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キイロショウジョウバエ幼虫体壁筋上の神経終末 : 腹側体壁斜行筋15,16,17 利用統計を見る

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キイロショウジョウバエ幼虫体壁筋上の神経終末 :

腹側体壁斜行筋15,16,17

著者名(日)

山岡 景行

雑誌名

東洋大学紀要. 自然科学篇

47

ページ

39-48

発行年

2003-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00002477/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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キイロショウジョウバエ幼虫体壁筋上の神経終末:

腹側体壁斜行筋15,16,17

山 岡 景  行*

Nerve terminals on the body wall muscles of larval

       Drosophila melanogaster:

Muscles 15,16 and 17,or ventral external obliques

Kageyuki YAMAOKA

       Abstract   The morphology of the 3rd instar larval motor neuron terminals on the muscles 15,16and 170f the abdominal 2nd segment was examined by using a transgenic line of Drosoρhilαmelαnogαster. The transformant used was D42-GAL4一ひ4S-GFP homozygote line. In this transformant line, GFP was expressed specifically in the motor neurons. Retrograde labeling of somata with Dil showed that the muscles 15and 16 were commonly innervated by 2 motor neurons whose somata located ipsilaterally in the ganglion, while the muscle 17 was innervated by one of those neurons only. Branching pattems of motor axons and tenninals looked so variable that patterns were frequently different between the right and left sides of even in tha same abdomillal segment. However, the principle of innervation pattern was understandable as follows:One of 2 motor axons ran frontal side in the segmental nerve d(SNd)and made terminals on the muscles 16 and 17 at the anterior part of the cleft of both muscles, and the other passed rear side in SNd and commonly innervated the muscles 15 and 16. The Iatter one made 2 branchesl One of them again branched forward and backward on the inner surface of the muscle 16, and the other branch ran rear direction along the cleft between the muscles 15 and 16 and made terminals on both muscles, and branched again once or twice on the in- ner surface of the muscle 15. The location and size of each varicosity at the termi- nals were diversified among individuals. Key words:Dros()philα, larva, motor neuron, terminals, GRP ’東洋大学自然科学研究室 〒351-8510埼玉県朝霞市岡2-11-10  Natural Science Laboratory, Toyo University,11-10,0ka 2, Asaka-shi, Saitama 351-8510, JAPAN

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40 山 岡 景 行

はじめに

 筆者はキイロショウジョウバエ,Drosophilαmelαnogαsterの幼虫体壁筋とそれらを支 配する運動ニューロンを用いてシナプス伝達物質の放出機構を解明のための努力を行って きた.その過程で,個々の運動ニューロンの細胞体を識別できると実験を進める上で好都 合と考え,好脂質性蛍光carbocyanine色素であるDilやDiOによる個別の運動ニューロ ンの染色(山岡・Ikeda,1998)や, Aequoria victoriαのGFP遺伝子が運動ニューロン に発現するように導入したラインの利用(山岡,2001)を試みてきた.その際使用した3 つのGFP transgenic linesの中で, D42-GAL4-UAS-GFPが筆者の目的には極めて有 用なラインであることが判明したが,遺伝的にheterozygoteであったために経代飼育が 不可能であったが,昨年の夏に協同研究者の下でhomozygoteにすることに成功した. そこで,このラインを用いて運動ニューロンの神経終末に存在する個々のvaricosityか ら,微分干渉落射蛍光顕微鏡下でパッチクランプ法を応用して神経筋接合部電流を計測す ることを試みた.しかし,神経終末の形態があまりにも多様であることに悩まされた.そ こで,どの様な形態的変異があり得るのか,また,それ等に一定の法則性があり得るのか を確かめる試みを行ったので,その結果を報告する.

材料と方法

材料

 使用したのラインはD42-GAL4-UAS-GFPのhomozygoteである.昨2001年7月の

筆者の訪問に先立ち,Beckman Research Institute of the City of Hope(Los Angeles, USA)のDivision of NeuroscienceのDr. Kazuo Ikeda並びにその協同研究者が鋭意, 調整作成したものである.その際使用されたイーストのD42-GAL4 activatorは, D. melαnogasterで主に運動ニューロンで発現することが知られており(Brody,2001;Parkes etα1.,1998;Usui-Aoki etα1.,2000;Taghert etα1.,2001), heterozygoteの段階で筆 者によって幼虫の運動ニューロンでも発現することが確かめられている(山岡,2001).  全ての観察には,定法に従って飼育した3齢のワンダリング・ステージの個体を使用し た.本報では腹部体節の1体節当たり30対(第1節では31対)存在する体壁筋の内,第 2節の腹側斜行筋15,16と17(Clossley,1965,1978)を支配する運動ニューロンの神経 終末を対象とした.パッチクランプ法で神経筋接合部電流を計測するためにはニューロン の細胞膜が露出していなければならない.本報で筋15,16,17を選んだ理由は,これ等 の神経終末が筋上で分岐する基部当たりではvaricositiesの膜が露出している可能性が指 摘されていることである(lkeda,私信). 方法 (1)解剖  3齢のワンダリング・ステージの個体をsylgardを充填したアクリル製培養皿の底部に 微小なピンで固定し,定法に従ってpH 7、2に調整したBodenstein液中で解剖した(山岡・ Ikeda,1998;山岡,2001参照).アクリル製培養皿は直径39 mm,深さ8mm,厚さ2mm

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キイロショウジョウバエ幼虫体壁筋上の神経終末 41 で,底部にはsylgardを約4mmの厚さに流し込んで重合させてある.使用した顕微鏡で は,解剖皿として用いた培養皿の約4mmのsylgardの層及び約2mmの厚さのアクリル の底を通しても,透過光による微分干渉観察が辛うじて可能であった. ② 検鏡  DiOおよびGFZ)の蛍光は微分干渉落射蛍光顕微鏡(Olympus, BX50WI, BX-FLA) に励起・吸収フィルターセットを装填したcube U-MWBまたはU-MNIBで, Dilの蛍 光はcube U-MWGを用いて検鏡した.なお,標本は燐酸バッファーでpH 7.2に調整し た4%paraformardehydeで固定して動きを止め,燐酸バッファーで3回洗浄して検鏡, 撮影した.  DioおよびDilによる染色法は原則的に先に報告した通り95%エタノールでo.15%溶 液として行ったが(山岡・Ikeda,1998), Dilを微小ガラス毛細管に充填して圧で投与す る時,生理的食塩水中で毛細管の先端部で詰りがちであった.その傾向が著しい場合は 0.4%のtriton-X100を含むエタノールで溶解し,乳化した.しかし, Dilを長時間細胞膜 に拡散させると界面活性作用によって色素が隣接する細胞の膜に広く拡散する傾向が認め られたので,やむを得ない場合以外はtriton-Xを使用しなかった.なお,圧はマイクロ インジェクター(成茂,IM-9A)を用いて制御した. (3)画像処理  先に報告したとおり,デジタルカメラとアダプターセット(Olympus, Camedia C3030 ZOOM, DS3030U-A)を用いて画像データを記録し,photoretouchソフト(Adbe, Photo- shop ver.7.0)を用いてトリミングと明暗やコントラストの調整等を行った(山岡・Ikeda, 1998).しかし,本報の対象である神経終末がレンズの焦点深度を遙かに超えた立体構造 であるために,多くの場合,焦点面を動かしつつ3ないし12コマの画像を記録して Photoshopの,主として自動選択ツールを利用して焦点が合った部位を用いたモンター ジュを作成した.

結果と考察

対象の筋  腹部第2節右側の,体腔側から見た筋肉系を示す(Fig,1).各筋に付した番号は,基本 的にはCloss]ey(1965,1978)のルールに従って付したが, Cユossley(1978)で明らかに されていない筋,特に筋番号24はBate and Arias(1993)によった.ただし, Bate達 が提示している30種類の筋は,基本的な配置に大きな問題はないものの,筋4と筋5の 上下関係が逆転して筋4の下側(外側)に筋5が位置する等の明らかな間違いがあるので, ClossleyやHardie and Osborne(1977)等と比較し,判断する必要があった.  本報で対象とする筋は30対の筋の内で筋15,16および17である.これ等の筋は最も 腹部正中線寄りの最外側に位置する,Clossley(1978)によってventral external oblique (L-M)と呼ばれた斜行筋である.これ等の筋を対象とした理由は,.ヒ述の如くこれ等を 支配する運動ニューロンの神経終末が部位によっては露出している可能性が個人的なコミ ュニケーションで知らされたからである.それが事実ならば,神経終末varicosityの一.t

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42 山 岡 景 行        Fig.1 腹部第2節右側の筋肉系 体腔側から見た筋肉系のDiO像を示す.焦点面を動かしながら撮影した4枚の画像の焦点が合っ ている部分で作成したモンタージュ.図上方が頭部側,左が腹側.1~24の数字は腹部1体節当 たり30対存在する第2節の体壁筋の番号(Crossley,1965,1978;Bate and Arias,1993)を示 す.左下の番号はデータ番号である(以下,同様).校正バーは200μmである. つ一つから,いわゆるfocal recordingが行えるであろうし,更にはパッチクランプ法で synaptosome的な標本を作製して各種の実験を行う可能性が考えられるからである. 筋15および16の運動=ユーロン  筋15と16は共通のRP5(Sink and Whitington,1991a, b)とVUM(Landgraf et α1.,1997;Sink an Whitington,1991a),および同側性の運動ニューロンが支配する(Land- graf et al,,1997)と報告されている. RP5は,筋とは反対側に細胞体が位置する運動ニ ューロンであり,VUMはventral unpaired median neruons(Jacobs and Goodrnan, 1989)と呼ばれる神経球の腹面の正中線近くに細胞体が固まって存在する6個のニューロ ンである.  腹部第2節右側の筋15および16の神経終末のGFP像(Fig.3,4参照)を観察しなが ら微小ガラス毛細管に充填したDilを圧で投与し,逆行性に細胞体をラベルした画像を Fig、2に示す.この画像は,筋15と16を同時にDilでラベルした9事例の典型的一例で ある.Fig.2aは筋15と16上のDilを投与した部位を, Fig.2bは筋,神経球,および神 経球内の細胞体の相対的な位置を示す.Fig.2cは焦点面をずらしながら撮影した運動ニ ューロンの11コマの画像の焦点が合った部位から作成したモンタージュであり,2個の

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キイロシヨウジョウバエ幼虫体壁il川ゴ)梓託終k ・1:呂       Fig.2 腹;「:第2節右但rl筋15と16を:芝配する21固¢)連動ニューロンの維U抱体 la:‘Dilを投与した筋の部位1欠印1を示す;〔bl.神経球〔G}「大]の細胞体〔旗iliいの位.置と軸索 [矢印:1,および筋15ヒ16の頭部側末端[1m)を示一t”:ic:1ニューロンのモンタージュ画像であ り,焦点面を動かしなカ○)撮影したll枚の画傷:の焦点が合った部分をf)成した画像を示す,襖 「「]は細胞体を,ンご印は軸索を示す.‘ICIの下方に示す校.1.Eパ.一は10〔1ノ~mで、全パ.ネルに共連で ある, 運動ニューロンの細胞体が認められた.筆者がDil画像で調べた回1,筋とは反対.側の神 経球の背側に細胞体が存在したり,神経球の腹側中央に細胞体が存在して.両.側に軸索を伸 ばす‘LUnpaired”運動ニューロンを認めることはで.きなかった.これ等の画像は,筋ユ5 と16を支配する2個の運動ニューロン細胞体が筋と「nJ側に存在する.ことを示している. 焦点而から判断寸ると,これらのニューロンの細胞体は神経球の背側表面近くに存在する PR二・・一ロン.群‘I Lan⊂lgraf et ct/.1997のlevel 1}よりもやや深いf立置//eve121にW: 在㌧ていた.   これ三亨のニコー一ロンc「)糸田1]包イ本の存在f立.置は,一」二.週三のごとく、筋と1司f則の†申i径ユ求の’1キ但ljヨミ 而よりやや深い位置に存在すること,および,反対側に及んでいる樹状突起の枝の広がり の形ナこから.Landgl・al. et.α/. U9971カミneul・・1⊃rast NB7-1に山来する.ピ.た丁牙ミだ名 61∫フうこ.弓・,三_t/)iし’こ…L>な1)>」:±≧重力二ニコ_一ロンi.二[|甘6fJ.ゾ、 IJ. r(し’・7/二.   今回確認したニューロンが過±二に報.告三れているニコー一ロンと ・致するもので.あるか否 かは今、後.更に検言汁する必要がある.しかL,筋15と16∩わせて2i固の運動ニューロンが L配㌧でいることは.同違いないも(7.)と思われる.

(7)

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        Fig.:3 筋15、 IG, 17を芝日己’三.る運こll1二・コ.一一ロン・ノ)利オ:白冬末「ml像 ‘口

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(8)

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        Fig.4∬15.1・il’li,17を.ξ配・.1一る連動二二・・.一ロンの7ト1…経終末IL…IllZ:2.

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(9)

46 山 岡 景 行 筋15,16,17上の神経終末の形態  観察した38個体,左右76の,腹部第2節の筋15,16,17上の神経終末の分岐パター ンは,個体間のみならず,同一個体の同一腹部体節でも左右で差異を示すなど,変異幅が 大きいが,その法則性を把握すべく観察した結果,典型的と思われる事例をFig.3および Fig.4に示す.また,それ等に基づく神経終末の模式図をFig.5に示す.  Dipteraの幼虫体壁筋は,いわゆるsuper-contracting muscles(Hardie and Osborne, 1977)であり,収縮時には筋長が2/3以下までになる.そのために筋表面に形成される神 経終末は筋の収縮,弛緩に伴い縦横に大きく形を変える.したがって,支配する神経を切 断したり固定液で固定した筋では,各筋の収縮状態により多様な見え方を示す.Fig、3の 各パネルに示す図は,相対的に著しい収縮状態で固定された標本の神経終末であり,神経 終末の分岐の判別が難しく,大部分のvaricositiesが筋15と筋16が接する“cleft”に集 合しているように見える事例を中心に示してある.Fig.4は筋が相対的に弛緩状態にあり,  灘鷲

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       窯蓑灘霞難        籔涯ミが灘、. ぶ謬

      poster ior

    Fig.5筋15,16,17を支配する運動ニューロンの神経終末分枝の模式図 上方が頭部側,左が腹側正中線側.15~17:筋番号;a:筋15,16,17を支配する2個と思われ る運動ニューロンの,体節神経分枝d(SNd)内の前方を走行する軸索;b:同,後方を走行す る軸索.軸索aは筋16と17を共通に支配し,軸索bは筋15と16を共通に支配する.筋15と16 の神経終末からDilで逆行性にラベルした運動ニューロン細胞体が2個であること(Fig.2参照) から判断すると,軸索a,bはそれぞれ別の運動ニューロンの軸索であると考えられる.グレー に表示した筋16上の分枝は,軸索aの分枝で,常に認められるとは限らない分枝である.

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キイロショウジョウバエ幼虫体壁筋上の神経終末 47 神経終末の枝分が比較的良く識別できる事例を示す.  筋15,16,17を支配する運動ニューロンの軸索は体節神経分枝d(segmental nerve d: SNd)を経由することが知られている(Keshishian etα1.,1993,1994;Landgraf etα1., 1997).著者の観察でも軸索はSNdを経由していることは明らかである(Fig.3f, Fig.4a, d,e). SNdの全体もしくは一部が見える画像の内でFig. 2d, e, Fig.3a, b, d, eは,15, 16,17を支配する運動ニューロンの軸索が2本であることを明瞭に示している.  2本の軸索の内でSNdの前方を走行する軸索(Fig.5の軸索a)は筋15から16が接す る近くまで走って,時に二股に分かれ,一方の分枝は筋16と筋17が接する部位近くまで 走行して更に分岐して筋16と筋17上にvaricositiesを形成し,両者を共通に支配する (Fig.2d, f, Fig.3a, b, c, f).尾方の分枝は筋16上に一連のvaricositiesを形成するが (Fig.3d),軸索b(Fig.5参照)が形成する神経終末と接近し,あるいは重なるためと思 われるが,しばしば画像を認識することが難しかった(Fig.3d, e).  2本の軸索の内で後方の軸索(Fig.5のb)は筋15と16が接する近くまで走り,二叉 して筋16に伸びる分枝と筋15と16の“cleft”に沿って後方に伸びる分枝とに分かれる. 筋16に伸びる分枝は更に頭部方向と尾部方向に分岐して多数の大きなvaricositiesを持 つ神経終末を形成する(Fig.2d, Fig.3a, b, c).筋15と16に沿って後方に伸びる分枝 は“cleft”を縫うように後方に走りながら両筋に神経終末を形成するが(Fig.2d, e, Fig. 3a, b, c, d, e),更に筋15側を後方に走って更に1回ないし2回分岐する(Fig. 2f, Fig. 3b, c, d, e, f).  以上を模式的に表したものがFig.5である.図中,上方が頭部方向,左が腹側正中線 方向である.矢印aは筋15,16,17を支配する運動ニューロンの2本の軸索の内,体節 神経d(SNd)の前方を走行する軸索を,矢印bは後方の軸索を示す.  軸索の各分枝上に存在するvaricositiesの位置,数,および大きさは変異に富み,一定 の法則性は認められなかった.  以上の様に,筋15,16,17を支配する運動ニューロンの神経終末はパターンの原則は 認められるものの,極めて多様な様相を呈する.Super-contracting musclesであること による見え方の変化を勘案してもその多様性は著しく,また,実際の接合部を形成してい るはずのvaricositiesの位置,大きさに至っては全く法則性が認められないことも合わせ, 神経筋接合部が形成される過程の問題として興味深い現象である.

引用文献

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参照

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