作 物研 究 55:
27−32
(2010
) 1論
文
水 収
支
モ
デ
ル の
“丹 波 黒
”ダ
イズ 栽 培
農
家 圃 場
への
適 用
本 間香 貴 1>・
岡 井 仁 志2)・
黒 瀬義孝
3)・
須藤
健一
4 尾崎 耕二 2)・自
岩立彦1)・
田中 朋之 1) ° 京 都 大 学 大 学 院農 学 研 究 科 (〒606 − 8502
京 都 市 左 京 区 北 白川 追 分 町 )2} 京都 府 農 林センタ
ー
(〒621 −0806
亀 岡 市 余 部 町和 久 成9
)3 ) 近 畿中 国四 国 農業研 究セ ン タ
ー
(〒721 − 8514
福山 市 西 深津町6 − 12− 1
) ‘) 兵 庫 県立農 林 水 産技 術 総 合センター
(〒679−
Ol98 加 西 市 別 府 町 南ノ岡 甲1533) 要 旨:農家 圃場に おける潅 水 適 期 診 断の一
助とし て開発し た水 収 支モ デ ルを.
実 農 家圃場に適用 し た.
2圃 場におい てモ デル の出 力 値である有 効土 壌 水 分 量 (Ave>を 土 壌 体 積 含 水率 (SMC )に変 換 し最 適化を 行っ た とこ ろ,
実W6
SMc とR2=0.
75
お よび0.
53
で一
致し,
モデ ル は農 家圃場にお け る 水 分 変 動 を 評 価 しうる と考 えられた,
モ デ ルを実 際に運 用する に当たっ て は,
各農 家 圃場に固有のパ ラ メー
タ である有 効土壌 水 分 保持 能 力 (AWHC )を推定 する必 要が ある.
本研 究では黒 瀬 (2007>による簡 易土壌水 分計を用いた推 定 方 法につ い て検 討を行っ た.
デー
タ 数 が 少 ない もの の.
簡易土 壌 水 分 計 に お け る1
日 当 た りの指 示 値の変 化 量 (AIR
)とモデルによる有 効 土 壌 水分 比 (Aw /AWHC )との間に は直 線関係が み られ たため,
その関係 を解 析に用い た,
AWHC は3期 間における水 分 計の指 示値 (IR)の変 化量 を用い ることに より推 定でき,
圃場 間 で24〜73mm
の範 囲 を 示 し た.
さ ら に 推定したAWHC の値を 用い ること に よ り,
IRの推 移 を予測 す るこ と が出来た.
今 後,
さ ら に観 測 数 を増や し,
信 頼 性 を高め てい くことが重 要と考 えられ た.
キー
ワー
ド;潅水適期 診断,
簡 易土壌 水 分 計,
有効土壌 水 分量,
±壌 体 積含 水 率,
農家 圃 場緒
言材
料お よび 方法 丹 波地域を特 産とする“
丹 波黒”
ダ イ ズ は,
開 花 期が夏 期の高 温 乾 燥 時にあ た り,
潅 水 が 必 須 技 術とさ れてきた (松 山 ら2003
),
し か し なが ら近 年,
同 地 域で は立 ち 枯 れ 性 病 害の増 加が指 摘 され てお り (樋 本2006
),
潅水による病 気 の蔓延 が懸念さ れてい る.
また,
開花 期の潅水は逆に落花 を促 す場合もある た め 〈古 谷 2003 >.
潅 水の要否お よ び適 期 診 断技 術の確立 が求め ら れて い る.
筆者ら はこれまで にそのた めの一
助と し て,
丹 波 黒ダ イ ズ栽培 圃場に おける 土壌水分 変動を 評価する た め の水 収支 モ デ ル を開発し て き た (本間ら2008
).
本 間ら (2008
>は Ritchie(1972
)をもと に改良し た水収支モデルで,
根 域を 制 限し た環 境である ドレー
ンベ ッ ドや,
試 験 場内の管理 さ れ た圃 場における 土壌 水 分 変 動を予 測 可 能であること を示 し た,
し か しなが らその水 収 支モデルを実 際の農 家 圃 場に 適用 するた めに は,
各 圃場に固有のパ ラ メー
タ である有 効 土 壌 水 分 保 持 能 力 (AWHC
)の推 定 方 法 を確立 する必 要が ある,
そこで本 研 究で は,
水 収 支モデルを農家 圃場に適 用 し,
AWHC 推 定 方 法の一
つ と し て黒 瀬 (2007
)に よ る簡 易 土 壌 水 分 計の使 用につ い て検 討 を行っ た,
2010年4月30日受理連 絡 責 任 者 :本間 香 貴 (homina@kals
.
kyote
−
u.
ac.
jp
>水収 支モ デル 本 間 ら (
2008
) はRitchie
(1972
)の モ デル を 基に,
水 収 支モ デル を開発 した.
こ こで はその モデルの概 略 を示 す.
圃 場に おける1
日単 位の水収 支は次 式で表さ れ る.
△Aw
=
Pr+ Ig−
Et一
Dr(
1
)ただしAveは根圏の有 効土壌水分含量
,
Prは降水 量,
Ig は潅漑量,
Et は蒸 発 散 量,
Dr は浸 透・
流 出量 を示す.
Aw がモ デル に おける 目的変数と な る.
EtはAw の 関 数と し,
Rosenthalら (1977
)を参考に次式で定 義した,
Et=
Et, Aw ≧0,
3
AWHC
Et
=
Etp Aw / (0.
3 AWHC ) Aw く0.
3
AWHC (2
)た だ し册。は可 能 蒸 発 散 量
.
本 研 究で は平 均 気温 と 日射 量か らPriestly and Taylor (1972
)に よ る式 を用い てEらを推 定した
.
AWHC は根 圏の有効土壌 水分保持 能力 (Available Water−
Holding Capacity)を示し,
各圃 場に固膚の パラ メー
タ で あ る
.
第
2
式で はAw=0
の ときEt=O
で ある.
しか し な が ら本 問ら (2008
)の実 圃 場 条件で は計 算 上Aw=0
と なる ような 土壌体積含水率 (SMC :Soil MoistUre Content)で も,
S4C の実 測 値は低 下し続 け た
.
これは実 際の 圃 場 条 件では下層か らの水の供 給に よ り
.
蒸散が0
に な ら ない た め と 考え ら れ た.
そこ で第2式の Aw く0,
06
AWHC に おい て次 式 を 追 加 し た (第1図 ).
瀞
岩
一
〇、
20
i
O
,
31,
0
0.
06 A
曜AWHC
第1図 有 効 土 壌 水 分 比 (Aw /AWHC )と蒸発散比 (Et/ Etp)の関 係 (実 線).
Rosenthal (1977)の 関係 式 に第2’
式を導入 した.
従っ てAw は負 数 も取 りうると し た,
ま たAw
>AWHC
に おいて浸 透・
流出が生じ るとし,
それ は次 式で示さ れ る,
DR
=
a(Aw−
AWHC ) Aw >AWHC (3
)a は圃 場の浸 透
・
流 出の し易さを示すパ ラ メー
タ.
本研 究は夏 期の乾 燥 時期を対 象と してい る.
従っ て Arv> AWHC となる事 象は起こ りに く く,
a の値の影 響は非 常に 小さい.
そこで a=0.
8
を定 数 と して用いた,
水 収 支モ デルに おける目 的変 数である有効土 壌 水 分 含 量 (Aw )は,
有 効土層の深さ (Sd )お よ びAw=0
の時の土 壌 体 積 含 水 率 (SMC 。)を用い る と次式に よ りSMC に変換 で きる.
SMC=
SMCo + Aw/Sd (4) 丹波 黒 ダイ ズ栽培 圃場に お け る計 測2008
年に京丹 波 町冨 田 の農 家圃場15
筆 (京丹波町),
南丹 市 日吉 町殿 田の農家圃場8
筆 (日吉町)に おいて簡易 土 壌 水 分 計 (黒 瀬2007)に より土 壌 水 分 変 動を測 定 した.
簡 易土壌 水 分 計は ポー
ラス カ ップ に内径13mm
長さ1m
の 透 明塩ビ管が付い た形 状 を持ち,
最上端は シ リコ ン栓でふ た をする.
ポー
ラス カ ップ に接 し た 土壌が乾燥する と (pF2.
8
以下〉塩 ビ管内の水が減 少 する仕 組み で あ る (第2
図),
乾 燥が続 く限 り水は減 少し続 ける た め,
簡 易土壌水 分 計の水 位は乾 燥 程 度× 日数を示 すと考え ら れ る.
以下,
簡 易 土 壌 水 分 計の水 位の減 少 量 を指示 値と表 記し,Ocm
を 初 期 値,83cm
を最 大 値として表 す.
指 示 値が最 大 値 を 示 す もしくは一
両日内に最 大 値 を示 すと思わ れる場 合は,
シ リコ ン栓を抜 き水を入 れ初 期値に戻 す(リセ ッ ト〉,
リセ ッ ト前の指示 値に リ セ ッ ト後の指示値を積 算し た値は積 算指 示 値 と表 記 する.
降雨 や潅 水に より土 壌が十 分に湿る と水 分 計の水 位は ほぼ 0に回復 するが,
完 全に0
に戻る こと は ない.
その場 合.
降 雨や潅 水 前の値を積 算 指 示 値に組み込 み,
水分計に は水を足 し初 期 値に戻 す.
簡 易 土 壌 水 分 計は畝 中央,
株 と株の 中 間に設 置し.
ポー
ラ スカッ プの中 心 部 が 畝上部 か ら深 さ20cm になる ように シ リ コ ン 栓 指 示 1 乾 燥によ り 値 m 水位 減 少 長一
透 明 塩 ビ 84cm 管津
繍
耋・
:ポ:::.
・
1・
,
・
歪0己向:・
:「
ラ・
:・
.
’
ス’
.
’
.
’
力膕
.
’
第2図 黒瀬(2006)による簡易土 壌 水 分 計の模式 図.
ポー
ラ ス カップ に接し た 土 壌 が乾 燥 する と (pF2,
8以 下)塩ビ管 内の水が減少 する.
水 位の減少量 を指 示 値と表 記 する.
埋 設し た.
設 置は7
月11
日 に行っ た.
設 置後1
週 間に2
〜3
回水 分 計の指 示値を 記 録 し た.
潅 水や 農 薬散 布な どの 栽 培 管理 は農 家が 通常 通 り行い.
潅 水日 は農 家へ の聞き取 りや土 壌の状 態 を 見て推 定 した.
測 定 は9
月13
日 まで行っ た,
潅 水 量は計 測 不 可 能であっ た た め,
50mm
と してモデ ルの計 算に 用い た.
京丹 波町 お よび日吉町の調査 圃場より各1
筆選 択 し,
TDR 土壌水分 計 (EC−
5,
ECHO )を用い て土壌 体積含 水 率 (SMC )を計 測し た.
各 筆3反 復で計 測を行い,
プロー
ブの中 心が畝上部か らの深 さ20cm になる ように水 平に埋 設 し,
デー
タロ ガー
(Em5b,
ECHO )を用い て自動 計 測 を行っ た.
AM6 時に おける 土壌水分 を計測日の SMC と し て解析に用いた,
調 査 地 点に最 も近い アメ ダ ス の観 測 地 点は須 知 (京 丹 波 町)で あ る が,
降雨量 しか計測 し てい ない.
そこで降爾 量 に は須 知の ア メ ダス デー
タ を用い,
日平 均気温お よ び 日照 時 問は園 部 (南 丹 市 園部 町)に おけるア メダスのデー
タ を 用いた.
日射量 は 日照 時 間と近 藤ら (1991
)の式に基づい て求め た.
結 果 土 壌体積含水率 (SMC )の モデルに よ る推定値と実測 値と の誤差が最 小と な る ように.
第2 〜4
式に おける有 効土壌水 分保持 能力 (AWHC ),
有効土壌 水 分が0
となる (Aw=
0) 土壌 体 積 含水率 (SMC 。)お よ び有効 ± 層の深さ (Sd )に関 して,
非 線 形 最 小二 乗 法であるシ ンプレッ クス法 を用い て 最 適 化を行っ た.
京 丹 波 町の調 査 農 家 圃 場で は AWHC=
30.
5mm .
SMC 。=O.
18
m2 m−
3,
Sd= 223
mm,
Rz=0.
53,
日吉 町の圃 場で は そ れ ぞ れ 58.
Omm.
0,
09m3 m一
舵387mm,
0.
75
の値が得 られ た.
この値 を用い て推 定し たSMC は実水 収支モデル の
“
丹波 黒”
ダ イ ズ 栽培農家 圃場へ の適 用 測値の変 動と 比較 的よく適合 し,
本 間 ら (2008)によ る水 収 支モ デルは実 際の農家圃場に おける 土壌 水分変 動 も予測 し うる と考 えら れ た (第3
図 ).
水 収 支モ デル の実 用に当たっ ては,
モデル の 目的 変数で あるAw と圃 場 固 有のパ ラメー
タであるAWHC があ れば,
第1
図のように有 効 土 壌 水 分 比 (Aw/AWHC > を用いて植 物に とっ ての土壌 水分状 態 を示 すこ と が出 来る,
従っ て SMC 。とSd を 推定す る 必 要 が な く,
AWHC だけ推 定でき れ ば よい,
そこ で簡 易 土 壌 水 分 計 (黒 瀬2007
)を用い たAWHC
の推 定 方 法につ いて検 討 を 行っ た.
上 述の SMC 計 測 圃 場において,
最 適 化 さ れ たパ ラメー
タを用い て 日々 の Aw/AWHC を求め,
さらに簡 易 土 壌 水 分計の計測値か ら1
日当た りの指示値の変 化 量 (△IR)を 求め.
両 者の関 係を検 討し た (第4
図 ).
点 数が少ない も の の,
Aw/AWHC が O.
75以 上で は △IRは ほ ぼ 0を示 し,
Aw /AWHC が減 少 する につ れ て △IRは増加し た.
そ こで 0.
3 ∈ 0,
2 監ご
ミ の0.
1
3 0.
0 210230
250 270 290 310DOY
第3図 京都 府南丹市日吉町大 向の調 査 圃場(圃 場番号1; 第5図 参 照)に お け る 土壌 水 分 (SMC )の実 測 値 (x)とモデルによ る推 定 値 (線 ).
DOY (Days ofYear) 213
=
8/1,
244=
9/1.
3020
羣
1
〈10
0
Aw/AWHC( mm−
1) 0 第4図 モ デ ル の 出力 値で あ る有 効土壌 水 分比 (Aw / AWHC )と簡易土壌水分 計の一
日あたりの指 示 値 の変化 量 (AIR)との関 係.
回帰式 は 京丹波 町 冨 田に おけるAw /AWHC > 0.
75 (○ )の値 を除い て算 出 した.
Aw/AWHC が0.
75
以 上の点を省き,
直線回帰に より得ら れ た次式を以下の解析で用い た.
△IR=− 31.
2
Aw/AWHC
+17.
3
Aw/AWHC
く0.
75
(5) △IR=
・
O
Aw/AWHC
≧0.
75
モ デル に よ る出 力 値Aw/AWHC は第5
式に より△IR に 変 換 され,
そ れ を積 算 するこ と に より簡 易 土 壌 水 分 計の指 示値 (1R)に変 換 するこ とが出 来る.
SMC 計 測圃場に おいて,
上述の ように し て推 定し たIR と実測の IRからAWHC の最適化を行っ た.
実 用を考 える と数 点の実 測IRで最 適 化 するのが 望 ま しいが,
IRは積 算 値で あ るた め初 期 に 誤 差 が あ るとそのま ま解 消 さ れ ない.
そこである期 間 を選 択 し,
その 間の IRの変 化 量 を用い る ことに し た.
あ る1
期 間や2
期 間の IRの変化 量 を用いた 場 合,
AWHC の 推 定 値がSMC を 用い た推 定 値と一
致し な い場 合が あ り,
ほ ぼ一
致し た結 果を得る た めには最 低で も あ る3
期 間の変 化 量 を用い る必 要 が あっ た (デー
タ省 略 ).
そこ で簡易 土壌 水 分 計の計 測 期 間の前 半に おいて,
ある程 度の指 示 値の変 化 量 が 見 られた3
期 間 を選 択 しAWHC
を 推定し た とこ ろ (第6
図参照),
京丹 波町の 圃場で33.
5,
賠 町の圃場で 54,
3
と,
上 述の SMC を用い 雛 定 値と ほ ぼ一
致し,
推 定に用い た期 間後の IR値の変 動と も比 較 的よく一
致し た,
簡 易 土 壌 水 分 計に よ る計 測 を行っ た 全 圃場に おいて,
同 じ3
期 間に おけるIRの変化量 を用い てAWHC を推定し た (第5
図).
第5
図で は誤差 は AWHC が増 加 する につ れ減 少 し.
ある点で極 小と なり再び増 加 する.一
部の圃 場につ い ては さ らに AWHC を増 加させ ると,
ある点で極 大 をとっ たのち 再び減 少に転 ずる.
これ はある点 を境に,
指 示 値が0
の ま ま全 く変化 しない場 合の誤 差 (推 定に用いた実 測IR の変 化 量の平 均値 )に近 付い てい くた め で あ る,
従っ て最 初に極小 と な る と きの 値をAWHC の 推定 値と し た.
60
豆
・・菫
2006
2040 60 AWHC (mm ) 80 第5図 簡易土壌 水分計の 指示 値の 変化量の モ デ ル に よ る推 定 誤 差 (RMSE ).
南丹市日 吉 町 の 8圃 場 に おい て計 測し た 3期 間の変 化 量 を用いt 圃場バラ メー
タ である有 効 土 壌 水 分 保 持 能 力 (AWHC ) を 変化さ せて’
計算を行なっ た.
極 小 をとる点 (矢 印 ) が対象圃場のAWHC と考え ら れ る.
矢 印 横の数 字は 圃 場番号 を 示す.
AWHC の推 定 値は
,
京 丹 波町 で24 〜73
mm (観測 圃場15
筆 平均39.
5mm
),
賠 町で24 〜61
(観 測 圃 場8
筆 平 均45.
4
)の糊 を示した.
こ の値 を用い ると,
簡 易 土 壌水分計の抵示 値の推 移が計 算可能であっ た,
(第6
図 ),
ま た,
AWHC の推定値は,
達 観に よ る圃場の乾 きやす さや,
地形の違い な ど と一
致し た.
80
60
倉
e401
20
02Tt220
230240
250260
DOY
第6図 簡 易 土 壌 水 分 計の指 示 値 (IR)の実 測 値 (×)と モデルによる推定値 (線)の 関係,
図 中 矢印は 圃 場パ ラ メー
タ であ る有効土 壌水分 保 持 能 力 (AWHC )の推定に 用い た期間 を示す(第5図参照),
南 丹市日吉町の圃場 番号8に おける例.
考 察 本研究で適用 し た水収 支モデルは,
単位が水量 (mm )で ある利 用 可 能水量 (Aw >を目的変数に持つ.
通 常 土 壌水分 は 計 測 が 容 易 な 体 積 含 水 率 (SMC ;m3 m−
3) や 重 量 含 水 率 (g g−
1)で示さ れ,
土壌 水分 と植 物 との関係は,
圧力を常用対 数変 換 し た pF値で 示 さ れ る.
体積 お よ び 重 量含 水 率とpF 値との関 係は 土性や 土密 度な どで異 な り,
圃 場ご と にその 関 係 を求め る必 要がある (Hilie11998
).一
方,
Aw をその最 大 値 (AWHC )で割っ た利 用 可 能 水 量 比 (Aw /AWHC )は,
植 物の蒸 散 速 度 比 (Et/Et。)との関係 性が古 くか ら知られて お り,
多 くの作物において Aw /AWHC‘
0.
3が 閾 値 とな り,
そ れ以下で はEt/Etpが直 線 的に減 少 することが示さ れ ている (第
1
図 ;Rosenthalら1977,
Loomis and Conmr1992
).
ま た
,
Aw を目的 変数とするこ と に よっ て第4
式の 二つ の パ ラメー
タSMC 。とSd が不 必 要とな り,
降 水量 と蒸 発 散 量 な どの水量の差し引きのみで計 算で き (第1
式 ),
実 用 的 な 意 味が大 きい.
し か し な が らAw その ものを 計測 す る 方法は 確立してお らず,
土 壌 含 水 率 など か ら推 定 する必 要がある.
従っ て こ の水 収 支モ デ ル の農 家 圃場へ の適 用に当たっ て は,
圃場パ ラ メー
タ で あ るAWHC の推 定 方 法が問 題と な る.
本 間ら (2008
)では ドレー
ン ベ ッ トで根域 を制限 し,
均一
な 市 販 培 養 土 を用い るこ とに よ っ てAWHC を設定 し.
モ デルの適用を 行っ た.
ま た,
試 験場内の 丹波黒栽培圃 場 に おいては,
本 研 究の京 丹 波 町 およ び日吉 町の調 査 圃 場各1
筆で行っ たの と同 様に,
TDR 土 壌 水 分 計に よる計 測 値 を用 いた 最 適 化に よっ てAWHC
を推 定 した.
しか しな
「
が らこれ らの方 法 を多 数の農 家 圃場に適 用 するの は 不 可 能である.
そこで本 研 究で は簡 易 土 壌 水 分 計 (黒 瀬2007
)の使 用に よ るAWHC の推 定 方法 につ い て検討 し た,
簡易 土 壌水分計は 近 畿 中 国 四 国 農 業 研 究 センター
や 兵庫県 農 林水産技 術セ ン ター
が 中心とな り,
丹 波 黒栽培 農 家 圃 場にお け る潅 水 適 期 診 断の た めに普 及に移 そ うとしてい る技 術であ り (須 藤2009
),
材 料 費2
千 円程 度で自作 可 能であ る,
本 研 究で は計 測 初 期の3
期 間に得ら れた簡 易 土 壌水分 計 の指示値 (IR)の変化量を基に,
AWHC を推 定し た.
精度 にば らつ きが あ るもの の (第5図の y軸 ),
各 圃 場におい て ある極 小 値 をとる こ とは,
簡 易土壌 水 分 計の指 示 値の変 化 に対 応し たAWHC
が存 在 するこ と を示 唆 している.
し か し な がらこ こで示 した 方 法は.
IRの一
日当たりの変 化 量 (△IR)とモデルに よ るAw /AWHC との関係に基づい てい る が (第2
図),
デー
タ数が ま だ不十分で回帰式の信 頼 性は低い.
さ ら にAw/AWHC は,
第3
図で示して い る よ うに,
実 測5MC を用いた最 適 化に より推 定 され た値である,
つ ま り本 研 究で は水 収 支モデル は SMC の変 動 を比 較 的 良 く 表せ る こ とを 示し ている が,
そ の値が植物に とっ て意味の あ るAw /AWHC を示し てい る か につ いて は示せ てい ない.
従っ て こ れ らの 関係を より確固と し たもの とする こ と が今 後の課 題である.
Aw /AWHC の検 証にあたっ て は,
土壌の pF水 分 特 性等を講べ る他に,
植 物の蒸 散 速 度の計 測や,
本 間・
白 岩 (2009
)に よる水ス トレ ス状 態の把 握 法な ど が有 効と考えら れる.
一
方こ こ で示し た方法に よっ て推定し たAWHC を基に,
1Rそのもの の 予測が 可能である のを示せ た ことは非常に意 義 が 大 きい と考 え られ る (第6
図 〉.
簡 易 土 壌 永 分 計につ い て は.
その積算 値 と収量,
大粒 率との関 係 な ど が明ら か に さ れつ つあ り (岡井ら2009
),
IRに 基づ く潅 水 診 断マ ニュ アル (尾 崎 2009) なども整 備 されつ つ ある.
従っ て平 均 的 な気 象デー
タなどからIRの変 化 を推 定 し,
そ れに基づ き水 ス トレ ス の影 響 を予 測 す ること によ り,
潅 水 計 画 を立て る こ とがで きる.
本 研 究で はAWHC を推 定 するため に7
月下 旬 か ら8
月 申 旬 までのデー
タを用いた が,
潅 水が必 要 な 時 期 と重なっ てい る.
従っ てこ の期間 以前のデー
タ を 用い る こと が 望 ま しい が,
植物 体の根域 も 十分に 発達してお らず,
梅雨 時 期で もある た め,
AWHC の推 定 は 難 しい と思 われる.
事前に AWHC を求めずに,
日々 のIR
値 と気象値か らその 後の推 移 を予 測で きる仕 組みの 開発が今 後の課 題である.
AWHC は根域の大 き さ な ど 生物 的な要 因 も関 係して くる が,
植 物体に大 きな差異 が ない限 り主 に 土性や作土の深さ に よっ て決 まるパ ラ メー
タ と考 えら れ る.
従っ て一
度 AWHC を推 定 する と.
その値は再 度 栽 培 する際に利 用 可 能 と 思 わ れる.
年 次 変 動 性 などにつ い て は今 後 検 証してい き たい と考えてい る.
ま た,
広 域的に AWHC を評 価で きれ ば,
水 収支モデル の
“
丹波黒”
ダ イ ズ栽 培 農家 圃場へ の適用 AWHC 値の変異の分布や地形など との 関係 も解析可能とな る,
現在,
航 空 機 リモー
トセ ン シ ン グ の 利 用 (馬 河 ら2008
>に よる AWHC の評価 手 法につ い て検 討 申で ある.
こ のような情報の蓄積に よ り,
圃場の特 性か らAWHC が設 定 で き る ように な る ことが期待さ れ る,
謝 辞 本 調 査 を行うに当た り,
大 向 営 農 組 合,
富田営 農 組 合の 皆 様,
京都 府南 丹市 農業 改 良普及セ ンター
の竹原 進 氏,
藤 田 信也氏,
田中 淳夫 氏に お世話になっ た.
記し て厚く御 礼 申し 上げる.
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トセ ン シ ング学 会 第 44 回学 術 講演 会 論 文 集265 − 268.
Application
ofwater
budget
equation modelto
farmer's
fields
of "Tambaguro" seybean KokiHommai}, HisashiOkai2),
Ybshitaka
Kurose3),
Ken-ichi
Sudo`),
Koji
Ozakiab,TlttsuhikeShimiwai)and 1)[[bmoyukiKatsube-Tanaka i)
GraduateSchool
ofAgricultune,
1<),otoUitivensity(Kitashirakawa-Oiwake,
Sakyo,Kyoto606m
8502,Japan) 2)1<yotoPrefectzaralAgriculturatResearchinstitute
(9,
Walcunari,Arnarube,Kameoka, Kyoto621'
08e6,Japan)])
IVbtionalAgriculturalReseareh CenterforiligsternRegion
(6
-
12rm
1,Nishi-fukatsucho,
Fukuyama,
Hiroshima,721-
8514,Japan) 4)H),egoPutcturalfechnologyCenterforAgriculture}fonestryand fishens
(I533
Minarninooka,Befu,Kasai,Hyogo 679-
Ol93,Japan)Summary: A water budgetequation model was developedto support famer'sdecisionforinigationto hisfieldsinthe
previous
study.Thisstudy applied themodel tofarmer'sfieldsactua]lly,and evaluated amethod toestimate model parameter foTavailablewater holdingcapacity(AWHC),
Sincethe estimated volumetric soil meisture content(SMC)
was wellcorrespondent with themeasured
swC,
the
model was abletoevaluate thefiuctuationof water availability infarmer'sfields,
Rateof available water(Aw)
toAWHC
CAvtLtAWHC)
calculated fromthemodel was linearlyrelated tochange of instmment reading perday(AIR)
in
thesimple soil moi,sture measuring system developedby
Kurose(2006).
Inorder toestimate AWHC, changes ofinstrumentreadings(IRs)
for3periodswere necessaryfor
eachfield.EstimatedAWHC varied from24to73mm among irrvestigatedfields.and thevalue made itpossibleto
predict
dailychange of ll?,Itisimportanttoenhancere]iability on thebasisof more data.
Key words: available water, decisionsupport forirrigation,farmer's
field,
simple soil moisture measuring system,volumetric soilmoisture content.
Journal ofCrop Research55:27