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中山大学「第2回青年人類学フォーラム : 中国研究 : 自者と他者の視野」参加記 利用統計を見る

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中山大学「第2回青年人類学フォーラム : 中国研究

: 自者と他者の視野」参加記

著者名(日)

田村 和彦

雑誌名

白山人類学

15

ページ

139-142

発行年

2012-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00002428/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

白山人類学 15号 2012年3月

研究紹介

中山大学「第2回青年人類学フォーラム:中 国研究一自者と他者の視野」参加記   田村和彦de TAMuRA Kazuhiko★  中国では,近年,学術会議開催の動きが活 発化し,毎年,数多くのフォーラムが開かれ ている。今回報告する「中山大学人類学復癬 三十周年系列学術活動,第2回青年人類学フ ォーラム:中国研究一自者と他者の視野」も そのひとつである。  具体的な報告に入る前に,中国における研 究フォーラムをとりあげる意義を簡単に述 べておこう。  2003年に大阪の国立民族学博物館で開催 された「21世紀の中国に関する人類学研究の 回顧と展望」(韓敏主催,民博共同研究「中 国における民族表象のポリティクス」塚田誠 之:代表)において,興味深い指摘がなされて いるので,これをとりあげて導入としたい。 韓敏のまとめによれば,中国には2003年時 点で民俗学・文化人類学に関する教育・研究 機関が55地点あり,在籍する研究者も3,000 人に上るといわれる。同フォーラムに参加し た麻国慶によれば,すでに准教授以上でかつ 博士学位をもつ人類学者は400人近くに達し ているという。近年の,中国大陸における人 類学の人材育成に関する飛躍は,目を見張る ものがある。  また,同フォーラムの記録によれば,アメ de 汢ェ大学人文学部;Faculty of Humanities,  Fukuoka University, Nanakuma 8−19−1,  Jonan−ku, Fukuoka,814・0180/  e−mail:tiancun@fukuoka−u.ac.jp リカ人類学会(American Anthropological Association)に登録されているメンバー約 11,000人のうち,中国研究を行う人類学者は およそ1,000人に上るというJames Watson の推測も紹介された[韓2003]。同会議に参

加した西澤治彦によれば,アジア学会

(Association for Asian Studies)の会員の うち,約2,000人が中国を対象としていると 考えられ,その約半分が人類学者とすれば, この数字は,妥当な推測であるとされる[西 澤2005]。  このように,中国研究を取り巻く研究者の 広がりは,今後の共同研究や議論の場の構築 に影響を及ぼすことが考えられるが,日本に おいてこうした活況が十分に紹介されてい るとは言い難い。  他方で,中国における学術情報の発信状況 にも,近年急激な変化が起こりつつある。中 国の人類学の置かれた状況についての優れ た回顧と展望として,秦兆雄の論考「中国人 類学の独自性と可能性」があるが,このなか で,秦は,現状に関する問題点の一つとして, 人類学の専門誌が刊行されておらず,人類学 者による公開の学術議論の場がいまだ形成 されていない点を指摘している[秦2006]。  この指摘は,論考発表の時期には的確なも のであり,基本的に筆者も同意するところで あるが,しかし,この数年間のうちに,研究 者の量的増加に伴って,中国における情報発 信や交流,議論の場も盛んに形成されつつあ る。たとえば,人類学を専門に扱う季刊とし て「中国人類学評論」(Chinese Review of Anthropology,2007年より刊行開始)が現 れ,主にインターネット上の交流地点として は,「中国人類学評論」のほか,「人類学オン ライン」(ANT online)や,社会科学院色の

強い「中国社会文化人類学ネット」

(Anthropology China)や,「中国芸術人類 学ネット」(Art anthropology),人類学専攻

(3)

白LLI人類学 15号 2012年3月 の大学院生による「面向21世紀人類学ネッ トステーション」,漢民族研究ということで 民俗学,制度上上位に位置する社会学まで含 めれば,「民間文化青年フォーラム」(Forum of folk culture studies),「中国社会学ネッ ト」(Chinese Sociology)など様々なホーム ページが相次いで創設されている。これらの ホームページは,中心となる人物や拠点によ り特色がみられるものの,特質すべきは,電 子化された論考が頻繁に掲載されること,ま た,そのほとんどで「論壇(フォーラム)」 のコーナーが設けられており,若手研究者を 中心に連絡や活発な質疑,研究へのコメント がおこなわれていることである1)。  上述の,中国の人類学をめぐる状況の変化 は,筆者が中国でフィールドワークを始めた 10数年前と比べても隔世の感があるが,残念 ながら日本ではあまり知られていない。  そこで,今回は,中国でも最大級の人類学 教育機関をもつ中山大学で開催された,多く の情報発信,議論の場の形成を進めている若 手研究者の集まったフォーラムの参観記録 を紹介する次第である。  中国青年人類学フォーラムは,2010年に 北京で第1回が開催された比較的新しいフォ ーラムである。World anthropologiesの提唱 を背景に,中国人類学の位置付けを模索する 機運のなかで,費孝通生誕百年の記念となる

この2010年6月に,北京大学でGeorge

MarcusとJudith Farquharによるフォーラ ムが開催された。その翌日,中国の多くの人 類学研究者が集まったこの機会に,北京大学 社会学部,同社会学人類学研究所,中山大学 1)もちろん,たとえば『社会学人類学論叢』など,  各大学を中心とする論叢シリーズの刊行が今日  の中国における人類学の発展を促してきたこと  は言うまでもない。ただし,それらは日本の『文  化人類学』のような学会誌的刊行物ではなかっ  た。 人類学部,中央民族大学民族学社会学学院, 雲南大学民族研究院,上海大学社会学部が合 同で,各世代の人類学者が自由に議論をする 「中国人類学のフィールドワークと学問領 域の規範」と題した「工作坊」(一種の平等 参与,相互関与形式のサロン)を開催した。 このサロンの場で若手世代によるフォーラ ム形成の必要性が確認され,今後これを継続 してゆくこととし,その第2回目が(見方に よっては正式な第1回目ともいえる),ここ

で取り上げる2011年12月9日∼11日に中

山大学でおこなわれたフォーラム「中国研究 一自者と他者の視野」であった。このフォー ラムは,中山大学における人類学研究教育機 関復興30周年記念行事のなかに含まれるこ とによって,985プロジェクトによる資金援 助を受け,伝統ある中山大学社会学人類学学 院の象徴ともいえる「馬丁堂」で開催される にいたった。  フォーラムの場では,40数名に及ぶ若手人 類学者が中国各地から集まり,2日にわたり 「他者と自者と方法」「組織環境と協力」「文 化,遺産と再創造」「経験,理論と視野」「親 族,身分と意識」「政治,文化と境界」「外に 開かれた人類学」という7つの分科会を全員 参加でおこなう形式で,それぞれ興味深い報 告と議論が繰り広げられた2)。日本からは, 木ノ下章子(電子科技大学中山学院),長沼 さやか(日本学術振興会),河合洋尚(国立 民族学博物館,第7分科会司会を兼務),田 中孝枝(東京大学),田村和彦の,いずれも 中国を対象とした研究発表があった。フォー ラムの趣旨を踏まえれば,日本からの研究者 の参加と発表は一定程度の貢献があったが, 議論をともに作り上げるという側面につい ては,今後に課題を積み残すこととなった, といえよう。 2)参加登録名簿上は36名だが,当日に若干の異動  があった。

(4)

田村:研究紹介 中山大学「第2回青年人類学フォーラム;中国研究 自者と他者の視野」参加記  以下は,フォーラムへ参加した感想を列挙 して拙文を終えたい。  まず,ほとんどの研究発表が,以前に比べ, フィールドワークに基づく詳細なデータに 立脚した議論であったことが挙げられる。対 象は少数民族から手工業の現場や企業内部 まで多様であったが,それぞれに時間をかけ た調査とその結果としての興味深い研究を 垣間見ることができた。発表者のなかには, タイでの調査で知られる襲浩群,インドでフ ィールドをおこなった呉暁黎,フランス社会 の研究を進める張金嶺など,高丙中による若 手研究者の海外への調査活動の呼びかけに 応じた世代の研究者の参加がみられたこと とあわせて,近年の中国におけるフィールド ワークの普及と,人類学の視野の拡大を体感 することができた。  つぎに,相対的に,研究対象選択の問題や 視野,分析手法,立ち位置といった面での議 論や質疑応答がなされた点も興味深い。この フォーラム以前,筆者は上海で類似した事例 を用いた発表をおこなったが,そちらでは対 象そのものへの関心が目立ったのに比して, 本フォーラムではむしろそれを包み込んで いる状況への視線が感じられた3)。その意味 では,中国にとって海外研究である,姜梛(中 山大学,以前民博に外来研究員で在籍したキ ャリアを持つ)による日本の酒造業の発表も また,フォーラムの性質を考えると興味深い 発表であった。発表者の…人からは,フォー ラム終了後に農村からの出稼ぎ労働者の健 3)「第1回都市社会フォーラム」(華東師範大学中  国現代城市研究中心,華東師範大学発展学院セ  催,2011年10月20∼22日)を指す。もっとも,  このフォーラムは「社会学」「社会工作」「人口  学」「民俗学」「人類学」の分科会から成り,筆  者は民俗学部門に参加したため,Gregory  Guldinらの司会による人類学分科会に参加すれ  ば異なった感触を持ったかもしれず,その意味  で,この感想は学問分野の差異かもしれない. 康向上に関する草の根運動の紹介と募金の 呼びかけがあったが,上記の関心とありかた と合わせて,改めて中国における人類学の位 置づけを考えさせられた。  また,こうした研究会ではしばしば出身大 学や活動圏による参加者の大きな偏りが見 受けられるが,本フォーラムでは,中山大学 出身者はもとより,北京大学や社会科学院, アモイ大学など多様な出身,所属の研究者が 集まったことにも興味をひかれた。従来は, 日本に比べて強いと(個人的に)感じていた 教育研究機関の壁も,若手研究者の間では緩 和されつつあるのかもしれない。  自戒を込めていえば,こうした大きな変化 の渦中にある中国の人類学に対し,突出した 中国に関する研究蓄積をもつ日本において 研究を進める人類学者として,どのような関 係を持つことが可能なのか考えさせられる 機会でもあった。しばしば椰楡されるように, 外国人は調査のために中国の大学に来るが, 中国の大学では学ばないといった状況を避 けることはいうまでもないが,中国を/で調 査研究をする者としてもう少し中国におけ る人類学の研究状況への関心を払い,情報を 発信すべきではないだろうかという思いに 駆られた。本フォーラムの成功の一端は,非 常な多忙のなか,随所で的確な指摘やアドバ イスをおこなうことで議論を生産的な方向 へと導いてくださった,日本でもよく知られ ている麻国慶,王建新といった先生方にも由 来している。こうした数世代にわたる中国と 日本の人類学をめぐる継続的学恩に応える ためにも,大きな変化を成し遂げつつある中 国の人類学とのかかわりにおいて,為すべき 仕事は少なくないと思われるのである。若手 世代の研究を知る,中国各地の若い人類学研 究者と知り合うというだけでなく,上記の反 省を得られたという意味でも,第2回人類学 青年フォーラムは大変有意義な機会であっ

(5)

白山人類学 15号 2012年3月 た。  なお,本文では敬称は省略させていただい た。  最後に,多様な出自を持つ若手研究者を組 織し,刺激的な議論の場を形成し,意義深い フォーラムを成功させた中山大学人類学部 の講同学准教授に,特に記して感謝の意を表 する。  2012年には,雲南大学にて第3回人類学 青年フォーラムがおこなわれる予定となっ ており,日本からの継続的な参加を期待した い。 参 考 文 献   (最終閲覧日2012年1月25日) 「中国芸術人類学ネット」  http:〃www.artanthropology.com/  default.aspx(最終閲覧日2012年1月  25日) 「面向21世紀人類学ネットステーション」  http:〃www.face21cn.cn/(最終閲覧日

 2012年1月25日)

「民間文化青年フォーラム」  http:〃www.pkucn.com/chenyc/index.  php(最終閲覧日2012年1月25日) 「中国社会学ネット」  http:〃www.sociology2010.cass.cn/(最終

 閲覧日2012年1月25日)

〔日本語〕 韓敏   2003 「21世紀の中国に関する人類学   的研究の回顧と展望一一中国・アメリ   カ・日本のパースペクティヴ」『民博通   信』103:22−23. 秦兆雄   2006 「中国人類学の独自性と可能性」   『国立民族学博物館研究報告』31(1):   117・153. 西澤治彦   2005 「日本の中国人類学をめぐる思   索」『武蔵大学総合研究所紀要』15:153−   166. 〔インターネット資料〕 「中国人類学評論」  http:〃www.cranth.cn/(最終閲覧日2012  年1月25日) 「人類学オンライン」  http://www.anthropology.net.cn/(最終

 閲覧日2012年1月25日)

「中国社会文化人類学ネット」  http:〃anthropology.cass.cn!home.asp

参照

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