英語教育にも量と質のせめぎ合いはあろう。 例えば、 語学習得のためにはクリティカル ・ マスを超えなければならないと言われ ている。 クリティカル・マス (critical mass) は量子力学でいう臨界質量のことであるが、ここでは、「ある域に達するために必要な量」 とでも言えばいいだろう。 ちなみに、 語学習得のクリティカル ・ マスは一説には 2000 時間である。 一日 12 時間勉強し続けるとし て 6 か月の語学留学に匹敵、 週 4 時間程度の学習では約 15 年、 年 35 時間程度なら数十年かけても満たない。 このように見て みると、 学校教育の中で量的充足を実現することはかなり困難である。 学校が、新渡戸の言う” スタディ” の場であるのなら、量的なものをばかりを追い求めたり、量的なもの量に甘んじてはいけない。 量的なものの限界を知って質的なものへの転換を図る必要があろう。 量的世界の中の質的存在。 教育がその質的存在になるとよい。 ************************** 3. 書籍紹介
2月
節分の翌日は立春である。 1 月 14 日付けの朝日新聞の天声人語の冒頭部にこうあった。 「年を重ねると、 月日の流れがどんどん速くなる。 楽しい時が駆け足なのは常としても、 退屈な時間まで大股 である。 物の本によれば 「心の時計」 のせいらしい。 子どもには未知の行事や出来事が次々と訪れ、 心の 時は細かく刻まれる。 だから時間がゆっくり進むように感じる。 大人になると胸躍るイベントが減り、 加齢で代 謝も鈍り、 心の時計は緩慢になる。 つまり実際の時の流れを速く感じる、 という。」節分日が来ると、 “This day is the end of winter.” と時の巡りの速さを感じる。 そんなとき、 今年も精いっぱ い生きるとしよう。 人生は心の時計に刻まれるから。 まっすぐ、自分の身体にあるエネルギーを信じて、と思う。 本には、 著書の何年もの思いや研究が一冊につまっている。 一冊に込められたた時を感じながら、 はたまた、 小説に描かれた 時と空間に身を置いたりしながら、 本を楽しみたいと思う。 『ことばの発達の謎を解く』 ( ちくまプリマー新書 ) 今井 むつみ ( 著 )、 239 ページ、 筑摩書房 (2013/1/9) ¥ 903 単語も文法も知らない赤ちゃんが、 なぜ母語を使いこなせるようになるのか。 「子どものことばの発達の過程 をたどることは、 ことばを 「使う」 ためにことばの意味について何を知らなければならないのかを 、 私たちに教 えてくれます。 それはとりもなおさず、 私たちが外国を学ぶときに、 一つ一つの単語について何を知らなけれ ばならないかを教えてくれる、 ということです。」 と 「はじめに」 にある。 昔、 クラッシェンの input hypothesis が発表されたあと自分の子どもがどのように言葉を覚えるかを研究していた学者がいたが、 言語知識を無の状 態からどう獲得していくのかそのプロセスを知ることは意味がある。 外国語の、 母語に置き換えて暗記した単語の意味と子どもが 母語で習得した意味はどのように違うのか、 それを知ることは外国語学習に役に立つはずである。 第 1 章 アラミルクガホシイノネ――単語の発見 第 2 章 ヘレン ・ ケラーの water 事件――ことばの世界の扉を開ける 第 3 章 歯で唇をフム――動詞の意味の推測 第 4 章 血圧がヤスイ――モノの性質、 色、 位置関係の名前の学習 第 5 章 ことばの発達の謎を解く――発見、 創造、 修正 第 6 章 言語が思考をつくる
『その返事、 ネイティブはイラッとします 成功するビジネス英会話の極意』 ( 朝日新書 ) [ 新書 ] デイビッド ・ セイン ( 著 )、 224 ページ、 講談社 朝日新聞出版 (2013/1/11)、 ¥ 798
いつもながらのデビッド ・ セインの新書 ・ 文庫シリーズ。 How are you doing? と言われて、 “I'm fine.” とだけ答え る日本人は多い。 コミュニケーションとして会話と続ける意志がないと思われるこうした応答をしてしまうのは、 次に 何と言えば良いか思い浮かんでいないのだろう。本書は、返事のあとに続くワンランクアップのビジネス英会話フレー ズを紹介している。 1 章―挨拶の YES/NO 2 章―電話の YES/NO 3 章―オフィスの YES/NO 4 章―休憩時間の YES/NO 5 章―商談での YES/NO 6 章―クレーム対応の YES/NO 『間抜けの構造』 ( 新潮新書 ) ビートたけし ( 著 ) 、 187 ページ、 新潮社 (2012/10/17)、 ¥ 714 高文脈文化に生きる日本人が持つ、 「間」 の感覚は英語には置き換えられないだろう。 space, distance では ない独特の感覚である。 この 「間」 をとれないことが間抜けということである。 ビートたけしが、 貴重な芸談に 破天荒な人生論を交えて、 この 「間」 を語っている。 歌舞伎でも踊りでもその出来を左右するものは " 間 " で あって、 芸時を活かすも殺すも、 " 間 " 次第。 それだけ “間” というものは重要なんだけど、 同時に怖い物でもあって、 “間” を外せば、 “魔” ともなる。 そ んな含蓄のある言葉と解説している。 ● すべての勝負事に必要なのは、相手の “間” を外すこと ●成功の秘訣は、時代の “間” をいかに読むか ●政治家はいつからこんな “間抜け” ばかりになったのか ● “間抜け” とは、 自分を客観視できない奴のこと、 などさっと読める。 『きみはいい子』 中脇 初枝 ( 著 ) 、 318 ページ、 ポプラ社 (2012/5/17) ¥ 1,470 昨年末、 滋賀県の新採の英語の先生の忘年会に招かれた。 新任の先生だけでなく、 彼らが信頼を置く 先輩の先生や教頭先生も参加されたりする 、 オープンな集いであった。 その時に知り合いになりました中堅 の K 先生から紹介していただいたのが本書である。 紹介に、 「ある雨の日の夕方、 ある同じ町を舞台に、 誰かのたったひとことや、 ほんの少しの思いやりが生むかもしれない光を描き出した連作短篇集。 夕方五時 までは帰ってくるなと言われ、 雨の日も校庭にたたずむ生徒と新任教師との心のふれあいを描く 「サンタさ んの来ない家」 をはじめ、 娘に手を上げてしまう母親とママ友との物語、 ひとり暮らしが長くなった老女と、 家を訪ねてきたある男 の子との物語など、 胸を打つ作品を五篇収録。 人間の優しさとその優しさが生む光が、 どれほど尊くかけがえのないものかをあら ためて感じさせる感動作。」 とある。 K 先生も涙無くしては読めなかったとおっしゃっていた。 小学校の新米の教師が次第に子ど もの本当を見つめていく姿など読むと 、 自分が教員になったころ目の前の生徒に熱くなって向き合っていたことを思い出す。
“Doing Task-based Teaching” (Oxford Handbooks for Language Teachers)
Dave Willis、 Jane Willis ( 著 ) 、 278 ページ、 Oxford Univ Pr (Sd) (2007/4/26) 、 ¥ 3,470
Jane Willis は、 “A framework for Task-based Learning” でタスクベースの学びを紹介している。 その指 導法を夫婦でまとめた。 “Gives a clear explanation of the basic principles of task-based teaching Contains many examples of tasks and lesson plans from teachers around the world Provides sample materials and lesson plans showing how to focus on meaning, language, and form Includes guidance on adapting existing course materials to include a task-based element Suitable for teacher training courses or for individual teachers Authors are leading world experts on task-based teaching” と紹介されている。
3 月
「生命は」 吉野 弘 生命は 自分自身だけでは完結できないように つくられているらしい 花も めしべとおしべが揃っているだけでは 不充分で 虫や風が訪れて めしべとおしべを仲立ちする 生命は その中に欠如を抱き それを他者から満たしてもらうのだ 世界は多分 他者の総和 しかし 互いに 欠如を満たすなどとは 知りもせず 知らされもせず ばらまかれている者同士 無関心でいられる間柄 ときに うとましく思うことさえも許されている間柄 そのように 世界がゆるやかに構成されているのは なぜ? 花が咲いている すぐ近くまで 虻 ( あぶ ) の姿をした他者が 光をまとって飛んできている 私も あるとき 誰かのための虻 ( あぶ ) だったろう あなたも あるとき 私のための風だったかもしれない **************** 3 月になって、 自分の心の中に何か新しいものが生まれているような気がする。 新しい入り口の前に立っている気がする。 ドンキホーテのラ ・ マンチャの男に、 「最も憎むべきは、 ありのままの人生に折り合いをつけて、 あるべき姿のために戦わぬことだ」 とある。 人は変わり続ける。 しかしながら、 現実の一面に打ちのめされて、 何もかもあきらめたりすることがある。 でも、 あたりをよ く見回してみると、 あなたを見守っている人がいたり、 あなたの成長を図ってくれる人がいたりする。 あなただけに会いたい人がい るかもしれない。 人は現実の一面だけで生きているのでなく、 多くの助けを得て生きている。 変わらない現実より変わらない自分 を意識するときほどむなしいことはない。 あなたがどこにようと、 そこがあなたの新しい入り口。 今日のことをよかったと思える未来 がきっとあなたを待っている。 新年度に向けて、 starting over しよう。 しっかり充電して 4 月を迎えましょう。『知の逆転』 (NHK 出版新書 395) ジャレド ・ ダイアモンド ( 著 ), ノーム ・ チョムスキー ( 著 ), オリバー ・ サックス ( 著 ), マービン ・ ミンスキー ( 著 ), トム ・ レイトン ( 著 ), ジェームズ ・ ワトソン ( 著 ), 吉成真由美 ( その他 ))、 304 ページ、 NHK 出版 (2012/12/6) ¥ 903 元 NHK のディレクターのサイエンスライターによる、 『文明の崩壊』 の著者ジャレド ・ ダイアモンドや言語学の 世界的第一人者チョムスキーなど6人の知の巨人たちへの質の高いインタビュー集 ・現在のように消費量の格差がある限り、世界は不安定なままです。 ですから安定した世界が生まれるためには、 生活水準がほぼ均一に向かう必要がある。 たとえば日本がモザンビークよりも 100 倍も豊かな国であるということがなくなり、 全 体の消費量が現在より下がる必要があります。 (p30) ・ 重要なことは先生と生徒の間のポジティブな関係だと思います。 そして、 もちろん情報を教えることも重要ですが、 最も生徒を 生き生きと興奮させるのは、 先生の情熱です。 たとえば私の生物の先生から何よりもわれわれ生徒に伝わってきたのは、 その 先生がいかに自然や動物が好きか、 どんなにそのことを話すのが楽しくて仕方がないかという彼の情熱でした。 (p156) ・ 本来、 人はみなそれぞれ異なっているのに、 同じだとみなさなければいけなくなってきている。 同時に、 あるもののほうが別の ものよりもいいという言い方は避けて通るようになってきてもいる。 だから、 どの花も全て同じように咲くんだという。 ごまかしです。 (p274) 『ほんとうの英語の冠詞の使い方』 デイビッド ・ セイン、 森田 修、 古正 佳緒里 ( 著 )、 166 ページ、 研究社 (2013/1/23)、 ¥ 1575 冠詞の参考書は山ほど出版されている。 本書は、 冠詞の意味合いを 「感覚的」 に身につけ、 そのルー ルを ( 暗記ではなく ) 直感的に判断しようと試みるものである。 以下の 3 つの文を 「冠詞のニュアンスを出して」 日本語に訳してみる。 1. John has a cat.
2. John has the cat. 3. John has cat.
1 は 「ジョンはネコを飼っている」 2 は 「ジョンはネコのほうを持っている」 3 は 「ジョンはネコ肉を持っている (?!!)」 こうした意味合いを教室でさっと簡単に説明すれば、 冠詞への抵抗感は少なくなるのではないか。 『英語のロジック』 ( 新潮新書 ) 一般社団法人 日本論理検定協会 ( 著 ) 、 224 ページ、 研究社 (2013/1/23)、 ¥ 1575 学校英語で世界と戦え ! と帯にある本書の 「はじめに」 には、 「ロジック力は論理力と訳されています。 論理というと難しい印象を持たれるかもしれません。 しかし、 難しく 考える必要はありません。 情報を切り取り、 つなぎ、 そして発信する。 この一連の活動を根底で支える考え 方一それがロジックです。 ロジックをこのように捉えると、 実はロジック力はコミュニケーション力だということが わかります。 コミュニケーションとは相手との情報のやりとりだからです。 ロジック力は能力というよりも技能です。 技能は訓練によっていくらでも伸ばすことができます。 実は、 私たちはすでにこのロジッ ク力という技能を、 頭の中のいろいろな引き出しに断片的に詰め込んでいます。 学校の各教科でこの技能を学んでいるからです。 ただ、 はっきりとした形で言語化し、 体系的に学んでいません。 引き出しに無造作に詰めこんであるだけです。 この知識を自分 のツールとして活用するためには、 体系的に整理する必要があります。 ただし、 この作業は、 単に頭の中で知識を整理するだけ では十分ではありません。 実例で繰り返し練習し、 知識の使い方を身につけることが必要です。 世の中には、一見もっともに思える大げさな議論が少なくありません。 このような議論に接したときこそ、ロジックの出番です。 ロジッ クを駆使して、 議論の本音の部分をえぐり出す必要があります。 そのためには、 まずロジックの使い方を習得しなければなりませ ん。 最近、 グローバル化の条件としてロジックの必要性を強調する意見を耳にします。 しかし、 ロジックの必要性の議論をしても、 習得方法の議論をしなければ、そこからは何も生まれません。合理的な訓練によってロジックの基礎力を鍛えることで、初めてロジッ クは自分のものになるのです。」
とあった。 「章単語ではなく構造」 「論証の評価」 「自分自身の論証の構築」 「ロジックの基本」 「ロジック力の測定」 「ロジックの学習」 がそ の内容である。 『英語はもっと科学的に学習しよう SLA( 第二言語習得論 ) からみた効果的学習法とは』 白井恭弘 ( 著 ) 、 207 ページ、 中経出版 (2013/1/31) ¥ 1,470 表紙カバーの裏に、 英語が使えない人の理由は 2 つ。 「やり方が間違っている、 効率が悪い」 ⇒ “学習法 " の問題 「学習にかける時間が不足している」 ⇒ “動機づけ ( モチベーション )" の問題 とある。 第4章は、 「SLA の観点から答える英語学習法 Q&A」 には 32 の質問があり、 それに答える形になっている。 たとえば、 「音読 は効果があるか」 には 「意味を考えながらの音読でないと効果が無い」 としている。 原則的なことをまとめているが、 少し具体例 を出して説明してあると現場の教員にはもっと分かりやすいものになるのではないかと思う。 『生きた英語表現を楽しく学ぶ絵辞典』 マイケル バートン、 Michael Barton、 マーク テーラー、 テーラー 幸恵 ( 著 ) 、 104 ページ、 東京書籍 (2013/1/31) ¥ 1.365 本書はもともと、 自閉症スペクトラム障害の人とその周りで彼を理解し、 支援しようとする人たち向けに英国 で作られたものである。彼らが英語のイディオムやさまざまな表現をどのように捉えているかを視覚化し、また、 どのように理解してもらうべきかを示している。 視覚的に英語特有のフレーズを理解しようとするものである。 教材提示機で生徒に見せたら生徒たち喜ぶ、 一目で理解すると 思われる。
It's raining cats and dogs. (It's raining really hard.) You're pulling my leg! (You're joking.)
He went bananas. (He went crazy.) I was over the moon. (I was very pleased.) It's a piece of cake. (It's really easy.)
You're burning the candle at both ends. (You're getting up early and going to bed late.)
などと 70 個の英語イディオムが、 ページごとにイディオム、 そのイディオムを文字通りに解釈した場合の滑稽な絵、 イディオムの 意味を説明する英文とのセットで紹介されている。
4 月
アスナロ 大竹 晃子 あすは檜になろう あすは檜になろう そう願っていたから アスナロという名が ついたのだという けれど アスナロは 檜にならなかった きっと 自分は自分のままで いいのだと気づいたのだろう ********* 新しい年度の始まりである。 未来を切り拓く瞬間でもある。 人は、 未来に何を求めているのだろうか。 人生という登山の道半ばであなたは、 今、 何を思っているのだろうか。 人には夢がある。 「心に深く抱いた夢は、 必ず実現する」 「強く願うならば、 その願いは、 必ず実現する」 と言う人がいる。 しかし、 果たしてそうだろうか。 願っても、 叶わない夢もある。 がんばっても実現しない願いもある。 思うようにいかず、 悩み、 苦しんでいる人もいる。 だからといって、 「夢」 はあきらめるものでない。 「夢」 や 「願い」 があるからこそ 人はがんばれるのだ。 人生においては 「成功」 がすべてではない。 「成功」 に向かう 「成長」 が、 人生という登山の目的ではないか。 「成長」 が目的であるから、 頂上に立つことが出来るのだ。 登り切る頂上は、 遙か先かもしれない。 今年はどこまで登っていけるだろう。 今の自分の位置を確かめて、 さあー新しい一歩をしっかりと踏み出そうではないか。 『アメリカ一日一言』 (NHK 出版新書 395) 大村数一 ( 著 ), 寺地五一 ( 著 )、 255 ページ、 ジャパンブック (2012/07) ¥ 1,575 1 年 365 日、 一日一つ、 アメリカの歴史に残り 、 生活の中に生きている言葉を掲載している。 会話の スパイスになるエピソードを英語教員としても知っておいたほうがよいだろう。 また、 時々教室で披露す るのもいいであろう。 ちなみに 4 月 4 日 (1968 年のこの日として ) Robert F. Kennedy キング牧師の暗殺を伝えるロバートケネディ
Ladies and Gentlemen, --- I have some---some very sad news for all of you--- Could you lower those signs, please? --- I have some very sad news for all of you, and, I think, sad news for all of our fellow citizens, and people who love peace all over the world; and that is that Martin Luther King was shot and was killed tonight in Memphis, Tennessee.
インディアナポリスで民主党の大統領候補指名選挙の演説を行おうとしていたロバートケネディが 、 飛び込んできたキング牧師 暗殺のニュースを聴衆に伝えた言葉である。 このあと彼は、 「私の兄も白人によって殺されました」 と語りながら 、 黒人と白人の融 和を呼びかける即席の演説をした。 この演説のおかげで、 他の 60 以上の年では暴動が起こったが 、 ここインディアナポリスでは 起こらなかった。 しかしながら、 わずか 2 ヶ月後このロバートが暗殺された。
4 月 14 日 リンカーン暗殺
有名俳優の John Wilkes Booth は南部連合の熱狂的支持者だった。
暗殺後、 シーザー暗殺のブルータス気取りで舞台に飛び上がって言った言葉 : Sic semper tyrannis! (Thus always to tyrants!) The south is avenged! ラテン語だった。 12 日後、 農家に潜んでいるところを発見され射殺された。
『異文化コミュニケーション論グローバル ・ マインドとローカル ・ アフェクト』 八代智子、 久保田真弓 ( 著 )、 320 ページ、 松柏社 ; A5 版 (2012/10/20)、 ¥ 1575 帯に、 「固定的な捉え方を超えて、 文化やコミュニケーションのダイナミクスに注目し 、 多文化を生きる力、 グローバル ・ マインドとローカル ・ アフェクトを提案する」 とある。 internationalization は、 国と国との関係が緊密になる状況、 globalization は経済や社会の活動が国家や地 域の境界を越えて地球規模に拡大していくことによって引き起こされる様々な現象と捉えている。 コラムに身 近な例を挙げて分かりやすく説明している。 「ピアノを弾いてその音色を You Tube にアップしたところ、 そ れを聞いたスイス人から連絡があり 、 メールのやりとりが始まった。 その後日本に遊びに来た」 「大手家電量販店では 、 中国人や 韓国人の店員が 、 中国や韓国からの観光客の対応をしている。 日本人職員も毎朝中国語の挨拶を練習する」 など、コラムに様々 な例を挙げて、身近な異文化との出会い必要な感性としてのローカル・アフェクトの大切さを伝えている。 アクティビティやディスカッ ションなどの差し込みが中学 ・ 高校の授業で使える活動であろう。 『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か』 ( 講談社現代新書 ) 平田オリザ ( 著 ) 、 232 ページ、 講談社 (2012/10/18)、 ¥ 777 近頃の若者に「コミュニケーション能力がない」というのは、本当なのか。 「子どもの気持ちがわからない」 というのは、 何が問題なのか。 いま、 本当に必要なこと。 現在、 企業が要求するコミュニケーション能力 とは、 「グローバル ・ コミュニケーション ・ スキル」 = 「異文化理解能力」。 つまり、 グローバルな経済環 境 の中においても価値観や文化が異なる人の意見を理解した上で、 自らの考えを主張して説得したり、 妥協点を見いだしたりすることができること」 と、劇作家であり 、 阪大のコミュニケーションデザインセンター 教授である著者は語る。 「対話」 する力はわかり合えないことから生まれる。 自然とわかり合ったりするも のでなく、 言葉を尽くしてもわかり合えないことを少しでもわかり合うようにする対話こそ、 今本当に必要なことと著者は述べている。 『This is a pen. からやり直す カンタン上達、 英語のツボ 』 ( じっぴコンパクト新書 ) 大山昌宏 ( 著 ) 、 208 ページ、 実業之日本社 (2013/3/14)、 ¥ 800 中学校の基本的な内容で、 理解できていそうで理解できていないポイントを押さえ、 ここが分かったら理解 が一気に深まるだろうと解説している。 後半やや公式的な説明の部分もあるが、 中学生に文法を教える際の ツボとして目を通しておくと役立つであろう。 『一生モノの英語勉強法―― 「理系的」 学習システムのすすめ 』 ( 祥伝社新書 312) 鎌田裕毅、 吉田明宏 ( 著 )、 280 ページ、 祥伝社 (2013/3/2)、 ¥ 861 「本書では、 英語の学習そのものを 「理系的」 に解体して、 効率的に上達するためのコツをわかりやすく提 示します。 つまずきの場所やステップアップの勘所をつかめば、 一生モノの英語力を身につけることができる のです」 を売りに英語の勉強法をあの人気京大教授が語っている。 理系的学習法というのかどうかは別として、 英語の勉強の仕方を著者の考えで整理している。
The man made for the exit. これはどのような意味か? make を作ると概念で縛っているとわからない。 前置 詞の意味合いとどう絡むのか 、 そうした構造的な理解も大切である。
『英語の感覚 ・ 日本語の感覚― “ことばの意味” のしくみ』 (NHK ブックス ) 池上嘉彦 ( 著 ) 、 249 ページ、 日本放送出版協会 (2006/08) ¥ 1,019
John showed Mary a photo. と John showed a photo to Mary. この 2 つの意味の差はどこにあるのか ? 一 見同じような英文でも、 場面や文脈によってニュアンスに差が出る。 認知言語学の視点から、 日本語との 比 較をふまえ、 文法書や辞書だけでは決してわからない、 英語の豊かな意味の世界に分け入る。 英語ら しさ ・ 日本語らしさといった、 言語に固有の感覚を明らかに しながら、 ダイナミックに変化することばの本 質を鮮やかに示すとある。
What did John show Mary? と Whom did John show a photo? に対する回答という意識がある。 言葉の本質を知ることは言語文化 を知ることで、 学びには欠かせない要素であると思う。
5 月
「記憶と記録」 谷川俊太郎 春こっちでは 水に流してしまった過去を あっちでは ごつい石に刻んでいる 記憶は浮気者 記録は律儀者 だがいずれ過去は負ける 現在に負ける 未来に負ける 忘れまいとしても 身内から遠ざかり 他人行儀に 後ろ姿しか見せてくれない ******* 人はよくこれまでのことにこだわる。 あの時こうだった。 過去のことを引きずって、 「やめておこう」 と思うことがある。 「やった方がいいのか」 「やらない方がいいのか」 自分の心の中で多数決してしまう。 それでは、 何もできないのではないか。 そんなふうに考えていたら、 「やった方がいい」 と思い巡らしたことまで、 最初から無かったことになってしまうことにならないか。 何かが始まったら、 終わるってことはない。 前へ進むだけだ。 前もって何が起こるかを知ることはできない。 それでも人は未来に希望を抱いて 進んでゆく。 トラブルがあるかもしれない。 でもそればかりでない。 いいこともある。 人生はその繰り返しである。 どんなことしても、 切り抜けて行かなくてはならない。 なんとでもなる。 人生の中でなんべんか生まれて来て良かったなあ と思うことがある。人はそのために生きている。 それで十分なんだ 『東日本大震災—3. 11 あの日を忘れないでほしいー』 土木学会誌編集委員会 ( 編 )、 588 ページ、 丸善株式会社、 3,990 円 責任編集者の坂井康人君は、 直接教えたことはないが N 高校での教え子のひとりである。 現在、 阪神高速道路株式会社に 勤務する。 毎日遅くまで働く彼の姿は FACEBOOK で知ることができる。 さて、 この書籍は土木学会が 2014 年に創立 100 周年になることを記念して出版されたものである。いわゆるジャーナリストが震災を綴っ たものでない。 土木・建設関係の学者や建設会社の人々、 被災地の市長村の関係者、 被災地域の人々 らがその人達の観点ら見た、 復旧から復興への取組をまとめている。 初動体制から応急復旧にどう取り 組んだか 、 建設会社の現地支援、 岩手 ・ 宮城 ・ 福島三県の復興状況やこれからの土木を見据えた社 会基盤施設の復旧 ・ 復古のあり方など、 「現場の生の声」 を拾い集め記録としてまとめている。 書店に は並ばない東日本大震災の復興を捉えた1冊である。 阪神大震災も途方もない災害であったが、 東日本大震災は津波の襲来により広範囲にわたった大災害となった。 遺体捜索中 のなか、 津波で吹き飛ばされた三陸鉄道の橋梁、 市街地に乗り上げた状態の船や無残にも積み上げられた瓦礫、 更に散乱した 衣服や写真アルバム、 一瞬に壊滅した状況を目の当たりにして言葉を失ったと 4 月に現地に入った坂井君はあとがきに書いてい る。 東日本大震災が、 甚大な津波、 地震による災害とともに、 福島原発事故による放射能汚染という目に見えないものとの戦い と災害の性格が異なるものへの対応の困難さを指摘している。 震災後 2 年、震災のことの風化が懸念されるなか、現地でまだ戦っ ている人々に思いを馳せ、 震災を忘れないためにも、 またこれからの対応を考えるためにもまとめた記録誌と綴っている。 『言葉と発想』 ( 放送大学教材 ) 伊藤笏康 ( 著 )、 294 ページ、 放送大学教育振興会 (2011/03) ¥ 3,150 「言葉がわかる」ということはどういうことなのか、それが放送大学のテキストでもある本書の出発点である。 言葉を見つめる目として、 仕事言語と生活言語からはじまり、 話し言葉と書き言葉のそれぞれの有用性 を捉えることで、 言語とは何かを根本的に考えさせようとしている。 国際共通語である英語を話せるように という一方的な方向に流れるのでなく、 英語という言語持っている言葉の捉え方をしっかり知ることによっ て、 「言葉がわかる」 という実感を持たせようと、 英文法の概念を解説している。 良書である。 『コミュニケーション学―その展望と視点』 末田清子、 福田浩子 ( 著 )、 203 ページ、 松柏社 (2003/04)、 ¥ 1,995 本書は 10 年前の放送大学のテキストである。 高等学校では、 「英語の授業は英語で」 と本年度から 学習指導要領が施行された。 まず英語を話すことありきから 、 議論が始まっているが、 コミュニケーション そのものに対する概念をしっかり認識せずに 「英語の授業は英語で」 ということに流れていくことに、 そ の効果に対し懸念を抱く。 本書は、 「コミュニケーションとは何か」 「コミュニケーションとニーズ」 「コミュ ニケーションの 4 つの視点」 「文化に対する視点の多様化」 「言語コミュニケーション (1) (2) (3)」 「言 語と文化の相互作用」 「コミュニケーションの場と背景」 「非言語コミュニケーション」 「コミュニケーション の実践」 と幅広くコミュニケーションをとらえ、 その重要性を説いている。 『心理学の本』 ( 講談社現代新書 ) 渋谷昌三 ( 著 ) 、 319 ページ、 西東社 (2009/11)、 ¥ 1,365 本書の構成は2ページで一つの表題が完結していて、 右ページには大まかなあらすじ、 左ページにはま とめの図があり、 重要用語は太線で記述されている。 心理学のことをあまり知らない初心者が、 浅く広い知 識を得ることができる書籍である。 教職という仕事は時に精神的なストレスを感じたり、 生徒のことで悩んだり することの多い職業である。 気持ち、 性格、 考え方、 記憶力、 心の病…人それぞれに異なる心の世界を 知ることを通して、 自分の気持ちの切り替えや、 そうなのかと気を楽にすることができる気軽に読める一冊で ある。
『英語で人生を変える』 ( じっぴコンパクト新書 )
三浦 哲 ( 著 ) 、 175 ページ、 サンマーク (2007/9/18)、 ¥ 1500
「生きた言葉の力をもつ英文を集めた」 と著者は述べている。 先生の中には教室に名言を週単位で掲示さ れている方も多いと思う。 日本文よりも、 時に英文がその明確な表現で潜在意識の奥の奥までしみこむ時が ある。
Without a sense of urgency, desire loses its value. Jim Rohn
ポイントはこの “desire” ——言い言葉だ。 “wish” や “hope” だと少し弱い感じがする。 「一刻も早く手に入れたい」 そういう喉 の渇きにも似た感覚が “desire”。 身体の細胞すべてがそれを星買っているような渇望間のことだ。 この感覚を呼び起こしたかった ら、「達成したいこと」 に 「期限」 をつけてみよう。 「今すぐ!」 の感覚を出すことで 、 心から 「やりたい!」 という気持ちが高まる。 そして 、 この気持ちであなたの身体の中を満たすと 、 それを手に入れるためにやるべきことが、 自然と目の前に表れてくる。 こうした英語語句の解説も分かりやすくてよい。 先生自身が気の滅入っているときなどに読んでも言い。 暗唱用文例にほどよい金 言 ・ 格言を付録のCDを聴いて、 今日のひと言英文と教室で紹介してもよい。
6 月
へただけど 新川 和江 「いつもどこかで」 より なんでも なんでも へただけど リンゴをむくのが じょうずな子 すてきよ すてき すてきです。 この世の しあわせ きみのもの なんでも なんでも へただけど さかだちするのが とくいな子 すてきよ すてき すてきです 地球を どんと 持ちあげて なんでも なんでも へただけど おへんじ 「はい」 とあかるい子 すてきよ すてき すてきです 世界が きみを 呼んでいる ******* 「一生に一度も転んだことのない人間は、 いないんですよ。」 と、 『帰りこぬ風』 で三浦綾子が述べている。 今ひとつ調子が出ず、 やっきになってもうまくいかず、 自分はダメなんじゃないかなと思うことがある。 くじけそうになるときもある。 一人じゃどうしようもないと思うこともあるだろう。 でも、 人は始めから一人なのだ。 だからこそ、 他の人にはない自分だけが持っている輝きがある。 ただ、 その輝きが自分には見えない。 または、 原石のまま埋もれてしまっているのかもしれない。 これまで自分のスタイルでやってきたけど、 ひょっとして、そのスタイルを変えないとうまくいかないかもしれない。 春学期の折り返し地点、 もう一度自分のスタイルを見直して、 走ってゆこう。 何度転ぶことがあっても、 起ち上がって走り続けよう。 君の心臓はそのたびに強くなり、 また、 走り方を工夫するようになるだろう。 額に汗しながら走る君の姿を見て、 僕は君にこう声をかけよう。 「すてきだ すてき すてきです!」 『学力幻想』 ( ちくま新書 ) 小玉 重夫 (著)、 221 ページ、 筑摩書房 (2013/5/7)、 798 円 「ゆとり教育による学力低下批判の出所は、 経済産業省であり、 省庁間ヘゲモニー抗争での文科省バッシ ングである」 とのっけに書かれている。 各教科の学力低下の元凶と 「総合的な学習の時間」 がやり玉に挙げ られたが、 今求められている活用型の授業の原点は、 ゆとり教育推進に生まれたこの 「総合的な学習の時間」 である。 これは自分で考え手課題などを設定し、 リサーチしたりして学ぶ時間である。 考える力が要る授業で ある。 「総合的な学習の時間」 という総合学習は減らして世論のバッシングをうまくかわして、 思考力 ・ 判断力 ・ 表現力の育成を各教科に課したのである。 また、 この 「総合的な学習の時間」 は学力格差を生んだとされている。 親が指導し たり、 インターネットの扱える環境がある子どもなどは学力が伸びたが、 不十分な環境の子どもは差が付いたとあった。 衝撃的な 発言にびっくりしながら、 「学力幻想」 は子ども中心主義、 やればできるとおもうことにあるとしている。 授業は、 「受業」 になって はいけないという観点からだけで、 教育を見るのではないとしている。 「学びの社会性」 「教えの公共性」 など教育の本質を見て いくことが必要である。 『英対話力 コミュニケーションで出会うあたらしい自分』 宮永國子 (著)、 198 ページ、 青土社 (2013/4/24)、 1,470 円 帯に、 「TOEIC では測れない本当の英語力のために―人類学者にしてライシャワー研究所 ( ハーバー ド大 ) 研究員、 英語塾も経営する著者が教える、 英語でいちばん大切なこと & 最先端の発想法」 とある。 最初にアメリカでのエピソードを語っている。 ハンバーガーショップでレジ前で並んでいたとき、 2 番目に 並んでいたが、 となりのレジが空いたのでそちらへまわったら、 Ⅰ番目に待っていた女性が、 I'm first. と割 り込んできた。 並んでいた列のレジ係がなにかの都合で離れ closed になったからであった。 事態に気がつ いたので彼女に順を譲るが、それでも怒りの顔はおさまらない。 このままで不愉快と思い、彼女にこう告げた。
日本人 : “I said sorry. I did not mean it.” 女性 : (silence.)
日本人 : “Why are you looking at me? Any more problems?” 女性 : “Problems? How dare you ask me?”
日本人 : “I know what you are thinking. But as I said, I didn't mean it. I could not catch what they were talking to each other. That's why I …”
女性 : “Oh my Gosh! Crazy!” と言ったきり怒って帰って行きました。
『コミュニケイションのレッスン』 鴻上尚史 (著)、 288 ページ、 大和書房 (2013/5/19)、 1,575 円 「コミュニケイションは技術」 という視点から、 どうやったら、 あなたのコミュニケイションのレベルが向上す るかを伝え、 練習方法をアドバイスした本です。 30 年間、 演出家をやりながら、 ずっとコミュニケイションに 関して考え、 実践してきたことをまとめたと著者は述べている。 冒頭に 「世間」 と 「社会」 の概念の違いをもとに日本人と西洋人のコミュニケーションの取り方の違いを 解説していることを読んで、 ちょっと読みたくなって立ち読みから購入した。 「世間」 とは、 あなたと利害 ・ 人間関係があるか、 将来、 利害 ・ 人間関係が生まれる可能性がある人たちのこと。 一方、 「社会」 とは。 今現在、 あなたと何の 関係もなく、 将来も関係が生まれる可能性が低い人たちのこと、 とし、 日本人は 「世間」 は気にして話したりするが、 「社会」 と なると無関心になり、 公共の空間では相手とは無関係な世界に入り込む。 電車の中で化粧をする、 年配の方に気を遣わないな ど、 「社会」 にいると思えば気にならなくなるという傾向がある。 西洋では 「社会」 しか存在しない。 コミュニケーションはそうした ことも考えて取り扱うべきである。 『ビジュアル 1001 の出来事でわかる世界史』 ダン・オツール ( 著 ) ナショナルジオグラフィック (編)、420 ページ、日経ナショナルジオグラフィッ ク社 (2012/2/23)、 ¥ 3,990 帯に「人類の起源から 2011 年まで―1001 の出来事で世界がわかる。ほかに類をみない歴史書。 世界史を 7 つの年代に分け、 さらにオリジナル年表で時代の概観を一目瞭然に把握。 376 点の 写真と図版。 「腕時計は誰が発明したか ?」 「最初の地図は ?」 どこからでも読める話題が満載」 とある。 ■世界史の歩みを 7 章に分け、 各章毎に 4 ページの概説と詳細な年表を加え、 歴史の流れを概観。 2011 年の東日本大震災 を追加。 ■年代順に配列した 1001 項目の解説により、 数千年の歴史的な出来事を要約。 ■ 373 枚の写真、 図版を掲載。 ■ 336 点の 「補注」 で、 出来事に関する追加情報を提供。 ■ 20 点の 「もっと詳しく」 コラムで、 見開きの図版を使ってビジュアルに解説。 ■ 41 点の 「歴史の断面」 コラムで、 一連の出来事の関係を解説。 ■ 48 点の 「歴史の一節から」 コラムで、 歴史上の人物の記録や文学作品を紹介。 している。分厚くて、オールカラー。色鮮やかな絵や写真が満載。科学技術や文化的な偉業を高く評価する傾向がある。日本の「源 氏物語」 が絶賛されているところや、 「歌舞伎の始まり」 もある。 教員の一般教養として読む価値のある書籍である。 『ピュリツァー賞 受賞写真 全記録』 ハル ・ ビュエル ( 著 ) ナショナルジオグラフィック (編)、 320 ページ、 日経ナショナルジオグ ラフィック社 (2011/12/15)、 ¥ 3,990 本書の帯に、 「アメリカで最も権威ある賞のひとつ、 ピュリツァー賞。 最初の受賞写真は、 自 動車工場でのストライキを写したものだった。 その後 70 年間に受賞作が伝えたのは、 ベトナム 戦争、 冷戦、 アフリカの紛争、 イラク、 アフガニスタン、 噴火、 地震、 津波。 写真家が全身 全霊をかけて切り取った 1 枚の写真に、 時代のすべてが映し出されている。」 とある。 < 収録内容 > 第一期 (1942-1961 年 ) 大判カメラの初期とピュリツァー賞受賞作品 第二期 (1962-1969 年 ) カメラの小型化、 ベトナム戦争と公民権運動 第三期 (1970-1980 年 ) 新たな賞、 特集写真部門の創設 第四期 (1981-2002 年 ) カラー写真、 デジタル化、 女性写真家、 アフリカ 第五期 (2003-2011 年 ) デジタル革命 写真から何かを表現させたり、 背景知識の補助資料になったりする。 三省堂の中学校の教科書にある、 「はげわしと少女」 を撮 影したケビン ・ カーターの最後はちょっと悲しい。 写真をじっくりと読む本である。
7月
夕立のあと 新川 和江 夕立あとの 空のような 明るい心に なりませう 夕立あとの 雲のような 大きなのぞみを 持ちませう 夕立あとの 風のような すがしい夢を 抱きませう 夕立あとの 虹のような 美しい娘に そだちませう ******* 何をすれば、 違う自分になれるのだろうか。 宮澤賢治の 「よだかの星」 では、 よだかは、 美しいはちすずめやかわせみの兄でありながら、 容姿が醜く不格好なゆえに鳥の仲間から嫌われ、 鷹からも 「たか」 の名前を使うなと改名を強要される。 自分が生きるためにたくさんの虫の命を食べるために奪っていることを 嫌悪して、 彼はついに生きることに絶望し、 太陽へ向かって飛びながら、 焼け死んでもいいからあなたの所へ行かせて下さいと願う。 太陽に、 お前は夜の鳥だから星に頼んでごらんと言われて、 星々にその願いを叶えてもらおうとするが、 相手にされない。 居場所を失い、 命をかけて夜空を飛び続けたよだかは、 いつしか青白く燃え上がる 「よだかの星」 となり、 今でも夜空で燃える存在となる。 とても美しい話だが、 命をかけて無理をしなければいけないのだろうか。 懸命にやる必要はあっても、 無理をすれば叶うと思うのは幻想だろう。 それよりも、 空のような明るい気持ちをもって 夕立のあとの雲のように 自分が変われる部分、 伸びていける部分をしっかり知って、 自分の目標に向かって行ければいい。 違う人間にはなれない。でも、 成長した自分にはなれる。 それで充分だ。
『学校では教えてくれなかった英語 「ごちそうさま」 を英語で言えますか ?』 ディビッド ・ セイン ( 著 ) 、 252 ページ、 アスコム (2013/3/22)、 ¥ 1,000
「ごちそうさま」 は英語で何と言うでしょうか。 “I finish eating.” でいいかな。 何でもかんでも日本語を直訳 する癖が抜けません。 日本文化と英語文化の違いがあります。 “That was delicious!” と表現すれば、 相手 の方も喜んでくれます。 いつもならではのセイン流の通勤での英語用法の読み物として、 頭の体操になる。 他にも、 「行ってきます」 「おかえりなさい」 「とりあえず、 ビール ! 」 「おかわり ! 」 「割り勘にしよう」 「おかまいなく」 「お先にどうぞ」 「これ、 ほんの気持ちです」 読むだけで楽しめる。 『ニッポンには対話がない―学びとコミュニケーションの再生』 北川達夫 ・ 平田オリザ (著)、 207 ページ、 三省堂 (2008/04)、 1,575 円 帯に、『大切で美しいメッセージでも、対話のプロセスがなければ、人を説得する力は生まれない。「違い」 を前提として互いの考えを粘り強くすり合わせていく対話の発想を軸に、 気鋭 ・ 奇才のふたりが、 教育と 社会の再生を語り合う』 とある。 同調性が強い日本の社会では、 教え込んで画一化した答えを求めがち である。 日本人は、 精神性を重んじ、 武道に代表されるように 「型」 を大切にしてきた。 統一された価 値観を持つこと学びやすいことであるが、 異質な価値観とのコミュニケーションが苦手になるという結果ももたらす。 世界の中での 日本は 、 わかり合えないこと前提に 、 だからこそ様々な考えや意見と対話することが必要なのであろう。 これから何年か先、 今よ り密度の濃い多民族国家に日本もなっているかもしれない。 わかり合うコミュニケーション、 察するコミュニケーションでは、 対話に はならないであろう。 コミュニケーションを教える英語科教員として必読の書である。 『使える学力 使えない学力』 田中保成 (著)、 216 ページ、 ディスカヴァー ・ トゥエンティワン (2009/3/15)、 1,050 円 帯に、 「自由作文の宿題が出たのだが、 子どもが 1 行も書けずに困っている、 という相談をよく聞きます。 学校では、読解ほどは 『書く技術』 『話す技術』 を教えてくれないのだろうか ?」 とある。 今、求められている 「思 考力 ・ 判断力 ・ 表現力の育成」 におおいに示唆となる書籍である。 「自分の考えをまとめ、 人にわかりやす く伝える」 という高度なスキル、 具体的には、 1 十分な語彙を持ち、 2 目の前の事柄を思考 ・ 判断して、 3 自分の考えを筋道立 てて話す ( 書く ) であると 、 分かりやすく説明している。
Input からすぐに Output というプロセスは無理である。そこに Intake という段階が入る。思考のプロセスである。これが生徒にとっ ては learning であり、 教師にとっては teaching の段階である。 その考えるという作業をどうしどうするか、 我々教員の一番の仕事 である。 『日本人のための教養ある英会話』 CD 付 クリストファー ・ ベルトン (著)、 285 ページ、 ディーエイチシー (2012/6/8)、 1,995 円 帯には、 「幅広い知識と教養を英語で吸収する。 スマートシティ、 党議拘束、 冤罪と刑事司法、 食糧難、 アルツハイマー、 ターミナルケア、 夫婦別姓、 ルネサンス、 テロ撲滅、 動物の権利、 宇宙開発、 経済成長 と豊かさの矛盾…国際人として知っておきたい 40 テーマを厳選」 とあり、 購入した。 グローバル人材育成と
世間はやかましい。 単に書かれてあることの fact を回答する fact-finding の質問をしたり、 information gap レベルの会話をしたり することで、 国際人になれるものでない。 knowledge や wisdom をもとに intellectual なやりとりができることが求められる。 それに は 、 幅広い知識や見識が必要である。 global 人材の育成は英語科だけで考える問題ではない。 リスニングだけで理解するのは やや難しいが、 知的レベルのある教材として活用できるであろう。 日本語ででもこのようなレベルの内容はしないであろう。 そこに 知的好奇心がうずく。 『すぐに役立つ ! 365 日の英語授業づくりガイドブック 授業の基本 ・ 文法指導編』 笹達一郎 ( 著 )、 132 ページ、 明治図書出版 (2012/7/13) ¥ 2,268 週 4 時間となる英語授業で押えておきたいポイントを、 実物ワークシートとともに詳しく解説したガイドブッ ク。 本書では、 語彙やノート指導、 板書、 家庭学習指導、 教科書の扱い方、 テストなどの授業の基礎基本、 生徒指導、 文法指導など、 中学校英語科教員向けの書籍である。 ★授業の基本 ・ 文法指導編★ 授業の基本編 (1) 単語, 語彙 (2) 辞書の活用 (3) 予習 (4) 板書 (5) ノート (6) 復習 ・ 宿題 (7) 教科書の扱いについて (8) テスト (9) ルーティン化の効用 生徒指導編 (1) 英語授業の生徒指導について考える (2) 学ぶルールを身につけさせるために―ちゃんと授業を受けられるようにするために― (3) 学ぶ意欲をもたせるために―やる気をもって授業を受けさせるために― (4) 「やる気をもってちゃんと授業を受けられる」, その先 (の先) へ 文法指導編 (1) 中学生に文法を説明することは難しい (2) ワークシートによる文法説明の 「落とし穴」 (3) 授業中のドリルをどうするか (4) 「楽しい文法説明」 は可能か (5) 英語授業の新しいスタンダードを目指して
8月
草 はたち よしこ 草の背中を みた 風に はげしく ゆれ 倒れても 立ち上がろうとする 草の背中を みた 梅雨あけの まぶしい 夏空の日に******* 前期が終わる。 思っていたとおりの日々を過ごせただろうか。 何かに迷いこんで、 道が分からないと思っている人はいないだろうか。 同じゴールをめざしているはずなのに、 自分と他の人とのペースがあまりにも違って、 そんな思いが焦りになったりして、 道に迷ったりしていないだろうか。 子どもの頃漫画で読んだ迷路の原則、 「どんな複雑な迷路でも、 壁から手を離さずに進んでいけば、 きっと抜けられる。」 行き止まりに同じ道を戻ることになっても、 時間はかかるが必ず出口にでられる。 なるほどと思い、 迷路は恐れるに足らずと考えた。 大人になってよく考えてみると、 人生の目的 ・ ゴールは人によって異なるのだ、 だから、 人生の迷路は、 人によって異なる。 何も他の人と自分を比べることはないのだ。 急激に変化するグローバル化時代の社会は、 「変われ」 「素早く」 と迫ってくる。 そのことばに囚われていると、 他人の作った迷路に入り込む。 自分の人生という迷路を歩むだけで充分なのだ。 (なかい) 『先生!』 ( 岩波新書 ) 池上彰 ( 編 ) 、 272 ページ、 岩波書店 (2013/7/20)、 861 円 たまたま、 書店に飛び込んで見つけた最新刊本。 「先生 !」 ―― 〈この言葉から喚起されるエピソードを自 由に書いてください〉。 池上彰さんの呼びかけに、学校現場で教えている人、作家、医師、職人、タレントなど、 各界で活躍の 27 名が応えた。 池上氏がエッセイ執筆依頼をお願いした呼びかけ文が前書きにあった。 教育現場をめぐっては、このところ心痛む事件が相次いでいます。事件を受けての学校や先生、教育委員会、首長の対応にも首を傾げることが多く、 一段と情けない思いが募っています。 こうした状況もひとつの原因なのでしょうが、 安倍政権は 「教育再生会議」 を再開させました。 でも、 この名称に、 私はひっかかるのです。 「再生」 と銘打つということは、 いまの教育が 「死んでいる」 と決めつけているようにも思えるからです。 それは、 本当でしょうか。 海外と日本の教育現場を見てきた私からすると、 日本の教育レベルは、 まだまだ世界に誇っていいことがたくさんあると思 うのです。 まだまだ日本の教育は死んでいないと思うのです。 それは 「学力」 に関しても同じです。 「学力」 とは何かを考えることなく、 安易に 「学 力低下」 という言葉を使ってほしくないと思ってしまいます。 おっと、 思わず悲憤懐慨してしまいました。 日本の教育が厳しい状況になっていることは確かでしょうが、 現場の先生たちの頑張りで、 かろうじて高いレベルを維持できているのも事実です。 そんな先生への期待が高いがゆえに、 先生への批判も高まるのでしょう。 先生への批判は、 高い期待の裏返しでもあると思うのです。 そんな先生たちを励ます本を世に出したい。 これが、 私と編集部の共通の認識です。 この本のタイトルは 『先生 !』 です。 「先生 !」 と呼びかける のは、 生徒の立場からでしょうか、 保護者の立場からでしょうか、 同僚の先生の立場からでしょうか、 あるいは、 自分自身に向かってでしょうか…。 いろんな思いの詰まった本ができれば、 こんなにうれしいことはありません。 この本の企画を、編集部は 「冒険に出る」 と表現しました。 きっと、私を編者にしてしまったことが 「冒険」 なのでしょう。 どうせなら、あなたも、この 「冒 険」 に参加してくださいませんか。 素敵なエッセイをお待ちしています。 【執筆者】 太田光、 押切もえ、 しりあがり寿、 乙武洋匡、 天野篤、 平田オリザ、 山口香、 パックン、 武田美穂、 武富健治、
鈴木邦男、 山口絵理子、 関口光太郎、 鈴木翔ほか
“The Strategy Factor in Successful Language Learning (Second Language Acquisition)” Carrol Griffiths( 著 ) )、 220 ページ、 Multilingual Matters (2013/5/15) ¥4,561
本 書 の 表 紙 裏 の 内 容 紹 介 に は、 This book addresses fundamental questions regarding the relationships between successful language learning and strategy use and development according to learner, situational or target variables. It considers strategy effectiveness from an individual point of view and discusses pedagogical issues, especially relating to teacher perceptions and training, classroom and learner factors, methodology and content. The book begins by discussing underlying theoretical
issues and then presents evidence from empirical studies; in addition to presenting a quantitative view, the book also takes a qualitative look at strategy use by individuals. Rather than focusing on strategies divorced from the "real world" of the classroom, this book explores the issues from the teaching/learning point of view. とある。
イントロダクションとして、 A personal perspective にあるように the potential of strategies to enhance learning がその出発点である。
『知的文章とプレゼンテーション―日本語の場合、 英語の場合』 ( 中公新書 ) 黒木登志夫 (著)、 242 ページ、 中央公論新社 (2011/04)、 840 円 帯に、 「40 年にわたって論文執筆と審査に携わってきたがん研究者が、 卒業論文から学会発表まで、 説 得力あるドキュメントと惹きつけるプレゼンテーションの極意を指南する。 文系、 理系を問わず、 知的三原 則 “簡潔 ・ 明解 ・ 論理的” がその秘訣。 三原則にしたがって論文、 申請書をどう書くかを具体的に説明 する。 グローバル化が進む 21 世紀、 英語とのつきあい方、 学び方についても実践的に説く。 待望の知的 表現力講座開講」 とある。 第二章の日本語は非論理的かでは、 「雨にも負けず」 の詩を用いながら、 その英語訳の苦労話を元 に、 日本語の主語を省く表現の妙味を語っている. 第 7 章の英語の世紀を生きるはなかなか見識ある著者の考え方が次々に繰 り広げられている。 理系の人が読むだけでなく 、 英語教員にとっても示唆的である。 『よくわかるコミュニケーション学』 ( やわらかアカデミズム ・ わかるシリーズ ) 板場良久、 池田理知子 (著)、 201 ページ、 ミネルヴァ書房 (2011/04)、 2,625 円 コミュニケーションを豊かにすることは、 伝え合うスキルを磨くことを必ずしも意味しない。 個人や集団、 国家などの様々な次元においては、 話し合えば話し合うほど、 わかり合えないという事態に陥ることもある。 わかり合うためのコミュニケーションでなく、わかり合えないからコミュニケーションをする。 伝え合えないコミュ ニケーションはいけないのか。 そうしたことからコミュニケーションをとらえていく必要があるだろう。 広く深く コミュニケーションを考えるための基本的なことを示している。 Ⅰ コミュニケーションという力 Ⅱ メディア Ⅲ 個人 ・ 家族 Ⅳ ジェンダー ・ セクシュアリティ Ⅴ 文 化 Ⅵ 記号の力 Ⅶ 教 育 Ⅷ 精 神 Ⅸ 社会思想としてのコミュニケーション
『The Debatabase Book: A Must-Have Guide for Successful Debate』
International Debate Education Association (著)、 227 ページ、 Intl Debate Education Assn; 5 版 (2011/03)、 3,020 円
私自身は学生時代 ESS のディベーターで、 京都の大会や西日本の大会で鍛えられ、 以来 debate 的な発想、 判断力の速さなどを大切にしている。 その際 、 何について考えるか適切な論題リストがある と、 その訓練ができる。 本書は、 各種幅広いテーマについての Pro/Con の意見がわかりやすく載っ ている。 本来は native 用に編纂されたものだが、 外国語として英語を教える際の教材準備にも役立
つ。 そのまま教材として提示し 、 論点などをまとめさせる作業を行うことで、 生徒の思考を育成することができるのではと思う。 This book provides background, arguments and resources on over 130 debate topics in areas as diverse as business, science and technology, environment, politics, religion, culture and education. All topics have been updated and new topics added for this edition. 『英文法の魅力 - 日本人の知っておきたい 105 のコツ』 中公新書 里中哲彦 ( 著 ) 、 212 ページ、 中央公論新社 (2012/5/24)、 ¥ 777 帯には、「英語の骨格を身につけよう」 とある。 してその解説に、日本人にはなかなかピンとこない、ネイティヴ・ スピーカーの感覚。 なぜ仮定法は過去形を使うの ? 「あのね」 「ノッてる ?」 「クール ・ ビズ」 を英語でいう と ? 英文法についての105の質問・疑問を、「語源」 「語彙」 「語感」 「語法」 「語義」 「誤解」 の六つのカテゴリー に分けて回答しである。 文法の秘密をひもとけば、 奥深い英語の文化が見えてくる。 こなれた英語、 ツウな英 語を身につけたい人必見の一冊。 前著 『英語の質問箱』 の続編である。 ジャンルを6つ (語源、 語彙、 語感、 語法、 語義、 誤解) に分類している。 左ペー ジの最初に読者からの短めの 「質問」 があり、 その後に著者の 「答え」 が続く構成となっている。” I'm the coffee.” の解説は、 ネイティブにそのとおりなのか訊いてみたいと思った。 『いちばんやさしい教える技術』 向後千春 ( 著 )、 192 ページ、 永岡書店 (2012/4/16)、 ¥ 1,050 現在、 和歌山の那賀高校の加藤先生教えていただいた一冊である。 学校の先生だけでなく、 ビジネスマ ンの上司として指導する人のためのスキル本である。 教員は、 往々にして 「教えたつもり」 になっているこ とが多くないだろうか. それを解消することをねらいとしている。 1章 : 「おしえること」 を学ぶ前に知っておきたいこと 2章 : 「おしえる」 ってどういうこと 3 章 : あなたの 「教えたいこと」 はどのパターン? 4章 : 押さえておきたい 「教える」 の基本 5 章 : 学ぶ人を納得させる教え方 6 章 : 相手に理想的な態度を教えたいときは で構成されている。
9月
駅 高田 敏子 夏休みを積みこんで 汽車は行ってしまった がらんとした駅のホームには カンナの花ばかり赤く 少女は耳をすまして 次に運ばれてくるものを 待っている 山すそのあたりに汽笛が鳴り 新しい季節が近づいてきた 少女たちは いつもこうして 何かを待ちつづける******* 長い人生の中で、 人は何度も旅をする。 今いるところの居心地が悪いからではない。 行ったことのないところへの あこがれが人を動かす。 普段の生活とは異なる世界があること、 そこに人が生きていること、 自分とは異なる、 確かな生き方をしている人がいることを 確認してみたい。 そんなふうに思うからであろう。 9 月はじめに、 被災地を訪ねてみる。 新島八重で注目の福島会津若松、 「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」 で有名な立石寺 ( 山寺 )、 そして娘が支援活動をしている南三陸町、 女川町へと。 娘のボランティア活動のお礼にとたくさんの海産物が南三陸志津町の漁師さんから届く。 胸に迫るものがある。 被災地の一部であるが、 テレビの画面でなく、 この目に直接焼き付けたい。 それは震災後ずっと思っていたことである。 芭蕉の奥の細道を少したどる旅でもある。 芭蕉のように、 旅を住処とする漂泊の思いも味わってみたい。 あこがれや想いを遂げることが目的地ではない。 旅することそのものが求道であり、 旅で得る感動や喜びが一つ一つ大切なかけらになって 心を満たしてゆく。 (なかい) 『英語教育、 迫り来る破綻』 ( 岩波新書 ) 大津由紀雄、 江利川春雄、 斎藤兆、 鳥飼久美子 ( 著 ) 、 184 ページ、 ひつじ書房 (2013/7/5)、 1000 円 5 月 1 日付け朝日新聞の 「争論」 での論争は記憶に残っている。 自民党が大学入試に TOEFL を導入と言いだして、 争論を巻き起こした。 提案者の自民党の遠藤氏の主張は、 必要とする理由 : necessity, うまく機能するという信頼性妥当性 : reliability, validity に欠けた感情論のように思われる。 「6 年間英語を習っても、 英語が話せないから」 がその理由の一つであった。 自分が会議の前の挨拶くらいのことばを話せな いのは、 ご本人が生徒の時に邪魔くさいと思ってそちらの方を軽視していたからでないでしょうかと言いたい。 おじさんが習った英 語の授業と今の英語の授業はかなり異なる。 この議論、 平泉 ・ 渡部論争と似たり寄ったりかもしれない。 ただ、 あの時の渡部さ んより江利川さんの方が、 筋が通っているように思える。 黒船理論で何かをぶつければ、 日本は変わるというのは旧日本軍の戦 略思想と同じで、 敵の背後に回るという旧来の戦法を金科玉条のように信じて同じ行動に出るという発想と変わりはない。 精神論・ 感情論でこのグローバルの時代うまくいくわけがない。 本書背表紙には、 「大学の入試や卒業要件に TOEFL 等の外部検定試験を導入する案が、 自民党教育再生実行本部や政府 の教育再生実行会議によって提案された。 しかし、もしそれが現実となれば、学校英語教育が破綻するのは火を見るよりも明らか。 危機感を持った 4 人が、 反論と逆提案に立ち上がった……。」 とある。
『世界のエリートが学んできた 「自分で考える力」 の授業』
狩野みき ( 著 )、 222 ページ、 日本実業出版社 (2013/6/22)、 ¥1,470
自分なりの答えを出すこと、 想定外の事態で新たなシナリオを見つけ出すこと、 意見に説得力を持たせる こと、 いずれも 「きちんと考える」 ことができなければ、 うまくはいかない。 本書はそのための 「考え抜く力」 伝授すると述べている。
自分の意見を作るための考える手順は、 Step 1 理解を広める→ Step 2 視野を広げる→ Step 3 未来から、
より現実的なアクションを考える→ Step 4 「意見」 ができる→ Step 5 批評・反論を自分のものにして意見を磨き上げる としている。 目次は以下のとおりである。 Lesson 1 「自分の意見」 の作り方―なぜ、 私たちは 「想定外」 に弱いのか Lesson 2 理解を深める― 「事実らしきもの」 を前に考えをとめない Lesson 3 視点を増やして発想を広げる Lesson 4 未来のシナリオで現実的な選択肢を手に入れる Lesson 5 上手に 「意見を交換する」 ために欧米人が持っているルール Last Lesson 「?」 に気づくことが 「考え」 のはじまり
『a big a cheese は 「大きなチーズ」 ではありません』 ( ディスカヴァー携書 )
黒木登志夫 (著)、 192 ページ、 ディスカヴァー ・ トゥエンティワン (2013/6/27)、 1,050 円 ネイティブらしい英語表現を扱っている。
・ a blue rose ( 存在しないもの、 無理な相談 ) ・ a bus girl ( 食堂のテーブル後片付け係 ・ black sheep( 一家の 恥さらし、 変わりもの ) ・ Say When. (どのくらいでいいのか適量の時にそれで良いと言って) ・ No sweat.( 汗もか かない。 楽勝だ ) ちなみに a big cheese は 「重要人物」 これらはいくつかの中学校で習ったやさしい単語からなっているが、 直訳しても意味をなさないものである。 本書は、 なぜその ような意味になるのかを解説している。 英語の文化であろう。 『言葉の海へ』 ( やわらかアカデミズム ・ わかるシリーズ ) 高田宏 (著)、 237 ページ、 新潮社 (1978/07)、 中古品 本書は、 MLメンバーの小梶先生に紹介して頂いたもので、 本書単行本は、 1984 年に文庫本にもなっ た。 比較的最近洋泉社新書 MC で発行されている。 大佛次郎賞受賞作をとったこの作品は、 賊軍で会っ た仙台藩の大槻一族、 大槻文彦が明治時代の日本の文化支柱を紹介するために、 『言海』 を 17 年の 月日をかけ編んだ物語である。 政治的に活躍することがヒーローに思われがちだが、 蘭学者の系譜を持 つ大槻文彦の文化的偉業もヒーローが成せることである。 本書では、 近代国家日本の確立のため献身し た一人の明治人の姿が激動の時代にあわせて感動的に描かれている。 のちに 『大言海』 と改編された。 現在では、 新しい語彙をまとめた 『広辞苑』 『日本国語大辞典』 『辞林』 などが発行され辞書的価値は薄れているが、 『言海』 に記された例文は、 大槻の苦心そのものであり、 一読の価値がある。 『言海』 はちくま学芸文庫から復刻されている。 『コクヨの 1 分間プレゼンテーション』 中公新書 下地寛也 ( 著 ) 、 189 ページ、 中経出版 (2011/8/26)、 ¥ 1,500 「1分間で 「疑問」 を投げる, 「結論」 を述べる, 「理由」 を説明するのがポイント」 と 1 分間スピーチの 極意を解説している。 端的に相手に納得してもらえる身近な説明ができる技術はマスターした方が良い。 授 業でも、 だらだら説明するのではなく、 ちょっと疑問を与えて、 答えをだし、 その理由を述べる. そうして説明 技術も効果があると思われる。 最近、TVで流行した「いつやるの?今でしょう。」も似たような形式の語りである。
『Art 1 誰も知らない 「名画の見方」』 ( 小学館 101 ビジュアル新書 ) 髙階秀爾 ( 著 )、 191 ページ、 小学館 (2010/10/1)、 ¥ 1,155 秋は芸術に親しみたくなる季節である。 心豊かにありたいと願う。 美術館で名画と向き合い、 クラシックが 流れる喫茶店で暫し休憩する。 心地よいときの流れがそこにはある。 人生の潤いでもある。 そんな 「名画」 にも、 絵画鑑賞をより楽しく充実させるための、 「見方」 がある。 本書は、 八つのテーマに分類された 「名 画の見方」 に基づき、 日本を代表する美術史家である著者が、 巨匠たちの手になる名画の数々を例に、 具体的にわかりやすく解説している。 たとえば表紙絵画のフェルメール、 「目の白い点ひとつで生命観を生 みだしている」 とある。 そうだなあと納得する。 名画をのよいところを見過ごさないように、 より深く見てみたいものだ。