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<Article>Influences and Future Developments through the Enforcement of the Revised Foreign Exchange Law

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改正外為法 実施 に伴 う影 響 と今後 の展 開

目 次 はじめ に 第1章 改 正外 為法の骨 子 第2章 改正外為 法の影 響 第3章 今後 の展 開

日本 版 ビ ッグバ ンの フ ロ ン トラ ンナー と して の改 正 外 為 法 が1998年4月 発 足 した。 1996年11月 橋 本 内 閣 が急 遽 発 表 した 六 つ の 改 革 の 一 つ,金 融 シス テ ム 改 革 (所 謂 日本 版 ビ ッグバ ン)に つ い て は,そ の後 金 融 制 度 調 査 会 ・証 券 審 議会w 保 険 審 議 会 の検 討 を踏 まえ,1997年6月13日 付 け金 融 シ ス テ ム連 絡 協 議 会 の 「金 融 シ ス テム 改 革 答 申」と して 具体 化 が 提 案 され,そ れ に基 づ き,各 種 の関 係 法 案 が制 定 され,ま た は制 定 が 予 定 され て い る。 改 正 外 為 法 は そ の最 初 の 施 行 と言 う意 味 で フ ロ ン トラ ンナ ー と して位 置 付 け られ た。 外 為 法 は戦 後 日本 の外 国 為 ・替 と貿 易 を管 理 す る た め に1949年 に制 定 され た 。 当初 は 乏 しい外 貨 を 日本復 興 に有 効 活 用 す るた め に 「原 則 禁 止,例 外 認 可 」 の 内容 で あ った。 後 に 日本 経 済 の発 展 に つ れ て諸 外 国 か らの 要 請 もあ り,徐 243

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徐 に 自 由化 し,1980年 に 「原 則 自 由jの 内容 に変更 した が,「 事 前 届 け出,認 可 」 の取 引 が か な りあ り,実 務 上 煩 項 で且 つ 緊 急取 引 に間 に合 わ ない状 況 も あ り,今 回経 常 取 引 につ い て は ほ ぼ完 全 自 由化 の制 度 に変 更 の こ と とな っ た 経 緯 が あ る。 外 為 法 改正 を契 機 に,日 本 の金 融 制 度 全 般 を一 挙 に欧 米 先 進 国並 み に大 改 革 を行 う展 望 を示 した政 府 の動 き に,財 界,業 界,学 界,ジ ャー ナ リズ ム を あ げ て一 斉 に 「ビ ッグバ ンyビ ッグバ ン」 と大 騒 ぎ に な った こ とは周 知 の と お りで あ る。 筆 者 は1998年3月 神 奈 川 大 学 経 営 学 部 『国 際 経 営 フ ォー ラ ム』 第9号 に 「日本 版 ビ ッグバ ンの 背 景,影 響,問 題 点,今 後 の展 開 につ い て 」 の 小論 文 を発 表 したが,そ れ は 「ビ ッグバ ン は果 た して 日本 経 済 の健 全 な発 展 に貢献 す るの か?」 とい う若 干 批 判 的 な観 点 か ら纏 めた もの で あ る。 本稿 は そ の継 続 として位 置 づ け られ る。 さて,本 論 に入 る前 に,筆 者 は1998年4月 新 外 為 法 施 行 後,関 係 業 界 等 に どの よ うな変 化 が あ った の か,新 聞,雑 誌 は勿 論,銀 行,商 社,証 券,メ ー カー な どの関 係 者 に会 い,実 情 を調 査 して み た が,1年 弱 を経 過 した 今 の 時 点 で は事 前 に大 騒 ぎ した こ とが信 じ られ な い程 静 か に推 移 して い る。 新 聞 や雑 誌 は,外 為 法施 行 後 は トピ ック ス性 もな いか ら採 り上 げ な い の か, 各 企 業 が深 く潜 行 して対 応 を検 討 して い て見 え な い のか,そ れ と も,当 面 の 日本 長 期 信 用銀 行 問題 の処 理 等 銀 行 の不 良 資 産 処 理,経 済 全 般 の不 況,各 企 業 の リス トラ対 策,世 界 の株 式 ・為 替 市 場 の乱 高下 ・混 乱 等 目前 の 火 の粉 を 払 うのが 精 一杯 で外 為 法 改 正 対 応 に手 が廻 らな い状 況 なの か い ろ い ろ事 情 が あ るの か も知 れ な い。 た だ,一 方 で 着 実 に先 見 性 を もって対 応 を検 討 して い る企 業 も見 られ るの も,注 目す べ きで あ る。 この よ うな状 況下,現 時 点 で一 度 冷 静 に外 為 法 の改 正 の具 体 的 中身,今 後 の影 響 に つ い て改 め て考 究 す る こ とは意 味 あ る もの と思 い,本 稿 を纏 め る こ と と した 。 私 自身,戦 後 貿 易 再 開直 後 か ら,銀 行 で 外 国為 替 業 務 に長 ら く従 事 した経 験 もあ り,身 近 な 問題 で もあ るの で,そ の 経験 も踏 まえ私 の 考 え を 244国 際経営論集No.16・171999

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述 べ て み た い 。

第1章

改正 外 為 法 の 骨 子

改 正 外 為 法 の影 響 や 今 後 の展 開 を考 究 す る場 合,法 律 の 原典 は勿 論,起 案 の経 緯,起 案 当局 の 意 見 な どにつ き正 確 に把 握 す る こ とか ら始 め る必 要 が あ る。 そ の観 点 か ら改 正 外 為法 の 骨 子 に つ き見 直 して み た い。 とい うの は,書 店 に 出 され た ビ ッグバ ン に関 す る多 くの書 物 の 中 に は,外 為 法 の 中 身 の 理 解 な しに書 か れ て い る もの もか な り散見 され るか らで あ る。 1.外 為 法 の 歴 史 外 為 法 とは1949年,「 外 国 為替 及 び外 国 貿 易 管 理 法 」と して発 足 した。 当 時 は第2次 大戦 直 後 に 当 り,日 本 は廃 塩 の 中 か ら漸 く経 済復 興 の端 緒 に つ い た ばか りの 頃 で,日 本 の対 外 貿 易 や為 替 管 理 はす べ て連 合 国 総 司 令 部 の管 理 下 に置 か れ てお り,貿 易 や 外 貨 の運 用 はすべ て 国 が集 中管 理 す る状 況 で あ っ た。 従 って法 律 体 系 も 「原則 禁 止 」 を前 提 に して例 外 と して政 令 や 大 蔵 省 令 で部 分 認 可 の建 前 で あ った。 輸 出 入,送 金 取 引 は外 国為 替 銀 行 を経 由 し,当 局 の 認 可 を条 件 に行 わ れ た。 外 為 法 は難 解 とい う定 評 が あ った が,筆 者 の 経験 か ら も外 為 法 の み で は解 決 せ ず,膨 大 な政 令 を播 きな が ら業 務 を行 った こ とを 思 い 出 す。 1950年,「 外 資 に関 す る法 律 」(外 資 法)が 制 定 され た。 同法 は外 国 資本 の 対 日進 出対 応 と保 護 を中心 と して お り,そ れ に よ り戦 後 日本 の経 済 復 興 に深 く関係 した 多 くの外 国企 業 が 日本 に進 出 し営 業 を展 開 した。 そ の 主 な企 業 は 米 国企 業 で あ っ た(こ の法 律 は1980年 の 外為 法 改 正 の際 に外 為 法 に吸収 され た)。

1952年IMF,加 盟,1964年IMF8条 国移 行,OECD加 盟 に伴 い,経

常 取 引 や資 本 取 引 の 自 由化 措 置 が 徐 々 に適 用 され た 。

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1977年 か ら1978年 にか け,日 本 の 国 際収 支 が 大 幅 な黒 字 とな り,国 際 経 済 面 で の摩 擦 が お こ り,さ らに米 国 やEC諸 国 との経 済 交 渉 で外 国為 替 管 理 制 度 の全 面 見直 しを要 請 され,1980年 に外 為 法 の 「原 則 禁 止 」か ら 「原則 自由」 に全 面 的 な変 更 が 実 施 さ れ た。 同時 に外 資 法 の見 直 しを行 い,統 一 的 な管 理 が必 要 との こ とで 統 合 の こ と とな った。 1980年 に改 正 され た外 為 法 で は一 般 の 経 常 取 引 に つ い て は今 回 の改 定 の基 本 的部 分 はほ とん ど実現 され た と見 られ て い る。 大 きな違 い は「事 前 届 け出 」 制 度 を採 用 して い る こ とで あ った が,実 質 は ほ とん ど認 め られ て い た。 この 点 が後 述 の影 響 を考 え る場 合 に注 目す べ き点 で あ る。 1980年 に改 正 さ れ た第1条 の 「目的 」 は旧外 為 法 の 「目的 」 を大 き く変 更 して お り,今 回 の改 正 法 はそ の ま ま変 更 せ ず に存 置 して い るの を み る と,今 回 の改 正 の基 本 が1980年 の改 正 に あ った こ とは,明 らか で あ る。 (参 考) *1949年 制 定 の外 為 法 第1条(目 的) 「この法 律 は,外 国貿 易 の正 常 な発 展 を図 り,国 際 収 支 の均 衡,通 貨 の安 定 及 び 外 国 資 金 の 最 も有 効 な利 用 を確 保 す る為 に必 要 な外 国為 替,外 国貿 易及 び その 他 の対 外 取 引 の管 理 を行 い,も って 国民 経 済 の復 興 と発 展 とに寄 与 す る こ とを 目的 とす る。」 とあ り,更 に第5章 第27条 で 「この法 律 の他 の規 定 又 は政 令 で 定 め る場 合 をの ぞ いて は,何 人 も,本 邦 に お い て左 に掲 げ る行 為 を して はな らない 」 と して対 外 支 払 い を原 則 禁 止 して い た。 併 せ て,第4章 で す べ て の 外貨 の 集 中義 務 を課 して い た。 *1980年 改 正 の 外為 法 第1条(目 的) 「この 法律 は,外 国 為替,外 国 貿 易 その 他 の 対 外 取 引 が 自由 に行 わ れ る こ とを基 本 とし,対 外 取 引 に対 し必 要 最 低 限 の管 理 又 は調 査 を行 う こ とに よ り,対 外 取 引 の正 常 な発 展 を期 し,も って 国際 収 支 の均 衡 及 び通 貨 の安 定 を図 る と とも に 我 が 国 経 済 の健 全 な発 展 に寄 与 す る こ とを 目的 とす る。」とし,一 般 経 常 取 引 に つ い て は受 け払 い と も原 則 自由 とな った。 246国 際 経 営 論 集No.16・171999

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2.改 正 外為 法 の 骨 子 今 回 の 改 正 外 為 法 は前 述 の通 り1980年 の 改正 の 目的 に従 い,よ り徹 底 した 規 制 緩 和,自 由化 を推 進 した もの で あ る。 改 正 案 立 案 の大 蔵 当 局 の発 表 に よる と,改 正 の 背景 と して次 の4点 が挙 げ られ て い る。 ① 国 際 金 融 取 引 の グ ローバ ル化 ・エ レク トロ ニ クス化 の進 展 ② 欧米 先 進 諸 外 国 に お け る外 為 制 度 の 自由 化 の進yア ジア市 場 の 台頭 に よ る競 争 の 激 化 ③ 思 い切 った規 制 緩 和 を通 じた我 が 国 金 融 ・資 本 市 場 の 一 層 の活 発 化 , 空 洞 化 懸 念 へ の対 応 ④ 「経 済 の基 礎 を なす 金 融 シ ス テ ム改 革 」(総 理 指 示) これ は,当 局 の表 向 きの表 現 で あ るが,背 景 は もっ と深 く分 析 す る必 要 が あ る。 外 為 法 改 正 の契 機 はや は り1996年11月,橋 本 内閣 が突 如 提 起 した 六 つ の改 革 の 重 要 な柱 で あ る金 融 シス テム 改 革 の__,.環と見 るのが 自然 だ ろ う。 そ して, 上 記 ① ∼③ の背 景 もあ り,米 欧 の強 大 な 多 国籍 金 融 機 関 の要 請 を受 けたG7 首 脳 の強 力 な圧 力 が 最 大 の背 景 で あ ろ う と思 わ れ る。 そ うで な け れ ば 日本 の 政 治 経 済 を大 き く変 え る六 つ の 改 革 が突 如 と して 出 て くる必 然性 は な い。 そ の証 拠 に こ とあ る ご とに米 国首 脳 が 来 日 した り,声 明 を出 して 日本 の 経 済 政 策 に種 々 要 請 を行 っ て い る経 緯 か ら見 て 明 白で あ る。 この点 は外 為 法 改 正 の 影 響 の章 で さ らに触 れ た い。 また,英 誌Economistが 橋 本 声 明 か ら半 年以 上 もビ ッグバ ン につ い て全 く無 音 で あ った の を見 る と,そ の間 の 日本 の ジ ャー ナ リズ ム等 の騒 ぎ よ う とは対 照 的 に,欧 州 の金 融 界 は当 初 は あ ま り関 心 が な か っ た ので は な い か と思 わ れ る。 なお,同 誌 は1997年6月28日 付 けで 日本 版 ビ ッグバ ン特 集 を纏 め て 出 し,ビ ッグバ ンは必 要 か もしれ な い が よ ほ ど頑 張 らな い と成 功 しな い と警 告 を発 して い るの も参 考 とな る。 改 正 外 為 法 実 施 に伴 う影 響 と今 後 の 展 開247

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新 法 律 の骨 子 につ き簡 単 に纏 めて み る こ と と した い。

r

(1)題 名 の改 正 題 名 を 「外 国 為替 及 び外 国 貿 易 法 」 と改 正 し,旧 法 の 「管 理 」 を削 除 した。 これ は完 全 自 由化 を謳 う法 律 と して は当然 で あ る。 ② 「第1章 総 則 」 ① 定 義 規 定 の追 加 第6条 ① の 七 に電 子 マ ネ0に よ る対 外 取 引 を対 象 に入 れ た。 ICカ ー ド型 電 子 マ ネ ー,イ ンタ ー ネ ッ ト利 用電 子 マ ネー は欧米 の 先 進 金 融 機 関 が 導 入済 み で あ り,我 が 国 で も都 市 銀 行 を 中心 に関 係 官 庁,業 界 と共 同 で 実験 中 で あ り,将 来 を展 望 した場 合 に適 用 対 象 として は 当然 と言 え るが,電 子 マ ネー は貨 幣 で あ るか とい う基 本 的 な 問題 は法 制 的 に も検 討 が 必 要 で あ ろ う。 ② 外 国為 替 相 場 の項 目の改 正 第7条 ③ 項 に 「大蔵 大 臣 は,対 外 支 払 手 段 の売 買 等 所 要 の措 置 を講 ず る こ とに よ り,本 邦 通貨 の外 国 為 替 の安 定 に努 め る もの とす る。」と改 正 し,緊 急 時 の市 場 介 入 を明 記 した の は注 目す べ き項 目で あ る。 (3>「 第2章 外 国 為替 公 認 銀 行 及 び両 替 商 」 の全 廃 旧法 第10条(外 国為 替 公 認 銀行 の認 可 等),第14条(両 替 商)を 含 む全 章 を 削 除 し,外 国 為替 公認 銀 行,両 替 商 の 両 制 度 を廃 止 した。 これ に よ り外 貨 の 集 中 義務 は な くな り,外 国 為 替 は誰 で も自由 に取 引 も出来 る し,ま た業 務 と して営 業 も可 能 とな っ た(た だ し,一 定 金 額 以 上 の 報 告 の義 務 は存 置 され る)。 これ は大 き な改 革 で ジ ャー ナ リズ ムや 学 者 等 の間 で 新 規 業 者 の参 入 の問 題 が騒 が れ て お り,そ の 影 響 につ い て は注 視 す る必 要 が あ る。 また外 国為 替 業 務 を行 っ て い る銀 行 に とっ て もか な りの変 化 が 予想 され る改 革 で あ る。 さ らに,外 為 銀 行 の外 貨 の持 高 規 制 も自動 的 に撤 廃 され るの で,為 替 取 引 に つ き枠 に関係 な く自由 に行 え るた め取 引 の 活 発 化 と関 係 リス クの増 大 が 予 248国 際 経 営 論 集No.16・171999

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想 され る。 (4)「 第3章 支 払 い 等 」 の 自由化 旧法 で は外 貨 の 支払 いや 受 取 りは外 為 銀 行 に集 中義 務 が あ り,外 為 銀 行 を 経 由 しな い場 合 は大 蔵 大 臣 の許 可 を要 した が,新 法 で は一 般 取 引 につ い て は 事 前 許 可 や 事 前 届 け出 を廃 止,完 全 自 由化 に変 更,「 事 後 報 告 制 」の み に な っ た。 これ に よ り,従 来認 可 制 で あ っ た下 記 取 引 が 自由 にな っ た。 ① 居 住 者 の海 外 にお け る預 金 受 払 い,証 券 売 買,貸 借 取 引 等 ② 内外 拠 点 間 の債 権 債 務 の マ ル チ ネ ッテ ィ ング,相 殺 た だ し,「 有 事 規 制 」 につ い て は, ① 「我 が 国 が締 結 した 条 約 その 他 の 国 際 約 束 を誠 実 に履 行 す るた め必 要 が あ る と認 めた と き,又 は国 際 平 和 の た め の 国 際 的 な努 力 に我 が 国 とし て寄 与 す るた め特 に必 要 が あ る と認 め る とき」 ② 「我 が 国 の 国 際 収 支 の均 衡 を維 持 す るた め特 に必 要 が あ る と認 め られ る と き」 に は,許 可 を受 け る義務 を課 して い る。 (5)「 第4章 資 本 取 引 等 」 の 自由化 ω 許 可 ・届 出制 の 原則 廃 止 一 定 の 限 られ た 業 種 を除 き経 常 的 な取 引 につ い て は100%自 由化 した 。 従 っ て 内外 に亘 る資 本 参 加,合 弁,買 収 等 が 自由 に行 え る こ と とな った 。 (ロ)有 事 規 制 の規 定 整 備 資本 取 引 につ い て も次 の よ う に有 事 の場 合 の規 定 を明 確 に して い る。 ① 我 が 国 の 国 際収 支 の均 衡 を維 持 す る こ とが 困難 に な る こ と ② 本 邦 通 貨 の外 国 為替 相 場 に急 激 な変 動 を もた らす こ とに な る こ と ③ 本 邦 と外 国 との 間 の大 量 の 資 金 の 移 動 に よ り我 が 国 の金 融 市場 又 は資 本 市 場 に悪 影 響 を及 ぼ す こ とにな る こ と 上 記 の場 合,「 政 令 の定 め る と ころ に よ り,当 該 資 本 取 引 を行 お う とす る 改正外為法実施に伴う影響と今後の展開249

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居住 者 又 は非 居 住 者 に対 し許 可 を受 け る義 務 を課 す。」 と規 定 して い る。 本 条 項 は 「今 後 の展 開」 の章 で触 れ るが}注 視 す べ き点 で あ る。 (6)「 第5章 対 内直 接 投 資 」 の 自由化 1992年 に 日米 構 造 協 議iに基 づ き一部 制 限 業 種 を除 き原 則 自由 に法 体 系 を変 更 した の で その ま ま継 続 。 制 限 業 種 の 削減 につ い て は今 後 の課 題 に任 され た。 (7)「 第6章 外 国貿 易 」 1949年 に 「原 則 自由」 の法 制 を制 定 した の で 旧法 の ま ま存 置 。 (8)「 第6章 の2報 告 等 」 の強 化 今 回 の 改正 に よ り 「事 前 許 可 ・届 出制 」 か ら 「事 後 報 告 制 」 に全 面 的 に変 更 され た の に伴 い,報 告 につ い て は第55条 を新 た に設 け要報 告項 目 を リス ト ア ップ し,罰 則 規 定 も設 け強 化 され た 。 外 国為 替 公 認 銀 行,両 替 商 が 廃 止 され た に もか か わ らず,銀 行 ・郵 便 局 ・ 両 替 商 を営 む業 者 は取 り扱 った顧 客 の外 国 為 替 取 引 につ い て は一 定 金 額 以 上 につ き報 告 の 義務 が 課 され て い る。 これ ら業 者 を経 由 せ ず に直 接 取 引 を した もの に も報 告 の義 務 が 課 され て い る(こ の 点 は一般 個人 は注 意 を要 す る)。 な お,報 告 に つ い て は,オ ン ラ イ ンで の コ ン ピュー タ を通 じた デ ー タ報 告 も受 け付 け られ る こ と,電 子 マ ネー も報 告 対 象 に な っ て い る こ とな どが新 た に追加 され た 。 3.日 本 版 ビ ッ グ バ ン との 関 係 外 為 法 の 改 革 の 骨 子 は上 記 の と お りで あ る が,こ れ は あ く まで ビ ッ グ バ ン の フ ロ ン トラ ンナ ー で あ り,ビ ッ グ バ ン の 全 体 を推 進 す る た め に は,ビ ッ グ バ ン構 想 の 主 要 な 課 題 と結 合 す る必 要 が あ る。 そ の 主 な 課 題 は次 の とお り。 ① 独 占 禁 止 法 の 改 正(金 融 持 株 会 社 制 度,純 粋 持 株 会 社 制 度 の 創 設,既 に 実 施 済) ② 銀 行 関 係 ・証 券 投 資 信 託 の 取 り扱 い 開 始(1998年12月 実 施) 250国 際経営論集No.16・171999

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・銀 行 系 証 券 子 会 社 の業 務 範 囲 制 限 の撤 廃 ・保 険 商 品 の販 売 の 自由化 ・業 態別 子 会社 の業 務 範 囲 の拡 大 ・電 子 マ ネ ー ・電 子 決 済 推 進 の為 の措 置 ③ 証 券 関 係 ・株 式 委 託 手 数 料 の 自由化 ・証 券 会 社 の認 可 制 か ら登 録 制 へ の移 行 ・証 券 デ リバ テ ィブ の全 面 解 禁 ④ 保 険 関 係 ・保 険 料 の 自由化 ・業 態 間 の参 入 促 進 ⑤ その 他 ・金 融 取 引 関係 の税 制 の 見直 し ビ ッグバ ン は 日本 の金 融 シ ス テ ムの 漕 性化 を 目指 し,Free,Fair,Globalの 3原 則 に基 づ く金 融 改 革 で あ るがi上 記課 題 は一 部 実 施 済 の もの が あ る もの の,証 券 委 託 手 数 料 の 自由化,保 険 料 の 自 由化 な ど先 送 りの もの も多 く,現 在 で は外 為 法 改正 が フ ロ ン トラ ンナ ー の ま ま,独 走 体 制 に あ る。 そ の 間 に,日 本 の 金 融 界 は戦 後 最 悪 の不 況 の 下,バ ブル の 後遺 症 で あ る不 良 債 権 の重 圧 に坤 吟 し,あ わ せ て 円安 ・株 安 の環 境 も加 わ り,未 曾 有 の経 営 危機 に遭 遇 して お り,さ ら に北 海 道拓 殖 銀 行 の破 綻,山 一 証 券 の廃 業,最 近 は 日本 長 期信 用 銀 行 の破 綻 等 恐 慌 的状 況 に直 面 し,現 在 もそ の火 中 に あ る。 「今 は ビ ッグバ ン ど こ ろで は な い。 まず 目前 の火 の粉 を払 うべ きだ 。」 とい う 雰 囲 気 が充 満 して い る。 しか し,一 方 で ビ ッグバ ン旋 風 を巧 み に利 用 した外 国 金 融 機 関 が この際 と ばか り火 事 場 泥 棒 的 に 日本 マ ー ケ ッ トに殺 到 して お り,各 金 融機 関 は それ ぞ れ に苦 しい中 で もそ の対 応 に 迫 られ て い るの が 今 日の我 が 国 の金 融 界 の 現状 で あ る。 さ らに この よ うな状 況 下 に もか か わ らず,政 府 は対 処 方 法 も見 い出 改正外為法実施に伴う影響と今後の展開251

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せ ず,肝 心 の大 蔵 省 もや っ と汚 職 問題 が 治 ま った もの の 公 的 資金 導 入以 外 の 対 策 もな く,ま して や今 後 の 金 融行 政 につ い て の先 見 的 な展 望 も描 き出せ な い状 況 で あ る。 この よ うな状 況 下 で は あ るが,外 為 法 は既 に施 行 され て,そ の影 響 も徐 々 にで はあ るが 出始 め て い る。 羅 針 盤 の ない船 の 中 で 荒 れ 狂 う嵐 を突 い て光 を 求 め漕 ぎ出 す企 業 も多 い こ とだ ろ う。 本 稿 は この よ うな状 況 下,外 為 法 は ど の よ うな影 響 を与 え また 将 来 与 え るで あ ろ うか を検 討 し,併 せ て現 在 の 日本 と して今 後 の国 際 金 融 を どう展 開 す べ きか につ い て の課 題 を考 究 す る こ と と した い。

第2章

改 正 外 為 法 の 影 響

改 正 外 為 法 の影 響 につ い て は,ビ ッグバ ン政 策 発 表 直 後 か ら多 くの 人 が 新 聞,テ レ ビ,雑 誌,各 種 セ ミナ ー 等 で 意 見 を発 表 して い る。 起 案 当局 の大 蔵 省 関係 者 は勿 論,金 融,財 界,学 界,ジ ャー ナ リズ ム関 係 の人 々 が雨 後 の竹 の子 の よ うに さ まざ まな意 見 を発 表 して い る。 一 部 覚 めた意 見 や 反対 の意 見 は あ るが,大 勢 は実 施 を前 提 とした立 場 か ら,日 本 の 金 融 シ ス テ ムや マ ー ケ ッ トが一 大 変 革 をお こ し,利 用者 は な んで もで きる ので 便 利 に な る と言 う点 を多岐 に亘 り細 か く説 明 す る一 方,外 資 の活 発 な進 出 に伴 い,競 争 激 化 とそ れ に伴 う内外 金 融機 関 の 提 携,合 併,吸 収 を予 測 す る と と もにサ ー ビス の拡 充 や 改 革 を唱 え る人 が 多 い。 これ らのべ 一 ス とな った と思 わ れ るの は,大 蔵 当 局 で 法律 改 正 に携 わ った 湖 島知 高氏 の ま とめ た 「外 為 法 改 正 に伴 う直 接 的 効 果(主 な もの)」 で あ る。 内容 は参考 とな る ので 下 記 に紹 介 す る。 外為法改正 に伴 う直接的効果(主 な もの) (1)個 人 等 の資 産 運 用 の多 様 化 ① 海 外 預 金 の 自由化(含 む ラ ップア カ ウ ン ト) 252国 際 経 営 論 集No」6・171999

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クロス ボー ダー証 券取引 の自由化

両替業務 の 自由化 による両替 手数料 の低下

(2)企 業 の資金管理 の効率化

海外預金 を通 じた貿易取引 の決済

居住者間外貨決済

マルチ ネ ッテ ィング

(3)商 社等 の金融機能 の強化

対外貸付 け

取 引先 との外貨,通 貨関連 デ リバ テ ィブの売買

海外 の銀行 への直接 投資

(4)金 融機関 の ビジネスチ ャンス拡大

外為 法上 の規 制緩和 に よるコス ト削減 ・業務運 営の弾力化

決済 性のあ る外貨預金 ・外貨 当座 貸越 し ・居住者間外貨送 金

マル チネ ッテ ィング をサポー トす るCMSの

充実

(注1)マ ル 乏 ネ ッ テ ィ ン グ と は,複 数 の 海 外 拠 点 や 継 続 的 な 取 引 先 と の 間 で ,取 引 の 度 こ と に債 権 ・債 務 を決 済 す る代 わ り に,一 定 期 間 内 に 発 生 す る債 権 ・ 債 務 を ひ と ま と め に し て 一 定 の 時 期 に 相 殺 し,残 高 の 決 済 を行 う こ と (注2)CMS(キ ャ ッ シ ュ ・マ ネ ジ メ ン ト・サ ー ビス)と は,銀 行 と取 引 先 の コ ン ピ ュ ー タ を 通 信 回 線 で 結 び,取 引 先 は端 末 の 操 作 に よ っ て ,銀 行 か ら 口 座 情 報 を は じめ 各 種 情 報 を リ ア ル タ イ ム で と る こ とが で き る フ ァ ー ム バ ン キ ン グ の 一 形 態 上 記 湖 島 氏 が 纏 め た効 果 の項 目 は,ウ エ イ ト付 けや 順 番 はい ろい ろ意 見 が 分 か れ る と ころで あ るが,一 応 網 羅 して い る と思 わ れ る。但 し,起 案 当局 の 立 場 か らの意 見 で あ るの で,バ ラ色 に,且 つ総 花 的 に描 か れ て い る。 銀 行 や, 各 ユ0ザ ー側 か ら見 る と,個 別 に ドロ ドロ と した,利 害 が交 錯 す る問題 が 多 い こ とだ ろ う。 また,上 記 の 内1980年 に 「原則 自 由」 に改 正 後,事 前許 可 ・届 け 出 で は あ るが 実 質 自由 で,今 回事 後 報 告 に代 わ った だ け の もの が 多 い。 湖 島氏 自身 も 彼 の編 著 『1998年外 為 自 由化 と ビ ッグバ ン』の 中 で,「 現 行 法 の下 で も規 制 緩 改正外為法実施に伴う影響 と今後の展開253

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和 を こ れ ま で 大 幅 に や っ て き て お り,私 ど も と し て は,今 回 の 改 正 は,こ れ まで や って きた規 制 緩 和 の 最終 段 階,総 仕 上 げ で あ る。」 と説 明 して い る。 しか しなが ら,外 為 法 は難 解 で あ り,商 社 や大 手 メー カー の よ う に,常 時 大 蔵 省 に 申請 や届 け出 を して い る0部 業 者 を除 け ば初 め て 自由化 さ れた と思 う人 も多 く,そ れ らの 人 に とっ て は初 め て完 全 自由化 の効 果 が あ る こ と とな る。 確 か に外 国 為 替 公 認 銀 行 や両 替 商 の廃 止 や,居 住 者 の海 外 取 引 の 自 由化 は画 期 的 で あ りそ の影 響 は無 視 出 来 な く,現 に影響 は徐 々 に で は あ るが 出始 めて い る。 以 下,上 記 項 目に従 い 当面 の影 響 と,今 後 考 え られ る影 響 につ いて 考 え て み た い。 1.個 人 等 の資 産 運 用 の 多様 化 ビ ッグバ ンの大 き な 目玉 が 当初 か ら 「日本 の個 人 資 産1200兆 円 」 に あ る と 異 口同音 に騒 が れ て い る。 特 に郵 貯 を含 めた 定 期 預 金630兆 円 は米 国 や欧 州 先 進 国 に比 し,突 出 して お り,欧 米 巨大 金 融機 関 の 垂 挺 の的 に な っ て い るの は事 実 で あ る。 現 に既 に次 の よ うな現 象 が 一 部 に出 て い る。 ① 在 日外 銀 の 「外 貨 預 金 勘 定」へ の 邦 銀 か らの シ フ ト。 特 にCITIBANK の外 貨 預 金 は好 評 で あ り残 高 も急 増 して い る模 様 。 ② 米 国 大 手証 券 会 社 メ リル リンチ は廃 業 した 山一 証 券 の 国 内店 舗 と従 業 員 を活 用 し,個 人 客 を対 象 に投 資顧 問 や 投 資 信 託 の セー ル ス を米 国 で の 経 験 を生 か し,大 々 的 に展 開 中でiか な りの個 人 資 産 家 が興 味 を持 ち始 めて い る。 ③ 日本 の大 手 都 銀 を中心 に,1998年12月 解 禁 の 「投 資 信 託 」 業 務 を個 人 客 を対 象 にセ ー ル ス の展 開 をす べ く,行 員 の研 修 強 化,新 種 商 品 の 開発 に取 り組 ん で お り,取 引先 か らの 照会 が 出始 め て い る。 ④ あ る関 西 の 中/j・企 業 で ボー ナ ス を米 ドル で 支 払 った と新 聞 が 報 じて い 254国 際 経 営 論 集No・16・171999

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るが,こ れ な どは ビ ッグバ ン に便 乗 した ア イ デ ア的 従 業 員 対 策 と して 注 目 を浴 び た。 しか しなが ら,海 外 で預 金 した り,海 外 で 証 券 を購 入 した りす る動 きは ほ とん どな い状 況 で あ り,今 後 も当面 は次 の諸 事 情 で 大 きな シ フ トはな い と思 わ れ る。 ・海 外 金 融 機 関 と直 接 連 絡 す る語 学 力 ,経 験 の あ る人 は少 な い。 ・海 外 金融 機 関 も安 全 とは限 らず ,個 別 金融 機 関 の信 用 度 や 特 徴 な ど を調 査 す る こ とは困難 で あ る。 また,事 務 処 理 能 力 の劣 悪 な 先 も多 く,ト ラ ブル 処 理 が不 安 。 ・従 って ,国 内 の外 銀 経 由 の傾 向 が強 い が,在 日外 銀 の 現 陣 容 で はお の ず か ら事 務 処 理 に限 界 もあ り,ま た,一 定 金 額 以 上 の制 約 を設 けて い る銀 行 が 多 く,多 数 多 額 の シ フ トは考 え られ な い。 ・外 貨 預 金 は預 金保 険 の 制 度 対 象 外 で あ り ,為 替 リス ク もあ る。 そ れ で は,日 本 の都 市 銀行 の 「投 資 信 託 」 に シ フ トす るか とい う こ とに な るが,こ れ も次 の理 由 で あ ま り期 待 は出来 な い。 ・日本 の個 人預 金 の 動 機 は将 来 の生 活 の た め が圧 倒 的 に多 い 。 さ らに,リ ス トラ に よ る収 入 減,失 業 の 不 安,厚 生 年 金 ・医 療 保 険 の 改 悪 な どで 将 来 に不 安 を感 ず る人 が多 く リス クの伴 う投 資 の余 裕 もな く,生 活 実感 か ら も馴 染 まな い。 ・大 手 都 市 銀 行 で も,北 海 道拓 殖 銀 行 や 長 期 信 用 銀 行 の よ うに,突 如 倒 産 が あ りう る と思 う人 も多 く,ま た,投 資 信 託 は預 金 の よ う に預 金 保 険機 構 の保 証 もな く リス キ,_...であ る。 郵 貯 の増 大 が それ を如 実 に物 語 って い る。 ・多 くの 人 は ,銀 行 が勧 めた 日産 火 災 に代 表 され る変 額 保 険 の被 害 を受 け, 未 だ に,銀 行 に借 金 を返 して お り,社 会 問題 化 して い る現 状 で は,「 また か 」 との警 戒 感 が 先 立 ち,簡 単 に応 ず る とは思 え な い。 トップ ク ラス の 某 都 銀 で さ え変 額 保 険 で 多 大 の 損 失 を受 けた人 が 多 くい るの で ,そ う簡 改正外為法実施に伴う影響と今後の展開255

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単 に売 れ る とは思 え な い。 さ らに,米 国 の よ うに,401Kの 年 金 や株 式投 資 に シ フ トす るか とい え ば一 般 消 費 者 はバ ブル 時 の証 券 投 資 の苦 い経験 を して い る人 も多 く,た とえ大 手証 券 会 社 が 勧 誘 して も直 ち に応 ず る とは思 えな い。 ・1998年9月6日 の朝 日新 聞 は 「ビ ッグバ ンか ら生活 守 れ 」 の見 出 しで働 く人 た ちの情 報 セ ミナー の記 事 を掲 載 し,新 種 商 品 の リス ク な ど につ き 自衛 のた め に,学 ぶ 動 き を報 じて お り,新 種 商 品 の販 売 も速 効 は期 待 で きそ う にな い。 以 上 の よ うに考 え て くる と,外 為 法 改 正 や ビ ッグバ ン は一 般 個 人 の消 費 者 に は,大 蔵 省 や 識 者 とい わ れ る方 々 の言 う よ う に は,バ ラ色 で は な さ そ うで あ る。 2.企 業 の 資金 管 理 の 効 率 化 改正 外 為 法 の大 き な 目玉 の ひ とつ が,ク ロ ス ボ ー ダ ー に お け る内外 資 金 の 支 払 い,受 け取 り,移 動 が 通 常 取 引 に つ い て は完 全 に 自由化 され た こ とで あ る。 これ は,海 外 各 地 に進 出 して い る商 社,メ ー カ ー に とっ て は資 金 管 理 の効 率 化 の 観 点 か ら,種 々 検 討 が な され て い る。 筆 者 が 銀 行,商 社,メ ー カー の 方 々 に照会 した り,新 聞 や,雑 誌 な どで 調 べ た結 果 に基 づ き纏 めた情 報 は次 の とお り。 (1)外 貨 預 金 を通 じた貿 易 関 係 の決 済 従 来 は輸 出 ・輸 入 の決 済 は,為 銀 集 中義 務 の た め,円 との 交換 を行 って い た が,為 銀 集 中 義務 が な くな り,且 つ 上 記 の とお り内外 に お け る資 金 の運 用 が で き る よ うに な っ た の で,海 外 預 金 を通 じた外 貨 で の貿 易 決 済 が可 能 とな っ た。 しか し,日 本 本 社 か ら見 た 海 外 預 金 は,円 との関 係 で は上 記 の為 替 リス ク が 伴 う他,資 金 の管 理 も時 差 の関 係 もあ り,そ う簡 単 に はい か な い の で,当 256国 際経営論集No.16・171999

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面 は あ ま り利 用 され て な い状 況 に あ る。 む し ろy従 来 か ら利 用 され て い た国 内 の外 貨 預 金利 用 の決 済 が よ り活 発 に行 わ れ る模 様 で あ る。 但 し,業 種 に よ りか な りの差 が あ り,当 面 活 発 に利 用 が 見 込 まれ る の は大 手 電 気 業 界 で あ る。 電 気 業 界 は輸 出 と輸 入 が か な りバ ラ ンス が とれ て お り, 外 貨 の 売 り買 い を そ の ま ま相 殺(マ リー とい っ て い る)出 来 るの で,円 との 交 換 の為 替 手 数料 の往 復 節 約 が 可 能 とな る。 松 下 電 気 が グル0プ 全体 で取 り 組 む こ とが新 聞 で紹 介 され て い る。 一 方 ,自 動 車 業 界 の よ う に,輸 出 が 主体 の と ころ は外 貨 が 常 時余 るの で為 替 リス ク を カバ ー す る専 門 の管 理 部 門 が必 要 に な るが,当 面 は考 えな い とこ ろが 多 い よ うだ。 また,石 油 業 界 の よ う に反 対 に輸 入 が圧 倒 的 に多 い とこ ろ は,常 時 外 貨 の手 配 が必 要 で,そ の た めの 体 制 が 必 要 とな り,当 面 は 自社 に よ る管 理 は困 難 な状 況 に あ る。 銀 行 情 報 で も3自 動 車 業 者 や石 油 業 者 は従 来 どお り銀 行 経 由の 外為 取 引 を して い る由。 中小 の輸 出 入業 者 や メ ー カ ー も 自 前 で の外 貨 運 用 は社 内体 制 的 に も無 理 で あ り,当 面 は従 来 と同 じ くほ とん ど 銀行 経 由 の よ うで あ る。 (2)ネ ッテ ィ ング ・グロ ーバ ルCMS 日本 の総 合 商 社,メ ー カ ー及 び関連 下 請 会 社,金 融 会 社 な どは世 界 各 地 に 営 業 拠 点 を展 開 して い る。 各 地 に は現 地 の それ ぞ れ の拠 点 の銀 行 口座 を持 っ て い る。 従 来 は それ ぞ れ の支 店 で 資金 管 理 を行 っ てお り,必 要 に応 じて本 社 との 間 で 資金 振 替 を行 っ てお り,全 社 的 に は極 め て非効 率 で あ っ たがa今 回 の改 正 で は,外 為 法上 で は本社 が 全 世 界 を統 一 的 に管 理 ,運 用 す る こ とが 可 能 に な っ た。 従 って,多 くの会 社 で 全 世 界 の資 金 運 用 を効 率 化 す べ く,検 討 を開始 して い るが,そ の た め に は グ ロ ーバ ル ベ ー ス で の ネ ッテ ィ ン グ,CMSシ ス テ ム が 必 要 で あ る。 残 念 な が ら,日 本 の 大 銀 行 で さ え,こ の よ うな コ ン ピュ ー タ と通 信 シ ス テ ム は欧 米 先 進 国 に比 し,10年 以 上 の お くれ が あ る。 日本 の大 企 業 は前 々 か ら この よ うな シス テ ム を望 ん で いた が,漸 く上 位 都 銀 で独 自の シ 改正外為法実施に伴う影響と今後の展開257

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ス テ ム の提 供 が 可能 とな った ば か りで あ る。 しか も先 進 的 なCITIBANK, CHASEBANK等 と比 べ る と機 能 的 に も,カ バ ー す る国 の数 で もか な り劣 勢 を まぬ か れ な い。 関連 企 業 で は,従 来 の 取 引 関係 で 止 む を えず,邦 銀 を使 う 場 合 と,進 ん だ外 銀 を使 う場 合 に分 か れ て い る状 況 で あ る。 特 に,全 世 界 で の米 ドル利 用 が 多 い 中で,米 ドル の効 率 的 な運 用 の た め に,ニ ュー ヨー クの 銀 行 の勘 定 を使 用 す る傾 向 が あ り,こ の場 合 現 地 決 済 シ ス テ ム との イ ンタ ー フ ェイ ス機 能 が格 段 に優 れ て い る米 銀 利 用 の傾 向が 強 い。 3.商 社 等 の金 融機 能 強化 今 回 の改 正 で,商 社 や大 手 メー カー 等 は海 外 で 金 融 機 関 の設 立,買 収 が 自 由 に な った の で,総 合 的 な収 益 向 上 と本 来 業 務 の 円滑 な運 用 の た め に も,金 融機 能 強化 の た め の検 討 を開 始 して い る。 と くに総 合 商 社 は,従 来 か ら各 地 の プ ロ ジ ェ ク トフ ァイ ナ ンス 等 で金 融 業 務 を行 って い るの で,そ の傾 向 は強 い。 現 に,丸 紅 等 は フ ィ リピ ン に合 弁 銀行 を設 立 して い る。 また,海 外 で の 外貨 貸 付 け,取 引先 との外 貨 売 買 等 も,一 部 従 来 か ら実施 して い た(許 認 可 ベ ー スで)も の が,よ り活 発 化 され る こ とが 予想 され る。 いず れ に して も,こ れ らの 多 くは,従 来 も許 認 可 べ 一 スで 必 要 な もの は実 施 して お り,改 正 後 は報 告 べ 一 スで や り易 くな っ た とい う こ とで あ る。 4.金 融 機 関 へ の 影 響 大 蔵 当局 の発 表 して い る効 果 と して は 「金 融機 関 の ビジ ネ ス チ ャ ンス の拡 大 」 とあ るが,メ リ ッ トだ けで な くデ メ リッ トも多 い の で掲 題 の表 題 とした。 法制 的 に大 き く影響 が あ る もの として外 国為 替 公 認 銀 行 の廃 止,両 替 商 廃 止,対 外 支 払 い の 自 由化 の3点 で あ ろ う。 以下 これ らに よ る影 響 につ き検 討 して み た い。 改 正 外 為 法 の金 融機 関 に与 え る影 響 を大 別 す る と次 の とお り。 (1)外 国 為替 公 認 銀 行 の廃 止 258国 際経営論集No.16・171999

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これ は,公 認 銀 行 の 看 板 が な くな り,公 認 銀 行 と して の条 件 ・義 務 もな く な る の で,そ の意 味 で は制 度上 の負 担 が な くな る。 外 国為 替 公 認 銀 行 は,都 銀,地 銀,第2地 銀,信 用 金 庫,信 用 組 合,農 協 ,在 日外 銀 等,約350あ っ た が最 近 の傾 向 と して は,各 金 融 機 関 の業 務 方 針 にバ ラ ツ キが 出 て来 て い る 。 ① 全 店 で一 斉 に外 為 業 務 を強 化 す る。 ② 本 店 また は一 部 大 店 に集 中 し,ほ とん どの店 は取 次 の み を扱 う。 ③ 外 為 業 務 か ら撤 退 す るか,大 手 都 銀 に委 託 す る。 上 記 傾 向 は何 も改正 外 為 法 が 主 因 で 出 て来 た もの で は な く,背 景 に はBI S規 制 ・不 良 債権 の重 み ・競 争 激 化 の環 境 下 ,自 らの選 択 か,や む を え な い もの か に よ る もの で,外 為 法 改 正 はそ の端 緒 を与 えた と言 った方 が 正 確 で あ ろ う。 制 度 的 に は,銀 行 業 務 と して外 国為 替 を取 り扱 っ た場 合 は,新 法 で も報 告 の義 務 が あ り,且 つ 本人 確 認 の義 務 も生 じた の で事 務 上 は若 干 煩 環 に な った と窓 口担 当者 は言 っ て い る。 しか も,報 告 先 が所 在 地 の税 務 署 で あ り ,受 け 取 った税 務 署 が 膨 大 な報 告 書 を どうい う方 法 で ど こ まで チ ェ ック して い るか 疑 問 で あ る と感 想 を洩 らす 担 当者 もい る。 な お,だ れ で も外 為 業務 が で き るよ うに な った が,今 の と ころ新 た な動 き は な い よ うで あ る。 考 え られ る理 由 と して は,外 為 業 務 は多 岐 にわ た り,か な り専 門性 と経 験 を要 し,且 つ,コ ン ピ ュー タ シス テム な ど設 備 投 資 もあ り, 一 朝 一 夕 で 出来 る もの で な い こ とに よ る もの と思 わ れ る 。 都 銀 の外 為 セ ンタ ー に よれ ば改正 後 業務 の ボ リュ0ム,中 身 に は さ ほ ど変 化 はな い よ うで あ る。 但 し,今 後 長 い 目で 見 る と各 金 融 機 関 の競 争 激 化 に よ り,そ れ ぞ れ に は量 質 と もに変 化 が 生 まれ て来 るだ ろ う との こ とで あ る (2)両 替 商 廃 止 誰 で も両 替 商 が 出 来 る よ う に な った が,現 在 の と こ ろ,一 部 ス ー パ ー な ど で外 貨 で買 物 が 出来 る よ うに な った だ けで あ る。香 港 や 米 国 の よ う に街 角 で 両替 が で き る状 況 で はな い。 両替 業務 は従 来 銀 行 で は収 益上 及 び事 務 負 担 上 改正 外 為 法 実 施 に伴 う影 響 と今 後 の展 開259

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か ら は回避 した い 業務 で あ り,余 り力 を入 れ て い な い業 務 で む し ろ銀 行 に と って は両替 商 が た くさん 出来 た方 が望 ま しい状 況 で あ る。 しか し,あ ま り出 て来 て い な い理 由 は 日本 の外 貨 の 受払 い状 況 に あ る。 受 け と払 い の比 率 で は 圧 倒 的 に払 い が 多 く,銀 行 は多 額 の保 険 料 を払 って,米 国他 各 国 か ら貨 幣 を 輸 入 せ ざ る を えな い状 況 で あ り,そ れ をや れ る両 替 商 は少 な い こ とに よ る(日 銀 の統 計 に よれ ば 日本 の渡 航 旅 費 は払 いが 受 け の10倍 で あ り,常 時 外 国通 貨 不 足 の状 況 で あ る)。 (3)コ ス ト面 の影 響 コ ス ト面 で は次 の影 響 が 出 始 め て い る。 もっ とも これ も外 為 法 改 正 の み の 影 響 と言 う よ り も,外 銀 の攻 勢 や邦 銀 同 士 の競 争,顧 客 の 要 請 な どに よる複 合 的 要 因 か らで あ る。 ① 諸 手 数料 の 減 少:送 金 手 数 料,輸 出 ・輸 入 関係 手 数 料 等 に引下 に よ る 収 益 減 の影 響 が 出 て来 て い る。特 に送 金 手 数料 の 減 少 は大 きい。 ② 人 件 費 他経 費=貿 易 関 係 報 告 で0部 軽 減 され たが,人 員 そ の他 経 費 は 外 為 法 関 係 で はあ ま り変 わ らな い よ うで あ る。 (4)コ ン ピ ュー タ シ ステ ム面 の影響 前 述 の ネ ッテ ィン グ,CMS等 海 外 に お け る顧 客 の資 金 運 営 に関 す る シス テ ム の要 請 は厳 しい が,こ れ に応 え られ る銀行 は大 手 の都 銀 に限 られ る。 し か も外 銀 の攻 勢 もあ り,苦 戦 して い る。 今 後,こ れ に加 え,世 界 の通 貨 の リ アル 決 済 シ ス テ ム(CLS)が1991年 稼 働 をめ ざ し,先 進 国 の約60行 の 出資 で ス タ ー トした が,邦 銀 の 数行 が 参加 を希 望 して い る。 この 決 済 シス テム に 参 加 す るか否 か が,国 際 業 務 に お け る優 劣 決 定 に大 きな影 響 を与 え る と思 わ れ る。 しか し,一 方 で膨 大 な シス テ ム投 資 負 担 もか か るの で躊 躇 す る銀 行 も あ り,又 格 付 け機 関 の評 価 が低 い た め参 加 が 困難 な銀行 もあ る。 5.そ の 他 の 影 響 4月 の改 正 外 為 法 実施 後,最 大 の 変化 と言 え ば大 蔵 当 局 の予 想 とは別 に, 260国 際 経 営 論 集No16・171999

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東 京 の 外 為 マ ー ケ ッ トと株 式 市 場 にお け る外 資 を中 心 とした大 口 資 金 の動 き に よ る危 機 的 な乱 高 下 で あ ろ う。 外 資 は何 で も自由 に な った とい う認 識 の下 で 活 発 に対 日進 出 や 日系企 業 との 提 携 を強 化 して お り,新 聞 を賑 わ せ て い る。 見 方 に よれ ば これ が 隠 れ た真 の 背景 で あ り,影 響 か も しれ な い。 日本 企 業 の 活 性 化 の 前 に,外 国企 業 に活 性 化 を もた ら した結 果 とな った と言 え る 。

第3章

今 後 の 展 開

以 上,第1章 で 改正 外 為 法 の骨 子,第2章 で そ の影 響 を検 討 して きた が , 今 後 の 展 開 を見 る場 合,単 に改正 外 為 法 の み に焦 点 を 当 て て見 る こ とで は不 十 分 で あ ろ う。 外 為 法 が ビ ッグバ ンの フ ロ ン トラ ンナ ー で あ る点 よ り,ビ ッ グバ ン との関 係 や 現 在 の世 界 外 為 マ ー ケ ッ トの 混 乱 と危 機 的 状 況 を念 頭 に お い て,今 後我 が 国 と して どの よ うな展 望 を持 っ て取 り組 むべ きか に つ い て , 私 見 を交 えて述 べ て み た い。 日本版 ビ ッグバ ン は東 京 市 場 の活 性 化 の た め に,Free ,Fair,Globa1を モ ッ トー に,大 幅 な規制 緩 和,自 由化 を 目指 し,目 下残 る課題 を フ ォ ロー ア ップ 中 で あ り,既 定 の 方 針 と して動 い て い る。 しか しな が ら,東 京 マ ー ケ ッ トは外 為 法 改 正 後 ,一 層 激 動 の様 子 を呈 し, 円 や株 の相 場 は危 機 的 な まで に乱 高 下 して い る。皮 肉 な見 方 をす れ ば,ビ グバ ンが 目指 した マ ー ケ ッ トの 活 性 化 は あ る一 面 で は達 せ られ た と も言 え る 。 た だ し,日 本 の 金融 機 関 のGlobalな 展 開 と活 性 化 の 方 向 で は な く,混 乱 と滅 亡 の 危 機 を もた ら し,.__.方 で 外 資,就 中 米 国 ヘ ッ ジ フ ァ ン ド と外 資 金 融 機 関 の 活 動 の 場 を,手 を こ まぬ い て 提 供 し て い る状 況 と も言 え る 。 さ ら に,世 界 の 金 融 史 上 例 の な い超 低 金 利 政 策(年0 .15%は もはや 定期 預 金 とは言 えな い) を米 国 の 強 い要 請 で 続 行 し,庶 民 に は生 活 上 の 不 安 を与 えて い る。 反 対 に, 大 手 ヘ ッジ フ ァン ドに は,低 利 率 で ア ジア や ロ シ アへ の 投 機 資 金 を供 給 す る 役 割 を果 た して い る現 状 に あ る。 改正 外 為 法 実施 に伴 う影 響 と今 後 の展 開261

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1998年9月19日 の朝 日新 聞 に よれ ば,米 国財 務 省 は 「日本 の 国会 で与 野 党 が合 意 した 『金 融 再 生 関連 法 案 』 につ いて,13兆 円 の金 融 機 関 に対 す る公 的 資金 の 注 入 を廃 止 す る こ とに な っ た点 を重 く見 て お り,日 米 首 脳 会 談 で そ れ に代 わ る対 応 策 を求 め て い く方針Jと 報 じて い るが,そ の後 決 定 した預 金保 険 機 構 用資 金17兆 円 を加 えて60兆 の 公 的 資 金 の投 入 自体,総 予 算70兆 しか な い 日本 の財 政 か らは破 産 状 態 と言 え る。 しか もそれ が まわ りまわ って 米 国 ヘ ッジ フ ァ ン ドや 大 手 金 融 機 関 に まわ って い くよ うで は,何 のた め の公 的 資 金 投 入 か理 解 に苦 しむ 。 以 上 の よ うな現状 を踏 ま え以 下 今 後 の展 望 につ き,大 切 な ポ イ ン トを挙 げ て み た い。 1,不 良債 権 処 理 バ ブ ル の後 遺 症 で あ る不 良債 権 処 理 は安 易 な公 的 資 金 に よ らず,金 融 界 全 体 の 問題 と して総 力 を あ げ て取 り組 む。 通 常 国会 で大 蔵 省 銀 行 局 長 や 東京 三 菱 銀 行 頭 取 が 「銀 行 界 全 体 として は不 良債 権 処 理 は 自力 で 出 来 る」 と証 言 し て い る。 日本 の 銀行 は資産 量,規 模 か ら見 て世 界 一 流 の銀 行 が 多 い の で あ るか ら, 米 国 の格 付 け機 関 の評 価 の み で一 喜 一 憂 す る こ とな く腰 を落 ち着 け て対 応 す べ きで あ る。 また,次 に述 べ る課 題 で 提 起 して い る外 為 市 場 や株 式 市 場 で の極 端 な大 口 投 機 資 金 の規 制 も,不 良資 産 に悩 む銀 行 対 策 と して併 せ て行 うべ きで あ る。 2.極 端 な投 機 資 金 の 規制 改 正 外 為 法 で は,第4章 で 「本 邦 と外 国 との 間 の大 量 の 資 金 の 移 動 に よ り, 我 が 国 の金 融 市 場 また は資 本市 場 に悪 影響 を及 ぼ す」 場 合,有 事 規 制 として 許 可 制 を命 令 出来 る伝 家 の宝 刀 を用 意 して い る。 今 こ そ,そ れ を発 動 す べ き 時 で あ る。 ビ ッ グバ ン政 策 が米 国 当局 の 強 い要請 で 始 ま った とは い え,何 も, 262国 際経営論集No.16・171999

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ヘ ッ ジ フ ァ ン ドや外 資 が 市場 を荒 ら し回 る こ とを奨 励 して い る訳 で はな い だ ろ う。 自由化 も規 制 緩 和 も,多 数 国 民 の利 益 を促 進 す るた め の もの で あ り,一 部 の特 定 の組 織 や,企 業 の た めの もの で は な い筈 で あ る。 規 制緩 和 反 対 は資 本 主 義 の 原 則 に反 す る とい う意 見 もあ るが,「 後 は野 となれ 山 となれ 」式 の 自 由 化 な らば,し な い方 が ま しで あ る。 現 に,ア ジ アやEU諸 国 の 中 に は ヘ ッジ フ ァ ン ド規 制 の動 きが 出 て お り,決 して,日 本 が孤 立 す る こ とに は な らな い と思、う。 1998年9月21日 付 け朝 日新 聞 社 説 で,「不 必 要 な 規制 は大胆 に撤 廃 す べ きだ が,だ か ら とい っ て,ど ん な分 野 で もや み く もに国際 ル ー ル に合 わ せ た り , 自 由化 した りすれ ば よい とい うわ けで は な い。 国 際 通 貨 基 金(IMF)の 求 め に従 っ て金融 自由 化 を断 行 した タ イ は,短 期 資本 の 激 しい流 出入 に見 舞 わ れ た。 バ ブル の発 生 と崩 壊 を経験 し,あ げ くに通 貨 危 機 を経 て経 済 そ の もの が 危 機 に あ る。 規 制 を緩 和 す るだ けで は,か え って市 場 を不 安 定 に して し ま う場 合 もあ る こ とは,学 ん だ 方が い い だ ろ う。」と述 べ て い る。 ビ ッグバ ン を 後 押 し した ジ ャー ナ リズ ム も こ こに きて反 省 して い る こ とが うか が え る。 3.日 本 社 会 の 透 明化,GLOBAL化 海 外 か らの 日本 の評 価 が 急 激 に低 下 して い るの は な に も経 済 だ けが 原 因 で は な い。 む し ろか な りの原 因 が 日本 社 会 の非 近 代 性 ,不 透 明 さに あ る。 野 村 証 券 の総 会 屋事 件 に端 を発 して 四大 証 券 の恥 部 が 明 らか に な る と と もに,そ こに不 正 融 資 した第 一 勧 業 銀 行 問題 に飛 び火 し,さ らに銀 行 界 と大 蔵 省 との 一 大 汚 職 事 件 に まで 発 展 した こ と は ,い か に 日本 社 会 が 不 透 明 で あ り, Globa1で な いか を如 実 に示 して い る。最近 で は政 官 財 の癒 着 発覚 が 防衛 庁 に まで及 ん で い る。 世 界 か ら見 た ら 「また か 」 と軽 蔑 の眼 が 強 ま るば か りで あ る。 ビ ッグバ ンで 如 何 にFairな マ ー ケ ッ トを標 榜 して も,マ ー ケ ッ トの 主 役 が 改正外為法実施に伴う影響 と今後の展開263

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この よ うな状 況 で は世 界 か らま と もに信 用 され な いだ ろ う。 日本 は ビ ッグバ ンの前 に まず社 会 の 奥 深 く根 ざ して い る この病 根 の除 去 か ら出発 す べ きで あ る。 この意 味 で政 権 党 と政 府 の責 任 は重大 で あ り,自 ら衿 を正 す こ とか ら始 め るべ きで あ る。 4.日 本経 済 ・金 融 の 発展 の 方 向 上 記 の他 日本 経 済 ・金 融 の 今 後 の発 展 を展 望 す る場 合,次 の諸 課 題 の推 進 が 必 要 と思 わ れ る。 それ ぞ れ が重 い課 題 な の で 問題 提 起 に と どめた い 。 (1)抜 本 的 な景 気 対 策 戦 後 最 大 の不 況 の 早 期 克服 が 急 務 で あ る。 安 易 な公 共 投 資 に依 存 せ ず,幅 広 い消 費 拡 大 の た め の政 策 を推 進 す る必 要 が あ る。 ・史 上 未 曾 有 の超 低 金 利 政策 の 見 直 し と,適 性 な預 金 金 利 の適 用 と優 遇 策 の検 討 ・将 来 の不 安 をな くす た め の,健 康 保 険 ・厚 生 年 金 等 の福 祉 増 強 を図 る ・世 界 に例 の な い超 長 時 間 不 払 い労働 の廃 止 と雇 用 増 進 策 の推 進 ・不 況 の契機 とな っ た消 費 税 の撤 廃 又 は減 額 ・これ ら,諸 政 策 推 進 の た め の 国 家財 政 支 出 の見 直 し と効 率 的 な再 配 分 の 検 討 ② 日本 の金 融 機 関 の体 質 改 善 安 易 な公 的 資 金 依 存 で はな く,銀 行 自身 が 自 ら自信 を持 っ て立 ち上 が る方 策 を具体 的 に推 進 す べ きで あ る。 ・明 治 以 来 培 っ て きた銀 行 本 来 の業 務 の再 確 認 と良 い伝 統 の継 承 ・極 端 な デ リバ テ ィブ な ど投 機 的 で 不安 定 な業務 の抑 制 ・単細 胞 的 な人 員 削 減 の リス トラ政 策 で は な く,世 界___.有能 な 日本 の銀 行 従 業 員 の創 意 と総 力 を生 か す独 創 的 な政 策 の 実行 ・国民 の信 頼 をか ち とるた め のデ ィス ク ロ ジ ャー の徹 底 ・取 引 先 と と もに栄 え る顧 客 指 向 に徹 した経 営 264国 際経営論集No.16・171999

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(3>ビ ッグバ ン諸 施 策 の 見 直 し ビ ッグバ ン諸 政 策 の うち,今 後 予 定 され て い る政 策 につ い て は既 定 方 針 と して 固定 的 に捉 え る の で は な く,見 直 しを行 い,日 本 の金 融 に とって 良 い も の は実 施 し}時 期 尚早 や再 検 討 す べ き もの は 中止 す べ きで あ る。 次 の課 題 は 再 検 討 が 必 要 。 ・中小 証 券 会社 の 軒 並 み倒 産 が予 想 され て い る証 券手 数 料 の 自 由化 ・中堅 生 損 保 の経 営破 綻 を惹起 す る保 険 料 の 自 由化 ・金 融 税 制 の見 直 し ・ビ ッグバ ン施 策 の 最 終 期 限 の見 直 し (4)真 の世 界 経 済協 調体 制 の 確立 世 界 経 済 のGloba1化 は資 本 主 義 体 制 下 市 場 経 済 の 進 展 過 程 で は避 け て通 れ な い こ とで あ り,そ れ だ けに そ の対 応 が必 要 とな っ て きて い る。 従 来 の基 軸 通 貨 で あ る ドル の安 定 の た め の協 調 体 制 は,1999年 か ら始 ま るEUROの 誕 生 に よ り,新 た な時 代 を迎 え よ う と して い る。 円が世 界 で どの よ うな展 開 に な るか は 日本 に とっ て は重 要 な課 題 で あ ろ う。 日本 と して は次 の課 題 を追 求 す る こ とが必 要 で あ る と思 う。 ・日本 と貿 易 ・資 本 関 係 の深 い ア ジ ア諸 国 との共 存 共 栄 の連 携 強 化 とア ジ ア経 済通 貨 体 制 の検 討(従 来 の米 国 主 導 で はな く) ・EU諸 国 の社 会 民 主 党 政権 の福 祉 民 生 重 視 政 策 の観 点 か らの通 貨 ・市場 政策 を含 む経 済 政 策 との整 合 性 を持 つた めの 必 要 な連 携,共 同歩 調 の模 索 以 上,改 正 外 為 法 実 施 後 にお い て の世 界 及 び 日本 の現 状 に基 づ く日本 の経 済 ・金融 とそれ らの 基 盤 で あ る為 替 政 策 につ い て考 究 した が ,紙 面 の都 合 で 問 題 提 起 に終 わ った。 さ らに深 くは別 の機 会 に取 り上 げた い 。 改 正 外 為 法 実 施 に伴 う影 響 と今 後 の展 開265

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参 考 文 献 本 稿 の準 備 の た め次 の 文献 を参 照 した 。紙 面 の都 合 で 個 々 の参 照 に つ い て は文 中省 略 した の で ご了 承 頂 きた い。 1.参 考 法 令 外 国為 替 及 び外 国 貿 易 法(新 旧) 外 国 為替 管 理 令(旧),外 国為 替 令(新) 2.新 聞 日本 経 済 新 聞 朝 日新 聞 日経 金 融 新 聞 ニ ッキ ン 3.雑 誌 金 融 財 政 事情(社 団法 人 金 融 財 政 事 情 研 究 会) エ コノ ミス ト(毎 日新 聞社) 金 融 ジ ャー ナ ル(金 融 ジ ャー ナル 社) 世 界 経 済評 論(社 団 法 人 世 界 経 済 研 究 協 会) 1>EWFINANCE(地 域 経 済 研 究 所) TheEconomist(ロ ン ドンTheEconomist社) 4.政 府 刊 行 物 1997年 版 国 際 比 較 統 計(日 本 銀 行 国際 局) 日銀 月 報(日 本 銀 行) 5.単 行 本 湖 島知 高編 『1998年外 為 自由化 と ビ ッグバ ン』 朝 日出版 社,1997年 財部 誠 一 ・織 坂 濠 『改 正 外 為 法 入 門』 フ ォ レ ス ト出版,1998年 さ くら総 合 研 究 所 編 『ア ジア経 済 早 わ か り』 さ くら総 合 研 究 所,1998年 日本 経 済 新 聞社 編 『ど うな る金 融 ビ ッグバ ン』 日本 経 済 新 聞 社,1997年 楠本 博 『日本 版 ビ ッグバ ンのす べ て』 東 洋 経 済 新 報 社,1997年 今 井 激 『図 解 日本 版 ビ ッ グ バ ン』 東 洋 経 済 新 報 社,1997年 中村 一 城 『ビ ッ グバ ンで 銀行 ・証 券 ・保 険 崩壊 の 危 機 』 ア ップル 出版 社,1997 年 伊 藤 友 八 郎 『図解 日本 版 ビ ッグバ ンが 見 る見 るわ か る』サ ンマ ー ク出版,1997 266国 際経営論集No.16・171999

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年 山 田弘 ・野 田正 穂 『現 代 日本 の金 融 』 新 日本 出版 社 ,1997年 (財)金 融 情 報 シ ス テ ム セ ン ター編 『平 成9年 版 金 融 情 報 シス テ ム 白書 』1997年 6.論 文 白井 進 「日本 版 ビ ッグバ ンの 背景,影 響,問 題 点 ,今 後 の展 開 につ い て」神 奈 川 大 学 経 営 学 部 『国 際経 営 フ ォ ー ラム 』 第9号 ,1998年 白井 進 「我 が 国 銀 行 の 国際 業 務 シス テム につ い て」神 奈 川 大 学 経 営学 部 『国 際 経 営 フ ォー一ラム 』 第8号,1997年 改 正 外 為 法実 施 に伴 う影 響 と今 後 の 展 開267

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