• 検索結果がありません。

として同条 2 項が定めた例 と同様に, 一方が死亡した日から起算して 1 月以内に 他方による標準報酬改定請求があったときに限り, 一方が死亡した日の前日, すなわちその者に係る標準報酬をなお観念することのできた時点において標準報酬改定請求がされたものとみなし, 特例を設ける趣旨であると解される

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "として同条 2 項が定めた例 と同様に, 一方が死亡した日から起算して 1 月以内に 他方による標準報酬改定請求があったときに限り, 一方が死亡した日の前日, すなわちその者に係る標準報酬をなお観念することのできた時点において標準報酬改定請求がされたものとみなし, 特例を設ける趣旨であると解される"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

元配偶者が死亡して約1年後になされた離婚時年金分割請求が不適法とされた事例

東京地裁平成 26 年 7 月 11 日判決(裁判所HP) 附:控訴審東京高裁平成 26 年 12 月 25 日判決(裁判所HP) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 事実の概要 1 Xは,平成 20 年 12 月 22 日,Aと和解離婚し,同日,XとAとの間で,厚生年金保 険法(以下「厚年法」という。)78 条の 2 の規定に基づく年金分割(以下「離婚時年金分割」という。) についての請求すべき按分割合を 0.45 と定める内容の和解が成立した。 2 Aは,平成 21 年 4 月 1 日頃,死亡した。Xは,同年 4 月 29 日,Aが行方不明となっ ていることを知らされ,同年 7 月 3 日,同月1日にAの遺体が発見された旨を知らされた。 3 Xは,平成 22 年 3 月 5 日,厚生労働大臣に対し,上記1の和解に係る調書を添付し て,X及びAの離婚時年金分割に係る標準報酬の改定の請求(以下「本件標準報酬改定請求」と いう。)をしたところ,厚生労働大臣から権限に係る事務の委任を受けたY(日本年金機構)は, 厚年法施行令 3 条の 12 の 7 において「当事者の一方が死亡した日から起算して1月以内に …他方による標準報酬改定請求があつたときは,当事者の一方が死亡した日の前日に標準 報酬改定請求があつたものとみなす」と規定していることから,Aの死亡した日から起算し て1か月以内にされたものではない本件標準報酬改定請求は同条が定める場合に該当しな いとして,Xの請求を却下する旨の処分(以下「本件却下処分」という。)をした。 これに対し,Xは,厚年法 78 条の 2 は離婚後 2 年間の標準報酬改定請求の機会を保障し た規定であり,当事者死亡後の請求を1月以内に限定した厚年法施行令 3 条の 12 の 7 は法 による委任の範囲を逸脱するものである,などと主張して,本件却下処分の取消しを求める とともに,XとAとの「年金分割についての請求すべきあん分割合を 0.45 に改定せよ」と の義務付けを求める訴えを提起した。 判 旨 取消請求棄却,義務付けの訴え却下(控訴) 1 (1) 厚年法は「年金受給権を一身専属的なものとし,受給権者の死亡によって消滅 するもの」と規定しており(同法 45 条・53 条 1 号参照),その趣旨からして「死亡した者に係 る標準報酬は観念され得ないものと解され」る。そして,「離婚時年金分割制度につき上記 の同法の基本とするところを…改めるものとする明文の規定はないことから,標準報酬改 定請求がされる前に…〔当事者の〕一方が死亡した場合には,…離婚等をしたときから 2 年 を経過する前であったとしても,…標準報酬の改定又は決定をする前提が欠けることにな るため,…他方が標準報酬改定請求をすることはできなくなるものと解される」。 (2) 厚年法施行令 3 条の 12 の 7 は,「上記と同様の理解に立った上で,…厚年法施行規 則 78 条の 3 第 1 項が定めた標準報酬改定請求をすることができる期間の原則に対する例外

(2)

2 として同条 2 項が定めた例…と同様に,…一方が死亡した日から起算して 1 月以内に…他 方による標準報酬改定請求があったときに限り,…一方が死亡した日の前日,すなわちその 者に係る標準報酬をなお観念することのできた時点において標準報酬改定請求がされたも のとみなし,特例を設ける趣旨であると解される。」 2 厚年法 78 条の 2 第 1 項ただし書及び同法施行規則 78 条の 3 の規定において「離婚 等をしたときから 2 年を経過したとき等には,標準報酬改定請求をすることができない旨 を定めている」が,この期間中に相手方が死亡した場合について,上記1(1)で述べた基本 の「例外とする旨を定める規定は見当たらず,このような同法の関係規定の文理に照らし, 同法 78 条の 2 第 1 項ただし書の規定が離婚等をしたときから 2 年を経過するまでは常に標 準報酬改定請求をすることができることを保障する趣旨のものであるとまでは解し難い。」 そして,「同法 78 条の 12 は,…離婚等をした場合における特例に関し必要な事項は,政令 で定める旨を定めているにすぎないのであって,この規定が,上記のとおりの同法 78 条の 2 第 1 項ただし書の規定とあいまって,離婚等をしたときから 2 年間の標準報酬改定請求を することができる期間を保障したものと解する余地は,直ちには見当たらない。」 標準報酬改定請求の前に「一方が死亡した場合には,離婚等をしたときから 2 年を経過す る前であったとしても,…他方による標準報酬改定請求はすることができなくなるのが本 来であるところ,厚年法施行令 3 条の 12 の 7 の規定は,…一方が死亡した日から起算して 1 月以内に…他方による標準報酬改定請求があったときに限り,…一方が死亡した日の前日 に標準報酬改定請求がされたものとみなすことによって,これを適法なものと取り扱おう としたものというべきであって,同法 78 条の 12 の規定による委任の範囲を逸脱して標準 報酬改定請求をすることができる期間を限定したものと解することは相当ではない。」 解 説 1 離婚時年金分割制度は,婚姻期間に係る夫婦双方の保険料納付記録を分割し,当該分 割された記録に基づいて双方の年金権受給権を生じさせるものである。そして,同制度では, このような効果を生じさせるために,当事者双方の標準報酬(対象期間における標準報酬月額及 び標準賞与額をいう。以下同じ。)を「改定し,又は決定する」という法技術が用いられている (厚年法 78 条の 6)。本判決は,当事者の一方が死亡した場合には,その者の標準報酬を観念 することができなくなり,上記の法技術を用いる前提を欠くことになってしまうため,他方 は,厚年法施行令に定める特例(死亡日から起算して 1 か月以内の請求)によらない限り,年金 分割の請求をすることができなくなる,と判示したものである。 2 (1) 判旨1(1)は,上記の結論を基礎づける理由として,①年金受給権を一身専属と する厚年法の趣旨からして死者の標準報酬は観念され得ないのが基本であり,厚年法にお いて離婚時年金分割制度につきこの基本を改める規定は存在しない,②したがって,年金分 割を請求し得る当事者の一方が死亡した後は,標準報酬を改定等する前提を欠くため,他方 は標準報酬改定請求をすることはできなくなる,と説明している。 しかし,①年金受給権が一身専属のものであるとしても,例えば,遺族厚生年金の年金額 については,死亡した被保険者等の標準報酬を基に計算されるのであり(厚年法 60 条参照),

(3)

3 同法が死者の標準報酬を参照し得るものと規定しているのは明らかである1。すなわち,「死 者の標準報酬は観念され得ない」との解釈は,あくまで死亡した当人の年金受給権に係る文 脈でのみ妥当するのであって,離婚時年金分割の対象となる,他者の年金額計算の基礎とし ての保険料納付記録(としての標準報酬)にもあてはまるかは不明である。したがって,上記 ①の理由付けだけで,②年金分割を請求し得る当事者の一方が死亡した後に,他方の標準報 酬を改定等する前提を欠くといえるのかもまた不明である。 なお,離婚時年金分割に係る標準報酬の改定等とは,元夫婦であった当事者の一方(第 1 号改定者)の標準報酬を減らす代わりに,相手方(第 2 号改定者)の標準報酬をその分だけ増や すものである(厚年法 78 条の 6 参照)。したがって,判旨の上記解釈を妥当とすれば,第 1 号 改定者(標準報酬を減らす側)が死亡した場合は第 2 号改定者に増やす分が生じないため標準 報酬を改定等できないと説明できるが,逆に,第 2 号改定者(標準報酬が増える側)が死亡し た場合は第 1 号改定者の標準報酬のみを減らすことができるのではないかという疑問が生 じる。しかし,判旨は,第 1 号改定者,第 2 号改定者いずれの死後も「標準報酬の改定又は 決定をする前提が欠ける」と説明しており(判旨への引用は省略した。),第 1 号改定者死亡の 場合と第 2 号改定者死亡の場合とを区別しておらず,疑問が残る。 (2) 次に,判旨1(2)は,上記の基本的解釈(死者の標準報酬は観念され得ないとの解釈)を前 提として,厚年法施行令 3 条の 12 の 7 について,同法施行規則 78 条の 3 第 2 項の規定と 同様,「標準報酬改定請求をすることができる期間の原則に対する例外」を定めた規定であ り,当事者の死後 1 か月以内の標準報酬改定請求について「その者に係る標準報酬をなお観 念することのできた時点」にされたものとみなすための規定である,と解している。 しかし,厚年法施行令 3 条の 12 の 7 が同法施行規則 78 条の 3 第 2 項と「同様」に,標準 報酬改定請求の期限を定めたものであれば,何ゆえ,同条と同じく厚年法 78 条の 2 第 1 項 ただし書により厚年法施行規則に規定されるのではなく,同法 78 条の 12 により厚年法施 行令に規定されたのか,という疑問が生じる。また,厚年法施行規則 78 条の 3 第 2 項は, 離婚等の後 2 年を経ても請求すべき按分割合が定まらない場合に標準報酬改定請求の請求 期間を延長する規定であって,厚年法施行令 3 条の 12 の 7 にいうような特定の日に遡及し て請求がされたものとみなす規定ではない。そして,同条の規定(「当事者の一方が死亡した日 から起算して 1 月以内に…他方による標準報酬改定請求があつたときは,当事者の一方が死亡した日の前 日に標準報酬改定請求があつたものとみなす」)を文言通りに読めば,その趣旨は,当事者の死後 1 か月以内にされた標準報酬改定請求の効力発生の時期(厚年法 78 条の 6 第 4 項参照)を当事 者の「死亡日の前日」に遡及させることに主眼があるものと解するのが自然であり2,施行 規則所定の規定と同視するのは無理があるように思われる。 3 判旨2は,Xの主張(①厚年法 78 条の 2 は離婚後 2 年間の標準報酬改定請求の機会を保障した 1 なお,厚生労働大臣は,被保険者に関する原簿の備付を義務付けられており,この原簿には被保険者の氏名,資格 の取得及び喪失の年月日,標準報酬などの事項を記録しなければならない,とされている(厚年法 28 条参照)。 2 本文のように解すると,厚年法施行令 3 条の 12 の 7 は次のような趣旨の規定と考えることができよう。例えば,死 亡した相手方に厚年法所定の遺族がいれば,その遺族には,相手方の死亡のときから遺族厚生年金の受給権が生じるこ とになる(厚年法 58 条以下参照)。しかし,離婚時年金分割に係る標準報酬改定請求があれば,同法 78 条の 6 第 4 項 により当該請求の日から将来に向かって標準報酬を改定する必要があるため,相手方の死後に標準報酬改定請求がされ た場合は,既に確定した遺族厚生年金の年金額を改定する必要が生じる。そして,年金の支給は支給事由の生じた月の 翌月から開始されるため(同法 36 条 1 項参照),相手方の死と同一月内に標準報酬改定請求がなされたときは,遺族厚 生年金の裁定時に年金額を確定する意義が事実上失われてしまう。このような不都合が生じるのを避けるために,死後 1 か月以内にされた標準報酬改定請求については死亡日の前日にされたものとみなす規定を置いた,と。

(4)

4 規定であり,②相手方死亡後の標準報酬改定請求を1月以内に限定した厚年法施行令 3 条の 12 の 7 は,法 による委任の範囲を逸脱する)に応えた部分である。判旨は,①厚年法 78 条の 2 第 1 項ただし 書(及び同規定に基づく厚年法施行規則 78 条の 3)について,上記の基本的解釈(死者の標準報酬は 観念され得ないとの解釈)の例外を定めたものとは認められないこと,及び②同条に,離婚等 をした場合における特例に関して政令委任する旨を定めた厚年法 78 条の 12 の規定をあわ せてみても,標準報酬改定請求において 2 年間の請求期間が必ず保障されると解する余地 は直ちには見当たらないことを指摘して,Xの主張を退けている。 しかし,判旨の基本的解釈に不明な点があるのは前述の通りである。また,判旨は,Xの 主張を退けるにあたり,厚年法施行令 3 条の 12 の 7 について,標準報酬改定請求をするこ とができる期間を限定する規定ではなく,相手方死亡後の標準報酬改定請求を「適法なもの として取り扱おうとしたもの」との解釈を加えているが,その期間を「1 月以内」と規定し たことの合理性を問う必要があったように思われる。 4 実務上は,「年金分割のための請求すべき按分割合を決定した後,手続をする前に当 事者の一方が亡くなった場合は,その死亡日から 1 か月以内に限り分割請求が認められる」 という取扱いが確立されており,判旨は,この取扱いを,厚年法には「死者の標準報酬は観 念され得ない」という原則があること及び離婚時年金分割の関連規定にこの原則を改める 規定が置かれていないことをもって正当化したものである。しかし,判旨の理由付けにいく つかの疑問があることは既に述べた通りであり,さらに,離婚時年金分割制度の趣旨等に鑑 みた検討が必要であったのではないかと考える。 とりわけ,離婚時年金分割制度の導入にあたり,年金分割の方法については「年金権その ものを分割する方法」と「支給される年金額を分割する方法」が提示されたにもかかわらず, 後者によれば元配偶者の年金額の分割となり,「元配偶者が死亡した場合には,分割された 年金は消滅」(厚年法 45 条により失権)してしまうことから,「元配偶者が死亡しても年金が支 給される,年金権そのものの分割の仕組みを基本とすることが適当」との提言がなされ3 その結果,当事者の標準報酬を改定等する法技術がとられたことに留意すべきではないだ ろうか。すなわち,この法技術を採用した主たる目的は,一方の死亡により他方の年金受給 権に影響が及ぶのを防ぐためと解され,そうであれば,年金分割請求前に相手方が死亡した 場合に,この法技術を採るゆえに請求不可,とされるのを基本としてよいか疑問が残る。 また,本件のように標準報酬分割請求が認められなかった当事者から,死者の財産を相続 した遺族に対する財産分与の請求があり得ることにも留意すべきであろう。すなわち,本件 のように請求すべき按分割合についての合意がなされている場合には,当事者から元配偶 者の相続人に対し,請求すべき按分割合通りの定期金の支払等を請求するケースが生じ得 る。このような紛争が生じ得ることに鑑みると,死後 1 か月経過後の分割請求を一律に不可 とする取扱いについて見直す必要があるように思われる45 3 厚生労働省「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会報告書~女性自身の貢献がみ のる年金制度~」(平成 13 年 12 月)66 頁~69 頁。 4 相手方死後の請求制限について,Yは「離婚時年金分割がその当事者ではない第 1 号改定者の遺族の遺族厚生年金 の受給権に影響を与えないようにする必要」を指摘している(事実の概要への引用は省略した。)。しかし,年金分割請 求を認めたほうが紛争解決に直截的であり,当事者の利益にも資するように思われる。 5 義務付けの訴えに係る判旨の引用及びその検討については省略した。

(5)

5 なお,本件は控訴され,次の通り控訴審判決が示された。 附:控訴審東京高裁平成 26 年 12 月 25 日判決(裁判所HP) 控訴審判決は,まず,死亡した者に係る標準報酬について,一審判決が「観念され得ない もの」と判示した箇所を「存在しないもの」と補正している。また,Xが亡Aとの間で既に 請求すべき按分割合を合意していたことから,本件では直ちに標準報酬改定請求をするこ とができたという事情にあったことを指摘しつつ,以下の判旨を追加するなどした。 「観念され得ないもの」を「存在しないもの」と補正したことの意義は不明であるが,以 下の判旨においても,厚年法施行規則 78 条の 3 第 2 項と厚年法施行令 3 条の 12 の 7 とを 同旨の規定とみているように読めることから,一審判旨に対するのと同様の疑問が残る(前 記解説2(2)参照)。 控訴審判旨 控訴棄却 「厚年法施行規則 78 条の 3 第 2 項は,離婚等の後 2 年経過後に裁判等により請求すべき 按分割合が定まった場合には,標準報酬改定請求の事務手続等のための期間として 1 月の 猶予期間を認めていることが認められるのであって,改定請求が可能となった後の猶予期 間は,本件で問題となっている厚年法施行令 3 条の 12 の 7 の場合と同じであるから,この 同令の定めが特に不合理なものであるとまではいえ」ない。 (2015 年 2 月 27 日掲載,同年 3 月 2 日加筆修正,同年 8 月 6 日控訴審判旨追加)

参照

関連したドキュメント

 手術前に夫は妻に対し、自分が死亡するようなことがあっても再婚しない

る、関与していることに伴う、または関与することとなる重大なリスクがある、と合理的に 判断される者を特定したリストを指します 51 。Entity

にて優れることが報告された 5, 6) .しかし,同症例の中 でも巨脾症例になると PLS は HALS と比較して有意に

(2)特定死因を除去した場合の平均余命の延び

しかし,物質報酬群と言語報酬群に分けてみると,言語報酬群については,言語報酬を与

以上の基準を仮に想定し得るが︑おそらくこの基準によっても︑小売市場事件は合憲と考えることができよう︒

私たちは、2014 年 9 月の総会で選出された役員として、この 1 年間精一杯務めてまいり

 この決定については、この決定があったことを知った日の