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Analog to digital image evaluation and development of the latest imaging equipment - Yoshie KODERA Emeritus Professor of Nagoy

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Academic year: 2021

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[依頼総説(特別講演)]

1.はじめに

現在の医用画像はほぼディジタル系であるが,1895 年 にⅩ線が発見された当時のⅩ線画像はフィルムなどを用い たアナログ画像であったことはよくご存じのことであろう. Ⅹ線の医療への応用は早く,翌年の 1896 年にはすでに骨 折の診断,腎石の撮影,胃癌の治療,乳癌の治療などに用 いられ,イーストマンコダック社(当時)が CaWO4蛍光体 を用いた蛍光板による間接撮影装置を試作していた.1897 年には青色発光の CaWO4蛍光体が増感紙として開発され 用いられていたが,緑色発光の Gd2O2S : Tb蛍光体なども 開発され,長くアナログ系の代表である増感紙フィルム系 の時代が続いた.増感紙フィルム系は,写真画像としては ほぼ完成したシステムであるが,以下のような問題点も あった.1)用いられているフィルムのコントラストはγ= 2∼3 程度でラチチュードは 2 程度であるが今以上の感度 の上昇は困難,2)任意の画像を作れない,3)現像処理が必 要,4)ネットワークに対応できない,5)画像処理が不可, 6)保管場所の確保が難しい.これらの問題点が浮かび上 がった時期にディジタル画像の機運が高まっていた. 1972年に英国の EMI 社が X 線 CT を発表し,画像診断 に革命を起こすとともに,ディジタル画像の幕開けとなっ た.一般画像としてのディジタル画像は,1981 年に富士 写真フィルムが FCR(Fuji computed radiography)を発表し

たことに始まる.ディジタル画像は,単に画像の形式が変 わっただけではなく,画像評価の方法や,診断の形態,診 療の方針にも影響を与えたと考える.ここでは,これらの 考えをもとに話を進めることにする. 2.

SNR

CNR

とそれに関係する

画質評価因子について

2.1 画質評価の目的 Rossmann(Fig.1)らは,放射線画像の画質の研究におけ る重要なテーマは,診断に対する物理的画質の影響に関す る知識を得ることであると考えた[1].以下にその考えを

アナログからディジタルへ −− 画像評価と最新画像装置の開発 −−

小寺 吉衞† †名古屋大学名誉教授 〒461-8673 名古屋市東区大幸南一丁目 1 番 20 号 (2017 年 10 月 7 日受理)

Analog to digital

– image evaluation and development of the latest imaging equipment

-Yoshie KODERA†

Emeritus Professor of Nagoya University, Japan

1-1-20 Daiko-Minami, Higashi-ku, Nagoya, 461-8673 (Received on October 7, 2017)

Abstract : As the medical X-ray image shifted from the analog system to the digital system, not only the format of the image changed but also the form of diagnosis changed. We will examine this problem with mammography as an example. Mammography has characteristics of high sharpness and high contrast to detect the microcalcifications and masses. In the era when using the intensifying screen-film systems, sharpness could be secured but the contrast rise was limited. Low energy X rays were used to obtain high contrast. However, this choice has led to excessive radiation dose to the breast. Even when the mammography system shifted to the digital system, the energy of the X rays used remained low. Was this choice correct? The light and shade of the analog system could be evaluated by contrast value, but in the digital system the contrast is variable by image processing and cannot be used an index of evaluation. Therefore, the signal-to-noise ratio (SNR)or contrast-to-noise ratio(CNR)has been proposed instead of the index of contrast for digital systems. A central issue in the study of radiological image quality is to obtain knowledge about the influence of physical image quality on diagnosis. We introduce a study of the correlation between several CNR models and the actual signal detection rate. We are also studying for the purpose of developing new digital mammography that uses a Cadmium Telluride(CdTe)series photon counting detector. This system uses higher energy than the typical mammographic energy, using a tungsten target. We discussed the possibility of dose reduction and new diagnosis by substance identification when using our proposed system. Through development of this systems, we consider the possible appearance of mammography in the new digital age. Keywords : digital radiography, contrast-to-noise ratio(CNR),photon counting technology, substance identification

(2)

示す.まず,放射線医学における診断の過程の重要な情報 の伝達を研究する方法が当時すでに開発されていた.この 過程の一部は光通信理論の方法で分析されている.放射線 画像は,物理的基準または診断基準に従って評価すること ができるが,物理的な観点から最も忠実に主要な入力を再 現する画像には,最も有用な診断情報が含まれていない場 合がある.要約すると,MTF(modulation transfer function) や Wiener spectrum のような物理的評価は,画像の質(画質) を正確に伝えるが,それが必ずしも診断的価値にはつなが らないことがあり,その関係を知ることが重要であるとい うことである(Fig.2). 画像評価の因子には大きくコントラスト,鮮鋭度,雑音 (粒状性)の三つがあると言われている.最近は,これに信 号対雑音比(signal-to-noise rasio : SNR)を加えて考えるこ とが多い. 2.2 画像はアナログ系からディジタル系へ アナログ系は 1970 年代には完成したシステムとして医 療で用いられていたが,そこには先に述べたようないくつ かの問題があった.これらの問題を解決する一つの解決策 としてディジタル系の導入が検討されていた. ディジタル系の利点には次のようなものがある. 1)任意の画像処理が可能,2)ネットワークに対応(通信, 保管など),3)モニタ診断に対応,4)コンピュータ支援診 断(CAD)システムに拡張可能,5)現像処理が不要,6)経 時的な画質の劣化がない.しかし,以下のような欠点も指 摘されている.1)アナログ系と比較して画質が劣化,2)安 全性の問題(データのクラッシュ,セキュリティ). これらのディジタル系の画像に対する画質評価法も基本 的にはアナログ系と変わらないが,アナログ系で個々に評 価されていたコントラストと雑音を組み合わせたコントラ スト対雑音比(contrast-to-noise ratio : CNR)が多く用いられ るようになってきている.その理由を次に述べる. 画像がアナログ系からディジタル系に移行するにつれて 画像の評価の仕方も変化してきた.これは筆者の独断であ るが,医用 X 線画像が診断に導入された当初は,病変な どの画像がはっきり見えることが望まれていたことから画 質因子も鮮鋭度とコントラストが中心であったと考える. ところが,ディジタル画像では,鮮鋭度とコントラストは 画像処理で改善することができる.また,画像診断の目的 が多様化し,特にがんなどの淡い陰影の描出に重きを置く ようになって雑音因子の重要性が増してきた.医用 X 線 画像の雑音の主な要因は入力する X 線量子のゆらぎによ る量子モトル(quantum mottle)であり,これを画像処理で 改善することには基本的に限界がある.画像処理でコント ラストを強調しても,同様に雑音も強調されることからコ ントラストと雑音の関係が大事になる. このことを,マンモグラフィを例に説明したい. Fig.3(a)はアナログ系のマンモグラフィでコントラスト を上げる方法を示している.アナログ系でコントラストを 上昇させるには,まず被写体コントラストを上げるために 低いエネルギーを利用する.具体的には管電圧 25 kV 程 度から 35 kV 程度までを用いている.このことにより, 被写体コントラストは上昇するが患者の被曝線量は大きい. 特に皮膚の表面線量は甚大であることが予想される.また, システムのコントラストを上げるためにコントラストの高 いフィルムを用いる.鮮鋭度をよくするために片面乳剤の フィルムを用い,さらに高鮮鋭の増感紙(片側のみ)を用い るためにシステムの感度は低い.このため,量子モトルに 由来する雑音は大きくなる. ディジタル系ではコントラストは画像処理によって高く することができるので,なるべく SNR の高い系を用いれ ばよい.SNR を高くするためにはコントラストを上げる か雑音を低くする必要があるが,低エネルギーの利用は被 曝線量の観点から望ましくないため,高いエネルギーを用 いることで被写体コントラトは低くなるが,検出器で吸収 される X 線の量も増えるので,量子モトルは低下する. このことで画像全体の SNR が良くなれば,画像処理でコ ントラストを上げることが可能となる.実際にはX線スペ クトルや検出器の吸収特性などを考慮する必要がある. この方法については,我々の研究室で管電圧 50 kV を 利用したシステムでのシミュレーションと実機による実験 で実証している[2,3]. 2.3 信号と雑音 我々が普段何気なく言っている信号(signal)とは何であ ろうか.実はそこには工学的な場合と医学的な場合で意味 が異なるのである(Fig.4). Fig.2 診断的画質に影響する因子 (a) (b) Fig.3 医用 X 線画像でコントラストを上げる方法 (a)アナログ 系の場合 (b)ディジタル系の場合

(3)

工学的には検出器に入る X 線そのものが信号である. これは,テレビやラジオで映像信号や音声信号を捉えるこ と,カメラで被写体の光を検出することと同じである.こ れに対して,医学的な信号とは,画像の中の病変など医学 的に意味を持つものを指している場合が多い.このことを 取り上げた理由は,画像評価で良く用いられている DQE (detective quantum efficiency)や NEQ(noise equivalent number of quanta)はここでいう工学的な信号であり,ROC 解析(receiver operating characteristic analysis)で扱う信号は 医学的信号であり定義が異なるからである.我々は,画像 評価において,このように定義の異なる二つの「信号」を 扱っていることに注意が必要である.雑音(noise)は,信 号以外のものをさすことが多い. もう一つ,良く混同されるものに信号とコントラストが ある.信号は上記で述べたとおりであるが工学的な信号は, 均一に照射された場合は,X 線の分布も理想的には均一に なる.したがって,出力の画像の平均値(x)を信号とみな す(Fig.5 上). x n xi i n = =

1 1 しかし,実際には入力する信号は揺らいでおり,この場合 の雑音は信号からの偏差(Δxi)で考える(Fig.6).一般的に は偏差の平均である標準偏差(standard deviation : SD)で表 す. 1 1 ̅  ここで,Δx2は分散(variance)であり,標準偏差は分散の 平方根で与えられ,  となる. SNR(工学的な SNR)は以下の式で表される. ̅ ̅  DQEや NEQ で用いられる SNR は,ここで定義した SNR を用いている. これに対して,コントラストは医学的信号に対応し,何 らかの被写体の構造に対応した X 線強度の平均値からの 差であらわされる(Fig.5 下).したがって,CNR(医学的 SNR)は, CNR =CN となる.ROC 解 析 や 二 肢 強 制 選 択 2 AFC(two-alternative forced choice)法で用いる SNR はこの医学的 SNR である CNRである. 2.4 SNR(CNR)と視覚評価の関係 初めに述べたように,物理的な画像評価の因子が実際の 診断的価値を持つのかという問題は,医用画像の評価にお ける重要な問題である.これまで多くの研究があると思う が,この問題の起点となる研究として取り上げたいのが, 次 に 挙 げ る Loo ら の 物 理 的 画 質 因 子(SNR)と ナ イ ロ ン ビーズの検出における観察者実験の比較研究である[4]. この研究では,ナイロンビーズの直径,画像の拡大率,管 電圧,付加フィルタ,増感紙フィルム系,自現機,現像温 度,フィルム濃度,観察距離を変えて 37 の組み合わせを 設定し,ナイロンビーズを信号と見立てて 2 AFC の手法 を用いて信号検出率を求め,八つの SNR(医学的 SNR,つ まり現在の CNR)との相関を求め,どのモデルが最もよく 信号検出率と相関があるかを調べている.これら八つのモ デルを次に示す. Ⅰ.表示モデル(Displayed models) 1) 振幅モデル(Amplitude model) 現在一般に用いられている CNR. SNR ಙྕࡢࣆ࣮ࢡࡢ⃰ᗘ 㞧㡢ࡢ RMS ⃰ᗘࡺࡽࡂ  0  D(0):信号のピークの濃度S σ2:濃度のゆらぎ(分散) Fig.6 偏差の考え方 Fig.4 工学的な信号と医学的な信号 Fig.5 信号(S )とコントラスト(C ),雑音(N )の考え方

(4)

S(S u):信号の空間周波数特性

S(u):雑音の空間周波数特性(Wiener spectrum)W

u:空間周波数

2) 二次内容モデル(Quadratic content model) NEQ(u)の積分に等しい.

SNR ಙྕ⃰ᗘࡢ஧஌ࡢ✚ศ

⃰ᗘࡺࡽࡂࡢ㞧㡢ศᩓ





3) 統 計 的 決 定 理 論 モ デ ル(Statistical decision theory model) 不確かさに左右される状況下で,得られている情報(デー タ)から結果が最良になるような行動を決定する理論. SNR  Ⅱ.視覚特性を考慮したモデル(Perceived models) 視覚の鮮鋭度特性を含めたモデル.

4) 視覚の振幅モデル(Perceived amplitude model)

SNR 

VRF(u):視覚系の MTF

5) 視覚の二次内容モデル(Perceived quadratic model)

SNR 

6) 視 覚 の 統 計 的 決 定 理 論 モ デ ル(Perceived statistical decision theory model)

SNR 

Ⅲ.その他のモデル

7) マッチドフィルタモデル(Matched filter model) 雑音や評価対象としていない信号を含んだ観測波形から 目的とする信号波形を検出する手法.

SNR 

8) 情報容量モデル(Information capacity model) 情報量やエントロピー(平均情報量)は,ある事象が起き た際,それがどれほど起こりにくいかを表す尺度.これを 最大にする手法. log  C C : 情報容量(information capacity) これら八つの SNR(CNR)のモデルの中で,検出率と相関 の高かったのは視覚の統計的決定理論モデル(Perceived statistical decision theory model)とマッチドフィルタモデル

(Matched filter model)の二つであった.あまり相関のな かったのは表示と視覚の振幅モデル(Amplitude model)と 二次内容モデル(Quadratic content model)の 4 組であった. このことから,現在マンモグラフィの評価などでよく用い ら れ て い る CNR で あ る 表 示 振 幅 モ デ ル(Displayed amplitude model)では視覚との相関はあまりないことがわ かる.したがって,このモデルは,QA/QC やシステム間 の相対的な比較には適用可能であるが,視覚との関係を見 るときには注意が必要である.ここで取り上げた視覚モデ ルでは視覚系の MTF は考慮しているが,視覚内の雑音特 性については考えていない.視覚系の雑音特性としては, 一般に内部雑音(internal noise)といわれるものが考えられ ている(Fig.7). 内部雑音を直接求めることはできないが,種々の方法で 推定する方法が考えられていて,これを考慮することによ り,視覚特性による検出率との相関はより高くなることが 知られている. 3.

物質同定の可能性

ディジタル画像の利点については先にいくつか挙げたが, 近年もう一つのアプローチが注目されている.それは,X 線のエネルギー情報を利用した生体組織の物質を同定する ことで,これまでの画像情報のみの診断に新たな付加情報 が得られる可能性がある.これを可能にするためには,通 常用いられているエネルギー積算型の検出器ではなく, フォトンカウンティング検出器を用いる必要がある.物質 同定は医療のみならず宇宙の映像やその他多くの分野で期 待されている.医用画像では,CT 画像で注目されている が,市販されているのはマンモグラフィ領域の 1 機のみで ある.我々は,この市販の装置(検出部分にシリコンを用 いている)とは異なるカドミウムテルライド(CdTe)系を検 出素子とする全く新しいフォトンカウンティング装置を企 業と共同で開発中であり,物質同定についても検討してい るが,その過程で気の付いた問題点と可能性について簡単 に紹介することにする. 3.1 実効原子番号 生体組織の物質を同定するということは,具体的には生 体組織の個々の物質の原子を特定すること,実際には原子 番号を求めることであるが現実には難しい.まず,生体組 織は多くの物質から構成されている.理想的には,この生 体組織を構成している個々の原子を特定することであるが, 画像からそれを行うことは不可能である.なぜなら,検出 器を構成する画素はある大きさをもっており,その大きさ 以下の領域の組織を構成する原子を個々に同定することは できないからである.そこで,実際には生体組織の混合物 の画素内の組成の原子の原子番号の平均値である実効原子 Fig.7 目と脳のシステムに内在する内部雑音の概念

(5)

(⒐HFWLYHHQHUJ\

NH9



(⒐HFWLYH$WRPLF

1XPEHU

































番号(effective atomic number)を求め,それから生体組織の 物質を同定する方法が考えられている.一部の読者には, この実効原子番号という用語は聞きなれないかもしれない. 筆者自身がそうであった.一般的な物理学の用語ではない. この用語は,主に医療(特に医用 X 線画像)の世界で用い られている.実効原子番号には,原子の実効核電荷と,化 合物または物質の混合物の平均原子数を計算する二つの異 なる意味があり,両方ともZeffと略記される.ここでは後 者の意味で用いる.この場合,実効原子番号はその物質と 同じ割合で光子の減弱をする仮想の元素の原子番号を意味 する. 物質の減弱特性から実効原子番号を求めるのであるが, 減弱特性はX線のエネルギーに依存する.単色X線を用い れば正確に実効原子番号を求めることができると考えられ るが,医用 X 線画像では連続 X 線を用いていることから 特定することは難しい.そこで,フォトンカウンティング 技術が必要になる. テキストなどには, 人体 7 脂肪 5.92 空気 7.76 骨 13.8 筋肉 7.42 水 7.42 などの数値が掲載されているが,これらはどのようにして 求められたのか.実効原子番号の求め方には次の三つがあ る. 1) 単純な質量加重平均 2) 放射線の相互作用と少し関係を持つ非常に近似的な冪 乗則型の方法(Moseley 1913[5],Mayneord 1937[6]) 3) 相互作用断面積(interaction cross sections)に基づく計

算を含む方法(Taylor 2012)[7] 1)は実際の組織の組成がわからなければ計算できないこと からここでは未知の組織の計算方法である 2)と 3)につい て簡単に説明する. 方法 2:実効原子番号を計算する最も一般的なもの.次の 単純な冪の式を用いる.  ここで,i 番目の元素 Ziの相対的な電子の数の割合はfiで 与 え ら れ,∑fi=1 と な る.Mayneord は 指 数 m に 2.94 の 値を使用した[6]. 【例】水(H2O):二つの水素原子(Z =1)と一つの酸素原子(Z =8)から構成,電子の総数は 1+1+8=10,水素の fn=2/10, 酸素のfn=8/10 であるから, となる.先のテキストの数値はこの方法で求めたことがわ かる.Spires ら(1946)[8]は,低エネルギー X 線において 限られたいくつかの化合物についてZ2.94の線形関係があ ることを示しているが,多くの化合物が同じ傾向にはない ことも言及している.連続 X 線エネルギーでは,実効原 子番号はエネルギーによって大きく変化する(Taylor ら 2008)[9]. Taylor ら(2012)[7]は,線源のスペクトルに対して重み 付けすることで,より正確な単一値Zeffが得られることを 示した.Zeffを決定するための断面積を基にした方法は, 先の単純な冪乗則の方法よりも複雑であり,そのため自由 に利用可能なソフトウェアが開発されている. 方法 3:実効原子番号Zeffは原子番号と幾分不規則である 光子減衰データに根本的に依存する.しかし,Zeff値を得 るために利用される可能性のある断面と原子番号との間に は滑らかな相関が存在する.複合材料の場合,構成要素の 総質量減衰係数は次式で表される. ここで,wiは構成要素の割合の重み係数,(μ/ρ)iは構成要 素の質量減弱係数である.

Zeff値 を 得 る た め に 用 い る 原 子 断 面 積(atomic cross

section)は次式であらわされる. ∑ ここで,NAはアボガドロ数,Aiは複合体内の元素i の原 子量である. Zeffは,原子断面積と原子番号との間の滑らかな相関を 利用して決定することができる.単一値の実効原子番号は 単に以下の式を用いて評価される. ψ(E )は 1 に正規化されたエネルギースペクトルである. Fig.8 はこの式から計算されたエネルギー 10 keV∼50 keV での原子断面積と原子番号の関係を示すグラフ,Table 1

Fig.8 原子断面積と原子番号の関係(Z =1∼20)内挿関数の値は 実効原子番号を表す

Table 1 相互作用断面積に基づく方法(方法 3)により求めた水 (H2O)の実効原子番号の値

(6)

に水の実効原子番号の値を示す. また,Fig.9 に Table 1 の値をグラフにしたものと他の 研究者の計算した水の実効原子番号のグラフ[7]を比較し たものを示す.我々の結果は,他の研究者の結果とほぼ等 しい. 方法 2 で求めた実効原子番号の値が 7.42 であるから, 実効原子番号は,方法や X 線のエネルギーで大きく異なっ ていることがわかる.したがって,正確に実効原子番号を 求めるためには,用いるエネルギーの値とマーカとなる実 効原子番号のわかっている物質との正確な関係を求める必 要がある. 3.2 フォトンカウンティング技術 ディジタル画像系の X 線検出器に用いられる素子は, 通常,各画素で吸収した X 線エネルギーを積算した値の 相対値を画素値として画像を形成している.しかし,医用 画像で用いられる X 線は一般に連続 X 線を用いているこ とから,広いエネルギー領域に分布する.これらのエネル ギー情報を利用することは古くから考えられていた.現在 もよく用いられているのは,管電圧やフィルタを変えて得 られる二つの線質を利用して作成した 2 枚の画像の差分を 取るエネルギーサブトラクションである.フォトンカウン ティング技術はこのエネルギーサブトラクションと混同さ れることもあるが,一度の撮影で二つから数百のエネル ギー帯域の X 線量子(光子 : photon)を計数(count)すること が可能で,これらのエネルギー情報をもとに物質同定の研 究が多く行われている[10]. 3.3 乳房領域における新しい画像と物質同定の試み 我々の研究室では,マンモグラフィの領域で通常用いる エネルギーよりも高いエネルギー(管電圧 50 kV)で CdTe 系のフォトンカウンティング検出器を用いた装置の開発を 目指している.シミュレーショントと最近では実機を用い た研究を行っており,新しく高い CNR を持つ画像の提案 や物質同定の可能性を示唆する結果[2,3,11]を得ている. また,近隣の臨床病院の協力を得て,乳がんの摘出乳房の 画像[12]も順次得ており,新しい表示形式による画像や, 実効原子番号による画像の描出も試みている.残念ながら, まだ,紙面で公表できる段階ではないので,ここでの公開 は避けるが,今後随時紹介する予定である. 4.

おわりに

医用画像がアナログ系からディジタル系に移行したこと による様々な事柄について述べた.また,昨今良く用いら れている CNR の意味や視覚による検出器との関係につい て述べ,問題点を指摘した.さらに,ディジタル系におけ る CNR の持つ意味と,CNR を大きくするための装置の開 発やフォトンカウンティングによる物質同定の可能性につ いて述べた. 参考文献

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Fig.9 水の実効原子番号の他の研究者[7]のグラフ(右)と我々の 計算(Table 1 の値)の結果(左)

Table 1 相互作用断面積に基づく方法(方法 3)により求めた水

参照

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