ペ ル ー の 二 重 言 語 教 育 の 二 類 型

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(1)

ペ ル ー の 二 重 言 語 教 育 の 二 類 型

青 木 芳 夫

はじめに

ペルーの現行憲法(一九七九年七月一二日発布)は︑第

三五条においてつぎのように規定している︒

﹁国家は土着語の調査研究を奨励する︒国家はまた︑ケチュ

ア︑アイマラそのほかの共同体がかれら自身の言語によって初

等教育を受ける権利を保証する︒﹂

この条項は︑土着語モノリンガルないし初歩的バイリン

ガルが優勢な学区に二重言語教育校を設置し︑初等教育の

低学年(四年間)では土着語を併用して教育しようとした

二重言語教育令(一九七三年二月八日付)の方針を再確認

するものであった︒

土着語を母語とする教師がそのような学区で勤務するば

あい︑必要にせまられて土着語で説明したり補足したりす る︑いわば自然発生的な二重言語教育を別にすれば︑なん

らかの体系的な二重言語教育を受ける児童はいまなお非常

(1)に少数にすぎない︒本稿で比較検討するプーノ・プロジェ

クトとセルバ・プロジェクトはそのかずすくない実践例で

ある︒

ペルーは︑約=二〇万平方キロの国土に一八〇〇万前後

の人口を擁している︒そして北西から南東方向に走るアン

デス山脈がその国土を︑太平洋岸のコスタ(沿岸部)︑山岳

・高地のシエラ(山岳部)︑以東のセルバ(密林部)という

特徴的な地帯に三分している︒そして︑スペイン語モノリ

ンガルが優勢な都市的で西欧的なコスタにたいして︑シエ

ラとセルバは農村的で土着的である︒

先スペイン末期にはシエラではインカ帝国がさかえ︑ケ

チュア語が公用語として通用していた︒今日︑プーノ・プ

一39一

(2)

表1プ ー ノ県 に お け る5才 以 上 の県 民 の 常 用 語別 構成(1981年)

三重言語  

語︾

巧ノ

別ノ

ケチ ュ ア語

ス ペ イ ン語 モ ノ 5才 以 上

の 人 口

17,697 (2.4°0) 169,494

(22.5°0) 117,106

(15.6°0) 230,564

(30.6°0) 139,831

(18.6°0) 72,406

(9.6°0) 752,663

(100°0)

全県

11,263 (1.5°0) 46,715

(6.2°0) 4,840

(0.6°0) 106,528

(14.2°0) 22,494

(3.0°0) 49,109

(6.5°0) 243,576

都市

6,434 (0.9°0) 122,779

(16.3°0) 112,266

(14.9°0) 124,036

(16.5°0) 117337

(15.6°o) 23,297

(3.1°0)

農村 509,087

(出 典)INE,CensosnacionalesVIIIdepoblacionIIIdevivienda12deJulio de1981:Resultadosdefinitivosdelasvariablesinvestigadaspormuestro, VolumenB,Nivelnacional,TomoI(Caracteristicasdelapoblacion),Lima,

1984,pp.197‑198か ら 作 成 し た 。

ェク

︒フ

ン語

ア語

マラ

調 1

のプ︒フ︒フニ重

ェクい︑西ツ間の政

(一一二)

ツ技(O①︒︒○①ωo

ωH↓①8Nω日Φb)

へて

ア語

の規への

ア語

︒プの舞1って

マゾ

(・アマゾン)

一40一

(3)

図1 1977年 現 在 、二 重 言 語 教 育 校 の置 か れ て い たセ ル バ の 諸民 族 集 団

"、

¥¥¥'i

の●

■̀画9,●晶

Gruposidiomaticosdela SelvaPeruanaenlosque existSanCentroeEduca‑

tivosB111ngUe8enelano 1977.

6789012345678901234111111111122222,

.・.15・ ..i1.

Aguaruna Huambisa Candoshi‑Shapra Achual(Jibaro) Arabela

HuitotoMurui Bora Orej6n Ocaina Yagu盈 Ticuna Chayahuita Shipibo‑Conibo P#ro Capanahua Caehibo Amuesha CampoAshsninca Cashinahua Sharanahua‑Marinahua Celina Machiquenga Amarakneri QuechuadelPastaza

ー し一試

〔出 典 〕Larson/Davis/Davila,oρ.CZt.,P.28.

一41一

(4)

表2ペ ル ー ・ア マ ゾ ンの 土 着民 族 集 団 民 族 集 団 ([コ 内 は各 集 団 の 固 有 の 名称)

Achual[Aentsコ Aguaruna[Rents]

Amahuaca[Nokakaiwo]

Amarakaeri Amuesha[Y$nesha]

Arabela&Vacacocha[Tapueyacuacaコ Bora[Memuina]

Campa‑[Ashaninca],Nomatsiguenga&Poyenisati Candoshi(Shapra&Murato)

Capanahua[Nuquencaibo]

Cashibo‑Cacataibo[Uni]

Cashinahua[Caxinyoコ Chandinahua Chayahuita[Canpopiyapi]

Cocama‑Cocamilla Culina[Madija]

[Ese'jja](Huarayo) Huachipaire Huambisa[Huampis]

Iquito Jibaro[Rents]

Lamista[Llakwash]

Machiguenga[Matisigenka]

Marinahua Mastanahua

[Mats6s](Mayoruna) Ocaina

Orejbn‑Koto Piro

Quichua(delNapo) Quichua(delPastaza) Quichua(delTigre)

Sapiteri,Arasaire&Pukirieri Secoya(Angoteros,Pioje) Sharanahua

Shipibo‑Conibo Ticuna Urarina wltOtO Yagua Yaminahua

[lbo:tsa]

[Maai]

[Yine]

[lnga]

[Alama]

[Pai]

[Onicoinコ

[Duuxuguコ

[Nihamwa]

[D6wゑ]

Jivaro Jivaro Pano Harakmbet Arawak Zaparo Bora Arawak Jivaro Pano Pano Pano Pano Cahuapana Tupi Arawak Tacama Harakmbet Jivaro Zaparo Jivaro Quechua Arawak Pano Pano Pano Huitoto?

Tucano Arawak Quichua Quichua Quichua Harakmbet

Tucano Pano Pano Ticuna Tucano Huitoto Peba‑Yagua Pano

総 計

推定人 口

㎝ ㎜ ㎜ 畿 飛 ㎜ 魏 鷺 魏 ㎜ 鑑 論 ㎜ 姻 蹴 5︒ ㎜ 鑑 瑠 ㎜ 謝 m 揺 ㎜ ㎜ 謝 認

a5あ4偽訊L555LαL島駄a島α包あaあ232212

1

201,462

(出 典)StephenCorry,"Losciclosdeldespojosistematico",PuebloIndio‐Peru,

AnoI・No・1,1985,P・52・ こ れ ら 以 外 に も 識 別 可 能 な 集 団 が10く ら い 存 在 す る 。

な お 、[]内 の 固 有 の 名 称 は つ ぎ の 記 事 か ら 抜 き 書 き し た 。"Losindiosquèforma' elILV",PuebloIndio‐F'erti,AnoII,No.5,1986,p.44.

‑42‑一

(5)

る︒そのうちセルバの土着語人口は二五万人と推定され

る︒S・コリーによって作成された表2によれば︑かれら

は三九の民族集団︑一五の語族から構成されている︒

このセルバ・プロジェクトを協力・推進してきたのが米

国のプロテスタント系のオクラホマ大学夏期言語研究所

(ζω捧ロ8ピ冒αQ象ω膏oユoく曾碧o)という民間機関であ

る︒同研究所はペルー教育省との一九四五年七月二八日付

協定によりセルバの土着語の研究と﹁道徳的愛国的価値に

かんする﹂教科書の翻訳に着手し︑さらに一九五二年=

月二八日付教育大臣令により︑ウカヤリ県プカルパ市近郊

のヤリナコーチャで二重言語教師の養成を担当することに

なった︒セルバ農村キャンペーンの一環として︑土着識字

層を教師とする特殊学校を設立し︑土着語児童に基礎的文

化(読み書き・算数)・職業訓練・文明生活の規範.国民

理念・保健衛生技術を教育するためであった︒そして一九

五三年度に一一人の教師と六民族集団・=共同体.約二

七〇人の生徒によって開始された二重言語教育は︑一九七

七年までには三二〇人の教師と二四民族集団.二一〇共同

体・約一万二〇〇〇人の生徒を擁するまでに成長し︑なが

らくペルーの二重言語教育の主流を形成してきたのであ ︒フ︒プェク

・モ()

(2)ンジショナル・モデル(移行型)に属する︒これからは両

プロジェクトの二重言語教育方式を︑それぞれGTZ方式︑

ILV方式と呼ぶことにする︒なお︑本論にはいるまえに︑

二点断っておく︒第一に︑本稿はおもに教科書ならびに教

師用手引によって両方式を比較検討するが︑特にセルバ.

プロジェクトについては︑これまでに入手しえた資料は非

常に限定されており︑したがって本稿の分析結果もまた暫

定的なものとならざるをえない︒第二に︑本稿はあくまで

方法論を比較することを目的とするものであり︑そのため

両プロジェクトの背景にあるはずの歴史的・風土的.言語

学的相違は可能なかぎり考慮からはずし︑その検討は別稿

1 ニニ重言語教育ースペイン語と土着語1

土着語の文字言語化

一43一

(6)

ペルーの土着諸語は︑インカ帝国の公用語であったケチ

ュア語を含めて︑例外なく文字をもたなかった︒つまり音

声言語にすぎなかった︒したがって土着語を教授語として

使用するためには︑まず文字言語化する必要があった︒

文字言語化についてILV方式は非常に明快であった︒

つまり︑なるべく簡単なアルファベットを使用し︑正書法は

﹁威信言語﹂であるスペイン語の正書法に似せてつくるこ

とにした︒そのほうがあとでスペイン語を学習するときに

(4)役に立つ︑というのが理由であった︒ここでは識字化その

ものよりもスペイン語への移行のほうが重視されている︒

ケチュア語については︑ペルー政府は一九七五年一〇月

一六日の教育大臣令第四〇二三号により﹁一般的基礎アル

ファベット﹂を制定し︑正書法の統一をこころみている︒

ただし方言間の差を考慮して︑方言ごとに多少の補正が加

えられている︒クスコ県やプーノ県で話されているケチュ

ア語(クスコーーコリャオ方言)については五母音と二六子

音の計三一音素に対応するアルファベットが制定された︒

正書法に関連して注意すべき点は︑ケチュア語もまた何

世紀にもわたりスペイン語の干渉・侵蝕をこうむってきた

ことからくる借用語の問題であろう︒同法は﹁まだ完全に

Φ?

<o﹃oま口o

(5)GTZン語

ア語ンガ

ン語一一o(本)

Φ︒・O鼠﹂()一ω

ュアo宅霧一をo8

()9

一冨$()が国巳貯訂

O8(コ市)のoωρoOロωρ

ン語の発

.9讐霞αΦ8口σqq日讐︑︑GTZ

ンガ

て︑つ言

2

二重二言

一44一

(7)

表3セ ル バ ・プ ロ ジ ェ ク トにお け る母 語 〔土 着 語 〕とスペ イ ン語 の学 年 別 比 率 学 年

1a年

1b年

2年

3年

4年

母 語

80%母 語 の読 み書 き。 母 語 に よ る全 教 科 の教 育 。

60%母 語 の読 み書 き。母 語 に よ る全 教 科 の教 育 ・説 明 。

50%母 語 の 読 み書 き。 多 くの教 育 は 母 語 に よ る。

35%母 語 の 読 み書 き。 母 語 に よ る説 明。

20%母 語 の作 文 。 母 語 に よ る説 明 は 必 要 な と きのみ 。

20%教 室 の 用 語 に親 しむ こ と。 第 二 言 語 と して の ス ペ イ ン語 の 口頭 教育 40°o教 室 の 用語 に親 しむ こ と。 口頭 スペ イ ン語 の つづ き。 スペ イ ン語 の 読 み書 きの 開始*。

50%口 頭 スペ イ ン語 ◎ スペ イ ン語 に よ る教 課 の復 習 。 スペ イ ン語 の読 み 書 き。

65%多 くの 教 育 は スペ イ ン語 に ょ る。 口頭 スペ イ ン語 。 スペ イ ン語 の 読 み書 き。

80%ス ペ イ ン語 に よ る全面 的 カ リキ ュ ラ ム。 口頭 スペ イ ン語 。 スペ イ ン 語 の読 み 書 き ・作 文 ・口述 筆 記 。 ..第 二 言 語 の 読 み 書 き は

、 現 在 で は3年 の と き か ら 開 始 され る。 し か し 、 ス ペ イ ン 語 人 口 と つ ね に 接 触 の あ る グ ル0プ は 、 も っ と早 く開 始 す る こ と を 望 ん で い る。

(出 典)Davis,"Lasescuelasbilingiies",en:Larson/Davis/Davila,op.CZt.,P・147・

・四の導

(①一㊤OH6一ひ5)

(Φ器ω)

ン語

っぱン語

(︒︒ド冨

)ン語

(

い)使"c

4GTZ

()

二重 語としてのスペイン語教育を規定している︒しかし︑母語

である土着語と国家語であるスペイン語との役割分担につ

いて︑両方式の考え方にはへだたりがある︒

表3は︑ILV方式における両言語の役割分担(言語科

目と教授語の両方における)を示している︒明らかなよう

に︑学年があがるにつれてスペイン語の比重が高くなり︑

やがてすべての授業がスペイン語でおこなわれるようにな

る︒

一45一

(8)

表4プ0ノ ・プ ロ ジ ェ ク トに お け る母語 〔土 着 語 〕とスペ イ ン語 の役 割 分 担

母 語 第 二 言 語 と して の ス ペ イ ン語

1

土 着 語 の使 用 に よ る読 み書 きの 教 育;そ の ほ か 口頭 表 現 力 や理 解 力 な どの言 語 能 力 の 開 発 。

下 半 期 か ら 口頭 レベ ル で のみ 第 二 言 語 として の スペ イ ン語 教 育;聴 解 力 や 口頭 表 現 力 の 開 発。

2

土 着 語 の 使 用 に よ る言 語 科 目の 総 合 的 発 展(口 頭 表 現 力 ・読 解 力 ・作 文 力 ・文 法)。

口頭 ・書 記 両 レベ ル で の第 二 言 語 と して の スペ イ ン語 教育;ス ペ イ ン語 で の読 み 書 きの 開 始 と口頭 能 力 の定 着 ・向上 。

3〜6年

土 着 語 の 使 用 に よ る言 語 科 目の 総 合 的 発展(口 頭 表 現 力 ・読 解 力 ・作 文 力 ・文 法)。

口頭 ・書 記 両 レベ ル で の ス ペ イ ン 語教 育;読 解 力 の 定 着 と聴 解力 ・ 口頭表 現 力 の向 上 。

(出 典)〔J:23〕

き能力だけでなく文法をふくむ言語能力一般を︑まず土着

語で教育している︒文法については︑教育省の初等教育用

指導要領では﹁スペイン語﹂で教育すべきだとされている

が︑これを﹁母語﹂と読みかえて︑したがって︑ケチュア

語を母語とする児童にはケチュア語の文法から教えるべき

だとしている︒そして最終学年つまり六年生のときには︑

両言語の相違に気づかせるような仕方でスペイン語と母語

の文法を教える︹}"ωω‑器︺︒このような考え方は他の科

目についてもいえ︑スペイン語と土着語が教授語としての

役割を共有できるようになることが理想とされている︒こ

こからは︑スペイン語と土着語を教授語としても言語とし

ても対等にあつかおうとする姿勢がうかがえる︒

このように︑ILV方式は土着語をスペ,4ン語化までの

﹁通過言語﹂とみなす傾向があり︑それにたいしてGTZ

方式はスペイン語化したあとでも児童が完全に自己表現の

できるような﹁持続言語﹂となることを土着語にのぞんで

いるのである︒

3教科書にみる使用例

つぎに︑ILV方式とGTZ方式の立場の相違が︑じっ

さいにどのように教科書の中に反映してくるかを見てみよ

一46一

(9)

2

Objetivo Objetivo La工ndependencユa

田 田

田幽 田

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NUESTRAPATR工Aσ M工ENTOSYT工ENE CONOCER.

ELPERU,VIVIDACONTECI‑

PERSONAJESQUEDEBEMOS

〕onエborユ Baquebobetanmaestroyoyoitiiqui Aaronmescojahuequihuinotabo.

Baquebaononanticopimaestron SanMartinnannon

queyoniribimahuacanti Cristobal.Colonmannon

コatoyo■ し濫

ゴatomahuaqu■nしi §habainpiconエ.

incabojascaa彗hon エquエ anユparonoaコan工caa

iquimaestrobetan

(10)

2二年

(H)"Nc︒b︒

の借った

Φ()Φω8o()

ωoド﹂()

oh①ωω#o()

εo()げ8まロ(課)

ン語使

ン語

乱胃

GTZ

使

(囚口︒︒一)ン語

(7)源のものは一二にすぎなかった︒ケチュア語式の発音どお

りに表記されていることはいうまでもない︒

しかし︑土着語を教授語として︑しかも対等に使用する

ためには克服すべき課題があった︒これまでそのような機

表5GTZ方 式 にお け るケ チ ュ ア 語 の教 授 ・専 門 用 語

ケチ ュ ア語 か らの直 訳

日 本 語

ケ チ ュ ア語 ス ペ イ ン語

話 す こ と 行 為 す る人

「rimay」の 過去 分 詞 形 大 きな文 字

休 止 す る しる し つ め こむ

うそ の こ とば

主語 述語 大文字 句点 完成す る

間違 ったことば rimay

ruwaq rimasga hatungelga samaych'iku hunt'achiy llullaSI‑‑11

 ノ oracion subeto predicado mayuscula coma

completar palabrafalsa

(出 典)B廿ttner,oP.cit.,P.205の 表 か ら の 抜 き 書 き 。

会を奪われてきたこ

とからすれば当然の

ことであるが︑授業

用の用語や専門用語

を土着語でつくって

いかねばならなかっ

たのである︒表5は︑

言語の授業用にGT

Z方式が考案してき

たケチュア語用語の

例である︒算数の教

科書の名前もスペイ

ン語からの借用語の

﹁︼≦⇔ユヨ讐涛◎﹂(もち

ろんケチュア語式の

表記)から只ロ℃霧ロ旦

(﹁数えましょう﹂の

意味のケチュア語)

にかわった︒そして︑

二重言語教師の代表

.;

(11)

が専門家に助言をあおぎながら︑授業に必要な用語(スペ

イン語)を洗いだし︑土着語の中から代替可能な単語を選

(8)びだし︑教師全員の承認によって最終決定した︒このよう

な作業が他の科目についてもつづけられている︒

図3は︑GTZ方式の三年生用の算数の二重言語教科書

(ケチュア語とスペイン語︑一九八五年)︹O"刈︺からと

ったものである︒ここでは両言語は対等であるし︑問題も

変えてある︒ケチュア語のばあい︑先スペイン期より十進

図3

法であったことが有利かもしれないが︑GTZ方式により

児童は母語であるケチュア語(やアイマラ語)だけでも算

数能力を全面的に発達させることができる︒

これにたいしてILV方式は︑土着語による専門用語等

の工夫にはあまり積極的でなかった︒次ページの図4は︑

ILV方式による算数の土着語教科書(アグアルナ人用)

(9)からとったものである︒下線を引いた部分がスペイン語

である︒同じ文章の中でスペイン語と土着語がでてくるし

圃 口 口 口

口 口 口 口 口

訳 〕 「各 ユパ ー ナ の下 に数 字 を 書 き な さ い 」(ケ チ ュ ア語)

書 い た数 字 を 大 き な も のか ら小 さ な も の へ、 大 き な 文 字 で並 べ な さい 」(ケ チ ュア 語)

各 ユパ ー ナ の示 す 数 字 を書 き な さい 」(ス ペ イ ン語)

「これ らの 数 字 を 大 き な も のか ら小 さ な も の へ 並 べ 、 適 当 な記 号 をつ け な さい 」(ス ペ イ ン語)

HHHbO﹂d‑oωo

ωoαoωン語

の考

使

ン語

ILV

ン語

一49一

(12)

図4

● σ

ー口

1+1・ 2‑i=

LのCC16n66

:Prof・ ・oτ ・cM,・ 重 凹里⊥ よ2 ,鮎旦t・k。 閥 五nd二9エ ユ皇!巴n㎝1・

2u・h1胡,剛 ・d〜 且蜘mUno』 些臓 凶5血

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、P・ ・f・…1聖 ̲̲9・ ・・wie幽 ・ちuehhld飢

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4Uch重old・ ・P叩1,1・‑irctcton鱒 ・yc・k・mdn・1 .貼遡鳳

Yr璽 山n・

〔コ 凹 〇 四 凹 四

ロ 回 ロ 国

m ] 国 国 口

国 ロ 回 回

(88)

(8H7

(10)oぴαq幽㊤)ぶ︑ILVった

ン語の教

に︑ 教授語としての土着語の発達は中途半端に終わ

り︑児童は母語である土着語にたいして︑知ら

ず知らずのうちに劣等感をいだくようになるで

あろう︒

三 二重文化 教育

使っての教育﹂︑

容を統合したカリキュラムによって児童の総合的発展﹂を

めざす教育である︹匂"Hω︺︒

GTZ方式によれば︑これまでの学校教育が土着語児童

の自己実現を阻んできたのはスペイン語の強制だけではな 1二重文化教育と﹁文化に適応した教育﹂

二重言語教育令は︑二重言語教育校のための

﹁土着語の文化的特質を考慮にいれた特別カリ

キュラム﹂の作製を命じている(第五条)︒しか

し︑その運用をめぐって両方式のあいだにかな

りの相違を認めることができる︒

GTZ方式は︑みずからの方式を二重言語.

二重文化教育(巴ロ80ま口げ臣ロαq自①玄︒隻ロ琶)

と規定している︒つまり︑コ一言語と二文化を

﹁地域文化︹"土着文化︺と国民文化の内

一50一

(13)

かった︒西欧型のコスタ的・都市的文化によって規定され

たカリキュラムそのものが障害となってきたし︑そのよう

なカリキュラムで学校教育をうけてきた結果︑土着語人口

自身の心の中に土着語や土着文化にたいする偏見と劣等感

がすくうようになった︒したがって︑児童の属しているア

ンデス的・農村的世界を確認するところから︑つまり二重

文化教育として︑出発しなければならないとする︹↓"α︺︒

自然科学を例にとってみよう︒二年生用の手引によれ

ば︑アンデス農村には科学的に裏付けられた伝統的な知恵

や技術︑自然現象にたいするアニミスモ的解釈︑植物や動

物にかんする神話︑そして人間と自然とのあいだの対等の

関係を表現する儀礼がある︒他方︑西欧流の合理的で非人

格的な説明や︑科学的な方法があるが︑それらはアンデス

農村にはまだあまり体系的には適用されてこなかった︒し

かし︑これら﹁アンデス科学﹂と﹁西欧科学﹂は本来排斥

しあうものではなく︑共存することができる︒したがって

児童は両方の解釈を学ぶべきだし︑どちらの方法が優秀か

は課題によって変わってくるだろうし︑それは実験によっ

て決すべきだとされる︹ω"Q︒b︒︺︒ここでは両者は対等にあ

つかわれている︒ また︑アンデス科学にもとついた自然科学教育によって

伝達すべき価値として①人間と自然とのあいだの均衡のと

れた相互関係︑②自然資源の保存ならびに合理的利用︑③

土着社会を特徴づけている人間と自然の関係の同定と西欧

型社会のそれとの識別︑そして④知識・慣習・技術などの

土着伝統の再評価があげられている︹ω"c︒O︺︒したがっ

て︑西欧技術は︑これらの価値と矛盾せず︑かつ身近な資

源の利用により実現できるときにのみ︑取捨選択されて採

用される︒たとえば︑便所の設置︑野菜の保存法︑家庭菜

(11)園の耕作などの場合である︒

価値の伝達とともに重要な学習目標は︑科学的方法(観

察・計測・分類・伝達・実験・因果律にかんする仮説設定)

の開発・習得である︒もちろん︑土着技術の伝統もまた祖

先達による長期間にわたる観察・実験・解釈という科学的方

法をふまえた成果である︹ω"Q︒bO団刈㊤︺︒ただし厳密にい

(12)えば︑山田慶児の用語を援用すれば︑アンデス科学は工業

社会以前の社会に特有の﹁自然学﹂的認識に立ち︑西欧科

学は﹁自然科学﹂的認識に立つ︒二年生用と三年生用の教

科書では重複するテーマが多いが︑同じテーマについて両

方の認識方法を学習するように配置されている︒たとえ

一51一

(14)

ば︑計測の仕方をみれば︑二年生用ではいわゆる身体尺が

使用されているのにたいして︑三年生用ではメートル法が

導入されている︒

このようにして児童は︑土着文化と西欧文化を明確に識

別すると同時に関連づけながら︑土着文化の再評価︑つま

り﹁再発見﹂と﹁再伝統化﹂を行なうことができるのであ

る︹ω鱒Q◎昌o

これにたいして︑ILV方式では二重文化教育というこ

とばは使われていない︒一九六〇年代までのILV方式は

二重言語教育の目的が﹁文明化(oぞ臣鑓oま昌)﹂にあること

(13)M・A

(14)論稿﹁文化に適応した教育﹂(初稿は一九七五年)は︑一九

七〇年代のはじめにペルー政府が二重言語教育政策におい

て文化的多元主義の方向をうちだしたことにより︑ILV

がそれへの回答をせまられた結果とみることができる︒

土着文化を考慮にいれたものとして︑ジャックウェイは

つぎのような﹁形式(皆同日⇔ω)﹂をあげている︒①現地産の

資材による校舎の建築︒②授業時間の工夫(例えば︑七時

から一時まで)︒③土着語の教授語としての使用︒④児童

と同じ文化に属する教師による教育︒⑤カリキュラム(教 材・教授方法)︒

⑤について︑簡単な批判をまじえながら紹介していこう︒

まず身近にある土着のものの道具的利用がある︒イラスト

に描いたり︑小石や種子を計算に使ったり︑油料果実を石

鹸のかわりにするのがこれに当たる︒

第二に︑セルバの舞台背景的利用がある︒この傾向はス

ペイン語の教科書︹しd団O︺に典型的に見られ︑セルバを

舞台にしてさえいれば︑土着文化に適応したことになると

する考え方である︒じっさいには西欧文化のメッセージが

伝達されることがおおい︒

第三に︑自然科学や社会科学の分野では最初にセルバを

とりあげることと二年生までは︹八〇年代には四年生まで︺

二言語で教育することくらいしか配慮されていない︒GT

Z方式に見られるような土着科学技術と西欧科学技術との

あいだの緊張関係がここにはない︒

第四に︑土着語の読み方教科書はふつう﹁簡単な物語﹂

から構成されるが︑その題材として選好されるのはセルバ

の生物や家屋や民話︹国団閃︺など︑あたりさわりのない

身近なテーマである︒もちろん学年があがれば︑都市や外

国の生物や衛生などの新しいテーマもあらわれる︒そして

一52一

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