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イネ胚乳澱粉のアミロース含有率に関する育種学的 研究

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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

イネ胚乳澱粉のアミロース含有率に関する育種学的 研究

白石, 真貴夫

九州大学農学研究科農学専攻

https://doi.org/10.11501/3065535

出版情報:Kyushu University, 1992, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第6 章 総合考察

ト ウ モ ロ コ シ では, 穀粒澱粉に 関する多様な変異体が 見い だ され て おり, それ らは食糧とし てばかり でなく,

家畜飼料や加工食品工業の重要な原料とし て利用され て い る. 今後, 米の利用拡大のためには, 穀粒の主要成分

である澱粉の多様化を図る こと が重要と考え, 本研究で は澱粉成分の ア ミ ロ ー スの含有率を正確に評価できる測

定法を開発し、 その方法に よ っ て既存の品種の ア ミ ロ ー ス含有率に 関する変異を把握し た. 加え て, イネ匹乳の 主澱粉である ア ミ ロ ペクチ ン に 関し て も変異が存在する こ とを明らかにする こと ができた. これらの変異は, 多 様な育種目標に 対応するための素材とし て重要であ るば かりでなく, 澱粉の生合成経路に 関与する遺伝的制御機

構を明らかにする うえでも有用な材料と 考えられる. 本 章では, イネ隆乳澱粉に 関する変異を拡大する うえでの 問題点と今後の研究の展望に つい て, 育種学的観点と遺 伝 ・ 生化学的観点か ら総合的に考察し た.

[ 1 ]育種学的観点から

米は澱粉を主成分とする澱粉性食品であり, その澱粉

- 133

(3)

分子の構造的変化は, 米飯の食味や炊飯特性に 大き く影

響する. 特に イネ服乳澱粉に 占め る ア ミ ロ ー ス成分の割

合 (ア ミ ロ ー ス含有率 ) は, 食味と 密接に関係する こ と

が指摘され, 低ア ミ ロ ー ス米の食味評価は高い (倉沢

1969) .

稲津(

1979) は, 粘りの少ない北海道産米の食

味改善の方向とし て低ア ミ ロ ー ス品種育成の重要性を指

摘し た. 国内では, イネの育種に おい て, 低ア ミ ロ ー ス

化に よ る良食味品種の育成を目指し て, ア ミ ロ ー ス含有

率を選抜指標にする事例 が 増 え つ つ ある (国広19 8 9,

中川 ・ 古賀1989) . 既に北海道では, 低ア ミ ロ ー ス遺伝

子を導入し た 「彩j など良食味品種 「 コ シ ヒ カ リ」 並み

の 食味を有する新品種が次 々と 育成されてい る (佐 々 木

1991) . と こ ろが, 同じ ア ミ ロ ー ス含有率を示す低ア

ロ ー ス米に ついて も食味の評価は必ずし も同じ ではなく,

単に 低ア ミ ロ ー ス化するだけ では食味の向上し ない こ と

が指摘されてい る (佐 々木 1991) . こ の こ と は, 単に 米

飯の炊飯特性がア ミ ロ ー スの量だけ で決定される もので

はなく, 他の多くの要因が関与し て い る こ と を示し てい

る. 従 っ て, 今後さ らに 米飯の良食味化を図るために は,

低 ア ミ ロ'ー ス化以外の育種戦略を立て る こと が必要であ

- 134 -

(4)

イネ腔乳澱粉は, α - 1 . 4結合からなる直鎖構造の ア \ ロ ー スと α - 1 . 6結合を介し た分岐構造からなるア ミ ロ ペ クチ ン の 2 成分か ら構成さ れるが, 澱粉中のア ミ ロ ー

スの含有率は高く ても 30%程度であり, 残り 70%以上 は ア ミ ロ ペクチ ン で占められる. こ の こ と は, イネ佐乳 澱粉の主成分がア ミ ロ ペクチ ン であり, その分子構造や 分子量の差異は, ア ミ ロ ー ス以上に 米飯の食昧に 大きく

影響すると推察される. このよ うに ア ミ ロ ペクチ ン の 炊飯特性に 果たす役割の大きさが容易に 予想されるに も 拘らず, ア ミ ロ ペクチ ン の遺伝変異に つい ては, ほとん ど注目され て こなか っ た. その理由とし て, ①常食と す る横性品種の匪乳澱粉が類似構造を共有する ア ミ ロ ー ス とア ミ ロ ペクチ ン から構成される た めに, それら の分別

定量が困難な こ と, ②ア ミ ロ ー スに 比べ, ア ミ ロ ペクチ ンがより複雑な生合成経路をもち, ア ミ ロ ペクチ ンに関 し て多様な遺伝変異のある こ と, ③ア ミ ロ ペクチ ン生合 成に 関する遺伝的制御機構の解明が進ん でい ない た め,

変異の探索が困難であ っ た こ とな どが挙げられる.

本研究'では, まず, ア ミ ロ ペクチ ン共存下でのア ミ ロ

- 135 -

(5)

ー ス定量法, さらに は ア ミ ロ ペクチ ン 中の長鎖 α - 1 . 4結 合分枝を含む ア ミ ロ ー ス含有率 見かけの ア ミ ロ ー ス合

有率 一 測定法を設定する ことに よ っ て, 変異究明の端を 開い た (第2章) 次い で, ア ミ ロ ー スを含まず, ア ミ

ロ ペクチ ン の みから構成されるとい われる嬬性品種を研 究対象とし て取り上げ, それらの遺伝変異に つい て検討 した. その結果, 橋性品種中に は見かけの ア ミ ロ ー ス含

有率に幅広い変異がある ことを明らかにし た (第3章) しかし, これら 嬬性品種の澱粉に は ア ミ ロ ー ス合成酵糸 の 1/ .� タ ン パク質が検出されなか っ た ことから (第 4章,

第5 章) ア ミ ロ ー ス は生成され ていない と結論された.

こ の こ と は, ア ミ ロ ペクチ ン の分枝構造に 関し て品種間 変異が存在する こ とを示唆し ている.

Juliano and Villareal

(1987) は,

嬬性品種から調 製し た ア ミ ロ ペクチ ン の分子構造を調査し, ゲル鴻過の 溶出パタ ン に 品種間差異がある こ とを報告し てい る.

また, 槍作( 1988) は, 額性品種と 嬬性品種から調製し た ア ミ ロ ペクチ ン の単位鎖の分布ク ロ マト グラ ムを比較 し た結果, 梗性品種由来の ア ミ ロ ペクチ ン に, 嬬性品種 由来のア ミ ロ ペクチ ン に はみられない “ 超長鎖 " が存在

一 136

-

(6)

す る こ とと, こ の “ 超長鎖 " の存否が嬬性と綬性の ア \ ロ ペクチ ン の大きな相違であ ると報告してい る. しかし,

上記の報告では, 嬬性に 関し て 1 品種を供試し た に 過ぎ ない. 本研究では, 多数の嬬性品種を用い て λ fTl.I( (第2 章第2節) を調査し, 幅広い変異 が認め られた こ とから,

様性品種の中に “ 超長鎖 " をも っ品種の存在する可能性 を 指 摘 した. また, Takeda θt a/. ( 1987) は, 日本型 3 品種と印度型 3 品種から調製した ア ミ ロ ー ス と ア \

ロ ペクチ ン を比較した結果, 実際の ア ミ ロ ー ス含有率は,

日, 印品種間でほ と ん ど差がない こ とを報告してい る.

さ らに, ア ミ ロ ー ス含有率が高い印度型品種の ア ミ ロ ペ クチ ン の “ 超長鎖 " 成分量が, ア ミ ロ ー ス含有率の低い 日本型品種の それに比べて多い こ とを明らかにし, 日,

印品種間で認め られた ア ミ ロ ー ス含有率の差異は, 実際 の ア ミ ロ ー ス含有率の差異ではなく, 印度型品種の ア \

ロ ペクチ ン の ヨ ウ素呈色値が日本型品種に比べて高い こ とに起因すると指摘し ている. こ うした研究結果から,

今後, ア ミ ロ ー ス含有率を指標とし てきた イネの成分育 種に おい て, ア ミ ロ ー スとともに ア ミ ロ ペクチ ン の構造 の差異を・十分に考慮する必要があ ると考え る.

- 137 -

(7)

最近, ア ミ ロ ぺクチ ン の構造の差は, ゲ ル 浦、 過の溶出 パター ン ばかりでなく, 分子量の違い に も起因する こ と が示され てい る. 槍作 1 9 8 8 ) は サ ゴヤ シ 澱粉の高粘度

と低粘度との試料の問で大きな差異があり, 高粘度のも

のの分子量が大きい こ と を 指摘し て い る Takeda θt

al.

(

1987) は, 日, 印の綬性品種から調製し た ア ミ ロ ペクチ ン の分子量に 差がある こ とを認め, 日本型品種の

ア ミ ロ ペクチ ン の分子 量 が , 印度型品種の約 2 倍であ

る こ とを明らかに し てい る. また, 嬬性品種から調製し

た ア ミ ロ ペクチ ン の分子量が, 横性品種由来の ア ミ ロ ペ クチ ン のそれ より大き い こ とも 報告 さ れ て い る (槍作

1988) . 米飯の粘弾性に は多様な変異があり, 米飯の炊

飯特性と深い 関係に ある こ とが知られ てい る

Ju1iano and Pascual 1980). イネ怪乳澱粉に おけ る分子量と粘

弾性との関係解明は今後の問題であるが こ こ では, ア

ミ ロ ペクチ ン 分子の鎖長分布と分子量の測定が, 重要な

課題となろ う.

日, 印品種間の炊飯特性の差が大きい こ とは よく知ら

れ てい るが, こ のよ うな “ 超長鎖 " 成分量の差異や分子 量の差異が米飯の食味や炊飯特性と どのよ うに 関係する

- 138 -

(8)

のか, ま た, どのよ うな遺伝変異が存在し, ど のよ うな 遺伝子が関与し てい るのか, 早急に 検討する必要があ ろ

つ.

一方, ア ミ ロ ー スに つい ては, これま で そ の量的な差 ばかりが;主目され, 質的な差に つい ては ほ と ん ど注目さ れ てい ない. 最近, イネの ア ミ ロ ー ス鎖に は, 直鎖に 加 え て分岐も存在する こ とが報告され てい る Takeda θf

a / .

1 9 8 6 )

ア ミ ロ ー スの分岐数や分子量の大きさは,

前述の ア ミ ロ ペクチ ン と同様, 澱粉の粘性に 強く影響す る こ とが考え られる. これま で, イネ澱粉から調製し た ア ミ ロ ー スの分子構造に 大きな差異は認め られ てい ない (槍作 . しかし, 熱水に 溶けない ア ミ ロ ー スの量 に品種間で差があ る 例 が 報 告 され

(

Chinnaswamy and

Bhattacharya

1986)

, 糊化する際に ア ミ ロ ー スの溶解

性が温度に よ っ て異なる変異がある可能性も考え られる.

本研究では, 綬性品種から検出される ん'.� タ ン パク質の 量に 明らかな差がある Wx-H 型と Wx-M 型品種群の存在 を明らかに し た (第4章) . こ のよ うな差異が, 単に ア

\ ロ ー スの生合成能の差異を示すのか, あ るい は生合成 される ア- ミ ロ ー スに質的な差異があるのかに つい ても,

- 139

(9)

今後検討する必要があ ろ う.

本研究では ア ミ ロ ペク チ ン の構造変異を探す手段と し て, ①梗性品種 に つ い て は , λ m と ヨ ウ 素呈色度

620 nm) の組合わせ (第 2章 ②嬬性品種に つい て

は, 配.t タ ン パク質がない こ とを確認し た う え での λ 酬 の比較が有効である こ とを明らかに し た (第 4章) こ れらの方法は, ア ミ ロ ペクチ ン の長鎖の有無を確認する こ とはでき るが, 詳細な鎖長分布の解析や分子量は測定 できない. こ の点, ア ミ ロ ペクチ ン の分子構造を解析す る方法とし ては, ゲル鴻過法の適用が有力と みられる.

最近, ゲル鴻過法に 使われ る ゲルの支持体とし て多様な ものが考案され, 高速液体ク ロ マト グラ フ H P L C ) に よ る微量分析も可能である (槍作 1988) . ア ミ ロ ペ ク チ ン や ア ミ ロ ー スを含めた澱粉の分子構造を効率的に 調査 す る た めに, HPLC を用い た簡易ゲル鴻過法の実験系を

確立する必要がある.

糊化特性も また, 米飯の食味や炊飯特性に影響を与え る要因であり, その遺伝変異は育種素材と し て重要であ る. 本研究では, アル カ リ崩壊性あるい は熱糊化性と い っ た糊化-特性に 関する遺伝変異が存在する可能性を示し

- 140

(10)

た (第5 章) アル カ リ崩壊性の遺伝解析は, 徐 々 に 明 ら か に な り つ つ あ る が (工藤 1968, McKenzie

and Rutger

1983), 熱糊化性の 遺伝解析は , ほとん ど

進ん でい ない. こ の ことに つい て, ア ル カ リ崩壊性の検

定は, 単粒分析が可能である のに 対し, 熱糊化性の分析 は, 大量の澱粉試料を必要とする こ とに よる. この点,

本研究で採用し た佐藤ら ( 1988) の フ ォ ト ペー スト グ ラ フ ィ ーは単粒分析が可能である ことから, この方法を用 い て熱糊化性の遺伝解析を進め る必要があ ろ う.

さらに, 本研究では登熟温度の変化に 対する反応に 品 種間で差がある ことを明らかに し た (第5 章) イネを 作付けする地域の気象条件は複雑多岐であり, このよ う な複雑な気象条件に 対し て安定し た 品質を も っ品種を育 成する こ とに より, 均質性と多収性を兼備させ, 市場の 要求に応じ た イネの生産態勢を整え る必要がある. その ために は, 栽培品種の気象条件に 対する反応の違いを把 握し, 品質が気象条件に 左右されない品種を育成する必 要がある. 本研究では ア ミ ロ ー ス含有率に つい て, 登熟 温度の変化の影響をほどん ど受けない品種の存在を明ら かにし た (第5章) これ らを素材に し て, 環境変動に

141

(11)

対し て安定し た反応を示す品種の育成の可能性を検討す る必要があ る.

[ 2

] 遺伝 ・ 生化学的な観点、 から

植 物 に お け る 澱 粉 の 生合 成機 構は , Le10ir et a/.

1 9 6 1 ) の澱粉合成酵素の発見以来, 植物生理

生化学 の分野 で急速に解明が進め られ て い る. 一方, 澱粉の遺 伝的制御機構に つい ては, 一応の モ デル が提案され てい るも のの, い まだ不明な部分が多い (Sha n n o n a nd

Garwood 1984)

ア ミ ロ ー スと ア ミ ロ ペクチ ン の生合成に は, 頼粒↑生と 可溶性の存在形態、 を異に す る 2 種の澱粉合成酵素が,

に関 与 す る こ と が 報 告 さ てい る

Murata and Akazawa 1966). 澱粉合成酵素は , 基質と し て UDP-グ ル コ ー スよりも AD P -グル コ ー スを利用し,

α -

1 . 4 結合

のグル カ ン生合成に関与する. すなわち, ア ミ ロ ー スの 生合成に は頼粒性酵素が関与し, A

D P -グル コ

スと UDP

グル コ ー スを基質とし て利用し て, ア ミ ロ ー スの非還 元末端ヘグル コ ー スを転移する. こ れに 対し, ア ミ ロ ペ クチ ンの生合成に は可溶性酵素が主に関与し,

ADP-グル

コ ー スの-みを‘基質とし て利用し て ア ミ ロ ペクチ ン の単位

142 -

(12)

鎖を生成する. さらに, ア ミ ロ ペ ク チ ン の 分 岐 点で あ る α 一1 . 6結合 の 生 成に は 枝 っく り 酵 素 ( branching

enzyme) と枝切り酵素 (debranching enzyme) が関与す

る (Ju1iano

1985) .

こ のよ うに ア ミ ロ ー スと ア ミ ロ ぺ

クチ ン は別 々 の機構で生合成され る が, それ ぞれ の メ入に1 成過程は相互に影響し, その遺伝的制御機構を複雑に し

て い る.

本研究では, ア ミ ロ

ス合成酵素 である 1/ .t タ ン ノてク 質の有無に より, 品種の樗性お よびギ更性を明確に 分ける

こ とが で き た. さらに, 梗性品種に つい て は んl.t タ ン パ ク質量の差か ら, さ Wx -H 型品種群と W x -M 型品種 群の 2 群に分けられ る ことを明らかに し,

νk 遺伝子座

で 1/ r 遺伝子の複対立系が分化し て い る可能性を示唆し

た (第4章) 不し ながら, 1/ ..\"

特に, 同じ見かけの ア ミ ロ ー ス含有率を タ ン パク質含量に 差がみ られ た こ と は 興味深い. こ の こ と は, ア ミ ロ ー ス合成酵素であ る 1/ .�

タ ン パク質に質的な差があるか, あ るい は 1/ J・ タ ン ノてク 質の ア ミ ロ ス生合成能力に差があ る こ とを示し てい る.

今後, /,'xタ ン パク質の ア ミ ノ酸組成を含めた構造解析や 酵素活性に つい て調査する必要があ ろ う.

- 143 -

(13)

ま た

ア ミ ロ

ス含有率を変動 させ

要因に は du 遺伝子

Okuno θt a/. 1983, Sano θt a/. 1985b,

Yano

e

t

a

/ . 1 9 8 8 )

のよ うな 島I � 遺伝子座と は 独立の調節糸

の関与が指摘され て い る. イネ降乳澱粉の ア ミ ロ ー ス合 有率に関する遺伝的制御機構は, ア ミ ロ ー ス合成に 関 する

ν,\'

遺伝子座を中心に解明されると考え られるが

その際, ν1 遺伝子座内の複対立系の分化と, du 調節遺 伝子系の関与を分け て考え る必要があ る.

ア ミ ロ ペクチ ン の生合成は, まず α

- 1

.

4

結 合 を も っ 単位鎖の生合成が行われなければな らない が, これに は

種の可溶性澱粉合成酵素が関与する こ とが報告され て

おり (Macdonald and Preiss

1983. 1985),

分 岐 構 造

の形 成 に は, branching enzyme と debranching enzyme

の存在が欠かせない. それぞれの酵素には ア イ ソ ザイ ム が存在する. ト ウ モ ロ コ シ の amylose extender 遺伝子

3θ)

は, branching enzyme

3

種ある ア イ ソザイ ム

II

a, の うちII b の構造遺伝子であ ると推定 され, こ の遺伝子を劣性に持つ変異体は, 分岐が少な く

長鎖を多 く 合 む 、、 クチ ン を 作る Boyer and

Preiss

1 9 8 1

Hedman and Boyer ま た ト ウ モ

- 144 -

(14)

ロ コ シ の SuJ 遺伝子は, d e b r a n c h i n g e n z y m e の 3 種

あ る ア イ ソザイム

1, II, 1II) の うちI!lの構造遺伝子

であ ると推定され, Su

g

a r y

-1

変異体は , 高度に枝分れ

し, 高分子の水溶性多糖を作る (P a n a n d N e 1 s 0 n 1 9 84 )

イネでも, ト ウ モ ロ コ シ と同様に amylose extender

変異体 (Yano ef a/. 1985) や sugary 変異体のよ うな

糖質変異体の存在も明らかにされ て い る (Ya n 0 θt a / .

1984. Matsuo θf

a/.

1987). これ らに 加え, 本研究で

は . ア ミ ロ ペクチ ン の構造変異が存在する 可能性 を 示し

た (第3章,

第4章)

これ らの変異体は, イネの種子

貯蔵澱粉の生合成の遺伝的制御機構の解明に 多くの情報 を提供すると期待される. ア ミ ロ ペクチ ン の変異体を効

率的に 検出するために は , 澱粉合成酵素や b r a n ching

enzyme, debranching enzyme のよ う な分岐構造の形成

に 関与する酵素を単離 ・ 精製し, 本研究で行 っ た ウエ ス

タ ン プ ロ ッ テ ィ ン グ法や EL 1 S A 法のよ うな免疫化学的

手法を利用する ことが期待される.

澱粉の生合成経路を解明する ために は, 澱粉の佐乳中

への蓄積過程に つい て 調べる ことが重要と思われる. 本

研究で は, ア ミ ロ ー ス含有率の変動に登熱温度が影響す

- 145 -

(15)

る こ とを明らかに し た (第5章) . 澱粉は ア ミ ロ プラ ス 卜 ヘ特異的に 集積さ れ る. Asaoka θf a / .

( 1985b)

は,

登熟初期に おい て ア ミ ロ ペクチ ン の蓄積速度が ア さ ロ ー スのそれ より早い こ とを報告し た こ とから, 高温登熟で の ア ミ ロ ー ス含有率の低下は, 単に ア ミ ロ プラ スト内で の ア ミ ロ ペクチ ン の含有率が高ま る こ とが原因とも考え られ, du 遺伝子のよ うな調節遺伝子が ア ミ ロ スの集 積速度を低い 方ヘ制御し ている可能性も考えられ る. ま

た, w x -H 型品種群では, ア ミ ロ ー ス含有率が登熱温度 の影響を受けなか っ た こ と から , Wx-H 型品種群の ア ミ

ロ ー スと ア ミ ロ ペクチ ン の集積速度を制御する機構が,

Wx-M 型品種群のそれと異な る も の と考える.

以上のよ うに, ア ミ ロ ー ス含有率の変動に関し て は,

ア ミ ロ ー スと ア ミ ロ ペクチ ン の生合成系に関与する遺伝 的制御機構を分け て解明し ていく こ とが最善と考える.

- 146 -

(16)

摘 要

本研究では, イネ伍乳澱粉に 関す る 遺伝子資源の多様 化を目的に, ア ミ ロ ー ス含有率に 関する変異を正確に評 価でき る測定法を開発し, その方法に よ っ て既存の品種 に み られる遺伝変異を把握すると と もに, 免疫 化学的手 法に よ っ て ア ミ ロ ー ス合成に 関与する ん',.\' 遺伝子の産物 である イネ脹乳中の

1/

,.

t タ

の変異を

に し, さらに, 環境変動が澱粉特性に 及ぼす影響に つい て検討し た. 得られた結果は, 以下の よ うに 要約され る.

( 1

) ア ミ ロ ー ス含有率を ヨ ウ素呈色法に よ っ て, より

正確に 測定するために, 従来の

6 2

0 n m での測定法に代 え て, ア ミ ロ ペクチ ン の影響が最も小さい 770 n m での 吸光度を測定する方法を設定し た. さ らに ア ミ ロ ー ス 含有率の差異に伴 う吸収 ス ペクトルの最大吸収波長 (λ

脚) の変 化に 注目し, λ Iffi':に よる簡易迅速な ア ミ ロ ー ス 含有率測定法を設定し た. 本法では, 微少試料, なかん

ずく単粒での測定が可能であり , λ 蹴で測定し た ア ミ ロ ー ス含有率と 770 nm の吸光度で測定し た ア ミ ロ ー ス含 有率と の'聞の相 関は極めて高い (r =

0.98).

本法に よ

- 147 -

(17)

っ て求められるア ミ ロ ー ス含有率は, ア ミ ロ ペク チ ン 中 の長鎖 α - 1 . 4結合分枝を含むと ご ろから, こ れを “ 見か

けのア ミ ロ ー ス含有率 " と定義し た.

( 2

) また, λ 附法と従来の 620 n

m

での ヨ ウ素呈色法

と併用する こ とに より, amylose extender 変 異 系 統を 効率的に 検出する こ とが可能であ る.

( 3

) 九州大学農学部遺伝子資源研究セ ン ターが保存す

る国内外の 2 . 602 品種に つい て , λ rIJ(Þ:に よ っ て見かけ

のア ミ ロ ス含有率を調査し た結果, 嬬性品種で は O

,...__, 7 . 8 %, 慢性品種で 9.6"'"' 33.9%の幅広い変異 が あ る

こ とを明らかに し た.

4 ) 見かけのア ミ ロ ー ス含有率に 関し て地理的変異が

みられ, 南ア ジ アと東南ア ジ アおよび中国南部の品種 は

概し て高ア ミ ロ ー ス品種が多く, 中国北部や韓国, 日本

では逆に 見かけのア ミ ロ ー ス含有率の低い品種が増加す る傾向を認めた.

( 5

) 日本の品種に つい ては, 橋性品種では, 九ナト!と 四

国地域に, 比較的見かけのア ミ ロ ー ス含有率の低い品種

が多く, 中園地方の日本海沿岸から北陸お よび東北にか

け て見か'けの、ア ミ ロ ー ス含有率の高い品種が多く認めら

- 148 -

(18)

れた. 一方, f.更性品種に つい て は, 九州、!と 四園地域に 見 かけの ア ミ ロ ー ス含有率の高い 品種が多く, 中国地方の 日本海沿岸から北陸およぴ東北に かけ て見かけの ア ミ ロ ー ス含有率の低い 品種が増加し, 橋性品種の場合と逆の 傾向が認められた.

( 6 ) I/x 遺伝子の産物であるイネ隆乳中の んI ..\ タ ン パ

ク質をペプシ ン処理し た 澱粉か ら 精製 した. 精製した んl-t タ ン パク質に 対す る抗体を 調製し, その抗体を用い て 的 タ ン パク質含量と見かけの ア ミ ロ ー ス含有率との 関係を免疫化学的手法に よ っ て検討した. その結果,

エ ス タ ン フ ロ ッ テ ィ ン グ法に よ っ て, 慢性澱粉で は一本 のバ ン ドとし て ん'.,\ タ ン パク質を特異的に 検出し, 橋性 品種で は バ ン ドが全く検出されなか っ た. また, f.更性品 種に つい て は, 検出されたバン ド の濃淡に 基づい て, 薄 く染色される w x - M 型品種群と 濃く染色される Wx-H 型 品種群に 分類した.

( 1

) さらに, ELISA 間接法に よ る 1/ ..\ タ ン パク質の定

量法を確立し, 慢性品種の 1/ � タ ン パク質含量と見かけ の ア ミ ロ ー ス含有率との関係に つい て検討した. 品種全 体とし て は, I/x タ ン パク質含量と見 かけ の ア ミ ロ ー ス

149 -

(19)

含有率との 間の相関は 低か っ た. しかし, w x - H 型品種

群と Wx-M 型品種群に 分け て相関関係をみた と こ ろ.

者の問に は, 高い相関関係が認め られた. こ の こ とから,

W x - H 型品種群と Wx-M 型品種群に 分ける こ と で, I/x

ン パク質含量か ら真の ア ミ ロ ー ス含有率を推定し 得る こ と を明らかに し た.

( 8 ) 1/..\

タ ン パク質含量の差に よ っ て分類し た上述の

3 品種群 (様性品種群, W x - H 型慢性品種群, w

x -

M

型積

性品種群) を用い, 見かけの ア ミ ロ ー ス含有率とと もに,

I/x タ ン パク質の含量や炊飯特性に関与する隆乳澱粉の

諸特性に 及ぼす登熱温度の影響を検討し た.

その結果,

橘性品種群と Wx-M 型品種群の諸特性は, 登熟温度の変

化に 応じ て変動し易い のに 対し ,

W x - H 型品種群の諸特

性は登熱温度の影響を受け難い こ と を明らかに し た.

以上, ア ミ ロ ー ス含有率測定法とし て新た に 設定し た

λ IJl<.t(法に よ っ て, 既存の品種中に 見 かけの ア ミ ロ ー ス含

有率に 関し て多様な変異があ る こ と を明らかに し た. 加

え て, 既存の品種中に, ア ミ ロ ペクチ ン に関する構造変

異が存在する 可能性を提言し た.

- 150 -

(20)

謝 辞

本研究の遂行と論文の作成に 当り九州大学農学部佐藤 光助教授に は終始懇篤なる指導を賜 っ た. こ こ に, 深甚 の謝意を表する. また, 本論文を取りまと め るに 当り,

校関の労と執られた九州大学農学部小西続問教授ならび に 筏島豊教授に 厚く感謝の意を表する.

本研究の遂行に 当り終始指導を戴い た九州大学名誉教 授大村武樽士に 衷心から感謝する.

さ らに, 研究の実施に あた り, 多大なる援助を与え ら れた九州大学農学部河原畑勇教授な らびに 山口女子大学 小川昌広助教授に 心から拝謝する.

最後に, 本論文を完成するに あた り, 協力と支援を下 さ っ た大分県農業技術セ ン ター水旧利用部の各位に 記し て謝意を表する.

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参照

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