スパイラル地中熱交換器の採熱性能に関する検討
清水建設 技術研究所 正会員 ○米山 一幸,鈴木 道哉 イノアック住環境 大江 基明,小野 雅敏 1.はじめに
地中熱を利用したヒートポンプ空調システムは,高効率で環境性にも優れ,近 年普及が拡大している.採熱用の地中熱交換器は,口径
150〜200 mm
程度のボ アホール内にU
字型のポリエチレンチューブ(U チューブ)を埋設する方法が 一般に用いられているが,地下水が豊富で地下水流速が早い地域などでは,図1
に示すようなスパイラル型の熱交換器(スパイラルチューブ)が単位深さ当たり の熱交換量が大きい点で有利となる可能性があり,開発・適用が検討されている.本検討では,スパイラル地中熱交換器の採熱性能について,地下水流速と採熱性 能の相関などを数値解析により予測し,一般的な
U
チューブと比較評価を行う.2.予測解析のモデル・条件
地中熱利用における採熱量は,地盤の熱伝導と地下水の対流(移流)の効果が 加算されたものであり,地下水流速が早い場合は対流の影響が相対的に大きくな ることが知られている.本検討では,熱伝導と地下水流動を同時に計算する熱−
浸透流連成解析手法を採用し,解析プログラムとして
TOUGH2/EOS1
1)を用いる.図
2
に解析モデルの一例を示す.解析モデルはスパイ ラル構造の2
周分を抽出し,対称性を考慮してスパイラ ル軸を含む縦断面で分割した領域を3次元構造でモデ ル化する.径800 mm
の孔内にスパイラル外径600 mm
の20A
ポリエチレンパイプを設置して空隙を砂で充填 する方法を想定し,地盤,充填砂,ポリエチレンの物性 値を表1
のように与える.モデルの各境界条件は図2
に 示す通りとし,地盤の初期温度は15℃,地下水の初期
流速v
は解析パラメータとして0〜0.2 cm/sec
の範囲で 設定する.また,パイプ内面温度(ブライン温度)と地 盤初期温度の差⊿Tは2〜10℃の範囲とする.スパイラ
ルピッチは,図2
に示す100 mm
の他に200 mm
のケー スも設定し,また比較検討のため,25A
ポリエチレンパ イプを用いたダブルU
チューブについても解析を行う.3.解析結果
図
3
は,ピッチ100 mm
のスパイラルチューブについ て,温度差⊿T= 6℃としたときの単位深さあたりの熱交 換量の経時変化を示す.地下水流速v
が0
のケースでは 解析期間を通じて熱交換量の低下が継続するが,流動が あるケースではほぼ一定値に収束しており,流速が大き いほど早い段階で収束する傾向がみられる.図4,図 5
は各解析モデルについて,収束後の単位深さあたり熱交キーワード 地中熱,熱交換器,スパイラルチューブ,Uチューブ,熱抵抗,数値解析
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3-4-17 清水建設(株) 技術研究所 TEL. 03-3820-5557
図
1
スパイラルチューブ図
2
解析モデル(ピッチ100 mmスパイラルチューブ)表
1
地盤・材料の物性値2)4 m
不透水・断熱境界(側面)
地下水流速v =0~0.2 cm/min 初期温度:15℃
1.2 m 等圧・等温境界
不透水・断熱境界(対称面)
周期境界(上面/底面)
等圧・等温境界
等温境界(パイプ内面) ⊿T =2~10℃
スパイラルチューブ
(20Aポリエチレンパイプ)
0.1m 充填砂
砂質地盤
0.1m 0.3m
0.6m 0.05m
砂質地盤 充填砂 ポリエチレン パイプ 熱伝導率 1.53 W/m℃ 0.4 W/m℃
比熱 1.52 kJ/kg℃ 1.9 kJ/kg℃
密度 1990 kg/m3 950 kg/m3
透水係数 1.0×10-3 m/sec −
間隙率 0.4 −
土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月)
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換量と温度差⊿Tをプロットしており,各流速ごとにほぼ線 形の相関が示されている.また,図
6
はスパイラルチューブ 周辺の温度分布の計算例を示し,流速が大きいケースでは対 流の効果によりチューブ周辺の温度上昇が抑制され,この結 果,チューブ表面での熱交換量が大きくなることがわかる.図
7
は,図4,図 5
の近似直線の傾きにより定義される熱 抵抗と地下水流速の相関を示したもので,流速v
が大きいほ ど熱抵抗が低下し,熱交換器としての採熱性能が向上するこ とが示されている.スパイラルチューブの単位深さあたりの 採熱性能はダブルU
チューブの3〜5
倍程度であり,流速が 大きいほど性能差が拡大する傾向が見られる.またスパイラ ルピッチによる比較では,流速0.2 cm/min
では性能比がピッ チ比とほぼ同じ2:1
となるが,流速が小さいケースでは性 能比が小さくなり,これは図6 (1)
に見られるように,隣接 チューブ間で熱的な干渉が生じることが原因と考えられる.4.まとめ
スパイラル地中熱交換器の熱交換量の予測解析結果より,
地下水流速が早い場合は,一般的なダブル
U
チューブと比 べ深さあたりで約3〜5
倍の採熱性能を期待できることが示 された.今後,現場実験等により性能を検証する予定である.参考文献
1) K. Pruess et. al:TOUGH2 user's guide, ver.2,1999 2)
北海道大学:地中熱ヒートポンプシステム,2007-0.6 -0.5 -0.4 -0.3
-0.2 -0.1 0.
0.1 0.2 0.3 0.4
0.5 0.6 0 7
-0.6 -0.5 -0.4
-0.3 -0.2 -0.1 0.
0.1 0.2 0.3
0.4 0.5 0.6 0 7
0 2 4 6 8 10 12
0 20 40 60 80 100 120 140
温度差⊿T(℃)
単位深さあたりの熱交換量 q(W/m) 0.01 cm/min 0.02 cm/min 0.05 cm/min 0.1 cm/min 0.2 cm/min
0.0 0.1 0.2 0.3
0 0.1 0.2
熱抵抗(℃/(W/m))
地下水流速 v (cm/min) ダブルUチューブ
スパイラルチューブ(ピッチ100mm)
スパイラルチューブ(ピッチ200mm)
0 2 4 6 8 10 12
0 100 200 300 400 500 600 700
温度差⊿T(℃)
単位深さあたりの熱交換量 q(W/m) 0.01 0.02 0.05 0.1 0.2 0.01 0.02 0.05 0.1 0.2 ピッチ100mm, v = cm/min ピッチ200mm, v = cm/min 0
100 200 300 400 500
0 30 60 90 120
単位深さあたりの熱交換量(W/m)
時 間 (hour)
v =0 0.01 cm/min 0.02 cm/min 0.05 cm/min 0.1 cm/min 0.2 cm/min v= 0
図
3
熱交換量の時間変化(⊿T=6℃
)図
4
採熱性能(スパイラルチューブ)図
5
採熱性能(Uチューブ)21.
20.5 20.
19.5 19.
18.5 18.
17.5 17.
16.5 16.
15.5 15.
図
7
地下水流速と熱抵抗の関係21.
20.5 20.
19.5 19.
18.5 18.
17.5 17.
16.5 16.
15.5 15.
図
6
地盤温度分布(⊿T = 6℃)(2)
地下水流速v = 0.2 cm/sec(1)
地下水流速v = 0.02 cm/sec温度(℃)
温度(℃)
土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月)
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