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短時間カテーテルアブレーションの試み (平成9年8月5日受付)

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日本小児循環器学会雑誌 14巻4号 522〜526頁(1998年)

短時間カテーテルアブレーションの試み

(平成9年8月5日受付)

(平成10年9月14日受理)

日本大学医学部小児科 ),福岡こども病院循環器科2)

住友 直方1) 牛ノ濱大也2) 唐澤 賢祐 ) 能登 信孝1) 岡田 知雄1) 原田 研介1)

key words:catheter ablation, accessory pathway

      要  旨

 成功時の通電が10秒以内の短時間カテーテルアブレーションを行った3例(S群)と通常のカテーテル ァブレーションを行った8例(L群)を比較し,有効性,不整脈発生の有無などを検討した.副伝導路離 断時の通電時間,副伝導路離断後の通電時間,総通電時間,通電に要したエネルギーはS群が短いかも

しくは少なかったが,電気生理に要した時間,アブレーションに要した時間,アブレーション回数,離 断成功時の通電開始から副伝導路の離断までに要した時間に有意差はなかった.アブレーション成功時 のマッピング電極でのA/V比は有意差がなかった.副伝導路電位の有無,心室期外収縮,心房期外収縮

の出現にも有意差は認められなかった.右側副伝導路症例で,カテーテルのbump後にアブレーション を施行した症例で再発を認めたことより,右側副伝導路症例やbumpによる伝導消失例では短時間カ

テーテルアブレーションは困離と思われる.今回の症例は通電開始から焼灼までの時間は4秒以内であ

り,諸家の再発の報告も考慮すると,焼灼成功まで4秒以上かかる症例は,通常の通電時間が必要と結 論する.

      はじめに

 小児の副伝導路に対するカテーテルアブレーション が行なわれるようになり,上室頻拍に対する治療法は かなり変化してきている.しかし,小児に対するカテー テルアブレーションの方法が,成人領域で行なわれて いる方法と同一でよいのかについては,はっきりした 結論は出ていない.

 今回,副伝導路のカテーテルアブレーションで通電 時間を短縮しても効果があるか,再発や,術後の不整 脈発生に有意差があるか等について検討したので報告

する.

         対象及び方法

 対象は副伝導路のカテーテルアブレーションに成功 した11例(平均ユ2.7歳,男5例,女6例)である.こ

別刷請求先:(〒173−8610)東京都板橋区大谷口上町      30−1

     日本大学付属板橋病院小児科

       住友 直方

れらをアブレーションに成功した際の通電時間が10秒 未満の症例(S群:3例)と10秒以上の症例(L群:8 例)に分け,副伝導離断後の通電時間,電気生理に要

した時間,アブレーションに要した時間,総通電時間,

通電開始から離断成功までの時間,アブレーション成 功時のA/V比,副伝導路伝導時間,副伝導路電位の検 出の有無,通電エネルギー,術前,術直後24時間で Holter心電図を記録し,不整脈発生数の差を検討し

た.

 左右鼠径部,左鎖骨部より,4本ないし5本の6Fま たは7Fの6から20極の電極カテーテルを高位右房,三 尖弁中隔尖付着部,冠状静脈洞,右室心尖部,右房内 に留置し,またマッピング及びアブレーション用に6F もしくは7Fのカテーテルを,右心系は三尖弁輪上か ら,左心系は逆行性に僧帽弁下に挿入し,記録,刺激,

及びアブレーション用に用いた.高周波発生装置は Inter Nova社製Nova Flame RA−50,0sypka社製 HAT200, EPT社製EPT 1000を用いた.高周波通電

(2)

は25〜30Watt,もしくは60℃〜70℃の温度コントロー ルで行った.

 副伝導時は左側9例,右側2例,顕性3例,潜在性 8例であった(表1).

 統計学的検討はMann−Whitney U検定,もしくは κ2検定を用い,p〈0.05を有意とした.

      結  果

 表2〜4に結果を示す.副伝導路離断時の通電時間 はS群L群で7.2±2.8秒,24.4±11.4秒でS群が短 かった(p=O.014).

 副伝導時断後の通電時間は4.7±2.5秒,22.5±11.2 秒(p=0.014),総通電時間は10.1±6.6秒,68.6±33.2 秒(p=0.01)でS群が短く,通電に要したエネルギー はS群が304±198(watt・sec), L群が2,906±

1,941(watt・sec)で, L群が長かった(p=0.02).

S群,L群でそれぞれ,電気生理に要した時間は2.86±

表1 対象

症例 年齢 カテ後診断 副伝導路

の位置 顕性潜在性

YH

10.9

M AVRT

左後壁 潜在性 S

MI

14.7

M AVRT

左前側壁 顕性 S

MN

9.7 F

AVRT

左後壁 潜在性 S

AG

9.9 F

AVRT

右前壁 潜在性 L

MY

13.3 F

AVRT

右前壁 顕性 L

NA

17.2 F

AVRT

左後壁 潜在性 L

NY

8.6 F

AVRT

左前壁 顕性 L

YK

18.6 F

AVRT

左後壁 潜在性 L

HS

10.9

M AVRT

左前側壁 潜在性 L

DK

11.5

M

AVRT, DAVNP 左前側壁 潜在性 L

JW

14

M AVRT

左後中隔 潜在性 L

AVRT:房室回帰性頻拍, DAVP:房室結節二重伝導路

1.36時間,3.55±0.96時間(p=0.54),アブレーショ ンに要した時間は0.31±0.40時間,0.67±0.71時間

(p=0.41),アブレーション回数は1.3±0.6回,5.6±

3.7回(p=0.12),離断成功時の通電開始から副伝導時 の離断までに要した時間は2.8±1.3秒,1.7±1.3秒

(p=0.09)で有意差はなかった(表4).

 アブレーション成功時のマッピング電極でのA/V

比はS群,L群でそれぞれ0.41±0.20,0.44+

0.41(p=0.84)であり有意差はなかった.副伝導路電

位はS群で3例中2例(67%),L群で8例中4例

(50%)で有意差は認められなかった(p=0.89)(表

4).

 術前と術直後24時間の不整脈発生数の差をHolter 心電図を用いて検討したところ,1時間当たりの心室 期外収縮発生数はS群,L群でそれぞれ,1.12±1.03 回,1.66±3.0回増加し(p=0.73),心房期外収縮は 0.21±0.14回,0.76±0.98回増加し(p=0.42),心室 頻拍はS群で0.19±1.72回,0.03±0.87回増加し,術 後不整脈発生に有意差は認められなかった.

 術後副伝導路の再疎通を認めたのは,L群の1例(症 例MY)であり,症例AGを除く他の9例は3.4〜60.4 カ月(平均34.0カ月)経過を観察しているが,副伝導 路及び上室頻拍の再発は認められなかった.症例AG は術後1週間で家庭の都合により,経過を追うことが

できなくなった.再発の1例はBumpの症例である

が,29.4カ月の経過観察で上室頻拍の出現はみていな

い.

      考  案

 従来副伝導路に対するカテーテルアブレーションは 成人の方法に従い,副伝導路電位,頻拍中の最早期心

表2 カテーテルアブレーションの結果(1)

症例 EP(h) RF(h) 総通電時間

 (秒) RF回数 通電時間(秒)成功までの

成功してからの 通電時間(秒)

 成功時の 通電時間(秒)

YN

4.07 0,001 4 1 2.0 2.0 4.0

MI

1.38 0.16 9.3 1 4.0 5.3 9.3

MN

3.11 0.76 17.1 2 1.4 6.9 8.2

AG

2.90 0.72 94.4 8 3.8 9.7 13.5

MY

3.95 1.63 652 8 0 10.0 10

NA

4.19 1.67 108.5 8 1.1 12.0 13.1

NY

1.94 0,007 21.2 1 3.5 17.7 21.2

YK

3.93 0.10 49 2 1.1 30.0 31.1

HS

5.09 1.04 112 10 0.7 31.0 31.7

DK

3.01 0.16 59.9 7 1.9 34.0 35.9

JW

3.42 0.03 38.9 1 3.3 35.6 38.9

EP:電気生理学的検査, RF:カテーテルアブレーション

(3)

524−(32)

表3 カテーテルアブレーションの結果(2)

症例 A/V 副伝導路伝導時間 K電位

YN

0.19 30

MI

0.47 40

MN

O.58 30

AG 02

55

MY

1.27 65

NA

0.82 180

NY

0.48 60

YK

0.15 52

HS

0.26 60

DK

0.31 60

JW

0.06 80

A/V:A/V比,K電位:副伝導路電位

表4 カテーテルアブレーションの結果(3)

S群 L群 P

EP(時間) 2.86±1.36 3.55±0.96 0.54

RF(時間) 0.31±0.40 0,67±0.71 0.41

RF回数(回) 1.3±0.6 5.6±3.7 0.12

通電エネルギー(watt・sec) 304±198 2,906±1,941 0.02 総通電時間(秒) 10.1±6.6 68.6±33.2 0.01 成功時の通電時間(秒) 7.2±2.8 24.4±IL4 0,014 成功までの通電時間(秒) 2.5±1.4 1.9±1.4 0.31 成功後の通電時間(秒) 4.7±2.5 22.5±ll.2 ⑪,014

A/V 0.41±020 0.44土0.41 0.84

K電位 3例中2例 8例中4例 0.89

(67%) (50%)

時間当りのVPC増加数 1.12±1.03 L66±3.0 0.73 時間当りのAPC増加数 0.21±0.14 0.76±0.98 O.42

房興奮部位,洞調律時のA波,V波の高さ, AV比等 を目安に固定のよい部位を探し,20〜30Watt,もしく は60〜70℃の温度コントロール下で通電を行い,成功 した場合にはさらに約30秒間の追加通電を行ってき た.しかし,小児では成長に伴うアブレーション術創 の拡大,アブレーション後の不整脈発生などが問題に なることが予測される.このため,今回の検討を行っ

た.

 従来の実験的報告では,横軸に時間をとり縦軸に焼 灼創の大きさをとると,高周波アブレーションによる 焼灼創の大きさは指数関数的に増大するとされてい る.25Wの通電では通電開始10秒で焼灼創の深さは最 大となり,それ以後はほぼ一定となり1),4〜6Wの通電 では約20秒で最大となると報告されている2}.

 左側副伝導路は房室弁輪に近接しており,右側副伝 導路は心外膜側の脂肪組織内を通るものもあるとさ

日本小児循環器学会雑誌 第14巻 第4号 れ3),左側副伝導路の方が短時間の通電に向いている

ことも考えられる.僧帽弁下の房室弁輪部でカテーテ ルアブレーションを行った場合,カテーテルが副伝導 路に非常に近接していた場合は,カテーテルと副伝導 路の距離は数mm以内であり,10秒の通電で平均7.1 mmの深さの焼灼創ができるとすれば1),理論上完全 に焼灼が可能なはずである.最短何秒の通電で十分か という検討は,通電時間を短いものから長いものまで 無作為に通電を行い,再発の有無を検討しなくてはな らないが,実際の臨床例でこのような検討は不可能で ある.しかし,わずか4秒の通電1回で再発もない症 例がいたことは短時間通電の可能性を考える根拠と

なった.

 カテーテルアブレーションには確実性も必要であ る.現在までの報告では,副伝導路に高周波カテーテ ルアブレーションを行った症例の0%〜12%に,早期 もしくは晩期再発が認められるとされている4}一一13).再 発に関する要因としては,右側もしくは中隔側副伝導 路,潜在性副伝導路,カテーテルで副伝導路電位記録 ができない場合,通電開始から焼灼成功までの時間が 長い場合,アブレーションカテーテルの固定不良,複 数副伝導路の存在などが挙げられている4)13).このよ うな再発要因を除外できれば,短時間の通電で有効で あることが考えられる.今回の検討では,副伝導路電 位の有無,通電開始から焼肢成功までの時間はS群と L群で有意差がなかった.現在まで,通電のエネルギー を少なくしてマッピングに応用した報告はあるが14),

通電時間を短縮して有効性を検討した報告はない.

 今回検討した症例で,右側副伝導路症例が2例あり,

この内L群の1例が再発をおこした.この症例は,通 電開始直前にカテーテル操作で副伝導路の伝導が途絶 したため,その位置で通電を行った症例である.通電 後30分の電気生理学的検査では副伝導路の伝導回復は 認められなかったが,夜間のHolter心電図で副伝導 路の伝導回復を認めた.カテーテルのbumpも副伝導 路の位置を確認する重要な手段であるが,正確な副伝 導路の位置を確認できたかどうかが明確でなかった.

また上述のごとく右側副伝導路には,右室心外膜の脂 肪組織を通るものがあり,このような症例では短時間 通電は困難と思われる.

 潜在性副伝導路では再発例はなく,このような症例 に対しても,かならずしも短時間通電が不可能だとは 思われない.また,副伝導路電位の確認できなかった 症例でも短時明通電で再発しておらず,この確認の有

(4)

平成10年7月1U

無も短時間通電の可否とも相関するとはいえないと思

われる.

 焼灼成功までの時間は今回の症例ではすべて4秒以 内であり,再発のない症例として報告されている平均 値2.9±3.4秒以内4)もしくは5秒以内7)であった.

 固定の困難な症例,複数副伝導路の症例は今回の検 討例では認められず,検討はできなかった.

 しかし,症例数が少なく,検討内容には限界がある.

また,カテーテルアブレーション部位の不整脈源1生の 有無,再発の有無などについては,今後さらに長期の 経過観察が必要である.

      結  語

 1.短時間カテーテルアブレーションを行った3例

(S群)と通常のカテーテルアブレーションを行った8 例(L群)で,有効性,不整脈発生の有無などを検討し

た.

 2.副伝導路離断後の通電時間,総通電時間,通電に 要したエネルギーはS群が短いかもしくは少なかっ たが,電気生理に要した時間,アブレーションに要し た時間,アブレーション回数,離断成功時の通電開始 から副伝導路の離断までに要した時間に有意差はな

かった.

 3.アブレーション成功時のマッピング電極での A/V比には有意差がなかった.

 4.副伝導路電位の有無,心室期外収縮,心房期外収 縮の出現には有意差は認められなかった.

 5.通電開始から焼灼までの時間は4秒以内であり,

諸家の再発の報告も考慮すると,焼灼成功まで4秒以 上かかる症例は,通常の通電時間が必要と思われる.

 6.今回の検討は症例数が少なく,限界はあるもの の,短時間カテーテルアブレーションは,症例を選べ ば有効な治療法となりうる.

 本研究は第33同日本小児科循環器学会総会にて発表し た.本研究の研究費の一部は福田記念医療振興財団,一般研 究助成により行った.

      文  献

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(5)

526−(34) 日本小児循環器学会雑誌 第14巻 第4号

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Trial of Short Time Radiofrequencyb Current Application for       Accessory Pathway Ablation

Naokata Sumitomo1), Hiroya Ushinohama2}, Kensuke KarasawaD, Nobutaka Notol),

       Tomoo Okada1)and Kensuke Harada1)

      i)Department of Pediatrics, Nihon University School of Medicine        2)Department of Cardiology, Fukuoka Children s Hospital

   Efficacy and arrhythmogenisity was compared between 3 cases of short time application

(1ess than lO seconds) (group S) of radiofrequency catheter ablation and 8 cases of longer application(more than 10 seconds)(group L). Current application time at success, current application time after success, total energy were significantly shorter in group S. There were no difference between these groups about duration of electrophysiological study, catheter ablation and total ablation time. Time of ablation, the time of block of accessory pathway conduction from the onset of radiofrequency current and A/V ratio of mapping catheter at successful ablation site had no difference between these groups. Detection of accessory pathway potential,

appearance of premature ventricular contraction and premature atrial contraction had no difference between these 2 groups. A case of right accessory pathway developed recurrerlce of conduction. In this case, ablation was performed after disappearance of conduction by catheter bump to the accessory pathway. Short time ablation may be difficult in case with right side pathway or catheter bump phenomenon. Conduction of accessory pathway disappeared within 4 sec in every case of this report. If energy delivery takes longer than 4 sec to block of accessory pathway, short time ablation may be impossible.

参照

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