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Powered by TCPDF ( Title インターネット上の情報操作と憎悪の伝播 : フランスの立法による応答 Sub Title Manipulation de l'information et propagation de la haine sur inter

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(1)

Title

インターネット上の情報操作と憎悪の伝播 : フランスの立法による応答

Sub Title

Manipulation de l'information et propagation de la haine sur internet : les réponses législatives

en France

連続講演 現代フランス憲法の課題 : 憲法裁判・憲法改正・表現の自由の限界

Author

Hochmann, Thomas(Yamamoto, Hajime)

山元, 一(Tanaka, Misato)

田中, 美里

Publisher

慶應義塾大学法学研究会

Publication year

2020

Jtitle

法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and

sociology). Vol.93, No.6 (2020. 6) ,p.45- 53

Abstract

Notes

資料

Genre

Journal Article

URL

https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00224504-2020062

8-0045

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インターネット上の情報操作と憎悪の伝播   フ ラ ン ス 議 会 は〔 現 在 〕、 イ ン タ ー ネ ッ ト に お け る 憎 悪 表 現 の 伝 播 と フ ェ イ ク ニ ュ ー ス の 問 題 を 審 議 し て い る。 フ ラ ン ス で は 二 年 前、 情 報 操 作( manipulation de l ’information ) に 対 す る 法 律 が 採 択 さ れ た 。〔 そ し て 現 在 、〕 インターネット上の憎悪表現に対応するための法律が議会 で検討されている最中である。

 

情報操作対策法

  二〇一八年一月、会見( vœux à la presse )の場におい て、 エ マ ニ ュ エ ル・ マ ク ロ ン( Emmanuel Macron ) 大 統 領 は、 「 フ ェ イ ク ニ ュ ー ス 」 と い う 現 象 に 対 処 す る た め の 法律制定の意欲を示した。その直後、幾人かの国民議会議 員 た ち が、 「 フ ェ イ ク ニ ュ ー ス 」 対 策 の 法 案 を 提 出 し た。 この法案は、後に「情報操作対策」法と改名された。最終 的にこの法案は、元老院の反対を押し切って二〇一八年一 一月に国民議会にて可決され、二〇一八年一二月二〇日に は、憲法院によって合憲判断が下された。本法は、情報操 作 対 策 の た め の 様 々 な 道 具 立 て を 整 え て い る。 た と え ば、 プラットフォーム事業者に対するオンラインコンテンツに

 

   

一/監訳

 

 

 

里/訳

連続講演   現代フランス憲法の課題 ―― 憲法裁判・憲法改正・表現の自由の限界 ――

ンターネット上の情報操作と憎悪の伝播

――

フランスの立法による応答

――

資 料

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ついての透明性確保の義務付けや、視聴覚高等評議会への 新たな権限の付与、マスメディアに対する教育の強化など である。   中でも最もよく議論された点は、新しいレフェレ(急速 審理手続)の導入についてであった。このレフェレは、利 害関係を持つ全ての人に、インターネット上でのフェイク ニュースの拡散を中止させるためのあらゆる対策をとるよ う、裁判官に申立てることを可能にするものである )( ( 。憲法 院 は、 こ の 制 度 は、 「 選 挙 に お け る 議 論 の 明 瞭 性 と 投 票 の 真正さ( sincérité du scrutin )の原則の尊重の保障」への 考慮から正当化されるものであり、合憲であると判断した。 し か し な が ら、 こ の よ う な 方 法 が、 情 報 操 作 に よ る 選 挙 キャンペーンに終止符を打つという目的に真に適合したも のであるのかは定かではない。いずれにせよ、いくつもの 問 題 が あ る。 こ の 新 た な レ フ ェ レ 制 度〔 の 適 用 範 囲 〕 は、 とても広いと同時にとても狭い。   急速審理手続のとても広い適用範囲   この新たな救済は、以下の三つの視点から、過度に広く 作られているように思われる。   第 一 に、 急 速 審 理 手 続 の 枠 組 み に お い て は、 〔 本 来 は 〕 明白に誤謬のある主張のみが対象とならなければならない。 〔 明 白 に 誤 謬 の あ る、 と い う 〕 こ の 基 準 は、 そ も そ も、 判 事による四八時間以内の介入を可能にするために必要なも のである。国会議員たちは、この基準が、急速審理判事に よる介入〔そのものの性質〕に由来すると考えているらし い。しかしながら、国民議会議員から競って繰り返し主張 さ れ て い た、 「 急 速 審 理 判 事 は、 明 白 さ に つ い て の 判 事 で あ る 」 と い う 定 式 は、 法 規 範 で は な い。 〔 そ う で あ る な ら ば、 〕 誤 謬 の 明 白 性 は、 法 律 の 中 で 明 示 さ れ な け れ ば な ら なかっただろう。結局、憲法院が「解釈の余地」の手法に よって、この明確化を行うこととなった。この方法によっ て、憲法院は、ある一定の方法で「解釈」されるのであれ ば、という条件を付けて、ある法律を合憲であると宣言す る。憲法院が、法律にそれ自体が含んでいない要素を付け 加 え る と い う こ と は、 よ く あ る こ と な の で あ る。 こ こ で、 憲法院は「問題となっている主張あるいは非難の不正確性 や不実性が明白である場合のみ、表現およびコミュニケー シ ョ ン の 自 由 を 侵 害 す る こ と な し に、 〔 急 速 審 理 手 続 の 〕 このような方策を正当化可能である」と判示した。

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インターネット上の情報操作と憎悪の伝播   次に、この新しい急速審理手続には、今言及したばかり の問題と関係する、訴訟の側面に関するもう一つの欠点が ある。判事は、誤謬の程度が明白ではない主張については、 介入を拒否しなければならないであろう。もちろん、それ は、明白には誤っていない主張が、正しいということを意 味 し な い。 し か し な が ら や は り、 〔 介 入 拒 否 と い う 〕 そ の 決定は、そのような印象を生じさせるだろう。議会での議 論 の 際 に、 あ る 元 老 院 議 員 が 指 摘 し た よ う に、 「 そ の 判 断 は、フェイクニュースに法的な真実保証を与えるわけでは な い け れ ど も、 し か し な が ら、 〔 フ ェ イ ク ニ ュ ー ス の 〕 推 進 者 た ち に そ の ま ま 利 用 さ れ る に 違 い な い 」。 そ の う え、 ある主張の誤謬の明白性の証明はおそらく難しいものであ り、特に、候補者が彼の責任だと主張されている行為をし てい「ない」ことの論証は難しい。私は税金を払っていな いという主張に反論することは容易である。しかしながら、 私はスイスに口座を持っていないこと、あるいは、ある人 と性的な関係をもっていないことはどのように示せばよい のだろうか?   そうすると、候補者たちは、フェイクニュースに対する 救済を求めて訴訟を提起する前に、二度にわたって熟慮せ ね ば な ら な い だ ろ う。 し か し な が ら、 フ ラ ン ス の 法 律 は 「 訴 訟 提 起 す る 利 害 を 持 つ 全 て の 人 」 に 対 し て 救 済 の 道 を 開いており、これは、全ての有権者のことと広く解釈され る可能性があり、訴訟提起が誠実な意図によるものか否か に か か わ ら ず、 こ の 手 続 が 逆 効 果 を 生 み 出 す 原 因 と な る。 この問題は、憲法院への議員による違憲審査付託の際に極 めて簡潔に指摘されている。すなわち、彼らが主張すると ころによれば、この仕組みは、それがまさに対抗しようと しているフェイクニュースを強化する危険性がある。これ に 対 し て 憲 法 院 は、 単 に、 こ の 手 続 の「 道 具 化 の 危 険 性 」 は違憲の理由にはなりえない、と答えた。   最後に、本法〔の対象〕は、実際には、その名前が示す 「情報操作」に限定されたものとは思われず、 「投票の真正 さを歪曲する」疑いのある全ての誤謬ある主張を対象とし ている。つまり、選挙と関連する事実についてということ になるのであるが、これは対象としては極めて広い。しか し な が ら、 事 実 に 関 す る 全 て の 誤 謬 あ る 主 張 が、 「 フ ェ イ クニュース」 、「虚偽情報」あるいは「情報操作」に該当す る わ け で は な い。 〔 本 来、 〕 問 題 と な る 表 現 は、 〔 誤 謬 が あ るという条件に〕加えて、正しい情報らしい外見を呈して いなければならない。それは、報道の記事のように、ある

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いは調査の結果であるかのように見えなければならないの だ。エマニュエル・マクロンが記者会見の際に述べたとこ ろ に よ れ ば、 「 こ の よ う な 宣 伝 活 動 」 は、 「 あ な た 方 〔 ジ ャ ー ナ リ ス ト 〕 の 文 体 や 形 式 を 取 り 込 む。 そ れ は、 あ なたたちの言葉使いを利用するのである」 。   このような考え方は二つの意味で、 「フェイクニュース」 という英語の表現に現れている。であるから、いまや、嘘 だと思われる情報を何であれ揶揄するためにすぐさま使用 される、 〔「フェイクニュース」という〕この言葉の氾濫に 騙されてはならないのである。フェイクニュースというも のは、 「情報」らしい見た目をしていなければならないし、 「 報 道 」 あ る い は「 ニ ュ ー ス 」 の 範 疇 に 入 る も の で な く て はならない。誤っており、かつ偽装しているという意味で、 「 フ ェ イ ク 」 で な け れ ば な ら ず、 そ う で な け れ ば、 法 律 の 名前にあるような「情報操作」とはならない。であるから、 文 化 大 臣 が 議 会 の 討 論 で 例 示 し た よ う に、 「 フ ラ ン ス 在 住 の外国人の数は、ここ五年間で一〇倍になった」というよ う な 単 な る 主 張 は、 誤 っ た 主 張 で は あ る が、 フ ェ イ ク ニュースではない。上記のこの主張がこのような形容を受 けるためには、報道記事の外見を呈していなければならな いのである。この要素を正確に定義することは、周知のと おり繊細な作業なのであるが、しかし、その要素を満たし ているかを判断することは必ずしも難しくはない。このこ とは、象なのか猥褻なイラストなのかという知識と同様な の で あ る。 す な わ ち、 「 定 義 は で き な い が、 し か し 見 れ ば 分かる」というようなことなのであろう )2 ( 。   こ の 基 準 を 設 定 す る こ と が 忘 れ ら れ て し ま っ た た め に、 本法の対象は、選挙時の論争における真実性の一般的統制 に 完 全 に 変 わ っ て し ま っ た。 た と え ば、 候 補 者 の 主 張 は、 〔 本 来 な ら ば 〕 フ ェ イ ク ニ ュ ー ス に 関 す る 法 律 の 対 象 領 域 に入らないはずであっただろうし、嘘が書かれたビラの配 布も同様である。このように本質的な基準を欠いているが ゆ え に、 「 フ ェ イ ク ニ ュ ー ス 」 と い う 特 有 の 現 象 に 関 す る 考察が損なわれてしまう。   しかしながら、他の基準が急速審理手続の適用領域を大 幅に縮減するのであれば、上記の事情があったしても、判 事を絶えず政治的議論に介入させるようになるわけではな い。   急速審理手続の非常に限定的な適用領域   まず、この手続は、選挙の文脈に限定されている。この 仕組みは、投票前の三ヶ月のみ使用可能であり、投票後に

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インターネット上の情報操作と憎悪の伝播 は 再 び 締 め 切 ら れ る。 そ れ ゆ え、 こ の 急 速 審 理 手 続 は、 フェイクニュースに対抗するための持続的な手段ではなく、 「 投 票 の 真 正 さ 」 を 保 護 す る た め の 仕 組 み で あ る、 と い う ことは強調しておかねばならない。ところで、ある論者た ちによれば、フェイクニュースにさらされることは、長期 的には破壊的な影響がある。日々、多くのフェイクニュー スに触れることで、公衆は情報を一切信頼しなくなり、公 的議論における真実や事実の価値は少しずつ浸食されるだ ろう。周知の通り、フェイクニュースがこれまで実際に与 えてきた影響については、見方が激しく対立している。あ る論者たちは、例えば危険が過大評価されている、あるい はフェイクニュースは見せかけの問題である、と断言する。 しかしながら、もしこのような現象にさらされていること が、長期的には民主的議論の基盤を掘り崩すことになると いう主張が正しいとするならば、急速審理手続を選挙前の 期間に限定するのは有効ではないだろう。   次に、何にもまして、この新たな仕組みは、投票を歪め る疑いのある明白に誤謬あるすべての主張に対して判事が 介入することを可能にするものである、と理解しないよう に気をつけねばならない。この急速審理手続の最も重要な 要素は、主張の拡散方法と強く関連するものであり、これ が た め に、 手 続 の 適 用 範 囲 は 著 し く 制 限 さ れ る。 判 事 は、 「 故 意 に、 人 為 的 な あ る い は 自 動 化 さ れ た 方 法 で、 大 規 模 に」拡散された場合に限って、フェイクニュース〔の拡散 を〕阻止することができる。   拡散が故意のものであるという性質は、自動的に満たさ れると考えられる。議会での討論において大臣が指摘した ように、 「偶然の」拡散というものは、滅多に起こらない。 ま た、 ソ ー シ ャ ル ネ ッ ト ワ ー ク の 時 代 に お い て、 「 大 規 模 な」拡散という条件も容易に満たされると推測される。ゆ え に 決 定 的 な 要 素 と な る の は、 「 人 為 的 な あ る い は 自 動 化 された方法で」という拡散の性格、ということとなる。議 会はこの観点をほとんど明確化していないが、立法趣旨の 説 明 は、 「 ス ポ ン サ ー の つ い た コ ン テ ン ツ 」 と「 『 ボ ッ ト 』 と呼ばれる自動化された仕組み」に言及していた。憲法院 が指摘していたように、本法は「組織的に行われる大規模 な情報操作」対策なのである。であるから、対象となるの は、有権者を揺さぶるための組織的な企てなのであり、全 ての明白に誤謬のある主張ではない。   情報操作対策に関する法律は、二〇一八年末に施行され た の で あ る が、 今 の と こ ろ、 こ の 新 し い 急 速 審 理 手 続 は、

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去る二〇一九年五月の欧州議会議員選挙に先立つ期間に使 用されたのみである。急速審理手続は、内務大臣のツイー トに対して一度提起されたのみであるようだ。黄色いベス ト 運 動( gilets jaunes ) に 対 す る 警 察 の 猛 攻 撃 の 際 に、 何 人かの人がピティエ・サルペトリエール病院の病室へ逃げ 込んだ。彼らは単に催涙ガスから逃れようとしただけであ り暴力的ではなかったと思われるにもかかわらず、大臣は、 病院への彼らの「襲撃」を糾弾したのである。   共産党議員二人によって提起されて、担当判事は大臣の 言葉が確かに極端なものであったと認めたのであるが、し かし、法律によって定められた諸要素が満たされないとし た。 ま ず、 問 題 の 文 章 は、 「 真 実 と 全 く 関 係 が な い 」 も の ではなく、それゆえに明白に誤謬のあるものではなかった。 次に、人為的なあるいは自動化された拡散の対象となって いなかった。最後に、このツイートに対して直ちに反論さ れたために、大臣の言葉は、選挙の真正さを歪める恐れは なかった。   フランスでは、市町議会選挙が二〇二〇年三月に控えて いるが、しかしながら、フェイクニュースに対する急速審 理は国政選挙でのみ可能である。二〇二二年には、フラン スの政治制度のなかで最も重要で、それゆえに展開の予測 が難しい選挙活動が行われる可能性が最も大きい大統領選 挙が行われる。その時はじめて、二〇一八年に導入された 急速審理手続が民主的議論の維持のために有用な道具であ るのか、それとも役に立たず、さらには逆効果であるのか が発覚するであろう。

 

ついての対策法

  国民議会第一読会において可決されたインターネット上 の憎悪的コンテンツについての対策法案は、二〇一九年一 二月末に元老院で検討されることとなる。議論は特に第一 条 に 関 連 し て な さ れ た。 第 一 条 は、 オ ン ラ イ ン プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 業 者( Facebook や Twitter な ど ) に 対 し て の、 「 一 人 ま た は 複 数 人 か ら 通 報 が あ っ た 場 合 に は、 明 白 に 違 反したコンテンツを二四時間以内に削除、または、アクセ ス不可の状態にする」ことの命令に関するものである。こ の「明白に違反した」というのは、刑法上のいくつかの規 定に対しての違反を指しており、中でも、殺人および人道 に対する罪の賛美、テロや人種憎悪あるいは同性愛者憎悪 の扇動、人種あるいは同性愛者であることに基づく侮辱な

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インターネット上の情報操作と憎悪の伝播 どである。法案は、憎悪対策よりも広い目的を持っている。 なぜなら、憎むべきものではあるものの、憎悪対策の枠組 み に は 入 ら な い も の、 す な わ ち セ ク シ ャ ル ハ ラ ス メ ン ト、 人身売買、売春斡旋、児童ポルノの罪などにも言及されて いるからである。   オンラインプラットフォーム事業者がこの新たな義務を 果たすよう促すために、本法案は、この義務を尊重しない 者に対しての制裁として、自然人に対しては一年間の懲役 または二五万ユーロの罰金、法人に対しては一二五万ユー ロ の 罰 金 を 準 備 し て い る。 こ の よ う に、 本 法 案 は、 「 明 白 に不法な言葉の削除の拒否」の軽罪を創設したのである。   立法過程の現状において、検討されているこの仕組みは、 かなり問題含みのものであるように思われ、とりわけ削除 義務の制裁方法の観点をかんがみると、そうである。   というのも、このような問題への対処として、個別の制 裁を検討することは適切であるとは思われないからである。 二 四 時 間 と い う 時 間 は と て も 短 い も の で あ る か ら、 Facebook は お そ ら く、 何 ら か の 理 由 に よ っ て、 期 間 内 で のコンテンツ削除に失敗するだろう。フランスの立法者に 着想を与えたであろうドイツ法が選択した方法は、より実 り多いように思われる。すなわち、ドイツ法は、罰金の上 限を五〇〇万ユーロとしているが、それは、違法コンテン ツ対策制度の実行を一般的に懈怠した場合に限ってである。 フランスの本法案も同様に、このような考え方を採用して おり、メディア規制のための機関である視聴覚高等評議会 が、一般的な義務の懈怠が見られる事業者に対して非常に 重 い 罰 金 刑 を 科 す こ と を 可 能 に し て い る。 し か し な が ら、 同法案は、それに加えて、それぞれの個別の不作為を罰す ることも検討しているのである。   こ の よ う な 制 度 は、 ド イ ツ の 制 度 よ り も 相 当 に 厳 し い、 過 度 の コ ン テ ン ツ 規 制( overblocking ) の 危 険 性 を も つ よ うに思われる。議会は、違法の「明白性」が、明らかに違 法なコンテンツの削除に対象を限定するために十分な条件 だと信じているようであるが、しかしながら、それは私に はあまりに楽観的に思える。オンライン事業者は、もし明 白に違法なコンテンツを削除しなかったら有罪判決を受け る危険があるが、違法性が明白ではないコンテンツを削除 することについては何らのリスクもないのである。このよ うな疑いの目で見れば、オンライン事業者はコンテンツを アクセス不可の状態にするようになるであろう。本法のう ち、このような危険を防止するために、現状で検討されて

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い る 唯 一 の 措 置 は、 あ る コ ン テ ン ツ に つ い て、 通 報 者 が 「 自 分 の 通 報 は 不 正 確 な も の だ と 認 識 し た 」 上 で、 事 業 者 にこの情報が明白に違法だ、という理由で申し立てた場合、 〔通報者に〕責任を問うというものである。しかしながら、 この措置は、恣意的な通報を思いとどまらせるものにはな りうるとしても、恣意的な削除に対しては非常に間接的な 対策でしかない。   インターネット上に溢れる憎悪的なコンテンツは、非常 に重要な問題である。また確かに、国家は今日までこの現 象への対策を十分にしてはこなかった。 〔それゆえ、 〕問題 となる言葉の拡散について主たる責任を負っているオンラ イ ン プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 事 業 者 を 巻 き 込 も う と す る こ と は、 理解可能である。ことは、表現の自由の現代的行使の主要 な場であるソーシャルネットワークの更なる規制を彼らに 促すことに関わるが、その規制は、表現の自由を犠牲にな されるものであってはならない。基本権についての水平的 効力の学説の一つは、国家に類似の立場にある私人が、自 由の保護のため、国家に課せられる義務と類似の義務を課 せ ら れ る、 と 主 張 し て い る。 そ う で あ れ ば、 Facebook や Twitter に 対 し て、 憲 法 上 正 当 化 で き な い 表 現 内 容 に 関 す る検閲を避けつつ、憎悪的なコンテンツを削除するように 促すことができるかどうか、がまさに問題点となる。現在 のフランス議会で検討されている手法は、表現の自由の尊 重への十分な配慮を行うことをせずに、ただ削除義務を強 化するものにすぎず、問題点の一部分しか考慮していない。 二 〇 一 九 年 一 二 月 末 に 開 か れ る 元 老 院 で の 審 議 に お い て、 この点についての軌道修正を行うことは可能である )3 ( 。 ※〔   〕内は訳者による補足を示す。 ( ()   〝 総 選 挙 の 月 の 初 日 に 先 立 つ 三 ヶ 月 間、 そ し て、 総 選 挙 が 既 得 の も の と な る 選 挙 の 日 ま で の 期 間、 オ ン ラ イ ン 上 の 公 衆 に 向 け ら れ た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン サ ー ビ ス を 通 し て、 故 意 で、 人 為 的 な あ る い は 自 動 化 さ れ た、 大 規 模 な 手 段 で 拡 散 さ れ た、 投 票 の 真 正 を 歪 め る 性 格 の、 事 実 に 関 す る 不 正 確 な ま た は 偽 り の 主 張 あ る い は 非 難 が あ る 場 合、 急 速 審 理 判 事 は、 検 察、 全 て の 候 補 者、 政 党、 政 治 団 体、 そ し て 訴 訟 提 起 す る 利 害 を 持 つ 全 て の 人 の 求 め に 応 じ て、 被 っ た 損 害 の 賠 償 の 有 無 に 関 係 な く、 デ ジ タ ル 経 済 に お け る 信 用 の た め の 二 〇 〇 四 年 六 月 二 一 日 法 第 六 条 I の 二 が 言 及 し て い る 自 然 人 と 法 人、 ま た は、 同 条 の I の 一 に 言 及 さ れ る 全 て の 人 に 対 し て、 こ の 拡 散 を や

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インターネット上の情報操作と憎悪の伝播 め さ せ る と い う 目 的 の た め に 比 例 し、 必 要 な あ ら ゆ る 手 法を命ずることができる。 〟 ( 2)   〔 訳 注 〕 こ の 言 葉 は、 表 現 の 猥 褻 性 の 判 断 に 関 す る、 一 九 六 四 年 ア メ リ カ 最 高 裁 判 決 に お け る ポ ッ タ ー・ ス チュワート判事の言葉からの引用であると思われる。 ( 3)   〔 訳 注 〕 な お、 同 法 案 は 元 老 院 に お け る 審 議 を 経 て、 文 面 の 可 読 性 を 高 め る た め の 修 正 が な さ れ た。 た だ し、 二 〇 二 〇 年 二 月 現 在 で は、 オ ッ ク マ ン 氏 が 指 摘 し て い る、 違 法 コ ン テ ン ツ の 削 除 義 務 違 反 に 対 す る 制 裁 の 内 容 に つ いて、変更は加えられていない。

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