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[緒言] 多くの有機反応は有機溶媒を使用し,これ

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Academic year: 2021

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(1)

高温高圧の水及びアルコール中におけるナフタセンキノンの還元

日大生産工(院) ○中山宗・日大生産工 佐藤敏幸・岡田昌樹・日秋俊彦 日大総研大学院 岩村秀

[緒言] 多くの有機反応は有機溶媒を使用し,これ

らは目的生成物の収率・選択率向上に不可欠であ るが,炭化水素系,エーテル系,含塩素系溶媒に は揮発性のものが多く,人体や環境への影響を考 慮すると理想的なプロセスとは言い難い。そこで,

近年,環境調和型の新規反応場として超臨界流体 に注目が集まっている。臨界点を超えた超臨界水 は,有機溶媒と同程度の誘電率を示すことから,

水のみを用いた無触媒有機合成あるいは変換反 応が可能となる。一方,最近の研究で,超臨界ア ルコールの特性に注目しこれを溶媒とする新規 有機合成プロセスも報告されている。

1)

そこで,我々は,水もしくはアルコール中で自 発的に進行する有機合成反応の確立を目的とし て,近年,需要が増えつつある太陽電池や有機 EL ディスプレイ等など,有機半導体の原料となるポ リアセンに注目した。ポリアセンは,通常,ポリ アセンキノンに LiAlH

4

を用いて合成される

2)

。 我々は,既に,環境調和型反応溶媒である水のみ を用いて,ポリアセンキノンの合成に成功してい る

3)

。そこで,本研究では,高温高圧領域を反応 場として,溶媒に水およびアルコールを用いて,

ポリアセンキノンの還元について検討を行った ので結果を報告する。

[実験] 実験では,SUS316 製回分式反応器(内容

積: 10 cm

3

)に,所定量の水又はシクロヘキサノー

ル,還元剤(水の場合のみ)および 5,12-ナフタセ ンキノンを反応器に仕込み,あらかじめ所定の反 応温度に加熱した金属溶融塩浴に投入すること で反応を開始させ,所定時間経過後,反応器を冷 水浴に浸すことで反応を停止させた。反応条件は、

反応温度 400 ℃,反応圧力 30 MPa(水密度 0.35 g/cm

3

から換算),反応時間 3 h(昇温時間の 1 min を含む)とした。溶媒に水を用いた時の 5,12-ナフ

タ セ ン キ ノ ン , 還 元 剤 , 水 の 物 質 量 比 は 1 : 0.25~10 : 1000 とした。還元剤には,

L

-(+)-ア

スコルビン酸およびクエン酸を用いた。また,溶 媒にシクロヘキサノールを用いた時の 5,12-ナフ タセンキノン,シクロヘキサノールの物質量比は 1 : 500 とした。

反応終了後,メタノール溶液を用いて反応器内 の生成物の回収を行い,固体生成物はジクロロメ タンで溶解させ,島津製作所社製ガスクロマトグ ラ フ 質 量 分 析 装 置 (GC/MS), ( カ ラ ム : Agilent Technologies 社製 DB-5MS(内径 0.25 mm,膜厚

0.25 µm,長さ 30 m))により,生成物の定性分析を

行った。

[結果・考察] 初めに,反応溶媒に水,還元剤とし

L-

(+)-アスコルビン酸を用いたときの生成物は,

GC-MS による定性分析の結果,図 1,に示すように

ナフタセンの純物質と生成物のスペクトル開裂 様式が一致していることから,ナフタセンへの還

The Reduction of 5,12-Naphthacenequinone in Hot-Compressed Water and Alcohol Shu NAKAYAMA, Toshiyuki SATO, Masaki OKADA,

Toshihiko HIAKI and Hiizu IWAMURA

−日本大学生産工学部第42回学術講演会(2009-12-5)−

― 107 ―

5-54

(2)

[m/z]

[m/z]

図 1 ナフタセンの MS スペクトル

物質量比[-]

組成比[%]

0 2 4 6 8 10

0 20 40 60 80 100

0 2 4 6 8 10

0 20 40 60 80 100

▲5(12H)-Naphthacenone

●5,12-Naphthacenequinone

■5,12-Dihydronaphthacene

▼Naphthacene

図 2 ナフタセンキノンに対する還元剤の物質量

比変化(水中 400 ℃、時間 3h )

元に成功していることがわかる。次に,

L-

(+)-アス コルビン酸の物質量比を増加させると(図 2),初め

は 5(12H)-ナフタセノンの組成比が増加するもの

の,物質量比 4 以上になると減少する。ナフタセ

ン及び 5,12-ジヒドロナフタセンの組成比は増加

していくことがわかる。このことから脱酸素の進 行は,物質量比に依存していることが考えられる。

また,結果から 5,12-ナフタセンキノンの還元反応 式は図 3 に示す通りである。還元剤にクエン酸を 用い,物質量比を 10 として固定した時の実験結 果を比較してみると,ナフタセンの組成比は,

L

-(+)-アスコルビン酸を用いた時の約 10 %に対し

て,クエン酸を用いた時では約 6 %となった。こ

のことから,

L-

(+)-アスコルビン酸のほうが,クエ ン酸より, 5,12-ナフタセンキノンを還元するのに 適していることがわかった。

O

O

O

+ +

O

O

O

+ +

図 3 ナフタセンキノンの還元反応式

次に,反応溶媒にシクロヘキサノールを用いて,

還元を行った結果,生成物の組成比は 5,12-ジヒド ロナフタセンが約 99%,ナフタセンが約 1%とい う 結果 となり ,シ クロヘ キサ ノール が水 中の

L-

(+)-アスコルビン酸より還元作用が強いことが

わかった。しかし,ナフタセンを越えて還元が進 むという結果になった。

シクロヘキサノール中では,反応時間の短縮,

亜臨界状態での反応を詳細に制御する必要があ る。今後は,その他種々のアルコールを用いて 5,12-ナフタセンキノンの還元を,様々な反応温度 および反応時間において行い,ナフタセンの収率 向上,反応条件の最適化および反応機構の解明を 行う予定である。

[参考文献] 1)B. Hatano, et al., Tetrahedron Letters, 44, 2003, 6331–6333. 2)N. Vets, et al., Tetrahedron Letters 45, 2004, 7287-7289. 3)T. Sawada, et al., Green Chem., 2009, 11 , 1675–1680

反応温度 400 ℃,反応時間 3h

純物質

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参照

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