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平城宮東院地区の発掘調査(平城第 593 次調査)記者発表資料

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(1)

2017

12

21

平城宮東院地区の発掘調査(平城第 593 次調査)記者発表資料

独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所都城発掘調査部

調査地:特別史跡平城宮跡東院地区 調査期間:

2017

10

月2日~継続中

調査面積:

969

㎡(南北

33m

×東西

29m

+南北

12m

×東西1

m

概 要

〇奈良時代前半の大型の東西棟建物を検出しました。床張りの格式の高い建物 で、周辺の建物と一体の空間を構成していたとみられます。

〇奈良時代後半の大規模な井戸と関連遺構を検出しました。これらは東院地区 での食膳の準備に関わる空間を構成するとみられます。

※現地説明会を

12

23

日(土・祝)に開催します(11時開始、15時終了)。 説明は

11

時からと

13

30

分からの2回の予定です。(少雨決行)

1.平城宮東院地区の調査

平城宮は約1

km

四方の東側に東西約

250m

、南北約

750m

の張り出し部を もち、その南半の南北約

350m

の範囲を 東と うい ん地区とよんでいます(図1)。『 続しょくほ ん 』などの文献により、東院地区には皇太子の居所である 東宮と う ぐ うや天皇の 宮殿がおかれたことが知られています。また、神じ んけ いう ん元年(

767

)に完成し た「東院 玉ぎょく殿で ん」や、宝ほ う 4年(

773

)に完成した光仁天皇の「楊よ うば いきゅう宮 」は、

この地にあったと考えられています。

東院地区では、これまで南半や西辺を中心に発掘調査を進めており、前者で は庭園遺構(東院庭園)の存在が、後者では大規模な掘立柱建物群が頻繁に建 て替えられていた様子がわかってきています。

2004

年度以降、東院地区西辺の 発掘調査を継続して実施しています。

今回の調査では、東院地区の中枢建物群が位置していたと推定される中央部 から西北辺にかけての遺構の様相をあきらかにし、東院地区全体の空間利用の 変遷を解明することを目的として、第

584

次調査区(

2016

2017

年度)の北 に調査区を設定しました(図2)。調査は

2017

10

月2日に開始し、現在も 継続中です。

(2)

2.調査の成果

(1)検出した遺構(図3)

今回の調査では、奈良時代の建物・塀(いずれも掘立柱の構造をもつ)、溝、

井戸を検出しました。これらの遺構は数時期に区分できますが、以下では、奈 良時代の前半と後半の遺構、続いて現時点では時期不明の遺構に分けて説明し ます。

奈良時代前半の遺構(A期)

建物1 調査区南部で検出した東西9間以上(約

26.5m

×南北3間(約9 m

) の南廂付き東西棟建物。調査区の東方に続きます。身舎 の柱穴に床を支える 添そ えづ かの痕跡があり、床張りの建物であったと考えられます。南面には 縁え んが付属す ると考えられます。また、西から6列目の柱筋には 間仕切 りと考えられる柱穴 があります。検出した範囲での床面積は縁を含めて約

260

㎡です。

東西塀1 調査区中央部で検出した東西塀。4間分を検出しました。

東西塀2 調査区西北部で検出した東西塀。3間分を検出しました。

奈良時代後半の遺構(B~D期)

井戸 調査区東北部で検出した大型の井戸。東西約

9.5m ×南北約 9.0m

の範囲 を方形に深さ約

0.3m

掘り込み、その中心に東西約

4.0m ×南北約 4.0m

の平面 方形の掘方を設けて井戸枠を据えています。井戸枠は廃絶時に抜き取られてい ました。井戸枠の周囲には拳大の小礫が多く分布する部分があります。四周に 幅約

0.5m

の石組溝を巡らせ、井戸西辺には後述する東西溝1が接続します。ま た井戸が廃絶した後には、井戸枠や石組溝の石を抜き取り、全体に整地をおこ なっています。

東西溝1 調査区北部で検出した東西溝。井戸西辺中央付近から西へ直線的に 延びます。幅約

1.2m

、長さ約

8.0m

、深さ

0.2

0.5m

で井戸から西へ約

4.6m

の範囲に側石と底石で護岸しています。調査区中央部で東西溝2と

L

字溝に分 岐します。

東西溝2 幅

0.8

1.0m

、深さ

0.5

0.6m

の東西素掘溝。東西溝1の西に続き、

L

字溝との分岐点からは幅を狭め調査区の西方へと続きます。多量の土器ととも に一時に埋められています。

L

字溝 東西溝1から北へと分岐する幅約

1.2m

、深さ

0.6

0.8m

の素掘溝。北 に約

5.0m

で西へ折れ、直線的に延び、調査区の西方へと続きます。東西溝2と 同様に一時に埋められており屈曲部付近で多量の瓦・土器が出土しました。

(3)

建物2 調査区西北部で検出した東西6間以上×南北3間の南廂付き東西棟建 物。調査区の西方へと続きます。東西溝2および

L

字溝の 覆おおい となる可能性 があります。

東西溝3 調査区中央部で検出した東西素掘溝。後世の削平が著しく幅約

1.0m

、 深さ

0.1

0.2m

、長さ約

27.0m

分を確認し、調査区の西方へと続きます。

南北塀1 調査区東部で検出した南北塀。井戸の北では1間分、南では7間分 を確認しました。南端は南隣の調査区(第

584

次調査)で検出した東西塀と接 続します。調査区東北部では井戸により壊されます。

南北塀2 調査区東北部で検出した南北塀。6間分を検出し、調査区の北方へ と続きます。井戸の西辺を壊しています。

東西塀3 調査区中央部で検出した東西塀。6間分を検出しました。南北塀2 の南端と接続し、調査区の西方へと続きます。

時期不明の遺構

建物3 調査区東北部で検出した東西2間×南北2間以上の建物。調査区外北 方に続き、南北棟建物になると考えられます。

小穴列 調査区西北部で検出した東西4基の小穴列。

石組溝 調査区東南部で検出した石組溝。第

584

次調査区でも確認していまし た。

(2)出土遺物

主な出土遺物として、土器類・瓦 磚せ ん類があります。土器類は、東西溝2・

L

字溝を中心に奈良時代後半頃の土師器・須恵器が多く出土しました。また特筆 すべき遺物として東西溝2から「宮」、

L

字溝から「美濃国」の刻印がある須恵 器がそれぞれ出土しています。瓦磚類は、奈良時代前半を中心とした軒丸瓦・

軒平瓦・鬼瓦や磚が出土しています。

(3)井戸と関連施設について

井戸は周囲に石組溝が付属する大規模なもので、東西溝1・2や

L

字溝と建 物2などが一体となり計画的に設置されています。

平城宮内では、これまでの調査で東院地区のほか 内だ い 地区や 造ぞ うし ゅ 地区な どで似たような構造の大規模な井戸が見つかっています(図4)。今回検出した 井戸は付属施設を含めると、内裏地区の井戸に匹敵する宮内最大級の規模であ ることがわかります。

(4)

また、東西溝2や

L

字溝と覆屋(建物2)の存在からは、井戸の水を計画的 に配水し、これらの溝の周辺で何らかの活動をおこなっていたと考えられます。

東西溝2や

L

字溝からは、杯や皿などの食器類に加えて土師器甕・カマド、

須恵器盤・甕などの調理具や貯蔵具が多量に出土しており、周辺で調理や食器 の保管をおこなった空間が存在していたと考えられます。

以上から、井戸と関連する遺構は東院中枢部における食膳を準備する 厨くりやなど に関連する遺構である可能性があります。

3.まとめ

今回の調査では次のことがわかりました。

①奈良時代前半の大型の東西棟建物を検出しました。

建物1は東西9間以上の大型の南廂付き東西棟建物です。床張りの構造であ り、格式の高い建物であったとみられます。柱筋の検討から、南隣の調査区(第

584

次調査)で検出した南北

10

間×東西2間の南北棟建物(奈良時代前半)と 一連の空間を構成していたとみられます。建物は調査区外東方へ続いており、

全体像の解明は今後の課題です。

②奈良時代後半の大規模な井戸と関連遺構を検出しました。

井戸は平城宮内では内裏地区で見つかっている井戸に匹敵する規模です。ま た、井戸からは東西溝1・2や

L

字溝が派生し、溝には覆屋を設けるなど、井 戸の水を計画的に利用していた様子がうかがえます。これらの遺構の状況と出 土遺物の内容からみて、今回の調査区周辺は東院中枢部での食膳を準備する厨 に関連する空間であったとみられます。

(5)

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造酒司 県犬養門

的門 建部門

的門

172 40

154

250

259

22南

104 128

292

43 270

29

39

110 302 276323

276 243 99

120

44

68

301 284

280東 196

241

38 21 22 182

35

271

280南 245-2 280北

245-1 469

446 481 584

381

401 401 423 503

421

99

245-2

283 80

406

429

440

44

584

第593次調査区

466

図2 第593次調査区と周辺の既調査区 図1 奈良時代後半の平城宮

(井上和人『日本古代都城制の研究』所収図に加筆)

朝集堂院

(6)

A期 B期 C期 D期 時期不明

南北塀1 建物2

南北塀2

建物2

東西塀2

東西塀1

東西溝1 井 戸 東西溝2

東西塀3

東西溝3

建物1

石組溝 南北塀1

建物2

南北塀2

南北塀1

南北塀1

南北塀1 建物2

東西塀2

東西塀1

東西溝1 井 戸 東西溝2

L字溝

東西塀3

東西溝3

建物1

石組溝 小穴列

図3 第 593 次調査区遺構平面図

第481次 第584次

0

10m

(7)

5

17 17 17 16 16 16

143 143 143201201201 6 6 296 29666 296 2966 2969 296 3603603603336000

7 7 7 7 7 87 8777 87 8 8 8 8777777 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 87 87 87

97 97 97 022 102 102222 102 1 1 111111 1 1 111

400 4 4 1 1 140 140 1 14040000000 1 140

6 6 6 36 36 3 3 1 1 666 1 1 1 1333366666666666 133 136 171 171 171 6 6 146 146 146 150 150 150

711 7 1 1 171 171 171

5 05 05 2 200 20 20005000055555 2 25 2 205

167 167 167

32 32 32 73 73 7 277777 273 27333 2 273 273 2 27327427427422222742722747 48

48 448 4 4 4 4 4 4 3 3 3 2 23333 2 33333 2 203

3 3 3 23

23 23 23 23 23

196 196 196

9 9 29 2 2 299 2 29 299 2 29 39333939339339 440 440 440

466 466 466 506

506 506

7 7 7

7 7 517 51777 517

1 531 531531

542 542 542

★ 1

1 2 2 3 3 4 4

5 5

7 7

5 SE3230 (第22次南区) 6 SE9600 (第128次) 7 SE16030 (第243次) 今回検出の井戸 (第593次)

大型の井戸検出地点 1:10,000

2 SE3049 (第22次北区) 4 SE15800 (第241次)

1 SE7900 (第78次) 3 SE3046 (第22次北区)

第593次

SE7900

SD2530 SC156

SE15800 SE15800 SE15800

SB15807 SB15807 SB15807

SB15808 SD15820

SE3049

SB3048

SD3050

SD3047

SB3045 SE3046

SE3230 SD3270

SD3229

SD9601

SE9600 SE9600 SE9600

SX9603 SX9603 SX9603

SA5740

SA9610

SE16030

SB16035 SB16035 SB16035

SA16028 SA16042

SA16042 SA16042

SA16027

6 6

図4 平城宮の主要な大型井戸 1:200

0

0

10m

0 200m

参照

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