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(1)

平行棒における「後方車輪から後方かかえこみ2回宙返り腕支持(ベーレ)」

の腕支持局面に関するモルフォロギー的考察

The Morphological Study of Arm-Hang Phase on “Belle”

in Parallel Bars.

村 田 浩 一 郎1)、安 田 賢 二2)、土 屋 純1) Koichiro Murata 1) , Kenji Yasuda 2) , Jun Tsuchiya 1) 1)早 稲 田 大 学 スポーツ科 学 学 術 院 1)

Faculty of Sport Sciences. Waseda University

2)

早 稲 田 大 学 スポーツ科 学 部

2)

School of Sport Sciences. Waseda University

キーワード: 体 操 競 技 、平 行 棒 、モルフォロギー Key Words: Gymnastics, Parallel Bars, Morphology

抄 録 体 操 競 技 において競 技 者 は、技 の「成 立 /不 成 立 」を決 定 づける運 動 技 術 の習 得 後 には、姿 勢 欠 点 に対 する減 点 を回 避 するための運 動 技 術 を習 得 しなければならない。本 研 究 では「後 方 車 輪 から後 方 かかえこみ2回 宙 返 り腕 支 持 (ベーレ)」を対 象 とし、姿 勢 欠 点 や技 術 欠 点 なく腕 支 持 に至 るための 運 動 技 術 について、モルフォロギー的 に考 察 することを目 的 とした。 被 検 者 は 平 行 棒 に お け る ベ ー レ を 習 得 し て い る 体 操 競 技 選 手 5 名 ( 年 齢 21±1歳 、身 長 164.7± 3.1cm、体 重 59.0±3.8kg、平 均 値 ±標 準 偏 差 )であった。被 検 者 は演 技 中 と同 様 に倒 立 姿 勢 からベ ーレを実 施 し、その間 、被 検 者 の左 方 向 および前 方 向 からの映 像 を、デジタルビデオカメラ(Sony社 製 、 DCR-TRV900)を用 いて毎 秒 60フィールドで撮 影 した。得 られた映 像 において、腕 支 持 局 面 のみの静 止 画 像 を60フィールドごとに抽 出 し、それらを時 系 列 にそって並 べることでベーレの連 続 写 真 を作 成 し た。さらに、被 検 者 ごとに作 成 した連 続 写 真 を各 被 検 者 に示 し、本 人 が意 識 している技 術 的 ポイントに ついてインタビュー形 式 で調 査 した。 結 果 として以 下 の点 がベーレにおける余 裕 ある腕 支 持 の実 施 にとって有 効 な技 術 的 ポイントであるこ とが考 えられる。 ● 実 施 者 は1 1/2回 宙 返 りが完 了 した時 点 でかかえこみ姿 勢 の解 除 を行 うこと。 ● かかえこみ姿 勢 を解 除 した後 、上 体 を反 らないように股 関 節 および膝 関 節 を伸 展 させた伸 身 姿 勢 を示 し、宙 返 りの回 転 速 度 の減 少 を最 小 限 に抑 えること。 ● 肩 関 節 はわずかに外 転 させ、バーとの接 触 をできるだけ遅 らせるようにすること。 スポーツ科 学 研 究 , 4, 51-62, 2007 年 , 受 付 日 :2007 年 2 月 9 日 , 受 理 日 :2007 年 7 月 7 日

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連 絡 先 : 〒359-1192埼 玉 県 所 沢 市 三 ヶ島 2-579-15 mrt@aoni.waseda.jp Ⅰ. はじめに 男 子 体 操 競 技 は6種 目 (床 、鞍 馬 、つり輪 、跳 馬 、平 行 棒 、鉄 棒 )からなり、跳 馬 を除 く5種 目 は、 十 数 個 の「技 」で構 成 される「演 技 」として実 施 さ れる。その勝 敗 は演 技 に対 する審 判 員 の採 点 に よって決 定 される。審 判 員 は採 点 規 則 をもとに、 価 値 点 ( A得 点 )の算 出 と実 施 に 対 する10点 満 点 からの減 点 (B得 点 )を算 出 し、その合 計 が競 技 者 の得 点 となる1)。 A得 点 は実 施 した技 の難 度 の合 計 によって決 定 さ れ る 。 競 技 者 が 高 い A得 点 を獲 得 するため には、高 難 度 の技 を数 多 く実 施 しなければならな い。難 度 は各 技 に対 して一 つずつ、最 低 A難 度 ~最 高 F難 度 まで存 在 し、それらはオリンピック開 催 後 に見 直 される。そのため、競 技 者 は採 点 規 則 に 伴 っ て 難 度 が 変 更 さ れても 、 常 に 安 定 し て 高 難 度 に位 置 する技 を習 得 しておくことが望 まし い 。 本 研 究 で 対 象 と す る「 後 方 車 輪 か ら 後 方 か かえこみ2回 宙 返 り腕 支 持 (ベーレ:動 画 )」は過 去 10年 間 E難 度 に位 置 づけられており、国 内 外 問 わ ず 実 施 者 数 が 多 い 。 ベ ー レ の 運 動 技 術 に ついて土 屋 ら(2006)4)は、ベーレ離 手 以 前 にお ける関 節 トルクおよびパワーの変 化 を明 らかにし、 さ ら に 土 屋 ら ( 2004)3)は 宙 返 り の 回 転 や 高 さ に 影 響 を及 ぼす技 術 的 ポイントを明 らかにしている。 いうまでもなく、離 手 後 の身 体 は投 射 体 であるた め 、 宙 返 り 時 の 物 理 的 余 裕 は 離 手 以 前 の 力 発 揮 の 大 きさ やタイミ ング の 影 響 を 受 ける。そ の 力 発 揮 の 大 き さ や タ イ ミ ン グ は 、 ベ ー レ そ の も の の 「成 立 /不 成 立 」を決 定 づける運 動 技 術 であると いえよう。 一 方 、B得 点 は審 判 員 のシステマティックな減 点 に よ っ て 決 定 さ れ る 。 な か で も 「 姿 勢 欠 点 」 に 対 する減 点 はほとんどの競 技 者 について認 めら れる。姿 勢 欠 点 とは、実 施 者 が本 来 示 さなくては ならない姿 勢 から 逸 脱 した姿 勢 を 示 した 場 合 に 認 めら れる 減 点 項 目 で ある。 例 え ば、 伸 身 姿 勢 が義 務 づけられている技 において、わずかでも股 関 節 や膝 関 節 が屈 曲 してしまった場 合 は姿 勢 欠 点 と し て 減 点 が 課 さ れ る 。 姿 勢 欠 点 の 存 在 は 、 正 しい姿 勢 を保 持 する技 術 がないということに等 しい。つまり、姿 勢 欠 点 は技 術 欠 点 に内 包 される と 考 え ら れ る 。 し た がっ て 、 競 技 者 は 「 成 立 / 不 成 立 」を決 定 づける運 動 技 術 の習 得 後 には、姿 勢 欠 点 に 対 す る 減 点 を 回 避 す る た め の 運 動 技 術 を習 得 しなければならない。ベーレにおいても その運 動 技 術 は存 在 すると考 えられる。とりわけ、 ベーレは終 末 局 面 であ る腕 支 持 局 面 で伸 身 姿 勢 を示 し、明 確 な 回 転 の終 了 を示 さなければな らない1)という特 徴 を有 している。そのため、腕 支 持 局 面 において姿 勢 欠 点 が発 生 しやすいと考 え られる。したがって競 技 者 には、かかえこみ姿 勢 の解 除 後 、余 裕 をもって腕 支 持 に至 るための運 動 技 術 が求 められる。また、ベーレの「成 立 /不 成 立 」を決 定 づける運 動 技 術 に関 してはすでに 報 告 されているが3) 4)、姿 勢 欠 点 に対 する減 点 を 回 避 す る た め の 運 動 技 術 に 関 し て は 報 告 が な い。 下 の画 像 をクリックすると動 画 が出 ます。

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そこで、本 研 究 はその研 究 方 法 としてモルフォ ロ ギ ー 的 考 察 を 取 り 上 げ る こ と と し た 。 マ イ ネ ル (金 子 訳 1981)は 、 運 動 モルフォロギ ーが 運 動 全 体 性 による 自 己 の 運 動 把 握 をもとに成 立 して い るという特 徴 をもつことから、スポーツ指 導 者 にと って『きわめて身 近 な』 考 察 方 法 であると述 べて いる2)。 運 動 モルフォ ロ ギーは、ス ポー ツ 指 導 者 の運 動 に対 する自 己 知 覚 と他 者 観 察 から得 られ た知 覚 を照 合 することで行 われる印 象 分 析 であ る た め 、 視 覚 で 確 認 し 難 い こ と に 関 し て は 、 『 科 学 的 には条 件 付 きでしか信 頼 されない』2)。し か しながら、指 導 者 による一 瞬 の判 断 は、現 場 にお いては実 施 者 の上 達 にとって重 要 な役 割 を果 た していることも事 実 である。このことは、本 研 究 に おけるベーレの腕 支 持 局 面 に 関 す るモルフォ ロ ギ ー 的 考 察 が ベ ー レ 指 導 の 一 考 察 と な り う る 可 能 性 を示 していると考 えられる。したがって、本 研 究 は平 行 棒 におけるベーレを対 象 とし、姿 勢 欠 点 や 技 術 欠 点 な く 腕 支 持 に 至 る た め の 運 動 技 術 について、モルフォロギー的 に考 察 することを 目 的 とした。 Ⅱ. 方 法 被 検 者 は平 行 棒 における「後 方 車 輪 から後 方 かかえこみ2回 宙 返 り腕 支 持 (ベーレ)」を習 得 し て い る 体 操 競 技 選 手 5 名 ( 年 齢 21 ± 1 歳 、 身 長 164.7 ± 3.1cm 、 体 重 59.0 ± 3.8kg 、 平 均 値 ± 標 準 偏 差 )であり、すべての被 検 者 が全 日 本 選 手 権 大 会 出 場 経 験 をもつ 。 被 検 者 は 実 験 の 内 容 に関 して十 分 な説 明 を受 け、実 験 の参 加 に同 意 した。 演 技 内 におけるベーレは、通 常 の場 合 、倒 立 から振 り下 ろし、懸 垂 姿 勢 を経 過 した後 、後 方 2 回 宙 返 りを実 施 し腕 支 持 に至 る。被 検 者 は演 技 中 と同 様 に倒 立 姿 勢 からベーレを実 施 し、開 始 の タ イ ミ ン グ は 任 意 と し た 。 ベ ー レ 実 施 の 間 、 被 検 者 の左 方 向 および前 方 向 からの映 像 を、デジ タ ル ビ デ オ カ メ ラ ( Sony 社 製 、 DCR-TRV900 ) を 用 い て 毎 秒 60フィールドで撮 影 し た。被 検 者 は 実 験 中 、 普 段 の 練 習 時 の 服 装 で 動 作 を 実 施 し た。なお、撮 影 区 間 は動 作 開 始 時 である倒 立 か ら、終 了 時 である腕 支 持 までとした。得 られた映 像 において、腕 支 持 局 面 のみの静 止 画 像 を60フ ィー ルドご と に 抽 出 し 、 そ れ らを 時 系 列 に そ っ て 並 べることでベーレの連 続 写 真 を作 成 した。 さらに、被 検 者 ごとに作 成 した連 続 写 真 を A4 紙 面 1 頁 に カラー 印 刷 して 各 被 検 者 に 示 し 、各 被 検 者 が 「 減 点 さ れ な い ベ ー レ を 実 施 す る た め に運 動 中 意 識 している技 術 的 ポイント」について インタビュー形 式 で調 査 した。これらを基 礎 的 資 料 と し 、 ベ ー レ に お け る 腕 支 持 に 至 る 際 の 技 術 的 ポイントについて考 察 した。 Ⅲ. 結 果 と論 議 各 被 検 者 の 左 方 向 お よ び 前 方 向 に おける 連 続 写 真 を図 2(A1~E2)に示 した。また、各 被 検 者 に お け る ベ ー レ の 腕 支 持 局 面 で 意 識 す る 技 術 的 ポイントを表 1に示 した。さらに、図 1はかかえこ み姿 勢 解 除 時 の姿 勢 および腕 支 持 時 の身 体 姿 勢 を各 被 検 者 の連 続 写 真 から抽 出 したものであ る。 A~Eは採 点 規 則 に よって定 められた減 点 項 目 に該 当 する項 目 が少 ない実 施 であるものから 順 に並 べた。以 下 、ベーレにおける腕 支 持 の技 術 的 ポイントになると考 えられる現 象 について項 目 ごとに記 述 した。 1. 実 施 者 の意 識 について ベ ー レ の 腕 支 持 局 面 の 運 動 技 術 に つ い て 、 被 検 者 それぞれで特 徴 的 な技 術 ポイントを意 識 していた(表 1)。被 検 者 AとBは、腕 支 持 局 面 に おいて「 上 体 は 固 定 し 膝 だけを 伸 展 する」 こと を 共 通 に意 識 していた。これは、上 体 を反 らないよ うにすることで腕 支 持 直 前 までできるだけ小 さい 姿 勢 を保 持 し、回 転 速 度 を減 少 させないように

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表 1 各 被 検 者 における腕 支 持 局 面 で意 識 する技 術 的 ポイント 被 検 者 インタビュー結 果 A 写 真 A1-8~13で上 半 身 は固 定 しておき、膝 のみを伸 ばす。腕 は基 本 的 には横 に開 くが 腕 支 持 の瞬 間 に余 裕 が出 るように写 真 11~12では腕 を内 旋 しながら背 中 の方 向 に引 く。写 真 13~15 では胸 に力 を入 れたままにし、慌 ててバーをつかみにいかないようにす る。 B 写 真 7 の よう に 最 後 ま で かか え こむ イメ ー ジ 。 回 転 し きっ て から 下 半 身 のみ をほ ど く 意 識 。 写 真 8以 降 、腕 は自 然 に横 に出 し、上 半 身 はそのままにしておく。 C かかえこみ姿 勢 から胸 を突 き出 すようにして首 を後 屈 し、腕 は肘 を屈 曲 させて上 腕 を外 旋 かつ 外 転 させた状 態 (肩 甲 骨 を内 側 に寄 せる意 識 )にし、上 腕 の内 側 で受 けるイメ ージ。 D 胸 を開 かずに腕 支 持 する意 識 はあるが、恐 怖 感 から実 施 できていない。結 局 は胸 を開 いて 感 覚 的 に腕 支 持 している。 E 回 転 後 身 体 を開 きにいく際 、バーに対 して足 を真 下 に離 す。上 体 は感 覚 的 に開 いてい る。 努 力 し て い る こ と を 表 現 し て い る と 思 わ れ る 。 一 方 、 被 検 者 Cは「上 体 を先 行 させる」ことを意 識 していた 。被 検 者 Cは他 の被 検 者 と比 較 して宙 返 りが高 いため、より大 きい伸 身 姿 勢 を示 すこと が 可 能 な は ず で あ る が 、 実 際 は 「 上 体 を 先 行 さ せ る 」 こ と に よ り 回 転 速 度 を 減 少 さ せ 、 結 果 と し て 膝 関 節 が 屈 曲 した ま ま の 腕 支 持 と なっ てい る 。 膝 関 節 が 屈 曲 した 状 態 での 腕 支 持 には 、 姿 勢 欠 点 としての減 点 が課 されることから、被 検 者 C の場 合 、上 体 を先 行 させたとしてもかかえこみ姿 勢 の解 除 を遅 くすることが必 要 である。また、Dと Eは意 識 していることが達 成 できていないことから、 ベ ー レ を 習 得 は し て い て も 習 熟 は し て い な い と 考 え ら れ る 。 し た が っ て 、 上 記 の 技 術 的 ポ イ ン ト を踏 まえたうえで腕 支 持 を実 施 することが望 まし い。 2. かかえこみ 姿 勢 を 解 除 するタイミ ン グについ て す べ て の 被 検 者 は ベ ー レ の 終 末 局 面 で あ る 腕 支 持 に至 る際 、それまで膝 をかかえていた手 を離 し、股 関 節 を伸 展 させながら腕 支 持 の準 備 をしていた。この局 面 において、手 を離 した瞬 間 から腕 支 持 の準 備 が開 始 されていると仮 定 して、 以 降 本 研 究 に お い て は 膝 か ら 手 を 離 し た 瞬 間 を か か え こ み 姿 勢 解 除 の 瞬 間 と す る 。 上 記 の と おり 、 すべ て の 被 検 者 に おい て か か えこ み 姿 勢 の 解 除 が 確 認 さ れ た が 、 解 除 の タ イ ミ ン グ は 被 検 者 によって異 なり、その差 異 が腕 支 持 時 の姿 勢 に 影 響 を 及 ぼ し て い る も の と 考 え ら れ る ( 図 1)。 か か え こ み 姿 勢 を 解 除 す る 目 的 は 、 主 に 「 腕 支 持 の 実 行 を 可 能 に す る た め 」 と 「 伸 身 姿 勢 を 示 すことによる宙 返 りの明 確 な終 了 を示 すため」 で あ る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 か か え こ み 姿 勢 を 解 除 した結 果 としては「宙 返 りの回 転 速 度 の減 少 」 といった現 象 の誘 発 が考 えられる。かかえこみ姿 勢 の解 除 が遅 かった被 検 者 はAとBであり、いず

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れも2回 宙 返 りのうちの1 1/2宙 返 りを終 了 した時 点 で か か え こ み 姿 勢 を 解 除 し て い た ( A1-9, B1-9 ) 。 一 方 、 か か え こ み 姿 勢 を も っ と も 早 く 解 除 し た の は 被 検 者 Cで 、被 検 者 DとEもかかえこ み姿 勢 の解 除 が早 く、1 1/2宙 返 りの終 了 以 前 に実 施 していた(C1-7, D1-8, E1-7)。腕 支 持 の 瞬 間 に膝 関 節 がもっとも伸 展 していたのは被 検 者 A で あ り ( A1-12 ) 、 以 下 は C → B → D ≒ E の 順 で 膝 関 節 が 屈 曲 し て い た ( C1-11, B1-12, D1-12, E1-10)。 被 検 者 C はもっ と も高 い 宙 返 り を 実 施 し て い る こ と が C1-1~11で確 認 できるが、 か か え こ み 姿 勢 解 除 か ら 腕 支 持 ま で の 間 に 膝 関 節 が 屈 曲 し た ま ま に な っ て お り 、 こ れ は 姿 勢 欠 点 として減 点 が課 されてしまう。C1-6~9におい て、上 体 は回 転 しているものの下 肢 の回 転 がほ とんどみられないことから 、下 肢 にお いてその回 転 速 度 が減 少 していると考 えられる。この状 態 で 膝 を 伸 展 さ せ る こ と は 、 さ ら に 下 肢 の 回 転 速 度 を減 少 させることになるため、被 検 者 Cは回 転 速 度 の減 少 を抑 えるために膝 を屈 曲 してしまうもの と 思 わ れ る 。 し た が っ て 、 被 検 者 C はかかえこみ 姿 勢 の解 除 を遅 らせることで、下 肢 の回 転 速 度 減 少 を抑 制 し、結 果 として姿 勢 欠 点 の減 点 を回 避 することができるものと考 えられる。また、被 検 者 Bは腕 支 持 時 にバーと身 体 が平 行 になるまで 宙 返 り が 回 転 し て お り 、 バ ー と の 接 触 は 被 検 者 A と 同 様 に 遅 い 。 し か し な が ら 、 か か え こ み 姿 勢 解 除 後 直 ち に 膝 関 節 の 伸 展 を 開 始 で き て い な いため、その点 を改 善 点 として挙 げることができ る。一 方 、DとEは早 期 からのかかえこみ姿 勢 解 除 の た め 、 宙 返 り の 回 転 速 度 が 小 さ く な っ た 結 果 、 早 期 か ら バ ー に 接 触 し て い る 。 そ の 際 、 伸 身 姿 勢 を 示 す こ と が で き ず 多 く の 減 点 を 課 さ れ てしまう。 これらのことから、かかえこみ姿 勢 は1 1/2宙 返 りを終 了 した時 点 で解 除 することが望 ましいこと、 解 除 のあと腕 支 持 までに素 早 く股 関 節 および膝 関 節 を 伸 展 さ せ た 伸 身 姿 勢 を 示 す こ と が 姿 勢 欠 点 の 減 点 を 回 避 す る 手 段 で あ る と 考 え ら れ る。 3. か か え こみ 姿 勢 を 解 除 し た 後 の 上 肢 の 動 き について かかえこみ姿 勢 を解 除 した後 、腕 支 持 に至 る 際 、上 肢 は大 きく分 けて2パターンの動 きを示 し ていた。被 検 者 C、DおよびEは、肩 関 節 を約 90 度 外 転 位 にし、かつ外 旋 位 (肘 関 節 約 90度 )に て腕 支 持 していた(図 1)。一 方 、被 検 者 AとBは、 肩 関 節 をわずかに外 転 させるのみで、外 旋 はさ せていなかった(図 1)。肩 関 節 の外 転 は早 期 か らバーに接 触 する可 能 性 を高 めるため、回 転 速 度 の維 持 を妨 げてしまうことから、不 適 切 である と考 えられる。通 常 の腕 支 持 振 動 は肩 関 節 を約 90 度 外 転 位 か つ 手 は バ ー を 支 持 し て 実 施 さ れ る た め 、 そ の 姿 勢 へ の 過 剰 な 意 識 が こ の よ う な 不 適 切 な 動 作 を 引 き 起 こ し て い る も の と 予 想 さ れる。しかしながら、かかえこみ姿 勢 の解 除 が遅 れ る ほ ど 腕 支 持 ま で の 時 間 が 少 な く な る た め 、 上 肢 の動 作 は簡 略 化 されなければならない。そ こ で 被 検 者 A と B は 合 理 的 な 方 法 と し て 、 肩 関 節 のわずかな外 転 を選 択 したものと考 えられる。 さ ら に イ ン タ ビ ュ ー 形 式 で 実 施 し た 調 査 の 結 果 、 腕 支 持 の 瞬 間 に 被 検 者 A は 、 肘 関 節 を 屈 曲 さ せ た ま ま 肩 関 節 を 内 旋 す る よ う に 意 識 し て いるうえ、腕 支 持 の瞬 間 にはわずかに肩 関 節 を 伸 展 するよ うに意 識 していた。これらの意 識 は、 バーへの接 触 を遅 らせ るための努 力 の表 れ と と ら え る こ と が で き る 。 ま た 、 肩 関 節 を 内 旋 す る 意 識 は被 検 者 A特 有 の意 識 であり、この意 識 によ り腕 支 持 の 瞬 間 にバ ー に接 触 する 上 腕 の 部 位 が 他 の 被 検 者 と 異 な る も の と 考 え ら れ る 。 A1-11~12 で 肩 関 節 を 内 旋 し た 場 合 、 被 検 者 A は上 腕 の外 側 (解 剖 学 的 正 位 における外 側 )で バーに接 触 する。実 際 、被 検 者 Aは腕 支 持 の瞬

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間 で あ る A1-12~14 で 前 腕 の 位 置 が ほ と ん ど 変 化 し な い こ とか ら 、 腕 支 持 後 も 肩 関 節 の 内 旋 が 継 続 さ れ て いた 可 能 性 が 考 えら れ る。 一 方 、 他 の 被 検 者 か ら は 腕 支 持 し た 直 後 に み ら れ る 前 腕 の 動 き か ら 、 肩 関 節 が 外 旋 し て い る こ と が 確 認 で き る 。 先 に 述 べ た よ う に 、 通 常 の 腕 支 持 振 動 は 肩 関 節 を 約 90度 外 転 位 にし 、かつ 手 はバ ー を 支 持 す る こ と か ら 、 上 腕 の バ ー と の 接 触 部 位 は内 側 と なる 。こ のこ とから 、 実 施 者 は ベーレ の腕 支 持 は通 常 の腕 支 持 振 動 とは技 術 が異 な る可 能 性 があることを認 識 しておく必 要 がある。 こ の よ う に 、 か か え こ み 姿 勢 解 除 の 後 は 肩 関 節 の外 転 を極 力 抑 えることにより、バーとの接 触 を遅 らせていたことが確 認 された。バーとの接 触 が遅 れるほど、宙 返 りの回 転 速 度 の減 少 が抑 制 さ れ る た め 、 こ の 技 術 は 余 裕 の あ る ベ ー レ の 腕 支 持 を遂 行 するにあたって有 効 な手 段 と考 えら れる。また、もっとも腕 支 持 時 に姿 勢 欠 点 による 減 点 が少 ない被 検 者 Aが腕 支 持 時 に上 腕 を内 旋 す る 特 有 の 技 術 を 用 い て い た こ と か ら 、 ベ ー レ に お け る 腕 支 持 は 通 常 の 腕 支 持 振 動 と は 異 なる技 術 を有 する可 能 性 が示 唆 された。 Ⅳ. まとめ 本 研 究 は平 行 棒 における後 方 車 輪 から後 方 か かえ こ み2回 宙 返 り腕 支 持 (ベーレ)において、 姿 勢 欠 点 や 技 術 欠 点 な く 腕 支 持 に 至 るため の 運 動 技 術 についてモルフォロギー的 に考 察 した。 その結 果 、以 下 の点 がベーレにおける余 裕 ある 腕 支 持 の実 施 にとって有 効 な技 術 的 ポイントで あることが考 えられる。 ● 実 施 者 は 1 1/2回 宙 返 り が完 了 した 時 点 で かかえこみ姿 勢 の解 除 を行 うこと。 ● か か え こ み 姿 勢 を 解 除 し た 後 、 上 体 を 反 ら な い よ う に 股 関 節 お よ び 膝 関 節 を 伸 展 さ せ た伸 身 姿 勢 を示 し、宙 返 りの回 転 速 度 の減 少 を最 小 限 に抑 えること。 ● 肩 関 節 はわ ずか に 外 転 させ、 バー と の接 触 をできるだけ遅 らせるようにすること。 参 考 文 献 1. 2006年 度 版 採 点 規 則 (2006)、日 本 体 操 協 会 2. ク ル ト ・ マ イ ネ ル ( 著 ) 、 金 子 明 友 ( 訳 ) (1981) マイネル スポーツ運 動 学 、大 修 館 書 店 3. 土 屋 純 、 田 中 光 (2004) 平 行 棒 に お け る 「懸 垂 前 振 り後 方 かかえこみ2回 宙 返 り腕 支 持 ( ベ ー レ ) 」 の 運 動 力 学 的 分 析 、 ス ポ ー ツ 科 学 研 究 、(1)、1-9 4. 土 屋 純 、 村 田 浩 一 郎 、 福 永 哲 夫 (2006) 平 行 棒 に お け る 「 後 方 車 輪 か ら 後 方 か か え こ み 2 回 宙 返 り 腕 支 持 ( ベ ー レ ) 」 実 施 時 に 関 節 で発 揮 されるトルクとパワー、トレーニン グ科 学 、18(4)、353-364

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図 2 (A1) 被検者 A のベーレ腕支持局面における連続写真(左方向)

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図 2 (B1) 被検者 B のベーレ腕支持局面における連続写真(左方向)

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図 2 (C1) 被検者 C のベーレ腕支持局面における連続写真(左方向)

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図 2 (D1) 被検者 D のベーレ腕支持局面における連続写真(左方向)

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図 2 (E1) 被検者 E のベーレ腕支持局面における連続写真(左方向) 1

表 1  各 被 検 者 における腕 支 持 局 面 で意 識 する技 術 的 ポイント 被 検 者   インタビュー結 果   A  写 真 A1-8~13で上 半 身 は固 定 しておき、膝 のみを伸 ばす。腕 は基 本 的 には横 に開 くが腕 支 持   の瞬 間 に余 裕 が出 るように写 真 11~12では腕 を内 旋 しながら背 中 の方 向 に引 く。写 真 13~15  では胸 に力 を入 れたままにし、慌 ててバーをつかみにいかないようにす る。    B  写 真 7 の よう に 最
図 1  各被検者におけるかかえこみ姿勢解除時の姿勢と腕支持時の姿勢

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