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回転貫入鋼管杭を用いた建築基礎の耐震補強工法

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目 次

§1.はじめに

§2.工法の概要

§3.振動載荷試験

§4.静的水平載荷試験

§5.シミュレーション解析

§6.おわりに

§1.はじめに

建築物の基礎構造の耐震性に関しては,基礎構造の破 壊が建築物の崩壊や人命の安全に直接影響を及ぼさない との考えから,基礎構造に対する大地震時の耐震性の検 証は義務付けられてはおらず,現行基準を満足していな い建築物であっても耐震診断・補強される例は少ない.

しかし,兵庫県南部地震や東北地方太平洋沖地震におい て,杭基礎の破損により傾斜したと推定される建築物も 見られた.上部構造の耐震診断や補強が行われて耐震性 能が確保できたとしても,基礎構造の破壊により建築物 が傾斜するようなことがあれば,地震後の建築物の機能 維持や避難経路の確保に支障が生じて継続使用が不可能 となり,建築物として取り壊しを余儀なくされることも

考えられ,建物の長寿命化や事業継続計画の観点から,基 礎構造の耐震性を確保するための補強工法の確立が望ま れる.

杭基礎の耐震補強工法としては,地盤改良あるいは増 し杭工法による水平抵抗の増大を図ることが一般的であ るが,建築物への適用にあたっては施工可能なスペース が限られていたり,建物を使用しながらの施工になる場 合が多いことなど,特に施工性への配慮が必要となる.ま た,適用可能な工法が限定されることから,コスト面で の配慮も必要である.そこで,敷地条件等の施工的な制 約にも対応が可能で,かつ合理的に耐震性を確保できる 回転貫入鋼管杭を用いた斜杭による増し杭工法について,

杭基礎の耐震補強工法として用いるための研究開発をお こなってきた1)~2).斜杭は土木構造物等で用いられてい るが,鉛直支持力にも期待して杭先端を支持層まで打設 されることが一般的で,水平荷重の負担が主となる場合 の適用性については明らかではない.

本報では,工法の概要と耐震補強としての性能確認を 目的とした振動載荷試験および斜杭工法の水平抵抗機構 の把握を目的とした原位置における実大水平載荷試験,

ならびにシミュレーション解析結果について報告する.

§2.工法の概要

2―1 工法概要および斜杭の評価手法

本工法の概要を図―1に示す.杭を斜めに打設して,水

**

***

技術研究所建築技術グループ 建築設計部構造課

技術研究所

回転貫入鋼管杭を用いた建築基礎の耐震補強工法

A Seismic Reinforcing System of Existing Building Foundations by means of Inclined Screw Piles

新井 寿昭 後藤 教夫**

Toshiaki Arai Takao Gotoh 鹿籠 泰幸***

Yasuyuki Shikamori

要  約

 大地震時における基礎構造の耐震性が確保されていない建築物は多く存在しているが,基礎構造の耐 震診断や補強の例は少ない.これは基礎構造の破壊が直ちに建物全体の崩壊にはつながらないと考えら れていることのほか,耐震補強の実施にあたってはコストや施工面からの制約が多いことも要因の一つ と考えられる.そこで,比較的狭隘な敷地でも施工可能で,かつ合理的に耐震性を確保できる回転貫入 鋼管杭を用いた耐震補強のための斜杭工法について,実験および解析的研究を行った.本報では,工法 の概要と性能を確認するために実施した振動載荷試験および原位置における実大水平載荷試験とその シミュレーション解析結果について報告する.

(2)

平力に対し杭軸直交方向の杭材および地盤の抵抗力に加 え,杭軸方向(押込みあるいは引抜き)の抵抗にも期待 して,鉛直に打設した場合よりも大きな水平抵抗を得る ことを目指した工法である.

本工法では,斜杭は図―1に示したような載荷方向に 対して傾斜方向が後方となるIN杭と前方からなるOUT 杭からなる組杭として用い,斜杭組杭に加わる水平力は 杭軸直交方向の抵抗力と杭軸方向の抵抗力の組み合わせ により負担される.杭としては杭軸方向の抵抗力を杭先 端部で確保できるよう先端翼付き回転貫入鋼管杭を用い る.使用する回転貫入鋼管杭は,小型の施工機械で施工 されるために,狭隘な敷地や施工スペースが限定された 建築物にも適用可能である.

杭頭で剛結された組杭の評価は,①杭軸直交方向剛性

(Kh)および杭軸方向剛性(Kv)を評価,②組杭の負担 荷重割合を算定,③単杭としての梁−ばねモデルあるい は弾性支承ばりの式による応力解析,の手順により杭体 に発生する応力と変形を算定する.

なお,既存杭を含む基礎全体として斜杭の負担荷重に よる鉛直方向反力の影響が大きく,基礎全体として剛床 と見なせない場合などについては,補強杭と既存杭を一 体としてモデル化して評価する必要がある.評価法の詳 細については文献3)を参照されたい.

§3.振動載荷試験

3―1 試験概要

振動載荷試験概要を図- 2に示す.直杭によって支持 されたラフト(既存基礎)と既存基礎と同じ形状のラフ トに斜杭を追加したラフト(増し杭補強基礎)を同一地 盤上に設置して同時に加振し,増し杭(斜杭)による補 強効果について検証した.

実験に用いた大型せん断土槽は,図―2に示すように

幅3.6 m×長さ10 m×深さ5 mで,外枠は振動載荷時に はせん断変形する構造となっている.地盤は,先に杭を 設置してから気乾状態の硅砂を土槽中に投入し,高さ50 cmづつ10層に分けてタンパーで締固めて作製した.既 存基礎,増し杭補強基礎の既存杭に相当する直杭はφ 139.8 mm,t=3.5 mmの鋼管杭で杭先端は土槽底部にボ ルトで固定した.補強用の増し杭となる斜杭は傾斜角 15,φ76.3 mm,t=2.8 mmの鋼管杭で先端にφ200 mm の翼を取り付けた.ラフトは1.6 m角の鉄筋コンクリー ト製で,ラフト上には周期を中低層建物程度に相当する 固有周期(設計値0.09秒)に調整するためにゴム支承を 間に介して上部構造を模擬した重錘(100 kN)を設置し た.計測は図―2に示したように,加速度計を振動テー ブルおよび地盤中・ラフト・重錘に設置した.また,ラ フトおよび重錘の変位は非接触の変位計により,杭応力 はひずみゲージにより測定した.

入 力 波 は,Sweep波(0.2~50 Hz),El Centro NS波

(原波×25%),Taft EW波(原波×25%),JMA Kobe波

(原波×20%)を用いた.なお,振動載荷試験結果の加速 度記録を用いて同定した地盤の平均せん断波速度は 115.9 m/s,固有周期は0.16秒(6.18 Hz)であった.

3―2 増し杭の補強効果

振動載荷試験のうちJMA Kobe波の主な試験結果に ついて,増し杭の補強効果に着目して以降に示す.

既存基礎の既存杭(P1)および増し杭補強基礎の既存 杭(PP1)それぞれの杭頭曲げモーメントが最大となっ 図 ― 1 斜杭組杭工法の概要

図 ― 2 振動載荷試験の試験体概要

表 ― 1 試験体の諸元 既存基礎

(補強無)

ラフト 1.6 m×1.6 m×0.5 m (30 kN)

上部構造 (100 kN)

φ139.8 mm, t=3.5 mm, L=5 m×4 増し杭補強

(補強有)

ラフト 1.6 m×1.6 m×0.5 m etc (40 kN)

上部構造 (100 kN)

φ139.8 mm, t=3.5 mm, L=5 m×4 増し杭 φ76.3 mm, t=2.8 mm, L=2.6 m, 傾き15°×4

ᩫ᮲IN᮲

ᩫ᮲OUT᮲

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᮲㍀᪁ྡྷࡡᢤᢘງ ᮲㍀├ஹ᪁ྡྷࡡ

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1R

1L

5,000mm

2400 5200 2400

15r 15r

3,600mm 1600

800

1600 1600 3600

1600 1600

φ φ

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63 63 63

63

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(3)

た時刻の曲げモーメントおよびせん断力の深さ方向分布 を図―3に示す.ここから,増し杭補強により既存杭の 曲げモーメントは深さ方向全長で低減していることが確 認された.また,増し杭補強基礎における同時刻での増 し杭の曲げモーメント,せん断力,軸力の深さ方向分布 を図―4に示す.ここから,杭頭曲げモーメントが最大 となる時刻において,押込み側に傾斜したOUT杭とな っているSP3の方が,引抜き側に傾斜したIN杭となっ ているSP1より発生応力は大きく,負担水平力が大きく なっていることがわかる.これは,水平変位が大きくな るとOUT杭の負担割合が増大していくことが推察され,

地盤の抵抗機構や群杭効果によるものと考えられるが,

振動載荷時には杭−上部構造全体系の剛体回転などの挙 動も影響している可能性がある.

試験結果から斜杭の水平力は杭の曲げ抵抗と軸方向の 抵抗力で負担されると判断されることから,杭頭部のせ ん断力Qおよび軸力Nの値から,(1)式により増し杭の 負担水平力を算定した.

H=Q・cos θ+N・sin θ (1) 

この増し杭の負担水平力Hと杭頭軸力Nの関係を 図―5に示す.図中の傾き(N/H)が軸力の負担率を示 しており,全時刻で30~50%で推移していることがわか る.さらに,既存杭および増し杭の計測結果から得られ た杭頭部のせん断力Qの和を総水平力Pとして,(1)式 で求めた増し杭負担水平力Hとの関係を図―6に示す.

この傾き(H/P)が増し杭の負担率を示しており,加振 方向によらず全時刻で30~40%の範囲で,増し杭補強基 礎の既存杭において既存杭基礎に比べて最大曲げモーメ

ントが35%低減していた結果と対応していると考えら

れる.同様の評価をTaft波,El Centro波でも行った結 果,軸力の負担率は40~50%,増し杭負担率は30~40%

とほぼ同等の結果が得られた.

以上から,斜杭を用いた増し杭補強基礎では既存杭の 発生応力の低減効果(補強効果)が認められ,補強効果 のうち一定の割合は斜杭の軸方向の抵抗力で負担されて いることが確認された.

§4.静的水平載荷試験

4―1 試験概要

原位置で実施した実大静的水平載荷試験の試験体諸元 を表―2に示す.試験体O1は直杭1本のみで構成され,

O2およびO3は直杭1本と斜杭2本で構成される組杭 となっている.O2とO3では載荷方向が異なっている.

杭はいずれも先端閉塞の鋼管杭(直径:φ216.3 mm,厚 さ:t=8.2 mm,鋼種:STK490)で,φ550 mmの先端 翼を有する.斜杭の傾斜角は15 とし,杭上部はRC造 のラフトで剛結されている.試験地の地盤柱状図および 標準貫入試験(SPT1)によるN値,スウェーデン式サ ウンディング試験(SWS)による換算N値を図―7に示 す.各試験体位置のSWS試験の結果はほぼ同様の分布 を示しており,地盤条件のばらつきは少ない.各試験体 の直杭,斜杭ともに杭先端はGL-6.2 mの洪積シルト層に 定着させている.なお,O2では載荷方向の前方に位置す る杭(SP2)をOUT杭,後方に位置する杭(SP1)をIN 杭と称する.載荷は反力壁に固定した油圧ジャッキによ って行い,段階載荷方式による1方向単サイクル載荷と した.

表 ― 2 試験体の諸元 No. 杭の構成 ラフト・杭の仕様

O1 直杭単杭 ラフト:600×600×600

直杭:φ216.3(t−8.2),L−6.2 m,先端翼φ550(t−22)

O2

(平行)

組杭

(直杭1 +斜杭2本)

ラフト:1800×600×600

直杭:φ216.3(t−8.2),L−6.2 m,先端翼φ550(t−22)

斜杭:φ216.3(t−8.2),L−6.44m,先端翼φ550(t−22) O3

(直交)

組杭

(O2と同じ)

ラフト:600×1800×600 杭:O2と同じ

(単位:特記以外は mm)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0

㻐㻔㻓 㻐㻘

(m)

᭜䛘䝦䞀䝥䝷䝌(kN䝿m)

P1 PP1

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0

㻐㻔㻘 㻐㻔㻓 㻐㻘

(m)

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0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

㻐㻕 㻐㻔

(m)

᭜䛘䝦䞀䝥䝷䝌(kN䝿m)

SP1 SP3 OUT᮲ IN᮲

SP3 SP1

287 ,1

ࣚࣆࢹࡡንన᪁ྡྷ

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

㻐㻙 㻐㻗 㻐㻕

(m)

䛡䜙᩷ງ(kN)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

㻐㻔㻓 㻐㻘 㻔㻓

(m)

㍀ງ(kN)

ᘤᘿ ᅸ⦨

図 ― 3 既存杭の応力分布の比較 図 ― 4 増し杭(斜杭)の応力分布

-20 0 20

㻐㻕㻓 㻕㻓

kN

ቌ䛝᮲ㇿᢰỀᖲງ䟺kN䟻 50%40%

30%

-60 0 60

㻐㻙㻓 㻙㻓

kN

⥪Ềᖲງ䟺kN䟻

30%40%

図 ― 5 増し杭軸力負担率 図 ― 6 増し杭負担率

(4)

4―2 静的水平載荷試験結果

各試験体の水平荷重(P)−水平変位(δ)関係を図―

8に示す.直杭1本のO1に対して,斜杭2本を追加し たO2の同変位時の荷重は7~9倍で推移している.一方,

O2と同諸元で載荷方向をその直交方向としたO3の荷 重は,O1の3倍で推移している.

O1の曲げモーメントの深さ方向分布を図- 9に示す が,O3の直杭および斜杭の曲げモーメント分布もほぼ 同様の傾向を示した.

杭のひずみ測定値から算定したせん断力Q,軸力N(杭 全長の平均値)を用いて,O2の杭3本の水平抵抗力の和 Hを(2)式により求めた.さらに,直杭の水平力負担率 rp1,斜杭の水平力負担率rsp1,rsp2および斜杭の軸力の水 平成分の割合rsp1a,rsp2aを(3)~(7)式で定義した(図―

10参照).

H=Qp1+(Qsp1+Qsp2)・cos θ+(Nsp1+Nsp2)・sin θ (2) 

rp1=Qp1 / H (3) 

rsp1=(Qsp1・cos θ+Nsp1・sin θ)/H (4) 

rsp2=(Qsp2・cos θ+Nsp2・sin θ)/H (5) 

rsp1a=Nsp1・sin θ /H (6) 

rsp2a=Nsp2・sin θ /H (7) 

ここで,添字のp1は直杭,sp1はIN杭,sp2はOUT 杭を表し,θは傾斜角を表す.図―11に示すように,直

杭の水平力負担率(rp1)は全水平抵抗力の24%前後で推 移しているのに対し,斜杭はIN杭(rsp1)で平均39%,

OUT杭(rsp2)で平均37%を負担している.斜杭の負担 率のうち,軸力の水平成分がIN杭(rsp1a)で平均17%,

OUT杭(rsp2a)で平均18%を占めており,それらを合計 すると全水平抵抗力の30%強を斜杭の軸力によって負 担していたことがわかる.この結果は,3章に示した振 動載荷試験とも概ね対応している.

なお, O2ではせん断力Qと軸力Nの分担はほぼ同程 度であるのに対して,ここでは示していないが O3では 軸力Nの発現はごく小さく,水平抵抗に対する軸力の影 響は,載荷方向と斜杭の傾斜方向に依存する傾向が認め られた2)

§5.シミュレーション解析

ここでは,4章に示した原位置に施工された実大杭を 用いた静的水平載荷試験を対象に,3次元有限要素法に よるシミュレーション解析と,斜杭の角度をパラメータ とした解析的検討結果を示す.

5―1 解析概要

解析モデルを図―12に示す.地盤には弾塑性を考慮し たソリッド要素を用い,表層と支持層の2層地盤(表―

3)として深さ20 mまでをモデル化した.杭には梁要素 図 ― 7 土質柱状図,N 値および換算 N 値

図 ― 10 水平力の釣り合い(O2)

図 ― 11 水平力負担率(O2)

図 ― 8 荷重-変位関係 図 ― 9 曲げモーメント 分布(O1)

0 10Nೋ䟾ᥦ⟤20 30N40 50

SWS-1 SWS-2 SWS-3 SPT1 0

1 2 3 4 5 6 7 8

ᅰ㈹

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0 50 100 150 200 250 300 350

0 10 20 30 40 50 60 Ềᖲንనδ䟺mm䟻

PkN

O1O2 O3

0 1 2 3 4 5 6 7

-50 -25 0 25 50

᭜䛘䝦䞀䝥䝷䝌 (kNm)

(GL-m)

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㻋㻓㻏㻃㻓㻌

Qsp2 cos䃎 Qsp2 Nsp2 sin䃎

Nsp2 Nsp1 sin䃎

Nsp1 Qsp1 cos䃎 Qsp1

Qp1 Np1

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

0 10 20 30

Ềᖲንన (mm)

rsp2 (OUT)

㻲㻕

rsp1 (IN) rp1 (├᮲)

rsp2a (OUT/㍀ງ䛴Ềᖲᠺฦ) rsp1a (IN/㍀ງ䛴Ềᖲᠺฦ)

(5)

を用い,杭の体積を考慮するために地盤に杭径相当の空 洞を設け,その中心に梁要素を設置して同一深度に位置 する杭節点とその周囲の地盤節点を線形結合した.各杭 の頭部は同一変形となるように境界条件を設定した.な お,斜杭については先端翼径相当の板要素を設けた.杭 はSTK490相当の鋼管杭(Ep=2.05×105 N/mm2,ν=

0.3)とし,線形とした.地盤の変形係数は水平載荷試験

結果に基づいて1 mm変形時の地盤反力係数からの逆算 値を初期値として設定し,降伏条件にはMohr-Coulomb モデルを用いた.解析では,実験と同位置に設定した載 荷点に強制変位を与えるものとした.

5―2 シミュレーション解析結果

実験結果と比較した荷重−水平変位関係を図―13に 示す.O1~O3いずれの試験体に対しても,解析結果は 初期剛性と大変位時までの剛性低下ともに,実験結果を 良く再現できている.

実験結果と比較した杭の曲げモーメント分布(杭頭変 位30 mm時)を図―14に示す.O2では直杭に加えて,

載荷方向に対して後方側のIN杭,前方側のOUT杭の結 果も示す.なお,O3の斜杭については2本の平均値で示 している.O1およびO2ともに,解析結果は実験結果と 良く整合している.O3では,直杭の解析結果は,杭頭部 から地中部で最大値を示しているGL-2m付近まで実験 結果に対して過少評価している.これは,実験時に試験 体に生じたねじれと,杭頭部の拘束条件を解析では完全 に模擬できていないためと考えられる.なお,斜杭の解 析結果は実験結果と良く対応している.

5―3 斜杭の角度をパラメータとした解析的検討 5―2に示した結果から,解析モデルは実験結果を良く 再現できることが明らかとなった.ここでは,杭頭の境 界条件が異なる各試験体に対して,同一の境界条件を設 定した解析モデルにより斜杭の角度を0~20 に変化さ せた解析を実施し,斜杭角度と載荷方向に対する斜杭の 傾斜方向の影響について検討した.載荷方向に斜杭が傾 斜しているモデル(以降,O2モデル)と載荷直交方向に 斜杭が傾斜しているモデル(以降,O3モデル)の荷重−

変位関係を図―15に,直杭に対する割線剛性比−変位関 係を図―16に示す.

O2モデルでは,斜杭の角度が大きくなるにしたがっ て初期剛性と同変位時の荷重値は大きくなることがわか る.O2モデルの直杭に対する斜杭の割線剛性比は,剛性 が低下する5 mm程度以降に変位の増大とともに大きく なっており,それぞれ1.05~1.07倍(5),1.16~1.25倍

(10),1.28~1.38倍(15),1.54~1.71倍(20)となっ ている.これは変位の増大にともない水平力に対する軸 方向抵抗力が増加しており,特にOUT杭の挙動が影響

しているためと考えられる.一方,

O3モデルでは,斜杭の角度の増 加にともなう初期剛性と同変位 時の荷重値に大きな差異はなく,

斜杭の角度による影響は小さい ことがわかる.

O2モデルの5 および15 の水 平力負担率を図―17および図―

図 ― 12 解析モデル 表 ― 3 地盤諸元 下限深度(GL-m) ρ

(kN/m3) 変形係数

(MN/m2) ν

表層 5.5 15.5 5.5 0.4 支持層 20.0 16.5 15.9 0.4

ᙁโንన

IN᮲䟾├᮲䟾OUT

図 ― 14 杭の曲げモーメント分布(杭頭変位 30 mm)

㻐㻚 㻐㻙 㻐㻘 㻐㻗 㻐㻖 㻐㻕 㻐㻔

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図 ― 13 荷重-変位関係

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(6)

18に示す.図―17(1)に示した5 のIN杭とOUT杭の 水平力負担率はそれぞれ37%程度であり,斜杭および直 杭ともに変位の増大にともなう負担率の変化は認められ ない.一方,図- 18(1)に示した15 の場合にはIN杭と OUT杭の水平力負担率は39%程度であるが,剛性低下 が認められる5 mm程度からIN杭ではやや微減傾向,

OUT杭では微増傾向となる.これは(2)および(3)で示し たIN杭とOUT杭のせん断力と軸力の水平力の負担割 合で,剛性低下が認められる5 mm程度以降で変形依存 性が認められ,特にOUT杭で顕著なことによるもので ある.

§6.おわりに

本報では,回転貫入鋼管杭を用いた耐震補強のための 斜杭工法の概要と性能確認のために実施した振動載荷試 験および実大水平載荷試験とシミュレーション解析につ いて述べた.以下に得られた知見を示す.

1) 振動載荷試験に対して斜杭を用いた増し杭補強によ る既存杭の負担せん断力の低減効果(補強効果)を 確認した.

2) 振動載荷試験でも斜杭の水平抵抗には杭軸方向の抵 抗力が寄与し,かつ傾斜方向と載荷方向との関係に より水平地盤反力や軸力負担率は異なることを確認 したが,載荷方向が変わっても全体としては増し杭 の負担率および斜杭の軸力負担率はほぼ一定である.

3) 原位置で実施した静的水平載荷試験から,斜杭の傾

斜方向に載荷した組杭において,IN杭,OUT杭と もにほぼ同程度の軸力による抵抗が生じていた.

4) 解析的検討から,載荷方向に斜杭を傾斜させた場合 には斜杭角度の影響は顕著であるが,直交方向に傾 斜させた場合には斜杭角度の影響は認められず,直 杭と同様の傾向を示すことを確認できた.

謝辞:本研究の一部は国土交通省「平成22年度住宅・建 築関連先導技術開発助成事業」の補助を受けて実施した.

回転貫入鋼管杭を用いた斜杭工法は,安藤建設,戸田 建設,千代田工営,西松建設による共同開発工法であり,

実験は建築研究所,国土技術政策総合研究所との共同研 究成果である.

参考文献

1) 金子ら:杭基礎の耐震補強のための増し杭工法に関

する研究(その1)~(その2),日本建築学会大会学 術講演梗概集,pp. 553⊖556, 2010. 9.

2) 佐野ら:回転貫入鋼管杭斜杭工法による既存杭基礎

の耐震補強に関する研究(その1)~(その5),日本 建築学会大会学術講演梗概集,pp. 519⊖528, 2011. 8.

3) 佐野ら:斜杭工法による建築基礎の耐震補強に関す

る研究,地盤工学研究発表会2012.(投稿中)

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図 ― 15 荷重-変位関係

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図 ― 16 割線剛性比-変位関係

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287 ᮲

図 ― 17 水平力負担率(5°) 図 ― 18 水平力負担率(15°)

参照

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