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『影と光』

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Academic year: 2021

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名作再読、拾い読み(9)

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『影と光』

『影と光』 ("The Shadow and the Flash") ("The Shadow and the Flash") 小澤 文彦

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図書館員の文献紹介

 ジャック・ロンドン(Jack London, 1876-1916)は、

サン・フランシスコ生まれのアメリカ自然主義文 学を代表する作家です。

 貧しい少年時代を送り、小学校を終えると直ぐ に働き始めます。様々な仕事を経験した後、1893 年にアザラシ狩りの船に乗って日本に向かいます。

7ヵ月後に帰国した時、アメリカは大恐慌に見舞 われていました。失業者の群れに混じって放浪の 旅に出掛けます。放浪の間に旺盛な知識欲を示し てダーウィンやハーバート・スペンサーの進化論、

ニーチェの超人思想、マルクスの社会主義など幅 広く読書します。1895年にオークランドに戻って ハイスクールに入り翌年にはカリフォルニア大学 に進学しますが、家計を助けるため中途退学せざ るを得ませんでした。1897年、ジャックが21歳の 時、アラスカのクロンダイク地方で金鉱が発見さ れたというニュースが伝わると、彼もゴールド・

ラッシュの波に乗って冒険に乗り出します。その 時の体験から生まれた短編が雑誌に採用され始め、

1900年に最初の短編集『狼の息子』を出版した後、

『野性の呼び声』(1903)で人気作家となりました。

以後、創作活動を活発に行い、豪華な帆船を建造 したり大邸宅を建てたりして裕福に暮らしますが、

1916年に40歳という若さで亡くなりました。モル

ヒネ自殺と言われています。

 傑作とされている『野性の呼び声』では、カリ フォルニアの邸宅で安楽な生活を送っていたバッ クという犬が、攫われてアラスカへ売り飛ばされ、

橇犬として働かされているうちに野性に目覚めて いき、やがて狼のリーダーとなる姿が描かれてい ます。反対に、狼の子が人間に飼われて文明化さ れた犬になる『白い牙』(1906)という作品もあり ます。

 他に、イギリスの首都ロンドンの貧民街をルポ ルタージュした『どん底の人々』(1903)、自伝的 小説『マーティン・イーデン』(1909)と『ジョン・

バーリコーン』(1913)、社会小説『鉄の踵』(1908) などがあります。

 短編集は彼の想像力の豊かさを示す作品が多い と 言 わ れ て い ま す が 、 そ の 中 か ら 『 影 と 光 』

(1903) をお薦めしたいと思います。

 黒眼黒髪のロイドと金髪碧眼のポールという、

二人とも色が違うという点を除けば体型から性質 まで瓜二つと言える少年たちがいました。この二 人は何事においても互いに対抗意識を燃やすので すが、大学へ進学して二人とも化学を専攻します。

同じ女性に恋をして二人とも断られてから、敵対 心は益々激しくなるばかりでした。ロイドはそれ を塗れば見えなくなる究極の黒い塗料を研究し始 めます。成功しますが影を消すことはできません。

他方、ポールは生物に作用して化学変化を起こさ せ透明にする試薬を作り出します。しかし、透明 になる代わりに虹色の閃光を発するようになる問 題は未解決でした。

 透明になったポールを、溶液を塗って姿が見え なくなったロイドが襲います。死を賭しての闘い でした。他の人には影と虹色の閃光の動きしか見 えず、殴り合いの音や呻き声が聞こえるだけでし た。遂に、光は消え影も動かなくなります。

 姿形を見えなくするという人間の昔からの夢を、

光の全吸収と、光の全反射という対照的な方法で 具体化する面白さと、協力し合えば発展が期待で きそうなものを、無意味に争うことから折角の才 能が共倒れになるという愚かしさをメランコリッ クな雰囲気で語りかけてくる短編です。

参考文献

1. "The Bodley Head Jack London"

 (Bodley Head, 1964)

2.『死の同心円』 井上謙治訳 (国書刊行会, 1988)

       おざわ ふみひこ(係・情報サービス課)

さら

そり

参照

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