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(東女医大誌 第46巻 第12号頁 988〜991昭和51年12月)
〔原
著〕
賦活凝固時間試験法の検討
一その精度について一
東京女子医科大学麻酔科教室(主任
川真田美和子・講
カワ マ タ ミ ワ コ
教授 古
フル
師 山.
ヤーマ
谷 幸
ヤ ユキ
藤田昌雄教授)
村 佳.江・
ムラ ヨーン エ
.雄 オ
(受付 昭和51年9月28日)
Cli㎡cal Evaluatio職of Acti▼ated Coagulation Time Test
Miwako耳AWAMATA, Yos1雌e YAMAMUR,A and Yuho FURUYA Department of Anesthesiology(Chairman:Prof. Masao FUIITA),
Tokyo Women,s Medical College
The detailed technique of the activated coagulation time test(ACT test)was described. In 50 preoperative patients w量thout remarkable abnorma】physiological丘ndings, the mcan value of ACT was
142.7土13.l seconds(±:S.D.)with the range of 70 to l 93 seconds and the coef丑cient of variation was 9。2 percent.
In order to con丘rm thc reliability of the test, repeated tests were perfbrmed on 2 cases, double tests by 2 anesthesiologists on the same patients, the ef琵cts of waterbath temperature, methods of blood sam−
pling, body temperature and administrat量on of anticoagulants upon the results of the test were also per.
R)rmed.
In 15 cases of open−heart surgery, the coagulation t五me was measured beR}re the administration of heparin, during the cardio−pulmonary bypass and aRer the administration of protaminc.
It was concluded that the ACT test is clinically reliable and its reproducibility, rapidity, simplicity
and minimal expence are a伍rmed and that the test is clinically use揃l in monitoring coagulation time and mpreclse control of anticoagulation therapy in the operating room,はじめに て紹介されたactivated coagulation time test
大量出血,大量輸血時や,ヘパリン治療中患 (ACT法)は簡便な方法であり,短時間(2〜3
者,血友病患者などの緊急手術,あるいは長時間 分以内)に凝固が完了する点で,術中の凝固時.間 体外循環時に,凝固時間を知ることは,麻酔管理 測定法として注目すべきであると考え,本法の精 上有用な指標となる,Hattersly(1966)1)によつ 度を検定した.一988一
7
方 法
器具:内径10㎜,長さ100㎜の瀞轍ガラ獄
験管で内面に傷のないもの.5m1ディスポーザブル注 射器.ストップウォヅチ.37℃恒温槽.
試薬:Celite F535(diatomite,共栄化学)12mgをあ らかじめ上記試験管内に入れておく.
実施法:試験管を370Cに保温しておく.静脈採血に際 しては,穿刺後駆血帯をはずし,2本注射器法(two・
syringe meth(》d)により2〜3m1採血し,そのlm1を 試験管内に注入し,ストップウォッチを作動させる(血 液が試験管内に注入された瞬間).直ちに,泡立たぬよ うに注意しながら30秒間手でよく振罎させる.以後,恒 温槽に戻し,5秒毎に傾斜して血液の流動性を観察し,
流動性を失って試験管をさかさにしても血液が落下しな い時点を凝固完了とする.
動脈採血に際しては,留置カテーテルの死腔の約2倍
:量に相当する血液を吸引した後,別の注射器をつけかえ て採血する.
結 果
1.ACT法による正常値
術前検査で,貧血,低蛋白血症を認めず,また東 京女子医大中検血液部で測定された出血時間,凝 固時間が正常範囲にあり,術前止血剤の投与をう けていない一般外科手術予定患者50人について,
麻酔導入直後に測定を行なった結果,activated coagulation t量me・(ACT値)の最:少値70秒,最大 値195秒,平均142.7±13,1秒(±S.D),変動係 数9.2%であった.
2.重複測定
2症例について5−10前おきに10回の採血を行 い,重複測定を行なった結果,第1例は平均値
171±3秒(±S.D),変動係数1.8%,第2例は平 均値100±3.5秒(±S.D),変動係数3.5%であ った.3.二重試験
A,B 2人の麻酔医が,ほとんど同時に異なる静 脈より採血して測定を行なった結果,20例の検体
についてAおよびBの平均値に有意差を認めなか
った(P<0.05),
4.術前凝固時間(Lee・WMte法)との相関関
係
20症例について東京女子医大中検血液部で行わ
れた術前凝固時間仙ee・White法)とACT法に
よる術中凝固時間との相関関係は認められなかっ た(γ=0.044).5.測定温度による誤差
手術室に常備されている血液加温装置が40℃サ ーモスタットを備えているため,これを用いた場 合の測定値と,37℃恒温槽を用いた場合の測定値 の差を調べるために20症例について検体を2分し て37。Cおよび40℃恒温槽中でそれぞれ測定を行 なった.全例とも40℃における測定値が小さく,
37℃における測定値との差は,最小5秒,最大25 秒,平均6.5±2.3秒(±S.D),変動係数35%で
あった.この結果ACT値の測定に際しては37。C 恒温槽を用いる必要があると認められた.
6.採血法による誤差
心臓外科手術などでは,動脈留置カテーテルよ り採血する方法が便利である.しかし回路中のヘ パリン溶液が測定値に及ぼす影響が考えられるた め,20例について,動脈留置カテーテルよりの採 血と同時に静脈より直接採血して測定値を比較し た.動脈採血の方が測定値が大きい傾向を示し,
静脈採血との差は最小値ゼロ,最:大値50秒であっ た.この結果動脈カテーテルよりの採血に際して は,回路内の洗浄を充分に行うべきであると考え
られた.
7.体温による変化
成人,形成外科手術5例,鼓室形成術5例につ
いて,術中直腸温37−35.5。Cの範囲で約10。C変化 する毎に測定を行なった結果では有意の差を認め なかった。8.止血剤投与による変化
術中出血量500m1以下の産婦人科手術15例に
ついて,3例ずつの5群に分け,アドナ,ケーワ ン,フレマリン,タコスチフタン,マネトールを それぞれ2アンプル静注し,15分後の変化を調べた.マネトール2アンプル静注群3例のうち2例
で凝固時間が120秒から105秒に,145秒から
120秒にそれぞれ短縮した.他の止血剤投与では 有意の差を認めなかった.さらに他の5例につい 一989一8
表1 体外循環中ACT値の変化
希釈 君
症例
iNo.)
年令
i才) 性 体重
ikg) 病名一→術式 潅流
i分)
流量
^分
中 和 後
(率刀j時間 im β・)幣
㌦喬
5分 [10分 120分置130分 1 28 ε
2 5 ♀ 3 42 3 4 60 δ 5 36 ♀ 6 12 ε 7 15 ♀ 8 59 ♂ 9 37 ♀ 10 12 δ 11 38 ♀ 12 43 ♀ 13 28 δ 14 4 ♀ 15 19 ♀
62 VSD十AI一→VSD closure 20 18 PS一・valvotomy 14 55 MSI十TI→MVR十項目ring 20 50 Angina−TripPle Bypass 19
53 PDA一→1・igation 20
32 TIF−repair 28 53 ASD−closure 1745 MI−MVR 20
44 MS−MVR 2030 T!F−repair 29 56 MSI一・MVR 19 47 ASD一→closure 18 62 VSD十AI→VSD closure 20
15 T/F一ゆrepair 10
38 PIF一吟repair 27129 58 148 155 35 114 55 110 117 232 47 46 129 110 105
72〜80 83〜98 70〜80 80〜90 14〜18 74〜87 90〜95 80〜85 54〜64 60〜76 56〜64 60〜65 76〜80 60〜80 75〜85
120 115 130 125 115 125 110 145 140 145 120 115 105 125 130
600以上 180 600 135 600以上600以上 600以上
110
408 150 600以上 130 600以上600以上 600以上 600以上 600以上 500 600以上 585 600以上 600以上
120
300 110 150
600以上
600
120
210 120
130 600以上 600 600
600 505 600 600以上
120 115 385 220 120 130 135 600 600 450 600以上 350 190 420 600
(注)1.
2。
3.
人工肺はすべてbubble type 症例5はF−Fperfus三〇n
ACT(秒)600以上とは,10分以後の測定を中止したもの
て上記止血剤をそれぞれ1アンプルずつ同時に静 注した結果でも有意の差を認めなかった.上記止
血剤がACT値に及ぼす影響についてなお検討を
要すると考えられる.9.体外循環中の変化
昭和50年7月から12月の心臓外科手術例より無 作為に15例を選び,ヘパリン投与前のACT値,
人工心肺回転開始1時間後でヘパリン追加投与前
のACT値,プロタミン中和後5,10,20,30分 後のACT値を,それぞれ動脈カテーテルより採
血測定した.結果は表に示すごとく,症例によって著しく異なるACT値の変化が容易に追跡でき
た.
考 察
凝固時間の測定は,各凝固因子の反応終点を測 定するのみで,凝固過程の異常を知ることはでき ない.また凝固因子の異常があっても正常値を示 す場合もある.しかし凝固時間の延長は,凝固因 子の著しい減少,循環血液中の抗凝血素の増加,
線維素溶解現象充進のときに認められ,凝固時間
を知ることは麻酔管理上有用である.Activated coagulation time methodは,第XI因子をCelite に吸着させることで凝固が促進することを応用し たものであり,測定時間が短かくてすむことが利 点である.本法を紹介したHattersley(1966)1)
によれば,他の血液学的検査に異常を認めない 5000例のACT値は最小値60秒,最大値160秒,
平均146.7±13.0秒,変動係数8.9%であり,わ れわれの結果もほぼ一致する.重複測定,二重試 験の結果でも良い精度であることが認められた.
Bullら(1975)2)3)4)は,循環血液中のヘパリン効 力を判定する方法として,定量的プロタミン滴定 試験よりも本法の方が血漿量や患者のヘパリン感 受性の差に影響されない点で有利であるとしてい る.・15例の心臓外科手術中に測定した結果では,
速やかな臨床経過に対応して経時的測定が容易に 行いえた.本法により,麻酔医が手術室内で簡便
に凝固時間を測定することは,大量出血,輸血
時,長時間体外循環,ヘパリン治療中患者,血友 病患者などの術中管理に役立つと考えられる.一990一
.9
結 .語.. ・
術前血液学的検査値に異常を認めない50例の成 人について,賦活凝固時間試験(Activated coa−
9ulation time test)を行なった結果,最小値70秒,
最大値195秒,平均142.7±13.1秒(±S.D),変 動係数9.2%であった.本法は精度が良く,非常 に簡便であり,測定に要する時間が短くてすむこ となどからも,術中凝固時間のモニター法として 有用であると認められた.
終りに,ご協力いただいた本学一般外科,形成外科,
産婦人科,心臓外科各位に感謝いたします..また,
diatom三teに関してご教示いただいた本学無機化学・岩 佐寵子先生に感謝いたします.
文 献
1)}血tte 51ey, P.G.3 Activated coagulatlon time
ofwhole blood.JAMA 196(5)436一一440(1966)2)Bu鵬M.H., W.M. Huse, B.S. BuU=Evalua−
tion of tests used to mo㎡i止or heparin therapy
during extracorporeal circulation・Anesthesio−logy 43(3)346〜353 (1975)
3)Bu1馬B.S., R.A. Ko叩man, W.M. Huse,
B.D. Brigg酬 Heparin therapy during ex.
tracorporeal circulation・1・Problcms inherent in existing heparin protocols・JThoracic car−
diovasc Surg⑤9(5)674〜684(1975)
4)Bu皿, B.S., W.H.恥5e, F.S. Brauer, RA。
Korpm叩3耳eparin therapy du血g extra−
corporeal circulation。 I I. The use of a dose−
response curvel. to individualize heparin and
protamine dosage. J Thoracic Cardiovasc Surg 69(5)685〜689(1975)一991一