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[Floristic Comparison between Taiwan and the Philippines, with Special Attention to the Distribution of the Pteridophytes ]

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東南アジア研究 15巻 3号 1977年12月

しだ植物 の分布 か らみ た台湾 とフ ィ リピン

岩 槻

男*

Floristic Comparison betweerLTaiwan and the Philippin

e

s

,wi th Special Attention to the I)istribution ofthe PteridophyteS

Kunio lwAllsUKI

Pteridophytesin Taiwan and the PhilipplneSarecomparedfrom a且oristic pointofview.Theareaofdistribution foreach speciesknown in thetwoco

un-triesisconsidered,and thelocalaoraearestudied in detailforOrchid Island, Batan Island,andtheMt.Burnay areain northern Luzon. From these obser -vations,aconsiderable disparity between the distribution of pteridophytesin Taiwan andLuzonemerges.Although pteridophytesdoextendtheirarearather easily beyond themilesofdiscontinuity,theirpresentdistributionseemstohave alsobeen influencedby thegeohistoricalisolation oftheareasconcerned.

フィ リピン大学農学部 を創設 し,初代 の学部 長 とな った E・B.Copelandは もと もと植物生 理学 の研究 で学位 を取得 した人 であ るが, 1903年 にフ ィ リピンにや って きてか らは, しだ植物 の分類学的研究 に主力 を置 くよ うにな り,Coc°-nut (1914)や Rice (1924)な どの農学 書 を も の してい る上 に, 今世紀前半 の最 も秀 れ た しだ植物 の分類学者 の1人 に挙 げ られ る人であ る。 彼 の生涯 にわ た るフ ィ リピン産 しだ植物研究 の成果 はFern Flora ofthePhilippines全3冊

(1958- 60)に集成 され てい るが, フ ィ リピンの しだ植物 研究 の歴 史 はその まま Copelandの 研究歴 に置 き換 え られ て もよい ものであ るとい え る。l) 最近, フ ィ リピン大学農学 部 の M.G. Priceが しだ植物 の研究 を始 めてい るが, これ は まだ Copelandの仕事 に対 して補足 的 な もの に過 ぎない (Price,1971な ど)。 一 方, 台湾 の しだ植物 の研究 は,本格的 な もの としては, 台湾植物 図譜 (1911- 21)を頂点 とす る早 田の研究 に始 まるもの で あ るが, 1934年 以来 の田川 の調査研究 に よって, しだ植物 につい てい えば台湾 は世界 で も最 も詳細 に調 べ られ てい る地域 の一 つ に数 え られ るよ うにな っ *京都大学理学部植物学教室 1) しだ植物研究者 としての Copelandについては以下のような紹介がある。

Wagner,W・HIJr・1964・=Edwin Bingham Copeland (1873-1964)and his contribution to pteridology."Amcr・FernJ.Vol.LIV,no.4,pp.177-188.

- 11965・=Edwin Bingham Copeland,1873-1964・HTaxonVol・ⅩⅠⅤ,no・2,pp・33-41・ 岩槻邦 男. 1965・E・B・C()pela・ndとシダの分煩 『日本シダ学会会報』 no.22,pp.ト9.

Price・M・G・1973・"Chronology and publications ofE・T3・Copcland・"Phil・Agr.VoLLVII, nos.1良 2,pp.4-16.

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岩槻 :しだ植物 の分布 か らみた台湾 とフ ィリピン たo最近 の 『塞滞植物誌』第 1巻 (1975)に纏 め られ た台湾産 しだ植物 の集成 は, 田川 の研究 (Tagawa,1932-39,1940-49な ど) よ りも後退 してい る点 さえあ ると断 ぜ ざるを得 ない もの であ る。 区系植物地理 の観点か らは,台湾 は東南 アジア区系 に, フィ リピンはマ レーシア区系 に入れ られて, それぞれ別個 に扱 われてきた。 それで も, 植物 の分布 の様式 か らは, Merrill(1926 な ど) や Li&Keng (1950)な どの興味 のあ る比較 も行 なわれてお り, これ らの研究 に よっ て, 台湾 とフィ リピンは区系植物地理 の観点 か らはずい分 かけ離れた地域 であ るが, それで も なお台湾南部か ら紅頭峡 についてはその中問的 な性質 を示 す部分 もあ ることな どが示 されてい る。 また, 今

(1954)は輪藻類 について台湾 とフィ リピンを比較 し,種子植物 の場合 に比べ て輪藻軒 では この両地域 に共通性が高 く, その ことは水棲動物相 の似寄 りと類似 してい る, と 述べ てい る。 植物地理学 は もっぱ ら種子植物 の分布 を対象 として発展 して きた ものであ るが, しだ植物 を 材料 として も,種子植物 を材料 に した場 合 とは別 の意味で興味 のあ る植物地理学上 の論 議が成 立 し得 ることは既 に指摘 した通 りであ る (岩槻, 1975)。 そ こで, この稿 では, その論文 で触 れ た観点 を前提 として,台湾 とフィ リピンの しだ植物相 の比較 を し,植物地理学的考察 を行 な ってみ たい。台湾産 の しだ植物 については主 として田川 の, フィ リピン産 の ものについ ては主 としてCopelandの研究 に負 うところが大 きいが,単 に文献上 の比較 に留 まることな く, ほ と ん どすべての種 について,少 な くとも標本 による比較検討 は行 な った。 台湾の最南端裁望変鼻 とル ソン島北端 のMayrairaPointとの間 はバ シー海峡に よって220km が距 て られ てい る。 その間 に,幾 つかの島興 があ るが, しだ植物がほ とん ど生 えていない小島 は別 として,Batan島 に産 す る植物 は この種 の検討 の際 は極 めて重要 な意味 を もつ ことにな る。 たまた ま,1964年 に初島 らが この島を詳 し く調査 し, その際収集 された資料標本 の うち しだ植 物 についてはすべ てを筆者 の研究 に委ね ていただい たので, 自分 で現地調査 を していな くて も, ほ とん どその全 貌を伺い知 ることがで き るとい え る (Hatusima,1966)o また, ル ソン島北端 のSicapoo山域 は,台湾 とフ ィ リピンの植物相 の比較 に とっては極 めて重要 な位置 にあ りなが ら,植物学的 な調査 は全 く行 なわれてい なか った。幸 い1975年 の末 に短期間なが ら筆者 らは こ の地域 を調査す る機会 を与 え られ,極 めて興味深い事実 を幾つか発見 す ることがで きた。 この 地域 の しだ植物 については既 に本誌 に報告 した (Iwatsuki良 Price,1977)ので, この稿 では それ らの情報 も有効 に取 り上 げてい く予定 であ る。

Ⅰ 台湾 とフ ィリピンの しだ植物相の比較

植物相 の似寄 りの程度 を示 すのに,共通種 の割合 な どを数字 で示 す ことが あ るが,種 の異 同 には個 々の場合 に大 きな隔 りが あ るので,概括的な数字 だけで植物相が正確 に比較 で きる もの

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東南アジア研究 lS巻3号

ではない。 ここで も, やや冗長 にみ え る記載 にな ることを覚悟 しなが ら, 各科 ごとに比較 の対 象 とな る種 について,二 つの地域 におけ るしだ植物相 を検討 してみ たいO科 の配列 は Tagawa & Iwatsuki(1972)に従 う。

マ ツバ ラン科 には2種 あ るが, マ ツバ ランは両地域 に共通 し,Psiloium comPlanaium は台 湾 にはない。 イ ヌナ ンカクラン科 種 の識別 は難 しいが,大洋 州に分布の中心 をお くこの科がル ソソ島 にあ ることは興味 をひ くことであ る。 ヒカゲノカズ ラ料 台湾 に20種, フィ リピンには27種 が あ り, その うち8種 だけが共通で あ る。 しか し, この科 の種 については さらに検討が必要 で,筆者 らのル ソン北端 の記録でい え ば,8種 中6種 までが台湾 に も分布 す る。 イ ワヒバ科 台湾 の種 はその地域 内では詳 しく研究 され, 14種が識別 されてい る。 フィ リ ピンか らは

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種 の報告 が あ るが, これ は台湾 な どの もの とも詳細 に比較検討 されねはな らぬ も のであ る。共通種が幾 つかは まだ断言 で きる段階 ではない。筆者 らのル ソン北端の記録 でいえ ば,9種 中4種 は台湾 に分布す る。 ミズニ ラ科 台湾 には最近発見 され たタイ ワソ ミズ ニラの記録が あ るし, フィ リピンには ミンダナオか ら(soeies少hiliPクinensisが記録 されてい る. マ レ-シアか らは他 に2種報告 さ れてい るだけで, この属 に100種 ほ どあ ることか ら考 えて も, 熱帯 で不連続 に出て くるものに ついて植物地理学上 の比較 の手懸 りは得難い。 トクサ科 イ ヌ ドクサ とタイ ワンイ ヌ ドクサ を種 の ランクで区別す るか亜種 や変種 の差 と す るかは意見 の分 かれ るところであ るが, イ ヌ ドクサ は台湾 を南限 とし, フィリピンには分布 していない。 -ナヤス リ科 -ナヤス リ属 ではフィリピンの 6種 に対 して台湾 には 4種, その うち 3種 が共通。 ミヤ コジマ-ナ ワラビ属 は単糸属, フ ィ リピンには普通 であ るが,台湾では紅頭興 だ けに知 られてい る。琉 球 で もとび とびに知 られ,沖永良部 島に まで分布 してい る。 -ナ ワラビ 属 は台湾 に 5種, フィ リピンには 2種 あ るが,両種 とも台湾 にあ るものであ る。 リュウピソタイ科 リュウビンタイ属 の種 の分類 は皆 目分か らず,比較 の しょ うが ない。 ムカシ リュウピソタイ属 は台湾 にあ って フィ リピンにはない属 であ る。逆 に, ク リステ ソセ ニ ア属 はフ ィ リピンにあ って台湾 にはない。 マ ラ ッチ ィア属 はフィ リピンに 3種, その うちの 1 種が紅頭興 に分布 す る。 ゼ ンマイ科 台湾 に 4種, フ ィ リピンに 3種, シ ロヤマゼ ンマイだけが共通 であ る。 キ ジノオ シダ科 台湾 に もフ ィ リピンに も7種 ずつ知 られてい るが,共通 してい るのは3

種 だけであ る. しか し, Plagiogyγiadunm'iとP・falcataの関係 もさらに研究 を要す るもの であ る。

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岩槻 :しだ植物 の分布 か らみた台湾 とフ ィリピン フサ シダ科 カエ クサ属 は フィ リピンに9種, その うちの2種 が台湾 に もあ る。 フサ シダ 属 は フ ィ リピンに3種, その うちの2種 が台湾 に も分布 してい る。 ウラジ p科 コシダ属 は フ ィ リピンに2種, その うちコシダは台湾 に も分布 す る。 ウラジ p属 は フィ リピンに14種, 台湾 に4種, その うち1種 だけが共通 であ る。 コケシノブ科 属 の分類 は さてお くとして, 台湾 に39種, フ ィ リピンに59種が認 め られ, その うち21種 が共通 であ るが, その うちには, 台湾 の浸水営 だけに知 られ てい たア ミホ ラゴケ が ル ソン北端 で見 つか った とい うよ うな例 も含 まれてい る。 しか し, オオ アオホ ラゴケの よ う に, ア ジアの熱帯 に広 く分布 してお りなが ら台湾本島 にはな く,紅頭興 か ら西表 に分布 す る例 だ とか, Trichoman e

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ohnsionensisの近似種 の リュウキュ ウホ ラゴケは台湾 にはな くて琉 球 だ けに分布 す る とい うよ うな例 もあ り, また共通種 の多 くは, 台湾 でい えば東南 の辞 苔林 に産 す る もので, 生育地 の特徴 が は っき りした ものであ る。 - ゴ科 は台湾 には 7種 しかない。 フ ィ リピンには37種 あ り, その うち26種 は固有 であ る。共 通種 は 3種 で, 台湾産 の あ との 4種 は大陸系 の ものであ る。 Cyaiheafenicisは紅頭峡 とバ タ ン群島 だけに知 られ てい る。 タカ ワラ ビ科 タカ ワラビ属 の 2種 は両地域 に共通 であ るが,Dichsonia と Culciiaは フ ィ リピンにあ って台湾 に ない属 であ る。 コバ ノイ シカグマ科 コバ ノイ シカグマ属 はイ ヌシダがル ソン北端 で発見 され た ことか ら, 台湾 にあ る4種 はすべ て フ ィ リピン産 の15種 に含 まれ ることにな った。 フモ トシダ属 の分類 も 難 しいが, 台湾 に12種, フ ィ リピンに 7種記録 され てい る うち, 4種 が共通 であ る。 オオ フジ シダ属 では フ ィ リピンにはムカ ゴシダが あ るだけで, 台湾 には他 に フジシダ も知 られ てい る。 ワラビ属 は 1種, ユ ノ ミネ シダ属 は フ ィ リピンで はユ ノ ミネ シダの他 に HistioPteyismontana も知 られ てい る。最近発見 され た台湾 の Paesiaは新種 として報告 され たが, フ ィ リピンにあ る2種 と詳 し く比較 され るべ きか もしれ ない。OyihioPieyisは台湾 では見 つか ってい ない, ホ ングウシ ダ科 ホ ラシノブ属 は同 じ2種 が両地域 にあ り, コバザ ケ シダ属 は フ ィ リピン に5種 あ って, その うち コバザ ケシダだけが台湾 か ら琉 球南部 に まで北上 す る。 ホ ンダウシダ 属 は台湾 に 8種, フ ィ リピンに27種,共通種 はその うち S種 であ る。 シノブ科 ホ ソバ シノブ属 は異 な った1種 ずつが両地域 に, シノブ属 は台湾 に4種, フィ リピンに 9種 あ って共通 は 2種, キ クシノブ属 は台湾 に 5種 あ るが, おそ ら くそのすべ てが フ ィ リピンの10種 に含 まれ るであろ う。 ア リサ ンオ ウ レンシダ属 の 2種 は共 に フ ィ リピンに産 す るが, 台湾 には1種 だけが知 られてい るoDavallodesと Tyogostolonは台湾 にはない0 ツル シダ科 ツル シダ属 は フ ィ リピンに8種 ほ どあ り, 台湾 には フ ィ リピソの もの とは別 の 1種 だけが知 られ てい る。 ワラビツナギ属 は フ ィ リピンに 4種 あ り, その うちの 1種 が台湾 に も分布 す る。 タマ シダ属 もま とまった研究 を要 す る ものの一 つであ るが, フィ リピンに10種 433

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東南アジア研究 15巻3号 ほ どあ る うちに台湾 の 3種 はすべ て含 まれて しま う。 ミズ ワラビ科 ミズ ワラビ属 は単系属 で両地域 に共通 す る。 イ ワガネ ソウ属 は台湾 に 4種, フ ィ リピンに 3種,共通 はその うち 1種 だけ。 タチ シノブ属 は フィ リピンに 2種, 台湾 にはそ の他 に もう1種 あ る。 エ ビガ ラシダ属 も分類 困難 な ものであ るが, 台湾 に5種, フ ィ リピンに 6種 の うち,共通 は 3種 であ る。 フ ウロシダ属 は台湾 に 1種, フ ィ リピンにはそれ を含 めて 3 種, ギ ソシダ属 は両地域 にギ ソシダだけ, イ ヌア ミシダ属 も同 じ く両地域 にイ ヌア ミシダだけ が知 られ てい る。 ホ ウライ シダ属 は台湾 に12種, フィ リピンに12種記録 されてお り, その うち 8種 までは共通 してい る。SyngyammaとTaenitisは台湾 にはな く, - ニカラクサ属, ビロウ ドキ ジノオ属, リシ リシノブ属, イ ヌウラジ ロ属 は フィ リピンでは見 つか っていない。 シシ ラン科 タキ ミシダ属 は台湾 に 4種, フ ィ リピンに10種記録が あ り, その うちの 1種 だけが共通 す ることにな ってい るが, さ らに検討 を要 す る。 シシ ラン属 は台湾 に4種, フィ リ ピンには10種 あ り, 共通 は 2種。 ヨロイ シシラソ属 の 2種 は共通 であ るが,Monogyammaは 台湾 には記 録 され てい ない。 イ ノモ トソウ科 イ ノモ トソウ属 は台湾 に27種 記録 され, フ ィ リピンで も40種 が挙 げ られ てい るが, さ らに検討 を要 す る。 その うち比較的 は っき りした12種 が共 通 であ る。 ミミモチ シ ダ属 はフ ィ リピンに2種 あ り, その うち ミミモチ シダは台湾 にな くて先 島諸島 にあ るoSteγ乙 0-chlaenaも台湾 にはない。 チ ャセ ソシダ科 台湾 に23種, フィ リピンに45種, その うち12種 が共通 であ る。 この科 も 詳細 な比較検討 を必要 とす る もので あ る。 シシガシ ラ科 ヒ リュウシダ属 は台湾 に5種, フィ リピンに7種, 共通種 は と リュウシダ とホ ウライ シシガシラ, ソテ ツモ ドキ属 は単型属 で両地域 に またが ってお り, コモチ シダ属 で は台湾 に5種 あ って, その うちの2種が フィ リピンに も分布 してい る。 ツルキ ジノオ科 ア ツイ タ属 は台湾 に 6種, フィ リピンに11種, うち 3種が共 通。- ツカ シダ属 は最近 のHennipmanの研究 に従 うと, 台湾 に5種, フ ィ リピンに7種,共 通種 は二 つ とい うことにな る。 ツル キ ジノオ属 に フィ リピンか ら4種報 告 されてい る うち, ツルキ ジノオ だけが台湾 に も産す る。Eda7ayOaは フィ リピンの特産属 で,'(eyatoPhyllum や Lomagyamma も台湾 には見 つか ってい ない。 オ シダ科 タイ ワン ヒメ ワラ ビ属 のマ レー シアの植物 が異 な った種 の ものか ど うかは さら に研究 を要 す る問題 であ る。 - ゴモ ドキ は両地域 に産 す るが, 台湾 に Diacalクeが ないのは奇 妙 な感 じであ る。 イ ノデ属 は台湾 で27種が識別 され てい るの に, フィ リピンでは11種 が記録 さ れ てい るだけで, その うち4種 は共通 であ る。 ヤ ブ ソテ ツ属 は台湾 に6種, その うち2種 が フ ィリピンか ら報菖 され た ことが あ る。 カナ ワラ ビ属 は台湾 に10種, フ ィ リピンに 5種, 3種 が 両地域 を含 めて広 い分布域 を もってい る。 フィ リピンのオ シダ属 は最近Priceが詳 し く研究 し, 434

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岩槻 :しだ植物 の分布 からみた台滑 とフ ィリピン 10種 に整理 した。 台湾 には23種が列挙 きれ てお り, S種 が共通 であ る.Didymochlaenaは台湾 にはない。 ハル ランシダ属 は台湾 に 1種, フ ィ リピンに 2種,別 々に産 す る。 カ ツモ ウイ ノデ 属 は台湾 に 7種, フィ リピンの ものは検討 を要 す るが17種認 め られ, うち 3種 だけが共 通 であ る。 ナナパ ケシダ属 も分類 が よ くで きていない群 であ るが, 台湾 で15種, フ ィ リピンで20種 ほ どあ り, 少 な くとも4種 は共通 であ る。 単系の カ シノ- シダ属 は両地域 に またが って分布 し, ウスバ ワラ ビ属 は フィ リピンに6種 あ るが, 台湾産 の1種 は別 の ものであ る。Pieridrysには 最近 台湾か ら 1種報告 され たが, フ ィ リピン産 の 2種 は別 の ものであ る。CycloPeltis,Hetey 0-gom'um,Psomiocarpa,Sicnosemia,Tectaridium の諸属 は台湾 では見 つか ってい ない.

ヒメシダ科 は最近 の Holttum の研究 でずい分 よ く分 か るよ うにな ってい る。 フィ リピンに は 130種 は ど記録 され るこ とにな りそ うであ るが, 台湾 の40種 の うち, 15種 は フィ リピンに も 分布 してい る。 メシダ科 はそれ と対象的 に根本的 に見直 す必要 の あ る科 で, こ うい う比較 も難 しい。 キ ンモ ウ ワラビ属 は共通 の1種 だけが知 られ てお り, ウサ ギ シダ属 は台湾 の2種 の うち- ビラシダが フ ィ リピンに も分布 す る。 イ ワデ ソダ属 は フ ィ リピンにはない。他 に, フ ィ リピンには67種, 台湾 に45種 ほ どあ り, 少 な くとも10種 は共通 であ る。 ヤ プ レガサ ウラボ シ科 は フィ リピンに 2種 あ り, その うち 1種 が台湾 に も分布 す る。 ス ジ ヒ トツバ科 は単型 の科 で, 両地域 に またが って分布 してい る。 ウラボ シ科 ヒ トツバ属 は台湾 に 7種, フ ィ リピンに 9種, うち 2種 が共通。 ノキ シノブ 属 は台湾 に7種 あ るが, フ ィ リピンには, ノキ ノブ と,別 に全然違 う1種 が あ るだけ。 マ メ ゾ タ属 は2種 ずつ あ って共通 は しない。 キ リガタ シダ属 は フ ィ リピンに6種 あ り, その うちキ リ ガタシダだけが 台湾 に も分布 す る。 ク リ- ラン属 では1種 だけが両地域 に またが ってい る。 ヌ カボ シ ク リ/、ラン属 では台湾 に9種, フィ リピンに24種 あ り, 5種 は共通 であ る。 イ ワヒ トデ 属 は台湾 に 4種 とフィ リピンに 5種, 共通種 は二 つ であ る。 オキナ ワク リ- ラン属 は 1種 だけ が両地域 に分布 してお り, サ ジ ラン属 は台湾 に 5種 とフ ィ リピンに 7種, その うちには共通種 と思 われ る もの はない。 ミツデ ウラボ シ属 は台湾 で9種, フ ィ リピンで13種,共通 す るのは 2 種 だけであ る。 ア リサ ンシダ属 は台湾 には 1種 だが, フィ リピンにあ るのが別 の 1種 か どうか は確 かでない。 エ ゾデ ソダ属 は台湾 に 6種, フ ィ リピンに 9種, タイ ワンウラボ シだけが共通 の種 であ る。 カザ リシダの仲間 は属 の分類 は難 しいが, 台湾 に3種 とフィ リピンに11種,共通 す るのは1種 だけであ るO クラガ リシダ属 は フィ リピンにはな く,Diblemma,Drymuglossum,

LecanoPieyis,Platycerium,Podosorus,Selliguea,ThylacoPley,isの諸属 は フィ リピンにあ って 台 湾 にはない。

ヒメウラボ シ科 ヒメ ウラボ シ属 では台湾 に G種, フ ィ リピンに19種 で,4種が共通, オ オ クボ シダ属 は台湾 に 1種 と, フィ リピンに別 の 3種, キ レ- オオ クボ シダ属 は フィ リピンに

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東南アジア研究 15巻 3早 24種 あ って, その うち4種 だけが台湾 に北上 してお り, シマ ムカデシダ属 では フィ リピン産8 種 の うち2種が台湾で も見 つか ってい る。 ヒメ-ボシシダ属 は フィ リピンに

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種 あ ってその う ちの 2種が台湾 に もあ り, シシランノキ シノブ属 ではフィ リピン産 3種 の うちの 1種が台湾 に も分布 してい る。

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は台湾 にはない. この科 を通 じて台湾 に

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種 あ り, その うち

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種 だけが フィ リピンにはない ものであ る。 デ ソジ ソウ科 ナ ンゴクデ ソジソウが両地域 に またが って分布 す る。 サ ンシ ョウモ科 台湾 にサ ンシ ョウモがあ るが, フィ リピンには記録がない。 アカウキ クサ科 両地域 の ものが

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とされてい るが, この類 も再検討 を要 す るものであ る。 ][ 両地域 の比較 の際問題 となる数地域 の しだ植物棉 前節 で列挙 したよ うに, 台湾 とフィ リピンの両地域間では種 レベルで共通す るものは意外 と 少 ない。 そ こで, その問題点 を もう少 しは っき りさせ るために, い くつかの地域 の しだ植物相 を と り上 げ,両地域 との関係 を検討 してみ よ う。 1) Batan島の しだ植物相 初島によ る

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年 の調査が詳細綿密 な ものであ るので, この島の シダ植物相 はほぼ完全に分 か ってい る もの として考察 を進 め ることがで き る。 Batan島 は台湾 とル ソンのち ょうど中間 に位置 してお り,周囲47kmの小 さな島であ るが, 島の北部 に標高1008m の火山 Mt・Irayaが あ り, これは Batan諸 島の最高峰であ る。

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種 の シダ植物が報告 されてい るが, その うち

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は この島 と紅頭喚 だけに極 限 された ものであ る。 他 に, リュウキ ュウイ ノモ トソウ, -チ ジ ョウシダ, シマ シ ロヤマシダ, -チ ジ ョウカグマの4種 が西 南 日本か ら台湾 にかけて分布 してい るもので Batan島 を南限 と し, ル ソン島以南には知 られていない。逆 にホ ソバ ヒメホ ラゴケ, ヒメホ ラゴケ, ア ッパ シノ ブ, コウ トウクルマシダ, -ナガ ウラボシの各種 は, 台湾本島にはな く,紅頭興 か ら先島諸島 -分布 してい るものであ る。他 に 7種 はフィ リピンだけに知 られてい るものの北限 であ るが, 全種数 の3分 の2以上 に相 当す る残 りの50余種 はマ レーシア,東南 アジア, さらには汎熱帯 に 広 く分布 してい る ものであ る。 こ うい うシダ植物相 のあ り方 は小島興 ではあ りふれた もので, この島がた とえ1000mを越 え る高 さが あ った として も,小 さな火山島であ るために植生 は発達せず,植物相 の歴史的変遷 の 跡 を とどめ るよ うな特徴 はほ とん ど残 されてい ない とい うことであ る。 この ことは シダ植物 に 限 ってい え ることではな く,初島

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に記録 された ものか らも明 らかなよ うに,種子植物 一 般 についていえ ることであ る。 とい うことは, た とえ台湾 とル ソン島の間に幾 つかの小島嘆 があ った として も,雑草的 な広分布種以外 の植物種 についてい えば,適当な生育条件の充 た さ

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岩槻 :しだ植物の分布 からみた台湾 とフィリピン れ た場所 を もっていない これ らの小島興 は海洋 と同 じ意味 しか な く,種 の分布域 についての比 較 に際 しては, 無視 して通 って も特 に支障があ るとは思 えない ものであ る。 2) Sicapoo 山系 の しだ植物相 台湾 については全島比較的隈 な く植物相 の調査 が行 なわれてお り, しだ植物相 に限 ってい え ば, 田川 の調査が台湾東南 部の山岳地帯 で特 に丁寧 に行 なわれ ていた ことな どあ って, マ レー シア要素 の種が どの よ うに台湾 に入 り込んでい るかはあ る程度以上 の確か さを もって論議 で き るよ うにな ってい る。 それ に対 して フ ィ リピンの植物相 は, いつで もフィ リピン全体 を対象 と して云 々されてい るが,植物地理学上 の比較 をす るためには, いろいろな面 での情報不足 は否 めない。特 に, 台湾 とフィ リピンの しだ植物 の比較 をす る場合,ル ソン島北部 におけ る種 の分 布 や生活型 について調査の行 き届いていない点が決定的 な欠点 とな る。 か つ て か ら Benguet 山地 は度 々植物学者 に調査 されてお り, この地域 の植物相 は比較的 よ く分 か ってい るといえよ うが,東部 の SierraMadreと,北部 の Sicapoo 山系 についてはほ とん ど手つかずであ った と い って も過言 ではない。 しか も, それ らの山地 の位 置関係 についてい うと, た とえば Sicapoo 山系 を無視すればお よそ70km に及ぶ地域 を無視す ることにな るし, その間に漸次置 きかわ っ て くる種 の ことを考慮 に入れ なければ,大雑把 な比較 さえで きた とい うことにはな らない。 そ の ことは, 1974年 に単独 でわずか数 日だけSicapoo山北面 を中腹近 くまで調査 したM.G.Price が タカサ ゴシダ, ホ ウライ シダ, ウライ シダな ど台湾 にあ るものを初 めてル ソン島か ら記録 し た ことによって ます ます強調 され ることにな った。

筆者 ら (Iwatsuki良 Price,1977)の Burnay 山近辺の調査 は この穴 を埋 め ることを 目的 の 一 つ とした ものであ った. わずか2週間弱の期間 しか取れず,土地 の事情 もよ く分 か らなか っ た状 態 での予備的 な調査 に しては,新知見が幾 つ も加わ り, 以下 に要約す るよ うに台湾 とフィ リピンの植物地理学的 な距 た りを埋 め る情報 も多か った。 それ と同時 に, そ うい う事実 が, こ れ らの地域 の詳細 な調査な しに概括的 な植物相 の比較 をす ることの危険性 をい っそ う明 らかに す ることともな った。 この調査 で フ ィ リピソの しだ植物相 に追加 され ることにな ったのは2新種 を含 む8種 であ る が, 合計 で 199種 とい う記録か らみれば これは高い割合 であ り, さらに Priceの1974年新記録 の 3種 も加 え ると, この地域 の調査 で何 が明 らかに されてい るかが明 らかであ る。 しか も,節 種 を除 く6種 の うち, ア ミホ ラゴケ, イ ヌシダ, ナチ シダは台湾 とフィ リピンの距離 を縮 めた よ うな存在 であ る。 その上, これ まで台湾 とフィ リピンで別 々の名前 で記録 されていたけれ ど ち, よ く調べ てみ ると同 じであ った とい うものに, ア リサ ンキ クシノブ, タイ ワンア ツイタ, サキ ミカナ ワラビ, ニセ トラノオ ウラボ シ, ホ ソバ シケチ シダ, ヒp- ミヤマノコギ リシダな どが あ る。 それ らの種 も含 めて,Burnay山近辺 で筆者 らが確認 した199種 の しだ植物 の うち 6種 は北ル 437

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東南アジア研究 15巻 3号 ソソに限定 された ものであ り, 特殊 な隔離分布 をす る5種 も別 にす ると, 残 りの188種 の うち 121種 は台湾 と共通, 171種 はル ソン島中部 以南 のフィ リピソ と共通 とい うことにな り, 105種 は台湾か らフィ リピンを通 じて生 えてい るものであ る。 しか し,台湾 にあ ってBurnay山近辺 よ り南- は拡が っていない ものが16種 であ るのに対 して,68種 はフィ リピソで400km以南 まで 分布 してい るのに台湾 には記録 され ていない。 しだ植物 が胞子 の飛散 に よって容易 に分布域 の拡大 を行 な うことについては既 に詳 しく論議 した ことであ る (岩槻, 1975)が, それ に して も,風 向きか らい うとフィ リピソか ら台湾-の 拡散 は困難 な ことではない と推定 で きるに もかかわ らず,Burnay山 とその近辺で記録 した し だ植物 の約 3分 の 1の種が台湾 に分布 していない とい うのは どうい うことだろ うか。 この風 向 きは氷河期以後 の もの といわれ るし, マ レー群島 自体 は北 -向けて移動 しつつあ るもので, か つ,台湾 ・フィ リピン間の小火山島峡 は起源 の新 しい ものであ るので,台湾 とフィ リピンの間 の物理的 な距離 は現状 か ら考 え るよ りももっと大 きな植物 の分布拡散 の妨げ となってい た もの らしい。 この ことは,種子植物 の資料 に基づ くvan Steenis(1950)の比較か らもっと明瞭 に知 られ ることで, 台湾 とフィ リピンが地続 きにな った ことはない らしい とい う地史学上 の事実 と も一致す ることであ る。 これ らの ことを総合 す ると, 台湾 か らル ソン北都 に達す るとい う分布様式 を示 す種 はむ しろ 新 しく分布域 を拡散 した もの と推定 され, ヒマ ラヤ要素が残存 した もの とは考 え難い。 台湾 と フィ リピン とを較べてみ ると, しだ植物 のほ とん どの種 について,生育条件が一方 にだけ充 た され てい るとい うよ うな ものは無 さそ うであ るので,分布 の条件 は明 らかに地史時代 を含 めた 物理的 な距離 の大 きさに置 き換 えてみ ることが で きるものの よ うであ る。 その ことは Burnay 山近辺 のわずかな調査 の結果か ら推論す ることであ るが, この地域 を含 めたフィ リピンの しだ 植物相 の詳細が明 らかに されれば もっとは っき りした形 で示せ るものであ ることはい うまで も ない。 3) 紅頭興 と先島諸 島の しだ植物 柏 台湾の南端か ら東-約40km の紅頭興 は, 面積が約45km急の小島で,標高 も548mに過 ぎな いが,古 くか ら植物 もよ く調査 されてお り,特異 な種 の分布 のみ られ ることで植物地理学上 も 注 目されてい る島であ る。最近, これ までの知見 を総合 して, この島の しだ植物 のチ ェ ックリ ス トが劉華祥 (1976)によって まとめ られ, 103種が記録 されてい る。 その うち14種が台湾 に はない もので, この島 に限 られてい るものは ヒメシダ科 に1種 あ るだけであ る。 ミヤ コジマハ ナ ワラビと-マホ ラシノブはフィ リピンか ら紅顔峡 を経 て琉球 に北上す るものであ り, この島 を北限 とす るものが8種 あ る。 紅頭興 も小 さな火山島であ るか ら,森林植生が残 されてい るとはい え,地味 も薄 く,3440mm に及ぶ年雨量が あ って も,小 さな島の ことであ るか ら汐風 の影響 は全 島に及 び, しだ植物 の生 438

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岩槻 :しだ植物の分布からみた台時 とフ ィリピン 膏 に好適な場所 とはいえない。 そのため,

Bat

a

n

島の場合 と同 じよ うに,記録 されてい る種 の ほ とん どが雑草的な広分布種 であ ることは注意 しておかねばな らない0 そのよ うに普通種 を中心 として百余塵 しか座 しない しだ植物 の うちに,特殊 な分布 の塾 を示 す ものが相 当数含 まれてい ることは注 目に価す ることか もしれない。 その ことは,台湾には生 育 していな くて, フィリピンか ら紅頭嘆 を経 て先島諸島に分布 してい る種が幾つかあ ることで, 以前か ら論議の対象 にな ってい ることで もあ る。 これは, ミミモチシダの よ うに,紅頭興 に も な くて,ル ソン島か ら西表島 まで とんで分布す るよ うな もの まで加え ると, さらに種数 の増 え ることであ る。 しか しこれ らは,ル ソン北部 と台湾 との差 を較ぺてみればわずかな ものであ り, む しろ個 々の種 の生態的条件に帰せ しめ るべ き点が多 く,植物相 の形成 の過程 で特殊な地史上 の背景 を示 す もの と断 じることはできない。 先島諸島 (八重山諸島) の植物 はそれ以南に比 して格別 に高い精度 で調べ られてい る。 もち ろん,完全 とい うことはな くて, ご く最近発見 されたオオアオホ ラゴケが, フィ リピン ・紅顔 喚 ・西表 をつな ぐ分布 をす るものであ ることが確かめ られ たよ うな例 もあ る。 これ までの知見 か ら,先島諸島の しだ植物 を取 り上げ る場合は, この島 々の植物相が非常 に豊 かな ものであ る ことを考慮 に入れなければな らない ことは明瞭であ る。豊富 な雨量 と複雑な地形 による森林植 生の多様性が まだそれほ ど扱われずに保 たれてい る西表島な どで, その ことは特 にいち じるし い。 そ して,紅頭峡 との関連 で語 られ るよ うな種の幾 つかは, そ うい う条件 に恵 まれて西表島 に まで達 してい るとい うよ うな種 であ ることが多い。 Ⅱ 紛議と開成の展望 植物相 の比較 を行 な う場合,いわゆる区系植物地理では,構成要素が大幅 に変化す る地帯 に 「フ ロラの滝

の存在 を認め, その程度 の大 きさに よっていろいろの段階の区系の差 を認め る。 その よ うな差 の認識 は, しば しば属や科 の レベルでの比較 に基づ くこともあ る。 しか し,概括的 な数字の比較 だけでは, ご く表面的な ことはいえた として も,個 々の種が新 しい塾 を確立 し,生活の場 を獲得 してきた歴史をあ とづけ るよ うな植物地理学 に資す る もの と はな り得 ない。 そ うい う情報 は,個 々の種が, どの よ うな生活型 を もってそれぞれの分布域 を 占めてい るかについての詳細 な観察の集成があ って初 めて得 られ るものであ る。 フィ リピンと台湾の植物相の比較 についていえば, これ までのほ とん どの検討が区系地理的 な段階 で終 え られてい る。 それは, これ までの植物相 の調査が,台湾以北 とフィ リピンとでそ れぞれ独立 に進 め られてお り, またフィ リピンにおけ る調査の進度が遅れてい るために,両地 域 を通 じての比較が充分 に行 なえ る準備が整 っていなか ったためであ る。 そのために,筆者 ら がた った10余 日の間の共 同調査 を行な っただけで も新知見が幾つ も得 られ るとい うくらい,調 査 をすべ き機 は熟 してい るといえ る。 この論文 で も,分布域 ごとの種数 を概括的 に数字 で表現 439

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東南アジア研究 IS巻3号 す るだけでな く,属や種 を単位 とす る検討 を通 じて,概数 で論ず る分布域 の異同を補正 しよ う と試みたが, まだ まだ情報量不足 で意 を尽す ことがで きない。 この研究 に関 しては,今後 の, 特 にフィ リピンにおけ る調査の推進が不可欠で,現在分 か ってい る範 囲の ことか ら推論 で きる ことも限 られ た ことだけに留 まる。 しだ植物 の分布が地 史 よ りも現在 の生態的条件 に影響 され る部分 のほ うが大 きい とい うこと は既 に論 じてきた (岩槻, 1975)。 しか し, 台湾 とル ソソ北部 の しだ植物相 を整理 し, 比較 し てみ ると,地 史的 に隔離の大 きい これ ら両地域間には,種子植物 の場合 ほ どではないに して も, 現在 の生態的条件だけでは律 し切れ ない差が顕著 に認 め られ る。 これ は,台湾か ら琉球沿いに 九州 ・四国 ・本州 と北上 して くる暖地性 の しだ植物 の漸次的 な変化 とは違 った性質 の ものであ るし,動物 の分布 の よ うにバ リ島 とロンポ ック島の間 に明瞭 な差があ るとい うよ うな もので も ない。長い期間隔離 され続 けて埋 め られない古地理 におけ る陸地 の隔 りが植物地理上の隔差 と して明瞭 に示 されてお り, シダ植物 の よ うに分布域 の拡散 の活発 な ものについて もその差が ま だ残 されてい るとい うものだろ う。 しか し,植物相 に関す る調査 さえまだ不充分 な現状 では, この差 を どう整理 してい った らよいのかについ ての明確 な指針 は得 られてお らず, 今後 の大 き な課題 とな ってい る。 謝辞 フ ィ リピンにおけ る調査 は東南 アジア研究 セ ンターの1975年度現地調査費 に よって行 なわれ た。 お世話 にな ったPCA Sや フィ リピン国立博物館 の方 々な どに感謝す る。 また,比 較 のための先 島諸島の調査 は科学研究費 (035059)に負 うところが大 きい。 筆者 らが東南 アジア植物相 の研究 を始 めたのは東南 アジア研究セ ンターの開設 と同時期 の こ とであ るが, その頃か ら本岡武教授 にはい ろい ろの御協 力やお励 ましをいただいてい る。 同教 授 の御退官 に際 し, これ までの御好意 に対 して改 めて心か らお礼 を申 し上 げたい。 参 考 文 献

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参照

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