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卒業研究
2005/01/24 成果報告会
比較社会論コース 4 年 上田 茜
タイトル
中東紛争における暴力の停止に向けて ~ロードマップ時とオスロ合意時の比較から~
構成 目次 序論
第1章 パレスチナ・イスラエルの中東紛争とは 第1節 中東紛争の起源とその混乱
第2節 オスロ合意とその後 第2章 ロードマップとは 第1節 ロードマップの内容
第2節 ロードマップにおける暴力とは 第3節 ロードマップ発表後の動向
第3章 ロードマップ後に暴力が停止できなかった要因 第1節 パレスチナ自治政府の信頼のなさ
第2節 イスラエル政府の強硬姿勢 第3節 アメリカの仲介態度の偏り
第4節 パレスチナ・イスラエルの民衆が持つ相手への憎悪 第4章 オスロ合意時との比較
第1節 パレスチナ自治政府の信頼のなさについて 第2節 イスラエル政府の強硬姿勢について 第3節 アメリカの仲介態度の偏りについて
第4節 パレスチナ・イスラエルの民衆が持つ相手への憎悪について 第5章 暴力の停止のために必要なこと
結論 おわりに 参考資料一覧
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目的
パレスチナ・イスラエルの中東紛争において暴力が停止できない要因を分析し、暴力の 停止のために必要なことを述べる。そのために、ロードマップ後に暴力が停止できなかっ た要因を仮説として挙げ、その仮説を中東紛争が飛躍的に和平へと進んだオスロ合意時と 比較し検証した。
要旨
暴力とは 事例…イスラエル軍の自治区の封鎖・難民キャンプへの侵攻 パレスチナ側の自爆テロ
人々の命が危険にさらされること 日常生活が脅かされること
暴力が停止できない要因
ロードマップ オスロ合意
①パレスチナ自治 政府の信頼のなさ
ア ッ バ ス 首 相 と ア ラ フ ァ ト 議 長・アッバス首相とハマスの対 立
アラファト議長は交渉相手とし て認められていない
PLOはアラファト議長のもと でまとまっている
アラファト議長は交渉相手とし て認められている
②イスラエル政府 の強硬姿勢
入植者に支持される強硬派はロ ードマップに反対している
主に労働党で構成されたラビン 政権は穏健である
③アメリカの仲介 態度の偏り
アメリカ国内のユダヤ社会の働 きかけによってイスラエルより
仲介の役割を果たしていなかっ たので偏りは見られない
④パレスチナ・イ スラエルの民衆が 持つ相手への憎悪
平和的な解決を求めている人も いる
憎悪が暴力を引き起こしている
平和的な解決を支持していた
要因①②④を解決するために 市民レベルの取り組みが必要 現状を理解するために必要である
歴史認識などの文化的解決に効果的である 市民から政府を変えていける
事例…イスラエル・パレスチナ遺族の会 要因③を解決するために 国連の役割強化を期待したい
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オスロ合意の要旨(計画)
2 ヶ月以内 ガザとエリコからイスラエル軍撤退の実施取り決めを締結する
4 ヶ月以内 取り決めにしたがいイスラエル軍は再展開しそれを完了する。ガザ・エリ コの行政権はパレスチナ当局に移管する
イスラエル軍 撤退後
エリコ以外のヨルダン川西岸での教育・文化などに関するイスラエルの権 限と責任を、パレスチナ側へ移管していくための詳細計画について交渉を 開始する
9 ヶ月以内 暫定自治を実施する自治機構の選挙を国際管理のもとで行う イスラエル軍
撤退後 2 ヵ 年以内
最終的地位に関する交渉を開始し、その交渉ではエルサレムの問題・難民 問題・入植地の扱いなどの問題を取り上げる
注:何ヶ月以内というのは、オスロ合意発効からの期間である。
(鏡武 著『中東紛争』有斐閣、2001 年、181 から 182 ページより筆者作成)
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アメリカが発表したロードマップの要旨(計画)
第1段階:テロと暴力の停止、パレスチナの市民生活の正常化、パレスチナの制度構築 2003 年 5 月まで
パレスチナ:テロと扇動行為の停止
国家建設に向け憲法草案を策定
自由で公正な選挙を含む包括的政治改革に着手 イスラエル:2001 年 3 月以降にできた入植地解体
入植活動凍結
2000 年 9 月 28 日以降の占領地から撤退 第2段階:移行期
2003 年 6 月から 12 月まで
第1段階で示された目標のさらなる積み上げと持続 暫定境界でのパレスチナ国家の樹立
経済復興と独立プロセスの開始を目指し国際会議開催 第3段階:恒久的地位協定と紛争の終結
2004 年から 2005 年まで
改革の統合とパレスチナ諸制度の安定化 パレスチナの持続する効果的安全保障の遂行
2005 年の恒久的地位協定に向けたイスラエルとパレスチナによる交渉
(在日アメリカ大使館ウェブサイト「中東和平構想『ロードマップ』」
http://usembassy.state.gov/japan/wwwhj20030528dl.html より筆者作成)
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参考資料一覧
○臼杵陽 著『中東和平への道』山川出版社、1999 年
○臼杵陽 著『世界化するパレスチナ/イスラエル紛争』岩波書店、2004 年
○衞藤瀋吉・渡辺昭夫・公文俊平・平野健一郎 著『国際関係論』東京出版会、1982 年
○鏡武 著『中東紛争』有斐閣、2001
○小杉泰 編『中東和平の総合的研究』財団法人日本国際問題研究所、1998 年
○社団法人共同通信社 編『世界年鑑 2002』共同通信社、2002 年
○立山良司 著『中東和平の行方』中央公論社、1995 年
○土井敏郎 著『現地ルポ パレスチナの声、イスラエルの声』岩波書店、2004 年
○平山健太郎・NHK「エルサレム」プロジェクト 編著『ドキュメント・聖地エルサレム』
日本放送出版協会、2004 年
○柳沢賢一郎 編著『図解 アメリカのしくみ』中経出版、1999 年
○朝日新聞ウェブサイト「シンポジウム:和平へ 憎しみを超えて」
http://www.asahi.com/sympo/wahei、2004 年 11 月 4 日確認
○外務省ウェブサイト「イスラエル・パレスチナ双方遺族による和解のためのワークショ ップ支援」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo/03_hakusyo/ODA2003/html/c olum/c103005.htm、2004 年 11 月 9 日確認
○外務省ウェブサイト「パレスチナ概要」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/plo/data.html、2004 年 12 月 8 日確認
○在日本アメリカ大使館ウェブサイト「中東和平構想『ロードマップ』」
http://usembassy.state.gov/japan/wwwhj20030528dl.html、2003 年 6 月 20 日 確認