Tetsu-to-Hagane 98 (1): (2012)

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全文

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1. 緒言

連続鋳造用浸漬ノズルへのアルミナ介在物の付着は安定 操業の阻害,鋳片品質低下の要因となっている。Fig. 1にア ルミナ介在物の付着が進行した浸漬ノズルを鋳造終了後に 回収して切断した写真の一例を示す。アルミナ介在物の付 着が進行すると鋳造作業及び鋳片品質に対して様々な問題 が発生する。例えば浸漬ノズル内壁に堆積したアルミナが 剥離し,鋳型内の凝固シェルに捕捉された場合には重大な 製品欠陥の要因と成り得る1)。また,浸漬ノズルにアルミ ナ介在物の付着が進行すると,浸漬ノズル内壁形状の変化 が鋳型内溶鋼流動の変化を引き起こして鋳片欠陥の要因と なる恐れがある。さらに付着が進行すると浸漬ノズル閉塞 による鋳造停止を余儀なくされる場合もある。 浸漬ノズル内壁でのアルミナの付着・堆積機構の研究, 並びにその防止方法の開発は従来から多数行われてきた。 例えば,浸漬ノズル中に含まれる C,SiO2の反応によって 生じる CO,SiOガスと鋼中のAlとが反応してアルミナの 生成,付着が進行するとした報告1,2)があり,この反応を防 止するために耐火物をカーボンレスとする対策などが提案 されている。また,マグネシア−アルミナのスピネル材質 の利用によるアルミナ介在物の付着低減効果についての 報告3)や,ハイアルミナ材質でのアルミナ介在物の付着低 減についての報告4)などがなされているが,いずれも付着 低減の一因として,カーボンレス化による酸素源発生の抑 制が挙げられている。最近では浸漬ノズル−溶鋼を通電す ることでアルミナの付着を防止する方法5)も提案されてい る。 さらに浸漬ノズル−溶鋼界面の界面張力に着目した研究 も向井ら6–8)を中心として詳細に研究がなされている。向 井らは浸漬ノズルと溶鋼の反応の結果,溶鋼界面のメタル 側に C,Siなどの濃度勾配が生じ,それによって誘起され た介在物−メタル間の界面張力勾配により,介在物が界面

MgOとAlを含有した連続鋳造用浸漬ノズル耐火物材質による

アルミナ介在物の付着防止

淡路谷 浩 *・鈴木 幹雄 *

2

・渡辺 圭児 *・堤 康一 *・岸本 康夫 *・久保田 淳 *

Prevention of Adhesion of Alumina Inclusions onto Submerged Entry Nozzle by Refractory Material Containing MgO and Al

Yutaka AWAJIYA, Mikio SUZUKI, Keiji WATANABE, Koichi TSUTSUMI, Yasuo KISHIMOTO and Jun KUBOTA

Synopsis : Alumina adhesion to the submerged entry nozzle (SEN) causes serious problems in continuous casting, as it has a negative infl uence on the

fl ow pattern in the mold and causes infl ow of alumina inclusions to mold. The purpose of this research is to prevent alumina adhesion to the SEN. A new type of SEN which enables control of the interfacial tension gradient at the interface of the SEN and molten steel was developed. Removing sulfur on the SEN interface controlled interfacial tension, preventing alumina adhesion. Various experiments were performed to evaluate the quality of the SEN material. As a result, the optimum refractory material for preventing alumina adhesion was clarifi ed. After evaluating the thermal shock characteristics of nozzles using the developed material, experiments were performed at an actual continuous casting machine, and reduced alumina adhesion was confi rmed under commercial operating conditions.

Key words: continuous casting; refractory; interface; quality control; submerged entry nozzle.

平成23年4月12日受付 平成23年9月8日受理 (Received on Apr. 12, 2011; Accepted on Sep. 8, 2011)

* JFEスチール(株)スチール研究所 (Steel Research Laboratory, JFE Steel Corporation, 1 Kawasaki-cho Chuo-ku Chiba 260–0835) *2 工業所有権協力センター (Industrial Property Cooperation Center)

鉄 と 鋼 Tetsu-to-Hagané Vol. 98 (2012) No. 1

Fig. 1. Example of alumina adhesion to submerged entry nozzle (SEN).

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に吸引されて付着する機構を提唱している。 また,瀬々ら9)によってこれら界面張力による粒子の捕 捉力に対する成分依存性の定量評価の試みもなされてい る。 本研究では浸漬ノズルへのアルミナ粒子付着の防止を目 的として,浸漬ノズルと溶鋼の界面における界面張力の勾 配に着目し,界面活性元素である溶鋼中の Sを除去するこ とによって界面張力の勾配を制御するアルミナ難付着浸漬 ノズルの開発を試みた。以下,今回開発を行ったアルミナ 難付着材質,アルミナ難付着浸漬ノズルを「難付着材質」, 「難付着ノズル」と記述する。 開発した難付着ノズルが実際の連続鋳造プロセスに適用 可能であるか否かの確認実験を行い,難付着ノズルの鋳造 耐用性を評価した。 さらに,実際の連続鋳造プロセスにて,本研究にて開発 した難付着ノズルのアルミナ難付着効果の確認を行った。

2. アルミナ介在物の付着メカニズム

浸漬ノズルへのアルミナ介在物の付着は Fig. 2に示す順 序で進行すると考えた。1.アルミナ粒子が浸漬ノズル壁へ 接近 2.アルミナ粒子が壁に接触 3.アルミナ粒子が壁面 に付着 4.アルミナ粒子同士が焼結して成長。ここで付着 の第一段階である「アルミナ粒子の浸漬ノズル壁への接近」 が無ければそれに続く付着,成長は起こらないと考えた。 2・1 溶鋼中のアルミナ粒子に働く力 液体中の微細粒子は界面張力勾配のもとでは界面張力 の大きい方から小さい方へ動くことが知られている10,11) Fig. 3に示すように浸漬ノズル壁近傍には界面活性元素や 浸漬ノズルから溶出する元素などが濃度勾配を形成して おり,この濃度勾配層の厚みは数 10∼100μm程度と考え られている6)。Alによって脱酸された溶鋼中に存在するア ルミナ粒子の大きさは概ね 10μm以下であるため12),濃度 勾配層の厚みよりも小さい。添加元素濃度の増加に伴って 界面張力は低下すると考えられるが,この界面張力の勾配 によって,濃度勾配層に存在するアルミナ粒子は界面張力 の小さい浸漬ノズル壁に向かって吸引されると考えられ 6–8) 2・2 界面張力に及ぼすSの影響 Sは界面活性元素であり13),浸漬ノズルと溶鋼の界面に 濃化するため,Fig. 3に示すような濃度勾配層を形成する。 溶鋼と介在物の間の界面張力は溶鋼の表面張力により変化 するが,各種添加元素が溶鋼表面の表面張力に及ぼす影響 を Fig. 4に示す14)。各種添加元素の増加に伴って表面張力 は低下するが,Sはその影響が最も大きいと言える。このS の濃度勾配に着目して以下の各種実験を行った。

Fig. 2. Mechanism of adhesion of particles to SEN.

Fig. 3. Suction of alumina particles by difference of interfacial

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3. 実験と考察

3・1 アルミナ介在物の付着に及ぼす溶鋼 S 量の影響 浸漬ノズルへのアルミナ介在物の付着に及ぼす溶鋼中の S成分の影響を調査するためにアルミナ介在物の付着を評 価する実験を行った。 Fig. 5に示す溶鋼循環型実験装置により浸漬ノズルへの アルミナ介在物の付着に及ぼす鋼中 S濃度の影響を調査し た。実験条件を Table 1に示す。使用した浸漬ノズルの全長 は 780mmであり,実機使用サイズの浸漬ノズルをそのま ま使用可能な点が特長である。この実験の利点は実際の浸 漬ノズルの形状を変更する必要なく使用することができる ので,吐出孔近傍での実機の溶鋼流動を再現可能という点 がある。 溶鋼成分は実機でアルミナ介在物の付着が生じやすい低 炭素アルミキルド鋼の成分とした。溶鋼 450kgを溶製した 溶解炉に上昇管ノズル,下降管ノズルを浸漬する。上昇管 ノズル,下降管ノズルは真空槽と接続されており,この真 空槽を約 0.05MPaに減圧して溶鋼を吸い上げた後に,上昇 管ノズルのポーラス煉瓦部分に 8Nl/minのArガスを流すこ とで溶鋼に上昇流を付与,下降管には下降流を生じさせて 循環した。実験中,溶鋼湯面に溶鋼重量の約 0.055mass%の 金属 Alを10分毎に添加することにより,鋼中Al濃度を約 0.2mass%に保持して常に鋼中にアルミナ粒子が存在する 条件にて実験を行った。 ここで使用した浸漬ノズル材質は,上昇管,下降管共に アルミナ−グラファイト材であり,各S濃度条件に対して同 一のものを使用した。アルミナ−グラファイト材の成分は Al2O3が45mass%,Cが31mass%,SiO2が45mass%である。 溶鋼循環時間は 60分とした。回収した浸漬ノズルを縦方 向に切断し,内管部に付着したアルミナを観察した。上昇 管ノズルは上昇流付与のために Arガスを流しており,ど の条件でもアルミナの付着がほとんど無かったためにアル ミナ難付着性の評価から除外して,下降管に付着したアル ミナの厚みでアルミナ難付着性を評価した。 実験後の下降管ノズルの断面図と付着したアルミナの厚 みを測定した結果を Fig. 6に示す。[S]=0.050mass%の溶鋼 では浸漬ノズル内壁に地金とアルミナの混合物が付着して いた。アルミナ介在物の付着が網目状に進行し,その間に 地金が凝固したものと考えられる。一方,[S]=0.002mass% の溶鋼ではアルミナ介在物の付着が少なく 2mm程度で あった。すなわち,低 S溶鋼ではアルミナ介在物の付着が 減少したことを確認した。 実機浸漬ノズル循環実験において,低 [S]溶鋼のアルミ ナ介在物の付着量が少ない結果となった。理由としては Fig. 3に示したような浸漬ノズル溶鋼界面でのS濃度勾配 が小さく,その結果界面張力勾配によるアルミナ粒子の吸 引が抑えられたためと考えられる。これらラボ実験の結果 は向井ら7)が示した結果と一致する。 3・2 実機連続鋳造プロセスでのアルミナ粒子の付着防止 前章で述べた基礎実験で,浸漬ノズル内壁へのアルミナ の付着に対して [S]の濃度,界面張力が非常に大きな影響 を持つことと,溶鋼中の [S]濃度が低い場合にはアルミナ 介在物の付着が低減されることが分かった。しかし,溶鋼 を極低硫化することは精錬工程の負荷が増大するために現 実的ではない。そこでバルクの溶鋼成分の調整ではなく,

Table 1. Experimental conditions of molten steel circulation apparatus. Fig. 5. Schematic diagram of molten steel circulation apparatus.

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浸漬ノズルの耐火物材質に溶鋼との界面近傍に限った脱硫 機能を付与することでアルミナの付着を防止することを考 えた。 アルミナ粒子の浸漬ノズル側への吸引を防止するメカニ ズムを Fig. 7に示す。通常,界面活性元素であるSは溶鋼− 浸漬ノズル界面に濃化し,濃度勾配を形成する14)。ここで 浸漬ノズルと溶鋼界面の Sを除去してSの濃度勾配を緩や かにすることが出来ればアルミナ粒子の浸漬ノズル壁面へ の吸引を低減することができる。 そこで本研究ではアルミナ粒子の浸漬ノズル壁面への吸 引を防止するために,界面張力勾配を制御して,アルミナ 粒子の浸漬ノズル壁面への接近機会を低減することでアル ミナ介在物の付着を防止できると考えた。 3・3 難付着型の浸漬ノズル材質設計 次に浸漬ノズルと溶鋼界面の [S]を除去することの出来 る耐火物材質について検討を行った。本研究では Fig. 7に 示すように耐火物中の MgOの分解によってMgガスを発 生,この Mgガスにより浸漬ノズル近傍の[S]をMgSとし て脱硫することによりアルミナ粒子の付着を防止出来ると 考えた。 MgO(s) + C(s) = Mg(g) + CO(g) ( 1 ) 3MgO(s) + 2Al(l) = 3Mg(g) + Al2O3(s) ( 2 )

4MgO(s) + 2Al(l) = 3Mg(g) + MgO・Al2O3(s) ( 3 )

Mg(g) + S = MgS(s) ( 4 ) 溶鋼−浸漬ノズル界面温度条件下でも Mgガスを充分に 発生させるために金属 Alを添加した。 1600℃における反応の標準自由エネルギー変化の比較 を行った。Mg(g)1molで標準化して各式を比較したところ, 式 ( 1 )の反応の標準自由エネルギー変化は79700Jであり, 式 ( 2 )の反応の標準自由エネルギー変化は–1468J,式( 3 ) の反応の標準自由エネルギー変化は –15623Jであること15) から,金属 Alを添加することでMgガスが発生しやすくな ると考えられる。 式 ( 2 ),式( 3 )あるいは式( 1 )によって耐火物中からMg ガスが発生すれば Fig. 7に示すように式( 4 )により浸漬ノ ズルと溶鋼の界面に存在する Sを除去し,アルミナ粒子の ノズル側への吸引を抑えることが可能となる。一部の Mg ガスは溶存 Mgとなる可能性もあるが,これもSとの反応 に寄与すると考えられる。 3・4 難付着材のアルミナ介在物の付着防止効果 前節で述べたアルミナ粒子の付着防止メカニズム,浸漬 ノズル材質設計を踏まえて最適な難付着材質の組成を検討 した数種類の組成の試験片を作成して溶鋼浸漬実験を行 い,アルミナ難付着効果を比較した。実験の条件を Table 2 に示す。なお今回の実験では溶鋼中 [S]濃度を0.02mass% で一定とした。実験中,鋼中の Al濃度を約0.2mass%に維 持するために溶鋼湯面から適宜金属 Alを添加した。実験中 Fig. 6. Cross section of SEN used in molten steel circulation tests for molten steels containing (a) 0.002 mass% S and (b) 0.050 mass% S.

Table 2. Experimental conditions of test piece dipping apparatus.

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溶鋼の全酸素濃度は約 10∼12ppmで安定しており,ほぼ同 じアルミナ介在物量の溶鋼で実験を行なった。 各試験片の組成を Table 3に示す。本実験では難付着材質 の基本設計として,マグネシア,アルミナ材質に金属 Alを 加えた試験片を数種作成して行ったが各試験片の成分の相 違や実験結果を以下に説明する。 3・4・1 基本材質及びAlの影響 難付着材質の比較材としてアルミナグラファイト材 質(試験片 No.1),アルミナグラファイト材質にマグネシ アと最大粒径 0.075mmの金属Alを配合したもの(試験片 No.2),スピネル材質(試験片No.3)の実験を行なった。 実験後の試験片に付着したアルミナの厚みを測定した 結果を Fig. 8に示す。アルミナグラファイト材質(試験 片 No.1)はアルミナ介在物の付着量が3.0mm以上となっ た。アルミナグラファイト材質にマグネシアと最大粒径 0.075mmの金属Alを配合した試験片についても難付着効 果は得られずに付着物が厚い結果であった。スピネル材質 (試験片 No.3)についても後述する試験片の付着物が厚い 結果であった。 3・4・2 Al濃度の影響 Alの添加量を変更した試験を行なった。金属Alの濃度 は 10mass%(試験片No.4),5mass%(試験片No.5),2mass% (試験片 No.6)の3水準とした。 これら難付着材として作成した試験片(試験片 No.4,5, 6)は他の材質に比べて総じて付着厚みが少ない結果となっ た。金属 Alの量,粒度を変更した実験の結果,金属Al量は 2mass%,金属Al粒度は最大粒径0.250mmのもので付着厚 みが少なかった 3・4・3 Cの影響 金属 Alが2mass%と5mass%の水準についてはカーボン を極力低減した(試験片 No.7,8)実験を行い,カーボン レス化がアルミナ介在物の付着に及ぼす影響を調査した。 カーボンを極力低減した(試験片 No.7,8)材質では,カー ボンをより多く含有した難付着材(試験片 6,5)よりも若 干付着厚みが多い結果であり,カーボンレス化による付着 量の低減効果は得られなかった。 3・4・4 Al粒度の影響 金属 Alが5mass%の水準については金属Alの粒度を調 整し,最大粒径 0.250mmの試験片No.9,最大粒径0.150mm の試験片 No.10,最大粒径0.075mmの試験片No.5,以上の3 水準の実験を行った。金属 Alの粒度を調整した試験片の付 着量を比較すると粒度が最も大きい最大粒径 0.250mmで 付着厚みが低減した。 3・4・5 浸漬ノズル設計を考慮した材質選択 難付着材として作製した試験片(試験片 No.4,5,6,9, 10)は他の材質に比べて総じて付着厚みが少ない結果と なった。金属 Alの量,粒度を変更した実験の結果,金属Al 量は 2mass%,金属Al粒度は最大粒径0.250mmのもので付 着厚みが少なかったが,金属 Al量が2mass%の試験片に対 しては別途 120分の実験を行なったがアルミナ難付着効果 の時間的な持続性に懸念があることがわかった。金属 Alが 10mass%では熱膨張が大きくなることが難点となる。 Table 3. Chemical composition of test piece for dipping test.

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また,金属 Al粒度を大きくした場合も反応界面積が小さ くなるために,効果低減の懸念があると考えられる。以上 の理由により,難付着材質としての組成は金属 Alの量が 5mass%,金属Alの粒度が0.075mmの試験片No.5の材質(以 下,MgO-C-Al材質と称する)が最適であるとしてさらに 開発を進めた。 3・5 試験片界面の観察 試験片 No.5の界面をEPMAにて観察した結果をFig. 9に 示す。観察試料の付着物と耐火物の間には試料固定用の樹 脂が侵入し,数 10μmの隙間が生じている。 観察の結果,稼動面近傍に MgとSの濃化が見られた。 Mgは耐火物中に含まれるMgOの濃度以上に濃化してお り,耐火物中から Mgガスが発生し,鋼中のSと反応して生 成した MgSが残存したものと考えられる。以上から考察す ると,発生した Mgガスが浸漬ノズル溶鋼界面のSと反応 して界面張力勾配が緩やかになる効果により,MgO-C-Al 材質へのアルミナ介在物の付着が大幅に減少したものと考 えられる。 引き続いて,実機浸漬ノズル循環実験を Fig. 5,Table 1に 示す条件で行った。バルク溶鋼の S濃度は0.05mass%であ る。使用した浸漬ノズルはアルミナグラファイト材をベー スとし,Fig.10の左に示すように浸漬ノズルの内管下部に のみ MgO-C-Al材質を配置した。浸漬ノズル内管にMgO-C-Al材質を配置した後に吐出孔の空け加工を行ったため に,浸漬ノズル内管下部はアルミナグラファイト材の露出 部分と難付着材の部位とが混在した状態となっている。溶 鋼は循環させているため,同一の溶鋼,すなわち同一のア ルミナ介在物量を持つ溶鋼を通過させて,材質の違いによ るアルミナ介在物量の付着防止効果を検証した。 Fig.10は実験終了後の浸漬ノズル切断図である。アルミ ナグラファイト材の部位と MgO-C-Al材質の部位とのアル ミナ介在物の付着の違いは明らかで,アルミナグラファイ トが露出している部分にはアルミナ介在物の付着が進行し ているが,MgO-C-Al材質部分にはアルミナ介在物の付着 が全く無かった。材質の境目の部分で明瞭に付着厚みが異 なっており,この実験でも MgO-C-Al材質は優れたアルミ ナ難付着性を発揮した。 3・6 MgO-C-Al 材質ノズル実機実験 これまでの実験や検討を踏まえて浸漬ノズルの予熱,保 温条件を決定し,実機での鋳造実験を行った。最初は低 鋳造速度条件 (1.1m/min)にて実験を行った。実験条件を Table 4に示す。実験時には浸漬ノズルの熱衝撃によるス ポーリング破壊,難付着材配置部の剥離等は無く,問題な く鋳造を完了した。 実験後の浸漬ノズル切断写真を Fig.11に示す。難付着ノ ズルはアルミナグラファイトノズルに対して,優れたアル ミナ粒子付着防止効果を発現している。Fig.11右にはアル ミナグラファイトノズルに対する難付着材配置部の付着厚 みの比較を示しているが,MgO-C-Al材質のアルミナ介在 物の付着低減効果が明確な結果となった。 ここで,発生する Mgガス量と,反応するS量のマスバラ ンスについて考察する。 浸漬ノズル内管部に配置した MgO-C-Al材質は約2mmの 厚みまで金属 Alが反応しており,反応した部位の重量は 120gである。そのうちAlの含有量は5mass%であるために Alの重量は0.22mol(6g)となる。仮に式( 3 )によって発生し た Mgガスが式( 4 )によって鋼中のSを固定できるとする と,固定できる Sの量は0.33mol(10.7g)となる。

Fig. 10. Effect of material on alumina adhesion in molten steel circulation experiment.

Fig. 9. Observational results of refractory interface by EPMA.

Table 4. Casting conditions at low casting speed at Fukuyama #2CCM.

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これに対して,溶鋼側の必要 S量を計算する。計算の前 提として,下記の二点を仮定する。 ・ Sの濃度勾配層の厚みは10×10–3mm ・ 濃度勾配層でのSを半減するとアルミナ介在物難付着効 果が得られる 実験で用いた浸漬ノズルの内径は 80mmであること,鋼 中の S濃度は0.009mass%であることから,0.33mol(10.7g) の Sを固定できるとした際の通過可能溶鋼重量は474tonと なる。実験時の溶鋼通過量は 365tonであるため,溶鋼量に 対して充分な脱硫能力があったと考えられる。 次に高鋳造速度条件 (2.5m/min)にて実機実験を行った。 実験条件を Table 5に示す。この実験条件においてもスポー リング,難付着材配置部の剥離等は無かった。実験後の浸 漬ノズルを切断して内部を観察すると Fig.12に示すように 地金付着と共にアルミナの付着も非常に多く,比較材であ る浸漬ノズルと同様に溶鋼の流路が狭くなっていた。これ より,高速鋳造条件では難付着材の効果が得られない結果 であったことがわかる。 難付着効果の得られなかったこの実機高速鋳造の実験条 件と,これまで難付着効果のあった条件,特に実機低速鋳 造の実験条件を比較することでこの原因を考察する。実験 条件の相違としては以下が挙げられる。 ①溶鋼中の S量 ②浸漬ノズル保熱状態 ③浸漬ノズルの構造 ④鋳造時間 ⑤通過溶鋼の合計量 こ の う ち,① に つ い て は 高 速 鋳 造 実 験 時 が [S]= 0.007mass%,低速鋳造実験時は[S]=0.009mass%であり高速 鋳造実験時が不利であるということは考えにくい。 ②については,いずれの実験時にも異常無く浸漬ノズル の予熱,保温は行なわれているため,鋳込み開始,溶鋼注 入時に浸漬ノズルに地金が付着して難付着効果が得られな かったとは考えにくい。 ③については高速鋳造実験時の浸漬ノズルは難付着材の 鉛直方向上部にアルミナグラファイト材を配置しているの に対して,低速鋳造実験時の浸漬ノズルは難付着材の上部 にはアルミナ−シリカ材を配置している。このため,浸漬 ノズル上方に配置したアルミナグラファイトの部分からア ルミナ介在物の付着が進行して MgO-C-Al材質の部分まで 影響を及ぼした可能性は否定できないが,Fig.12右に示す ように MgO-C-Al材質を配置した部分だけで比較しても,

Fig. 11. Results of actual CC test at low casting speed.

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アルミナ介在物の付着を低減したとは言えない結果であ る。 一方,④については高速鋳造実験時が 269分,低速鋳造 実験時は 200分であり高速鋳造実験時がアルミナ介在物の 付着に対して不利な条件となっている。 ⑤については高速鋳造実験時が 1180ton,低速鋳造実験 時は 365tonであり,溶鋼の通過トン数が明らかに多く,高 速鋳造実験時のほうがアルミナ介在物の付着に対して不利 な条件となっている。 高速鋳造実験時でのマスバランスを前述のように計算す ると作用しうる通過可能溶鋼重量は 686tonとなる。高速鋳 造実験の際には通過トン数の方が多く,鋳造途中でアルミ ナ介在物の難付着効果が消失したものと考えられる。この 実験結果はマスバランス計算の際に用いた「濃度勾配層で の Sを半減するとアルミナ介在物難付着効果が得られる」 とした前提がある程度確かであることを裏付ける結果であ る。 以上の実験条件の相違をまとめて Table 6に示す。実験条 件の比較から,下記が原因として考えられる。 ・ 鋳込み時間の増加,通過溶鋼量の増大と共に( 1 )式に示 す耐火物中の MgOの分解が進み,溶鋼側における未反 応の MgOが不足してMgガスの発生が滞り,浸漬ノズル 溶鋼界面の Sの除去能が次第に低下していき付着防止効 果が低減した。 以上の推定より,今後の課題としてはアルミナ難付着効 果が更に長時間持続できるような成分設計や,より広範囲 の Sを低減するためにMgガスの発生量をより増加させる ことので出来る耐火物組成の解明などが挙げられる。 今回の実験結果から,Sによって界面制御が出来ると考 えられ,それによりアルミナ介在物の付着が減少したこと は確かであると言える。 しかしながら正確な濃度勾配層の厚みの把握や,除去す べき Sの比率,発生するMgガスの時間変化,発生したMg ガスと溶鋼との反応物の影響などについては今後の課題で ある。

4. 結言

浸漬ノズルと溶鋼の界面における界面張力の勾配に着目 したアルミナ MgO-C-Al材質であるMgO-C-Al材質を開発 した。MgO-C-Al材質を配置した浸漬ノズルを用いて溶鋼 浸漬実験を行い,良好なアルミナ難付着性を確認した。実 機実験においてもアルミナ難付着性を確認した。しかし鋳 造速度の速い条件では期待通りのアルミナ難付着効果を発 揮できないこともわかった。 これは鋳込み時間の増加,通過溶鋼量の増大と共に耐火

Table 6. Comparison of casting conditions at high casting speed and low casting speed. Fig. 12. Results of actual CC test at high casting speed.

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物中の MgOが不足してMgガスの発生が減少することでS の除去能が減少して付着防止効果が低減した可能性が考え られる。 今後実機化を進める上では難付着効果の長時間持続,耐 熱衝撃性,大気雰囲気中での材質変化などの諸条件に耐え 得る材質であることが必要である。 文   献

1 ) Y.Fukuda, Y.Ueshima and S.Mizoguchi: ISIJ Int., 32 (1992), 164. 2 ) R.Tujino, K.Mukai, W.Yamada, M.Zeze and S.Mizoguchi:

Tetsu-to-Hagané, 85 (1999), 10.

3 ) H.Fujita, K.Watanabe, M.Inagaki and S.Ikeda: CAMP-ISIJ, 14 (2001), 77.

4 ) M.Zeze, S.Tanaka, R.Tujino, Y.Matsui, T.Inada and S.Kusunoki:

CAMP-ISIJ, 7 (1994), 1209.

5 ) T.Kato, Y.Tsukaguchi, M.Kawamoto, S.Mutoh and K.Ohta:

CAMP-ISIJ, 22 (2009), 125, CD-ROM.

6 ) K.Mukai, R.Tujino, I.Sawada, M.Zeze and S.Mizoguchi:

Tetsu-to-Hagané, 85 (1999), 19.

7 ) K.Mukai and W.Lin: Tetsu-to-Hagané, 80 (1994), 533.

8 ) K.Mukai, H.Okuno, R.Tujino and K.Ogata: CAMP-ISIJ, 7 (1994), 213.

9 ) M.Zeze, T.Moroboshi, Y.Yamazaki, J.Konishi, K.Mukai and S.Li:

CAMP-ISIJ, 15 (2002), 900.

10) T.Matsui, T.Ikemoto, K.Sawano and I.Sawada: Taikabutsu, 49 (1997), 64.

11) K.Mukai: CAMP-ISIJ, 13 (2000), 73.

12) T.Ikemoto, T.Matsui, K.Sawano and I.Sawada: CAMP-ISIJ, 9 (1996), 197.

13) P.Scheller: Steel Res., 3 (2001), 76.

14) 溶鉄・溶滓の物性値便覧,鉄鋼基礎共同研究会,日本鉄鋼協会,

東京,(1972), 128.

15) O.Knacke, O.kubaschewski and K.Hesselmann: Thermochemical Properties of Inorganic Substances, Springer-Verlag, Dusseldorf, (1991).

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