1
放射線防護
2防護に関する国際組織
国際放射線防護委員会 International Committee on Radiological Protection 放射線防護 基本原則 具体的方策 数値基準 を検討 勧告 法令制定時の参考情報 原子放射線の影響に関する科 学委員会United NatiomsScientific Committee on Effects of Atomic Radiations 放射線源 放射線影響 科学情報 を検討・評価 国連報告 防護基準設定時の科学情報 3
人間の被曝を伴う諸活動に対し、適切かつ安全な諸条件を作り上げ維持すること
であり、具体的には確定的影響を防止し、確率的影響の確率を容認できると思わ
れるレベルにまで制限すること、また放射線被曝が確実に正当化されるようにす
ることである
行為の正当化
被曝を伴う行為は十分な便益がある場合でなければ導入しては
ならない
防護の最適化
すべての被曝は、経済的および社会的な要因を考慮に入れなが
ら、合理的に達成できる限り低く保たなければならない
A
s
L
ow
A
s
R
easonably
A
chievable:
ALARA
の原則
個人の線量限度
個人に対する線量当量は、委員会がそれぞれの状況に応じて勧
告する限度を超えてはならない
医療被曝は例外
ICRPにおける目標
4放射線の影響を評価する上での単位
• 等価線量(Sv):線量当量とほぼ同様・組織ごとに評価
放射線の種類やエネルギーによって生物学的影響が異な
るのでそれを考慮した単位。
確定的影響を評価する単位。
等価線量(Sv)=吸収線量(Gy)x 放射線荷重係数
• 実効線量(Sv):被曝したと考えられる領域全体の組織
を考慮し評価
放射線の種類やエネルギー、被曝した組織の違いによる
生物学的影響を考慮した単位。
確率的影響を評価する単位。
実効線量(Sv)=組織荷重係数 x 被曝した組織の等価
線量の和
5放射線の種類
放射線荷重係数
エックス線
1
γ線
1
陽子線
2
中性子線 =< 10keV
5
10keV < 中性子線 =< 100keV
10
100keV
< 中性子線 =<
2000keV
20
2000keV
< 中性子線
=< 20000keV
10
20000keV < 中性子線
5
α線
20
6放射線感受性のまとめ(一般論)
• 正常組織
リンパ組織・骨髄・胸腺>精巣・卵巣・脾臓>粘膜・
消化器>唾液腺>皮膚
>肺・腎臓>肝臓>甲状腺>血管
>
骨>筋肉・軟骨>神経組織
• 腫瘍組織
悪性リンパ腫・白血病>精上皮腫(ゼミノーマ)>扁
平上皮癌>唾液腺癌
>甲状腺癌>
骨肉腫>悪性黒色腫
細胞再生系、
条件的組織再生系、
細胞非再生系
7
組織荷重係数
ICRP Pub 103
2007
ICRP Pub 60
1990
骨髄
0.12
0.12
乳房
0.12↑
0.05
口腔粘膜
0.12↑
0.05
腸管粘膜
0.12
0.12
肺
0.12
0.12
生殖腺
0.08↓
0.20
甲状腺
0.04↓
0.05
食道
0.04↓
0.05
肝臓
0.04↓
0.05
皮膚
0.01
0.01
唾液腺
0.01
-皮質骨
0.01
0.01
脳
0.01
-
8実効線量の計算例
(全身照射と部分照射)
9放射線の人体への影響
吸収線量(Gy)
等価線量(Sv):局所被曝
実効線量(Sv):全身被曝
放射線荷重係数
組織荷重係数
(確定的影響)
(確率的影響)
10被爆時年齢と0.1Sv被曝に対する固形腫瘍の生涯リスク
Radiation Research 200 3 よ り年齢を考慮する必要がある
11年齢別放射線感受性
年齢
年齢リスク倍増率
10<
X 3.0
11-20
X 2.0
21-29
X 1.5
30
X 1.0
31-50
X 0.5
51-80
X 0.3
81<
無視できる
歯科用エックス線検査の放射線防護に関するヨーロッパガイドライン 2004
によるICRP Publication 60からの推定値
12放射線の人体への影響の公式
X年齢リスク倍増率
吸収線量(Gy)
等価線量(Sv):局所被曝
実効線量(Sv):全身被曝
放射線荷重係数
組織荷重係数
13
Radiation Effects R esearc h Fou nd ation U PDA TE 2 0 07 よ り
感受性には性差がある
14被曝の種類
体の外に放射性物質(放射性核
種を含む物質)があって、そこ
から出る放射線を皮膚を通して
浴びることをいう。被曝量を決
めるものは、放射性物質の量と
種類・エネルギーと、距離・遮
蔽である。
放射性核種を含む物質(放射性
物質)を呼吸や食事で体内に取
り込むと、内部被曝を受ける。
放射性物質から離れたり、遮蔽
したりすることで避けることは
できないが、半減期の何倍かの
時間が経てば放射能が非常に小
さくなり、代謝によって体外に
排出されたりすればなくなる。
ただし、身体の特定の組織に沈
着し、代謝で体外に排出されに
くい核種で、半減期の長いもの
は注意を要する。
15被曝の実際
放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 HPよ り人
工
放
射
線
の
大
部
分
は
医
療
被
曝
16防護における被曝の分類
職業被曝 医療被曝 公衆の被曝 定義 業務の過程での被曝 診断や治療のための被曝 健康診断や定期検診を含む その他の人工放射線被曝 対象 放射線診療従事者 患者 その他 規制 医療法 労働安全衛生法 なし 放射線障害防止法 管轄 厚生労働省 厚生労働省 文部科学省 17医療被曝
種類
対象
内容
診断・治療
患者
診断用放射線・核医学・放射線治療
診断・治療
介助者
診断用放射線
健康診断
健康人
診断用放射線・核医学・
研究ボランティア
健康人
診断用放射線・核医学・
診断参考レベル
D
iagnostic
R
eference
L
evel
撮影が適切に行われているかみるための量(最適化のためのツール)
国内測定値の第3四分位数をもとに決められる値
(目的:最適化○、線量軽減×)
厚労科研の研究班
医療被ばく研究情報
ネットワーク
頭部(正面)単純エックス線撮影
入射正面線量3 mGy
3 mGy
胸部(正面)単純エックス線撮影
入射正面線量0.3 mGy
0.3 mGy
頭部エックス線CT撮影(成人)
CTDIvol100 mGy
85 mGy
18診断参考レベル
D
iagnostic
R
eference
L
evel
撮影部位
成人(標準体型)
小児(10歳)
上
顎
前歯部
1.3 mGy
0.9 mGy
犬歯部
1.6 mGy
1.0 mGy
小臼歯部
1.7 mGy
1.1 mGy
大臼歯部
2.3 mGy
1.3 mGy
下
顎
前歯部
1.1 mGy
0.7 mGy
犬歯部
1.1 mGy
0.9 mGy
小臼歯部
1.2 mGy
0.9 mGy
大臼歯部
1.8 mGy
1.1 mGy
口内法エックス線撮影の
DRL(2015年 日本)
患者入射線量(
Patient entrance dose; PED)を対象
二等分法・平行法
下顎臼歯部口内法エックス線撮影での皮膚面入射線量
*英国
3.3 mGy (0.14-45.7 mGy ) 1999年→1.9 mGy (0.05-30 mGy ) 2005年
上顎大臼歯部口内法エックス線撮影での皮膚面入射線量
*日本
5.5 mGy 2000年→2.3 mGy2015年
19 日本歯科放射線学会;歯科X線検査の放射線防護に関するヨーロッパのガイドラインを改編
歯科領域の実効線量と線量預託日
CBCT 37-846.9 線量預託日 (日) 0.15 – 1.26 1.21 0.58 – 4.58 0.30 – 0.46 0.15 – 28.7 55.4 – 182.8 5.63 – 128.8 15.2 – 505.5公衆被曝線量
6.6μSv/日
20歯科用エックス線撮影における
被曝の実際(一般論)
岩 井 ら 歯 科 放 射 線 1 98 1 よ り歯科口内法およびパノラマ撮影における臓器別吸収線量(μSv)
水 晶体混 濁 白 内障 不 妊 胎 児 が ん 遺 伝子疾 患 男 女 一 時 永 久 一 時 永 久 奇 形 精 神遅延 発 育遅延 発 生率増 加 発 生率増 加 5 0万 I 2 0 0万 5 0 0万 1 5万 3 .5 0万 6 5万 I 1 .5 0万 2 .5 0万 I 6 .0 0万 2 0万 I 5 0万 1 2万 I 2 0万 5 0万 I 1 0 0万 4 .1 %/Sv 0 .5 %/Sv歯科用エックス線撮影では確定的影響を考慮する必要はない
しかし、実際は極力少ないに越したことはない
単位:μSv 21歯科用エックス線撮影における
被曝の実際(一般論)
歯科口内法およびパノラマ撮影における臓器別等価線量と実効線量
28.99 3.60 3.88 13.08 4.23 4.38 12.33 実効線量 5.45 0.70 0.43 0.42 1.02 0.61 1.74 骨髄 0.0004 0.002 0.70 2.51 切歯 0.0063 0 0 0 0.0002 0.0002 卵巣 0.02 0.001 0.003 0.002 0.006 0.008 精巣 14.75 1.51 1.81 2.98 1.25 2.82 顎下腺 1.38 切歯 9.68 大臼歯 2.51 小臼歯 パノラマ撮影 下顎 上顎 小臼歯 大臼歯 7.76 1.64 8.76 甲状腺 臓器・組織 28.99 3.60 3.88 13.08 4.23 4.38 12.33 実効線量 5.45 0.70 0.43 0.42 1.02 0.61 1.74 骨髄 0.0004 0.002 0.70 2.51 切歯 0.0063 0 0 0 0.0002 0.0002 卵巣 0.02 0.001 0.003 0.002 0.006 0.008 精巣 14.75 1.51 1.81 2.98 1.25 2.82 顎下腺 1.38 切歯 9.68 大臼歯 2.51 小臼歯 パノラマ撮影 下顎 上顎 小臼歯 大臼歯 7.76 1.64 8.76 甲状腺 臓器・組織 41.50 28.990.00000164%
0.0000002075%
単位:μSv 22フィルム感度の線量への影響
受容体の種類
線量倍増率
IP or CCD
X 0.5
F 感度フィルム
X 0.8
E 感度フィルム
X 1.0
D 感度フィルム
X 2
23フィルム感度と照射線量による画像の見え方
D感度フィルムはE感度フィルムと同等の写真にするのに2倍の照射線量が必要
24線質
•
様々な波長のエックス線が作られる。
D=kV
2
I Z
k:比例係数、V:管電圧、I:管電流、Z:ターゲットの原子番号
•
線質とはエックス線の性質を表し、波長の短いものほど
生体に悪影響の少ないエックス線である。
線質に強く関与
線質に関与しない
管電圧 管電流 撮影時間 撮影距離 濾過版 高 低 高 低 長 短 長 短 厚 薄 線量 増 減 増 減 増 減 減 増 減 増 線質 硬 軟 不変 不変 不変 不変 不変 不変 硬 軟 小 大 エネルギー 小 大 透過力 長 短 波長 軟(劣) 硬(良) 性質 小 大 エネルギー 小 大 透過力 長 短 波長 軟(劣) 硬(良) 性質25
被曝を減らし、質の良いエックス撮影
を行うためのポイント
• 感度の高いフィルムを使用・できればデジタル化
• 感電流を極力低く
• 照射時間を極力短く
• 撮影距離を短く
• 濾過板を厚く
• 年齢を配慮
• プロテクター着用
262007年ICRP勧告(publication 103)
一般公衆の実効線量限度は職業人の1/20、等価線量は1/10とする
等価線量限度
水晶体
150mSv / 年を超えない線量
皮膚(1cm
2)
500mSv / 年を超えない線量
手足
500mSv / 年を超えない線量
実効線量限度
5年間の平均が20mSv/年を超えない線量
妊娠女性
胚・胎児に対し1mSv / 妊娠中を超えない線量
等価線量限度を超えた場合、水晶体および皮膚の検査を行う
実効線量限度を超えた場合、末梢血中の血色素量またはヘマトクリット値、赤血
球数、白血球数および白血球百分率の検査を行う
放射線被曝に関連した法律
27• 医療法(厚生労働省)
– 医療を提供する体制の確保を図り、もって国民の健康の保持に
寄与する。
• 労働安全衛生法(厚生労働省)
– 職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な
職場環境の形成を促進する。
•
放射線障害防止法(文部科学省)
– 放射線障害を防止し、公共の安全を確保する。
放射線診療に適応される法令
医療法 労働安全 衛生法 放射線障害 防止法 エックス線装置 診療用高エネルギー放射線発生装置 診療用放射線照射装置 診療用放射線照射器具 診療用放射性同位元素 医療法 労働安全 衛生法 放射線障害 防止法 エックス線装置 診療用高エネルギー放射線発生装置 診療用放射線照射装置 診療用放射線照射器具 診療用放射性同位元素 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 28医療法
許容される被曝線量
等価線量限度
水晶体
150mSv / 年を超えない線量
皮膚
500mSv / 年を超えない線量
妊娠中の女性の腹部表面
2mSv / 妊娠中を超えない線量
実効線量限度
100mSv / 5年、50mSv / 年を超えない線量
妊娠の可能性のある女性 5mSv / 3か月を超えない線量
4月、7月、10月
緊急作業時の被爆はこれに限らない
29なぜ、目・皮膚・妊娠関連女性の腹部なのか?
許容される被曝線量
等価線量限度
水晶体
150mSv / 年を超えない線量
皮膚
500mSv / 年を超えない線量
妊娠中の女性の腹部表面
2mSv / 妊娠中を超えない線量
実効線量限度
100mSv / 5年、50mSv / 年を超えない線量
妊娠の可能性のある女性 5mSv / 3か月を超えない線量
4月、7月、10月
30モニタリングするための道具
個人
フィルムバッジ ガラスバッジ 半導体式 ポケット線量 熱蛍光線量計 光刺激ルミネンス線量計環境
電離箱 ガイガー・ミュラー(GM)管 シンチレーション計数機31
モニタリングするための道具の
まとめ
特徴 電離箱 電離箱式 GM管 電離作用、エックス線、γ線、β線、低エネルギー依存、高線量測定精 度、エックス線室に適する 電離作用、β線、低エネルギー依存性、計数率(cpm)測定 シンチレーション計数機 シンチレーション カウンター 蛍光作用、エックス線、γ線、NaI無機シンチレーター、高エネルギー依 存性、低線量測定精度、線量率測定、 計数率(cpm)測定 フイルムバッジ線量計 フィルムバッジ 写真作用、X 線、γ 線、β 線、中性子線、高方向依存性、高エネル ギー依存性 蛍光ガラス線量計 ガラスバッジ 蛍光作用、エックス線、γ線、β線、高方向依存性、低エネルギー依存 性、高感度、繰り返し使用可、データ復元、ばらつき小、 熱蛍光線量計 Thermo Luminescence Dosimeter 蛍光作用、エックス線、γ線、β線、LiF蛍光素子、低線質依存性、低線 量率依存性、広測定レンジ、ばらつき大、読み取りリーダ 光刺激ルミネンス線量計 Optically Stimulated Luminescence dosimeter クイクセルバッジ 蛍光作用、エックス線、γ線、β線、Al2O3素子、高感度、広測定レンジ、 繰り返し使用可 32個人
モニタリングに関する法令
リ ングバ ッジ被曝線量
健康診断
保存期間
電離放射線障害防止規則(労働安全衛生法に基づく):
30年
放射線障害防止法:
永久保存
、事業者5年→放射線影響協会
5年
*妊 娠 の 可 能 性 の な い女 子 * 33エックス線室
エックス線室
(標識)
0.25mSv/時間/m以下
1mSv/ 週以下
管理区域(標識)
1.3mSv / 3か月以下
診療室
居住区 250μSv / 3か月以下
新設、増設、届け出事項の変更は
設置後10日以内
に保健所(
都道府県知事)
に届け出る。
診療室に関する法令
34撮影装置に関する法令
総濾過:アルミニュウム等量で2.0mmになる様に付加濾過を付する 照射野:直径6cm以下 焦点-皮膚間距離:15cm以上(管電圧70kV以下またはパノラマ)、 20cm以上(管電圧70kV以上またはポータブル) 35撮影装置に関する法令
なぜ、付加ろ過を付する必要がある?
なぜ、照射野は小さい方がよい?
なぜ、焦点-皮膚間距離は長い方がよい?
36なぜ、付加ろ過を付する必要がある?
• エックス線の性質
小 大 エネルギー 小 大 透過力 長 短 波長 軟(劣) 硬(良) 性質 小 大 エネルギー 小 大 透過力 長 短 波長 軟(劣) 硬(良) 性質2mmAl当量
37