(1)(2)(3)マクロ経済統計体系の推移
1985年以前、国民所得統計:旧ソ連、東欧諸国から取り入れた物
的生産物バラス体系(MPS:A System of Material Product
Balances)
1985年から、国連の国民勘定体系(SNA: System of National
Accounts)を導入、国内総生産統計
1993年、MPS方式による国民所得勘定(国民所得)の作成を停止
し、GDP(国民経済計算)が中心指標となる
四半期GDP推計は、農業、鉱工業、建設業、運輸・通信、商業・飲
食業、金融保険業、不動産とその他の8つの部分から構成される
(4)マクロ経済統計の集計方法の見直し
従来、マクロ経済統計は、地方の統計局から報告される統計を中
央の統計局が集計して計算されたもの。(県統計局→市統計局→
省統計局→国家統計局)
国家統計局のGDP<Σ(省統計局のGDP)
経済の自由化にともない、統計報告制度が機能しなくなった。マク
ロ経済に占める私営企業、株式制企業、外資企業、華僑系資本、
などは大きなウェイトを占めるようになった
マクロ経済統計の報告・集計制度に代わり、国家統計局によるサ
ンプリング調査・推計を開始。地方の統計局の推計を参考にする
が、国家統計局の直接サンプル集計を実施し、統計精度の向上が
図られた
(5)現行マクロ経済統計の問題点
産業部門分類が粗すぎる。一定規模以下の鉱工業サンプルが集
計されていないため、産業部門別の統計精度が低い
サービス業センサスがコンスタントに行われていないため、新しく発
展してきたサービス業の多く(会計士、弁護士、情報サービス、民
間教育・家庭教師など)が統計に十分に反映されていない
価格指数の整備が不十分である。とくに、サービス項目の価格指
数が作成されておらず、たとえば、広告などのサービス業統計の実
質化ができない
サービス貿易価格指数が作成されていないため、サービス貿易は
実質化されていない
未観測経済の捕捉・推計が不十分。未観測経済活動について
OECDによれば、オーストラリアが3%、イタリアが15%、ロシアが
25%になっているといわれている。中国の未観測経済は少なくとも
20%以上に上るとの見方があるが、定かではない
(6)中国消費者物価指数の構成
項 目
ウェイト
食費 34%
娯楽・教育・文化および関連のサービス 14%
住居費 13%
交通・通信費 10%
医療保健 10%
衣服 9%
家電などの家庭用設備および関連のサービス 6%
酒タバコ類 4%
過小評価
過小評価
(7)(8)中国の奇跡(実質GDP伸び率)
7.0
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0
16.0
19
78
19
80
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82
19
84
19
86
19
88
19
90
19
92
19
94
19
96
19
98
20
00
20
02
20
04
20
06
20
08
20
10
20
12
20
14
%
世界経済の平均
(9)実質GDPの信ぴょう性
中国国家統計局:GDP統計に信ぴょう性がある
Douglas-WestwoodのSteve
Kopits:中国の実質GDP伸び率は0-3%
北京大学HSBCビジネススクールのChristopher Balding:不動産
価格と消費者物価が過小評価されているため、GDPが過大評価さ
れている
イギリスのCapital EconomicsのJulian Evans-Pritchard:実際の
経済成長率は中国政府の公式統計より1-2ポイント低いはず
アメリカのRhodium GroupのDaniel Rosen:国民勘定体系におい
て不動産取引集計が不十分だったため、GDPが過小評価されて
いる
中国外貨投資研究院:ECの消費がGDP統計に十分に反映されて
いない、銀行の不良債権が過小評価されているため、貸出が過大
評価されている、海外での爆外は輸入を圧迫している
(10)実質GDP伸び率と李克強指数
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0
16.0
18.0
実質GDP伸び率
李克強指数
注:李克強指数=(鉄道貨物輸送量伸び率×25%)+(電力消費量伸び率
×40%)+(銀行融資残高伸び率×35%)
(11)消費者物価と食品価格の推移(前年=100)
80.000
90.000
100.000
110.000
120.000
130.000
140.000
150.000
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05
食品価格指数
消費者物価指数
(12)中国経済主要指標(前年比、%)
2010 2011 2012 2013 2014 2015.1-6
実質GDP成長率 10.3 9.2 7.8 7.7 7.4 7.0
固定資本形成 23.8 23.6 20.6 19.6 15.7 11.4
不動産投資 33.2 27.9 16.2 19.8 10.5 5.7
小売総額 18.4 17.1 14.3 13.1 12.0 10.5
輸出 31.3 20.3 7.9 7.9 6.1 0.9
輸入 38.7 24.9 4.3 7.3 0.4 -15.5
消費者物価上昇率 3.3 5.4 2.6 2.6 2.0 1.3
都市部失業率 4.3 4.1 4.1 5.0 5.1 5.1
(13)中国の総人口の推移(単位:1,000人)
800,000
900,000
1,000,000
1,100,000
1,200,000
1,300,000
1,400,000
国連統計
中国公式
(14)崩れる男女のバランス(単位:1,000人)
0.000
200.000
400.000
600.000
800.000
1,000.000
1,200.000
1,400.000
1,600.000
19
49
19
52
19
55
19
58
19
61
19
64
19
67
19
70
19
73
19
76
19
79
19
82
19
85
19
88
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19
94
19
97
20
00
20
03
20
06
20
09
20
12
女性
男性
(15)都市人口と農村人口の推移(単位:1,000人)
0.000
200.000
400.000
600.000
800.000
1,000.000
1,200.000
1,400.000
1,600.000
1
9
49
1
9
52
1
9
55
1
9
58
1
9
61
1
9
64
1
9
67
1
9
70
1
9
73
1
9
76
1
9
79
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1
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1
9
88
1
9
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1
9
94
1
99
7
2
00
0
2
00
3
2
00
6
2
00
9
2
01
2
農村人口
都市人口
(16)産業構造高度化の遅れと雇用のジレンマ
人件費の上昇と元高により、輸出製造業の国際競争力が低下
工場の海外移転に伴う失業の増加(広東などの沿海部ほど深刻)
ミドルエンドとハイエンドの産業において人手不足が深刻
国有企業による市場独占はいっそう顕著になる
(大型国有企業110社→40社)
イノベーションに取り組むインセンティヴが弱い
(李克強首相:「大衆創業」、「万衆創新」)
(17)国有企業改革の指導意見ー統制経済への逆戻り?
党(共産党)による国有企業への指導体制の強化
国有企業の経営強化
110社の大型国有企業を40社程度に合併、市場独占の強化
「強強連合」
「混合所有制」(株の持ち合い)の推進→民営企業買収・合併され
るリスク高まり
国有企業改革の指導意見は市場主義と逆行
(18)北京、上海と広州の最低賃金の上昇
0
200
400
600
800
1,000
1,200
1,400
1,600
1,800
2,000
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10
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11
20
12
20
13
20
14
上海
北京
広州
元/年
(19)人民元の切り上げ(2000年1月=100)
60
70
80
90
100
110
120
130
140
00/
01
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15/
05
元/ドル
元/円
元/ユーロ
(20)国際貿易の推移
-50,000.000
0.000
50,000.000
100,000.000
150,000.000
200,000.000
250,000.000
19
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14/
10
輸出
輸入
貿易収支
(21)元安圧力と為替リスク
輸出ドライブをかけるために、8月に人民銀行(中央銀行)は人民
元切り下げを実施
(人民銀行:元の切り下げではなく、為替制度の改革)
国内の闇為替市場で元安が進展、その背景:輸出の落ち込みとド
ルの利上げ
(人民銀行:地下銀行に対する取り締まり強化)
元安期待により資本逃避が本格化(1年で外貨準備4000億ドル以
上減少)
習近平国家主席:元安恒常化の根拠はない
香港長江実業グループ(李嘉誠)は本部を香港からケイマン諸島
に移転、中国の物件を投げ売り
(新華社:「李嘉誠を逃していいのか」
(22)中国の外貨準備の推移(1989-2015年8月)
732.7
3,993.2
3,557.4
0.0
500.0
1,000.0
1,500.0
2,000.0
2,500.0
3,000.0
3,500.0
4,000.0
4,500.0
19
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01
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05
20
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01
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09
人
民
元
の
切
り
上
げ
10億ドル
(23)中国の預金準備率操作
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
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10
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01
11/
04
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07
13/
10
15/
01
%
アジア通貨危機
サブプライムローン危機
リーマンショック
(24)中国の預金金利と貸出金利の推移
(いずれも1年もの)
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0
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11
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14/
09
預金金利
貸出金利
朱鎔基時代 胡錦濤時代
(失われた10年)
(25)マネーサプライの推移
13.3
-20.0
-10.0
0.0
10.0
20.0
30.0
40.0
50.0
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07
M0
M1
M2
%
リ
ー
マ
ン
シ
ョ
ッ
ク
(26)中国経済の現状認識(中国のキーパーソン)
樊剛(人民銀行貨幣政策委員会元委員):「目下の景気減速は構
造問題によるものではなく、景気循環による一時的な現象」
劉鶴(中央財経指導グループ弁公室副主任、2年前に、習近平国
家はアメリカの要人に、「こちらが劉鶴、彼は私にとってとても重要」
と紹介):「中国経済も株式市場も何も問題ない」
林毅夫(北京大学教授、世界銀行前チーフエコノミスト):中国経済
は7%成長を維持できる。しかも、向こう5-10年、7%成長を持続可
能
胡鞍鋼(清華大学教授):2015年上期の政策運営は100点満点中、
91.7点の得点(マイナス点は、輸出が目標達成できなかったこと)
(27)結論:中国経済の展望
7%の成長目標に達成していない。でも、マイナス成長ではない
景気減速は景気循環によるものではなく、構造問題に起因する
株式市場に問題だらけ
経済構造の問題は深刻
上期の政策運営の得点は59点→不合格
これからは、一時的な高成長を目指すよりも、経済構造と産業構造
の合理化を図り、安定した経済成長を目指すべき
(28)