 部 の姿勢 が硬 直 化 し, 日常 的情 宣活 動 を怠 ってい る ことiし た が って組 合幹 部 が官 僚化 的体 質 を もってい る こ と。 第 四に 低成 長 期 に資 本 と経営 の両者 に よ る組 合分 断化 政 策 と敵 視 政策 が さ まざ まな形 で とられ た こと。 一 方,「 労 使一 体 化」 「労使 共 同体 」 政策 に よる組 合加 入 に意 味 を もた な くな った ことな どを あげ る こ
とが で きる。
こ うした理 由以外 に も,多 面 的 角度か ら組織 率低 下 の理 由を 指摘 で きる がs問 題 は,こ うした課 題 を,今 後 どの よ うに克 服す るかに あ る。 この点 は,労 働 ・市 民 型政 策 のあ り方 の と ころ で述べ る。
ところ で,89春 闘 の成 果 は,国 際的 に も注 目された 。 とい うの は,世 界 経済 の中 で,日 本 は一 方 で経済 大 国で あ りs他 方 で生活 小 国 であ る とい う
イメー ジを 労組 の賃 上 げ で どの よ うに克 服す るかに あ った か らで あ る。 と りわ け 皿、0は,西 ヨー ロ ッパの 労働 時 間 よ り・年間300〜500時 間多 く働い い る 日本 の労働 者 の労 働条 件 と蛍 働時 間 短縮 の問題 に 関心 を よせ てい た。
今 次春 闘 での賃 上 げが低 い水 準 で妥 結 した こ とは,今 後 の 「日本経 済 の持 続 的成長 」 に かげ りをみ せた。 とい うのは,内 需 拡大 の 源泉 は,労 働 組 合 の賃上 げに よ り可処 分所 得 を ふや し,勤 労者 主体 の 消費需 要 を拡 大す る こ とに あ るか らで あ る。 この点,国 際 的 に も注 目 さ れ た が,「 連 合」 の力 量 不 足 にあ った とい え る。 で は つ ぎ に 労働 時 間短縮 の問題 を考察 してみ よ
う。
204商 経 言禽 叢 第25巻 第1号
3.労 働 時 間 短 縮 の 課 題
(1)週 休二 日制 と有 給年 休20日 の経 済学
労 働 ・市 民型 経済 政 策 のあ り方 に とって,労 働 時 間短 縮 の問題 は,重 要 課題 であ る。 市民 社会 とは,一 方 で労働 ・市 民 の基 本的人 権 が どの よ うに 守 られ てい るか とい うこと と,他 方 で,労 働 ・市 民 の労 働権,生 活 権,学 習権,福 祉 権がrど の よ うに 制度 的に 保 障 され てい るか とい うこ とで あ る。
こ うした観 点 か ら人 間の 労働 時 間 のあ り方が 問わ れ な ければ な らない。
1988年1年 間 の政府 ・民間 両 者 の労働 時 間 短縮 へ の ア プ ローチはiそ れ ぞれ 違 ってい るが,西 ドイツ,フ ランス,イ ギ リス,ア メ リカの若 千 の エ コ ノ ミス トは,日 ・米 ・欧 の貿 易摩擦 の中 で,日 本 の一 方的 貿 易黒字 に対 して,日 本 の 内需 拡大 の不 十 分 な ことの理 由に,労 働者 の賃金 引 き上 げ と 労働 時 間 の短縮 を着実 に実 行 してい ない と批 判 してい る。 米 ・欧 の個 別経 営 者 も 日本 経営 者 に対 して労 働 者 の労働 力 の価値 を 正 当に評 価 してい ない のでは ない か と批 判 して い る。
こ うした 中 で,政 府 ・労働 省は,労 働 基準 法 を40年 ぶ りで改 正 し,週 法 定 労働 時 間を,や っ と48時 間 か ら46時 間 へ短 縮 し,年 次有給 休暇 の最 低 日 数6日 間か ら10日 間へ 延長 した。 一方 民 間金 融機 関 では,完 全 週 休二 日制 に ふみ き った。 公 務部 門 も四 週六 休制 へ と移 行 し,当 面 問題 とされ て い る のが学校 五 日制 で あ る。 こ うした 政府 ・労働 省 が,や っ と重 い腰 を上 げ て, 最低 労 働基 準 の底上 げに よる労働 時 間短 縮に 努 めた 点 を部 分的 に評 価 した い。 この背 景に は,外 か らの問題 提起 と内か らの労 働者 ・市 民 の要 求が あ ったか らであ る。だが,原 則週 休二 日制 に しろ,有 給 休暇 を 完全 消化 の 指示 に しろ,現 実 には,土 曜 日の仕事 を 月曜 日か ら金曜 日までに こなす とい う 受 け とめ方 では意 味 が ない。 もち ろん,民 間企業 にお い て も,大 手企業 中 心 に,週 休二 日制 を実 施 しつつ あ るが,そ れ は,土 曜 日の仕 事 を 月曜 日か ら金曜 日に もち こみ,さ らに過剰 労働 を強い る傾 向をみ せ てい る。 もち ろ んs官 ・民 とも,そ れ ぞれ の部 門 内 で,一=多 岐 に わた る労 働 が課 せ ら
国際 化 の中 で の労 働 ・市 民 的経 済 政策 の一 考 察205
れ,画 一 的に 労働 時 間短 縮 が実 施 され ない こ とは,承 知 す る ところで あ る が,労 働 者 の労 働権,生 活 権,休 息権 を公 正 に考sる 限 り,ま ず,す べ て の分野 で,原 則 と して週 休二 日制 と有 給 休暇 を 完全 に とる こ とであ る。 そ れ が現代 市 民社 会 の人 間 的権 利 な ので あ る。 この基準 を 前 提に して,官 ・ 民 の 「仕 事」 の意 味 が客観 的 に,社 会 的に 評 価 され るの で あ る。 労働 時 間 短縮 を公 準化 し社 会 的枠 組 み を作 り,個 別企 業 ご との 労働 時 間の決 定 に 実 質 的 インパ ク トを与 え る こ とも重 要 な のであ る。
一 方 労働 省 は週休 二 日,有 給休 年20日 の経済 学 の 効用 を 発表 した(1989 年1月29日)。 それ に よ る と年 間総 労働 時 間を1,800時 間程 度 に まで短縮 す
る と,内 需 拡大 効 果 は8兆 円を超 え,80万 人 近 い雇 用 を増 大 させ る とい う もの で あ る。 少 し内容 に 入 る と,休 日増 に よる労働 時 間短 縮 の経 済 効果 を
3つ の ケー ス で試 算 した 結果 をみ る と,内 需 拡 大 と雇用 創 出の効果 は,週 休 二 日制 を 完全 実 施 した ケー ス1で5兆7,240億 円,約54万 人 に達 し,週
休二 日に加 え,現 在 の年 次 有給 休暇 を 完全 消 化 した ケー ス 皿では7兆2,9 66憶 円i雇 用 効果 は約69万 人 であ る。20日 間 の年 休 を 完全 に 消化 して年 間
総 労働 時間 を 約1,800時 間 にす る ケー ス 皿ではi8兆3,244億 円,約79万 人 の雇 用拡 大 が え られ る とい う。
他 方s1987年 の労 働 省 の調査 では,従 業 員30人 以上 の 事業 所 の週 休 日は 76.7日 で,祝 祭 日や 企 業 の特 別休 日を 加 えた年 間 休 日は94日 で あ りi年 次 有 給 休暇 は平 均15.1日 与 え られ てい るが,実 際 に 休 んで い るの は7.6日 で あ る。 このた め現 在 の平 均的 労働 者 の年 間 の総 休 日数 は101.6日 に な って い る。
ケース 皿では,勤 労者 一 世 帯 当た りの消 費支 出は年 問 で17万2,283円 増 え,勤 労 老世 帯 全体 で4兆5,605億 円 の増 加 であ る。す でに完 全 週休 二 臼 を とってい る人 の 消費 支 出の 動 きを 分 析 した 結果 を あ ては め る と,観 光 ・ 行 楽 に1兆5,374億 円s娯 楽 に1兆5,036億 円,ス ポー ツに9,411億 円,
趣味 ・創作 に5,784億 円の支 出増 が 見 込 まれ てい る。
この よ うな需 要増 が どの よ うな生産 誘 発 効果 を持 つ か につ い て ケー ス 皿
206商 経 論「叢 第52巻 第1号
では,製 造 業2兆9,339億 円,サ ー ビス業 の2兆8,432億 円,運 輸 業 の1 兆3,697億 円な ど,合 計8兆3,240億 円 の内需 拡大 を 創 出で き る とい う。
産業 別 の雇 用 創 出i数はsサ ー ビス業40万 人,製 造 業14万 人,運 輸業11万 人, 商業5万 人,農 林 水産 業4.6万 人 な ど合 計78万8千 人 とな る。
こ うして労働 省 は,労 働 者 が週休 二 日制,年 次 有給 休暇20日 制 を完全 に 実施 すれ ぽ,8兆 円 以上 の 内需 拡大 効 果 を創 出す る こ とが で き る とい う。
この試 算は,労 働時 間 短縮 の経 済効 果 を示 した点 で一 応 評価 す る ことが で き る。 だが 「時 短」 の社 会 的普 及 を ど うす るか の考 え方 も示 すべ きな ので あ る。
日本 の現実 は,厳 しい。 経 済 大 国に も拘 らず 労働 時 間は 後進 的 であ る。
労 働 時 間は,生 活 時 間 と表裏 の 関係 に あ る。本 来 的には,労 働 者が 生活 時間 の中 で,自 らの労 働時 間 を選 択す べ きなの であ る。 ところが資 本 の論 理は, 生 活に 労働 の 論理 を従 属 させ るの では な く,資 本 に労 働 と生活 の論 理 を従 属 させ るので あ る。 した が って,企 業 規 模 に よって労働 時 間 の格差 が 存在 し,異 常 な実態 に な って い る。 この 格差 は,い ま社 会生 活上 の差 別につ な が って い るの では ない か と考}る 。 労働 省は,労 働 時 間の社 会 的枠 組 を作 りi中 小 ・未組織 労 働 者 層に まで波及 しtそ こで 出 る さま ざまな 問題 を経 営 と労働 と公機 関 との話 し合 い で解決す ぺ きであ ろ う。2年 後 に予 定 され て い る労 働基 準 法 の見直 しでは,こ の点 を吸 収 して展 開す ぺ きであ る。 公 務部 門 の土曜 閉庁 に よる完全 週休 二 日制,学 校 の五 日制,民 間部 門 で も完 全 週 休二 日制 を段 階 的に 適用 してい くべ きだ。 い うまで もな く,3次 産 業 の進展 や都 市環 境 の変 化,市 民 の人 間的 要 求に よ って,労 働 時 間 の弾 力化 も進 ん でい る。 今 回 の労 働基準 法 改 正はs経 営 側が 労働 時 間 を生 産 や営 業 の必要 に応 じて弾 力的運 用 を 実施 で きる よ うに な り3変 形 労働時 間 制の 拡 充,フ レ ックス ・タイム制や 「み な し労 働時 間制」 の新 規導 入等 に よ って 所 定労 働時 間 それ 自体 が 弾力的 運用 の対象 に な った。 この ことは,経 営 者 が 労働 者 の労働 時 間 を一 方的に 管理 で きる シス テ ムを作 った こ とに よって 労 働者 に とって マ イナス であ る。研 究 部 門や営 業 部門 にお け る変形 労 働時
国際 化 の 中 で の労 働 ・市 民 的 経 済 政策 の一考 察207
間 や 「み な し労 働時 間 制」 の 導入 に よって時 間延 長 が で きi労 働 者 に とっ ては拘 束 的時 間 が長 くな り,苦 痛 労働 の再 生 産 に な りか ね ない。 さらに ス ーパ ーや デ パー ト等 にお け る営 業 時 間 の延長 が パー トタ イマーを参 加 させ た交 替制 の導 入 な どでs経 営 側 が時 間 と労働 を 管理 す る。 これ は 労働 時 間 を経営 者 の一 方 的 な管 理 下 にお くこ とにな る。 資 本 の論理 に よる労働 時 間 の管 理 であ る。 私た ちが選 択 すぺ き労 働時 間 は,自 己の 生活 時 間を基 礎 に おい て,生 活 と自由時間 の豊 か さを求 め て決 め られ なけれ ぽ な らな い。 労 働者 の市 民 権,労 働 権,人 格権 を 基礎 に労 働 時 間を選 択 すぺ きなの で あ る。
つ ま り労働 者 が時 間の主 権 者 にな らなけれ ぽ な らな い。 労働 者 が労 働時 間 の長 さや 配 分 を 自らの生 活 時 間に 基づ い て決定 す べ きなの であ る。 す でに い くつ か の企業 ではs従 業 員 の 出社 ・退社 時 刻 の 自主管 理 を定 めた フレ ッ
クス ・タ イム制を 実 施 しsか な りの 「成 果」 をあげ てい る。
政 府は,労 働者 に,労 働時 間,休 日の保障 と権利 を認 め るべ きであ り, した が って年 次有 給休 暇 制度 も根本 的 見直 しをすぺ きで あ ろ う。現 在 の 労 働 基 準法39条 では,年 次 有給 休暇 の最低 「付与」 日数 の取 得要 件 として 「一 年 間継 続勤 務 し全 労働 日の八 割 以上 内勤 した 労働 者 」 とな っ てい る。 この 規定 を前 提 とす る限 りsパ.̲̲..ト・タ イマー は年 次有 給休暇 を とれ な い ので は ない か。ILO47号 勧 告 では,労 働 者 の継続 勤 務が 同一 企業 ・複数 企業 に か かわ らず,そ の労働 者 の過 去 の労働 に 対 して発生 す る権 利 であ る と規定
してい る。 そ うだ とす れ ば,日 本 の 労働 基 準法 の年 次有 給休 暇 制度 は,使 用 者 の付 与義 務 で あ って労働 者 の権 利 として義 務づ け てい な い。
労 働 ・市 民 の経済 政 策は,基 本 的に は,労 働 ・市 民 の労 働権,人 格権, 自由権,休 息権 を 保証 す るた めの経 済 的条 件 づ くりにあ る とお も う。 そ う だ とすれ ば,年 休 はILO勧 告 に あ る よ うに労 働 者 の権利 で な けれ ば な ら ない。 す でに労 働 者 の週休 二 日制,年 次 有給 休暇 の完 全 実施 は 国民 経済 に とって も,世 界経 済 の不 均衡 是 正 に と っ て も き わ め て 重要 な課題 な の で あ る。
したが って労働 ・市民 の経済 政 策に とって労働 時 間短縮 と休 日につ い て