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平成18年4月○○日

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建設経済レポート

「日本経済と公共投資」

No.64

(平成 27 年 4 月)

-回復基調が本格化する建設投資と建設産業の未来像-

< 概 要 版 >

一般財団法人 建設経済研究所

第1章 建設投資と社会資本整備 ……… 1

【本文 p.001 - p.0147】 1.1 国内建設投資の動向 1.2 建設投資の変動要因分析(住宅・事務所・倉庫) 1.3 地域別の社会資本整備動向~南関東ブロック~

第2章 建設産業の現状と課題 ……… 7

【本文 p.0149 - p.0243】 2.1 建設技能労働者の現状と人材確保に向けた課題 ~地方の建設技能労働者をめぐる状況と 建設業における外国人労働力の活用について~ 2.2 建設企業の資金動向分析 2.3 建設企業の経営財務分析

第3章 公共調達制度 ……… 10

【本文 p.0245 - p.0279】 3.1 担い手3法改正が入札契約制度に与える影響

第4章 海外の建設業 ……… 11

【本文 p.0281 - p.0350】 4.1 香港の建設市場の現状と展望 4.2 アジア諸国における建設技能労働者対策 4.3 欧米諸国における建設技能労働者対策 [問い合わせ先] TEL 03-3433-5011 専務理事 長谷川 啓一 研究員 中西 慎之介 研究員 矢吹 龍太郎

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◆第1章◆

マクロ経済と建設投資

1 章

建設投資と社会資本整備

1.1 国内建設投資の動向

(建設投資全体の見通し)  2014 年度は、民間非住宅建設投資の回復基調が継続するものの、政府建設 投資・民間住宅投資が前年度比で減少するため、全体は前年度比で減少する 見通しである。2015 年度は、民間建設投資が前年度比プラスで推移するが、 政府建設投資の減少が続き、全体は前年度比で減少する見通しである。 (政府建設投資の見通し)  2014 年度は、2012 年度補正予算の反動により前年度比で減少するものの、 2013 年度の補正予算と 2014 年度の当初予算を一体で編成した「15 カ月予 算」に加え、予算執行前倒しに向けた取組効果が発現することにより、2012 年度を超える投資額となる見通しである。  2015 年度は、2015 年度予算政府案の内容を踏まえ、一般会計に係る政府建 設投資を前年度当初予算比で横ばい、東日本大震災復興特別会計に係る政府 建設投資を増加と見込むなどして、また、2014 年度補正予算に係る政府建 設投資額の事業費は2015 年度中に出来高として実現すると考えて推計した 結果、前年度比で減少となる見通しである。 (民間住宅投資の見通し)  2014 年度の住宅着工戸数は、貸家は微減であるが、持家の消費増税による 反動減と分譲マンションの建築費上昇等による着工減が大きく、減少は避け られないと見込まれる。2015 年度は、10 月に予定されていた消費増税が延 期され、駆け込み・反動減がなくなったことと、省エネ住宅エコポイント等 の市場活性化策により、特に持家、分譲住宅で着工が増加することが予想さ れることから前年度比で増加する見通しである。  平米当たり単価は、持家、貸家、分譲すべての用途で前年同月比を上回る水 準となっており、上昇傾向が確認できる。 (民間非住宅建設投資の見通し)  2014 年度は、民間非住宅建築投資は前年度比 5.3%増、民間土木投資は堅調 に推移するとみられ、民間非住宅投資全体では前年度比 4.2%増となる見通 しである。  2015 年度は、前年度と同様の傾向が見込まれ、民間非住宅投資全体では前 年度比1.9%増と予測する。  2010 年度以降下落傾向にあった平米当たり単価は、2012 年度を底に 2013 年度には前年度比でプラスに転じ、2014 年度に入っても回復基調が継続し ている。

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(被災3 県の建設投資動向)  公共工事受注額は復旧・復興事業により大幅な増加が続いているが、以前は 技能労働者不足や資材価格の上昇等による入札不調の問題などが懸念され ていたものの、公共工事設計労務単価の引き上げ、技術者および現場代理人 の適正な配置、予定価格・工期の適切な設定、復旧・復興事業の円滑な施工 確保に向けた取り組みの効果が発現しており、一日も早い復興が実現するこ とが期待される。  高台や内陸への防災集団移転促進事業など住宅再建に向けた動きが本格化 しつつあり、土地造成が進めば「持家」を中心として着工戸数が増加すると 考えられる。また、災害公営住宅は約80%着手しており、2014 年度末まで に概ね1 万戸、2015 年度末までに約 2 万戸の完成を見込んでいる。  非住宅建築着工床面積は、足元の2014 年 4 月~2015 年 1 月では前年同期 比で若干弱含んでいるものの、投資額は震災前の2010 年度を上回る水準で 推移しており、引き続き、産業振興および雇用促進策が復興の後押しとなり、 被災3 県における非住宅建築投資は活発化すると予想される。 (地域別の建設投資動向)  今号では当研究所が2015 年 2 月 9 日に公表した「建設経済モデルによる建 設投資の見通し(2015 年 2 月推計)」を基に、推計期間を 1 年延長した上で 地域別の投資額を算出した。今回は2014 年度の地域別投資額を算出する上 で、2013 年度の地域別比率を採用する手法を用いた。  地域別出来高を時系列で比較すると2014 年度(12 月まで)は東北地方のシ ェアが震災による復旧・復興需要で増加している。  東北は2010 年度比で約 81%増となっている政府土木投資が全体を押し上げ ており、全国に占める割合も増加している。一方、三大都市圏の民間非住宅 投資について、中部、近畿エリアはリーマンショック前のそれぞれ約73%、 約56%の水準となっており、約 93%の水準にまで回復している関東に比べ て回復が遅れている。

1.2 建設投資の変動要因分析(住宅・事務所・倉庫)

(住宅建設投資の変動要因分析) ・ 新設住宅着工戸数は、「主世帯増加数」・「居住世帯のない住宅増加数」・「除 却等戸数」の合計である。主世帯増加数と着工戸数の推移を比較すると連動 がみられ、主世帯数が住宅着工戸数の主な増減要因であると推測できる。 ・ 生産年齢人口の減少に対し、主世帯数は増加を保ち増加率低下も緩やかであ る。また 1973~1983 年の主世帯数増加率の低下と比べ、1993 年以降のそ れは緩やかになっており、核家族・単世帯化が進行した可能性が考えられる。 ・ 1993~1998 年、2003~2008 年では、主世帯増加数と除却等戸数が低下す る中で、居住世帯のない住宅の増加数が上昇しており、供給が過剰傾向にな っていたものと推察される。一方、2008~2013 年では、主世帯増加数の低 下ペースよりも、居住世帯のない住宅の増加数と除却等戸数がともに低下し ており、リーマンショック後の経済の冷え込みで、供給が減少傾向になった ものと考えられる。 ・ 居住世帯のない住宅のほとんどを占める空き家は今後も増加していく傾向 であるが、市街地の遠近、利便等により、そのレベルは異なってくると思わ れる。人口集中地区における空き家は生活地域での大きな問題にもなるた

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め、中古住宅市場の活性化等のための施策が取り組まれているが、その成果 により空き家の再利用が進むことが期待される。 ・ また、空き家を増加させないためには、除却又は従前住宅の更新が増加する ことが望ましく、省エネ・耐震・バリアフリー性能に優れた住宅や、スマー トハウスなどの高性能な住宅への更新を図っていくことが期待される。 ・ 住生活総合調査による意識調査では、新築・中古の区分では過半数が新築住 宅に対するニーズをもっているため、今後も新築住宅の需要は一定水準維持 されると考えられる。一方、今後の改善の意向としては既存住宅のリフォー ムに対するニーズは大きく、今後の主世帯数の減少により住宅着工減少が見 込まれる中でも、既存の住宅のリフォームによる活用は拡大する余地があ り、空き家の減少にも寄与することが期待される。 ・ 主世帯増加数の低下と国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(中位推計) による2020~2025 年頃から予測される一般世帯数減少によって、中長期的 には新設住宅着工戸数の減少が予想される。 ・ 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(中位推計)に基づく、家族類型・ 世代別の一般世帯数増減中長期予測では、既に増加を始めている特に80 歳 代女性を中心とする高齢者単独世帯に対する高齢者向け住宅、今後の団塊ジ ュニア世代の推移による50~60 歳代の中高年単独世帯に対する賃貸住宅、 同世代の核家族世帯に対する住宅へのニーズが予測される。 (民間非住宅建設投資の動向)  民間設備投資は一般的に企業利益が増大して、資金余裕が出ると、翌年度以 降の投資に結びつくと考えられ、企業の経常利益の推移は民間設備投資の先 行指標の一つとして捉えられる。  民間設備投資と民間非住宅建設投資の伸び率は類似の推移を示しており、連 動しているのが見てとれる。経年の推移を見ると民間設備投資に占める民間 非住宅建設投資の割合は低下しており、1980 年度には 54.4%を占めていた が、2013 年度には 16.2%と半分以下となっている。また、近年、民間設備 投資は増加傾向にあるが、民間設備投資に占める情報通信技術(ICT)等へ の投資を含んだ機械投資が設備投資を押し上げていると思われる。  民間非住宅建設投資の使途別動向を 1980 年度からバブル終了後の 1996 年 度までと、1997 年度から 2013 年度までの二つの期間に分けて推移を見ると 製造業に関連した「工場及び作業場」と「倉庫」が減少し、非製造業の使途 へと比重が移っていることが見てとれた。これはバブルを含んだ前期の国内 経済を牽引していた製造業が国際的な価格競争や円高に直面し、海外へと生 産拠点を移転したことが要因と考えられる。  民間非住宅建設への投資動向は景気動向や企業収益の動向など企業が設備 投資を行う動きを大きな変動要因として推移していると言えるが、企業の周 辺環境は国際的な価格競争の激化やICT の発達を含む産業構造の変化、日本 の生産年齢人口の減少など、過去30 年の間に大きく変化してきている。 (建設投資動向(事務所)の変動要因分析)  事務所(オフィスビル)市場は、産業構造の変化や人口動態の変化、更には ワークスタイルの変化やオフィスに対する投資スタイルの多様化に合わせ、 オフィスビル市場を取り巻く環境も大きく変動している。  事務所出来高の地域ブロック別シェアの推移を見ると、関東、近畿、中部の 3 大都市圏が上位を占めていることがわかる。関東は 2013 年度で全国の約 5 割を占めており、長期的にシェアを拡大させている。一方、近畿は約1 割を

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占めているが、そのシェアは減少傾向にあり、中部についてはほぼ横ばいで 推移している。  2001 年に J-REIT が創設されて以来、不動産は急速に金融商品としての存 在価値を高めている。証券化対象不動産は様々なタイプに拡大しているが、 オフィスビルの需要は底堅く、今後も収益を確保できる好条件のオフィスビ ルを中心に取得および投資の動きは続くことが考えられ、市場のニーズに合 わせたハイスペックなオフィスビルの供給は一定程度続くものと予想される。  東京のオフィスビル市況を中心に足元の動向を確認してみると、企業の景況 感回復に伴い拡張移転や館内増床を求める動きや、企業の事業継続計画 (BCP)の観点から立地や耐震性を重視しオフィスを見直す傾向が強まって いる。  今後の事務所建設投資に影響を及ぼす変動要因においては、①オフィス人口 とオフィスビルストックの動向、②ワークスタイルの変化(進歩・普及する ICT 及び女性や高齢者の就業促進の動向)、③都市構造の変化(グローバル 化の更なる進展及び地方創生の動向)に焦点を当て考察を行った。  急速に進む少子高齢化に伴いオフィス人口は減少していくことが予測され る一方、受け皿となるオフィスビルストックは増加基調が継続している。 今後のオフィスビル市場は、設備や付加価値などによる競争力格差を色濃く 反映し、好立地・ハイスペックの機能を備えたオフィスビルと、競争力に劣 る老朽化ビルとの二極化傾向がより強まることが考えられる。  今後は、老朽化した既存ビルの建替えによるスクラップ&ビルドの動きが今 まで以上に加速してくると思われるが、建替え以外にも、大胆な用途変更や 増改築を行い、効率的に使用していくといった「ストックビジネス」の市場 が拡大していくことも予想される。 (建設投資動向(倉庫)の変動要因分析)  倉庫着工床面積はバブル期の 18,372 千㎡をピークに、減少の一途を辿った が、近年、増加傾向に転じており、足元ではリーマンショック前の水準に戻 りつつある。  倉庫の発注者別動向では主な発注者は運輸業で、その割合は依然として高い ものの、近年、不動産業や小売業の発注割合が増えている。また、倉庫の出 来高は2011 年度~2013 年度の 3 年連続で二桁の伸び率を示している。特に 関東、近畿、中部地域にて全国の約7 割のシェアを占めており、昨今、倉庫 需要は関東から全国的な広がりを見せている。  倉庫着工床面積と一定の関連性がみられる国内貨物輸送トン数は近年、減少 傾向である一方、倉庫の着工床面積は増加傾向であり、倉庫を取り巻く環境 が変化していると思われる。貨物特性に着目した場合、小ロット化、多頻度 輸送化していることが見て取れる。  国内の産業構造の変化と企業の経営改善の動きに伴い、材料供給から販売ま での物流を一過程とみなし、全行程を最も効率的に管理しようとする「サプ ライチェーン・マネジメント」(SCM)の考え方が浸透し、物流事業を一括 で請負う3PL(Third Party Logistics)が出現するなど、物流網と物流施設 を集約化、効率化する動きが広がっている。また、自社開発と保有のリスク を避けるため賃貸型物流施設を志向する傾向があり、それらを投資対象とし た物流ファンドも急拡大している。  賃貸型物流施設の需要の拡大に伴い、外資の物流不動産会社や国内の不動産 会社の物流ファンドへの参入が相次いでおり、倉庫を証券化対象とした不動 産の取得金額は2013 年度には 7,000 億円と事務所、店舗に次ぐ規模となっ

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ている。  インターネット通販市場は拡大を続けており、ネット通販専門会社に続い て、小売業各社も実店舗とネット通販を融合させるオムニチャネル戦略によ り相次いで参入している。消費者の利便性の追求は強まり、「即日」もしく は「翌日配達」のように注文から配送までのリードタイムを短縮する動きが 進み、この動きに対応出来、かつ広範囲でカバー出来るような新たな物流網 と物流施設が求められている。  全国の約 4 割のシェアを占める関東では三環状道路の整備も倉庫需要に拍 車をかけており、その需要は賃料が割安で労働力の確保しやすい内陸部へ広 がりつつある。  政府は「総合物流施策大綱」(2013-2017)を策定し、物流インフラ等の整備・ 有効活用や 3PL 事業者の育成・振興の更なる促進、臨海部の物流施設の更 新・機能強化の推進、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律整備、 土地区画整理事業等による物流施設の高速道路や港湾等の周辺への立地の 促進、物流業界の人材の確保・育成など、ハード・ソフト両面からの取組を 掲げている。  国内貨物輸送トン数が減少傾向にある中、ストック量は横ばいで推移してお り、頭うちの状態である。その中で昨今の倉庫需要は国内産業構造の変化に 伴う、物流の効率化の流れと、小ロット化、多頻度輸送化などの貨物特性の 変化に伴う、従来型倉庫からの更新需要と思われ、今後も集約や統合が進む と予想される。

1.3 地域別の社会資本整備動向~南関東ブロック~

(南関東ブロックの現状および課題)  南関東ブロック(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)は、わが国の首都圏 を構成しており、県内総生産では全国の約3 割の経済規模を担っている。ま た、東京都では2020 年東京オリンピック・パラリンピックが開催される予 定である。  南関東ブロックは、国際競争力の強化への対応、少子高齢社会への対応、老 朽インフラへの対応強化、自然災害への対応強化といった課題を抱えてい る。 (主要プロジェクト等の動向と期待される効果)  2015 年度までにほとんどの区間で開通が予定されている三環状道路の整備 効果として、東京都心の渋滞改善効果、首都圏における物流の改善効果、都 市機能の再配置の促進、災害道路としての役割が期待される。  鉄道プロジェクトとして、2027 年開業予定のリニア中央新幹線整備や 2020 年東京オリンピック・パラリンピックを見据えた品川~田町間の新駅設置な どがあり、利便性向上や経済波及効果が期待されている。  京浜港における主要な事業として「国際海上コンテナターミナルの整備(中 央防波堤外側地区)」があり、ターミナルの整備や直背後の臨海部物流拠点 の形成などを通じて、欧米基幹航路を含めたシームレスな物流網を形成する ことにより、首都圏全域の産業基盤の強化が期待される。  成田空港と羽田空港の発着回数でみた機能は、将来の需要予測では2020 年 頃には需要が発着枠を上回ることから、機能強化策が検討されている。  2020 年東京オリンピック・パラリンピックに伴う経済波及効果(生産誘発

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額)は、東京都で約1 兆 6,700 億円、その他の地域で約 1 兆 2,900 億円と推 計されており、経済に多大なインパクトを与え、また雇用創出が期待される。  湾岸エリアでは、2020 年東京オリンピック・パラリンピックを意識した「ま ちづくり」が計画されており、高層マンションなどの建設が活発化している。 また、築地場外市場の豊洲への移転事業が進められている。  首都高速道路の大規模修繕は2020 年東京オリンピック・パラリンピックま でに関連する路線の完了を目指し、概算事業費は大規模更新、大規模修繕を 合わせて約6,300 億円とされている。  下水道について、南関東ブロックは都市集積が進んでおり、高度経済成長期 に集中的に整備した地区の老朽化が今後急激に進むことから、老朽化対策へ の投資は増大していくことと思われる。  2014 年 4 月に公表された国土交通省首都直下地震対策計画によると、2020 年東京オリンピック・パラリンピックを一つの目標として、本対策計画に位 置付けられている各対策の推進に全力で取り組むこととされている。  東京都は、東京都豪雨対策基本方針(改定)において、2020 年東京オリン ピック・パラリンピックまでの取り組みを設定するとともに、概ね 30 年後 の長期見通しをイメージした上で、10 年後にあたる 2024 年までの取り組み も設定している。 (大規模住宅団地再生)  団地再生への取り組みのきっかけとして、建物の老朽化と住民の高齢化が挙 げられる。住民の高齢化は団地内にとどまらず、周辺地域も含めて進んでお り、周辺地域一体としての対策が必要となっていた。また、地域によっては 子育て世代への対応も必要となっていた。  大規模住宅団地再生についての今後のあり方として、医療、介護、子育て施 設などのコンテンツを公的住宅に含め、そのサービスを居住者だけが受益す るのではなく、地域全体が受益できるようなさらなる仕組み作りが必要と考 えられる。また、今後の新しいモデルを推進していくのにあたり、単独の公 的住宅事業主体が取り組める範囲には財源的にも限界があり、民間企業との 事業組成がさらに必要になると考えられる。こうした大規模住宅団地再生 は、南関東だけでなく全国における新しいまちづくりのモデルとなる可能性 を秘めている。 (南関東ブロックにおける建設投資の将来展望)  政府建設投資は、国際競争力強化を主眼とした交通インフラ関連投資などに 加え、老朽インフラ更新などが今後大きな柱になると考えられる。  民間住宅投資は、東京圏への人口流入が引き続き増加しており、加えて2020 年東京オリンピック・パラリンピックに関連した湾岸エリアなどでの高層住 宅開発、また、大規模住宅団地再生に伴う余剰敷地の民間分譲に伴う住宅投 資も予想されることから、増加が十分に期待できる。  民間非住宅建設投資は、三環状道路の整備に伴う物流拠点などのさらなる強 化や、オリンピックが開催される2020 年に向けた鉄道整備、また東京圏へ のオフィスの集中化も進んでいることから、増加が今後期待される。

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◆第1章◆

マクロ経済と建設投資

2 章

建設産業の現状と課題

2.1 建設技能労働者の現状と人材確保に向けた課題

~地方の建設技能労働者をめぐる状況と

建設業における外国人労働力の活用について~

(本節の目的) ・ 「建設経済レポート№63」では、主に首都圏及び関西圏の民間建築工事を 主とした、大規模な建設市場における建設技能労働者を取り上げたのに対し て、本節では地方の建設業における人材不足に焦点を当てることとした。 ・ 建設業における外国人労働力の活用について、外国人就労に係る我が国の現状 及び現在行われている「外国人技能実習制度」を紹介し、人口減少・高齢化 社会の中で避けられない課題といわれている外国人労働者問題を考察する。 (地方の建設業の現状と担い手確保の取り組み) ・ 全国的に公共投資も回復の動きを見せているなかで、地方の建設会社では、 今後深刻な技術者、建設技能労働者不足になることが予想される。 ・ 大都市圏との賃金格差、仕事のきつさやイメージの悪さ、会社の安定性への 不安等から、地方の建設業における若手の人材確保は困難な状況である。 (地方の建設技能労働者の実状 ~ヒアリング結果より~ ) ・ 地方の場合、工事の規模、量が小さいこと、公共工事の比率が高いことか ら、1 次下請業者で建設技能労働者を常時雇用している会社も多く、自社 施工比率も高い。 ・ 地方の方が、社員比率・社会保険加入比率が高く、高校新卒者を社員とし て採用し、若年技能労働者を確保していこうとする考え方が強い。 (建設業における外国人労働力の活用) ・ 建設業において技能労働者が不足する状況で、外国人労働者が注目を集めて いる。 ・ 開発途上国等の「人づくり」への協力の観点で「外国人技能実習制度」があ り、近年は建設業での受け入れも増加傾向にある。 ・ 2020 年オリンピック・パラリンピック東京大会までの間の緊急措置として、 建設分野での技能実習を終えた外国人労働者の、再入国を認める措置が講じ られることとなった。 ・ 技能実習制度については拡充の要望がある一方で、様々な批判もあり、現在 見直しが進められているところである。

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2.2 建設企業の資金動向分析

(貸出動向) ・ 国内銀行と信用金庫を合計した金融機関の全産業に対する貸出金額は 2013 年3 月末に約 505 兆円と 8 半期ぶりに 500 兆円台を回復し、2014 年 9 月末 時点では約 520 兆円となっており、東日本大震災後は増加傾向が続いてい る。主要産業別に見ると、各産業とも近年の傾向に大きな変化は見られず、 建設業はわずかながら減少傾向が続いている。しかし、設備資金については、 2013 年 3 月を底として上昇に転じている。これは今後、東京オリンピック・ パラリンピック、リニア中央新幹線などの大型プロジェクトが進行するな ど、将来の建設需要の増加を見込み、設備投資を増やし始めていると推測さ れる。 (資金繰りの動向) ・ 東日本建設業保証株式会社が四半期ごとに公表している「建設業景況調査 (東日本大震災 被災地版)」によると、「資金繰りの動向」および「銀行等 貸出動向」のいずれも、被災地内外を問わず、東日本大震災後は厳しい傾向 から容易傾向へ移りつつある。ただし、「資金繰りの動向」は、2014 年 9 月 から厳しい傾向に転じている。 ・ 保証会社三社が公表している財務統計指標により、現金預金手持月数の推移 を調査した。そこからは、北海道、東日本および西日本とも上昇傾向が見ら れ、手元資金の余裕度が高まってきていることがうかがえる。 (建設企業に対するアンケート調査) ・ 今後の建設業の収益予測は、「収益を確保する仕組みが整っているので、十 分な収益が得られる」、「現状維持に必要な収益は何とか得られそう」は、そ れぞれ資本金の各階層で4~5%、70%前後と大きな差はなかった。 ・ 2013 年度に公共投資を中心に建設投資が増加したことに伴い金融機関など からの借り入れが増加したかについては、「変わらない」との回答が多い。 資本金が1 億円以上の階層においてのみ、借り入れの減少が、増加または変 化なしを上回っており、他の階層では借り入れの増加の比率が減少の比率を 上回る。 ・ 金融機関の貸出金利については、「変わらない」との回答が多いが、引き下 げの比率が引き上げの比率を大きく上回ることから、傾向としては金融機関 からの資金調達が容易になりつつあることがわかる。 ・ 資材不足・高騰という背景において、資材業者への支払い条件については、 約15%程度、支払条件が厳しくなっているが、大半は変化が生じていない。 ・ 設計変更による工期延長などにより、金融機関からの借り入れを余儀なくさ れたことはあるかについては、資本金1億円以上の階層では5%だが、その 他の階層では3 割程度に経験があることがわかった。 (まとめ) ・ 建設業向けの貸出金が減少を続けつつも、そのうちの設備資金が上昇に転じ はじめるなど、現在建設業は、建設投資額が持ち直している状況下で、前向 きな投資に力を入れ始めた過渡期にあるといえる。建設企業の経営環境は好 転してきており、地域における災害復旧や社会資本インフラの老朽化対策な ど重要な役割を担う建設企業が、社会の信頼と期待に応えていくためにも、 経営基盤の一層の強化に向けた取り組みを加速させることが望まれる。

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2.3 建設企業の経営財務分析

(建設企業における資金需要と資金調達)  建設投資額は2011 年度から増加に転じ、2013 年度には約 49.5 兆円と 2010 年度比で7.6 兆円増加している。運転資金や設備投資等の資金需要が増加す ることにより外部負債による資金調達の増加も予想されるが、金融機関の建 設業向け貸出金残高は減少傾向が続いている。  建設業における年度内の貸出金残高の変動は、第1 四半期に減少した残高が 第2 四半期から第 3 四半期にかけて徐々に増加した後に減少に転じる傾向 があり、こうした変動がより顕著である。  資金需要は 2007 年度~09 年度を除いては内部調達が資金需要を上回って おり、外部調達が必要無かったことが見てとれる。運転資金は2008 年度~ 10 年度までは棚卸資産・売上債権・買入債務ともに減少しているが、2011 年度以降はマイナス幅が縮小、売上債権・買入債務はプラスに転じている。 また、回転期間の変動を見てみると、「工事契約会計基準の適用」が影響を 及ぼしていると考えられる。  「その他流動負債」は2008 年度~10 年度にかけて減少を続け、2011 年度 から増加に転じている。「未成工事受入金」額を確認すると2008 年度~2010 年度まで減少傾向、2011 年度は増加に転じている。「その他流動負債」増減 に占める「未成工事受入金」の比率は2009 年度で約 9 割、2010 年度でも 約7 割以上となっており、「未成工事受入金」の増減が「その他流動負債」 の増減に与える影響が大きいことが推測できる。また、設備投資においては、 設備資金調達必要額がプラスとなったのは、最近10 年間で見ても 3 ヶ年度 のみであり、設備投資が減価償却費の範囲内でしか行われず、設備投資に伴 う資金調達が不要であった時期が長かったことを意味している。  資金調達における内部調達は内部留保の水準が2009 年度を除くと毎年度 2 兆円を超える水準で安定的に推移している。売上高に対する償却等前利益は 2009 年度を底に上昇傾向が続いており、建設企業の経営体質強化に寄与す ることが期待される。外部調達は2013 年度の資金調達必要額がマイナスに もかかわらず金融機関借入金は増加しており、売上高の急伸と共に減価償却 費を大きく上回る設備投資などを行うことは、将来の業容拡大に備えた動 き、積極的な意欲の表われと考える。  建設業における借入金の減少については総じて未成工事受入金の影響や利 益率の上昇に伴う借入金需要の減少が要因と考える。しかし、今後工事受注 高が減少に転ずる可能性があり、工事に伴う立替金の増加が未成工事受入金 の増加を上回ることも考えられる。建設労働者・技能者の将来的な担い手不 足などが懸念されるが、経営環境が好転しているこの時期を活かして、経営 基盤の一層の強化が期待される。 (主要建設会社決算分析)  2014 年度第 2 四半期は、景気回復に伴う工事量の増加、不採算工事を排除 した選別受注等、様々な要因の結果、受注量、売上高、採算性がいずれも順 調に増加、改善した。  受注高については、2013 年度に著しい増加を見せた建築が、2014 年度に下 落に転じたものの、土木が著しく増加したことから、全体としては増加した。  2014 年度の回復基調を維持するためにも、今後とも工事量の変動に柔軟に 対応できる施工体制を確立し、工程管理を徹底して社会のニーズに応えてい くことが期待される。

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◆第1章◆

マクロ経済と建設投資

3 章

公共調達制度

3.1 担い手 3 法改正が入札契約制度に与える影響

(はじめに)  公共工事の品質確保の促進に関する法律(以下、品確法)の一部改正法案が 2014 年 5 月 29 日、成立した。品確法と一体で審議された「公共工事の入札 及び契約の適正化の促進に関する法律」(入札契約適正化法)と「建設業法」 の改正法も同日成立となった。  本章では、前半で品確法の改正の中でも主に「多様な入札契約制度の導入・ 活用」に焦点を当てて改正内容を概観する。また、後半で当研究所が建設企 業、地方公共団体を対象に実施したアンケート調査の結果を分析すると共 に、そこから得られる示唆について考察を行う。 (公共工事の品質確保の促進に関する法律の改正について)  改正のポイントは「目的と基本理念の追加」、「発注者責務の明確化」、「受注 者の責務の明確化」、「多様な入札契約制度の導入・活用」の4 つである。  「多様な入札契約制度の導入・活用」について、競争参加者の中長期的な技 術的能力の確保に関して、発注者は、競争参加者の若年技術者・技能労働者 等の育成及び確保の状況、建設機械の保有状況、災害時の工事体制の確保状 況等を適切に審査又は評価するよう努めなければならない旨が追加され、多 様な入札契約方法として技術提案交渉方式、段階的選抜方式、地域社会資本 の維持管理に資する方式が規定された。 (「多様な入札契約方式に関するアンケート調査」の結果について)  当研究所では、発注者は 47 都道府県、政令指定都市、中核市等の合計 120 自治体、受注者は経営事項審査の完工高を基準に合計3,400 社を選定し、多 様な入札契約方式に関するアンケート調査を実施した。アンケート結果の詳 細分析は本文を参照されたい。 (まとめ)  技術提案交渉方式、段階的選抜方式等、改正品確法に定められた新たな入札 契約方式については、地方自治体は取り組みに消極的な意見が多く、建設企 業は積極的な意見が多いアンケート結果となった。このような両者の捉え方 の温度差は、改正品確法に定められた新たな入札契約方式がまだ導入の初期 段階であるため生じたものと考えられる。  しかし、新しい制度は PDCA サイクルを回すことによって進化するもので あり、制度の中身が浸透し導入工事が増えるにつれて、更なる品質確保に向 けた有用な入札契約方式として機能していくと思われる。  国土交通省は「発注関係事務の運用に関する指針」に基づき、発注関係事務 の適切な実施について定期的に調査を行い、その結果を公表するとしてお り、今後入札を実施する事例については結果を評価し、それを公にすること によって受発注者双方の理解を深める努力が必要と考えられる。

(12)

◆第1章◆

マクロ経済と建設投資

4 章

海外の建設業

4.1 香港の建設市場の現状と展望

(経済動向)  香港経済は、中国大陸からの旺盛な投資需要や急増する観光客の消費需要を 受けて、活況を呈している。また、中国大陸市場とのリンケージ強化を目的 として香港での地域統括機能を充実する動きが税務・法務セクターを中心と して進行しており、それに伴うオフィス需要も旺盛である。  インフラ投資も大きく伸びている。本土復帰10 周年を機に打ち出された「10 大プロジェクト」が最盛期を迎えており、鉄道、長大橋などのインフラ整備 が急ピッチで進んでいる。 (我が国建設企業の展開)  日系建設企業は、10 大プロジェクトを中心として、地下構造物の建設工事 に取り組んでいるほか、総合病院の建設などの建築分野でも受注を重ねてい る。  日系建設企業は、高度な土木技術や安全・環境対策を武器として厳しい受注 環境下で強みを発揮している。その一方で、建築分野では現地化を推し進め、 地場企業と同じ土俵で勝負できる体制を構築するなど、現地での長い営業経 験を生かした展開を図っている。

4.2 アジア諸国における建設技能労働者対策

 我が国は、現在建設技能労働者の不足に直面しているところであるが、東ア ジアの先進諸国も同様に少子高齢化、建設産業への入職者の減少などの課題 を抱え、各国各様の対応を講じている。  香港は、技能労働者の高齢化が進行しており、今後大幅な労働力不足が避け られないことから、政府・業界を挙げて後継者の育成に乗り出している。韓 国とシンガポールでは、外国人労働者への依存が深まりつつある中で、国内 労働者とのバランスの確保に向けて、それぞれ対策を講じている。

4.3 欧米諸国における建設技能労働者対策

 欧米諸国の建設技能労働者対策の特徴は、見習い工の訓練が制度化されてお り、賃金体系、休日の保障などの処遇の確保が労使協約を通じて全体の労働 者保護体系の中に組み込まれている点である。  アメリカでは、地域のニーズに即した職業訓練を再構築するため、新たに法 律を制定して、地元企業との連携を強化しようとしている。  ドイツでは、EU 加盟国の拡大に伴う越境労働サービスの競争激化に直面し、 労働者送り出し法などによって建設労働者の処遇を確保している。

参照

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