ヒ ン デヤ ー 語 の
<V-ne-Vala
hona>の
三 用 法
―属性叙述から事象叙述へ 客観的叙述から主観的叙述へ―
今村泰也
1は
じ め に1
ヒ ンデ ィー語2に は形態 的(屈 折 的)に 表 され る未来 形 の ほか に、 迂言
的(句
的)な
未 来 時 表 現 形 式 と さ れ る<V-ne-vaia hona>が
あ る。
<V-ne-vaia hona>は
、不 定 詞 の斜 格 形V-neに
文 法 的要素-valaが 付 き、
さ らに コ ピュ ラ動 詞hona(英
語 のbe動 詞 に相 当)を 伴 った動 詞句 で 、文
末 あ る い は節 の終 わ りに現 れ る。 先行 研 究 の多 くが 「<V-ne-vaia hona>
は近未 来 を表 す 」 と記 述 して い るが、本 稿 で は<V-ne-vala hona>の 用 例
を検 討 し、 これ が未 来時 を指示 す る表現 形式 で は な く、決 定済 み の予定 と
して基 準時 の状態 を述 べ る表現 形式 で あ るこ とを主張 す る。
また 、<V-ne-vaia hona>に
は予 定 を表す 用法 以外 に、事 態 の実現 直 前
の切 迫 した状 況 を表 した り、未 来 の事 態 に 関す る話 し手 の推 測 を表 す用 法
が あ る。 本稿 で は これ らを 「
予 定用法 」 「
切迫 用法 」 「
推 量用 法 」の 三つ に
分 類 して各 用 法の 意味 的 ・統 語 的特徴 を検 討 し、推 量用 法 をモ ダ リテ ィ と
して提 示す る。
2-valaに
つ い て
-vaiaは きわめ て生 産性 が高 く、 ヒ ンデ ィー 語 にお いて 幅広 く使 わ れ る
多 義 的 な文法 的 要 素(先 行 研 究 で は接 辞 とされ て い る)で あ る3。 さま ざ
まな 品詞 の語 に付 いて専 門(職 業)、 行 為 、所 有 、関係 な どに 関わ る多 様
な意 味 を加 え、 名 詞 句 、 形 容 詞 句 を作 る。 次 例 は 名 詞 や 不 定 詞 に付 く
執筆者紹介
い ま む ら や す な り● 麗 澤 大 学 大 学 院 言 語 教 育 研 究 科 博 士 後 期 課 程 ヒ ン デ ィ ー 語 学 、 言 語 類 型 論 [email protected]南アジァ研究第20号(2008年)
-valaの 例 で あ る 。
(1)a.ganne-vab b.hindi bol-ne-vale
サ トウキ ビ.M.SG.OBL-Vala.M.SG ヒンデ ィー語 話す-INROBL-vala.M.pL 「サ トウ キ ビ売 り」 「ヒ ン デ ィ ー 語 話 者 」
(2)a.topi-vah larka b.vyakaran-vali kitab 帽子.F.SG.OBL-vala.M.SG少 年.M.SG 文 法.M.SG.OBL-vala.F.SG本.F.SG 「帽 子 をか ぶ っ た 少 年 」 「文 法 書 」 上 例(1)は-valaが 名 詞 句 を作 る例 、(2)は 形 容 詞 句 を作 る 例 で あ る 。 名 詞 句 を作 る場 合 、-Valaは 主 語 の性 ・数 に 一 致 し(名 詞 型 の 活 用 をす る)、 形 容 詞 句 を作 る 場 合 は 後 続 名 詞 の性 ・数 に 一 致 す る(形 容 詞 型 の 活 用 をす る)。 -valaは 名 詞 句 、 形 容 詞 句 と し て 、 文 の 主 語 、 直 接 目的 語 、 間 接 目 的 語 、 補 語 の い ず れ に も な る 。次 例(3)、(4)は 不 定 詞 に-valaが 付 き、補 語 に な っ て い る例 で あ る 。
(3) maim Ajmer=ka rah-ne-vala hum. 1SGア ジ メー ル=GEN住 む-INRoBL-vala.M.SG COP.PRS.1SG 「私 は ア ジ メ ー ル の 住 人 で す 」(=住 む 者 で す) [ABNO17] (4) ek aur bat=bhi caumka-ne-vali hai.
一 も う 話.F.SG=も 驚 か せ る-INF.OBL-vala.F.SG CORPRS.3SG 「も う一 つ の 話 も驚 くべ き話 だ 」(=驚 か せ る もの だ)[HJDO4321] 上 例(1)一(4)の よ う に 多 様 な使 わ れ 方 をす る 一valaに つ い て 田 中 ・町 田 [1986:75]は 、 「特 徴 や 属 性 を指 定 す る 形 容 詞 句 、 名 詞 句 《… で あ る と こ ろ の(も の/人)》 を 表 す 」 と述 べ て い る 。 3先 行 研 究 3-1-valaの 語 源 Kellogg[1893:342,355]は サ ンス ク リ ッ ト語 のpalaka「 守 護 者 、 保 護 者 」 が-valaの 語 源 で あ る と し、 「牛 飼 い 」 を 意 味 す る[S]gopalaka と[H]gvalaの 対 応 を例 に挙 げ て い る 。Montaut[2004:146,153]も 同 様 の 記 述 を して い る 。 3-2-vaIaの 形 態 論 的 位 置 付 け ほ と ん どす べ て の 先 行 研 究 が-valaを 名 詞 旬 、 形 容 詞 句 を作 る 接 尾 辞
ヒン デ ィ―語 の<V-ne-vala hona>の 三 用法 一 属 性叙 述 か ら事象 叙 述へ 、客観 的 叙述 か ら主観 的 叙述 ヘー (suffix)と して い る4。 しか し、 筆 者 は 次 に挙 げ る理 由 か ら-valaが 接 辞 よ り も 自立 性の 高 い形 式 で あ る こ とを指 摘 した い 。 そ の 理 由 とは 次 の5点 で あ る 。 (1)デー ヴ ァナ ー ガ リ ー 文 字 に よ る 表 記 上 、-valaは 付 加 す る 語 に続 け て 書 く こ と も離 して 書 く こ と も可 能 で 、 実 際 に 両 方 の 綴 りが 使 わ れ て い る 。 (2)-vaiaが 付 加 され る 語 は 斜 格 形(後 置 格 形)を と り5、-valaが 形 態 統 語 論 的 に 後 置 詞 と同 じ働 き を して い る。 (3)-valaは 属 格 後 置 詞kaに 似 た 機 能 を 持 ち 、 しば しば 交 替 可 能 で あ る 。 (4)<V-ne-vala hona>の 形 式 で 、V-neと-vaiaの 問 に他 の 語 が 介 在 す る
場 合 が あ る(7-1-2節 参 照)。 (5)-valaは さ ま ざ ま な 品 詞 の 語 に付 くだ け で な く、 句 や 節(文)に 付 く こ と もあ る6。 上 記(1)の 綴 りの 問 題 は 、 正 書 法 の 定 ま ら な い ヒ ン デ ィ ー 語7で は ど ち ら が 正 しい と は 言 え ず 、-valaが 語 か 接 辞 か を決 め る 基 準 と し て は不 確 か で あ る が 、(4)、(5)な ど の 言 語 現 象 か ら は-vaiaを 接 辞 と み な し が た い8。 -vaiaの 形 態 論 的 位 置 付 け は 重 要 な 問 題 で あ る が 、 そ れ を 明 らか に す る こ と が 本 稿 の 目的 で は な い た め 、 こ れ 以 上 の 議 論 に は踏 み 込 ま な い 。 こ こで は-valaが 接 辞 よ り も 自 立 性 の 高 い 形 式 で あ る こ と を 指 摘 す る に と ど め る 。 3-3 <V-ne-vala hona>の 記 述 2節 で 見 た 名 詞 句 、 形 容 詞 句 を作 る-vaiaに 関 す る 記 述 は 散 見 さ れ る が 、 <V-ne-vala hona>を ま と ま っ た 形 で 扱 っ た 研 究 は 、 管 見 の 限 り土 田 [1985]の み で あ る 。 土 田 は サ ン ス ク リ ッ ト語 の 迂 言 的 未 来9と そ れ に相 当 す る ヒ ンデ ィー 語 の<V-ne-vala hona>の 用 例 を 示 し、 迂 言 的 未 来 の 基 本 性 格 が 「客 観 的 確 実 性 」 で あ る こ と を指 摘 して い る[土 田1985:616]。 <V-ne-vaia hona>が 表 す 意 味 につ い て は次 の よ う に 述 べ て い る 。 ヒ ンデ ィー 語 に お い て は 、 梵 語 行 為 者 名 詞 一trに 相 当 す る 形 は 、 不 定 詞 の 斜 格 に-valaを 附 し て 造 られ 、 こ れ が 繋 辞 た る動 詞honaの 定 形 と と も に用 い ら れ る と き、[中 略]某 は しか じ か の 行 為 を な す も の な り、 と い う意 味 を と る[土 田1985:612-613]。 (マ マ)
しか し、honaの
直接法 現在 形 を伴 う行為 者名 詞-valaの 用 法 を多 く
の文例 にわた って 吟味す るな らば、 これが 単 に主語 の習 慣 的義務 的行
南アジァ研究第20号(2008年) 為 あ る い は 職 業 を示 す の み で な く、 時 と して 未 来 の 出 来 事 に 関 して 用 い られ る こ とが 認 め ら れ る 。 しか も、 そ の 場 合 、[中 略]特 定 未 来 時 の 予 定 ・意 図 ・計 画 を表 す こ とが 少 な くな い[土 田1985:613]。 文 法 書 で も<V-ne-vala hona>に 関 す る 記 述 は 少 な く、 そ の 多 く が 「<V-ne-vala hona>は 近 未 来 を 表 す 」 と い う簡 単 な 説 明 に と ど ま っ て い る10。 英 語 文 献 の 場 合 、 例 文 の 訳 が'begoing to'あ る い はbe about to'と な っ て い る だ け で 、<V-ne-vala hona>の 意 味 機 能 に つ い て は 詳 し く述 べ ら れ て い な い 。Jagannathan[1981:322]は<v-ne-vala hona>の 意 味 の 多 様 性 につ い て 触 れ て い る が 、 挙 げ て い る 例 文 は文 脈 の な い 短 い も の ば か りで 、 意 味 解 釈 に 関 す る記 述 は 甚 だ 不 十 分 で あ る。 ま た 、 鈴 木[1996: 189]が コ ピ ュ ラ動 詞honaが 過 去 形 の 場 合 の 意 味 に つ い て わ ず か に 言 及 して い る もの の 、 時 制 に よ る 意 味 の 違 い や 否 定 辞 の 付 加 に 関 す る先 行 記 述 は ほ とん どな い 。 4 デ ー タ 資 料 に つ い て 本 稿 の 執 筆 に あ た っ て は 、既 刊 の 小 説 、伝 記 、民 話(語 り)、 笑 い 話(頓 知 話)、 辞 書 の ほ か 、 電 子 化 し た コ ー パ ス(BBC Hindi11、 小 説12)を 利 用 し、 書 き言 葉 、 話 し言 葉 両 方 の デ ー タ を収 集 、 例 示 し た 。 5 <V-ne-vala hona>の 用 例 と 意 味 特 性 本 節 で は<V-ne-vala hona>の 用 例 を 概 観 し、 そ の 意 味 特 性 を検 討 す る (<V-ne-vala hona>を 太 字 に 、 時 の 副 詞(句)に 下 線 を 施 した)。 5-1 <V-ne-vala hona>の 用 例 概 観
(5)aj mere mitr hamare yaham a-ne-vale haim. 今 日1SG.GEN友 達.M.PLIPL.GENと ころ 来 る-INRoBL-vala.M.PLcoRPRs.3PL 「今 日 、 友 達 が う ち に 来 る こ と に な っ て い る 」[古 賀1986:170] 1節 で 述 べ た よ う に 、<V-ne-vala hona>は 文 末 に 現 れ る 。(5)でa-ne は 不 定 詞a-na「 来 る 」 の 斜 格 形 、-valeは-valaの 男 性 複 数 形 、haimは コ ピ ュ ラ 動 詞honaの 三 人 称 複 数 現 在 形 で あ る(-valeとhaimは 主 語 で あ
ヒ ンデ ィ― 語 の<V-ne-vala hona>の 三 用 法一 属 性叙 述 か ら事 象叙 述 へ 、客 観 的叙 述 か ら主観 的 叙述 へ ―
るmitr「 友 達 」 の 性 、 数 に一 致 して い る)。(5)は 文 法 書 の 例 文 で あ る が 、 筆 者 が 収 集 し た 実 例 で もjana「 行 く」、ana「 来 る 」 な ど の 移 動 動 詞 が 多
く見 られ た 。
次 例 はBBC Hindiの 用 例 で 、<V-ne-vala hona>は 人 間 以 外 の 主 語 も と る 。
(6)is riport=ko sarhyukt=rastr sighr=hi こ の 報 告 書=ACC 国 連 す ぐ に sarvalanik=kar-ne-vala hai.
公 表 す る-INRoBL-vala.M.SG CORPRs.3SG
「国 連 は この 報 告 書 を 直 ち に 公 表 す る 予 定 で あ る 」 [BBCO61011] (7)Da Vind kod' nam=ki yah film agle=hafte
ダ ・ヴ ィ ンチ ・コ ー ド 名 前=GENこ の 映 画.F.SG来 週 rihz=ho-ne-vali hai. 封 切 りさ れ る-INRoBL-vala.F.SG CORPRS.3SG 「『ダ ・ヴ ィ ンチ ・コ ー ド』 と い う こ の 映 画 は 来 週 封 切 りさ れ る 」 [BBCO60512] 上 例(5)-(7)が 示 す よ う に 、<V-ne-valahona>は 時 の 副 詞(即 時 お よ び 未 来 時 の 副 詞(句))と 共 起 し 、予 定 を 表 す 。 コ ピ ュ ラ動 詞honaは 現 在 形 で あ り、<V-ne-vala hona>は 形 式 上 、現 在 形 で 未 来 の 事 態 を 述 べ て い る 。 主 語 が 人 間 の 場 合(特 に 主 語 と話 し手 が 一 致 す る 一 人 称 で は)、<V-ne-vala hona>は 主 語 の 意 図 を表 し て い る と も解 釈 で きる(次 例(8))。 (8)do=tin mahine=bad maim yah kam chor
2、3ヵ 月 後 1SG こ の 仕 事 や め る de-ne-vala hum. 与 え る-INR.oBL-vala.M.SG COP.PRs.1SG 「2、3ヶ月後 には俺 は この仕 事 をや め てや るつ も りだ 」[土 田1985:61313] 意 図(日 本 語 で は 「… す るつ も り」)は 発 話 以 前 に す で に 決 め て い る こ とで あ り、 不 確 定 な 未 来 の 事 態 を あ た か も確 定 的 で あ る か の よ う に決 定 済 み の こ と と し て 客 観 的 に 述 べ る点 で 予 定 と ま とめ る こ とが で き る 。 い ず れ の場 合 も実 現 確 実 な 未 来 の 事 態 が<V-ne-vala hona>で 表 され る 。 5-2 属 性 叙 述 か ら事 象 叙 述 へ 2節 で 挙 げ た 例(3)、(4)と 上 例(5)-(8)と で は 文 に お け る くV-ne-vala
南アジァ研究第20号(2008年) hona>の 意 味 機 能 が 異 な っ て い る 。 す な わ ち 、 前 者 が 人/も の の 属 性(特 質)を 表 す 属 性 叙 述14(<V-ne-vala hona>は 名 詞 述 語)で あ る の に対 し 、 後 者 は 具 体 的 な 出 来 事 を表 す 事 象 叙 述(<V-ne-vala hona>は 動 詞 述 語) に な っ て い る(下 表)。 あ る 文 の<V-ne-vala hona>が 属 性 叙 述 と事 象 叙 述 の ど ち らで あ る か は 、 文 の 構 成 要 素 、 文 脈 、 時 の 副 詞 の 有 無 等 に よ っ て 判 断 さ れ る15。 属 性 叙 述 と事 象 叙 述 の 統 語 的 な 違 い は 否 定 文 に お け る 否 定 辞 の 位 置 の 違 い に表 れ る 。 ヒ ン デ ィ ー 語 の 否 定 辞 は 通 常 、 動 詞 の 前 に 置 か れ る た め 、 属 性 叙 述(名 詞 述 語)の 場 合 は コ ピ ュ ラ 動 詞honaの 前 に 否 定 辞 を 置 き(次 例(9))、 事 象 叙 述(動 詞 述 語)の 場 合 は<V-ne-vala hona>の 前 に否 定 辞 を 置 い て 作 られ る(次 例(10))17。
(9)ministar sahab cup baith-ne-vale nahim th-e18. 大 臣 HON 黙 ってい る 座 る-INF. oBL-vaia.M.PL NEG COP.PST-3PL 「大 臣 閣下 は黙 っ て座 っ て い る よ う な人 で は な か っ た 」 [NKPO20] (10)(イ ギ リス の ブ レ ア首 相 が1年 以 内 に退 陣 す る意 向 を表 明 した ニ ュ ー ス)
"l
ekin maim koi tarix tay nahim kar-ne-vala hum." しか し 1SG何 か 日付 決 定 NEG する-INROBL-Vala.M.SG COP.PRS.1SG 「『しか し、[今、退 陣の]時 期 を決 めるつ も りはあ りませ ん19』」 [BBCO60907] 5-3 <V-ne-vala hona>の 意 味 特 性 3-3節 で 述 べ た よ う に 、 先 行 研 究 の 多 くが 「<V-ne-vala hona>は 近 未 来 を 表 す 」 と記 述 し て い る 。 確 か に 、 実 際 の 用 例 で も 「今/ま も な く/今 日/明 日」 な ど、 近 未 来 の 事 態 を表 す 例 が 多 い が 、<V-ne-vala hona>は 次 例(11)、(12)の よ う に 近 未 来 と は 言 い が た い 「遠 い 未 来 」 の 事 態 に も 使 わ れ る20。
(11)is=vars aktubar=mcrh am=cunav ho-ne-vale
今 年 9月=LOC 総 選 挙M.PL 行われ る-INROBL-vala.M.PL haim.
COP.PRS.3PL
ヒン デ ィ― 語 の<V-ne-vala hona>の 三 用 法― 属 性叙 述 か ら事 象叙 述 へ 、客 観的 叙 述 か ら主観 的 叙述 ヘ ー
(12) Hairi Patar end da ardar af fhiks agle=vars ハ リ ー ・ポ ッ タ ー と不 死 鳥 の 騎 士 団 来 年
sinemagharom=tak pahumc-ne-vali hai. 映 画 館.M.PL.OBL=に 到 着 す る-INF.OBL-vala.F.SG COP.PRS.3SG 「『ハ リー ・ポ ッ タ ー と不 死 鳥 の 騎 士 団』 は 来 年 公 開予 定 で あ る 」 [BBCO60225] 上 例(11)は7ヶ 月 先 、(12)は1年 先 の 未 来 の 事 態 を 表 して い る 。 こ の ほ か 、 要 人 の 外 国 公 式 訪 問 な ど数 ヶ 月 先 の こ とで あ っ て も 実 現 が 確 実 な 未 来 の 事 態 に つ い て<V-ne-vaia hona>の 使 用 が 見 られ た21。 し た が っ て 、 <V-ne-vala hona>の 意 味 特 性 は 「近 未 来 」 で は な く、 「(発話 時 現 在 の) 決 定 済 み の 予 定 」 で あ る と 言 え る22。 近 未 来 の 事 態 を 表 す 用 例 が 多 い の は 、 現 実 世 界 にお い て は 決 定 済 み の 予 定 は 近 未 来 の 事 態 で あ る こ とが 多 い こ と に よ る と思 わ れ る 。 6 <V-ne-vala hona>は 未 来 表 現 か 前 節 で<V-ne-vala hona>の 意 味 特 性 は 「決 定 済 み の 予 定 」 と述 べ た 。 予 定 が 未 来 を 志 向 す る の は 当 然 の こ と で あ り、 そ の 意 味 で 先 行 研 究 が <V-ne-vala hona>を 迂 言 的 未 来 表 現(あ る い は 近 未 来 表 現)と 捉 え た の は ご く 自然 な こ と で あ る 。 しか し な が ら、 以 下 に 挙 げ る 二 つ の 理 由 か ら <V-ne-vala hona>は 未 来 表 現 と は 言 え な い 。 (1)未来 形 と の 言 い 換 え が で き な い 場 合 が あ る <V-ne-vala hona>は 多 くの 場 合 、 形 態 的 な 未 来 形 で 言 い 換 え る こ とが 可 能 で あ る23が 、 両 者 は い つ で も同 じ よ う に使 え る わ け で は な く等 価 で は な い 。 次 例(13)-(15)で{ }内 の 左 側 は 未 来 形 、 右 側 は<V-ne-vala hona>で あ る 。
(13)maimkal Bambai {ja-umga/ja-ne-vah hum}. 1SG 明 日 ボ ンベ イ 行 く-FUT.1.M.SG/行 く-INF.OBL-Vaia.M.SGCORPRS.1SG 「私 は 明 日 ボ ンベ イ に 行 く」(予 定)
(14)maim tumherh yah {dUmga
1SG 2PL.DAT こ れ 与 え る.FUT.1.M.SG /*de-ne-vah hum}.
南アジア研究第20号(2008年)
/与 え る-INROBL-Vala.M.SG COP.PRS.1SG 「君 に こ れ を あ げ よ う」(意 志)
(15)kya ap cay {pi-erhge/*pi-ne-vale haim}P Q 2PLl茶 飲む-FUT.2M.PL/飲 む-INROBL-Vala.M.PLCORPRS.2PL 「お 茶 を飲 み ま す か 」(意 志) <V-ne-vala hona>は 上 例(13)の よ う に 未 来 の 事 態 に 関 し て 現 在 の 状 態(決 定 済 み の 予 定)を 述 べ る こ とは で き て も、(14)、(15)の よ う に発 話 時 現 在 の 意 志 を述 べ た り尋 ね た りす る こ と は で き な い24。 (2)コ ピ ュ ラ動 詞honaが 過 去 形 を と り う る こ れ ま で 挙 げ た<V-ne-vala hona>の 例 は い ず れ も文 末 の コ ピ ュ ラ動 議 honaが 現 在 形 に な っ て い た 。 しか し、honaは 過 去 形 を と る こ と も あ り、 事 態 の 非 実 現 を表 す 場 合 に よ く使 わ れ る25。 (16)(爆 発 前 に発 見 さ れ た 爆 弾)
ye bam rat laghhag sarhe nau baje こ れ らの 爆 弾.M.PL 夜 ご ろ 半 9 時 phat-ne-valeth-e.
爆 発 す る-INRo肌-vala.M.PL CORPST-M.PL
「これ らの爆 弾 は夜9時 半 ご ろ爆 発 す る ことに なって いた」 [BBCO70826] (17)"accha hua, ap a=gae," us=n ekah-a,
よ い 起 こる.pFV.M.SG2PLや って くる.PFV.M.PL 3SG=ERG 言う-PFV.M.SG "
maim to kal xud ap=ke pas a-ne-vala th-a." 1SG PTCL 明 日 REFL 2PL=GENそ ば 来る-INEOBL-Vala.M.SG CORPST-M .SG
「 『よか っ た 、 あ な た が 来 て 』 彼 は言 っ た 。 『私 は 明 日、自分 か らあ な た の と こ ろ へ 行 くつ も りで した 』」[AA107] 上 例(16)で は爆 発 す る予 定 だ っ た が 現 実 に は 爆 発 し な か っ た の で あ り、 (17)で は 行 く予 定 だ っ た が 現 実 に は 行 か な か っ た(行 く必 要 が な く な っ た)と い う こ と を 表 し て い る 。 こ の よ う に 、honaが 過 去 形 の 場 合 、 <V-ne-vala hona>は 過 去 の あ る 時 点 に お け る予 定 を 表 す 。 <V-ne-vala hona(過 去 形)>が 否 定 辞 を 伴 う例 も一 つ 挙 げ る 。 (18)(ダ イ ア ナ 元 英 皇 太 子 妃 の 事 故 死 の 最 終 報 告 書)
rajkumari Dayna=ki ue=samay na to sagai hui
ヒ ンデ ィ― 語 の<V-ne-vala hona>の 三用 法― 属 性 叙述 か ら事 象 叙述 へ 、客 観 的叙 述 か ら主 観的 叙 述ヘ―
th-i aur na26 ho-ne-vali th-i. COP.PST-F.SG そ して NEG 行われる-INEOBL-vala.F.SG COP.PST-F.SG 「ダ イ ア ナ 妃 は 当 時 、 婚 約 し て お らず 、 婚 約 す る 予 定 も な か っ た27」 [BBCO61214] 以 上 、 本 節 で は<V-ne-vala hona>が 未 来 表 現 か ど う か を検 証 した 。 上 に述 べ た 二 つ の 理 由 か ら<V-ne-vala hona>は 未 来 表 現 で は な く、 基 準 時 (honaが 現 在 形 の 場 合 は発 話 時 現 在 、 過 去 形 の場 合 は 過 去 の あ る 時 点)に お け る予 定 表 現 で あ る と言 え る28。
7 <V-ne-vala
hona>の
そ の 他 の 用 法
ここ まで<V-ne-vala hona>が
予 定 を表 す例 を見 て きた(以 下 、 「
予 定
用 法 」 と呼 ぶ)。 本節 で は同 じ形式 が事 態 の 実現 直前 の切 迫 した状 況 を表
した り、未 来 の事態 に関す る話 し手 の推 測 を表 す用 法 を見 てい く。先 行研
究 で は明確 に区別 され てい ないが 、本稿 では これ らを 「
切迫 用法 」
、 「
推量
用 法」 と して分類 し、前 述 の 「
予 定用 法」 と区別す る。
7-1 切 迫 用 法 7-1-1 切 迫 用 法 の意 味 特 性土 田[1985:620]は
この用法 につい て、 「ま さにな され ん とす る行為 、
まさに生ぜ ん とす る状態 の表 現 であ る」 と述べ 、 サ ンス ク リッ ト語 の迂 言
的未 来 には見 当た らない用法 で あ る ことを指摘 してい る。 次例(19)、(20)
は切迫 用法 の例 で あ る。
(19) dukan bamdh=ho-ne-vali hai. 店.F.SG 閉 ま る-INF.OBL-vala.F.SG COP.PRS.3SG
「間 も な く 閉 店 だ 」 [Snell & Weightman 2003:130]
(20) "jahaz utar-ne-vala hai. kursi=peti
機M.SG 降 り る-INF.OBL-vala.M.SG COP.PRS.3SG シ ー トベ ル ト bamdh lijiye." 締 め る 取 る.IMP.POL 「 『機 は 着 陸 し よ う と して お り ます 。 シ ー トベ ル トを お 締 め く だ さ い 』 」 [土 田1985:620] 上 例 は 未 来 の 事 態(閉 店/着 陸)に 向 け て 時 間 や 状 況 が 進 み 、 間 も な く
南アジァ研究第20号(2008年)
事 態 が 実 現 す る(と 話 し 手 が 思 っ て い る)こ と を 表 し て い る 。 次 例 は コ ピ ュ ラ 動 詞honaが 過 去 形 の 例 で あ る(下 例(23)も 参 照)。 (21)sighr=hi sampradayik tanav barh-ne-vala
間 も な く コ ミ ュ ニ テ ィ ー の 緊 張.M 高 ま る-INF.OBL-vala.M.SG th-a. COP.PST-M.SG 「[1944年 、 パ キ ス タ ン建 国 要 求 が 重 要 な もの と な り]間 も な く宗 派 対 立 の 緊 張 が 高 ま ろ う と して い た 」 [BALO75] 以 上 の 例 か ら切 迫 用 法 の 意 味 特 性 は 「実 現 確 実 な 事 態 の 切 迫 」、 「眼 前 の 事 実 ま た は 兆 候 の 描 写 」 と言 う こ と が で き る 。 切 迫 用 法 は外 界 の 世 界 を描 写 し て い な が ら事 態 の 実 現 に つ い て の 話 し手 の 心 理 も表 し て い る 点 で 、 客 観 的 叙 述 と主 観 的 叙 述 の境 界 に あ る。
honaが 過 去 形 の 場 合 、<V-ne-vala hona>は 過 去 の あ る 時 点 に お け る 切 迫 し た 状 態 を表 す(特 に 小 説 で は こ う し た 例 が 多 く見 ら れ る)。5節 で 見 た 予 定 用 法 で はhonaが 過 去 形 の 場 合 、 通 例 、 事 態 が 実 現 し な か っ た こ と を表 す(非 実 現)の に対 し、 切 迫 用 法 で は 事 態 が 実 現 直 前 で は あ っ た が 、 ま だ 実 現 して い な い状 態 、 つ ま り未 実 現 を 表 す 。 ま た 、 予 定 用 法 で は た い て い 文 中 に 時 の 副 詞 を伴 うが 、 切 迫 用 法 で は 時 の 副 詞 は伴 わ な い か 、 伴 う 場 合 で もab「 今 」 やsighr hi「 す ぐ に 、 間 も な く」 な ど即 時 の 副 詞(句) に 限 られ る29。
7-1-2 時 間 的 近 接 を表 すhi
切 迫 用 法 で は 次 例 の よ う に-valaの 前 後 に しば しばhi30が 挿 入 さ れ る 。 (22) pari baras-ne=hi -vala hai.
雨 ・M 降 る-INRoBL=cLT -vala.M.SG COP.PRS.3SG
「今 に も雨 が 降 ろ う と して い る 」 [Jagannathan 1981:321] (23)Abbas apna natak parh-ne-vale=hi
ア ッバ ー スREFL.GEN 戯 曲 (声を出 して)読む-INEOBL-Vala.M.PL=CLT th-e. COP.PST-M.PL
「
ア ッバースが 自作 の戯曲をまさに聞かせようとしている ところだった」
[BALO81]
hiの 付加 につ いて先 行研 究 では次 の よ うに記述 されて いる。
ヒ ンデ ィー 語 の<V―ne-valahona>の 三 用 法― 属 性叙 述 か ら事 象叙 述 へ 、客 観 的叙 述 か ら主観 的 叙述 へ ―
-ne valaの 間 にhiを 入 れて-ne hi valaと す る と、 「ち ょうど ・ま さに∼ (しよ)う として い る」、の 意 味 に な る。このhiは 後 に付 け て-ne vala hi とす るこ ともで きる。この 形 はrahnaを 使 っ た 形31よ りも非 常 に近 い 未 来 を 表 す。した が って、一 定 の 時 間 を 置 くka1(明 日)、aglehafte(来 週)、 の ような 副 詞 と一 緒 に使 うこ とは な い[鈴 木1996:189]。
`V -ne-vala hiの よ う に-valaの 後 にhiが 付 く形 式 が 見 ら れ る の は 、 -valaが 表 記 上 、V-neに 続 け て 綴 られ る こ と が 多 く、 ヒ ンデ ィ ー 語 話 者 に<V-ne-vala>で 一 語 とい う 意 識 が 働 い て い る か らで あ ろ う 。
上 例 と先 行 研 究 か ら、<V-ne-vala hona>にhiが 付 く場 合 、 基 準 時 と 事 態 実 現 時 と の 時 間 的 近 接 が 表 さ れ て い る と言 っ て よ い 。 筆 者 が 集 め た 用 例 で もhiが 付 く場 合 、ka1「 明 日」 やagle hafte「 来 週 」 の よ う な 一 定 の 時 間 を 置 く未 来 時 の 副 詞(句)は もち ろ ん の こ と、ab「今 」 やsighr hi「 間
も な く」 な ど即 時 の 副 詞(句)も 見 られ な か っ た 。
な お 、 切 迫 用 法 で 否 定 辞 が 付 く例 は な か っ た 。 上 述 の 土 田[1985]の 言 葉 を借 りれ ば 、 切 迫 用 法 は 「ま さ に な さ れ ん とす る 行 為 、 ま さ に生 ぜ ん
とす る状 態 の 表 現 」 で あ り、 否 定 は 意 味 を な さ な い か らで あ ろ う。 7-1-3 時 間 的 近 接 を表 す 構 文
切 迫 を表 す<V-ne(hi)-vala hona>は 、 さ ら に後 ろ に 接 続 詞ki32を 伴 っ て 、 二 つ の 異 な る 出 来 事 の 時 間 的 近 接(同 時 的)を 表 す 構 文 を な す(ほ と ん ど の 場 合hiを 伴 い 、honaは 必 ず 過 去 形 に な る 点 で 、 統 語 的 に 固 定 化
し て い る)。 こ れ は 英 語 の 、"Wb were just about to go out, wben we fblt our house shake."「 私 た ち が ち ょ う ど外 出 し よ う と し た と た ん 、 家 が 揺 れ る の を 感 じ た 」 と 同 様 の 構 造 で 、 「… し よ う と した そ の 時 ∼ 」 と い う 意 味 に な る 。 以 下 に例 を示 す 。
(24)Kamla bharat ja-ne=hi -vali th-i ヵ ム ラ ー イ ン ド 行 く-INF.OBL=CLT -Vala. F. SG COP.PST-F.SG ki bimar=par gai.
CONJ 病 気 に な る 行 く.PFV.RSG
「カ ム ラ ー は イ ン ドへ 行 こ う と して い た 矢 先 に病 気 に な っ て し まっ た 」 [McGregor1995:172] (25) pul tut-kar gir-ne=hi -vala th-a
南アジア研究第20号(2008年) ki us=ne pukar-a. coNJ 3SG=ERG 叫 ぶ-PFV.M.SG 「橋 が ま さ に崩 れ 落 ち よ う と した そ の 時 に男 が 叫 ん だ 」 [HJDO237L] 7-2 推 量 用 法 7-2-1 推 量 用 法 の 意 味 特 性 <V-ne-valahona>は また 、 未 来 の 事 態 に 関 す る 話 し手 の 主 観 的 な推 測 を 表 す こ と も あ る 。 筆 者 は こ れ を 「推 量 用 法 」 と して 、 予 定 用 法(5節)、 切 迫 用 法(7-1節)と 区 別 す る 。 次 例 は 推 量 用 法 の 例 で あ る 。
(26)vah aj=kal mar-ne-vala hai. 彼 今 日=明 日 死 ぬ-INRoBL-vala.M.SG CORPRS.3SG 「彼 は 一 両 日 中 に 亡 く な る だ ろ う 」 [Platts1878:330] (27)(乗 客 の 肥 満 化 に よ っ て 航 空 会 社 の 燃 料 コ ス トが 増 大 して い る 問 題)
…ki abhi logom=ka akar aur vazan abhi aur CONJ 今 人 々=GEN 体 形 と 体 重 今 さ ら に barh-ne-vala hai yani ki eyarlainorh=ki 増 す-INRo肌-vala.M.SG COP.PRS.3SG す な わ ち CONJ航 空 会 社=GEN musibat kam nahim ho-ne-va1i hai. 苦 労.F.SG少 な い NEG な る-INRoBL-vala.RSG COP.PRS.3SG 「[専門 家 の 意 見]現 在 、 人 々 は さ ら に肥 満 化 し よ う と して お り、 航 空 会 社 の 苦 労 は 減 りそ う に な い33」 [BBCO41108] (28) zyada afsosnak halat un 46 bhaSaom=ki hai
さ ら に 残 念 な 状 況 そ れ ら 46 言 語F.PL=GEN CORPRS.3SG jo a-ne-vale cand salorh=mem xatm=ho-ne-vali
REL 来 る-INEOBL-vala 若 干 の 年.M.PL=LOC な くなる-INEOBL-Vala.EPL haim… COP.PRS.3PL 「さ ら に残 念 な 状 況 は 、 今 後 数 年 間 に 消 滅 す る で あ ろ う46言 語 の 状 況 で あ る 」[BBCO41029] 推 量 用 法 の 例 を 見 る と 、<V-ne-vaia hona>の 前 後 に は 推 測 の根 拠 が あ る 。 例 え ば 上 例(27)で は 人 々 が 肥 満 化 し て い る 事 実 が あ り、(28)で は こ の 後 に、 「な ぜ な ら ば 、 そ の 言 語 の 話 者 が た っ た1人 に な っ て し ま っ た か らで あ る 」 と い う(消 滅 が 確 実 で あ る)理 由 が 続 く。 した が っ て 、 こ れ ら
ヒンデ ィ ―語 の<V-ne-vala hona>の 三 用法 一属 性 叙述 か ら事象 叙述 へ 、 客観 的 叙述 か ら主 観 的叙 述 へ―
は単 なる推測 で は な く根拠 に基 づ く推測 で あ り、<V-ne-vala hona>は
「
未
来 の事態 に関す る話 し手 の高 い確 信 」 を表 して い る。
なお、推 量 用法 は予 定用 法 と同 じ く、 近 い未来 に限 らず 、遠 い未 来 の事
態 につ いて も言及 で きる(上 例(28))。
7-2-2 認識 的意 味 と用 法 の拡 張
上述 の<V-ne-vala hona>の 推 量用 法 は命題 に対 す る話 し手 の心 的態 度
を表 す こ とか ら 「
認 識 的 モ ダ リテ ィ(epistemic modality)」 と考 え られ
る34。推 量用 法 でhonaが
過去 形 に なる例 が見 られな い こ とも、 これが モ
ダリテ ィで ある こ とを裏付 け てい る35。
推量 用法 は主観 的叙述 で あ り、予定 用法 の客 観 的叙述 とは異 な る。 しか
し、筆 者 は推量 用法 が予 定用 法 か ら切 迫用 法 を経 て拡張 した もの と考 える。
例 えばSweetser[1990]は
、世界 の諸言 語 に英 語 の法助 動詞 と同 じよ う
に根源 的(あ る いは義 務 的)意 味 と認 識的 意味 の両 方 を併 せ 持つ 述語 の 集
合 が あ る ことを指摘 し、次 の よ うに述 べ てい る。
There is strong historical, sociolinguistic, and psycholinguistic evidence
for viewing the epistemic use of modals as an extension of a more basic
root meaning, rather than viewing the root sense as an extension of the
epistemic one, or both as sub-sets of some more general superordinate
sense [Sweetser 1990: 49-50].
す で に述 べ た よ うに、<V-ne-Vala hona>の
予 定用 法 の意 味特 性は 「
決
定 済 みの予 定」 で あ る。 予定 は未 来 を志 向 し、 決定 済み で ある こ とか ら未
来 の事 態 の実現 は確 実で あ る。そ して、切 迫用 法で は事 態が 差 し迫 って い
る こ とか ら実 現 の 確 実 性 は さ らに 高 ま る。 し た が っ て 、<V-ne-vala
hona>の 認 識 的意 味 は予 定用 法 の持つ 「
未 来志 向」 と切 迫用 法 の持 つ 「
確
実 性」 に基 づ き意味 の拡 張が行 われ、 未来 の事 態 に関す る話 し手 の高 い確
信 を表 す よ うにな った と考 え られ る。
7-2-3 未 来 の推 量 を表す形 式 と蓋然性
<V-ne-vala hona>の
推 量用 法 は未 来形 の表 す推 量 と関連す る。そ こで
本節 で は ヒ ンデ ィー語 にお ける未 来の推 量 を表す 形式 とその蓋 然 性 につい
南アジァ研究第20号(2008年)
て考察 す る。
ヒ ンデ ィー語 に は形態 的 に未来 時 を表す 形式 と して、直説法(lndicative)
の未 来形 と仮 定法(Subjunctive)の
不 確 定 未 来形 が あ る。 未 来形 はテ ン
スで あ るが 、未 来 につ いて の話 し手 の推測 も表 し、蓋然 性 の高 さを明示 す
るた め に、 しば しば蓋 然性 の高 い副 詞(zarur「 きっ と、必 ず」、kabhi「決
して」、etc.)を 伴 う。 しか し、 逆 に蓋 然 性 の 低 い 副 詞(sayad「
た ぶ ん、
おそ ら く」)と も共 起 す る ため 、形 式 自体 が表 す 蓋然 性 はニ ュー トラル で
あ る と言 え る。
次 に、 不確 定 未 来形 は仮 定 法 であ り、 直説 法 の未 来 形 とはム ー ド(法)
が 異 な る。 そ して 、「基 本 的 に は確 信 の な い仮 想 を表 す 」[田 中 ・町 田
1986:55]と
述 べ られて い る よ うに、 その 文法 機 能 はモ ダ リテ ィで あ り、
形式 自体 が蓋 然性 の低 さを表 して い る。
そ して、<V-ne-vala hona>の
推量 用 法 は上 で述べ た よ うに根 拠 に基 づ
く話 し手 の高 い確信 を表 してお り、 モ ダ リテ ィ機 能 を持 って い る。 筆者 が
<V-ne-vala hona>と
蓋 然性 を表 す副 詞 との共起 関係 を調べ た ところ、 約
300の 用 例 中、予 定 用法 で1例 だ けavasy「 必ず 、 きっ と」 と共 起 した以
外 は蓋 然 性 を表 す 副 詞 との 共 起 は見 られ な か っ た36。 こ の こ とか ら、
<V-ne-vala hona>に
は蓋然 性 を表 す副 詞 を付 け る必要 が な く、形 式 自体
が高 い蓋 然性 を表 してい る と言 え る。 さ らに言 えば、 ヒ ンデ ィー語 で は未
来 の推 量 とそ の蓋 然性 に関 して 、2種 類 のモ ダ リテ ィ形 式37が相 補 分布 を
な して い る と考 え られ る(下 表1)。
8 ま と め 以 上 、<V-ne-vala hona>の 用 例 を 分 析 し た 結 果 、 三 つ の 用 法 とそ れ ぞ れ の 意 味 的 ・統 語 的 特 徴 を取 り出 す こ とが で きた 。 概 略 、 以 下 の 表2の よ う に ま と め られ る 。表1未 来の推量を表す形式と蓋然性
ヒンデ ィ ー語 の<V-ne-vala hona>の 三用 法 一属 性 叙述 か ら事 象 叙述 へ 、 客観 的叙 述 か ら主 観 的叙 述へ ―
最 後 に<V-ne-vaia hona>の 文 法 化(grammaticalization)38に つ い て 考 察 す る 。5-2節 で 見 た よ う に 、<V-ne-vala hona>に は 属 性 叙 述 と 事 象 叙 述 の 二 種 類 あ る 。 事 象 叙 述 に お い て-valaは 具 体 的 意 味(… す る人/も の) が 薄 れ 、 統 語 的 に も動 詞 句 の 一 部 に 変 化 し て い る 。 ま た 、 事 象 叙 述 に お い て も客 観 的 叙 述 か ら主 観 的 叙 述 へ の用 法 の 拡 張 が 認 め られ た(7-2-2節)。 文 法 化 の 観 点 か らす れ ば 、-valaは 歴 史 的 変 化 の 中 で 文 法 機 能 を 担 う よ う に な り、<V-ne-vala hona>は 、属 性余畏述 か ら事 象 叙 述 に 再 分 析(reanalysis)
さ れへ さ ら に 客 観 的 叙 述 か ら 主 観 的 叙 述 へ 主 観 化(subjectification)39し た と言 え る(下 図1)。 以 上 、 本 稿 で は 、(1)先行 研 究 で 迂 言 的 な 未 来 時 表 現 形 式 と記 述 さ れ て い る<V-ne-vala hona>が 未 来 時 を 指 示 す る 表 現 形 式 で は な く、 決 定 済 み の 予 定 と し て 基 準 時 の 状 態 を 述 べ る 表 現 形 式 で あ る こ と を 主 張 し、(2) <V-ne-vala hona>を 三 つ の 用 法 に 分 類 し、 そ れ ぞ れ の 意 味 的 ・統 語 的 特 徴 を 明 ら か に し た 。<V-ne-vala hona>で 表 され る 事 態 は い ず れ も蓋 然 性 が 非 常 に 高 い が 、 ま だ 実 現 して い な い(あ る い は 実 現 しな か っ た)事 態 で あ り、irrealis40と し て ま とめ る こ とが で き る 。 表2<V-ne-vala hona>の 用 法 と意 味 的 ・統 語 的 特 徴 図1<V-ne-vala hona>の 文 法 化
南アジア研究第20号(2008年) 註 1 本 稿 は 筆 者 の 修 士 論 文 を基 に 、 日本 言 語 学 会 第134回 大 会(2007年6月16-17日 、麗 澤 大 学) に お い て、 「ヒ ンデ ィー 語 の<V-ne-vala hona>の 三 用 法 」 と題 して 口 頭 発 表 した 内 容 に 加 筆 ・ 修 正 を施 した もの で あ る 。本 稿 の 執 筆 に あ た り、坂 本 比 奈 子 先 生 、田 中 敏 雄 先 生 、中 右 実 先 生 の 指 導 と 助 言 を い た だ い た 。ま た 、2名 の 査 読 者 か ら も貴 重 な コメ ン トを い た だ い た 。 この 場 を 借 りて 深 く感 謝 申 し上 げ た い 。な お 、執 筆 の 過 程 で2人 の 母 語 話 者(Paraj Vidyarthi氏 と VikasTaneja氏 。 ともに デ リー 出 身 の30代 男 性 。以 下 、イ ン フ ォー マ ン トと呼 ぶ)の 協 力 を得 た 。 こ こ に 心 か らの 謝 意 を 表 した い 。もち ろ ん 、本 稿 に お け る誤 りは す べ て 筆 者 の 責 任 で あ る。 2 イ ン ド ・ヨ ー ロ ッパ 語 族 の イ ン ド語 派 に 属 す る言 語 で、イ ン ド中 北 部 で 話 され て い る 。基 本 語 順 はsovで 、名 詞 に男 性/女 性 の 区 別 が あ る 。 3 -valaと 同 様 の 形 式 は ヒ ン デ ィー 語 の 周 辺 言 語 に も見 られ る 。詳 細 はMasica[1991:323]を 参 照 。
4 McGregor[1995]は'fbrmative elemen'と 呼 ん で い る。ま た 、Platts[1878]、Kellogg [1893]、 土 田[1985]、Montaut[2004]な ど は-vaiaが 付 い た 名 詞 句 を 「行 為 者 名 詞 (nounofagency)」 と呼 ん で い る 。
5 付 加 され る 語 が 名 詞 の 場 合、主 格 形 も許 容 され る(例:riksa-vala「 人 力 車 夫 」)。
6 -valaは 名 詞、動 詞 の 不 定 詞 、副 詞 、形 容 詞 、代 名 詞 の 後 に 付 け る こ とが で きる 。節(文)に 付 く例 とは 次 の よう な もの で あ る。
(i)"phut=dal-o aurraj=kar-o" -vali niti 分 裂 させ る-IMp そ して 統 治 す る-IMp -vala.F.SG 政 策.F.SG
「『分 割 して 統 治 せ よ』の 政 策(divide and rule)」[HJD09021]
7 「イ ン ド国 内 の 言 語 事 情 が 複 雑 で、ヒ ンデ ィー 語 が 国 語 の 地 位 を 確 立 で きな い で い る こ とが 、 な か な か 正 書 法 が 定 ま ら な い 理 由 の 一 つ と考 え られ る」[西 岡2005:96注]。 8 「屈 折 に せ よ、派 生 にせ よ、語 が 主 要 な 部 分 と補 助 的 な 部 分 か らな る 構 造 を もつ とき 、そ の 主 要 な 部 分 を語 幹 とい い 、そ の 語 幹 に付 い てそ れ を補 助 す る要 素 を接 辞 とい う」[『 言 語 学 大 辞 典 第6巻 述 語 編 』 「接 辞 」]。 9 サ ンス ク リ ット語 の 未 来 形 に は、語 根 に 未 来 接 辞-syaを 付 加 して作 る 単 純 未 来 と、行 為 者 名 詞-trの 男 性 単 数 主 格 形 一taにas-「 あ る」の 現 在 形 を 付 加 して作 る 迂 言 的 未 来(複 合 未 来) が あ る 。辻[1974:163]は 、 「(単 純)未 来 は 広 く将 来 の 事 柄 に 関 係 し、意 図 ・目的 ・希 望 等 を も表 す が 、複 合 未 来 と区 別 して は 近 い 将 来 につ い て 用 い ら れ 、複 合 未 来 は 時 日 ・期 限 の 明 示 され る 場 合 に 好 ん で 使 用 さ れ る」 と述 べ て い る。
10 "It [The Noun of Agency]is also commonly used as the predicate of a preceding subject to express a proximate future" [Platts 1878: 330] .
"…two periphrastic expressions may specifically express near future
, the verbal noun fbrmed by suffixation of -vala on the oblique infinitive + copula, and, for close imminence, the infinitive + dative postposition and copula ("about to")…" [Montaut2004 : 112].
112003年9月 か ら2007年12月 ま で のBBC Hindiの 記 事 を筆 者 が テ キ ス ト形 式 で 保 存 し た も の (1700記 事 、7.49MB)。
12イ ンタ ー ネ ット上 で 公 開 され て い るプ レ ー ムチ ャ ン ド(Premchand
,1880-1936)の 短 編 小 説 を 筆 者 が テ キ ス ト形 式 で 保 存 し た も の(102編 、354MB)。
ヒン デ ィ―語 の<V-ne-vala hona>の 三 用法 一 属 性叙 述 か ら事象 叙 述へ 、 客観 的 叙述 か ら主 観 的叙 述 ヘ― 13土 田[1985]は 小 説 の 用 例 を挙 げ て い る が 、本 稿 で は 出 典 を 省 略 した 。 14本 稿 で は、益 岡[2004]の 「属 性 叙 述 」、 「事 象 叙 述 」とい う用 語 を用 い た 。益 岡[2004:4] は 叙 述 の 類 型 に 関 して、 「属 性 叙 述 とは 、あ る対 象Xが あ る 属 性Yを 有 す る こ とを 述 べ る もの で あ る」、 に れ に 対 して、事 象 叙 述 と は 、あ る時 空 間 に 実 現 す る(出 現 す る ・存 在 す る)あ る 事 象(広 義 のevent)を 叙 述 す る もの で あ る」と説 明 して い る 。
15例 え ば 用 例(3)で は<V-ne -vala>の 前 に 属 格 後 置 詞kaが あ る こ とか ら、こ れ が 属 性 叙 述 で あ る こ と が わ か る。ま た 、次 例 は 意 味 的 に 「*我が 家 に子 供 は 産 まれ る もの だ」とい う属 性 叙 述 の 解 釈 は で き な い た め 、事 象 叙 述 と して 解 釈 さ れ る 。
(i)mere ghar bacca ho-ne-valallai.
1SG.GEN 家.M.SG.oBL 子 供M.SG 産 ま れ る-INRoBL-vala.M.SG COEPRS3SG 「我 が 家 に は子 供 が 産 ま れ る」[HJDO372r]
しか し、Verma[1971:104]が 指 摘 す る よ うに 、<V-ne-vala hona>は し ば しば 属 性 叙 述 と事 象 叙 述 の 両 方 の 解 釈 が 可 能 で あ り、そ の 場 合 、特 定 時 を 指 す 副 詞 が あ る と事 象 叙 述 として 解 釈 され る(特 定 時 を 指 す 副 詞 に よっ て 時 間 が 限 定 され 、時 間 の 流 れ を超 越 した 属 性 叙 述 の 解 釈 が で きな くな る)。 16本 稿 で は コピ ュ ラ動 詞honaの 一 機 能 と考 え、用 例 の グ ロ ス はcopと す る。 17査 読 者 の1人 か ら、 「実 現 が 確 実 で あ る こ とが<V-ne-vala hona>の 基 本 で あ る に もか か わ ら ず 、否 定 辞 とと もに 使 わ れ て い る用 例(10)は や や 奇 異 に 思 わ れ 、一 般 的 に 否 定 文 で の 使 用 に は 限 界 が あ る の で は な い か 」との 指 摘 を い た だ い た 。後 述 す る よ うに 、<V-ne-vala hona>の 三 用 法 の うち 、否 定 辞 が 付 か な い用 法 もあ るが 、他 の 二 用 法 で は 否 定 辞 が 付 く例 は 珍 し くな い 。 本 稿 の 用 例 中 、(10)、(18)、(27)が 否 定 辞 を伴 う例 で あ る。 18大 臣 は 実 際 は1人 の人 物 だ が、複 数 形 にす る こ とで 尊 敬 表 現 に な って い る 。
19発 言 の 原 文 は 次 の 通 り。"But I am not going to set a precise date now"(http://news.bbc. co.uk/2/hi/uk-news/politics/5322094.stm). 20近 未 来 と遠 い 未 来 を 絶 対 的 な 基 準 で 規 定 す る こ と は で きな い が、今 日や 明 日 に 比 べ 、半 年 先 、一 年 先 は 相 対 的 に 遠 い 未 来 と言 え る 。 21イ ン フ ォー マ ン トに確 認 した とこ ろ、 「ハ レー 彗 星 は 次 回 、2061年 に 地 球 に接 近 す る」 とい うよ うな 遥 か に 遠 い 未 来 の 事 態 も<V-ne-vala hona>で 言 うこ とが で きる との こ とで あ る 。 22中 右[1994:229-230]は 、英 語 の い わ ゆ る 現 在 時 制 の 未 来 時 用 法 に つ い て 、 「これ は 一 般 に 、
未 来 の 出 来 事 に つ い て 話 し 手 が 、確 固 た る 決 意(a firm decision)に 従 って 、あ る い は 固 定 時 刻 表(a fixed schedule)に 従 って、確 実 に起 こ る と考 えて い る 場 合 に あて は ま る とい わ れ る 。 [中 略]現 在 時 制 は 現 在 時 を 指 示 す る とす る 仮 説 に 立 て ば 、(1)現 在 時 制 の 現 在 時 指 示 と(2) 時 の 副 詞 の 未 来 時 指 示 とは 二 つ の 状 況 の 時 点 を そ れ ぞ れ 役 割 分 担 して い る 。現 在 時 制 の ほ うは 現 在 の 決 定 済 み の 状 態 を 指 し示 して い る の に 対 し 、未 来 時 の 副 詞 の ほ うは 未 来 の 出 来 事 を指 し示 して い る と説 明 され る」と 述 べ て い る 。 本 節 で 挙 げ た<V-ne-vala hona>の 用 例 も こ れ と同 様 の 状 況 で 使 わ れ て お り、中 右 の 説 明 を 援 用 す る こ とが で き よう。 23「 梵 語 にせ よ ヒ ンデ ィー 語 にせ よ、至 る とこ ろ に見 出 しうる 普 通 未 来 に 比 べ れ ば 、迂 説 未 来 の 用 い られ る こ とは は る か に 稀 で あ る 。梵 語 で は 、とき に 両 者 が 混 用 され て い る形 跡 が 見 ら れ ぬ わ け で は な い が 、しか し、本 来 普 通 未 来 で 述 ぶ べ き とこ ろ に 迂 説 未 来 を用 い る こ とは ど ち ら か
南アジア研究第20号(2008年)
とい え ば 稀 で あ り、逆 に 、迂 説 未 来 で 表 し うる こ とを 普 通 未 来 で 示 す こ と は さ ほ ど珍 し くは な い と思 わ れ る」[土 田1985:620]。
24こ の<V -ne-vala hona>の 使 用 制 限 につ い て は イ ン フ ォ0マ ン トに 確 認 を 行 った 。 25英 語 のwas going toは 通 例、計 画 が 果 た され な か っ た こ とを 表 す[安 藤2005:102]。
(i)1 was going to come, but I couldn't.「 来 るつ もりだ っ た が 、来 られ な か っ た」
26<V ne -vala hona>の 否 定 に は 通 常nahimが 用 い られ る が 、こ こで は`na to…na…'「 …で も… で も な い」 とい う慣 用 表 現 の た め 、否 定 辞 にnaが 用 い ら れて い る。
27同 日のBBC NEWSに は 次 の よ うに 書 か れ て い る。"Princess Diana was not engaged and did not plan to get engaged" (http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/6179489.stm).
28土 田[1985:623注]はhonaが 過 去 形 をと りうる こ とに つ い て、 「こ れ は 、話 者 の 視 点 を現 在 よ り過 去 の 一 定 時 に 移 し 換 え さえす れ ば 、honaが 現 在 形 を とる 場 合 と用 法 の上 で ほ と ん ど変 わ る こ とが な い の で 、[中 略]便 宜 上 迂 説 未 来 的 用 法 とみ な す こ と とす る」 と述 べ て い る。 しか し、honaが 過 去 形 を とる か 否 か は 統 語 的 に きわ め て 重 要 で あ る。ま た 、 honaが 過 去 形 の 場 合 、非 実 現 を表 す な ど意 味 的 な 違 い も見 ら れ 、サ ンス ク リ ッ ト語 の 迂 言 的 未 来 をそ の ま ま ヒ ン デ ィー 語 に あ て は め る こ とは で きな い 。
29英 語 の<be about to>も 通 例、未 来 時 を 示 す 副 詞(句)は 付 け な い[安 藤2005:109]。
30McGregor[1995]はhiをemphatic enclitic、古 賀 ・高 橋[2006]は 副 助 詞(先 行 す る 語 を取 り立 て て 強 調 す る)に 分 類 して い る。 31進 行 相 標 識raha(<rahna)を 用 い た、現 在 進 行 形 の 未 来 時 用 法 。 32英 語 の 接 続 詞thatに 相 当 す る。 33こ の用 例 で は<V-ne-vala hona>が2回 使 わ れ て い る。前 者 は 切 迫 用 法 で 、後 者 が 推 量 用 法 で あ る 。 34本 稿 で は 「モ ダ リテ ィ」 をPalmer[2001]の 定 義 に 基 づ き用 い る。す な わ ち 、
"Modality is concerned with the status of the proposition that describes the event" [p . 1] . ".—epistemic modality and evidential modality are concerned with the speaker's attitude to the truth-value or factual status of the proposition (Propositional modality)" [p. 8] . 35 "•cthe proposition can be in the past
, but the modality (the judgment) cannot" [ibid.: 33] .
36次 の 副 詞 との 共 起 関 係 を 調 べ た。avasy「 必 ず 、きっ と」、zarur「 必 ず、き っ と」、niscay(hi)「 必 ず 、絶 対 に 」、kabhi「 決 して」、sayad「 た ぶ ん 、お そ ら く」、sambhavtah「 た ぶ ん 、お そ ら く」。
37 Palmer [2001: 4]
"Basically
, there are two ways in which languages deal grammatically
with an overall category of modality. These are to be distinguished in terms of (i) modal
system and (ii) mood. Both may occur within a single language, e.g., in German, which has
amodal system of modal verbs and mood(indicative and subjunctive)."と 述 べ て い る。こ の 分 類 に あ て は め れ ば 、<V-ne-vala hona>はmodal system、 不 確 定 未 来 形 はmoodに な る 。 38大 堀[2004]は 「文 法 化 とは、そ れ ま で 文 法 の 一部 で は な か っ た 形 が 、歴 史 的 変 化 の 中 で 文
法 体 系(形 態 論 ・統 語 論)に 組 み 込 ま れ るプ ロ セ ス で あ る 。よ り具 体 的 に は 、自立 性 を もっ た 語 彙 項 目が 付 属 語 とな って 、文 法 機 能 を に な うよ うに な る 変 化 が 、典 型 的 な 文 法 化 で あ る」 と 定 義 して い る 。ま た 、も と も と 自立 形 式 で な くて も 、使 用 範 囲 が 広 が り、機 能 の 多 様 化 が 起 き
る ケ ース も文 法 化 で あ る として い る 。
ヒ ンデ ィ― 語 の<V―ne-vala hona>の 三 用 法― 属 性 叙述 か ら事 象叙 述 へ 、客 観 的叙 述 か ら主観 的 叙述 へ ―
grammatically
identifiable expression of speaker belief or speaker attitude to what is said. It
is a gradient phenomenon, whereby forms and constructions that at first express primarily
concrete, lexical, and objective meanings come through repeated use in local syntactic
contexts to serve increasingly abstract, pragmatic, interpersonal, and speaker-based
functions" [Traugott 1995: 32] .
40
Palmer [2001: 1] ‚Í Mithun [1999: 173] ‚ðˆø—p‚µ‚Ärealis / irrealis‚ð•à–¾‚µ‚Ä‚¢‚é•B "The realis portrays situations as actualized
, as having occurred or actually occurring, knowable through direct perception. The irrealis portrays situations as purely within the realm of thought, knowable only through imagination."
略 号 一 覧
1、2、3=人 称;ACC=対 格;CLT=接 語;CONJ=接 続 詞;CONJP=接 続 分 詞;COP=コ ピ ュ ラ 動 詞;
DAT=与 格;ERG=能 格;F=女 性;FUT=未 来;GEN=属 格;H=ヒ ン デ ィー 語;HON=敬 称;
IMP=命 令;INF=不 定 詞;INST=具 格;M=男 性;NEG=否 定;OBL=斜 格;PASS=受 動 態;PFV=完 了;
PL=複 数;POL=丁 寧 形;PRS=現 在;PST=過 去;PTCL=小 詞;REFL=再 帰 代 名 詞;REL=関 係 詞;
Q=疑 問 標 識;S=サ ン ス ク リ ッ ト語;SBJV=仮 定 法;SG=単 数
グ ロ ス の ハ イ フ ン(一)は 形 態 素 境 界 、等 号(=)は 接 語 境 界 な い し 複 合 語 の 境 界 を 表 す
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ヒ ンデ ィ― 語 の<V-ne-vala hona>の 三 用 法― 属 性叙 述 か ら事 象叙 述 へ 、客 観 的叙 述 か ら主観 的 叙述 ヘ― 要 旨 キ ー ワ ー ド
<V-ne-vala hona>、 決 定済 み の予定 、 モ ダ リテ ィ、蓋 然性 、文法 化
本稿 で は ヒ ンデ ィー語 の迂 言 的 な未 来 時表現 形式 とされ る<V.ne-vala hona>の
意 味機 能 を考 察 した。先 行研 究 の多 くが 「<V-ne-vala hona>は
近 未来 を表す 」 と
記 述 して い るが 、遠 い未 来 であ って も実現確 実 な事 態 に使 われ る こ とが用 例 か ら明
らか に なった 。そ して、(1)<V-ne-vala hona>は
未来 形 との言 い換 えがで きない場
合 が あ る、(2)コピュ ラ動 詞honaは
過 去形 を とる こ と もあ り、(通 例)事 態 の 非実
現 を表 す こ とか ら、 本稿 で は これが未 来時 を指示 す る表 現形 式 では な く、 決定 済 み
の予定 と して基 準時 の状 態 を述 べ る表 現形 式で あ る こ とを主 張 した。
<V-ne-vala hona>に
は上 記 の用法(予 定用 法)以 外 に も事 態 の実現 直前 の切 迫
した状 況 を表 した り(切 迫用法)、未来 の事態 に関す る話 し手 の推測 を表す用 法(推
量用 法)が あ る。本稿 で は各用 法 の意 味的 ・統語 的特徴 を明 らか に し、推量 用法 を
モ ダリテ ィ と して提示 した。最 後 に<V-ne-vala hona>の
文法 化 につ い て考察 を加
えた。
SummaryOn <V-ne-vala
hona> of Hindi:
its three kinds of usages
Yasunari Imamura
Keywords
: <V-ne-vala
hona>,
pre-determined
schedule,
modality,
probability,
grammaticalization
This paper provides an analysis of the semantic function of < V-ne-vala hona>,
which is said
to be the periphrastic future construction in Hindi. The construction is formed by attaching
a grammatical element -vala, which makes adjective / noun phrases, to the oblique infinitive
(V-ne)
followed by a form of the copula verb bond. In most preceding studies, < V-ne-vala hona>
is described as denoting the proximate future, but through the examination of actual examples,
it is revealed that this construction can also be used for the remote future in case of an event
having a high probability of realization.
This paper argues that this construction is not an expression that refers to the future but
an expression that describes a state at the time of reference as a pre-determined schedule by
considering the following facts: (i) in some cases < V-ne-vala hona> is not equivalent to the
future tense form. (ii) the copula verb bona can take the past tense form and in that case the
南アジア研究第20号(2008年)