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『犬からみた人類史』書評コロキアム:はじめに

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東京外国語大学海外事情研究所, Quadrante, No.22, (2020) Tokyo University of Foreign Studies, Institute for Global Area Studies, Quadrante, No.22, (2020)

◆書評特集趣旨説明◆

『犬からみた人類史』書評コロキアム:はじめに

大石 高典

OISHI TAKANORI

原稿受理日:2020.1.31.

Quadrante, No.22 (2020), pp.117-119.

本稿の著作権は著者が保持し、 クリエイティブ ・ コモンズ表示 4.0 国際ライセンス下に提供します。

https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja

 この特集は、2019年10月1日に東京外国 語大学海外事情研究所でおこなった『犬から みた人類史』(勉誠出版、2019年)1について の書評会の記録である。当日は延べ20名の 参加者を得た。3人の評者からの批評を受け て、3人の編者が応答を行い、その後に会場 に開いて質疑応答をおこなった。そこでの議 論を踏まえて、発表者に当日の発表を論考の 形にしていただいた。

 『犬からみた人類史』は人類最初の家畜で ある犬に着目し、その犬の視点から人類史を 捉えなおそうとする。犬と人類がともに暮らす ようになった歴史はおおよそ 2~5 万年程度 と、人類進化の歴史全体の中では比較的最近 のことである。しかしその数万年の間に両者 は最も身近なパートナーとして関係を築いてき た。犬は、人の社会の内に深く入り込みなが ら人ではない、という不思議な存在になってい る。アンビバレンスをはらんだ犬と人の間の微 妙な距離感の揺れ。そこから生まれる視差を 使って、人類史を捉えなおしてみたらというの が本書のもととなったアイデアである。

 中部アフリカ、内陸アラスカ、中米をフィー ルドにする共編者の人類学者3人は、2016

1 大石高典・近藤祉秋・池田光穂編『犬からみた人類史』2019年5月初版刊行、A5判・並製、480頁。定価:3800 円(+税)ISBN: 978-4-585-23070-0

年から2018年にかけて動物行動学、動物心 理学、動物考古学、民俗学、現役の狩猟者な ど20人の共同研究者とともに議論を重ねた。

その結果を、犬と人の関わりの始まりに焦点を 当てる「第一部:犬革命」、関係の多様化を 見る「第二部:犬と人の社会史」、犬と人のこ れからに向けた想像力を試す「第三部:犬と 人の未来学」の3部構成にまとめた。本全体 では、地球上に遍在する犬に着目することで、

その犬と「共生」関係を築いてきた「人」の 環境と生業、近代、実存についても掘り下げ る内容になっている。

 この後に掲載する評とリプライ・コメントで は、本書の各章・コラムについて数多く言及 がある。すべてに概要を付けることは紙幅の都 合でできないし、本の序章に詳しめの要約を 載せてあるので手っ取り早く全体像を知りたい 方はまずそちらを参照されたい。ここでは、読 み進めるうえで最低限必要と思われる目次を抜 き出しておくにとどめたい。

序章 犬革命宣言―犬から人類史をみる 第1部:犬革命

Introduction to Book review colloquium on the book Human History from Dog’s Perspective,

Bensei Publishing 2019

東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター Tokyo University of Foreign Studies, African Studies Center

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『犬からみた人類史』 書評コロキアム : はじめに

第1章 イヌはなぜ吠えるか―牧畜とイヌ(藪 田慎司)

第2章 犬を使用する狩猟法(犬猟)の人類 史(池谷和信)

第3章 動物考古学からみた縄文時代のイヌ

(小宮孟)

第4章 犬の性格を遺伝子からみる(村山美 穂)

第5章 イヌとヒトをつなぐ眼(今野晃嗣)

第6章 犬祖神話と動物観(山田仁史)

【コラム1】文明と野生の境界を行き来するイ ヌのイメージ(石倉敏明)

【コラム2】人と関わりをもたない犬?―オー ストラリア先住民アボリジニとディンゴ(平 野智佳子)

第2部:犬と人の社会史

第7章 カメルーンのバカ・ピグミーにおける 犬をめぐる社会関係とトレーニング(大石高 典)

第8章 猟犬の死をめぐる考察―宮崎県椎 葉村における猟師と猟犬の接触領域に着目 して(合原織部)

第9章 御猟場と見切り猟―猟法と犬利用の 歴史的変遷(大道良太)

第10章 「聞く犬」の誕生―内陸アラスカに おける人と犬の百年(近藤祉秋)

第11章 樺太アイヌのヌソ(犬ぞり)(北原次 郎太)

第12章 忠犬ハチ公と軍犬(溝口元)

第13章 紀州犬における犬種の「合成」と 衰退―日本犬とはなんだったのか(志村真 幸)

第14章 狩猟者から見た日本の狩猟犬事情

(大道良太)

【コラム3】南方熊楠と犬―「犬に関する民俗 と伝説」を中心に(志村真幸)

第3部:犬と人の未来学

第15章 境界で吠える犬たち―人類学と小

説のあいだで(菅原和孝)

第16章 葬られた犬―その心意と歴史的変 遷(加藤秀雄)

第17章 犬をパートナーとすること―ドイツ における動物性愛者のセクシュアリティ(濱 野千尋)

第18章 ブータンの街角にたむろするイヌたち

(小林舞・湯本貴和)

第19章 イヌとニンゲンの〈共存〉について の覚え書き(池田光穂)

【コラム4】イヌのアトピー性皮膚炎(牛山美穂)

【コラム5】シカ肉ドッグフードからみる人獣共 通のウェルビーイング(立澤史郎・近藤祉秋)

あとがき 執筆者一覧 索引

グロッサリー

 書評会を企画するにあたって、野生動物 保護管理の実務経験をお持ちで現役獣医 学生である村上正樹さん(日本獣医生命科 学大学獣医学部)、文化人類学の視点から 日本における人とクマの関係の研究に取り 組んでいる松 本 朋 華さん( 東 京 外 国 語 大 学大学院総合国際学研究科修士課程)、そ して歴史学の立場から人と動物の関係史を 研 究されている伊 東 剛 史さん( 東 京 外 国 語大学大学院総合国際学研究院)に評者 を 引き受 けていただ いた。 伊 東さん 以 外 の2人はそれぞれ学部と修士課程の学生だが、

アプローチは異なるものの、これから人と動物 の関係に職業として関わろうとしている若者が 本書をどう読んだのかを知りたくてお願いした。

また本特集を編むにあたって、書評会に参加 くださった本書編集者の福井幸さんにもご寄稿 をいただくことにした。本書を編集するなかで 得られた経験や発見について、編者とは違う 視点から書いてくださっている。

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大石 高典

 最後に、本特集を編むにあたり本書評会の 実現にご協力・ご助言をくださった同僚の小 田原琳さんと、会場を提供くださった東京外国 語大学海外事情研究所に感謝したい。

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