10 MEN1 の診断基準 改訂案
現行:
以下のうちいずれかを満たすものをMEN1と診断する.
・(複数腫瘍)原発性副甲状腺機能亢進症,膵消化管内分泌腫瘍,下垂体腫瘍のうち2つ以 上を有する.
・(家族歴)上記3病変のうち1つを有し,一度近親者にMEN1と診断された者がいる.
・(遺伝子)上記3病変のうち1つを有し,MEN1遺伝子の病原性変異が確認されている.
患者の血縁者に対する発症前遺伝子診断で変異を同定されたが,まだいずれの病変も発 症していない者は「未発症MEN1変異保有者(キャリア)」とよぶ.
改訂案:
以下のうちいずれかを満たすものをMEN1と診断する.
・(複数腫瘍)原発性副甲状腺機能亢進症,膵消化管神経内分泌腫瘍,下垂体腫瘍のうち 2 つ以上を有する.
・(家族歴)上記3病変のうち1つを有し,一度近親者にMEN1と診断された者がいる.
・(遺伝子)上記3病変のうち1つを有し,MEN1遺伝子の病原性変異が確認されている.
患者の血縁者に対する発症前遺伝子診断で変異を同定されたが,まだいずれの病変も発 症していない者は「未発症MEN1変異保持者(キャリア)」とよぶ.
11 MEN2 の診断基準 改訂案
現行:
1)以下のうちいずれかを満たすものをMEN2と診断する.
・(複数腫瘍)甲状腺髄様癌と褐色細胞腫を有する.
・(家族歴)上記2病変のうち1つを有し,一度近親者にMEN2と診断された者がいる.
・(遺伝子)上記2病変のうち1つを有し,RET遺伝子の病原性変異が確認されている.
2)以下を満たすものをFMTCと診断する.
家系内に甲状腺髄様癌を有し,かつ甲状腺髄様癌以外のMEN2関連病変を有さない患者 が複数いる.
注:1名の患者の臨床像をもとにFMTCの診断はできない.MEN2Aにおける甲状腺髄様癌以外の病 変の浸透率が100%ではないため,血縁者数が少ない場合には,MEN2AとFMTCの厳密な区別は不 可能である.MEN2Bは身体的な特徴からMEN2AやFMTCと区別できる.
患者の血縁者に対する発症前遺伝子診断で変異を同定されたが,まだいずれの病変も発 症していない者は「未発症RET変異保有者(キャリア)」とよぶ.
改訂案:
1)以下のうちいずれかを満たすものをMEN2と診断する.
・(複数腫瘍)甲状腺髄様癌と褐色細胞腫を有する.
・(家族歴)上記2病変のうち1つを有し,一度近親者にMEN2と診断された者がいる.
・(遺伝子)上記2病変のうち1つを有し,RET遺伝子の病原性変異が確認されている.
2)以下を満たすものを家族性甲状腺髄様癌(FMTC)と診断する.FMTCはMEN2Aの 亜型と位置付けられる.
甲状腺髄様癌を有し,かつ甲状腺髄様癌の家族歴があり,かつそれらの者のすべてが他 のMEN2関連病変(褐色細胞腫,原発性副甲状腺機能亢進症,粘膜神経腫など)を有し ていない.
注:MEN2Aにおける甲状腺髄様癌以外の病変の浸透率が100%ではないため,血縁者数が少ない場合 には,MEN2AとFMTCの厳密な区別は不可能である.実際に,同じ遺伝型を有していても,家系に より MEN2A の表現型も FMTC の表現型も示しうる.MEN2B は身体的な特徴および遺伝型から MEN2AやFMTCと明瞭に区別が可能である.
患者の血縁者に対する発症前遺伝子診断で変異を同定されたが,まだいずれの病変も発 症していない者は「未発症RET変異保持者(キャリア)」とよぶ.
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20 勉強会資料
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フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病 診療ガイドライン 2016 年版
〔編集〕
「多彩な内分泌異常を生じる遺伝性疾患(多発性内分泌腫瘍症および フォンヒッペル・リンドウ病)の実態把握と診療標準化の研究」班
執印太郎
高知大学
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多彩な内分泌異常を生じる遺伝性疾患(多発性内分泌腫瘍症およびフォンヒッペル・
リンドウ病)の実態把握と診療標準化の研究班
執 印 太 郎 高知大学
寳 金 清 博 北海道大学大学院医学研究科脳神経外科学分野 西 川 亮 埼玉医科大学国際医療センター脳神経外科 夏 目 敦 至 名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科 中 村 英 夫 熊本大学大学院医学研究科脳神経外科学 齊 藤 延 人 東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻 菅 野 洋 国際医療福祉大学熱海病院脳神経外科学 篠 原 信 雄 北海道大学大学院医学研究科腎泌尿器外科学 矢 尾 正 祐 横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器科学
福 島 敦 樹 高知大学教育研究部医療学系臨床医学部門眼科学 石 田 晋 北海道大学大学院医学研究科眼科学分野
伊 藤 鉄 英 九州大学大学院病態制御内科学 田 村 和 朗 近畿大学理工学部生命科学科 長谷川奉延 慶應義塾大学小児科学
中村英二郎 京都大学医学研究科メディカルイノベーションセンター 悪性制御研究ラボ
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フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病 診療ガイドライン
1. VHL 病の歴史 ···
2. 発症機構と VHL 蛋白の機能 ···
3. 発症する腫瘍とその特徴 ···
4. 臨床診断基準 ···
5. 臨床的分類 ···
6. 診断法 ···
1. 臨床的診断法 ···
2. 遺伝子診断法 ···
7. 遺伝カウンセリング ···
8. 各腫瘍の経過観察と治療ガイドライン ···
1. 中枢神経系血管芽腫 ···
1. 経過観察
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2. 外科的治療
3. 放射線治療
2. 内耳リンパ嚢腫 ···
3. 網膜血管腫 ···
4. 褐色細胞腫 ···
5. 腎腫瘍 ···
6. 膵神経内分泌腫瘍 ···
7. 膵嚢胞性病変(漿液性嚢胞線腫) ···
8. 精巣上体嚢腫 ···
9. 各腫瘍の経過観察および治療フローチャート ···
1. 中枢神経系血管芽腫診断・治療フローチャート ···
2. 網膜血管腫 ···
1. 経過観察フローチャート ···
2. 検査フローチャート ···
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3. 治療導入時期 ···
3. 褐色細胞腫スクリーニングと治療フローチャート ···
4. 腎腫瘍診断・治療フローチャート ···
5. 膵神経内分泌腫瘍 ···
1. 経過観察フローチャート ···
2. 治療フローチャート ···
6. 精巣上体嚢腫経過観察フローチャート ···
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1
VHL病の歴史フォン・ヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau;VHL)病(あるいは症 候 群)(MIM ID#193300)は、常 染 色 体 優 性 遺 伝 性 の疾 患 で、複 数 の 臓 器 に腫 瘍 性 あるいは嚢 胞 性 病 変 を多 発 する。発 症 病 変 としては、
網 膜 血 管 腫 、中 枢 神 経 系(小 脳 、延 髄 、脊 髄)の血 管 芽 腫 、膵 臓 の神 経 内 分 泌 腫 瘍 ・嚢 胞 、副 腎 褐 色 細 胞 腫 、腎 臓 の腫 瘍 ・嚢 胞 、精 巣 上 体 嚢 胞 腺 腫 、さらに内 耳 リンパ嚢 の腫 瘍 や女 性 の子 宮 広 間 膜 の嚢 胞 腺 腫 なども報 告 されている。
歴 史 的 には、ドイツの眼 科 医 である Eugen von Hippelが網 膜 の多 発 血 管 腫 例 、家 族 例 に注 目 し、19 世 紀 末 から 20 世 紀 初 頭 にかけて これらを報 告 している 1, 2)。またスウェーデンの神 経 病 理 医 である Arvid Lindau は、網 膜 のみでなく中 枢 神 経 系 にも血 管 腫 を多 発 する 家 族 例 の病 理 検 索 所 見 を報 告 した3, 4)。その後 本 疾 患 の臨 床 病 態 が、
Melmonら、さらにLamiellらによって整 理 され、本 疾 患 は先 の 2人 の 医 師 名 を冠 してvon Hippel-Lindau病 とよばれるようになっている5, 6)。 1988 年 に Seizinger らは家 系 の連 鎖 解 析 により、ヒト染 色 体 3 番 短 腕 上 に原 因 遺 伝 子 の局 在 を推 定 した 7)。その 5 年 後 に、米 国
NIH/NCI のグループが中 心 となり、positional cloning 法 により 3p25-26 領 域 より原 因 遺 伝 子 の同 定 に成 功 し、von Hippel-Lindau 病(VHL)遺 伝 子 として 1993 年 に報 告 した 8)。
31
Eugen von Hippel Arvid Lindau
参考論文
1. von Hippel E. Vorstellung eines Patienten mit einer sehr ungewöhnlichen Netzhaut. Ber Deutsch Ophthal Ges.
1895;24:269.
2. von Hippel E. Über eine sehr seltene Erkrankung der Netzhaut. Albrecht von Graefes Arch Ophthal. 1904;59: 83-106.
3. Lindau A. Studien uiber Kleinhirncysten. Bau,
Pathogeneseund. Beziehungen fur angiomatosis retinae.
Acta Pathol Microbiol Scand. 1926:3(Suppl 1);1-128.
32
4. Lindau A. Zur Frage der Angiomatosis Retinae und Ihrer Hirncomplikation. Acta Ophthal. 1927;4:193-226.
5. Melmon KL, Rosen SW. Lindau's disease: review of the literature and study of a large kindred. Am J Med. 1964; 36:595-617.
6. Lamiell JM, Salazar FG, Hsia YE. Von Hippel-Lindau disease affecting 43 members of a single kindred.
Medicine(Baltimore). 1989;68(1):1-29.
7. Seizinger BR, Rouleau GA, Ozelius LJ, et al. Von
Hippel-Lindau disease maps to the region of chromosome 3 associated with renal cell carcinoma. Nature. 1988; 332(6161):268-9.
8. Latif F, Tory K, Gnarra J, et al. Identification of the von Hippel-Lindau disease tumor suppressor gene. Science.
1993;260(5112):1317-20.
33
2
発症機構とVHL 蛋白の機能VHL 遺 伝 子 は癌 抑 制 遺 伝 子(tumor suppressor gene)に分 類 さ れ、Knudson が提 唱 した 2-hit の機 構 で 2 つのアレル(allele)に変 異 が起 こることでその機 能 が消 失 し、細 胞 の腫 瘍 化 が始 まると考 えられ る。VHL 家 系 患 者 では、遺 伝 的 変 異(germline mutation)により、出 生 時 にすでに片 側 の VHL 遺 伝 子 の不 活 性 化 が起 こっており(1-hit)、 その後 対 立 allele に体 細 胞 変 異(somatic mutation)が起 こることで (2-hit)、遺 伝 子 機 能 が完 全 に消 失 する。一 方 、散 発 例 の腎 腫 瘍 など でも VHL 遺 伝 子 の高 頻 度 の変 異 、不 活 性 化 が検 出 されるが、この場 合 には、2 回 の体 細 胞 変 異 が起 きている。臨 床 的 に VHL 病 と診 断 さ れた家 系 患 者 においては 80~90%で、この遺 伝 子 の遺 伝 的 変 異 が 検 出 できるので、この遺 伝 子 変 異 を指 標 にした、いわゆる遺 伝 子 診 断 (DNA test)が行 われている。
VHL 遺 伝 子 は 3 つの exon より構 成 されており、ヒトゲノム上 では 3p25.3 上 の約 13,000bp の領 域 に存 在 し、そこから全 長 約 4.5kb の mRNA が転 写 される 1)。mRNA の蛋 白 翻 訳 領 域 は 639 塩 基 である が、アミノ酸 1 番 と 54 番 の 2 カ所 のメチオニンより翻 訳 が開 始 され、
それぞれ 213 と 160 アミノ酸(約 30kd と 19kd のサイズ)の VHL蛋 白 が作 られ、両 者 とも腫 瘍 抑 制 機 能 をもっている 2, 3)。
34
VHL 蛋 白(pVHL)の機 能 でこれまでに最 もよく解 析 されているのが、
E3 ubiquitin ligase 複 合 体 としての機 能 であり、転 写 因 子
HIF(hypoxia-inducible factor)(低 酸 素 誘 導 因 子)の分 解 制 御 を行 っ ている。pVHL は α、β の 2 つの構 造 機 能 領 域(domain)からなり、
α-domain で Elongin C、さらに Elongin B、CUL2、RBX1 と結 合 し、
E3 ubiqutin ligase複 合 体(VHL/E3 complex)を形 成 する4-6)。もう一 方 の β-domain で標 的 蛋 白 と結 合 するが、このユビキチン化 標 的 蛋 白 の 1 つが、翻 訳 後 修 飾(プロリン残 基 の水 酸 化)を受 けた HIFα であ る。転 写 因 子HIFはHIFαとHIFβの2分 子 のヘテロ複 合 体 を形 成 し、
さらに HIFα に cofactor である CBP/p300 が結 合 し、転 写 因 子 として 機 能 活 性 をもつ。HIFα は正 常 酸 素 圧 状 態 では HIF prolyl
hydroxylase(HPH)によりプロリン残 基(HIF1α では 402、564 番 、 HIF2α では 405、531 番 のアミノ酸)が水 酸 化 され翻 訳 後 修 飾 を受 け る。HPH により水 酸 化(翻 訳 後 修 飾)された HIFα 蛋 白 は VHL/E3 complexでポリユビキチン化 され、その後 26S proteasome で急 速 に 分 解 される 7, 8)。一 方 、低 酸 素 状 態 では HIFα のユビキチン化 と分 解 が抑 制 され、HIFα は核 内 に移 行 し HIFβ と結 合 し、遺 伝 子 promoter 内 の HRE(hypoxia response element)に結 合 し様 々な遺 伝 子 の転 写 を促 進 する 9)。
HIF により転 写 される遺 伝 子 はこれまでに 100 以 上 が知 られており、
①血 管 新 生 、②細 胞 内 アシドーシス補 正 、③グルコースの取 り込 み・
嫌 気 的 解 糖 系 の促 進 、クエン酸 回 路 の抑 制 、④細 胞 接 着 性 の低 下 、
35
運 動 性 ・転 移 能 の促 進 、マトリックスの再 構 成 、など様 々な機 能 にか かわっている 9-12)。一 方 、VHL が不 活 性 化 した細 胞 では、正 常 酸 素 圧 状 態 においても HIFα の分 解 ができず、HIF はこれらの遺 伝 子 群 を 恒 常 的 、非 生 理 的 に発 現 させ、これが細 胞 の腫 瘍 化 に結 びついてい ることが想 定 されている。①に関 連 する遺 伝 子 としては、VEGF、 PDGFB、ANGPT2 などが知 られており、血 管 の内 皮 細 胞 や周 皮 細 胞(pericyte)の増 殖 を促 進 し、血 管 の新 生 ・成 熟 ・維 持 などの作 用 を もつ。VHL 病 で特 徴 的 な血 管 芽 腫 や腎 腫 瘍 では腫 瘍 血 管 の造 成 が 顕 著 であり、VEGF も高 発 現 している。
さらに、VHL 蛋 白 は HIF調 節 以 外 にも様 々な機 能 をもつことが想 定 されており、i) 神 経 細 胞 の apoptosis 抑 制 と褐 色 細 胞 腫 の発 生 機 構 、 ii) fibronectin(FN1)、type IV collagen との結 合 と細 胞 外 マトリック スの構 成 調 節 、iii) 細 胞 の primary cilia の形 成 と嚢 胞 形 成 、などに ついても現 在 解 析 が進 みつつある 13, 14)。
36
図2-1 VHL病における腫瘍発症の機構
図2-2 VHL蛋白の複合体による HIFの分解
参考論文
1. Renbaum P, Duh FM, Latif F, et al. Isolation and
characterization of the full-length 3' untranslated region of the human von Hippel-Lindau tumor suppressor gene.
Hum Genet. 1996;98(6):666-71.
2. Iliopoulos O, Kibel A, Gray S, et al. Tumour suppression by the human von Hippel-Lindau gene product. Nat Med.
1995;1(8):822-6.
3. Schoenfeld A, Davidowitz EJ, Burk RD. A second major native von Hippel-Lindau gene product, initiated from an
37
internal translation start site, functions as a tumor suppressor. Proc Natl Acad Sci USA. 1998;95(15): 8817-22.
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5. Maxwell PH, Wiesener MS, Chang GW, et al. The tumour suppressor protein VHL targets hypoxia inducible factors for oxygen-dependent proteolysis. Nature. 1999;
399(6733):271-5.
6. Stebbins CE, Kaelin WG Jr, Pavletich NP. Structure of the VHL-Elongin C-Elongin B complex: implications for VHL tumor suppressor function. Science. 1999;
284(5413):455-61.
7. Ivan M, Kondo K, Yang H, et al. HIF alpha targeted for VHL-mediated destruction by proline hydroxylation:
implications for O2 sensing. Science. 2001;292(5516): 464-8.
8. Jaakkola P, Mole DR, Tian YM, et al. Targeting of
HIF-alpha to the von Hippel-Lindau ubiquitylation complex
38
by O2 regulated prolyl hydroxylation. Science. 2001; 292(5516):468-72.
9. Pouysségur J, Dayan F, Mazure NM. Hypoxia signalling in cancer and approaches to enforce tumour regression.
Nature. 2006;441(7092):437-43.
10. Kelly BD, Hackett SF, Hirota K, et al. Cell
type-specific regulation of angiogenic growth factor gene expression and induction of angiogenesis in nonischemic tissue by a constitutively active form of hypoxia-inducible factor 1. Circ Res. 2003;93(11):1074-81.
11. Ceradini DJ, Kulkarni AR, Callaghan MJ, et al.
Progenitor cell trafficking is regulated by hypoxic gradients through HIF-1 induction of SDF-1. Nat Med.
2004;10(8):858-64.
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39
14. Kaelin WG Jr. The von Hippel-Lindau tumour suppressor protein:O2 sensing and cancer. Nat Rev Cancer. 2008;8(11):865-73.
40
3
発症する腫瘍とその特徴中 枢 神 経 系(脳 脊 髄)血 管 芽 腫 、網 膜 血 管(芽)腫 、内 耳 リンパ嚢 腫 、 膵 嚢 胞 、膵 神 経 内 分 泌 腫 瘍 、腎 嚢 胞 、腎 腫 瘍 、褐 色 細 胞 腫 、精 巣 上 体 嚢 腫 、子 宮 広 間 膜 嚢 腫 などが発 症 する。表 1 に海 外 、主 に米 国 で の発 症 年 齢 と発 症 頻 度 を示 す。発 症 する腫 瘍 はどれも多 発 性 で再 発 性 、若 年 発 症 という特 徴 をもっている。典 型 は中 枢 神 経 系 血 管 芽 腫 であり多 発 性 、再 発 性 で神 経 症 状 を示 し、患 者 の QOL の著 しい低 下 を起 こす。腎 腫 瘍 と膵 神 経 内 分 泌 腫 瘍 は、多 発 性 かつ再 発 性 である。
本 邦 における各 腫 瘍 と嚢 胞 の発 症 頻 度 と患 者 数 は詳 細 な調 査 結 果 がないため不 明 である。
表1 VHL 病で発症する腫瘍
臓器 病変 発症年齢 (歳) 頻 度 ( % )
網膜 血管腫 1-67 40-70
中枢神経系 血管芽腫 9-78 60-80
小脳 44-72
脳幹 10-25
脊髄 13-50
内耳 内耳リンパ嚢腫 12-50 11-16
膵 嚢胞 13-80 17-61
神経内分泌腫瘍 16-68 8-17
腎 嚢胞 15- 60-80
腫瘍 20-60 25-50
副腎パラガングリオン 褐色細胞腫 3-60 10-20
精巣上体(男性) 嚢腫 思春期以降 25-60
子 宮 広 間 膜 ( 女 性 ) 嚢腫 16-46 -10
注:本邦における各腫瘍と嚢胞の発症頻度は調査結果がないため不明である。
図 3 VHL病で腫瘍が 発症する臓器と頻度
●:発症部位
推定患者数
41
(Lonser R, et al. Lancet. 2003;361:2059-67)1)
参考論文
1. Lonser R, Glenn GM, Walther M, et al. von Hippel-Lindau disease. Lancet. 2003;361:2059-67.
42
4
臨床診断基準① VHL 病 の家 族 歴 が明 らかである場 合
網 膜 血 管 腫 、中 枢 神 経 系 血 管 芽 腫 、内 耳 リンパ嚢 腫 、腎 腫 瘍 、褐 色 細 胞 腫 、膵 臓 の病 気(膵 嚢 胞 ・膵 臓 の神 経 内 分 泌 腫 瘍)精 巣 上 体 嚢 胞 腺 腫 があることが診 断 されている。
② VHL 病 の家 族 歴 がはっきりしない場 合
1. 中 枢 神 経 系 血 管 芽 腫 あるいは網 膜 血 管 腫 を複 数 個(2 個 以 上)発 症
2. 中 枢 神 経 系 血 管 芽 腫 または網 膜 血 管 腫 と以 下 に述 べる 病 気 がある
a. 腎 腫 瘍 b. 褐 色 細 胞 腫
c. 膵 臓 の病 気(膵 嚢 胞 ・膵 臓 の神 経 内 分 泌 腫 瘍) d. 精 巣 上 体 嚢 胞 腺 腫
e. 内 耳 リンパ嚢 腫
③ 遺 伝 子 検 査 陽 性( 遺 伝 子 診 断 で VHL 遺 伝 子 異 常 が 確 認 さ れ た 場 合 )
43
解 説 診 断 基 準 は、家 族 歴 がある場 合 とない場 合 で異 なり、家 族 歴 がある場 合 は VHL 病 でみられる病 変 が 1 つでも認 められれば VHL 病 と診 断 できるが、家 族 歴 がない場 合 は VHL 病 でみられる腫 瘍 が異 なる2つ以 上 の臓 器 に存 在 すれば VHL病 と診 断 される。中 枢 神 経 系 あるいは網 膜 の多 発 性 血 管 芽 腫 は従 来 、VHL 病 の診 断 基 準 を厳 密 には満 たさなかったが、2003 年 の Lonser らの報 告 以 降 、多 発 性 血 管 芽 腫 があればVHL病 と診 断 するというように変 わってきている1, 2)。 今 回 の診 断 基 準 も Lonser らの報 告 に準 じた。多 発 性 血 管 芽 腫 で家 族 歴 がない場 合 は、厳 密 には、遺 伝 子 診 断 で VHL 遺 伝 子 異 常 が確 認 されれば確 実 に VHL 病 と診 断 できる。
参考論文
1. Lonser R, Glenn GM, Walther M, et al. von Hippel-Lindau disease. Lancet. 2003;361:2059-67.
2. Hes FJ, Hoppener JW, LIPS CJ. Pheochromocytoma in von Hippel-Lindau disease. J Clin Endocrinol Metabol.
2003;88:969-74.
44
5
臨床的分類要約
下 記 の表 が一 般 に臨 床 的 分 類 として用 いられている。
表2 VHL病の分類
分類 腎腫瘍 褐色細胞腫 網膜血管腫 中枢神経系血管芽腫
VHL病1型 + - + +
VHL病2型A - + + +
VHL病2型B + + + +
VHL病2型C - + - -
(Lonser R, et al. Lancet. 2003;361:2059-67)1)
解 説 褐 色 細 胞 腫 を合 併 して発 症 しないか、発 症 するかで VHL 病 1 型(褐 色 細 胞 腫 発 症 なし)、VHL 病 2 型(褐 色 細 胞 腫 発 症 あり)と分 類 する。2 型 のなかでも腎 腫 瘍 発 症 の有 無 でさらに 2 型 A(腎 腫 瘍 な し)、2 型 B(腎 腫 瘍 あり)に分 類 し、さらに褐 色 細 胞 腫 のみが発 症 する ものを2 型 Cと分 類 する。2 型 のものの多 くはVHL蛋 白 がElongin C と結 合 する部 位 の一 部 のアミノ酸 の異 常 が多 い。全 体 のなかで 2 型 の占 める割 合 は 10~20%といわれる。
参考論文
1. Lonser R, Glenn GM, Walther M, et al. von Hippel-Lindau disease. Lancet. 2003;361:2059-67.
45
6
診断法1>臨床的診断法
1. 中 枢 神 経 血 管 芽 腫
造 影 MRI による特 徴 的 な濃 染 像 と嚢 胞 様 の所 見 で診 断 する (図 6-1a、6-1b)。小 さい腫 瘍 であっても、脳 脊 髄 血 管 撮 影
(DSA;Digital subtraction angiography)にて、流 入 動 脈 と流 出 静 脈 を同 定 できる事 が多 いのも特 徴 的 である。
図6-1a 小脳血管芽腫
VHL病の多発性小脳血管芽腫。
ほぼ均一で著明な造影効果を認める。
図 6-1b 脊椎血管芽腫
脊髄空洞症様嚢胞を伴った脊髄血管芽腫。
2. 内 耳 リンパ嚢 腫
造 影 MRI(場 合 により造 影 CT 追 加)にて診 断 する(図 6-2)。 頭 部 の中 枢 神 経 系 血 管 芽 腫 の診 断 の際 に同 時 に行 っておくこ とが望 ましい。
46
図6-2 内耳リンパ嚢腫
側頭骨から後頭蓋窩内に進展した大きな内耳リンパ嚢腫。
3. 網 膜 血 管 腫
散 瞳 下 眼 底 検 査 、細 隙 灯 顕 微 鏡 検 査 にて特 徴 的 な血 管 腫 像 を示 す(図 6-3a, 3b, 3c)。
図6-3a 網膜血管腫 図6-3b 網膜血管腫(治療前)
血管腫より出血を認める。
図6-3c 網膜血管腫(治療後) 網膜光凝固斑を認める。
47
4. 褐 色 細 胞 腫
1. (スクリーニング検 査)随 時 尿 メタネフリン・ノルメタネ フリン(Cr 補 正)(基 準 上 限 の 3 倍 以 上 を陽 性)
2. 24 時 間 酸 性 蓄 尿 による。メタネフリン、ノルメタネフ リン検 査 、アドレナリン、ノルアドレナリン検 査(基 準 値 上 限 の 3 倍 以 上 を陽 性)
3. 血 中 カテコールアミン検 査(基 準 値 上 限 の 2 倍 以 上 を陽 性)
(画 像 検 査)Dynamic CT(造 影 CT の早 期 相)、単 純 MRI で多 発 性 の特 徴 的 な腫 瘍 所 見 を認 める(図 6-4a、 4b)。
図6-4a VHL病type2Bに発生し た右副腎褐色細胞腫と両側腎腫 瘍
1回の腹部臓器のCTまたはMRIで 診断可能。
図6-4b VHL 病に発生した傍神 経節腫瘍(パラガングリオーマ) パラガングリオーマ(↑)が背側より下 大静脈を圧排している。
48
5. 腎 腫 瘍
Dynamic CT(造 影 CT の早 期 相)、単 純 MRI で多 発 性 の特 徴 的 な腫 瘍 所 見 を示 す。多 くで腎 嚢 胞 の所 見 を合 併 する。同 じ CT で膵 嚢 胞 、膵 臓 の神 経 内 分 泌 腫 瘍 を同 時 に診 断 することが 望 ましい(図 6-5a、5b、5c、5d、5e)。
図6-5a VHL病の両腎腫瘍 両腎の腫瘍と左腎の嚢胞を認める。
図6-5b 両腎腫瘍と膵嚢胞の合併例 主訴血尿、青矢印:膵嚢胞
赤矢印:腎腫瘍
図6-5c 腎腫瘍初期
左腎の背側に小腫瘍を認める(↑)
図6-5d 腎腫瘍初期
右腎の腹側に小腫瘍を認める(↑)
図6-5e 左腎腫瘍と腎嚢胞の合併例 6. 膵 嚢 胞
49
腎 腫 瘍 を診 断 する際 の造 影 CT、特 徴 的 な多 発 性 嚢 胞 の所 見 を示 す(図 6-6a)
7. 膵 神 経 内 分 泌 腫 瘍
Dynamic CT(造 影 CT の早 期 相)で濃 染 する腫 瘍 像 を示 す (図 6-6b)。
腎 腫 瘍 の診 断 の際 の造 影 CT で同 時 に診 断 することが望 まし い。
図6-6a 膵臓に大小の嚢胞性病変 が多発している。
(Tamura K, Nishimori I, Ito T, et al.
Diagnosis and Management of pancreatic neuroendocrine tumor in von Hippel-Lindau disease. World J Gastroenterol. 2010;6(36):4515-8より 転載)
図6-6b 膵臓に造影早期に濃染され る多発性の腫瘍病変を認める。
(Maeda H, Nishimori I, Okabayashi T, et al.Total pancreatectomy for multiple neuroendocrine tumors of the
pancreas in a patient with von Hippel-Lindau disease. Clin J
Gastroenterol. 2009;2:222-5より転載)
解 説 中 枢 神 経 系 血 管 芽 腫 では造 影 MRI(Cr 値 が 1.5 を超 えない 場 合)が推 奨 される。内 耳 リンパ嚢 腫 は造 影 MRI、造 影 CT が推 奨 さ れる。内 耳 リンパ嚢 腫 は中 枢 神 経 系 血 管 芽 腫 の診 断 時 に同 時 に行
50
えば被 曝 や医 療 費 の無 駄 を防 ぐことができる。網 膜 血 管 腫 では散 瞳 下 眼 底 検 査 による腫 瘍 の検 索 、細 隙 灯 顕 微 鏡 検 査 によるブドウ膜 炎 や緑 内 障 などの合 併 症 の有 無 の確 認 が推 奨 される。褐 色 細 胞 腫 で は、①尿 中 メタネフリンまたはノルメタネフリン、②尿 中 アドレナリンま たはノルアドレナリン、ただし基 準 値 上 限 の 3 倍 以 上 を陽 性 とする。血 中 カテコールアミン、また部 位 診 断 としては単 純 T2MRI、MIBG シンチ グラフィー、Dynamic CT(造 影 CT の早 期 相)も有 用 であるが、造 影 CTでは高 血 圧 発 作 の誘 発 に注 意 が必 要 である。また血 中 遊 離 メタネ フリン検 査 は、褐 色 細 胞 腫 の診 断 で感 度 、特 異 度 とも高 く、近 日 中 に 保 険 収 載 予 定 である。腎 腫 瘍 では Dynamic CT(造 影 CT の早 期 相)、 ただし造 影 剤 アレルギー、腎 機 能 障 害 などで造 影 CT ができない場 合 は単 純 MRI が推 奨 される。膵 神 経 内 分 泌 腫 瘍 では Dynamic CT(造 影 CT の早 期 相)が推 奨 される。そのためこれらの検 査 は腎 腫 瘍 の診 断 時 に同 時 に行 えば被 曝 や医 療 費 の無 駄 を防 ぐことができる。これら の詳 細 は各 腫 瘍 の診 断 治 療 指 針 および経 過 観 察 指 針 を参 考 にして いただきたい。
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2>遺伝子診断法 要約
塩基配列解析法(DNA シークエンシング)と欠失/重複検出法(注1)にて約 84%で診断できる(ただし、これらは現在、保険適応はない)。
【注 1】欠 失/重 複 検 出 法 :定 量 的 Southern、FISH、quantitative PCR、real-time PCR、multiplex ligation dependent probe
amplification(MLPA)、array CGH法 などDNAの大 規 模 な変 異 を検 出 する方 法
解 説 遺 伝 学 的 検 査 に関 するガイドラインなどによれば発 病 率 が 100%の疾 患 であり、予 防 法 治 療 法 が確 立 しており、治 療 によって QOL が保 たれる疾 患 は遺 伝 子 診 断 を行 うことができる疾 患 とされる。
これより VHL 病 は遺 伝 子 診 断 で予 後 を改 善 する疾 患 であると考 えら れる 1)。
遺 伝 子 診 断 に関 する手 続 きを簡 単 に述 べると、対 象 者 に疾 患 の内 容 について十 分 な遺 伝 カウンセリングを行 い、遺 伝 子 診 断 の目 的 、方 法 、血 縁 者 への影 響 も含 め予 想 される結 果 、検 査 精 度(検 査 の限 界) などをわかりやすく説 明 したうえで、被 検 者 の意 志 により書 面 の同 意 を得 て行 う。未 成 年 者 の場 合 は親 権 者 の代 諾 によって行 う。結 果 、開 示 の際 は対 象 者 の意 志 で知 る権 利 と知 らないでいる権 利 を保 障 され ている。現 在 、保 険 適 応 はなく行 っている施 設 は高 知 大 学 医 学 部 泌 尿 器 科 のみである。
52
VHL遺 伝 子 の翻 訳 領 域 は639 塩 基(213アミノ酸)であるが、splice 部 位 の異 常 、3'側 の異 常 や、大 規 模 なDNA鎖 の欠 失 なども存 在 する。
過 去 の解 析 結 果 ではVHL病 の本 邦 における遺 伝 子 診 断 の診 断 率 は 本 邦 例 では 84%である 2)。診 断 結 果 の内 訳 は塩 基 配 列 解 析 で対 象 者 の 75%が診 断 可 能 であり、さらに約 9%で MLPA 法 などの欠 失/重 複 検 出 法 により DNA の大 規 模 な変 異 が診 断 可 能 である 3, 4)。
図6-7 ダイレクトシークエンス解析
VHL遺伝子exon1の208番目のG(グアニン)がA(アデニン)に置換し、コドン70の
Glu(グルタミン酸)がLys(リジン)に変異したミスセンス変異がみられる。
図6-8 Multiplex ligation-dependent probe amplification(MLPA)
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上: 患者検体;VHL遺伝子全欠失、赤の矢印(→)の部分が正常コントロールより 低い。
患者検体ではPCR増幅産物量が正常コントロールに比べて約半分程度(65%
以下)に減少している。
3番染色体短腕上のFANCD2遺伝子-C3ORF10遺伝子-VHL遺伝子-
IRAK2遺伝子、広範囲のDNA断片の欠失例。
下: 正常コントロール
参考論文
1. 遺 伝 医 学 関 連 の学 会 等(10 学 会 および研 究 会)。遺 伝 学 的 検 査 に関 するガイドライン.2003.日 本 人 類 遺 伝 学 会 。
http://jshg.jp/resources/data/10academies.pdf
2. 自 験 例 、未 発 表 。
3. Schouten JP, McElgunn CJ, Waaijer R, et al. Relative quantification of 40 nucleic acid sequences by multiplex ligation-dependent probe amplification. Nucleic Acids Res.
2002;30(12):e57.
4. Huang JS, Huang CJ, Chen SK, et al. Associations
between VHL genotype and clinical phenotype in familial von Hippel-Lindau disease. Euro J Clin Invest. 2007;37: 492.500.
54
7
遺伝カウンセリング要 約 VHL 病 は常 染 色 体 優 性 遺 伝 性 疾 患 であるため、VHL 病 患 者 を診 断 治 療 し、経 過 観 察 を行 う際 は遺 伝 性 疾 患 として遺 伝 子 診 断 と遺 伝 カウンセリングを行 い、適 切 な対 応 をとることが望 まれる。
解 説
1.遺 伝 性 疾 患 に対 する遺 伝 カウンセリングの必 要 性
遺 伝 カウンセリングでは患 者 と家 族 が必 要 とする遺 伝 学 的 情 報 とす べての関 連 情 報 を提 供 し、患 者 ・家 族 のニーズを理 解 したうえで心 理 的 不 安 を取 り除 き、自 己 決 定 ができるように支 援 する行 為 である。ヒト ゲノム・遺 伝 子 解 析 研 究 に関 する倫 理 指 針 に遺 伝 性 疾 患 の研 究 の 際 には遺 伝 カウンセリングを行 うことが推 奨 されている 1, 3)。VHL 病 は 常 染 色 体 優 性 遺 伝 性 疾 患 で、疾 患 に特 有 な症 状 をもつため、患 者 さ んに遺 伝 子 診 断 や診 断 、治 療 に関 する有 用 な情 報 を提 供 して遺 伝 カ ウンセリングを行 い支 援 することが必 要 となる 2)。現 在 、国 立 大 学 付 属 病 院 など主 ながん拠 点 病 院 には遺 伝 相 談 が行 える体 制 があり、日 本 人 類 遺 伝 学 会 認 定 遺 伝 専 門 医 か医 師 以 外 の認 定 遺 伝 カウンセラ ーによりカウンセリングを行 うことができる。
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2.遺 伝 カウンセリングの過 程 と内 容 1. 病 歴 の調 査 と家 系 図 の作 成
VHL 病 の場 合 は中 枢 神 経 系 血 管 芽 腫 、網 膜 血 管 腫 、腎 腫 瘍 、腎 嚢 胞 、膵 嚢 胞 、膵 腫 瘍(神 経 内 分 泌 腫 瘍)、精 巣 上 体 嚢 胞 、まれに皮 膚 の血 管 腫 などがあることに留 意 して行 う。第 1 度 近 親 者 から、第 2 度 近 親 者 、第 3 度 近 親 者 までの血 縁 者 につ いて性 、生 年 月 日 、既 往 歴(発 症 歴)、年 齢 、生 死(死 因)などを 聴 取 する 3, 4, 5)。
2. VHL 病 の遺 伝 子 検 査 を行 う際 の説 明 事 項
a. VHL 病 について具 体 的 な説 明(常 染 色 体 優 性 遺 伝 性 疾 患 、 浸 透 率 100%)
b. 検 査 目 的 と検 査 方 法 の具 体 的 説 明
c. 遺 伝 子 検 査 の方 法 と正 しく結 果 が出 る確 率
高 知 大 学 医 学 部 泌 尿 器 科 で塩 基 配 列 解 析 と MLPA 法 で 併 せて約 84%の確 率 である。
d. 予 想 される利 益
<陽 性 の結 果 が得 られたとき>
陽 性 と確 定 して不 確 実 性 からの不 安 から解 放
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発 症 のリスクを予 測 できる
予 防 的 措 置(禁 煙 や特 定 の薬 物 の回 避 、健 康 診 断 の受 診 な ど)を選 択 でき、早 期 診 断 に役 立 ち、様 々な合 併 症 に対 し、早 期 に対 応 できる
遺 伝 子 の変 異 の場 所 がわかり、家 族 の方 の遺 伝 子 診 断 に役 立 つ
<陰 性 の結 果 が得 られたとき>
陰 性 が確 定 して不 確 実 性 の不 安 から解 放 され、それ以 上 の心 配 や検 査 などをせずに済 む
e. 予 想 されるリスクと不 利 益
<陽 性 の結 果 が得 られたとき>
家 族 との関 係 に問 題 が生 じる可 能 性 、親 族 に伝 える必 要 性
生 命 保 険 加 入 の問 題
精 神 的 ショックを受 ける可 能 性
子 どもに遺 伝 する可 能 性
<陰 性 の結 果 が得 られたとき>
陰 性 の結 果 が出 ても VHL 病 の可 能 性 は完 全 に否 定 できない
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上 記 のため VHL 遺 伝 子 が正 常 でも発 症 のリスクがある場 合 も ある
家 族 中 に陽 性 者 がいる場 合 、問 題 が生 じる可 能 性 がある
f. 検 査 を行 わないことの利 点 、欠 点
・発 症 前 診 断 はできないため、一 般 の臨 床 診 断 で対 応 する
・将 来 に対 する病 気 の発 症 についての不 確 実 性 がある
g. 未 成 年 者 では 15 歳 までは親 権 者 の同 意 のみで行 える 16 歳 以 上 では親 権 者 とともに対 象 者 の同 意 も必 要 となる h. プライバシーの保 護
i. 検 査 を受 けることの自 由
上 記(a)-(h)の項 目 について説 明 して同 意(informed consent) を得 る。
3. 遺 伝 的 リスクの推 定 と評 価(再 発 率 と浸 透 率)
a. 再 発 率(子 孫 に遺 伝 する確 率) 50%(2 分 の 1) b. 浸 透 率(発 症 するかどうかの可 能 性) 100%
4. 遺 伝 子 検 査 の結 果 の説 明
遺 伝 子 検 査 の結 果 は(a)-(d)に該 当 する。
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a. 病 的 遺 伝 子 変 異
VHL 病 の場 合 は病 気 を発 症 することが確 定 する遺 伝 子 異 常 が塩 基 配 列 解 析 、MLPA 法(大 規 模 の遺 伝 子 欠 失 を解 析 す る方 法)により約 84%で確 定 できる。また、VHL 病 1 型(Pheo
-)、VHL 病 2 型(Pheo+)が過 去 の文 献 的 な結 果 から推 定 で きる。
定 期 的 臨 床 検 査 で早 期 診 断 が可 能 である。
b. 病 的 かどうか判 断 が困 難 な変 異
SNP(遺 伝 子 多 型 による一 塩 基 置 換)などと判 別 が困 難 な変 異 が時 に存 在 する。家 族 内 の既 発 症 患 者 の遺 伝 子 検 査 の結 果 より推 定 する。
c. 病 的 な意 義 のない変 異 d. 異 常 が認 められない場 合
この場 合 は臨 床 的 診 断 に頼 ることとなる。
5. 遺 伝 子 検 査 後 のフォローアップ
検 査 後 は、適 宜 カウンセリングを継 続 する。
3.遺 伝 カウンセリングの方 法
遺 伝 カウンセリングでは非 指 示 的 対 応 、共 感 的 理 解 、受 容 的 態 度 のカウンセリングの 3 原 則 を守 る必 要 がある。遺 伝 カウンセリングでは
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正 確 な遺 伝 医 学 の知 識 をわかりやすく伝 えることにより、遺 伝 的 問 題 で悩 む患 者 家 族 の不 安 を取 り除 く、相 談 者 の考 え方 、感 受 性 、事 前 の知 識 、理 解 力 、不 安 の大 きさ、医 療 に対 する信 頼 感 が個 々で異 な ることに注 意 する。
4.遺 伝 カウンセリングの際 に考 慮 すべき事 柄
遺 伝 カウンセリングは、予 約 制 で時 と場 所 を定 めて行 い、事 前 に血 縁 関 係 のわかる家 系 図 を準 備 するよう患 者 に伝 えることが望 まれる 4,
5)。
多 くの遺 伝 病 で、そのサポートグループが結 成 されている。患 者 の 希 望 があればそのグループに連 絡 をとることを勧 めてもよい。医 療 者 側 からは得 られない情 報 、患 者 は自 分 だけではないという安 堵 感 が 得 られる。VHL 病 では、ほっと Chain(http://www.vhl-japan.org/)と いう患 者 会 が存 在 する。
5.その他 カウンセリングを行 う際 に注 意 すべき項 目 就 職 、結 婚 、妊 娠 についても注 意 を払 う。
今 後 も継 続 して遺 伝 カウンセリングができることを保 障 する。
参考論文
1. ヒトゲノム・遺 伝 子 解 析 研 究 に関 する倫 理 指 針(平 成 16 年 12 月 28 日 全 部 改 正)
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2. 遺 伝 医 学 関 連 の学 会 等(10 学 会 および研 究 会).遺 伝 学 的 検 査 に関 するガイドライン.2003.日 本 人 類 遺 伝 学 会 ホームページ.
http://jshg.jp/resources/data/10academies.pdf
3. 信 州 大 学 医 学 部 附 属 病 院 遺 伝 子 診 療 部 編 ホームページ (Genotopia)
http://genetopia.md.shinshu-u.ac.jp/genetopia/basic/basic 2.htm
4. 執 印 太 郎 ,吉 川 千 明 ,芦 田 真 吾 .Von Hippel-Lindau 病 .宇 都 宮 譲 二 ,監 修 .恒 松 由 紀 子 ,湯 浅 保 仁 ,数 間 恵 子 ,他 ,編 . 家 族 性 腫 瘍 遺 伝 カウンセリング─理 論 と実 際─.東 京 :金 原 出 版 ;2000.p.297-301.
5. 福 島 義 光 .専 門 医 の行 う遺 伝 カウンセリング.宇 都 宮 譲 二 ,監 修 .恒 松 由 紀 子 ,湯 浅 保 仁 ,数 間 恵 子 ,他 ,編 .家 族 性 腫 瘍 遺 伝 カウンセリング─理 論 と実 際─.東 京 :金 原 出 版 ;
2000.p.130-6.
61
8
各腫瘍の経過観察と治療ガイドラインこの項 で、各 腫 瘍 の診 断 治 療 、経 過 観 察 について述 べる。過 去 の 経 験 から VHL 病 は幼 小 児 期 より発 症 し、VHL 病 の家 系 内 で未 発 症 の者 や、遺 伝 子 診 断 によってすでに潜 在 性 患 者 と診 断 を受 けている 者 の場 合 は発 症 前 にある年 齢 から CT、MRI などの検 査 を定 期 的 に 受 けて経 過 観 察 を行 うことが必 要 である。また、治 療 しても多 くの腫 瘍 は再 発 性 でありさらに経 過 観 察 を行 う必 要 がある。この点 からいくつ かの腫 瘍 では特 に発 症 前 の診 断 を含 む「経 過 観 察 」と「診 断 と治 療 」 という 2 項 目 に分 けて述 べる。また、中 枢 神 経 系 血 管 芽 腫 の項 では
「放 射 線 治 療 」が特 別 な治 療 項 目 として位 置 づけられており、その評 価 を述 べる必 要 があると考 えられたので別 項 目 として入 れた。
1>中枢神経系血管芽腫 1.経 過 観 察
要約
ハイリスク群(遺伝子検査陽性例、または家族歴がある場合、他臓器の 発症でVHL 病と診断された場合)は11歳より2年毎に造影MRI検査を行 う。
小脳など:2cm以下、脊髄1cm以下の無症候性腫瘍でも嚢胞や腫瘍周 囲に浮腫を伴う場合は急速に増大する可能性があるので1)、半年~1 年に 1回の経過観察を行う。
62
解 説
Lonser らの報 告 2)によると、脳 脊 髄 血 管 芽 腫 の平 均(範 囲)発 症 年 齢 は、部 位 別 でそれぞれ、小 脳 33(9~78)歳 、脳 幹 32(12~46)歳 、 脊 髄 33(12~66)歳 である。このデータをもとに、他 の臓 器 病 変 の発 症 が先 行 し、VHL 病 と診 断 された場 合 は、11 歳 から脳 脊 髄 MRI(造 影 T1、T1、T2、Flair 像)を 2 年 に 1 回 行 う。症 候 性 腫 瘍 もしくは無 症 候 性 腫 瘍(小 脳 :2cm以 上 、脊 髄1cm以 上)が発 見 された時 点 で摘 出 術 もしくは定 位 照 射 を行 う。そのサイズ以 下 の無 症 候 性 腫 瘍 でも嚢 胞 や腫 瘍 周 囲 に浮 腫 を伴 う場 合 は急 速 に増 大 する可 能 性 があるので
1,3,9)、半 年 ~1 年 に 1 回 の経 過 観 察 を行 う。
2.外 科 的 治 療 要約
中枢神経系の血管芽腫は症候性のものは脳幹深部髄内腫瘍を除いて 手術摘出を行う。
無症候性腫瘍には原則的には症候性となったときに行うが脊髄腫瘍で は1cm以上、または増大傾向があるものは無症状でも手術が推奨される。
解 説
中 枢 神 経 系 の血 管 芽 腫 は主 に小 脳 、脳 幹 、脊 髄 に発 生 する。MRI にて腫 瘍 が確 認 された症 候 性 のものは脳 幹 深 部 髄 内 腫 瘍 の場 合 を 除 いて基 本 的 に腫 瘍 摘 出 術 が推 奨 される。脊 髄 腫 瘍 と脳 幹 部 腫 瘍
63
は症 状 が進 行 すると摘 出 を行 っても症 状 の著 明 な改 善 が少 ないこと から、症 状 が軽 度 であるうちに摘 出 手 術 を考 慮 する。
実 質 性 の腫 瘍 は全 摘 出 を行 い、嚢 胞 を伴 う腫 瘍 は、壁 在 結 節 のみ 摘 出 する。
無 症 候 性 の腫 瘍 に関 しては、腫 瘍 実 質 ・嚢 胞 ともに一 定 速 度 で増 大 するとは限 らず、ある時 期 に急 速 に増 大 することがあるので定 期 的 な MRI 検 査 を継 続 することが重 要 である。また嚢 胞 は実 質 腫 瘍 よりも 増 大 速 度 が速 いため注 意 が必 要 である 1,3,9)。
小 脳 の無 症 候 性 腫 瘍 は症 候 性 になってから手 術 を行 うことを原 則 とするが、1)直 径 が 2cm 以 上 、2)画 像 上 腫 瘍 または嚢 胞 の急 速 に拡 大 をみたものは無 症 候 性 であっても手 術 による摘 出 が推 奨 される
1,3,4,9)。
脊 髄 腫 瘍 は無 症 候 性 でも、1)1cm 以 上 、2)腫 瘍 の周 辺 に浮 腫 を伴 うもの、または 3)定 期 的 な MRI により腫 瘍 または嚢 胞 の増 大 がみら れるものは摘 出 を行 う 3,5-7,9)。
脳 幹 部 腫 瘍 は、症 候 性 または 1cm 以 上 の無 症 候 性 のもので、なお かつ脳 幹 表 面 に位 置 するものは早 期 手 術 による摘 出 術 を考 慮 する。
脳 幹 深 部 に存 在 するものは手 術 による摘 出 が困 難 なものもあり放 射 線 治 療 も考 慮 する(第 9 章 フローチャート参 照) 3,8,9)。
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VHL 病 の症 例 では、血 管 芽 腫 の手 術 を複 数 回 受 ける事 が多 く、か つ、手 術 回 数 が増 えるたびに、神 経 所 見 が悪 化 していく傾 向 がある。
長 期 的 視 野 に立 って、手 術 適 応 を考 える必 要 がある 10)。
血管芽腫に対して、血管内治療として術前塞栓術を行う事で、術中出血 量を減らす事ができた症例も報告されている。しかし、A-V シャントの強い症 例では、先に静脈が詰まってしまい、塞栓術後の出血で予後不良となる症 例も報告されており、適応は慎重を要する。11,12) 流入動脈がはっきりして いて、血行を遮断することが危険でなく、かつ手術中初期の段階で流入動 脈を切断することが技術的に困難と判断される場合に、術前塞栓術の適応 を考える。
3.放 射 線 治 療 要約
外科手術が困難な場合、定位放射線治療が考慮される。
脊髄・脳幹部発生のものも含めて効果は期待される。
無症候性病変に対する予防的照射は勧められない。
腫瘍制御率は治療後5 年で8 割ほどである。
拡大する嚢胞には適切な治療法ではない。
解 説
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放 射 線 治 療 は、症 候 性 となったものあるいは増 大 傾 向 を続 ける腫 瘍 に対 して、手 術 摘 出 リスクが高 く適 応 でないと判 断 される時 に第 2 選 択 肢 として用 いられる。文 献 上 の報 告 例 では定 位 放 射 線 治 療 によ る腫 瘍 制 御 率(少 なくとも腫 瘍 が増 大 しない)は治 療 後 5 年 で 80%以 上 である13-26)。 2009 年 の Moss らの報 告 では、定 位 放 射 線 治 療 を された 31 例 82 病 変 での局 所 制 御 率 は、3 年 で 85%、5 年 で 82%で あったとされる18)。5 例 で放 射 線 壊 死(平 均 腫 瘍 辺 縁 線 量 28.2Gy)が 発 生 し、そのうちの 2 例 が症 候 性 であった。一 方 、照 射 前 に症 候 性 で あった 41 病 変 中 の 36 病 変(88%)で臨 床 症 状 が改 善 した。しかし 2010 年 に Asthagiri らは治 療 後 5 年 の腫 瘍 制 御 率 は Moss らの報 告 同 様 83%であるが、10 年 では 61%、15 年 では 51%まで低 下 する ことを報 告 している 25)。2015 年 、Kano らの報 告 では、局 所 制 御 率 は、
3 年 で 92%、5 年 で 89%、10 年 で 79%であった。VHL 病症例の方が、
非 VHL 病症例よりも、腫瘍体積が小さい内に照射していることもあり、治療 成績が良好な傾向であった26)。脊 髄 血 管 芽 腫 の治 療 成 績 は頭 蓋 内 病 変 と同 様 である。拡 大 する嚢 胞 成 分 が問 題 となる例 には放 射 線 治 療 の選 択 は適 切 ではない。VHL 特 有 の問 題 は、定 位 放 射 線 治 療 をした 腫 瘍 に近 接 した部 位 に新 たに腫 瘍 が増 大 した場 合 に、追 加 の照 射 で は放 射 線 照 射 野 の重 複 が生 じることである。
2>内耳リンパ嚢腫 要約
経過観察:11歳から2年毎に中枢神経系血管芽腫スクリーニングと同 時にMRIと聴力検査にて診断する。
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診断と治療:診断は、症状・聴力検査・画像診断(MRI, CT)によって行わ れ、発見された場合は聴力低下に注意しながら積極的に手術を行う。
解 説
1.経 過 観 察
VHL病に伴う内耳リンパ嚢腫は、VHL病患者の3.6~16%に発症するこ とが報告され27-30)、内耳リンパ嚢腫全体の5~15%がVHL 病に伴うものと される29)。VHL病の場合、内耳リンパ嚢腫の発症時期は、11~63歳で平 均22歳頃と考えられるため 2,28)、内耳リンパ嚢腫のスクリーニングは、11 歳から2 年毎に中枢神経系血管芽腫のスクリーニングと同時に聴力検査 (audiometry)と頭部の高解像度MRI(T1強調像、造影T1強調像、T2強調 像、Flair 像)を行う2)。スクリーニングで内耳リンパ嚢腫が認められれば積 極的に手術を行うことが薦められる31-33)。手術を行って腫瘍が残存している 場合は再手術を行うか、放射線治療を行って、半年~1年毎に聴力検査、
MRI、CTにてフォローアップを行う。また片側の内耳リンパ嚢腫を伴う VHL 病患者の約30%は対側の内耳リンパ嚢腫もいずれ発症するため 29)、片側 の内耳リンパ嚢腫を治療した場合は、対側も含め1年毎にMRI、聴力検査 にて経過観察する。
2.診断と治療
内耳リンパ嚢腫の診断は、臨床症状、画像診断、聴力検査(audiometry) により行う。臨床症状は、聴力低下(95%)、耳鳴(92%)、眩暈(62%)、耳閉 感(29%)、顔面神経麻痺(8%)を呈する33)。画像診断では描出されない微小 な内耳リンパ嚢腫も存在するが34)、内耳リンパ嚢腫が画像診断で描出され
67
ている場合は、頭部MRIの造影T1強調像で造影病変として描出され (100%)、微小な内耳リンパ嚢腫は頭部MRIのFlair像で膜迷路内の血腫を 示唆する高信号として描出される(38%)32)。頭部の高解像度CTでは内リン パ管の骨融解像として描出される31)。聴力検査では、段階的な聴力低下 (43%)または急速進行性の聴力低下(43%)を認め、緩徐進行性の聴力低 下(14%)は少ない33)。早期の内耳リンパ嚢腫では、比較的低音域から聴力 が障害される傾向がある33,34)。
内耳リンパ嚢腫の治療は、原則として外科的切除である31-33。腫瘍は小 さくても突然聴力消失をきたすことがあるので発見されたら治療を早期に計
画する31, 33)。一度聴力を失えばその回復は非常に困難であり、早い段階で
症状を監視し慎重に対処することは聴覚を温存するためには重要である。
手術方法は、腫瘍の大きさによって異なるが、多くの場合(73%)後迷路錐体 切除法(retrolabyrinthine petrosectomy)により行われ 31, 32)、腫瘍を摘出す る。腫瘍が小さく内耳リンパ嚢内に留まっていれば聴力の温存が可能であ る31)。別の手術アプローチとして経耳法(12%), 前/後 S状静脈洞法(9%), 経迷路あるいは側頭下/経迷路法(6%)で行われる場合もある32)。易出血性 で大きな腫瘍では術前に塞栓術が有効な場合がある 32)。術後の症状では、
聴力は術後97%で不変か改善し、低下は3%であった。眩暈は術後86%で 消失し、14%で改善した。耳鳴は、術後96%で消失したが、4%では不変で あった。耳閉感は 術後 77%で消失したが、23%では不変であった。顔面神 経麻痺は術後75%で改善したが25%では不変であった 32)。放射線治療は
68
腫瘍が残存した場合に行われることがあり、その効果は定まっていないも のの有用性が示唆されている32) (第 9章フローチャート参照)。
3>網膜血管腫 要約
新生児より経過観察を開始する。
眼底検査により診断するが、蛍光眼底造影検査などの補助検査も重要 である。
治療の基本は網膜光凝固であり合併症に対して手術を行う。
傍視神経乳頭型では網膜光凝固が不可能な場合もある。
解 説
1.経 過 観 察 35, 36)
新 生 児 で眼 底 検 査 を行 う。眼 底 病 変 を認 めない場 合 、3 年 毎 に観 察 する。病 変 を認 め視 力 に影 響 を及 ぼす場 合 は適 宜 、影 響 を及 ぼす 可 能 性 の低 い場 合 は 1 年 毎 に観 察 する。
他 臓 器 病 変 を認 めたため眼 底 検 査 を行 う場 合 は、病 変 を認 めなけ れば2年 毎 に観 察 する。病 変 を認 め視 力 に影 響 を及 ぼす場 合 は適 宜 、 視 力 に影 響 を及 ぼす可 能 性 の低 い場 合 は 1 年 毎 に観 察 する。
2.検 査 35, 36)
眼 底 検 査 と細 隙 灯 顕 微 鏡 検 査 により診 断 する。病 変 を認 める場 合 は蛍 光 眼 底 造 影 検 査 、網 膜 光 干 渉 断 層 検 査 、超 音 波 検 査 を行 う。
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3.治 療
a. 周 辺 部 型
網 膜 滲 出 性 病 変 があれば網 膜 光 凝 固 を行 う 37)。網 膜 光 凝 固 には病 巣 血 管 凝 固 と栄 養 血 管 凝 固 の 2 種 類 がある。合 併 症 に 対 しては強 膜 内 陥 術 や硝 子 体 手 術 を行 う。網 膜 冷 凍 凝 固 につ いては慎 重 な実 施 が望 ましい。
b. 傍 視 神 経 乳 頭 型
網 膜 滲 出 性 病 変 を認 め網 膜 光 凝 固 可 能 な場 合 は網 膜 光 凝 固 を行 う37)。不 可 能 な場 合 の治 療 法 は確 立 されていない。生 物 学 的 製 剤 硝 子 体 注 射 38)や光 線 力 学 療 法 39)の効 果 が報 告 され ているが、各 施 設 の倫 理 委 員 会 で審 査 を受 ける必 要 がある(第 9 章 フローチャート参 照)。
4>褐色細胞腫 要約
VHL病2型家系では、2歳より問診と尿・血液のホルモン検査を開始、
10歳より画像検査を導入し他の腹部病変と同時にスクリーニングを行う。
手術では可能な限り副腎部分切除を行い、皮質機能温存をはかる。ま た腹腔鏡などの低侵襲手技がすすめられる。
解 説
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VHL では褐 色 細 胞 腫 の発 症 がない家 系(1 型 家 系 、VHL type1)と、
好 発 する家 系(2 型 家 系 、type2)が知 られており、後 者 では 90%以 上 の患 者 で褐 色 細 胞 腫 の発 症 がみられる家 系 もある 40, 41)。発 症 年 齢 は 3 歳 と早 期 からみられることがある。一 方 、VHL 例 は一 般 例 よりホ ルモン活 性 、臨 床 症 状 が軽 いものが多 い 42-46)。
1.経 過 観 察
家 族 歴 より発 症 の可 能 性 がある場 合(VHL type2 家 系)。 a. (2 歳 ~生 涯):1×/年 で、
1. 問 診(褐 色 細 胞 腫 に特 有 な症 状 の聴 取) 2. 生 化 学 検 査
1. (スクリーニング検 査)随 時 尿 メタネフリンン・ノ ルメタネフリン(Cr 補 正)(基 準 値 上 限 の 3 倍 以 上 を 陽 性)
2. 24 時 間 酸 性 蓄 尿 による、メタネフリン、ノル メタネフリン検 査 、アドレナリン、ノルアドレ ナリン検 査(基 準 値 上 限 の 3 倍 以 上 を陽 性)
3. 血 中 カテコールアミン検 査(基 準 値 上 限 の 2 倍 以 上 を陽 性)
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b. (10 歳 以 上 で画 像 検 査 導 入 、他 の腹 部 病 変 も同 時 にスク リーニング):
腹 部 超 音 波 1×/年 、腹 部 MRI 1×/2~3 年 c. (20 歳 以 上 ~生 涯):
腹 部 CT 1×/1~2 年
なお、MIBG シンチは被 検 者 の負 担 が大 きいので確 定 診 断 に 用 い、通 常 のスクリーニングとしてはすすめない。
2.診 断 と治 療
診 断 は一 般 例 の褐 色 細 胞 腫 と同 様 に行 う。一 方 、画 像 検 査 で偶 然 みつかった、小 さな非 機 能 性 のものでは経 過 観 察 が可 能 である。この 場 合 、~1×/6 カ月 のフォロー検 査 を行 い、1)生 化 学 検 査 が陽 性 化 、 2)腫 瘍 が 3.5cm 以 上 に増 大 、あるいは、3)他 の手 術 を予 定 する時 点 で褐 色 細 胞 腫 の手 術 をすすめる 47)。治 療 は通 常 例 と同 様 に切 除 手 術 を行 う。VHL では同 時 性 、異 時 性 に多 発 し、複 数 回 の手 術 の可 能 性 があるので、可 能 な限 り部 分 切 除 により副 腎 皮 質 機 能 の温 存 をは かる。また腹 腔 鏡 などの低 侵 襲 手 技 がすすめられる 47, 48)。
3. 鑑 別 診 断
鑑 別 診 断 としては、VHL病 以 外 の褐 色 細 胞 腫 を発 症 する遺 伝 性 疾 患 、すなわち多 発 性 内 分 泌 症 (MEN)、神 経 線 維 腫 症 Ⅰ型 (NF1)(レ ックリングハウゼン病 )、遺 伝 性 傍 神 経 節 腫 症 候 群 (コハク酸 脱 水 素
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酵 素 (Succinate Dehydrogenase:SDH)変 異 陽 性 傍 神 経 節 腫 )な どを考 慮 する。
5>腎腫瘍 要約 経過観察
腎腫瘍診断のためのスクリーニングは 15歳に開始し、生涯にわたり経 過観察する。診断方法としてはDynamic CT(造影早期CT)が推奨される。
診断と治療
腫瘍径が2cmを超えたところで治療を考慮する。治療法としては腎温存 手術が推奨される。
腎嚢胞については、サイズにかかわらず経過観察が推奨される。
解 説
1.腎 腫 瘍 のスクリーニング(診 断)および経 過 観 察
VHL 病 に伴 う腎 腫 瘍 の発 症 時 期 は 15 歳 前 後 と考 えられているた め、腎 腫 瘍 のスクリーニングは15歳 に開 始 する。画 像 診 断 法 としては、
Dynamic CT が最 も優 れているが、腎 機 能 障 害 がある場 合 は MRI を 用 いる。尚、VHL 病に伴う腎腫瘍とBirt-Hogg-Dube (BHD)に伴う腎腫瘍 が両側性、多発性という面で類似するが、Dynamic CT で鑑別可能であ るとされている。
経 過 観 察 中 に腫 瘍 性 病 変 が確 認 された場 合 、年 1~2 回 画 像 診 断 を行 い、腫 瘍 径 が 2cmになるまで経 過 観 察 する。腫 瘍 径 が 2cm にな った段 階 で腎 病 変 に対 する治 療 を考 慮 する。腎 内 に腫 瘍 性 病 変 を認