第11巻 通巻第29替(1959:)
育成複二倍休作物とその両親作物との
生理生態学的性質の差異についてⅩⅧ 胚珠の受精力保持期間ならびに種子稔性
桑 田 晃
Studies on the differ・enCeS Of physiologicaland ecologicalchar・aCter・istics ofthe artificially r・aised amphidiploidin compar■ison with those ofits parents
XⅧDurIation of function of ovules and seed fertility
Hikar・u KAWADA
(Laboratory of Br・eeding) (ReceivedJune5,1959) 19 工 緒 ロ さきに複二倍体作物の花粉の生理を,その両親作物のそれらと.比較して研究を行った(桑田(3))が,永報ではこれら 3作物の胚珠の生理,特にその受精力保持期間ならびに瞳子稔性につき比較研究を待った結果を報告する. 本稿を草するに当り,御指導を賜った香川冬夫博士に対し,また東研究が文部省科学研究費の補助の下に行われた ことを附託して,共に傑甚の謝意を表する次第である. Ⅱ 実験材料および方法 供試材料ほ第Ⅶ報(S)と同様,オクラ(月毎血糊SCカαS♂SC〟g♂形≠〝5)(2n=124),トロ∵ロアフヒ(A..〟α乃Zゐ∂∼)(2nこ=68) およびその複二倍休作物である糊麻(A.が痛瑚−ね祓漬S)(2n=192)(香川く1))の各−・系統であるハ これらを5月中旬 に播種し,順調に生育した個体を実験に供した,本実験ほ1949,1950,1954,1955および1956年の5か年にわたっ て待った,.1949および1950年においては,供試材料中,トロワァフヒが自殖用の硫酸紙袋を掛けることにより,たと. え受精カある胚珠ですら,殆んど全部が落耕したため,実験が不能であった.しかしオクラ,柳原に・はかかることは 起らなかった.その後,トロロアフヒの開花,結実の生理につき,1951,1952および1953年に研究(′桑田(4))した結 果,硫酸紙袋を掛けても,落沸しない時期のあることが判明したので,以後この実験を繰り返した, 試験区は開花規準時(午前7時)をFトむに,その前後24時間ずつ合討48時間にわたり,2乃至4時間間隔に設けた… 試験区の詳細は契験結果の所で示す,.凍実験において,花粉を与えられた開花前および開花後の花は,すべて予め除 雄し,袋掛けしたものである小除雄は,開花後の花についてほ酪花前日に一番忙,開花前の花については授粉前の授 粉時と綬粉時との間に.それぞれ行った.授粉に・使用の花粉は第刃報で報貸した如く,3作物の花粉のそれぞれの最適 貯蔵条件に貯蔵し,かっ花粉の発芽歩合が著しく低下しないものを多故に使用した… Ⅱ 実験結果および考察 3作物の嘩其の各生育段階における人為の自殖による若潮歩合を第1表に示す‖ 3作物共に.,試験年次による着朔歩合に多少の差異は認められるが,これは主に環境の差に基づくものと思われる.. しかし全体として,オクラの蕾新ほ開花前8あるいほ10時間より,開花後8時間まで,†ロ∵Pア7ヒのそれは開花前 8時間より,開花後10時間まで継続したが,糊春のそれは前2老と精々趣を異;こし,開花前20時間より,開花後16時 間まで継続した。.その間,オクラでは,開花前2時間より,開花後3時間の間は80%あるいは以上の着朔歩合を示し たが,トロロアフヒでほ,開花時より開花後2時間の問は一・部の例外を除いては,50乃至90%の蕾初歩合を示したに 過ぎなかった小 しかし,糊麻では,開花前10時間より,開花後6時間の比較的長時間にわたり,一部の例外を除いて は70%あるいほ以上の着朔歩合を示した. 3作物の雌藁の各生育段帽における人為の日韓による種子稔性を一掛I・lの種子数で示すと第2表の如くである1種 子稔性についても,3作物共に試験年次による差異は認められるが,オクラでは,これが比較的少なく,トロロアブヒおOLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
酎II大学農学部学術報告 20
第1表 雌其の各生育段帽における着朔歩合(%)
第2表 雌英の各生育段階における暁子稔陸し一廟申の砲手数)
第11巻 通巻第29旨(1959) 2ユ 精した朔では,約80粒あるいほ以上を示し,tロ∵ロアフヒのそれは,一部の例外を除いては,オナヲと周様,着新歩 合の比較的良好であった開花時より開花後2時間の間に受精した朔では約40乃至60粒を示した、槻麻のそれほ前の者 と精々趣を異に・し,開花頻準時前療の数時間およびその他の一部に約20乃至30粒の稗々良好な値を示す朔が見られた. 受精力の表現として最も普通に用いられるのは受精率である.しかしこれが表現には,−柑叱数個あるいほ多数 の唖子ができる場合には,−・花中に唯一個の種子のできる場合と肖らその表わし方が異なる木実験においては,潜 新歩合と稜子稔性とで受精カを表わすことができよう. 菅新歩合と範子稔性との関係を相関表で示 すと第1因に,また両者の各年の値を平均し て,図示すると第2因に見る如ぐである.オ・ クラ,トロPアブヒおよび樹麻の相関係数は それぞれ・+0い8389,+・0.6173および十0い4986 で,オ・クラが最も高く,次に.トロロア・7ヒで 最後は糊麻である..なお,これら3作物の相 関係数の各々の有意性を七換窯にかけると, オクラでほ七(18)=5.8630,トロロアフヒでは t(26)=4、2904,糊麻では七(44)となり,いずれ もPく0・001で,3作物老共に順相関が認め られた. KEARNEY(2)によると,東実験に使用の3 作物と同じ錦葵科に属する棉では,関前を始 めてから36時間で受精カを失うが,泰実験顔 料におけるより精々長いようである”安田(5) はペチ・ユニアにおいて次の結果を得ているり すなわち,交雑授粉の場合に.は,開花後5日 でもなお100%の結果率を京し,一・英幸の種 子数ほ多少減少するが,5日間受精カを保つ. しかし,自家授粉の場合には,開花後の日数 の経過と共に結果率は下り,かつ−・爽中一の種 子数も洪少し,開花後5日では結果率は0% となる..この自家授粉の場合の結果率の拭少 と共に,一項坤の種子数の減少する事実は右 実験材料の場合と同様の傾向である. 以上の如く,胚珠の受精力保持期間の長さ はオクラとトロロアフヒは殆んど同じである 908070005040罰2010 幕 閣 歩 合 ︵少︶ 0 20 40 (50 80 100 0 20 40 60 0 20 40 種子稔性(一顧中の種子数) 第1因 育覇歩合と種子稔性との相調表 左:オクラ 申:トロロアフヒ 右:相席 成子稔性︵〓紺中の椅子数︶ 紛 閃 00 馳 亜 30 20 70 60 抑 亜 謝 却 10 督 萌 歩 合 ︵形︶  ̄24 20 16 12 8 4 開花前の時間・− 0開花時 4 8 12 16 20 24 −−−・開花彼の時間 第2図 開花前後の冬時間における菅軌歩合と種子稔性 が,糊麻は両親の2倍以上におよんだ‖積子稔性は3作物共に,胚珠の受精力の高い程,高いが,糊麻ではこの傾向 は両親における程廉著に.は認められなかった. Ⅳ 摘 要 (1)オクラ,トロ∵ロアブヒおよび糊麻の胚珠の受精力保持期間ならびに税子稔性を比較研究した= (2)胚珠の受精力探持期間はオクラは開花前8あるいは10時間より,開花後8時間まで,トロロアワヒは開花前6 時間より開花後10時間までで,共に約16時間と言えるが,糊麻は開花前20時間より,開花後16時間までの36時間で, 両親の2倍以上であった.. (3)着朔歩合および種子稔性は3作物共に,それぞれ開花瀕準時およびその前後が最も高く,これを遠ざかるに従 って僻くなる傾向が認められたが,轍麻はオ・クラ,トーゴロア7ヒ程,この傾向が麒著ではなかった (4)着朔歩合と種子稔性との間に,オクラ,トロワァフヒおよび麻麻で,それぞれ+・08389,+0い6173および
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
香川大学農学部学術報薯 22 十0り4986の相関係数を示した 引 用 文 献 (1)香川冬夫;新作物「糊麻」について,日永作物学会 芽および貯蔵について,育硬学雑誌,3(3−4) 講演会発表および個人出版(1944)爪 (1954). (2)KEARNEY,T.,H..;Selffer七ili2;a七ionandcross 佐)∵;トロロアー7ヒの開花,結実に・関する研究 fertilizationin Pima cotton,U.S..Dept Agric (未発表)
Bull‖,1134(1923). (5)安田貞雄;雌其の受精■力餅存期間について,植物お (8)桑田晃;育成複二倍体作物とその両親作物との生理 よび動物,10(1942),
生態学的性質の差異に.ついて,第芯報.花粉の人工発
R占s u m占
1.Studies were made on the duration of function of ovules and the seed feItility of“Nori−AsaT’
(Ab9bnoschusghdino・iexiilis),竺namphidiploid cropraised between A・eSCulenius and A・Manihot,in
COmpaエーisoヱ1Wi也tI】OSe Ofils pa工entS”
2‖The duration of the functionofovuleswasinesculeniuSfrom80I10hoursprevioustoandto8houIS afterthe flower openingin Manihotfrom6hourspreviousto andtoユO hoursafterthe floⅣer Opening In“NorトAsa”,however,it wa$出Om 20hours previous to and七016hours after the flower opening, Showing a period over twice those of p∋ren七S.
3りThe set%of pod and the seed fertility of eachcTOp Showedthelargestvalue whenpollinated at the time and thereabou七Of the flower openingIf the po王1ination was made at a period apart from
thi$time,those values became gradual1y sma11er,thoughin“Nori−Asa”these tendency was not remarkable compared withits paren七S
4。The coTrelationbetweenthe set%ofpod andthe seed fertillity atvarious timebeforeandafter thefloweropeningwas+0。8389inesculentus,+0‖6173in Manihoiand十0‖49β6in“Nori−Asa‘‘.