OItAYAMA UnJ'versL'ty ElarthScL'enceRepoTtS,
lroI・3.No・1,65‑70,(1996)
マイ コンを使用 した水熟合成炉徐冷制御装置の作成
A mi crocomput er ‑ cont rol l edgradualcool i ngs ys t em f or hydrothermalreactor s
山 川 純 次(JunjiYam akawa)*
河 原 昭 (AkiraKawallara)*
Aus(ゝ←ltihitll‑1CrOC。lllputerisapt)1iPdforan instrulllentOfcoIltrOllingtheheatingtelrlperatureS ofhvdrothermalreact・orrurnacps.Thet・emI,eratureSW ereChangedintoapproprlateVa一uesofvoltage hvtllCr"OCOur)lps andadditionald(1Viccs・rIlleint・erfaceboard,programmableperlPlleralirlLerfaceLSI a‑1LIsomeI(りsforaddressdpcordlngareassembledintoaCOmPleteunit・,The(leviceisusefulf()rthe
illPXPeTISiv(二日VayOrtheconst・ruL・tioHortheaccuratetemperaturecolltrOIsyst・em Keywords: llV(lrot・llerITlalsyllthpsIS.CO。liIlgCOntrOIsyst・em.persona一computer
Ⅰ.
は じめにX線 を使用 して鉱物 の原 T・構造 を決定す ること,す なわ ち構造解析は地球科学の諸分野 に対 して基礎的なデ ータ を 与える.この方法 として現(̲i三もっとも精度の高いデ ー タを得 る ことがで きるのが単結晶 を使 った方 法である.
しか し天然に産Jtけ る鉱物は組成が複雑なため,結晶が 小 さか った り不完全であった りして解析が難 しい場合が 多い.そ こで 目的の鉱物の化学組成 と格f一定数や空間群 な どの基本的なデ ータをもとに,良質の 単結晶 を人 ̲1二的 に合成す る必要がある.
地殻 を構成 して いる鉱物 を合成す る方法 としては水熱 合成法が良 く用い られる.この方法では反応カプセ ルに 掠材料 と純水 を封入 し,テ ストチューブ型圧力容器内で 加圧 ・加温 し合成 を試みる.圧 力は2500気圧程度,堤 度 はN)Oo(1程度 まで実現 可能 であ り, これ らの条件 を 適 卯 こ設定すれ ば原材料は純水 に対 して過飽和状態 とな
り結 晶を成長させ る と考え られて いる.
しか し水熱合成法 を使用 して解析に適 した人きさの単 結晶を成長させ るため には溶液の過飽和状態 を継続 させ る必要がある.地球科学分野で結晶合成 に使用 される原 材料 の多 くは水の温度 に正比例 した溶解度 を示す ため, 結晶が成長を始めた時点か ら冷却すれば この 目的を達成
す る ことがで きる.
この冷却は連続的な もの,すなわち徐冷動作である必 要があるが,無機結晶の成長速度 は遅 いので,その温度 勾配 もlOC/h程度,また冷却は1000(̲1程度必要 とな り,
自動制御 を行な う必要がある. しか し市販 の温度制御装 置の多 くは設定温度 に保持す ることはできて も,一定 の 温度勾配 に沿 った制御 を行な うことができない.
一般 に合成炉な どの温度 はフ ィー ドバ ック型の制御が 行なわれる. これはシーケ ンス型の制御が装置の動作 を 各段階 に分け,前段階の動作 を引き継 いだ分岐制御 を行 な うのに対 して,温度な どをあ らか じめ設定 した希望の 出 して 目標値 と比較 し,その差 をもとに装置を制御す る 方法である.制御量の検 出は,物理量 を温度セ ンサーな どで電気信号 に変換 した ものをブ リッジ回路な どで設定 値 と比較 し,その不平衡出力を取 り出 して行 な う.徐冷 動作 を行な う場合は設定値を連続的に変化 させればよい.
フ ィー ドバ ック制御 を行な う場合,制御 量と目標値 の 偏差 に応 じた制御すなわち比例制御
( P
制御)を行 な う 誤差で,これは温度がセ ンサーな どの不感帯 に入 ると生 じる検 出不 日J能な偏差が蓄積 され 卜‑ タルでは人きな も の となる誤差である.これを防ぐため偏差 を積分 した値 に応 じた制御(Ⅰ制御 )が必要 とな る.もう つ は制御 量マイコンを使用 した水熱合成炉徐冷制御装置の作成 67
Flg・2・Pindescriptionalldblockdiagram OftheThermodynam ic/rllVcorlditmrler1,X4TL26hybridIC
の変化が急激な場合 に生 じる誤差で,主 に制御の時間的 な遅れが原因である. これ を防ぐため偏差の微分値 をも とに した制御(D制御)が必要 とな る.
このよ うな制御が必要 となるためデ ィスクリー ト構成 のフィー ドバ ック制御回路 は複雑な もの となる.さ らに 制御定数は目標値や周辺環境な どの要 因によって少 しず つ変化す るため,鉱物の合成実験のよ うに毎回異なった 条件で合成す る場合,制御が不十分 になる.この間題を 解 決す るため,最近 の温度 コ ン トロ‑ ラはマイコ ンを 使 って これ らの制御定数を検 出す るタイプ の ものが増え てきて いる. このタ イプ ではPID の各制御定数は合成 の度 に最適のものに設定 されるため,デ ィスク リー ト回 路のよ うに特定の温度のみで しか安定 しな いといった問 題は発生 しない. しか しこれ らの温度 コントローラも徐 冷動作 を行なえるものは限 られて いて鉱物の結晶を成長
させ る目的 には不向きな ものが多い.
温度 コントローラで使用 されているマイコンを使った 制御 回路 は,マイコン周辺IJSlや ロジックlCを使用す れ ば比較的手軽 に作 成す る ことがで きる.MZ‑80Bや P(ノー8801な どの汎用マ イコ ンを使用 して制御 回路 を作 成すれば,制御用のプ ログラムはユ‑ザが任意 に設定す ることができるため,徐冷動作 を始 め岩石の熱履歴のシ ミュ レー ションな ど,鉱物合成に必要な温度制御 を自由 に行 な うことができる.
以上のよ うな状況を考慮 して,筆者等は今回8ビット
マイコ ンを利用 した水熱合成炉徐冷制御装置 を作成 し, 鉱物の合成 に適用 したので報告す る.この装置はマ イコ
ンを有効 に実験室の機器制御 に利用す る方法 を提供す る ばか りでな く,製作費用が非常 に安価であるため,大学, 高校その他の予算の少ない研究室での実験 に寄与す ると 監われ る.またマイコンによる自動制御の基礎教育 にも 役 に立つであろ う.
Ⅰ Ⅰ .
制御装置の概要今回製作 した制御装置は大き く分けて,マイコンとのイ ンター フェース,温度セ ンサー読取そ して ヒータコン ト ロールの 3つの回路ブ ロックに分け られ る.イ ンター フェー ス回路 はア ド レス変換 回路 ,プ ログ ラマブ ルペ リフェラルイ ンター フェ‑ス(PPT),デ ‑タラッチか ら 構成されて いる.このブ ロックではマイコンと温度セ ン サー読取回路および ヒ‑タコン トロール回路 との入出力 を行な う.PPIはマイコンか ら入出力ポー トの性格 を変 更でき,今回のよ うなイ ンターフェー スにはうってつけ のLSlである.
温度セ ンサ ー読取 回路 は
A/ D
コ ンパ‑夕 (ADC)と シグナル コンデ ショナ‑か ら構成 されている.ADC は 汎用 の4チ ャ ンネル入力8ビッ トLSIを使用 し, シグ ナルコンデ ィショナ ーは K(CA)タイプの熱電対専用 に チューニ ング されたハイブ リッドICを使用 している.ヒー タコ ン トロール回路 は リレー駆動 回路 と駆 動用 電源回路そ してフォ トトランジスタ‑による絶縁回路で
G H
山 川 純 次 ・河 原 昭 構成 されている.駆動回路 はパ ワースイッチ ング用 トランジスタを使用 し,駆動用電源は簡単な全波整流回路 を 使 って供給 した.駆動用信 号はイ ンターフェ‑ ス回路の PPIか らの信 号を一度 フォ トトランジスタで絶縁 し,リ レー駆動回路か らイ ンターフェース回路 に逆流す るノイ ズを防止 して いる.
制御装置全体の回路図をFig.1に示す.なおマイコン にはcptTにZ80を搭載 したSHARP MZ‑80Bおよび NE("PC188()1を使用 した.
Ⅰ Ⅰ Ⅰ .
温度の計測マイコ ンによ り温度制御 を行 な うためには,まず適 当な セ ンサーで温度 を測定す る必要がある.水熱合成装置で 設定 しているよ うな温度範囲では通常熱電対が使用 され て いる.
1. 熱電対
熱電対 は異種金属 間で温度差 に応 じて発 生す る熱起電 力 を応 用 した温度セ ンサ で ある.セ ンサ 自身が電圧 を 発生す るためドライブ 回路が不要であるが,計測精度 を 上げ るためにはT.夫が必要である.熱電対 には使用 され ている金属の種類 によってK(CA)タイプ,R(PR)タイ プ,J(I(1)タイプそ してT(CL')タイプがある.この うち It((lA)タイプ熱電対 は:2000(:か ら+120()Ocで用 い ら れる.陽極はNi89.OCr9.Wel.OMnO.2(wt,'/')の合金 (ク ロメル),陰極はlTi94OA12.OSil.OFeO,・='MI12.5(wt.%)の 合金 (アル メル)で構成 されて いる.工業分野 で多用 さ れ ,酸化性雰 囲気 に強 く直線性が良 いが,200oCか ら LIOOo(̲lで ショー トレンジオーダーの誤差 を含んで いる.
熱電対 を使用す る場合次の点 に注意す る必要がある.
の温度差 しか計測で きな い. このため,T・)を氷 を いれた魔法瓶等で()oL1に保つか,基準接点補償回 路を用いる必要がある.また熱電対 の出力 リー ド線 を延長す る場合は補償導線 を使用す るか,接点の温 度 を検出す る必要がある.さ らに通常の導線で延長 する場合,同種類のものを使用 しな いと熱起電力が 発生 し,誤差の元 となる.
2.起電 力と温度の関係は熱電対の各タイプ ごとに非直 線性が存在す るため直線化 (リニア ラ イズ)が必要 である.これは適 当な定数 を設定 した回路で行な う 場合 とマイコンで行な う場合がある.
2. シグナル コンデ ィシ ョナ ーI,Ⅹ4T26の概要 LX4T26はK(CA)タイプ の熱電対 を入 力 とす る専用タ イプ の温度 計測用 モ ジュールア ンプ で,熱電対 を用 い て温度 計測 を行 な うため に必要 とな る,冷接点補償 回 路,増幅ア ンプ, リニア ライザー等がハ イブ リッド化 さ れている.LX4T26の ピン配列 と内部構成 をFig.2に示 す.\使用にあたっては,入力オ フセ ッ ト,出力オ フセ ッ
トそ してスパ ンを調整す る3個 の トリマー用可変抵抗 と 士15Vの電源 を用意す るだけで よい.内蔵 リニア ライ ザ ーは3次式近似の関数演算方式 によって構成 され,出
力は1mV/Oc に設定 されて いる.
3. 熱電対の接続 につ いて
熱電対 は測定点 と基準温度接点 との間の温度差 を検 LLliす るため,基準側の温度 を一定 にす るか,基準点の温度 を 測定 し,これ を元 に補償す る必要がある.LX4rl、26の場 合 は内蔵の冷接点補償回路で これをお こな う.9.10端 子 を接続す ると基準熱電接点 は2.3端子 とな り,熱電対 は 直結 あるいは補償導線 を使用 して接続す る必要が ある.
熱電対 を端子板等で受けた後2,3番端子 に接続す る場合, 端 子板 の温度 を小信号用ダ イオー ドで検 出 し, 10番端 子 に入 力す る必要がある.
4. 調整
熱電対入力に
o
mVを入 力 しvx出力がo
mVになるよ うにVRlを調整す る.同様の条件下でVO出力がomV になるよ うにVR3を調整す る.熱電対入力に48.3rnV を入力 し,VOが1.2Vになるよ うにVH2でスパ ンを調 整す る.Ⅰ V.
温度デ ータのマイコンへの取込温度セ ンサー読取回路か らの温度デ ー タをマイコンに取 り込んで処埋す るためにはデ ィジタルサ ンプ リングす る 必要がある.このためLX4T26の出力をA/I)コ ンバー タで処理す る.
1. A/D コンバ ータM B4052の概要
富 1一過 MB4052はデ ータ長8ビットで4チ ャ ンネルの 入 力端子 を持つ汎用アナ ログデ ジタル変換用 l(Iで,バ イポー ラ型の素子で形成 されている.変換方式 に逐次比 較型 を採用 しているので変換速度が早 く,短時間 に多数 のアナ ログ量の処理が 可能である.またす べてのデ ジタ ル入出力端 子はTTI.レベル コンパチブ ルであ り,マイ クロプ ロセ ッサ等 との接続 も容易である.MBL1052の ピ ン配列 と内部構成 をFig,3に示す・
マイコンを使用 した水熱合成炉徐冷制御装置の作成
G2.1如AAむG
Fig・3・Pindps(・ript・ionandt)lockdiagralllOfthe81biト1ch Analog/Dlgit・alconverterMB4052
2
. A/ D
コンバ ータ とマイ コンの接続A/Ⅰ)コンバー タ とマ イコンは,シ ステ ムバ スに接続 さ れて いる8255Aを介 して行なった. この際必要 となる ア ドレス変換 回路 等の詳細 は11川r・河原(199・[')で戟告
して いる.
3. A/ D
コンバ ータの駆動A/Dコンバータか らデータを取 り込む,すなわち駆動す るためのサブ ルーチ ンはアセ ンブ ラで記述 されて いる.
これは8ビットマイコンに搭 載されて いるBASl(1で記 述すると実行速度が遅 いために取 り込みが間に合わない か らである.
このサブルーチ ンは,(二1レジスタの 卜位 2ビットに変 換するチャンネル指定デ‑夕 (0 3)をセ ットして(二lallす ると Å レジスタに変換 されたデータがセ ットされて戻っ て くる.これをBASl(1のメイ ンルーチ ンか らCallすれ ばその時点での温度デ ータを取 り込む ことができる.
V.
ヒータコントロール
水熱合成装置の温度制御は,マ ントル ヒータの電源 をリ レーOMtiON MK3PによってON/OFFして行なった.
リレー駆動はスイッチ ング用 トランジスタ '2SO(iニ13(ダー I)ン トン接続 ・バ イア ス用抵抗内蔵 )を用いたオープ ン
tL,リ
コ レクタ回路で行なった.駆動用電源 は簡単な全波整流 回路 か ら供給 した. また リレー にはサ ‑ ジ吸収用 の フ ライホイールダイオー ド1S199を入れた.ベースには 8255Aか らの信 号をフォ トトランジスタTLP504Aでア イソ レー トした後, ・度し1MOSバ ッフ7TC4049BPで 強化 した ものを入力 した.
ⅤⅠ. 水熟合成への適用
この制御装置を使用 して準長石グループ に属す る鉱物で ある霞石(nepheline,(Na,K)AISiO 3)の単結晶を行 な っ てみた.どち らも(;()oL1.1000気圧で48時間保持 した後 冷却を行なった.徐冷 を行なわない場合得 られた結晶の 平均粒径は数 ミクロンであるのに対 して,20(ソhの冷却 ミクロンまで成長 し,単結晶解析 に 十一分適用できる大き さとなった.
ⅤⅠ Ⅰ .
ま と め今回作成 した制御装置の利点をまとめると次の様 になる.
1.このような制御装置を組む ことで,市販の温度 コン トローラの補強 し研究 に必要な機能 を実現す ること で,さ らに広範囲の研究 を行な うことができる.
70 山 川 純 次 ・河 原 昭 2 マ イコンによる自動制御 の基礎技術 は応用範囲が広
く,今【ロJの回路 の他 にも様 々な 目的 に適 用で きる.
こうした技 術 を習 得す る ことは学 生 に取 って もメ リッ トが大 きい.
3.高度 な制御 装置 の製作 費 を安 く押 え る ことがで き る.また 1世代前のマ イコ ンで コン トロ‑ルできる ため,破棄寸前の機器 を有効利用す る ことができる.
引 用 文 献
山川純次 ・河原 昭 (1995)X線発生装置貞空度監視 シス テムの試作,okAYAMA Ulll, EarthSci.Vol.2. No1pplO3‑1()バ
半導体 規格表 シ リー ズ (1996),東京都豊島区巣鴨1 14‑
'
2, ('QLVJ版社
大川善邦(1982)Z‑バ0マイコンの作 り方,インターフェ‑
スとローカル ネットワーク入門, 東京都台東区東 上野12・r,18 産報 出版 (秩 ).
PC‑榊()0ユ ーザーズマニ ュア ル (=)A,I'),東京都港 区芝 浦4 14122, 日本電気 (秩 ).
LIZ‑ROB2オーナー ズマニ ュアル(198・5),大阪市阿倍野 区長池町122‑22, シャープ (秩 ).
lIp‑85用 インタ‑ フェースI/0 ボ ード解説書 (改訂版 ), 東京都 中央 区茅場町'2‑13 13,マ イテ ック (秩 ). シグナ ル コ ンデ ィショナー LX4T シ リー ズデ ー タ シー
ト (19R・r,),東京都太 田区中央3 19‑8, 日本電子機 材 (秩 ).