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博 士 論 文 概 要

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学大学院 先進理工学研究科. 博 士 論 文 概 要. 論. 文. 題. 目. Construction of higher-derivative supergravity models via superconformal formulation. 申. 請. 者. Yusuke. YAMADA. 山田. 悠介. 物理学及応用物理学専攻. 2015 年. 素粒子理論研究. 11 月.

(2) 素粒子標準模型は現在までの加速器実験結果と高い精度で整合的であるが、理論 的な観点からは幾つかの問題点が指摘されている。それらを解決するような拡張 として超対称性が注目されている。超対称性はスピンの異なる粒子間の対称性で あるため、局所対称性に拡張された場合に時空の対称性の一部となる。故に局所 超対称性は重力を含む超重力理論となることが知られている。また量子重力理論 の有力な候補である超弦理論の低エネルギー有効理論は超重力理論として記述さ れることも知られており興味深い。超重力理論に基づく初期宇宙の研究も盛んに 行なわれている。本論文ではその中でも特にインフレーションに注目する。 インフレーションとは宇宙の加速膨張であり、ビッグバン宇宙モデルにおける 理論的問題点である地平線問題、平坦性問題に対する解となる。特にスカラー場 のポテンシャルによるスローロールインフレーションモデルは初期曲率揺らぎを 予言するが、その予言される揺らぎのスペクトラムは、現在までの宇宙背景放射 観測の結果と非常に整合的なものになっている。故にインフレーションは観測的 にも支持される、ビッグバン宇宙モデルを超える有力なモデルとなっている。 本論文では高階微分項を含む超重力理論作用の構成、及びその作用に基づくイ ンフレーションモデルについて議論する。ここで高階微分項とは時空微分を三つ 以上含む相互作用を指すことにする。そのような項は低エネルギーの物理におい ては大きな寄与をしないと考えられているが、インフレーション期のような高エ ネルギーの物理においては重要となる可能性が指摘されている。また超弦理論の 有効作用に高階微分項が現れることも知られており、そのような相互作用の 性質を知ることは超弦理論の性質を知る上でも重要と言える。 しかし、高階微分項を含む系では一般にゴーストと呼ばれるモードが現れる可 能性がある。ゴーストの出現は系の理論的不安定性を示すとともに、物理的な予 言を不可能なものにする。先行研究において、ゴーストが出現しない高階微分項 を含む系が幾つか提案されているが、その種類は極めて少ない。本論文ではその 数少ない、ゴーストを出現させない高階微分項について議論する。ここで採用す る高階微分項は超弦理論に含まれる D-ブレーンの有効作用としても現れる可能性 が指摘されている。 本論文ではゴーストを含まない超対称高階微分項を共形超重力理論に基づき再 構成する。共形超重力理論とは共形対称性を持つ超重力理論である。共形超重力 理論を用いる利点の一つとしては作用の構成を簡単化するということが挙げられ る。通常の超重力理論では作用の構成において非常に複雑な計算が必要となるが、 共形超重力理論では拡大された対称性の自由度を用いることで、上述の計算の複 雑さを飛躍的に改善できる。さらに二つ目の主な利点として、複数ある超重力理 論の定式化の仕方を統一的に扱えることが挙げられる。超重力理論には導入する 補助場が異なる 3 種類の定式化の仕方が知られているが、それらの相互関係は共 形超重力理論に拡張することで明らかになることが知られている。. No.1.

(3) 先行研究における高階微分項を含む超重力作用の構成は、3種類の定式化の仕 方のうちの一つを用いて行われている。本論文ではそれらを共形超重力理論にお いて再構成することによって、他の二つの定式化においてどのように構築できる か、また相互作用の形がどのように代わりうるかについても明らかにしている。 本論文は全6章から構成されている。第1章では導入及び概観について述べ ている。また第6章では結論を述べる。他の章の概要は以下の通りである。 第2章では共形超重力理論の構成とその取り扱いについて述べている。共形超 重力理論は超共形対称性の下でのゲージ理論として理解できるため、ゲージ理論 の一般論を議論し、対称性の下での表現である多重項について、一般的なものか ら既約表現までの概説を述べている。また、共形超対称性不変な作用から、共形 対称性のない物理的な作用を得る方法についても、特定のモデルを用いて説明し ている。 第3章では超重力理論におけるインフレーションの中で、特に本論文と関係す る モ デ ル に つ い て 解 説 す る 。 イ ン フ レ ー シ ョ ン に お い て ス カ ラ ー 場 の ポテンシャルエネルギーは非常に重要な役割がある。超重力理論においては起源 の異なるポテンシャルが2種類存在するが、それらの一般的な性質について、初 めに述べている。特に F-項ポテンシャルと呼ばれるものについては、応用上の一 般的な問題点が知られているため、これまで提案されてきた解決策を紹介してい る。その後、具体的なモデルとしてカオティックインフレーション、スタロビン スキーインフレーション、有質量ベクトル多重項インフレーションについて述べ ている。各モデルに関して、最も簡単な場合の構成を示したのちに、各モデルの 拡張に関して最近の進展も含めて解説している。 第4章ではカイラル多重項の高階微分項について議論している。カイラル多重 項とは物質場を含む超対称多重項である。先行研究において示された高階微分項 を共形超重力理論にどのように埋め込むことができるかを明らかにし、さらに特 定の条件を満たす場合、その項は超重力理論の定式化に依らず、一定の形の相互 作用となることを示している。またその相互作用がインフレーションモデルに及 ぼす影響についても議論している。特に注目したのは超重力理論特有の性質であ る。超対称性の興味深い性質として、例えば高階微分項を実現する際に、それに 伴う複数の新しい相互作用を予言する。申請者が注目したのはそのような非自明 な相互作用である。本論文で議論しているカイラル多重項の高階微分項はそれに 伴ってスカラーポテンシャルに比例する運動項を予言することが分かった。その ような項を含むスローロールインフレーションは結合定数が強い場合において、 インフレーションを起こす場(インフラトン)の運動に著しい影響を与え、有効 ポテンシャルの形を特定の形に決定してしまうことが明らかになっている。イン フレーション期のスカラーポテンシャルの形は、宇宙背景放射観測で検証可能な 幾つかの物理量を決定する。よって、本研究で議論しているモデルにおいては、. No.2.

(4) それらの物理量の値が特定の範囲内のみ取りうるということを意味する。その予 言された値は現在までの観測結果と整合的であるが、今後の観測実験において近 い将来に検証も可能な値となっている。 また5章ではベクトル多重項の高階微分項を含む拡張である、超対称 DBI 作 用の構成について述べている。先行研究では1つの超重力理論に基づく構成法が 示されているが、本論文では共形超重力理論から構成することにより全ての超重 力理論の定式化の仕方においての構成法を示すことが出来ている。さらにベクト ル多重項とカイラル多重項の相互作用の導入についても議論している。本論文で 示した物質場を含む超対称 DBI 作用は、申請者らが初めて構成したものである。 物質場を含む場合についても全ての定式化においてどのような相互作用が可能か ということも明らかにしている。 物質場との相互作用を加えた拡張の応用として、有質量ベクトル多重項を用い たインフレーションモデルを議論している。ここで注目したことは、ベクトル多 重項の作用を DBI 作用に拡張することにより、結合するカイラル多重項のスカ ラーポテンシャルも同時に変形してしまうということである。本論文では最も簡 単な場合の作用を用いたインフレーションモデルについて議論したが、その結果 として高階微分項の相互作用を強くしていくことで、一般的にインフラトンのポ テンシャルが平坦になっていくという事実が分かった。この性質は現在観測され ていないスカラーテンソル比という物理量を小さくすることを予言するため、高 階微分項の効果が大きい方が望ましいという示唆を与える。 また超対称 DBI 作用の構成法と同様にして、新最小超重力理論におけるスカラ ー曲率の高次項、即ち重力場の高階微分項を含む拡張についても議論している。 先行研究ではスカラー曲率の二乗を含む、スタロビンスキーインフレーションに ついて議論されているが、本論文で行った拡張はスカラー曲率の二乗以上の項も 含む。そのような拡張を行った場合、高階微分項の相互作用が強くなるとインフ レーションが起こらなくなるという結果を得た。この結果は有質量ベクトル多重 項によるインフレーションとは異なる結果である。インフレーションが起こらな くなる物理的な理由についても本論文では議論している。 本論文の結果により、高階微分項を含む超重力理論の非自明な性質が明らかに なったと言える。それらは超対称性による強い制限から現れるものであり、例え ば超対称性を保つ真空における超弦理論の有効理論においても現れる可能性があ る。インフレーションモデルとしての観点からは、それら非自明な効果を取り入 れることで、観測結果から排除されていたモデルが観測的に整合するモデルへと 変わり得るということも示された。そのような性質を理解したことは今後のモデ ル構築を行う上で重要になると期待される。. No.3.

(5) No.1. 早稲田大学 氏 名. 山田 悠介. 博士(理学)学位申請 研究業績書 印 (2016. 種 類 別. 題名、. 発表・発行掲載誌名、. 発表・発行年月、. 年. 2月. 現在). 連名者(申請者含む). 論文. “SUSY flavor structure of generic 5D supergravity models”, European Physical Journal C 72 (2012) 2018, 2012 年 5 月発行, Hiroyuki Abe, Hajime Otsuka, Yutaka Sakamura, Yusuke Yamada. 論文. “Instant uplifted inflation: A solution for a tension between inflation and SUSY breaking scale”, Journal of High Energy Physics 1307(2013)039, 2013 年 7 月発行, Yusuke Yamada. 論文. “Impacts of non-geometric moduli on effective theory of 5D supergravity”, Journal of High Energy Physics 1311(2013)090, Yutaka Sakamura, Yusuke Yamada. 論文. “Natural realization of a large extra dimension in 5D supergravity”, Progress of Theoretical and Experimental Physics 2014(2014)9 039B02,2014 年 9 月,Yutaka Sakamura, Yamada Yusuke. 論文. “Inflation in supergravity without Kahler potential”,Physics Review D 90 127701,2014 年 12 月, Shuntaro Aoki, Yusuke Yamada. 論文. “Illustrating SUSY breaking effects on various inflation mechanisms”, Journal of High Energy Physics 1501(2015)026,2015 年 1 月発行, Hiroyuki Abe, Shuntaro Aoki, Fuminori Hasegawa, Yusuke Yamada. 論文. “Reheating processes after Starobinsky inflation in old-minimal supergravity”, Journal of High Energy Physics 1502(2015)105,2015 年 2 月発行, Takahiro Terada, Yuki Watanabe, Yusuke Yamada, Jun’ichi Yokoyama. 論文. “N=1 superfield description of vector-tensor couplings in six dimensions”, Journal of High Energy Physics 1504(2015)035,2015 年 4 月発行, Hiroyuki Abe, Yutaka Sakamura, Yusuke Yamada. ○論文. “Massive vector multiplet inflation with Dirac-Born-Infeld type action”, Physical Review D 91 125042,2015 年 6 月発行, Hiroyuki Abe, Yutaka Sakamura, Yusuke Yamada. ○論文. “Impacts of supersymmetric higher deriveative terms on inflation models in supergravity”, Journal of Cosmology and Astroparticle Physics 1507(2015)020,2015 年 7 月発行,Shuntaro Aoki, Yusuke Yamada. ○論文. “Matter coupled Dirac-Born-Infeld action in four dimensional N=1 conformal supergravity”,Physical Review D 92 025017,2015 年 7 月発行, Hiroyuki Abe, Yutaka Sakamura, Yusuke Yamada.

(6) No.2. 早稲田大学 種 類 別. 題名、. 博士(理学)学位申請 研究業績書 発表・発行掲載誌名、. 発表・発行年月、. 連名者(申請者含む). 論文. “N=1 superfield description of six-dimensional supergravity”, Journal of High Energy Physics 1510(2015)181, 2015 年 11 月発行, Hiroyuki Abe, Yutaka Sakamura, Yusuke Yamada. 論文. “Component action of nilpotent multiplet coupled to matter in 4 dimensional N=1 supergravity”, Journal of High Energy Physics 1510(2015)106, 2015 年 10 月発行, Fuminori Hasegawa, Yusuke Yamada. 論文. “de Sitter vacuum from R^2 supergravity”,Physical Review D 92 105027, 2015 年 11 月発行, Fuminori Hasegawa, Yusuke Yamada. 講演. Yutaka Sakamura and Yusuke Yamada, “LARGE volume scenario in 5D SUGRA”,Summer Institute 2013, Jirisan National Park Hanhwa Resort, 08/2013. 講演. Yutaka Sakamura and Yusuke Yamada, “LARGE volume scenario in 5D SUGRA models”, PASCOS 2013, GIS international Convention Center,11/2013. 講演. Hiroyuki Abe, Shuntaro Aoki, Fuminori Hasegawa and Yusuke Yamada, “Illustrating SUSY breaking effects on various inflation models”, PASCOS 2014, Warsaw university, 06/2014. 講演. Shuntaro Aoki and Yusuke Yamada, “Inflation in supergravity without Kaehler potential”, B-mode cosmology, KEK, Japan, 02/2015. 講演. 安倍博之, 大塚啓, 阪村豊,山田悠介, “Effective theory of 5D SUGRA models with multi moduli”,日本物理学会第 67 回年次大会, 関西学院大学, 03/2012. 講演. 安 倍 博 之 , 大 塚 啓 , 阪 村 豊 , 山 田 悠 介 , “Inflation in 5D SUGRA models with multi-moduli”,日本物理学会第 67 回秋季大会,京都産業大学, 09/2012. 講演. 安 倍 博 之 , 青 木 俊 太 朗 , 山 田 悠 介 ,“Phenomenology after the instant uplifted inflation in 5D SUGRA models”,日本物理学会第 68 回年次大会,広島大学, 03/2013. 講演. 安倍博之, 阪村豊,山田悠介, “LARGE volume scenario in 5D SUGRA”,日本物理学会第 68 回秋季大会, 高知大学, 09/2013. 講演. 安倍博之,山田悠介, “Matter coupled minimal supergravity inflation”,日本物理学 会第 69 回年次大会, 東海大学, 03/2014. 講演. 安倍博之, 青木俊太朗, 長谷川史憲, 山田悠介, “Illustrating SUSY breaking effects on various inflation models”, 基研研究会 素粒子物理学の進展 2014, 京都大学, 07/2014.

(7) No.3. 早稲田大学 種 類 別. 題名、. 博士(理学)学位申請 研究業績書 発表・発行掲載誌名、. 発表・発行年月、. 連名者(申請者含む). 講演. 青木俊太朗,山田悠介,“Cosmological application of higher derivative conformal supergravity”,日本物理学会第 69 回秋季大会,佐賀大学, 09/2014. 講演. 青木俊太朗,山田悠介, “Inflation in supergravity without Kahler potential”, Workshop on geometry,extra dimensions and string phenomenology in Miyazaki, ホ リデイ イン リゾート宮崎, 11/2014. 講演. 安倍博之, 阪村豊,山田悠介, “Matter coupled DBI action in 4 dimensional N=1 SUGRA and its application to inflation”,日本物理学会第 70 回秋季大会, 大阪市立大学, 09/2015.

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