建設経済レポート
「日本経済と公共投資」
No.64
(平成 27 年 4 月)
-回復基調が本格化する建設投資と建設産業の未来像-
< 概 要 版 >
一般財団法人 建設経済研究所
第1章 建設投資と社会資本整備 ……… 1
【本文 p.001 - p.0147】 1.1 国内建設投資の動向 1.2 建設投資の変動要因分析(住宅・事務所・倉庫) 1.3 地域別の社会資本整備動向~南関東ブロック~第2章 建設産業の現状と課題 ……… 7
【本文 p.0149 - p.0243】 2.1 建設技能労働者の現状と人材確保に向けた課題 ~地方の建設技能労働者をめぐる状況と 建設業における外国人労働力の活用について~ 2.2 建設企業の資金動向分析 2.3 建設企業の経営財務分析第3章 公共調達制度 ……… 10
【本文 p.0245 - p.0279】 3.1 担い手3法改正が入札契約制度に与える影響第4章 海外の建設業 ……… 11
【本文 p.0281 - p.0350】 4.1 香港の建設市場の現状と展望 4.2 アジア諸国における建設技能労働者対策 4.3 欧米諸国における建設技能労働者対策 [問い合わせ先] TEL 03-3433-5011 専務理事 長谷川 啓一 研究員 中西 慎之介 研究員 矢吹 龍太郎◆
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◆第1章◆
マクロ経済と建設投資
第
1 章
建設投資と社会資本整備
1.1 国内建設投資の動向
(建設投資全体の見通し) 2014 年度は、民間非住宅建設投資の回復基調が継続するものの、政府建設 投資・民間住宅投資が前年度比で減少するため、全体は前年度比で減少する 見通しである。2015 年度は、民間建設投資が前年度比プラスで推移するが、 政府建設投資の減少が続き、全体は前年度比で減少する見通しである。 (政府建設投資の見通し) 2014 年度は、2012 年度補正予算の反動により前年度比で減少するものの、 2013 年度の補正予算と 2014 年度の当初予算を一体で編成した「15 カ月予 算」に加え、予算執行前倒しに向けた取組効果が発現することにより、2012 年度を超える投資額となる見通しである。 2015 年度は、2015 年度予算政府案の内容を踏まえ、一般会計に係る政府建 設投資を前年度当初予算比で横ばい、東日本大震災復興特別会計に係る政府 建設投資を増加と見込むなどして、また、2014 年度補正予算に係る政府建 設投資額の事業費は2015 年度中に出来高として実現すると考えて推計した 結果、前年度比で減少となる見通しである。 (民間住宅投資の見通し) 2014 年度の住宅着工戸数は、貸家は微減であるが、持家の消費増税による 反動減と分譲マンションの建築費上昇等による着工減が大きく、減少は避け られないと見込まれる。2015 年度は、10 月に予定されていた消費増税が延 期され、駆け込み・反動減がなくなったことと、省エネ住宅エコポイント等 の市場活性化策により、特に持家、分譲住宅で着工が増加することが予想さ れることから前年度比で増加する見通しである。 平米当たり単価は、持家、貸家、分譲すべての用途で前年同月比を上回る水 準となっており、上昇傾向が確認できる。 (民間非住宅建設投資の見通し) 2014 年度は、民間非住宅建築投資は前年度比 5.3%増、民間土木投資は堅調 に推移するとみられ、民間非住宅投資全体では前年度比 4.2%増となる見通 しである。 2015 年度は、前年度と同様の傾向が見込まれ、民間非住宅投資全体では前 年度比1.9%増と予測する。 2010 年度以降下落傾向にあった平米当たり単価は、2012 年度を底に 2013 年度には前年度比でプラスに転じ、2014 年度に入っても回復基調が継続し ている。(被災3 県の建設投資動向) 公共工事受注額は復旧・復興事業により大幅な増加が続いているが、以前は 技能労働者不足や資材価格の上昇等による入札不調の問題などが懸念され ていたものの、公共工事設計労務単価の引き上げ、技術者および現場代理人 の適正な配置、予定価格・工期の適切な設定、復旧・復興事業の円滑な施工 確保に向けた取り組みの効果が発現しており、一日も早い復興が実現するこ とが期待される。 高台や内陸への防災集団移転促進事業など住宅再建に向けた動きが本格化 しつつあり、土地造成が進めば「持家」を中心として着工戸数が増加すると 考えられる。また、災害公営住宅は約80%着手しており、2014 年度末まで に概ね1 万戸、2015 年度末までに約 2 万戸の完成を見込んでいる。 非住宅建築着工床面積は、足元の2014 年 4 月~2015 年 1 月では前年同期 比で若干弱含んでいるものの、投資額は震災前の2010 年度を上回る水準で 推移しており、引き続き、産業振興および雇用促進策が復興の後押しとなり、 被災3 県における非住宅建築投資は活発化すると予想される。 (地域別の建設投資動向) 今号では当研究所が2015 年 2 月 9 日に公表した「建設経済モデルによる建 設投資の見通し(2015 年 2 月推計)」を基に、推計期間を 1 年延長した上で 地域別の投資額を算出した。今回は2014 年度の地域別投資額を算出する上 で、2013 年度の地域別比率を採用する手法を用いた。 地域別出来高を時系列で比較すると2014 年度(12 月まで)は東北地方のシ ェアが震災による復旧・復興需要で増加している。 東北は2010 年度比で約 81%増となっている政府土木投資が全体を押し上げ ており、全国に占める割合も増加している。一方、三大都市圏の民間非住宅 投資について、中部、近畿エリアはリーマンショック前のそれぞれ約73%、 約56%の水準となっており、約 93%の水準にまで回復している関東に比べ て回復が遅れている。
1.2 建設投資の変動要因分析(住宅・事務所・倉庫)
(住宅建設投資の変動要因分析) ・ 新設住宅着工戸数は、「主世帯増加数」・「居住世帯のない住宅増加数」・「除 却等戸数」の合計である。主世帯増加数と着工戸数の推移を比較すると連動 がみられ、主世帯数が住宅着工戸数の主な増減要因であると推測できる。 ・ 生産年齢人口の減少に対し、主世帯数は増加を保ち増加率低下も緩やかであ る。また 1973~1983 年の主世帯数増加率の低下と比べ、1993 年以降のそ れは緩やかになっており、核家族・単世帯化が進行した可能性が考えられる。 ・ 1993~1998 年、2003~2008 年では、主世帯増加数と除却等戸数が低下す る中で、居住世帯のない住宅の増加数が上昇しており、供給が過剰傾向にな っていたものと推察される。一方、2008~2013 年では、主世帯増加数の低 下ペースよりも、居住世帯のない住宅の増加数と除却等戸数がともに低下し ており、リーマンショック後の経済の冷え込みで、供給が減少傾向になった ものと考えられる。 ・ 居住世帯のない住宅のほとんどを占める空き家は今後も増加していく傾向 であるが、市街地の遠近、利便等により、そのレベルは異なってくると思わ れる。人口集中地区における空き家は生活地域での大きな問題にもなるため、中古住宅市場の活性化等のための施策が取り組まれているが、その成果 により空き家の再利用が進むことが期待される。 ・ また、空き家を増加させないためには、除却又は従前住宅の更新が増加する ことが望ましく、省エネ・耐震・バリアフリー性能に優れた住宅や、スマー トハウスなどの高性能な住宅への更新を図っていくことが期待される。 ・ 住生活総合調査による意識調査では、新築・中古の区分では過半数が新築住 宅に対するニーズをもっているため、今後も新築住宅の需要は一定水準維持 されると考えられる。一方、今後の改善の意向としては既存住宅のリフォー ムに対するニーズは大きく、今後の主世帯数の減少により住宅着工減少が見 込まれる中でも、既存の住宅のリフォームによる活用は拡大する余地があ り、空き家の減少にも寄与することが期待される。 ・ 主世帯増加数の低下と国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(中位推計) による2020~2025 年頃から予測される一般世帯数減少によって、中長期的 には新設住宅着工戸数の減少が予想される。 ・ 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(中位推計)に基づく、家族類型・ 世代別の一般世帯数増減中長期予測では、既に増加を始めている特に80 歳 代女性を中心とする高齢者単独世帯に対する高齢者向け住宅、今後の団塊ジ ュニア世代の推移による50~60 歳代の中高年単独世帯に対する賃貸住宅、 同世代の核家族世帯に対する住宅へのニーズが予測される。 (民間非住宅建設投資の動向) 民間設備投資は一般的に企業利益が増大して、資金余裕が出ると、翌年度以 降の投資に結びつくと考えられ、企業の経常利益の推移は民間設備投資の先 行指標の一つとして捉えられる。 民間設備投資と民間非住宅建設投資の伸び率は類似の推移を示しており、連 動しているのが見てとれる。経年の推移を見ると民間設備投資に占める民間 非住宅建設投資の割合は低下しており、1980 年度には 54.4%を占めていた が、2013 年度には 16.2%と半分以下となっている。また、近年、民間設備 投資は増加傾向にあるが、民間設備投資に占める情報通信技術(ICT)等へ の投資を含んだ機械投資が設備投資を押し上げていると思われる。 民間非住宅建設投資の使途別動向を 1980 年度からバブル終了後の 1996 年 度までと、1997 年度から 2013 年度までの二つの期間に分けて推移を見ると 製造業に関連した「工場及び作業場」と「倉庫」が減少し、非製造業の使途 へと比重が移っていることが見てとれた。これはバブルを含んだ前期の国内 経済を牽引していた製造業が国際的な価格競争や円高に直面し、海外へと生 産拠点を移転したことが要因と考えられる。 民間非住宅建設への投資動向は景気動向や企業収益の動向など企業が設備 投資を行う動きを大きな変動要因として推移していると言えるが、企業の周 辺環境は国際的な価格競争の激化やICT の発達を含む産業構造の変化、日本 の生産年齢人口の減少など、過去30 年の間に大きく変化してきている。 (建設投資動向(事務所)の変動要因分析) 事務所(オフィスビル)市場は、産業構造の変化や人口動態の変化、更には ワークスタイルの変化やオフィスに対する投資スタイルの多様化に合わせ、 オフィスビル市場を取り巻く環境も大きく変動している。 事務所出来高の地域ブロック別シェアの推移を見ると、関東、近畿、中部の 3 大都市圏が上位を占めていることがわかる。関東は 2013 年度で全国の約 5 割を占めており、長期的にシェアを拡大させている。一方、近畿は約1 割を
占めているが、そのシェアは減少傾向にあり、中部についてはほぼ横ばいで 推移している。 2001 年に J-REIT が創設されて以来、不動産は急速に金融商品としての存 在価値を高めている。証券化対象不動産は様々なタイプに拡大しているが、 オフィスビルの需要は底堅く、今後も収益を確保できる好条件のオフィスビ ルを中心に取得および投資の動きは続くことが考えられ、市場のニーズに合 わせたハイスペックなオフィスビルの供給は一定程度続くものと予想される。 東京のオフィスビル市況を中心に足元の動向を確認してみると、企業の景況 感回復に伴い拡張移転や館内増床を求める動きや、企業の事業継続計画 (BCP)の観点から立地や耐震性を重視しオフィスを見直す傾向が強まって いる。 今後の事務所建設投資に影響を及ぼす変動要因においては、①オフィス人口 とオフィスビルストックの動向、②ワークスタイルの変化(進歩・普及する ICT 及び女性や高齢者の就業促進の動向)、③都市構造の変化(グローバル 化の更なる進展及び地方創生の動向)に焦点を当て考察を行った。 急速に進む少子高齢化に伴いオフィス人口は減少していくことが予測され る一方、受け皿となるオフィスビルストックは増加基調が継続している。 今後のオフィスビル市場は、設備や付加価値などによる競争力格差を色濃く 反映し、好立地・ハイスペックの機能を備えたオフィスビルと、競争力に劣 る老朽化ビルとの二極化傾向がより強まることが考えられる。 今後は、老朽化した既存ビルの建替えによるスクラップ&ビルドの動きが今 まで以上に加速してくると思われるが、建替え以外にも、大胆な用途変更や 増改築を行い、効率的に使用していくといった「ストックビジネス」の市場 が拡大していくことも予想される。 (建設投資動向(倉庫)の変動要因分析) 倉庫着工床面積はバブル期の 18,372 千㎡をピークに、減少の一途を辿った が、近年、増加傾向に転じており、足元ではリーマンショック前の水準に戻 りつつある。 倉庫の発注者別動向では主な発注者は運輸業で、その割合は依然として高い ものの、近年、不動産業や小売業の発注割合が増えている。また、倉庫の出 来高は2011 年度~2013 年度の 3 年連続で二桁の伸び率を示している。特に 関東、近畿、中部地域にて全国の約7 割のシェアを占めており、昨今、倉庫 需要は関東から全国的な広がりを見せている。 倉庫着工床面積と一定の関連性がみられる国内貨物輸送トン数は近年、減少 傾向である一方、倉庫の着工床面積は増加傾向であり、倉庫を取り巻く環境 が変化していると思われる。貨物特性に着目した場合、小ロット化、多頻度 輸送化していることが見て取れる。 国内の産業構造の変化と企業の経営改善の動きに伴い、材料供給から販売ま での物流を一過程とみなし、全行程を最も効率的に管理しようとする「サプ ライチェーン・マネジメント」(SCM)の考え方が浸透し、物流事業を一括 で請負う3PL(Third Party Logistics)が出現するなど、物流網と物流施設 を集約化、効率化する動きが広がっている。また、自社開発と保有のリスク を避けるため賃貸型物流施設を志向する傾向があり、それらを投資対象とし た物流ファンドも急拡大している。 賃貸型物流施設の需要の拡大に伴い、外資の物流不動産会社や国内の不動産 会社の物流ファンドへの参入が相次いでおり、倉庫を証券化対象とした不動 産の取得金額は2013 年度には 7,000 億円と事務所、店舗に次ぐ規模となっ
ている。 インターネット通販市場は拡大を続けており、ネット通販専門会社に続い て、小売業各社も実店舗とネット通販を融合させるオムニチャネル戦略によ り相次いで参入している。消費者の利便性の追求は強まり、「即日」もしく は「翌日配達」のように注文から配送までのリードタイムを短縮する動きが 進み、この動きに対応出来、かつ広範囲でカバー出来るような新たな物流網 と物流施設が求められている。 全国の約 4 割のシェアを占める関東では三環状道路の整備も倉庫需要に拍 車をかけており、その需要は賃料が割安で労働力の確保しやすい内陸部へ広 がりつつある。 政府は「総合物流施策大綱」(2013-2017)を策定し、物流インフラ等の整備・ 有効活用や 3PL 事業者の育成・振興の更なる促進、臨海部の物流施設の更 新・機能強化の推進、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律整備、 土地区画整理事業等による物流施設の高速道路や港湾等の周辺への立地の 促進、物流業界の人材の確保・育成など、ハード・ソフト両面からの取組を 掲げている。 国内貨物輸送トン数が減少傾向にある中、ストック量は横ばいで推移してお り、頭うちの状態である。その中で昨今の倉庫需要は国内産業構造の変化に 伴う、物流の効率化の流れと、小ロット化、多頻度輸送化などの貨物特性の 変化に伴う、従来型倉庫からの更新需要と思われ、今後も集約や統合が進む と予想される。
1.3 地域別の社会資本整備動向~南関東ブロック~
(南関東ブロックの現状および課題) 南関東ブロック(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)は、わが国の首都圏 を構成しており、県内総生産では全国の約3 割の経済規模を担っている。ま た、東京都では2020 年東京オリンピック・パラリンピックが開催される予 定である。 南関東ブロックは、国際競争力の強化への対応、少子高齢社会への対応、老 朽インフラへの対応強化、自然災害への対応強化といった課題を抱えてい る。 (主要プロジェクト等の動向と期待される効果) 2015 年度までにほとんどの区間で開通が予定されている三環状道路の整備 効果として、東京都心の渋滞改善効果、首都圏における物流の改善効果、都 市機能の再配置の促進、災害道路としての役割が期待される。 鉄道プロジェクトとして、2027 年開業予定のリニア中央新幹線整備や 2020 年東京オリンピック・パラリンピックを見据えた品川~田町間の新駅設置な どがあり、利便性向上や経済波及効果が期待されている。 京浜港における主要な事業として「国際海上コンテナターミナルの整備(中 央防波堤外側地区)」があり、ターミナルの整備や直背後の臨海部物流拠点 の形成などを通じて、欧米基幹航路を含めたシームレスな物流網を形成する ことにより、首都圏全域の産業基盤の強化が期待される。 成田空港と羽田空港の発着回数でみた機能は、将来の需要予測では2020 年 頃には需要が発着枠を上回ることから、機能強化策が検討されている。 2020 年東京オリンピック・パラリンピックに伴う経済波及効果(生産誘発額)は、東京都で約1 兆 6,700 億円、その他の地域で約 1 兆 2,900 億円と推 計されており、経済に多大なインパクトを与え、また雇用創出が期待される。 湾岸エリアでは、2020 年東京オリンピック・パラリンピックを意識した「ま ちづくり」が計画されており、高層マンションなどの建設が活発化している。 また、築地場外市場の豊洲への移転事業が進められている。 首都高速道路の大規模修繕は2020 年東京オリンピック・パラリンピックま でに関連する路線の完了を目指し、概算事業費は大規模更新、大規模修繕を 合わせて約6,300 億円とされている。 下水道について、南関東ブロックは都市集積が進んでおり、高度経済成長期 に集中的に整備した地区の老朽化が今後急激に進むことから、老朽化対策へ の投資は増大していくことと思われる。 2014 年 4 月に公表された国土交通省首都直下地震対策計画によると、2020 年東京オリンピック・パラリンピックを一つの目標として、本対策計画に位 置付けられている各対策の推進に全力で取り組むこととされている。 東京都は、東京都豪雨対策基本方針(改定)において、2020 年東京オリン ピック・パラリンピックまでの取り組みを設定するとともに、概ね 30 年後 の長期見通しをイメージした上で、10 年後にあたる 2024 年までの取り組み も設定している。 (大規模住宅団地再生) 団地再生への取り組みのきっかけとして、建物の老朽化と住民の高齢化が挙 げられる。住民の高齢化は団地内にとどまらず、周辺地域も含めて進んでお り、周辺地域一体としての対策が必要となっていた。また、地域によっては 子育て世代への対応も必要となっていた。 大規模住宅団地再生についての今後のあり方として、医療、介護、子育て施 設などのコンテンツを公的住宅に含め、そのサービスを居住者だけが受益す るのではなく、地域全体が受益できるようなさらなる仕組み作りが必要と考 えられる。また、今後の新しいモデルを推進していくのにあたり、単独の公 的住宅事業主体が取り組める範囲には財源的にも限界があり、民間企業との 事業組成がさらに必要になると考えられる。こうした大規模住宅団地再生 は、南関東だけでなく全国における新しいまちづくりのモデルとなる可能性 を秘めている。 (南関東ブロックにおける建設投資の将来展望) 政府建設投資は、国際競争力強化を主眼とした交通インフラ関連投資などに 加え、老朽インフラ更新などが今後大きな柱になると考えられる。 民間住宅投資は、東京圏への人口流入が引き続き増加しており、加えて2020 年東京オリンピック・パラリンピックに関連した湾岸エリアなどでの高層住 宅開発、また、大規模住宅団地再生に伴う余剰敷地の民間分譲に伴う住宅投 資も予想されることから、増加が十分に期待できる。 民間非住宅建設投資は、三環状道路の整備に伴う物流拠点などのさらなる強 化や、オリンピックが開催される2020 年に向けた鉄道整備、また東京圏へ のオフィスの集中化も進んでいることから、増加が今後期待される。