COMMUNICATION
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各種質量分析分解法におけるインソ
ῌス分解の特徴
ῌHydrogen-Attachment Dissociation (HAD)ῌ
The Characteristics of In-source Decay in Mass
Spectrometric Degradation Methods
῍Hydrogen-Attachment Dissociation (HAD)῍
高 山 光 男
῏
MitsuD T6@6N6B6
(Received August 23, 2002; Accepted October 30, 2002)
In-source decay (ISD) combined with matrix-assisted laser desorption/ionization (MALDI) time-of-flight mass spectrometer (TOF MS) has been described by comparing with conventional mass spectrometric degrada-tion (MSD) methods such as collision-induced dissociadegrada-tion (CID) and post-source decay (PSD). The ISD character-istic is the formation of c- and (zΐ2)-ions originated from the N῎Cabond cleavage on the peptide backbone, while
the CID and PSD processes are the CO῎NH bond cleavage which brings about b- and y-ion. Furthermore, the ISD processes occurring with 337 nm laser photon irradiation for peptide or protein proceed resulting in the formation of hyper-valent radical species via intermolecular hydrogen transfer between matrix and analyte molecules following the non-ergodic N῎Cabond cleavage. The non-ergodic N῎Cabond cleavage occurs in the
MALDI ion source within nanosecond order, as an a-cleavage initiated with radical site at the carbonyl carbon. The MALDI-ISD method has been applied to three peptides and five proteins.
1. は じ め に 近年のソフトイオン化法の開発はῌ 従来測定しえなかっ た難揮発性῎不安定な化合物でも明瞭な分子量関連イオン ῑプロトン化分子 [MΐH]ῌῌ ナトリウムイオン付加分子 [MΐNa]ῌῌ 多価プロトン化分子 [MΐnH]nῌなどῒ の生成 を可能にした῍ 一方でマススペクトル中からフラグメント ピῐクを一掃する傾向も強めてきた῍ その結果ῌ 構造情報 であるフラグメントイオンを得るための質量分析分解 (mass spectrometric degradation, MSD) 法1)が重要な位
置 を 占 め て い る῍ MSD とはῌ 衝突誘起解離 (collision-induced dissociation, CID) や ポ ス ト ソῐス分解 (post-source decay, PSD) などのことを指す῍ ソフトイオン化は 安定なイオンの生成をῌ MSD はイオンの不安定化と分解 を目的としῌ 互いに相反する傾向をもつ技術であるがῌ こ の矛盾を同時に満足させるためῌ イオン源にはソフトイオ ン化法を質量分離部には MSD の機能を備え対処してい る῍ これは MS 技術の機能分化であり MS 装置の進化でも ある῍ 機能 1῏ 不安定な化合物の分子量関連イオンを生成させ るソフトイオン化 機能 2῏ 安定な分子量関連イオンを分解させて構造情報 を得る MSD ソフトイオン化技術が十分な発展を遂げた一方でῌ MSD 技術には改良すべき多くの点が残されている῍ その一つ がῌ NMR や X 線結晶解析に見られるような厳密で詳細な 三次元構造情報を得にくい点である῍ 今後の MS 装置に進 化の方向があるとすればῌ その一つは精密構造解析に向け た MSD 技術の機能分化であろう῍ 本稿ではῌ 現状の MSD 技術とその問題点を述べるとともにῌ タンパク質の直接 シῐケンシングを可能にする新規の MSD 法を紹介する῍ ここで紹介する MSD 法ではῌ マトリックス支援レῐザῐ 脱離イオン化 (matrix-assisted laser desorption/ioniza-tion, MALDI) を使っている῍ その特徴はῌ 分解の原因とな る不対電子 ῑラジカルῒ をタンパク質またはペプチド主鎖 に付与することでῌ NH῎Ca結合の特異的な分解を可能に することである῍ この特異的分解の最初の過程はῌ マト リックス分子から生成した水素原子 Hῌがタンパク質また はペプチド主鎖のカルボニル酸素に結合することである῍ この水素原子の結合によってタンパク質またはペプチド主 鎖にラジカルが生じῌ 続いてラジカルを原因とする a 開裂 が起こる῍ 本解説ではῌ 水素原子の付加が原因となり分解 が誘導されるこの特異的分解を hydrogen-attachment dissociation (HAD) と呼ぶ῍ ῏ 横浜市立大学大学院総合理学研究科 ῑῌ236῎0027 横浜市金 沢区瀬戸 22῎2ῒ
Graduate School of Integrated Science, Yokohama City University (22῎2 Seto, Kanazawa-ku, Yokohama 236῎ 0027, Japan)
E-mail: [email protected]
2. 質 量 分 析 分 解 (Mass Spectrometric Degradation, MSD)法の分類 現在の MSD 技術は 主として構造的に安定な閉殻系 あるいは偶数電子系 の分子量関連イオン [MH]ῌや [MNa]ῌ をさまざまな手法で励起し分解させることを 目的としている 化学構造や結合に特異的な分解が生じれ ば構造解析には有利だが 現実には エネルギ的に可能 ならばどの結合でも分解を生じるため特異性は低い 例え ば CID によるペプチドやタンパク質分子の分解がペプチ ド結合 CO῍NH に限られるならば 生成イオンも y-イオン か b-イオンに限られ 解析は現在より格段に容易に進む しかし 実際には副次的な分解反応の窓が開いてしまい a-イオン d-イオン v-イオン w-イオンなどが生成し 解 析を妨害してしまうことが多い (Fig. 1). エネルギ障壁 の最も低い分解反応だけを選択的に進行させるのは イオ ントラップ中での低エネルギ衝突による CID 法である すなわち 1 回の実験室系衝突エネルギ (Elab) が数 eV であるため重心系衝突エネルギ (Ecm) を極めて小さくで き イオンに蓄積する内部エネルギを微小量ずつ増やし ていくことができる この方法をペプチドイオンに適用す ると 生成するフラグメントイオンは y-イオンか b-イオン だけになりやすいが 代わりにアンモニア NH3や水分子 H2O の脱離する反応窓も開いてしまう いわゆる閉殻系の イオンは積極的に分解する原因 例えば不対電子 に乏し いため 共有結合を切るのに必要なエネルギに達するま で外部から何らかの方法で励起し イオンにエネルギを 蓄積させる必要がある 現在の MSD 法はこのような エ ネルギῌ蓄積型 であるため 特異的な分解には向かない 特異的な分解を可能にするには 特異性を高めるために分 解の引き金となる不対電子 ラジカル を付与し 分解法 を 不対電子誘導型 に変えることも必要となる これらをまとめると 電子イオン化 (electron ioniza-tion, EI) や高速原子衝撃 (fast atom bombardment, FAB) などによるイオン化直後に起こるフラグメンテションま で MSD に含めると MSD は次の二つのタイプに分ける ことができる すなわち タイプ 1 イオン化室から出た後に起こるポストソス 型の MSD タイプ 2 イオン化室内で起こるインソス型の MSD また 分解の原因をサブタイプとして分類すれば次の二つ を挙げることができる サブタイプ 1 エネルギ蓄積型 サブタイプ 2 不対電子誘導型 2.1 ポストソῌス型の MSD MS/MS を使う CID はすべてポストソス型に分類さ れる また イオン化室で生成したイオンを励起し分解す るためのデバイスを備えている場合 例えば skimmer CID もこのタイプに含めることができる ポストソス 型の MSD には次のようなものがある ポストソス型の MSD
Collision-induced dissociation (CID) High-energy CID
Low-energy CID Skimmer CID
Surface-induced dissociation (SID) Post-source decay (PSD)
Blackbody infrared radiative dissociation (BIRD) Infrared multi-photon dissociation (IRMPD) Electron capture dissociation (ECD)
これらの中で CID, SID, PSD は 衝突エネルギをイオ ンの内部エネルギに変換し蓄積することにより分解を生
Fig. 1. Nomenclature of peptide fragment ions.
じさせる方法である῍ またῌ BIRD と IRMPD はイオンに 赤外光を照射しῌ 直接的な振動励起によって分解を生じさ せる方法である῍ これらの方法はῌ 外部からイオンにエネ ルギ῏を与えῌ イオンのエネルギ῏蓄積量が化学結合エネ ルギ῏以上に達したときに分解が生じることを原理として いるためῐエネルギ῏蓄積型ῑ である῍ この型の分解ではῌ 分解に先立ってイオン構造の各自由度にエネルギ῏の再分 配 (energy randomization) が起こることが特徴でありῌ そうした分解はエルゴ῏ド的と言われる῍ エルゴ῏ド的な 分解は準平衡理論で扱いやすい一方ῌ その分解は非特異的 になりやすい῍ またῌ CID も PSD もῌ 適用できる質量は 3,000 Da 程度が限界であるためῌ タンパク質などは測定 前に酵素消化などを使いあらかじめ質量の小さなペプチド 断片にしておく必要がある῍ 一方ῌ ECD はタンパク質の多価プロトン化分子 [M nH]nῌのプロトン Hῌが低速電子 e῍を捕獲しῌ 質量一定 のままで価数が低下すると同時にῌ 生成した水素原子がカ ルボニル酸素などの水素原子受容部位に結合してイオンラ ジカル種を生成することが特徴である῍ 分解はῌ 基本的に ラジカル駆動の速い過程であるので ῐ不対電子誘導型ῑ で ある῍ この過程ではエネルギ῏再分配が十分に行われない のでῌ 非エルゴ῏ド的である῍ 非エルゴ῏ド的な分解は化 学結合特異的に生じる῍ 2.2 インソῌス型の MSD イオン化と同時または直後にイオン化室で生じるフラグ メンテ῏ションはすべてこのタイプに分類される῍ 分解の エネルギ῏はイオン化時に与えられる῍ このタイプの分解 は in-source fragmentation または in-source decay (ISD) と呼ばれῌ その典型はῌ EI によって生成した分子イオン Mῌῌのフラグメンテ῏ションである῍ 一般に [MH]ῌや [MNa]ῌなどの閉殻型の分子量関連イオンが安定なのに 対しῌ 分子イオン Mῌῌなどの開殻系 ῒ奇数電子系ΐ のイオ ンは比較的不安定でフラグメンテ῏ションを起こしやす い῍ 特に不対電子῎が分解の引き金になることが多い (Fig. 2(a)-2). ISD はῌ イオン化後に行われる CID や PSD などの MSD 技術と異なりῌ むしろイオン化法に特徴的で ある῍ その生成イオンは通常のマススペクトルに観測され る῍ これまで知られている中でῌ 多くのフラグメントイオ
Fig. 2. Fragmentation of molecular-related ions. (a)-1 closed shell protonated molecule [MH]ῌis relatively stable and (a)-2 the open shell molecular ion Mῌῌ is subject to fragmentation initiated by radical. (b) Model for the hydrogen-attachment dissociation (HAD) of a stable protonated molecule.
ンを与える典型的なイオン化法またはインソス型の MSD には以下のものがある
インソス型の MSD
電子イオン化 (electron ionization, EI)
高速原子衝撃 (fast atom bombardment, FAB) プラズマ脱離 (plasma desorption, PD)
マトリックス支援レザ脱離イオン化 (matrix-assisted laser desorption/ionization, MALDI) EI では 開殻系の分子イオン M῍ῌから典型的な 不対電 子誘導型 のフラグメンテションを生じ (Fig. 2(a)-2), 構造情報の獲得に優れている 一方 FAB, PD, MALDI は 分子量関連イオンとしては [M H]῍などの閉殻系の 安定なイオンを生成しやすいが (Fig. 2(a)-1), そのフラグ メンテションの原因には不対電子 ラジカル の関与も 指摘され始めていて 特に分子間水素移動反応によるラジ カ ル 生 成 が 重 要 と な っ て い る (Fig. 2 (b)). 以 下 に は MALDI を使う新規のインソス型 MSD 法 すなわち hydrogen-attachment dissociation (HAD) を紹介する
3. Hydrogen-Attachment Dissociation (HAD)とは 3.1 MALDI-ISD現象の発見小史
HAD は ペプチドやタンパク質の MALDI time-of-flight mass spectrometry (TOF MS) において観測される ISD 現象の一つである ISD は 1995 年にユタ州立大学 の Brown らが linear TOF MS に遅延引出し装置を設置 中に偶然発見した現象であり 最初は in-source fragmen-tation と呼ばれていた2) 1997 年 我は MALDI-TOF MS を使い化学分解によるアミノ酸配列解析法を開発 中3), 4) Brown らとは独立に偶然 ISD 現象を発見した5) MALDI-TOF MS を使う ISD は タンパク質の直接シ ケンシングを可能にする新規手法としていくつかの研究グ ルプからその有用性が報告されたが6)ῌ8) その機構は不 明のままであった しかし最近 紫外レザ光によって 励起されたマトリックス分子から放出された水素原子 (hydrogen atom, Hῌ) が ペプチドあるいはタンパク質主 鎖のカルボニル酸素に結合 (attachment) し NH῎Ca結合 の分解 (dissociation) を生じることが証明された9) 3.2 MALDI-ISDの機構と証明 HAD によって生成するタンパク質のフラグメントイオ ンは 主として N-末端が保存されたラダ状の c-イオン ピク群からなる それらのピク群において 隣合う ピク間の質量差がアミノ酸の質量を意味するため ラ ダ状ピク群の質量差を順次並べると部分アミノ酸配列
Fig. 3. Internal amino-acid sequences are obtained by a series of c-ions appeared in MALDI-TOF mass spectrum of a protein.
Fig. 4. In-source decay spectra of (a) a deuterium-labeled dodecapeptide (Mr 1,433.6) and (b) a
non-labeled dodecapeptide (Mr 1,428.6). The
mass di#erence between c6 product ions in (a)
and (b) indicates that the c6product ion at m/z
773 in (a) is not formed via intramolecular hydrogen abstraction from the Ala (Ca) carbon.
Likewise, the mass di#erence between the c8῎d3
ion at m/z 946 in (a) and the c8ion at m/z 943
in (b) indicates that the c8 product ion at m/z
943 in (b) is not formed via intramolecular hydrogen abstraction from the Gly8 (Ca) carbon.
Therefore, the hydrogen required to form c products does not originate from the hydrogen on either the Caor Cacarbon.
が得られる῍ そのイメ῎ジを Fig. 3 に示す῍ Fig. 3 のようにῌ 適当な質量領域に限ればῌ ISD 現象で はタンパク質主鎖のアミノ酸間の結合が途切れることなく 分解し c-イオンを生成する῍ Fig. 1 に示したようにῌ c-イ オンの生成には水素移動を伴うためῌ NH῍Ca結合の分解 には共通の水素移動機構が存在するはずである῍ この機構 を解明するためにῌ 次の二つの仮説を立てて順次確認し た8)῍ 仮説 1. 分子内水素移動反応とともに NH῍Ca結合が開 裂する . 仮説 2. 分子間水素移動反応とともに NH῍Ca結合が開 裂する῍ 仮説 1 を確認するためにῌ 重水素化アラニン (Ala-d3) と重 水素化グリシン (Gly-d2) を導入したペプチドを合成し実 験したがῌ a 炭素上の重水素も b 炭素上の重水素も転移は 観測されなかった (Fig. 4). 一方ῌ ペプチドの活性水素を すべて重水素化しῌ 重水素化マトリックス (2,5-DHB-d3) を 用いて実験したところῌ 観測された c-イオンの質量はῌ マ トリックスからの重水素原子の移動を示唆するものであっ た (Fig. 5). 以下に分解機構の詳細を述べる῍ 3.3 HADはラジカルによって誘起される a 開裂 MALDI-TOF MS を使う ISD の機構はῌ 分子間水素移 動反応によるラジカル生成とそれによって誘起される a 開裂であることが証明されῌ 以下のように説明されてい る9)῍ ペプチドあるいはタンパク質分子はマトリックスの 結晶表面にありῌ ペプチド主鎖上のカルボニル酸素はマト
Fig. 5. Partial in-source decay spectra of (a) a deuterium dodecapeptide (M-d26, Mr 1,454.6) obtained with a deuterium
matrix 2,5-DHB-d3, and (b) a non-labeled dodecapeptide (M, Mr1,428.6) obtained with a 2,5-DHB matrix. In (a), the
the product c3῍d11at m/z 355 must be formed by deuterium abstraction and deuteronation. (c) As the molar ratio
of analyte to matrix is 1 : 7,000, both deuterium and deuteron originate from the matrix 2,5-DHB-d3.
Fig. 6. (a) X-ray crystallographic study and scanning probe atomic force microscopic study of the 2,5-DHB matrix with and without peptide incorporation into the matrix crystal suggest that the hydrophilic (100) surface of the matrix crystal is covered with peptide molecules.9) (b) Intermolecular hydrogen bonding between a carbonyl oxygen on
the peptide backbone and a phenolic hydrogen in the matrix may enable a hydrogen atom to move preferentially from the matrix to the backbone carbonyl oxygen immediately after photon absorption.
リックスの水酸基とあらかじめ水素結合している ῏Fig. 6 左ῐ῍ 以上の描像はῌ 原子間力顕微鏡 (AFM) 像 (Fig. 7) お よび 2,5-DHB の X 線結晶構造解析から得られた῍ マト リックス分子がレ῎ザ῎光を吸収すると励起して水素原子 とフェノキシラジカルに解離しῌ 水素原子はそのままペプ チド主鎖上のカルボニル酸素に結合してラジカル種を生成 する῏Fig. 6 右ῐ῍ ラジカル部位は結合開裂を生じさせる引 き金となりῌ その過程は一般に速く10), 11)ῌ 数ナノ秒以内に 起こる῍ Fig. 8 に一連の過程を示すがῌ 重要なことは水素 原子移動によってラジカル種が生成することである῍ 水素 原子の結合によって生じる分解であることからῌ この反応 を hydrogen-attachment dissociation (HAD) と呼ぶこと にする῍
3.4 HADと electron capture dissociation (ECD) と の共通性はラジカル生成 HAD の特徴はῌ タンパク質主鎖上のカルボニル酸素に 水素原子が結合しῌ カルボニル酸素が水酸基にカルボニル 炭素がラジカルになることである῍ そしてῌ ラジカル部位 に対して a 位にある NH῍Ca結合が単純開裂を生じる ῏a 開裂ῐ῍ このときの生成イオンは c-イオンと (zῑ2)-イオン である (Fig. 9). 一方ῌ タンパク質分子の NH῍Ca結合の特 異的分解は ECD にも見ることができるがῌ 生成イオンは c-イオンと z-イオンである12), 13)῍ エレクトロスプレ῎イオ ン化によって生成したタンパク質の多価プロトン化分子 [MῑnH]nῌに低速の電子が付加するとῌ 1 個のプロトンが 中性化して水素原子になる῍ この水素原子がタンパク質主
Fig. 7. Scanning probe atomic force microscopic images of the 2,5-DHB matrix (a) without and with ACTH peptide incorporation into the matrix crystal.9) After peptide incorporation the layered steps in the image (a) that form
on the (100) surface of 2,5-DHB disappear like in the image (b).
Fig. 8. Schematic illustration for the mechanism of c-ion and (zῑ2)-ion formation.9) The formation of both ions can be
explained by the a-cleavage of a transient hypervalent radical that formed via intermolecular hydrogen hydrogen transfer.
鎖のカルボニル酸素に移動し結合するとῌ カルボニル炭素 がラジカルになりῌ HAD と同様の機構によって NH῍Ca結
合の a 開裂が生じる῍ ECD と MALDI-ISD における HAD に共通する重要な過程はῌ 水素原子の結合によるラジカル 種の生成である῍ 他の共通性はῌ ラジカル誘起の a 開裂で あると同時にῌ エネルギ῎再分配が十分に起こる前に生じ る速い非エルゴ῎ド的な分解である12)ῌ14)῍ 水素原子の付 加とラジカル種の生成を原理とする非エルゴ῎ド的 MSD はῌ これまでのエネルギ῎蓄積型の CID のようなエル ゴ῎ド的 MSD とは全く異なる特徴をもつ῍
3.5 MALDI-ISDは energy-sudden desorption (ESD) 法に特有の現象 MALDI において観測される ISD 現象すなわち c-イオ ンと (zῒ2)-イオンの生成はῌ 1981 年ῌ Williams らにより FABMS のペプチド分析への応用においてすでに報告さ れている15)῍ その後ῌ Kenny ら16)および Biemann17)に よってペプチドの LSIMS および FABMS においても c-イオンの観測が報告されῌ 負イオン FABMS でも c-イオ ンの生成が確認されている18)῍ この当時はまだ分解機構ま では議論されなかったがῌ プラズマ脱離 (plasma desorp-tion, PD) 法の使用でも c-イオンを生成させることが報告 されている19)῍ すなわちῌ ペプチド主鎖上の NH῍C a結合 の分解に由来する c-イオンの生成はῌ FAB ῐLSIMS を含 むῑ や PD などの高速粒子衝撃や MALDI のようなエネル ギ῎衝撃などのῌ いわゆる energy-sudden desorption (ESD) 法に特有であることが理解される14)῍ 3.6 ISDと PSD の違い
In-source decay (ISD) と post-source decay (PSD) の “source” とはῌ イオン源 (ion source) またはイオン化室の ことである῍ ISD とはイオン化室での分解の意味でありῌ PSD とはイオンが加速されてイオン化室から出た後での 分解という意味である῍ したがってῌ ISD と PSD ではイオ ンが生成してから分解が起こるまでの時間もῌ 分解の起こ る装置中での位置も異なる (Fig. 10). ISD によって生成し たフラグメントイオン mi(iΐ1, 2, 3,῏) はῌ プロトン化分 子 [MῒH]῍と一緒にイオン源で加速されῌ 分析管を通過 して検出器に達するのでῌ 通常の MALDI-TOF マススペ
Fig. 9. Hydrogen attachment dissociation (HAD) occurs via a-cleavage of a peptide radical.
Fig. 10. Schematic illustration of reflectron time-of-flight mass spectrometer equipped with matrix-assisted laser desorption/ionization. In-source decay occurs within nano-s order in the ionization cell, while post-source decay occurs within micro-s order in the flight-tube.
Fig. 11. (a) In-source decay spectrum and (b) post-source decay spectrum of substance P (RPKPQQFFGLM῍NH2,
Mr1,347.7).
クトルのピ῏クとして観測される῍ 一方ῌ PSD によって生 成したフラグメントイオンはῌ プロトン化分子 [MΐH]ῌ が加速されてイオン源から射出された後ῌ リフレクトロン TOF MS の分析管を飛行中に分解して生成したものであ る῍ この場合ῌ 飛行中の [MΐH]ῌの準安定分解によって 生成したフラグメントイオン mi῎ (i1, 2, 3,ῐ) のピ῏ク ῑ準安定ピ῏クῒ はῌ 本来のフラグメントイオンの質量 mi (i1, 2, 3,ῐ) の位置には観測されずῌ マススペクトル上の [MΐH]ῌと miの間にブロ῏ドなピ῏クとして観測され る14)῍ PSD 法はῌ [MΐH]ῌと m iの間の mi῎の位置に観測 される準安定ピ῏クをῌ 本来の質量 miの値に修正するた めの技術である῍ ISD と PSD はῌ そのスペクトルに顕著な違いが見られ る῍ Fig. 11 にはサブスタンス P (RPKPQQFFGLM-NH2, Mr1,347.7) の (a) ISD スペクトルと (b) PSD スペクトルを 比較してある῍ ISD スペクトルの特徴はῌ 主として質量差 45 u の c-イオンと a-イオンが対ピ῏クで観測されること である῍ またῌ Gly9 の N-末端側の NH῍Ca結合の分解によ る c8-イオンのピ῏ク強度は比較的弱くῌ さらに Gly9 の C-末端側の Ca῍CO 結合の分解に由来する a9-イオンは観測 されない῍ これらは MALDI-ISD に一般的な特徴であるこ とがわかっている14)῍ ISD の分解上の特徴は 4.1 で詳述す る῍ 一方ῌ PSD スペクトルではῌ a-イオンと (a17)-イオン の出現が特徴的である῍ またῌ インモニウムイオンも観測 されるがῌ 一般に PSD スペクトルには通常の生成イオン の他に脱アンモニアや脱 H2O などの副次分解物のピ῏ク も観測されῌ 分解が進みすぎて解析が困難になることも多 い῍ 4. HADを使うプロテオῌム解析 2000 年 6 月 26 日にヒトゲノムのドラフトシ῏ケンス の解読完了が宣言されたことは記憶に新しい῍ その意味す るところは全塩基配列解析の終了でありῌ DNA 解読技術 と計算機技術の勝利といえる῍ しかしῌ DNA 上にコ῏ド された遺伝子部分 ῑエキソンῒ と一見して無意味な介在配 列部分 ῑイントロンῒ とが生物の成長と分化に対してどの ような機能と役割を負っているのかなどῌ 真に意味のある ゲノム解析はスタ῏トラインに立ったばかりである῍ 一 方ῌ さまざまな生物種ゲノムから発現された全成熟タンパ ク質の解析ῌ すなわちプロテオ῏ム解析はῌ その基幹技術 としてタンパク質の分離技術と同定技術を必要とする῍ こ れらの技術を駆使しῌ タンパク質の発現状況が生物の成長 ῑ時間軸ῒ と分化 ῑ空間軸ῒ の両軸にわたってプロットでき た段階でῌ 初めてタンパク質の機能と役割そしてタンパク 質間相互作用などを解明するためのスタ῏トラインに立て ることになる῍ ヒトゲノムの解読完了をプロテオ῏ム解析 に対比させてみるとῌ まずは発現した全タンパク質をῌ ヒ トの成長῎分化の各段階にプロットしていく作業を完成さ せなければならない῍ この作業には途方もない時間を要す るように思えるがῌ 10 年前にはヒトゲノムの解読も 100 年以上を要すると見積もられていたことを忘れてはならな い῍ しかしῌ DNA 解読技術と計算機技術の向上および卓 越した一企業 ῑセレ῏ラジェノミクス社ῒ の戦略 ῑショッ トガン法ῒ によりῌ 10 カ月にも満たないうちにヒトゲノム はほぼ解読されてしまった῍ 同社は現在プロテオ῏ム解析 に乗り出しῌ その主要機器にマススペクトロメ῏タ῏を据 えている῍ しかしῌ 特定の生物種に限っても発現タンパク 質のすべてを同定するにはῌ まだ越えなければならないい くつもの技術的困難が待ち受けている῍ 例えばῌ タンパク 質の迅速な分離と抽出そして迅速な同定技術の開発であ る῍ 以下にはῌ タンパク質の迅速同定に新たな可能性を拓 く技術としてῌ MALDI-TOF MS を用いた HAD のタンパ ク質の直接シ῏ケンシングへの応用を述べる῍ 4.1 ペプチド主鎖の分解に対する HAD の特徴 MALDI-ISD を使う HAD にはῌ 従来の MSD 法である CID や PSD にはないさまざまな特徴がある῍ それらを以 下に列挙する῍ 1. 酵素消化なしでタンパク質を直接測定しῌ アミノ酸 配列情報を得られる῍ 2. 分解は数ナノ秒以内にイオン化室で起こる῍ 3. ペプチド主鎖の NH῍Ca結合の分解は a 開裂῍ 4. 生成イオンは [MΐH]ῌや [MH]῍からではなく 中性分子 M から生じる῍ すなわちῌ 分解とイオン化 とは独立に起こる῍ 5. グリシンおよびバリン残基の N-末端側の NH῍Ca結 合は切れにくい῍ 6. プロリン残基の N-末端側の NH῍Ca結合は切れな い῍ 7. NH῍Ca結合の分解しやすさに関してアミノ酸特異 性はない῍ 8. ペプチドでは c-イオンに b- あるいは a-イオンが付 随して観測されるがῌ グリシン残基の C-末端側の Ca῍CO 結合の分解に由来する a-イオンは観測され ない῍ 9. 観測される生成イオンはῌ 塩基性または酸性アミノ 酸の有無と位置に依存する῍ 特にペプチドにおける 生成イオンは構成アミノ酸の性質に強く依存する῍ 10. C-末端側に塩基性アミノ酸が存在するとῌ y-イオン と (zΐ2)-イオンが観測されやすい῍ 11. y-イオンには準安定ピ῏クが観測されるがῌ (zΐ2)-イオンには観測されない῍ 12. ISD の効率はマトリックスに強く依存しῌ 2,5-ジヒ ドロキシ安息香酸 (2,5-DHB) が最適῍ 13. ペプチドῌ タンパク質ともに混合物の分析には向か ない῍ 14. 負イオンモ῏ドの ISD では生成イオンは観測され にくい῍ 以上の特徴はῌ 特にペプチドの ISD スペクトルを解析す る際に有用となる῍ タンパク質において観測される生成イ オンは圧倒的に c-イオンが多くῌ その他には y-イオンと (zΐ2)-イオンが 15 u 差の対ピ῏クとして観測されること ῌ344ῌ
もある῍ またMr10,000 以上のタンパク質ではῌ m/z 2,000 ῐ5,000 程度の領域に生成イオンのピ῏ク群が集中的に観 測される傾向がある῍ ISD 現象を生じさせるための試料調製の方法に特別な技 術はないがῌ 以下にその手順を述べておく῍ MALDI-ISD 用のマトリックスには主として 2,5-DHB が使われῌ 0.1ῒ 程度の TFA を含むアセトニトリル水溶液 (50ῒ, v/v) に 混合溶解しῌ その飽和溶液をマトリックス溶液として使用 する῍ タンパク質試料との混合に際してはῌ マトリックス とタンパク質のモル比が 10,000 : 1 程度になるように調製 すると良い῍ 溶媒の除去は自然乾燥である῍ 2,5-DHB を使 うと針状結晶が成長するがῌ このときタンパク質分子はマ トリックスの結晶表面を覆うようになる῍ X 線結晶解析と 原子間力顕微鏡像の結果によればῌ マトリックス結晶表面 上には 2,5-DHB 分子の水酸基が露出しているためῌ タン パク質分子はそれら水酸基群の上に乗るような形で覆って いる9)῍ 4.2 HADによるペプチドシῌケンシング ペプチドにおいて観測される生成イオンはῌ 塩基性アミ ノ酸 (Lys, Arg, His) の位置に強く依存する῍ N-末端に塩 基性アミノ酸が存在すると a-, b-, c-イオンが優先的に観測 される῍ 逆に C-末端に塩基性アミノ酸が存在すると y- と (zῑ2)-イオンが優先的に観測される῍ 特にアルギニン残基 とリシン残基の位置に強く影響されることが報告されてい る7)῍ 塩基性アミノ酸がペプチド分子の中間領域や C-末端 側ῌ N-末端側の両方に存在する場合にはῌ 種῎の生成イオ ンが入り混じることもある῍ 図 10a の y9-イオンのピ῏ク はその例である῍ 実際の解析にあたっては次の経験則が参 考になる῍ 1. c-イオンは a-イオンを伴って観測されることが多 くῌ その質量差は 45 u である῍ 2. (zῑ2)-イオンは y-イオンを伴って観測されることが 多くῌ その質量差は 15 u である῍ HAD を使うペプチドのアミノ酸配列解析において最も 有用なのはῌ リン酸化ペプチド20), 21)やスルホン酸化ペプ チド8)への応用である῍ これらの修飾ペプチドの分析ではῌ レ῏ザ῏光の照射によってセリンやチロシンに結合してい るリン酸基やスルホン酸基が脱離しないためῌ それらのア ミノ酸残基と修飾位置の同定が可能になる῍ Fig. 12 にはῌ スルホン酸化チロシン (Tyr27) を含む豚 のコレシストキニン (CCK-33) の ISD スペクトルを示す8)῍ KAPSGRVSMIKNLQSLDPSHRISDRDY(SO3 H)MGW-MDF῍NH2 (Mr 3,918.3) のアミノ酸配列をもつ CCK-33 はῌ N-末端側に塩基性アミノ酸を含む傾向がありῌ 生成イ オンもほとんどが c-イオンである῍ 全体スペクトルにはプ ロトン化分子 [MῑH]ῌのほかにῌ スルホン酸基の脱離 (῍SO3) に由来するピ῏ク m/z 3,840 も観測される῍ またῌ c26-イオンと c27-イオンの間の質量差からῌ スルホン酸基を 含む位置とアミノ酸残基が推定される῍ 4.3 HADによるタンパク質の直接シῌケンシング 酵素消化を使わずにῌ 相対分子質量 Mr10,000 以上のタ ンパク質のアミノ酸配列情報を直接得られることには大き な意味がある῍ 現在よりハイスル῏プット化を可能にする 何らかのタンパク質分離技術を用いῌ 分離後のタンパク質 を直接シ῏ケンシングできればῌ 現状よりもスピ῏ドアッ プしたプロテオ῏ム解析が可能となるからである῍ 以下に はῌ MALDI-ISD を使ったタンパク質の直接シ῏ケンシン グの例を挙げる῍ 分解の原理はῌ 水素原子付加によるタン パク質ラジカル種の生成と続く a 開裂ῌ すなわち HAD で ある῍ Fig. 13 にはῌ 馬のアポミオグロビン (Mr16,951) の全体 の ISD スペクトルを示す῍ 本スペクトルの低質量領域 m/ z 2,000 から 6,000 辺りには HAD による生成イオンが観 測される῍ タンパク質では主として c-イオンが観測されῌ a-イオンを伴うことはほとんどない῍ またῌ (zῑ2)-イオン は質量差 15 u の y-イオンを伴う対ピ῏クとして観測され
Fig. 12. In-source decay spectrum of sulfonated tyrosine-containing peptide CCK-33 (Mr3,918.3).
るためῌ 解析は比較的簡単に進む῍ 例えばῌ m/z 2,000 か ら 4,000 付近には c-イオンに混ざって 15 u 質量差の対 ピ῎クが観測されῌ (zῑ2)-イオンと y-イオンであることが 推定される (Fig. 14). 一方ῌ 質量領域 m/z 4,000 から 6,000 辺りには主として c-イオンのピ῎ク群が観測されῌ 内部アミノ酸配列を推定 することができる (Fig. 15). 観測される c-イオン群におい てῌ 隣合うピ῎ク間の質量差がアミノ酸の質量に対応する のでῌ 各質量差をアミノ酸に置き換えて並べればアミノ酸 配列が得られる῍ Fig. 15 の c38から c51までのピ῎ク間の質量差を左から 並べると次のようになる῍ 101῍113῍129῍128῍147῍115῍128῍148῍128῍136῍ 115῍128῍100 各質量差にῌ アミノ酸の質量をあてはめると以下のアミノ 酸配列を得る῍ T--L or I--E--Q or K῍F῍D--Q or K῍F῍Q or K῍H῍D῍Q or K῍T or V この配列からはいくつかの候補が考えられるがῌ 可能な組 合を Web 上の解析ソフト ῏例えば http://www2.ebi.ac. uk/fasta33/ῐ に入力すればῌ タンパク質候補を得ること ができる῍ Protein Data Bank に収載されている馬ミオグ ロビンの対応するアミノ酸配列は以下のようである῍ T῍L῍E῍K῍F῍D῍K῍F῍K῍H῍L῍K--T C-末端側から 3 番目のアミノ酸 (L) だけが推定構造 (D) と 違っているがῌ 他は比較的一致はよいと言える῍ 各ピ῎ク の S/N と質量決定精度が向上すればさらに正確な推定が 可能になるがῌ 上記のようなデ῎タベ῎スとの本質的な不 一致が生じる場合にはῌ 異なるデ῎タベ῎スを使用してみ るかῌ あるいはゲノム配列デ῎タベ῎スも併用する必要が ある῍ 実際ῌ デ῎タベ῎スの不完全さや不備はしばしば指 摘されるところである῍ さらに以下にはῌ S῍S 結合を含む 牛の ribonuclease A (Mr13,682), マッコウクジラのアポ
ミ オ グ ロ ビ ン (Mr 17,200), cucumber green mottle
mosaic virus (CGMMV) のコ῎トタンパク質(Mr17,305), 馬のチトクロム c (Mr 12,360) の部分 ISD スペクトルを示 す῍ Fig. 16 に示した牛の ribonuclease A (Mr13,682) ではῌ c-イオンの観測される質量領域が m/z 1,000 から 3,000 と 低質量であるためῌ 各 c-イオンの同位体ピ῎クまで観測で
Fig. 13. In-source decay spectrum of horse hurt apomyoglobin (Mr16,951).
Fig. 14. Partial in-source decay spectrum of horse hurt apomyoglobin (Mr 16,951). Dot indicates a pair of (zῑ2)- and
y-ions in the mass di#erence 15 u.
Fig. 15. Partial in-source decay spectrum of horse hurt apomyoglobin (Mr16,951). Internal amino-acid sequence can be
elucidated from the observed c-ions.
き る῍ 消 化 管 ホ ル モ ン の 一 つ で あ る グ ル カ ゴ ン (Mr 3,482.8) は相対分子質量が比較的小さいためῌ 各生成イオ ンの同位体ピ῎クまで観測される (Fig. 20). しかしῌ 同位 体ピ῎クは理論パタ῎ンと一致しているとは言えずῌ 微量 解析と MALDI の原理に付随して生じるピ῎ク強度の変 動は避けることができない῍ このためῌ c-イオンの質量決 定精度とピ῎ク間の質量差の読み取り精度にはまだ問題が 残されている῍ 5. ま と め 本稿では新規の MS 分解法として MALDI-TOF MS を 用いた ISD 法を述べた῍ またῌ ISD を可能にしている原理 としてῌ ペプチド主鎖への水素原子の付加とペプチドラジ カルまたはタンパク質ラジカルの生成ῌ それに続く非エル ゴ῎ド的な a 開裂を hydrogen-attachment dissociation (HAD) と 名 づ け た῍ HAD のῌ こ れ ま で の MS 分 解 法 ῏CID, PSD, SID などῐ との違いと特徴を述べるとともにῌ さまざまなタンパク質への具体的な応用を紹介した῍
Fig. 16. Partial in-source decay spectrumof bovine ribonuclease A (Mr13,682). Fragment ions of c26or above were not
observed due to the presence of a disulfide bond at Cys26.
Fig. 17. Partial in-source decay spectrumof spermwhale apomyoglobin (Mr 17,200). Fragment ion of c36 was not
observed due to the presence of Pro37.
Fig. 18. Partial in-source decay spectrum of the coat protein of cucumber green mottle mosaic virus (Mr17,305).
Fig. 19. In-source decay spectrumof equine cytochrome c (Mr12,360). Fragment ions of c43and c44were not observed
due to the presence of Pro44 and Gly45.
MALDI-ISD の原理が解明されたことによりῌ タンパク質 の直接シ῏ケンシングの実用化に向けῌ 生成したイオン群 の読み取りと部分アミノ酸配列候補の作成ῌ つづいてデ῏ タベ῏ス検索まで自動的に行う解析ソフトが開発されてい る22)῍ 微量タンパク質の直接シ῏ケンシングはῌ ポストエドマ ン法としてタンパク質研究者から希求され続けている技術 である῍ 自動エドマン法が完成されているとはいえῌ 一残 基の読み取りに 30 分程度を要しῌ プロテオ῏ム解析の照 準となっている成熟タンパク質の半数以上が N-末端をブ ロックされている状況ではῌ ハイスル῏プット直接シ῏ケ ンシングはタンパク質研究者から要望の強い技術に違いな い῍ 今後の課題はῌ c-イオンなどの生成イオンの質量決定 精度とそれに関連する同位体ピ῏クパタ῏ンの安定再現性 を確保することῌ そして HAD の効率を高めて c-イオンの ピ῏ク強度を高くすることである῍ これによりῌ 部分アミ ノ酸配列の推定精度が向上しῌ デ῏タベ῏ス検索によるタ ンパク質のヒット率も向上するに違いない῍ 謝 辞 本研究遂行のために使われた MATSUDA ファ ンド ῐ日本電子ῑ に対し日本電子株式会社および松田 久 先生 ῐ阪大名誉教授ῑ に厚くお礼申し上げます῍ 本邦のプ ロテオ῏ム研究の牽引役として初のプロテオ῏ムワ῏ク ショップῐ大阪大学たんぱく質研究所ῌ 1997 年 5 月ῑ を組 織した次田 晧先生 ῐ元 東京理科大学生命科学研究所教 授ῌ 現 日本プロテオ῏ム機構 JHUPO 会長ῑ にはῌ 1996 年よりタンパク質の新規アミノ酸配列解析法の開発研究に 参加させていただきました῍ MALDI-ISD 現象はその研究 途上で偶然発見されたものです῍ この現象解明に向けῌ 種῎のタンパク質を用いて現在まで変わらぬご指導とご理 解をいただきました次田 晧先生に深く感謝申し上げま す῍ 本稿はῌ 2001 年 11 月 26 日ῌ 日本電子 MS ユ῏ザ῏ズ ミ῏ティング特別講演の内容を改変修正したものである῍ 文 献
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Keywords: MALDI, In-source decay, Mass spectrometric deg-radation, Hydrogen-attachment dissociation