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Psychosomatical study on five cases with oral cancer committing suicide Masatsugu Shimizu and Keiichiro Ono Abstract: The records of five oral cancer

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Academic year: 2021

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(1)

自殺 に 至 っ た 口腔 癌 患 者5例

に つ い て の 心 身 医 学 的 研 究

清水正嗣 ・小 野敬一郎

Psychosomatical

study

on five cases with

oral cancer

committing

suicide

Masatsugu Shimizu and Keiichiro Ono

Abstract:

The records of five oral cancer cases that committed suicide were studied psychosomatically.

4 were diagnosed as S. C. C. histologically and treated by oral surgeons and radiologists between 1959

1980 at the Uni. Hospital of Tokyo Medical and Dental University by Shimizu and others, and the

remaining case was treated at a cancer center in Japan and the case history was examined for this

study from the book written by the patient herself.

The first case was a 50-year-old female with cancer of the upper left gum T4N1M0, which was

treated with radiotherapy. Just one year later after the radiation, she committed suicide by jumping

into a river, because of jaw pains due to tumor remains.

The 2nd case was a 53-year-old male with cancer of the right cheek mucous membrane T3N2bM0,

which was first treated with bleomycin, then with radiotherapy for 1. 5 years.

After finishing

radiotherapy successfully, the patient killed himself by hanging in the hospital due to the pain, although

the tumor had clinically disappeared.

The 3rd case was a 48-year-old female with cancer on the left side of the tongue T3NOMO. She

was treated with interstitial radon seed radiation with success. After discharge from the hospital,

she committed suicide by hanging herself at home afler complaining of pain and anxiety.

The 4th case was a 55-year-old male with cancer on the right side of the tongue T3NlaMo. He

was referred to the tumor conference, where the treating plan was decided to be radiotherapy. Before

admission to the hospital, he killed himself by jumping into the Pacific Ocean from a ferryboat because

he became pessimistic about the planned radiotherapy.

The 5th case was a 59-year-old female novelist. She suffered from cancer on the right floor of

the mouth and visited a cancer center, where a surgeon examined her and excised the tumor as a

benign lesion. After that she was referred to the radiological department. The result of the

radio-therapy was effective, but she thought her tumor would not disappear and hung herself at home due

to severe mouth pain and great depression over the imagined future course of the tumor following the

first failure of diagnosis and treatment.

As causes of suicide by the patients with oral cancer, the side effect of pain during and after

radio-大 分医科radio-大 学医学部歯 科 口腔 外科学教室(主 任:清 水正 嗣教 授)

Department of Oral and Maxillo-Facial Surgery, Faculty of Medicine Medical College of Oita (Chief : Prof. M.

Shimizu)

(受 付 日1990年IQ月8日) ―41―

(2)

臼歯 心 身:第6巻 第1号 1991年6月

therapy was pointed out at first, then the anxiety of the disease as cancer and distrust of the doctor played very important roles. For the future it should be stressed that we must not ignore these points as we examine and treat oral cancer patients.

Key words: suicide, oral cancer, radiotherapy キ ー ワー ド:自 殺,口 腔 癌,放 射 線 療 法 I.は じ め に 口腔 悪 性 腫 瘍 患 者 が,疾 患 の 本体 を知 り,そ の治 療, 経 過,予 後 成 績 な どに つ い て,可 能 な限 りの努 力を し て 情 報 を 集 め た と き,患 者 が そ れ らに対 し ど の よ うな情 緒 的,心 因的 反 応 を示 し,行 動 を と るで あ ろ うか に つ い て の研 究 は少 な い。 特 に,口 腔 癌 に限 らず,癌 が 不 治 の 病 と判 断 され,ま た そ の 生 存 期 間 も きわ め て 限 定 され た もの で あ る と認 識 さ れ た と き,そ の 患 者 の 心 身 医 学的 反 応 は,第 三 者 の窺 い 知 る べ か ら ざる 大 きい もの で あ ろ う と推 察 され る。 そ の 際 の 患 者 の 心 因 性反 応 に 関 して は,患 者 の診 断 あ る い は,治 療 を担 当 した 歯 科 医 師 な い しは,医 師 の 対 応 の如 何,そ の説 明,対 話 の 内容 と質 の如 何 が 大 き く働 く で あ ろ う と考 え られ る。 また,そ の 担 当 医 側 の 対 話 の 不 十 分 さは 患 者 を 精 神 的 に 大 きな 不 幸 に 導 き,想 像 を超 え る後 悔 の 念 に 苛 まれ るに 至 った 例 を,ま れ な らず 見 聞 し,経 験 して い る 。 本研 究 で は,そ の よ うな観 点 か ら 自殺 に至 った 自家 治 験4例,他 家1例 の計5例 につ い て,そ の 疾 患 の 診 断 治 療,経 過 の如 何,自 殺 に至 る まで の時 間 的 推 移,そ し て 推 定 され た 原 因 な どに つ い て 究 明 を 行 った の で そ の概 要 を,若 干 の考 察 と と もに 報 告 す る1)。 な お,こ れ ら 自 家 治 験 の4例 は,い ず れ も著 者 の 清 水 が1959年 よ り1981 年 ま で在 職 して い た前 任 地,東 京 医 科 歯 科 大 学 に お いて 経 験 した症 例 で あ る こ と を断 らせ て いた だ く。 II.研 究 対 象 お よ び そ の 内 容 本 研 究 で扱 った 口腔 癌 自殺5症 例 の 一 覧 を 示 す と, 表1の ご と くで あ る 。 自家 治験4例 は 男女 各2例,年 齢 は48歳 よ り55歳 ま で,部 位 別 で は,舌2例,上 顎 歯 肉,頬 粘 膜,各 々1例 で あ った 。 他 家 例 の1例 は,59歳 女 性,右 口底 癌 で あ る が,こ の症 例 につ い ては,考 察 に お い て 主 に 述 べ る。 これ ら4例 の 病 理 組 織 学 的 確 定 診 断 は,全 例 扁 平 上 皮 癌 で あ った 。1978年UICC提 案2)のTNM分 類 を 見 る と,原 発腫 瘍Tに つ い て はT4が1例,T3が3例 で あ った 。 所 属 リ ンパ節Nに つ い て は1987年 分 類3)に 対 応 させ て,Nの プ ラ ス,マ イ ナス で 見 て み る と,Nプ ラ ス2 例,マ イ ナス2例 で あ り,遠 隔 転 移Mに つ い て は,全 例 MOで あ った 。 III.自 殺 に 至 る 経 過 と 状 況 1.治 療 方 法 な ど 治 療 方 法 は,3例 が 放 射 線 療 法 を 主 体 と し,1例 は 治 療 開 始 前,す な わ ち不 治 療 で あ った 。 放 射 線 療 法 施 行3 表1口 腔 癌 自殺5症 例 ― 自家 治 験4例 お よび他 家 治 験1例 ― ―42―

(3)

自殺 に至 った口腔 癌患者5例 につ いての心身医挙的研究 例 の 内2例 に は,BLMの 化 学 療 法 が 併 用 さ れ て いた 。 初 診 よ り,死 亡 ま で の期 間 を 見 る と,も っ とも長 くて 1年3ヵ 月,最 短 は不 治 療 例 の1ヵ 月 で あ った 。 中 間 の 2例 は,そ れ ぞ れ1年 お よび3ヵ 月 で あ った 。 2.自 殺 の 方 法 お よ び 場 所 自殺 の 場 所 お よび 方 法 に つ いて み る と,各 症 例 そ れ ぞ れ で あ り,画 一 的 に は ま とめ 難 い 。 しか し,方 法 に つ い て のみ 見 る と,総 首 が 症 例No.2お よび,No.3の2例, 入 水 がNo.1お よびNo.4の2例 で あ った 。 これ ら総 首 お よび 入 水,各2例 ず つ の 内容 を 見 て み る と,総 首 の う ちNo.2は 入 院 中,No.3は 退 院 後,自 宅 に お い て で あ った 。 入 水 の2例 に つ い て も,場 所 が 異 な って お り, No.1は 退 院 後,自 宅 の 近 くの 川 で あ り,No.4は 入 院 前,す な わ ち,治 療 開 始 前 の 船 旅 中 の 海 へ の 入 水 で あ っ た 。 3.推 定 され た 自殺 の 原 因 とそ の 状 況 本 研 究 の重 要 ポイ ン トを な す 項 目で あ るが,各 症 例 の 主 治 医 を 通 じて,聴 取 した 事 が ら と,著 者 の 集 め 得 た 情 報 を 合 わ せ て 推 定 し,組 み 立 て た 内容 とな る こ とは,本 研 究 の性 質 上,止 む を 得 ぬ もの で あ る。 そ の 限 定 の下 に 次 に 各 例 ご とに 記 述 す る。 1)症 例No.1:左 側 上 顎 洞 癌 に 対 す る 放 射 線 治療 が 終 了 し,退 院 経 過 観 察 のた め に 外 来 通 院 中 で の 自殺 で あ った 。 しか し,当 時 の 病 歴 を 調 べ て み る と,実 際 に は,腫 瘍 病 変 は 消 失 して お らず,次 の 治 療 の た め に 入 院 予 定 が た て られ て いた が,患 者 は 痛 み に 悩 ま され て い る 状 態 が 続 い て いた 。 患 者 は 数 週 間以 内に 予 定 され た 入 院 を 前 に し て,自 宅 近 くの川 に 飛 び 込 み,入 水 自殺 した 。 2)症 例No.2:腫 瘍 病 巣 の 主 要 部 位 は,頬 粘 膜 とい っ て も下 顎 臼歯 後 方 部,日 後 三 角 に 相 当 す る領 域 で あ っ た 。 した が っ て,60Co外 照 射 な ど 放 射 線 照 射 の 後 に, 頬 粘 膜,歯 肉 の壊 死 を 来 し,下 顎 骨 の一 部 が 口腔 に 露 出 した 。 そ の状 態 は,放 射 線 性 骨 髄 炎 のそ れ で もあ り,さ らに進 展 す れ ば,同 骨 壊 死 の症 状 に も 向か う傾 向が 見 ら れ て いた 。 した が って,そ の疼 痛 は,相 当 に 厳 しか った も の と推 定 され た 。 本 例 につ いて は,当 時 の 医 学 部 放 射 線 学 教 室 の主 治 医 に直 接,事 情 を 聞 くこ とが で きた が, 自殺 前 の状 態 は,全 身 的 には 良好 で あ った が,一 方,精 神 的 には,イ ンテ リ,知 識 階 級 に 属 し,さ る会 社 の 現 役 役 員 とし て活 躍 中 の人 で あ った こ とは,そ の 自殺 の原 因 を 構 成 す る 因子 に とっ て,大 きな 意 味 を 持 つ もの か も し れ なか った 。 局 所 的 に は,そ の 腫 瘍 台 帳 の 記 録 で,Dc

(death with cancer)と 記入 さ れ て いた か ら,原 発 腫 瘍

は 治 癒 して いな か った もの と考 え られた 。 しか し,当 時 の主 治 医 の 判 断 は,Do(death without cancer)と 考 え る もの で あ り,こ の 点 も,そ の原 因を 考 察 す る上 に お い て 重 要 で あ る 。 自殺 時 の 状 況 と して は,医 学 部 病 棟 にお け る絡 首 で あ って,さ らに そ の場 所 が,病 棟 の 中 の リネ ン室 で あ った こ とは,当 時 そ の管 理 体 制他 につ い て いろ いろ と論 じら れ た 。 そ の直 接 原 因 と して は,第 一 に疼 痛 が 挙 げ られ た 。 つ い で53歳 とい う年 齢 と共 に,社 会 的 活 動 性か ら考 え て, 躁 欝病 的 精 神 状 態 が問 題 とな る。 欝 状 態 か らの 回復 期 に 相 当 した も の で あ った か と も考 え られ る と こ ろで あ る。 3)症 例No.3:左 側 舌 癌 に 対 す る 小 線 源 刺 入 組 織 内 照 射(ラ ドンシ ー ド)に よ っ て軽 決治 癒(5年 生 存 は 意 味 しな い)と し て,退 院 後,自 宅 に お け る経 首 自殺 で あ った 。 した が っ て,詳 しい 事 情 を 聞 くこ とは で きな か った が,著 者 の清 水 が そ の初 診 よ り担 当 し て,反 省 す べ き 点 を 見 出 して お り,そ れ らに つ いて は 考 察 に お い て 記 す 。 4)症 例No.4:本 例 は,本 研 究 中,唯 一 の 治 療 開 始 前 の 自殺 症 例 で あ り,い くつ か の 新 しい 問 題 を 我 々 に 提 供 して い る。 未 治療 症 例 で あ るか ら,当 時 の 口腔 外 科 外 来 の 主 治 医 よ り,自 殺 に至 る状 況 を 囲 くこ とが で きた 。 腫 瘍病 変 は,舌 原 発 部 のみ で あ り,十 分 治 療 可 能 と考 え られ る 状 態 で あ り,現 症 として も,特 に 痛 み に つ い て も我 慢 で き な い もの で なか った 。 予 定 さ れ た 治療 方 法 は,放 射 線 療 法,特 に 小 線 源,組 織 内刺 入 照 射 法 であ り,当 時 と して は,radon seedの 採 用 が考 え られ た 。 この こ とは,口 腔 外 科 と放 射 線 科 との 腫 瘍 カ ン フ ァ レ ンスで の診 察 討 議 を 経 た 後,患 者 に も伝 え られ た 。 問題 は,こ の時 の患 者 へ の 説 明 の 仕 方,患 者 家 族 へ の 説 明 の あ り方 な どに お い て 見 出 され る もの と し て,後 か ら反 省 され た 。 自殺 の状 況 は,患 者 が 伊 豆 七 島 の 出 身 とい うこ とで, 入 院前 に一 度 故 郷 に帰 って くる とい って,定 期 航 路 の船 に乗 り,そ の船 上 か ら海 に 投 身 自殺 した もの で あ る 。 そ の 際 の患 者 家 族 の疾 患,そ の 治 療 に つ い て の理 解 患 者 自身 との連 絡 な ど に不 十 分 さが 見 出 さ れ る が,そ の 理 由 と して,担 当医 の未 熟 さ,あ るい は,若 さ な どが考 え られ た 。 状 況的 原 因,理 由 とし ては,我 々 の も とに お け る腫 瘍 カ ン フ ァ レ ンス の 後,放 射 線 療 法 とは どの よ うな もの か,2,3の 病 院 の放 射 線 科 を 訪 ね て見 た こ とが 挙 げ ら ―43―

(4)

日歯 心 身:第6巻 第1号 1991年6月 れ た 。 そ こで 患 者 は,そ の 副 作 用 的 な もの が か な り大 き い こ と,成 績 の 必 ず し も良 くな さ そ うな こ とを 聞 か さ れ て,非 常 に 悲 観 して い た との 家 族 の説 明 で あ っ た。 IV.考 察 歯 科 口腔 外科 領域 の疾 患 で,患 者 が 自殺 す る率 の も っ と も高 い もの と して,三 叉 神 経 痛 と,顔 面 神 経 麻 痺 が 挙 げ られ て い る。 前 者 は 疼 痛 の苦 しみ の 大 き い こ と を 示 し,後 者 は 審 美 的 苦 悩 の大 き い こ とを 物 語 って い る 。 本 研 究 で扱 う 口腔 癌 に伴 う自殺 の 直 接 原 因 の 多 くは 疼痛 で あ り,大 き く分 け て,前 者,三 叉 神 経 痛 に 共 通す る もの と も言 え よ う。 本 研 究 の 自家 症 例4例 中 の3例 が,そ れ に 相 当 して い る 。 本 研 究 で 取 り上 げ た 他 家症 例 の1例 も,疼 痛 を 主 症 状 とす る もの で あ っ たか ら,本 考 察 項 に お い て扱 いた く, 次 に そ の概 要 を述 べ る。 1.症 例No.5:59歳,女 性,作 家 。 本例 に つ い て は,患 者 が 著 名 人 で あ って,「 針 千 本, 私 のが ん 闘病 記 」4)とい う自著 を,亡 くな る前 に 最終 校 正 ま です ま され てお り,出 版 も 間 もな くされ た か ら,そ の 内容 を 知 る方 も多 い と考 え る。 そ れ ゆ え,本 考 察 に お いて も,同 著 書 の 内容 を 使 わ せ て い た だ く。 1)自 殺 に 至 る経 過 と状 況 治療 方 法 は コバ ル ト60お よび ラジ ウム他 に よ る放 射 線 療 法 で あ っ た 。初 診 よ り死 亡 まで の期 間を 見 る と,1年 6ヵ 月 で あ っ た。 しか し本 例 の場 合,口 底 腫 瘍 の 診 断 確 立 ま で炎 症 と臨 床 診 断 され て,2ヵ 月 が 費 や さ れ て い た か ら,1年4ヵ 月 が,そ の正 しい 期 間 で あ る と も言 え る。 自殺 の方 法 は,経 首 で あ り,場 所 は 自宅 で あ っ た。 2)自 殺 の 推 定 原 因 とそ の状 況 上 述 著 書 に 見 る 記 述 か ら推 定す る に,患 者 は2年 間 の 闘病 生 活 の 記録 を 書 き終 え て,力 を 出 し切 っ て し ま い, 遂 に 自 ら死 を選 ん だ と も言 え よ う。 亡 くな った 日よ り2 日前 の7月15日,同 書 の最 終 校 正 を 終 え,8月 に は 出 版 され る予 定 に な っ て いた と い う状 況 も,そ の 自殺 が 非 常 に理 性 的 に,あ る いは 予 定 して 行 わ れ た 印 象 を与 え る も ので あ る。 一 方,そ の よ うな 精 神 的 状 況 を 引 き起 こ した 原 因 を 求 め る と,直 接 的 に は,放 射 線 治療 に伴 っ た 口腔 内の 疼 痛 で あ る 。 そ の 著 書 を 「針 千 本」 と名 づ け た よ う に,「約 束 を 守 らぬ もの に針 千 本,の ます と い うに わ れ は なぜ,痛 む針 を 口にふ くむ や 」 と記 述 して い る。 この 記 述 に は,な ぜ 彼 女 が,こ の よ うな 痛 み を 経 験 しな け れ ば らなか った のか とい う,反 論 が 秘 め られ て い る 。 口腔 癌 に放 射 線 療法 を す れ ば,顎 骨 骨 髄 炎 を 含 め,激 痛 に 襲 わ れ る こ とは,多 くの人,患 者 が経 験 し,か つ 耐 え 抜 い て い る とこ ろで あ る。 そ れ な の に,な ぜ 彼 女 が,そ の疼 痛 か ら離 脱 す るた め に 自 らの 死 を選 ば ね ば な らな か った の か の疑 問 が 残 る。 この 疑 問 に 答 え る もの の ひ とつ と して, 彼 女 の 医 者 に 対 す る不 信 感 が 挙 げ られ よ う。 そ の始 ま り は,彼 女 が,舌 根 と奥 歯 との 間 に 小豆 粒 大 の 口内炎 と し て そ の 初 発症 状 に きつ い て か らで あ る。 そ の約 半 年 後, 某 開 業 医(内 科 医)を たず ね,保 存 的 治 療 で は 軽 快 せ ず,が ん セ ンタ ー の受 診 を勧 め られた 。 しか し,仕 事 の 都 合 で受 診 で きず,さ らに約1年 後 に が ん セ ンタ ーを 初 め て受 診 した 。 これ は,症 状 自覚 か ら1年 半 後 に 当 た る。 が ん セ ンタ ーで は,知 人 の 内科 医 よ り外 科 医 を 紹 介 され,同 外 科 医 は 単 純 な 口 内炎 と診 断,ケ ナ ロ グを処 方 した 。 そ の 後,約1ヵ 月 経 過 して が ん セ ンタ ーを 再 診 し た が,同 外 科 医 は ケナ ロ グの 使 用 を 勧 め た 。患 者 は,ホ ー ム ドク タ ーか ら細 胞 組織 検 査 を勧 め られ て い た が,そ れ は 行 わ れ ず,局 所 の 疼痛,特 に会 話 時 の痛 み が激 し く な って い った 。 さ らに約1ヵ 月後,3度 目の受 診 で患 者 は,同 外 科 医 に 切 除 を 切 願 した。 そ こで は じめ て,外 来 局所 麻 酔 下 に切 除 手 術 が 行 わ れ,良 性 の も のだ ろ うと の 主 治 医 の説 明 に反 し,2週 後 に得 られ た 組 織 診 断 の 結 果 は,悪 性,す ぐ,放 射 線 科 に 行 け との 指 示 で あ った 。 こ の時 に す ぐ,癌 とい う診 断 結 果 を 告 げ られ た わ け で は な い。 そ の 職 業 経 歴 か ら 見 て も,患 者 は そ の よ うに悟 り,後 に な って,医 師 か ら 自分 で確 認 を得 て い る4)。 放 射 線 科 入 院 が 決 定 さ れ,患 者 は禁 煙 を しな い とい け な い だ ろ うか ら,入 院 を機 会 に し よ う と思 っ て,医 師 に 申 し出 た が,相 手 に さ れ な か っ た こ との失 望,そ し て, 放 射 線 治 療 が コバ ル ト60の5000rad,ラ ジ ウ ムを 約3000 rad,計8000radで 行 わ れ た 。 そ の結 果 は,予 期 しな か った疼 痛 の 発症,入 院 中 の ほ か の 患 者 との 交 流,親 しい人 の腫 瘍 に よ る死 去,な どを 経 験 して 退 院,新 聞 へ 自分 の癌 闘病 記 の連 載,そ し て そ の 単 行 本 と して の 出版,こ の 間,痛 み は,多 分 放 射 線 性 下 顎 骨 髄 炎 へ と進 展 し,そ れを 不 治 の も の と 自己 決 定 し て しま った 。 同 著 書4)か ら 読 み 取 るか ぎ りで は,口 底 癌 の 腫 瘍 は そ の時 点 に お いて,治 癒 して いた もの と 思 わ れ た 。 しか し,患 者 に と って は,科 学 的,学 問 的 な意 味 で の5年 生 存 治 癒 よ りも,日 々 の 生 活 に お け る 質 の 問題 が,重 くの しか か った もの と考 え られ る。 放 射 線 治療 後 の局 所 的 副 作 用 とし て,下 顎 骨 髄 炎,歯 痛 に悩 ま され,歯 科 医 を 訪 ね て歯 科 治 療 を 受 け な が ら, 下 顎 骨 切 除 の可 能 性 を 告 げ られ て,さ らに ひ と り心 に 悩 ―44―

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自殺 に至 った口腔癌患者5例 についての心身医学的研究 ん だ 。 最終 的 に,総 首 自殺 を され た の は,自 宅 の鴨 居 を利 用 して で あ り,自 著 の 最終 校 正 を 終 わ っ て2日 後 で あ っ た 。 そ の 遺 書 と して,「 … 私 は 死ぬ こ とだ け を 考 え て い る 。 い か に よ く死 ぬ る の か,死 だ けが 唯 一 の あ こが れ に な っ て い る。 よ り良 く死 に た い」(原 文 の ま ま)5)が 見 いだ され て い る。 これ らにつ い て の考 察 は,他 の 症 例 と共 に す る。 2.癌 患 者 に お け る 自殺 口腔 癌 に 限 定 した な らば 勿 論,癌 患 者 一般 に 広 げ て も,そ の 自殺 の 課 題 を 扱 った 発 表,文 献 は 本 邦 内 外 と も合 わ せ て も 少 な い よ うで あ る 。 最 近 そ の ひ とつ とし て,M. D. Anderson Hospita1 (MDAHと 略)& Tumor InstituteのPattら(1983)6)に よれ ば,癌 患 者 にお け る 自殺 の リス クは,一 般 人 口に お い て 見 られ る そ の比 率 (10万 人 に対 し て12.5)よ りも4∼5倍 高 い と報 じて い る。 この 数 値 が 正 しい か ど うか を確 認 す る 目的 で,Patt らは,1975年 来 のMDAHに お け る 自殺 登 録 患 者 の 検 討 を 行 った 。 同 期 間 に お け る全 登 録 患 者 は53,379名 で あ り,腫 瘍 自 殺 患 者 は30名(10万 人 に 対 して56.2,あ る い は0.0562 %),う ち男 性23名,女 性7名 で あ った 。 男性23名 の う ち3名 の 詳 しい 情 報 は 不 明,20名 全員 は 白人,そ の年 齢 層 は55∼74歳 群 で あ った 。 女性 群 で は,そ の よ うな年 齢 層 別 は み られ な か った 。 これ らの うち,口 腔 癌 は男 性5 例(25%),こ れ は,全 癌 死 亡患 者 の 中3%を 占め て い た 。 一 方,女 性 の 癌 自殺 患 者 の原 発 腫 瘍 を 見 る と,婦 人 科 領域 癌,お よび 乳癌 が大 部 分 で あ った 。 口腔 癌 自殺 白 人 患 者 の年 齢 が55歳 以 上 で あ っ た こ とは,自 殺 一 般 の危 険 率 の 高 い年 齢 群 と一致 して い る。 口腔 癌 自殺 患 者 に ア ル コー ル常 用 者 の 多 か っ た こ とは,欝 傾 向 の人 の多 か っ た こ と と同様 に観 察 さ れ て お り,癌 患 者 自殺 と ア ル コ ー ル,欝 病 との 関 係 は 今後 の研 究 課 題 として い る。 化 学 療 法 を導 入 療 法 と した後,外 科,放 射 線 療法 を 行 った 高 度 進 展 頭 頸 部 癌23例 につ い て の成 績 を 報 告 したWeichsel-baum(1982)7)は,内1例 につ い て 疑 問 符 付 きの 自殺 症 例 を 挙 げ て い る。 これ は,同 療 法 の 不 成 功 例 に 数 え ら れ,そ の23例 に対 す る割 合 は,4.4%を 占め る こ と とな るが,少 数 例 群 中 の単 一 例 とい いな が ら,か な り高 い 率 とい うこ とに な る。 本 研 究 に おけ る4例 に対 す る 母 集 団 と して,全 入 院 患 者 は 求 め て い な い の でPattら の 発 表 と 対 比 は で きな い 。 しか し,1959年 か ら1981年 まで に,清 水 が 登 録 を 確 認 した 前 述 医 療 機 関 に お け る 口腔 癌(広 義)患 者 は 1,034名 で あ った か ら,こ れ に 対す る4名 は0.387%と い うこ とに な る。 この 値 は 当然,Pattら の そ れ よ り高 いが,Weichselbaumの 数値 よ り 低 い。Weichselbaum は 高 度 進 展 症 例 の み 扱 って い る た め の違 い か と考 え る。 3,自 殺 の 直 接 的 な らび に 間接 的 原 因 とそ の 対 策 本 研 究 で 扱 った5例 の 口腔 癌 自殺 例,お よび 他 家 報 告 自殺 例 を ま とめ て,そ の直 接 的 原 因を まず 考 え る と, 癌 治療 に伴 う,あ る い は後 遺 した 疼 痛 が 第 一 に 挙 げ られ る。次 い で,癌 とい う疾 患 を 不 治 の も の とす る 在 来 の 概 念 を,固 定 化 して 確 信 した た め の 絶 望 感 が挙 げ られ よ う。 これ は,癌 治 療 が 成 功 せ ず,あ る い は再 発 した りし た 時 は,そ の 疼 痛 他 と と もに 一層 強 く働 くで あ ろ う。 癌 が 不 治 の 疾 患 で あ る とす る 旧 来 の既 成 概 念 は,近 年 癌 の 治 療 成 績 の 向 上 に とも な い変 わ って きた とは いえ, な お 根 強 く残 って お り,特 に,治 療 後 の副 作 用 な どに よ る疼 痛 も,治 療 が成 功 しなか った た め と誤 解 され,自 殺 に 至 る こ と も少 な くな い。 こ の場 合,患 者 と担 当 医 との 関 係,信 頼 関 係 の有 無 が大 き く働 く。 本研 究 症 例 の 中で は,症 例No.1,2,3,5お よびWei-chselbaumの 症 例7)に お いて,疼 痛 と関 連 した 直 接 的 原 因が 考 え られ た 。 そ れ らの 中 で,No.1は 確 実 に 腫 瘍 の 再 発 な い し残 存 の 見 られ た症 例 で,No.2は ほ ぼ腫 瘍 消 失 と 考 え られ て い た 。 さ らに,No.3,5は,腫 瘍 は 消 失,当 面 の 治癒 と考 え られ た に もか か わ らず,自 殺 に至 っ て し ま った 症 例 で あ る 。後 者 につ い ては 特 に,そ の主 治 医 が,自 殺 に よる貴 重 な生 命 の喪 失 に責 任 を 感 ず る も ので あ る。 中 で も症 例No.3は,口 腔 外 科 に お け る主 治 医 が,著 者 の 一 人,清 水 で あ った 。 当 時 の事 情 を 回 想 す る と,患 者 はradonseedに よる 小 線 源 放 射 線 治 療 が 終 了 し,間 もな く退 院 とい う時,清 水 は,文 部 省 の 在 外 研 究 員 とい うこ とで 出張 とな った 。 最 後 の回 診 に お い て, 患 者 は,い つ また 見 て も らえ るか と尋 ね た が,す ぐ帰 っ て くる か ら,そ の 時,と い う程 度 で,具 体 的 な話 を しな い で し まっ た。retrospectiveに 反 省 す る と,そ の 時, 患 者 の 悩 み,疼 痛 の程 度,そ のほ か を 良 く聞 い て あ げ, 清水 の帰 国 の 時 期 な ど も 話 して お い た な ら,事 態 は 別 に,良 い方 向 に発 展 した ので は な か ろ うか と思 わ れ た 。 症 例No.4は,治 療 前 と い うこ とで,き わ め て特 異的 な例 で あ る。 本 例 の場 合 も腫 瘍 カ ン フ ァ レンス に お け る 患 者 との話 し合 い,そ の 後 で の 説 明,患 者 の家 族 との相 談 な どにつ い て,反 省 点 が,主 治 医 側 に 大 き く見 い だ さ れ る症 例 で あ った 。 主 治 医 が,治 療 開 始前 で,若 い担 当 医 の ま ま で あ った こ とに も,原 因 の 一 端 を 見 い だす が, 大 学 の教 室 を バ ッ クに した 態 勢 下 の 治 療方 針 の決 定,実 ―45―

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日歯 心 身:第6巻 第1号1991年6月 施 に あ った こ とを 考 えれ ば,清 水 他 教 室 の 中 堅 以 上 の ス タ ッフ の責 任 を忘 れ るわ け に は い か な い もの で あ る 。 症 例4を 除 く,症 例1か ら5ま で に お い て,そ の 実 施 され た 癌 治 療 が,放 射 線 療 法 を 主 体 に して い た こ とは, 本 研 究 に 見 いだ され た 特 異 点 の ひ とつ で あ る 。 そ の理 由 と して,放 射 線 治 療 が,密 室 の ご と き機 械 設 置 室 に お け る照 射 の実 施,放 射 線 技 師 に そ の管 理 の 多 くが しば しば 任 され る,治 療 中 お よび,治 療 後 の疼 痛 の ほ か の副 障 害 が 強 く,長 期 に わ た って 持 続 す る,こ とな どが考 え られ る。 特 に,治 療 開 始 後 は,口 腔 外 科 の担 当 医 と患 者 との 接 触 が,回 数,時 間 と も少 な くな りが ち な こ とか ら,患 者 に 不 安,不 信 感,陰 欝 な 感 情 を 引 き起 こ しが ち な こ と も原 因 と して 考 え られ る 。 大 分 医 科 大 学 に お い て,口 腔 癌 患 者 の放 射 線 治療 が開 始 され た1982年 以 来,こ れ らの 点 を反 省 し,放 射 線 治 療 に お い て,歯 科 ・口腔 外科 の主 治 医 も,放 射 線 科 医 と一 緒 に な って,処 置,回 診 を 行 い,患 者 との連 絡,話 し合 い を 密 に 行 うよ うに 努 め て お り,1982∼1989年 ま で の 約8年 間 に114例 の 放 射 線 ほ か の 癌 治療 実 施 例 を 有 す る8)が,1例 の 自殺 例 も経 験 して いな い 。 症 例No.5は 他 家 治 験 症 例 で あ る が,そ の原 因 と して,放 射 線 治 療 に よる 疼 痛 の ほ か,止 む を得 なか っ た も の とも考 え られ る 診 断確 定 の遅 延 に よる,患 者 の側 の 医 師 に 対 す る 不 信 感,な い しは 自分 の不 運 とす る運 命 観 が,原 因 の 大 きな 部 分 を 占 め た こ とが推 定 され る。 そ の著 書4)に も記 され て い る よ うに,担 当 の外 科 医 に誤 診 の責 を 追 うこ とは, 酷 で あ る と思 わ れ るが,患 者 に と って は,自 分 か ら言 い 出 した 検 査 の依 頼 を2回 に わ た って 断 られ た こ とを, 実 施 され た 放 射 線 治 療 の 後 遺 症 の 重 か った こ との 理 由 の ご と く考 え た のは 事 実 で あ る。 実 際 に お い て,初 診 か ら,そ のた め の治 療 の 遅 れ は2ヵ 月 で あ った 。 これ を 長 い とす るか,短 い とす るか 単 純 に は 言 い え な い が,患 者 に と って は,心 の 問 題 と して,腫 瘍 の進 展 以 上 の大 きい 痛 手 を 受 け た と思 わ れ る 。 同 例 に つ い て は さ らに,な ぜ 口底 癌 の症 例 の診 察 が 一 般 外 科 医 に ゆ だね られ た か も 問 題 に され よ う。 直 接 の 問 い 合 わ せ は して い な い が,担 当 した が ん セ ンタ ーに 口腔 外 科 の 置 か れ て い な か っ た こ と も大 きな 原 因 と して 考 え られ る 。 そ の さ らな る大 基 とい うと,そ の が ん セ ンタ ーの 体 制,医 療 領域 分 業 の課 題 と と もに,予 算 的 立 場 か ら 口腔 外科 が 置 か れ て い な か った こ と も十 分 推 測 され る 。理 由 は と もあ れ,口 腔 癌 の患 者 が,口 腔 外 科 専 門 医 に よ って 診察 処 置 され る態 勢 に あ っ た な らば,そ の 悲 劇 は 予 防 さ れ た で あ ろ う可 能 性 は 相 当 に 高 く評 価 さ れ て 良 い と考 え る。 近 年,口 腔 癌 もそ の 治 療 成績 の 向 上 と と もに,そ の形 態 な らび に 機 能 の 修 復, 回復 と,社 会 復 帰 の課 題 が 大 き く取 り上 げ られ て きた 。 そ れ は,口 腔 癌 患 者 の生 活 の質,QOLの 向上 の課 題9∼11) と結 び つ くも の で あ り,心 身 医 学 的 ア クセ スの 重 要 性 を 示 す 大 き な課 題 の ひ とつ と考 え る。 さ らに,人 は 誰 で も 死 を迎 えね ば な らぬ 存 在 で あ り,ど ん な に 良 く治 療 の 成 功 した 口腔 癌 患 者 も,例 外 で は な い。 そ の こ とは,治 療 の結 果 が 予 期 に反 した 患 者 の 場 合,一 層 大 きな 問 題 を 我 々 に提 起 す る。 そ のひ とつ は,疼 痛 の 翻 御 の 課 題 で あ り,他 の ひ とつ は,患 者 の心 の問 題 で あ る。 前 者 に 対 し て は,岡 部 らが 発 表12)して い る よ うに,新 しい 疼 痛 制 御 の方 法 の樹 立,実 施 が ひ とつ の解 決 の道 で あ る。 後 者 に 対 して は,欧 米 と 違 って,日 本 で 非 常 に 弱 い と され る ホ ス ピス の活 動 で あ る。 これ に 対 して は,歯 科 医 師,医 師,君 護 婦 な ど,直 接 の医 療 関 係 者 のみ で な く,精 神 科 医,心 理 学 者,ケ ー ス ワー カ ーか ら,宗 教 家 まで 各 方 面 の専 門 家 の協 力 が,研 究 に お い て も,実 践 に お い て も要 求 され る。 口腔 癌 患 者 が,や む を 得 ず 残 され た 時 間 の短 い こ とを 自覚 した 時,そ の 生 命 の 日々 を 如 何 に過 ごす か は,哲 学 の課 題 と も言 え よ う。 これ らに 対 して,現 在 ど の よ うに 対 処 す べ きか まで,本 稿 で 考 察 す る 余 裕 は な い が,患 者 のQOLを 如 何 に 高 め る か の 課 題 と と もに,歯 科 心 身 医 学 的 問 題 と して,多 くの 研 究 者 の 心 に 止 め て お いて 欲 しい と願 って 本 考 察 を終 え る 。 V.お わ り に 自家 治験 の 口腔 癌 自殺4症 例 と,他 家 の1例 を 中心 と して,自 殺 とい う不 幸 な転 帰 に至 る 各 症 例 の 経 過,状 況,原 因 な どに つ い て検 索 を 行 った 。 1例 が,診 断 の み で未 治療 例 で あ っ たが,他 の4例 は いず れ も放 射 線 治 療 を受 け て い た。 そ の直 接 的 原 因 とし て は,治 療 に伴 っ た疼 痛 が挙 げ られ たが,さ らに,患 者 が そ の疼 痛 を,癌 の治 癒 不 可 能 の兆 候 と,短 絡 認 識 した こ とも,自 らの命 を絶 つ に至 っ た原 因 と考 え られ た 。 そ の際,主 治 医 と患 者 との 問 の信 頼 感 の あ る関 係,意 思 の 疎 通,十 分 な説 明 の重 要 性 な どが 指 摘 され た 。 今後 の課 題 と して,患 者 のQOLを 高 め る立 場 か ら, 口控 癌 の診 断 治 療 体 制 の改 革,特 に,ホ ス ピス の ご と き施 設 の広 い確 立 も含 め,医 療 体 制 の 充 実,拡 充 の 重 要 性 が述 べ られ る と と もに,各 研 究 者 が,本 課 題 に 対 し, 歯 科 心 身 医 学 的 観 点 か らも研 究,解 決 に 努 め る必 要 が あ る もの と強 調 した い 。 本研 究の一 部は,1989年7月13日 第4回 日本歯科心 身医学会 総会において発表 された。本研究 の資科 の充実 に当たって,ご ―46―

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自殺に至った 口膣癌患者5例 につ いての心身 医学的研究 協 力をいただいた東京 医科歯科大学第一 口腔外科岩城博教官, 同塩入重彰講師,九 州大学神 田重信教授,富 山医科薬科大学古 田勲教授,日 本 医科大学堀 内淳一教授,前 東京医科歯科大学医 学部奥 山武雄助教授 らの諸氏 に 著者 らは 心か ら感謝 いた しま す。 文 献 1) 清水正嗣, 小野敬一郎, 他: 自殺 に至 った 口腔癌患者5 例 につい ての考察 (会). 心身歯4 (1): 1, 1989. 2) UICC: TNM Classification of malignant tumours.

3rd ed. Gemeva., 1978.

3) UICC: TNM Klassifikation maligner Tumoren. Vierte Auflage. Springer-Verlag, Berlin, 1987.

4) 江 夏 美 好: 針 千 本, 私 のが ん 闘 病 記. 河 出 書 房 新 社, 東 京, 1∼221, 1982.

5) 大 分 合 同 新 聞: 作 家 の江 夏 さん 自殺. 1982年7月18日 朝 刊.

6) Patt, N. et al. : Identification of risk factors for sui-cide among cancer patients. Psychosocial Aspects of Cancer. from Proc Annual Meeting of American Clin Oncol. ASCO ABSTRACTS March, 1983, 63.

7) Weichselbaum, R. R. et al. : Toxicity of Aggrersive multimodality therapy including cisplatinum, bleomycin and methotrexate with radiation and/or surgery for advanced head and neck cancer. Radiation Oncology Biology Physics 8 : 909-913, 1982.

8) Shimizu M., Yanagisawa S. u. Mizuki H. : Unser klinisches Prinzip and Erfahrungen der hoch-bejahrten Patienten mit Mundhohlenkarzinomen. bei 15. Kon-gress der IGKGC in Belgrade, Yugoslavia, 14^-16 Mai 1990. 9) 小 野 勇, 他: 頭 頸 部 患 者 のqualityoflife. 癌 の臨 床 34: 1065∼1071, 1988. 10) 清 水 正 嗣: 初 診 よ り診 断 ・治 療 方 針 確 定 まで, お よび 治 療 後 の 経 過観 察 [特 に癌 告知 の課 題 と関 連 し て]. 清 水 正 嗣, 他 編; 口腔 癌 [診 断 と治 療]デ ソ タ ル ダ イヤ モ ン ド 社, 東 京493∼502, 1989. 11) 清 水 正 嗣: 高 度 進展 ・再 発 口腔 癌 へ の臨 床 的 対 応.シ ソ ポ ジウ ム1, 第34回 日本 口腔 外 科 学会 総会, 1989年10月 27・28日, 郡 山. 日口外 誌35: 3001∼3002, 1989. 12) 岡 部 貞夫: 高 度 進 展 ・再 発症 例 の 疼 痛対 策 (会). 日 口 外 誌35: 3006, 1989. ―47―

参照

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