§ 8.2 立体図形の体積
例として,右図のような立体図形
V(中も詰 まっているものとします)の体積を求めることを 考えます. 話を分かり易すくするためにこの立体
Vは回転体であるとします.
回転体
Vに対して,右下の図のように,
Vの 中心軸と平行になるように
x座標軸を設定しま す. 回転体
Vに属す点の
x座標うち,最小値を
aと,最大値を
bとおきます. 更に,区間
[a , b]の各実数
tに対して,
x軸の座標
tの点を含み
x軸に垂直な平面と立体
Vとの共通部分である 平面図形の面積を
S(t)とおきます. この関数
Sは
aから
bまで積分可能であるとします.
回転体
Vを直円柱の形の円盤を重ねた立体で
a t b x
共通部分の面積
S(t)近似します.
a =x0 ≤ x1 ≤x2 ≤ x3 ≤x4 = b
となる実数
x0, x1, x2, x3, x4をとります. そして,次の図のように,
4枚の円盤を重 ねた立体で立体
Vを近似します.
x x0 x1 x2 x3 x4
底面積
S(x0)底面積
S(x1)底面積
S(x2)底面積
S(x3)x1−x0
x2−x1
x3−x2
x4−x3
このとき,
4枚の円盤の体積の合計
W4は
W4=S(x0) (x1−x0) +S(x1) (x2−x1) +S(x2) (x3−x2) +S(x3) (x4−x3)
=
∑4
k=1{S(xk−1) (xk−xk−1)} .
円盤の枚数を
nとおきます. 正の各自然数
nに対して,
a = x0 ≤x1 ≤x2 ≤x3 ≤ · · · ≤ xn−1 ≤ xn = b
となる実数
x0, x1, x2, x3, . . . , xn−1, xnをとります.
δn = max{x1−x0, x2−x1, x3−x2, . . . , xn−xn−1}
について,
n→ ∞のとき
δn→0とします. 下図のように,
n枚の円盤を重ねた立 体で回転体
Vを近似します.
a b x a b x
n= 10
のとき
n= 20のとき
このとき,
Vの体積の近似値,つまり
n枚の円盤の体積の合計
Wnは
Wn =n
∑
k=1
{S(xk−1) (xk−xk−1)} .
これは関数
Sのリーマン和です. 円盤の枚数
nを大きくすると近似の精度が高くな ります. ですから,W
nの極限値
limn→∞Wn
が
Vの正確な体積になります.
Wnは 関数
Sのリーマン和ですから
limn→∞Wn =Rb
aS(x)dx
. 従って,関数
Sの定積分
Rb
aS(x)dx
が回転体
Vの体積になります.
回転体に限らず立体について一般的に次の定理が成り立ちます.
定理8.2
立体
Vに対して
x座標軸が設定さ
a t b x
共通部分の面積
S(t)れているとする.
Vに属す点の
x座標のう
ち,最小値を
aと,最大値を
bとおく. 区 間
[a , b]の各実数
tに対して,
x軸の座標
tの点を含み
x軸に垂直な平面と
Vとの共通 部分の面積を
S(t)とおく; この関数
Sは
aから
bまで積分可能であるとする. このと き,立体
Vの体積は
RbaS(t)dt
である.
問題
8.2.1空間内の
4点
A,B,C,Dを頂点とする三角
AB C D
0
11 ξ
錐
ABCDにおいて,角
ABC,ABD,CBDは直角である
とします.
AB = 11 , BC = 5 , BD = 8とします. こ の三角錐の体積を考えます. 直角三角形
BCDを底面と します. 頂点
Aを原点とし,頂点
Aから頂点
Bへの向 きに座標軸をとります. この座標軸上で座標が
ξの点を 切片とする座標軸に垂直な平面と三角錐
ABCDとの共通 部分(右図の網掛けの部分)と直角三角形
BCDとは相似 であり,相似比は
ξ: 11で,面積の比は
ξ2: 112です.
(1)
座標が
ξの点を切片とする座標軸に垂直 な平面と三角錐
ABCDとの共通部分の面積を 求めなさい.
(2)
変数
nを正の自然数とします.
0 =x0≤x0= 0 ξ1 x1 ξ2
x2
ξ3
x3
... xn−1 ξn
xn= 11 A
B
C D
ξ1≤x1≤ξ2≤x2≤ξ3≤x3≤ · · · ≤xn−1≤ξn≤ xn= 11
である実数
x0, x1, x2, x3, . . . , xn−1, xn及び実数
ξ1, ξ2, ξ3, . . . , ξnに対して,右図 のように三角錐
ABCDを
n個の直三角柱(側 面は底面及び上面と垂直)を併せた立体で近似 します: この体積
Snを表す式を記しなさい.
またこの式を何というか記しなさい.
(3) δn = max{x1−x0, x2−x1, x3−x2, . . . ,
A
B
C D
xn−xn−1}
について
limn→∞δn = 0
とします; つ まり
n→ ∞のとき
x0, x1, x2, x3, . . . , xn−1, xnの間隔は総て
0に近づくとします.
n→ ∞のと き薄い三角柱を併せた立体の体積
Snは右図のよ うに三角錐
ABCDの体積に限りなく近づきます;
つまり
Snの極限値
limn→∞Sn
が三角錐
ABCDの 体積になります. このことを用いて, 定積分に よって三角錐
ABCDの体積を求めなさい.
例題
xy座標平面において不等式
1≤x≤3と
0≤y≤ 1x
とで表される平面領域 を考える.
3次元空間においてこの平面領域を
x軸を中心に回転させてできる回転体 の体積を求める.
〔
解説〕 与えられた回転体を
Vとおく. 区間
[1,3]の各実数
tに対して,x 軸の 座標
tの点を含み
x軸に垂直な平面と
V
をとの共通部分は円である; その 半径を
rとおくと,
xy座標平面にお いて点
(t , r)は
y = 1x
のグラフに属 すので,
r=1t
; よって,共通部分の 面積
S(t)は
S(t) = πr2 = π1 t
2
= π t2 .
従って,回転体
Vの体積は,
x y
0 1 t 3
r (t , r) y= 1
x
R3
1S(t)dt= Z 3
1
π
t2dt=πR3
1t−2dt=π
−t−13
1=−πh1 t
i3
1=−π1 3−1
= 2π
3 . 終
問題
8.2.2 xy座標平面において不等式
0≤x≤3と
0≤y≤ex−1とで表され る平面領域を考えます.
3次元空間においてこの平面領域を
x軸を中心に回転させて できる回転体の体積を求めなさい.
例題
xy座標平面において楕円
x2 9 +y24 = 1
で囲まれる平面領域を,
3次元空間に おいて
x軸を中心に回転させてできる回転体の体積を求める.
〔解説〕 xy
座標平面において楕円
x2 9 +y24 = 1
で囲まれる平面領域を
x軸を中心に 回転させてできる回転体を
Vとおく.
1−x29 =y2
4 ≥0
なので
−3≤x≤3. 区間
[−3,3]の各実数
tに対して,
x軸の座標
tの点を含み
x軸に垂直な平面と
Vとの 共通部分は円である; その半径を
rとおくと,
xy座標平面において点
(t , r)は楕円
x2 9 +y2
4 = 1
に属すので
t2 9 +r24 = 1
, よって
r2 = 4
1−t2 9
;
共通部分の面積
S(t)は
xy
0 3
−3
2
−2 t
r (t , r)
x2 9 +y2
4 = 1 S(t) = πr2 = 4π
1−t2
9
.
故に回転体
Vの体積は,
R3
−3S(t)dt= Z 3
−3
4π
1−t2 9
dt= 4π
t−t3
27 3
−3
= 4πn 3−27
27−
−3−27 27
o
= 16π . 終
問題
8.2.3 xy座標平面において楕円
x2 5 +y24 = 1