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風に対するロープウェイの 安全性向上に関する研究

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風に対するロープウェイの 安全性向上に関する研究

佐 藤 久 雄 Hisao Sato 2009 年 2 月 February, 2009

Improvement of Ropeway Safety

against Wind

(2)

目 次

第1章 序 論    1

 1.1 研究の背景 1

  1.1.1 ロープウェイの種類と現状 1

  1.1.2 ロープウェイの特徴と応用例 6

  1.1.3 ロープウェイにおける技術的課題 6

 1.2 風に対する安全性に関する従来の研究 14

  1.2.1 事故分析に関する調査・研究 14

  1.2.2 搬器(車両)の空力的特性に関する研究 17

  1.2.3 風対策に関する研究 18

  1.2.4 運行管理に関する研究 19

 1.3 風に対する安全性に関わる技術基準 20

  1.3.1 施設の構造に関わる技術基準 20

  1.3.2 施設の運転に関わる技術基準 21

 1.4 本研究の目的,内容および特色 21

 1.5 本論文の構成 23

 第1章の参考文献 26

第2章 風によるロープウェイの事故分析 31

 2.1 はじめに 31

 2.2 ロープウェイにおける輸送の状況 31

 2.3 ロープウェイ事故の現状 33

2.3.1 ロープウェイの運転事故件数 33

2.3.2 ロープウェイの運転事故における死傷者数 33

 2.4 風によるロープウェイの事故分析 33

  2.4.1 風によるロープウェイの運転事故件数  33

(3)

  2.4.3 風による運転阻害事故件数 43

 2.5 まとめ 46

 第2章の参考文献 47

第3章 実搬器の空力特性および耐風性に関する風洞実験 48

 3.1 はじめに 48

 3.2 実搬器の風洞実験 48

  3.2.1 実搬器の形状 49

  3.2.2 実験方法 49

 3.3 搬器横方向の空力特性 53

  3.3.1 実搬器単体の空力特性 53

  3.3.2 搬器にハンガーおよび握索装置を取り付けた場合の空力特性 53

 3.4 搬器横方向の耐風性 57

  3.4.1 搬器の左右表面形状の影響 57

  3.4.2 積載状態の影響 57

 3.5 まとめ 60

 第3章の参考文献 61

第4章 空力的方法による耐風性向上に関する検討 62

 4.1 はじめに 62

 4.2 実搬器の横方向空力特性について 62

 4.3 模型搬器による耐風性向上に関する風洞実験 64

  4.3.1 空力模型搬器の形状 64

  4.3.2 実験方法 66

  4.3.3 相似則および模型搬器の空力特性 66

 4.4 フェアリング装着による空力的効果 72

  4.4.1 フェアリングを搬器の上面のみに装着した場合の効果 72   4.4.2 フェアリングを搬器の下面のみに装着した場合の効果 72

(4)

  4.4.3 フェアリングを搬器の上面及び下面に装着した場合の効果 75   4.4.4 フェアリング装着による横力変化および揚力変化の状況 75

 4.5 ウイング装着による空力的効果 75

 4.6 広範囲の風向に対する空力的効果 79

  4.6.1 搬器の下面にフェアリングを装着する場合の効果 79   4.6.2 半楕円ウイングを装着する場合の効果 84

 4.7 まとめ 84

 第4章の参考文献 86

第5章 動揺減衰装置の装着による耐風性向上に関する検討 87

 5.1 はじめに 87

 5.2 ニ球転動式動揺減衰装置について 88

  5.2.1 運動方程式および周波数応答関数 88

  5.2.2 減衰装置のパラメーターの最良調整方法 92

 5.3 減衰装置のパラメーターの最良調整図表 93

 5.4 最良調整時の応答特性 96

  5.4.1 最良調整時における系の周波数応答 96

  5.4.2 最良調整時における系の過渡応答  98

   (1) 初期変位に対する時間応答 98

   (2) ランダム風に対する時間応答 98

 5.5 最良減衰係数比と二球間の摩擦係数の関係 105

  5.5.1 二球間の押し合う力および摩擦力 105

  5.5.2 等価粘性減衰係数と二球間の摩擦係数の関係 107   5.5.3 最良減衰係数比と二球間の摩擦係数の関係 108

  5.5.4 二球間の摩擦係数の算出方法 108

 5.6 模型による効果確認実験 109

  5.6.1 実験概要 109

(5)

   (2) 目標とする二球間の摩擦係数 111

   (3) 実際の二球間の摩擦係数 111

  5.6.2 実験結果 111

   (1) 主系の応答 111

   (2) 二球の挙動 116

 5.7 実機チェアリフトによる効果確認実験 116

  5.7.1 実験概要 116

  5.7.2 実験結果 116

 5.8 まとめ 118

 第5章の参考文献 120

第6章 運転限界風速の推定方法に関する検討 121

 6.1 はじめに 121

 6.2 風特性と搬器動揺の調査・解析 121

  6.2.1 風特性について 125

   (1) 突風率 126

   (2) Y方向風速の確率密度関数 126

   (3) Y方向風速のパワースペクトル密度関数 131

  6.2.2 風に対する搬器の動揺特性 131

 6.3 ランダム風応答シミュレーション方法 131

 6.4 運転限界風速の推定方法の提案 137

 6.5 運転限界風速の推定例 138

 6.6 運行管理への活用例 143

 6.7 まとめ 143

 第6章の参考文献 146

(6)

第7章 結 論 147

 7.1 はじめに  147

 7.2 成果の概要 148

 7.3 今後の課題と研究の発展 153

謝 辞 156

本研究に関わる論文 157

付録A 風に対する安全性に関わる法令等 160

 A.1 はじめに 160

 A.2 関係法令等 160

 A.3 事故の種類と報告に関わる法令等 163

 A.4 施設の構造に関わる法令等 163

 A.5 施設の運転に関わる法令等 166

 A.6 安全管理に関わる法令等 168

(7)

第1章 序 論

1.1 研究の背景

 我が国におけるロープウェイは,世界でも有数の建設基数を数えるに至っており,その多 くは山間部において使用されているが,都市内の輸送システムとしても導入が検討され,一 部使用された例がある.海外では,アメリカのニューヨークなどで,通勤・通学用として,

既に使用されている.また,近年においては,高速化および搬器の大型化による輸送の時代 を迎えており,安全性・信頼性の向上のほか,輸送の安定性の向上がより一層求められてい る状況にある.

1.1.1 ロープウェイの種類と現状

 ロープウェイは,架空されたワイヤロープに搬器を懸垂させて旅客を運搬する輸送システ ムである.法令上は「索道」と呼ばれており,その種類としては,乗客が乗る搬器の形状に より,閉鎖式の搬器を使用する普通索道と,いす式の搬器を使用する特殊索道に分類されて いる(1).普通索道としては,主なものとして,交走式のロープウェイ(図 1-1)やゴンドラ リフト(図 1-2)があり,特殊索道としては,チェアリフト(図 1-3)や滑走式リフト(図 1- 4)がある.また,ロープウェイの方式としては,主なものとして,交走式(図 1-5)と循環 式(図 1-6)がある(1).交走式は,懸垂された搬器が往復する方式であり,循環式は,懸垂 された搬器が循環する方式である.

 我が国におけるロープウェイの現状については,その設置基数は約 3,000 基であり,フラ ンス(約 4,000 基),オーストリアに次いで世界第3位(図 1-7)となっている(2).ヨーロッ パにおけるロープウェイの設置状況の大きな特徴としては,雪面上を滑走する方式の滑走式 リフトが圧倒的に多いことがあげられ,この機種は,日本では極めて少ない設置基数となっ ている.この滑走式リフトを除いた設置基数では,日本は世界第1位の設置基数となってい る.また,輸送人員については年間約 4 億 5,000 万人であり,フランス,オーストリア,イ タリアに次いで世界第4位(図 1-8)となっている(2).この輸送人員についても,滑走式リ フトを除いた輸送人員では,日本は世界第1位の輸送量となっており,ロープウェイ主要国 の一つとなっている.

(8)

図 1-1 ロープウェイ

図 1-2 ゴンドラリフト

(9)

図 1-3 チエアリフト

図 1-4 滑走式リフト

(10)

図 1-6 ロープウェイの方式( 循環式 ) 図 1-5 ロープウェイの方式( 交走式 )

(11)

図 1-7 ロープウェイの国別設置基数

図 1-8 ロープウェイの国別輸送人員

0

1,000 2,000 3,000 4,000 5,000

France Austria Japan Italy Switzerland

Number of Installations

Reversible trams & Gondolas Chairlift Surface Lift

0 200 400 600 800

France Austria Japan Italy Switzerland

Passengers Carried ( x 1,000,000)

Reversible trams & Gondolas Chairlift Surface Lift

(12)

1.1.2 ロープウェイの特徴と応用例

 ロープウェイの大きな特徴は,鉄道や新交通システムといった他の交通機関と比べて,

(1)急勾配への対応が可能なこと,(2)支柱の間隔を長くとれること等があげられる(3)

(4)(表 1-1).勾配については,鉄道の場合 3.5% 程度,新交通システムの場合 6% 程度である が,ロープウェイの場合 100%(45 度)の勾配にも対応可能である.また,支柱間隔について は,鉄道の場合,長いものでも 200m 程度,新交通システムの場合 50m 程度であるが,ロープ ウェイの場合2,000m程度の支柱間隔にも対応可能である.この支柱間隔を長く設定できる点 については,付随的に,1㌔当たりの建設費が大幅に安くなることや,河川の横断が容易に なるといった特徴を生んでいる.

 このような特徴を生かして,ロープウェイは,臨海部や,丘陵地の大団地と鉄道駅との交 通アクセス用等の都市交通機関への利用も見込まれ,その応用についての検討も行われてい る(5)(6)

 応用例としては,海外では,アメリカのニューヨーク(Roosevelt Island Tramway(7), 図 1-9),中国の重慶(長江索道(8),図 1-10),シンガポール(Sentosa Cable Car(9),図 1-11),南米コロンビアのメデリン(Metro Cable Medellin(10),図 1-12)等に見ることが できる.例えば,アメリカのニューヨークの「Roosevelt Island Tramway」は,1976 年に 建設された 125 人乗りのロープウェイであり,ビジネス街マンハッタンと住宅地ルーズベル ト島とを結び,通勤や買い物などの足として利用され好評を得ている(図 1-9).また,南米 コロンビアのメデリンの「Metro Cable Medellin」は,2004 年に建設された 10 人乗りのゴ ンドラリフトであり,高台の傾斜地にある住宅地と鉄道駅との間の交通アクセス用として使 用されている(図 1-12).日本では,1989 年に開催された横浜博(スカイウェイ,図 1-13)

において横浜駅東口と博覧会場とを結んで使用された例(4)や,2005 年に開催された愛知万 博(モリゾー・ゴンドラ(6)(11),図 1-14)において,二つの博覧会場(長久手会場と瀬戸 会場)を結ぶ交通機関として使用された例がある.

1.1.3 ロープウェイにおける技術的課題

 このようなロープウェイの弱点は,風に弱いことである.搬器はロープにより吊され,風

(13)

急こう配への対応が可能なこと

・支柱の間隔を長くとれるので、谷や水路などの横断に有利なこと 等 表 1-1 ロープウェイの特徴

50m 程度

(3径間連続鋼軌道桁)

200m 程度

(193m、常磐新線荒川橋梁、3径 間連続トラス)

2,000m 程度

(1,881m、雲辺寺R/W)

支柱間隔

6%

100% 3.5%

(45deg) こう配

新交通

(モノレール・案内 軌条式)

鉄道

ロープウェイ

(14)

図 1-9 応用例( アメリカのニューヨーク,Roosevelt Islan d Tramway )

(15)

図 1-10 応用例( 中国の重慶,長江索道 )

(16)

図 1-11 応用例( シンガポール,Sentosa Cable C ar )

(17)

図 1-12 応用例( 南米コロンビアのメデリン,Metro Cable Medellin )

(18)

図 1-13 応用例( 1989 横浜博, スカイウェイ )

(19)

図 1-14 応用例( 2005 愛知万博,モリゾー・ゴンドラ )

(20)

の衝突,あるいは,衝突の反動で脱索し搬器が落下するといった大きな事故に結びつく可能 性もある.過去には,1985 年の山形蔵王における搬器落下事故(12)(13)(図 1-15)や,1994 年の三重における搬器の支柱衝突事故(14)(15)(図 1-16)も起こっている.また,チェアリ フトでも,風により搬器が大きく振られ,乗客が落下し負傷するといった事故も起こってい る(16)(17).さらに,事故に至らないまでも,風により運転休止を余儀なくされる状況も生 じている(18)(19)(20)(図 1-17,図 1-18,図 1-19).このように,ロープウェイでは,風に 対する輸送の安全性および信頼性の向上は,重要な技術課題となっている.

1.2 風に対する安全性に関する従来の研究

ロープウェイにおいては,上述のように,風による過大な搬器動揺(特に,横方向からの 風による動揺)は,搬器の支柱との衝突,あるいは,搬器落下といった重大な事故に結びつ いており,風のもとでの輸送の安全性および信頼性をより高めることが求められている.

鉄道関係においても,風による事故は重大事故と結びついており,1872 年の開業以来,約 30件の風による列車脱線転覆事故が発生しており,風のもとでの輸送の安全性および信頼性 の向上が求められている(21)〜(25).最近の事故では,2005 年 12 月に羽越線最上川橋梁付 近で発生した風による列車脱線転覆事故が記憶に新しい.

このような風に対する安全性に関する従来の研究については,次の4つの分野に分類する ことができる.すなわち,(1)事故分析に関する調査・研究,(2)搬器(車両)の空力的 特性に関する研究,(3)風対策に関する研究,(4)運行管理に関する研究 の各分野であ る.

1.2.1 事故分析に関する調査・研究

ロープウェイにおける風に対する輸送の安全性向上を検討する上で,風による事故の現状 を把握し分析を行うことは非常に重要である.

事故の発生状況については,鉄道関係では,鉄道事故等報告規則(昭和 62 年 2 月 20 日運 輸省令第8号)に基づき事業者から国土交通省に提出された届出データ(「鉄道運転事故等報 告書(第 1 号様式)」及び「鉄道運転事故等届出書(第 2 号様式)」)をもとに,(財)鉄道総

(21)

図 1-16 1994 三重の搬器衝突事故 図 1-15 1985 山形蔵王の搬器落下事故

(22)

図 1-17 運転休止( 1989 横浜博 ) 図 1-18 運転休止( 2006 湯沢 )

(23)

ス化されている(26).一方,ロープウェイ関係では,鉄道事故等報告規則に基づき事業者か ら国土交通省に提出された届出データ(「索道運転事故報告書(第 3 号様式)」及び「索道運 転事故等届出書(第 4 号様式)」)をもとに,(財)日本鋼索交通協会の索道事故防止委員会に おいて事故の詳細調査などが行われ,最終的に,「索道事故の防止対策に関する報告書」及 び「索道技術管理者研修会テキスト」の中の「索道運転事故一覧表」に掲載(27)(28)され ている.

また,事故分析に関する調査・研究については,鉄道関係では,重大事故について航空・

鉄道事故調査委員会において事故原因調査が行われ(29),その事故についての調査分析結果 が「鉄道事故調査報告書」として報告されており,最近では,羽越線における風による列車 脱線転覆事故の報告書が 2008 年 4 月に出されている(30).このような事故の調査分析以外 に,鉄道事故等報告規則の届出データをもとに統計的分析も実施されており,国土交通省に おける鉄道事故統計資料「鉄道事故等の発生状況について」においては当該年度毎の分析が 行われており(31),また,鉄道技術推進センターにおける「鉄道事故統計分析報告書」にお いては複数年度の統計的分析も実施されている(32).さらに,鉄道事故データを統計的に分 析し,事故の発生と被害の特徴,傾向を把握し,安全性向上策についての検討も行われてい る(33). 

一方,ロープウェイ関係では,これまで,索道事故防止委員会において,事故の事例分析 を中心に分析検討が実施されてきており,事故の発生状況,原因などについての検討が行わ れている(34)〜(36).このロープウェイ事故の分析検討においては,複数年度にわたる事故 データについて統計的な分析を実施したものは見当たらず,特に,風により発生した事故に 着目し,抽出・分類を行うとともに,その内容について統計的に分析し,その特徴等につい て考察を行った文献は見受けられないのが実情である.

1.2.2 搬器(車両)の空力的特性に関する研究

搬器の耐風性向上を検討するには,まず,現状の搬器の空力特性や耐風性について把握し ておくことが重要である.この場合,風による事故は,搬器が風により横方向に大きく振ら れる物理現象が要因となっており,搬器横方向の風に対する空力的特性を明らかにしておく ことが特に重要になると考えられる.

(24)

搬器(車両)の空力的特性については,鉄道関係においても,横方向の風により列車の脱 線転覆事故が起こっており,この列車の耐転覆性の検討のために,橋梁上での現車試験(37), 実物大模型による現地試験(38),さらには各種の風洞実験(37)〜(40)が実施されるととも に,数値シミュレーション(41)により,横風に対する車両の空力的特性についての検討が 行われている.一方,ロープウェイ関係では,これまで搬器の空力的特性について風洞実験

(42)〜(44)が実施されているが,搬器横方向の空力的特性に着目して詳細な検討を行った文

献は見受けられないのが実情である.

1.2.3 風対策に関する研究

 ロープウェイにおける風のもとでの輸送の安全性向上を図る上で,風対策は重要な技術課 題である.

 ロープウェイにおいて従来広く用いられているハード面からの風対策の方法としては,地 上側からの対策として「防風柵や防風ネットを設置する方法」や,搬器側からの対策として

「搬器にウエイトを搭載する方法」があげられる.地上側からの対策として防風柵や防風ネッ トを設置する方法は,鉄道関係では非常に有効な方法として広く用いられており(45)〜(52), また,新しい防風柵に関する研究(53)(54)も行われている.ロープウェイ関係でも非常に有 効な方法として広く用いられているが,ロープウェイの場合,搬器下が谷の場合など,地上 の設置場所の確保が困難な場合が多い.また,搬器側からの対策として搬器にウエイトを搭 載する方法も,非常に有効な方法として広く用いられているが,この方法では,ウエイトの 積み込みを伴うため,急激な気象変動への対応が困難な場合が多いほか,搭載したウェイト 相当分の搬器乗車人数を削減する必要がある.

一方,今後の開発・検討が期待される搬器側からの耐風性向上策としては,「搬器の空気 力学的特性の向上を図る方法」と「搬器に減衰装置を装着する方法」があげられる.

搬器の空力的特性の向上を図る方法については,搬器に空力付加物を装着することにより 搬器の空力的特性を改善する方法が考えられる.この方法は,実施面では,既存の搬器の形 状を変更することなく比較的容易に行え,性能面においても,風とともにその効果が増大す ることが期待され,搬器の耐風性向上のために好ましい方法とも考えられる.しかし,これ

(25)

的特性の改善による搬器の耐風性向上の可能性について検討された文献は見当たらない.

 また,搬器に動揺を低減する減衰装置を装着する方法については,搬器の耐風性向上のみ ならず,支柱通過時の乗り心地向上をも図ることができ,好ましい方法と考えられる.

 搬器の動揺を低減するロープウェイ用の減衰装置としては,ジャイロモーメントを利用す る方法と,動吸振器を使う方法が考えられる.前者は古くは船のローリングを防止するのに 使用された例がある(55)が,ロープウェイ搬器用としても検討(56)(57)が行われた.6人 乗ゴンドラ用のシステムが試作・開発され,効果が確認(58)(59)されたが,装置へのエネ ルギー供給用に搬器に電源が必要になることなどの理由により,現状では導入には至ってい ない.一方,動吸振器を使う方法としては,電源が不要なパッシブ方式の装置が現実的と考 えられ,ばね質量型のものや振り子型のものなどが検討(60)〜(62)され,現在は,それらを ベースにした質量しゅう動式の装置が実用化(63)(64)されており,順次の導入が期待され ているところである.

 一方,国内のロープウェイ設置基数の約95%は循環式のシステムであり,このシステム 全体の搬器数は,多いもので100〜200搬器となっている.このように,循環式のシス テムでは搬器数が多いため,減衰装置を導入する際には,より低価格のものが望まれている.

現状では,減衰装置の価格がシステム全体として,搬器数が多いため相当高価なものになる などにより,必ずしも装置の普及が進んでいない状況にある.

1.2.4 運行管理に関する研究

 輸送の安全性および信頼性をより高めるためには,風のもとでの運転保安の向上を図ると ともに,風に対する運行管理を適確に行うことが極めて重要となる.

 この風に対する運行管理を適確に行うためには,まず,風特性を把握することが必要とな る.これまで風特性については,自然風の性質について,Davenport,日野,塩谷の研究な ど数多くの研究が実施されており(65),また,鉄道関係においても,線路周辺での風の性質 に関する研究(66)〜(72)や実物大車両に働く空気力の観測を行った研究(73)などが実施さ れている.一方,ロープウェイ施設においては,風特性について測定・解析されたものは,

見当たらないのが実情である.

 また,風に対する運行管理については,鉄道関係では,運転規制に関する研究(74)〜(79)

(26)

や車両の転覆限界風速に関する研究(80)〜(82)などがあるが,ロープウェイ関係での風に対 する運行管理に関する研究は見当たらない.ロープウェイ関係では,搬器の運行停止風速は,

主として経験的に決められており,風のもとでの運転保安の向上のためには,風特性データ に基づいた決定方法が必要と考えられる.即ち,ロープウェイ施設における風特性を把握す るとともに,風に対する搬器の動揺特性を把握し,さらには,風のもとでの搬器の運転限界 風速を事前に検討し,適切な運行停止風速を決定することが重要となる.

1.3 風に対する安全性に関わる技術基準

 ロープウェイは,法令上は「索道」と呼ばれており,施設の安全な運行を確保するために 必要な要件について,技術上の基準が定められている.風に対する安全性に関わる関係法令

(83)(84)等について,抽出・整理した結果を付録 A に示す.

 索道施設の構造,運転等の技術上の基準については,「索道施設に関する技術上の基準を 定める省令(昭和 62 年 3 月 2 日運輸省令第 16 号,以下「索道省令」という.)」に規定され,

さらに,索道省令の運用に必要な索道施設の構造の標準的な技術基準及び索道施設の標準的 な維持管理方法については,「索道施設の審査及び維持管理要領(平成 9 年 5 月 29 日鉄技第 70 号 鉄保第 65 号 鉄施第 80 号,以下「審査要領」という.)」に定められている.

1.3.1 施設の構造に関わる技術基準

 索道省令及び審査要領において,風に対する安全性に関係する施設の構造に関わる主要な 項目としては,(1)搬器と建造物等との間隔,及び(2)保安設備 があげられる.

 「搬器と建造物等との間隔」については,索道省令の第 8 条に,審査要領では 2.1.3 に規定 されており,搬器がその運転中の加減速や風等によって動揺し,線路中の近接する支柱等の 建造物等と接触することのないよう,搬器とこれら建造物等とは一定の間隔を設ける必要が あることが定められている.普通索道では 450mm 以上,特殊索道では 500mm 以上の間隔を設 けることが求められている.また,単線の索道の場合には,搬器の振れが大きくなることを 考慮して,搬器が 11 度振れても支柱等に接触しないことが併せて規定されている.

 また,「保安設備」については,索道省令の第 27 条に,審査要領では 7.2 に規定されてお

(27)

する装置(風速計)を設置する必要のあることが定められている.

1.3.2 施設の運転に関わる技術基準

 索道省令において,風に対する安全性に関係する施設の運転に関わる主要な項目としては,

(1)運転の安全確保,及び(2)細則の制定 があげられる.

 「運転の安全確保」については,索道省令第 30 条第 1 項により,索道の運転に関係する係 員は,知識及び技能を活用するとともに,運転関係の設備を総合的に活用して,索道の安全 確保に努めなければならないことが規定されている.

 また,「細則の制定」については,索道省令の第 3 条第 1 項により,索道事業者は実施に関 する細則を定めなければならないと規定されており,運転取扱いについては「運転取扱細則」

として,それぞれの索道施設の構造に応じた具体的な細則を定めることが求められている.

この「細則の制定」に関する規定に基づき,索道事業者は,風に対する運転方法についても,

運転停止の風速等を「運転取扱細則」の中で規定し,地方運輸局長に届出を行っているのが 実情である.

1.4 本研究の目的,内容および特色

 ロープウェイの弱点は,1.1.3項でも述べたように,風に弱いことである.搬器はロー プにより吊され,風に揺れやすい構造となっており,搬器が大きく揺れた場合,支柱に衝突 するといった事故に結び付く可能性がある.実際これまで,風により搬器が支柱に衝突する 事故や搬器落下事故も起こっており,ロープウェイにおける風対策は重要な技術課題となっ ている.

 そこで本研究では,風に対するロープウェイの安全性向上,特に,支柱近傍における安全 性向上を図ることを目的に実施した.まず,風によるロープウェイ事故の統計的分析を行い,

その特徴を明らかにした(第2章).また,事故の発生確率の高い搬器について風洞実験を 行い,その空気力学的な特性を明らかにした(第3章).さらに,安全性向上を図る方法と して,空力的方法による耐風性向上の検討(第4章),減衰装置装着による耐風性向上の検 討(第5章),および,風のもとで運転を行う際の運転限界風速の推定方法に関する検討(第 6章)を行った.図 1-20 に本研究のフローを示す.

(28)

風風風風にににによよよよるるるる事事事事故故故故分分分分析析析析 ((((第第第第2222章章章章)))) ・複数年度にわたる統計的分析 ・風による事故の特徴の把握 実実実実搬搬搬搬器器器器のののの風風風風洞洞洞洞実実実実験験験験 ((((第第第第3333章章章章)))) ・単線式の代表的な2型式の搬器 ・横風に対する搬器の空力的特性の検討 空空空空力力力力的的的的方方方方法法法法にににに関関関関すすすするるるる検検検検討討討討 ((((第第第第4444章章章章)))) ・空力付加物装着による  耐風性向上の可能性の検討 ・フェアリングおよび  ウィングの空力的効果の検討 ・風洞実験による検討 動動動動揺揺揺揺減減減減衰衰衰衰装装装装置置置置にににに関関関関すすすするるるる検検検検討討討討 ((((第第第第5555章章章章)))) ・二球転動式の提案 ・シミュレーションによる  特性および効果に関する検討 ・模型実験・実機実験による  効果に関する検討 運運運運転転転転限限限限界界界界風風風風速速速速のののの推推推推定定定定方方方方法法法法 にににに関関関関すすすするるるる検検検検討討討討((((第第第第6666章章章章)))) ・風特性などの調査・解析 ・風に対する搬器動揺の  シミュレーション方法の検討 ・運転限界風速の推定方法の  提案と検討

((((対対対対策策策策))))

((((現現現現状状状状調調調調査査査査・・・・解解解解析析析析)))) 図1-20 本研究のフロー

(29)

 本研究の特色としては,以下の事項があげられる.

(1)風による事故に関する分析

 風による事故の分析については,これまで単年度毎の事例分析が中心であったが,本研究 では,複数年度にわたる統計的分析を行い,風による事故の特徴を明らかにしていること.

(2)搬器横方向の空力的特性に関する調査・分析

 風による事故は,搬器が風により横方向に大きく振られる物理現象が要因となっているが,

搬器横方向の空力的特性については,これまで余り検討されていないのが実情である.そこ で本研究では,搬器横方向の空力的特性に関して詳細な風洞実験を行い,その特性について 明らかにしていること.

(3)空力付加物装着による搬器の耐風性向上の可能性に関する検討

 これまで搬器の空力的特性については,その特性を把握することが中心であったが,本研 究では,空力付加物を装着することによる搬器の耐風性向上の可能性について,風洞実験に より明らかにしていること.

(4)二球転動式動揺減衰装置の提案と効果に関する検討

 構造がシンプルであり,価格も低価格になる可能性のある減衰装置として,本研究では,

可動質量への減衰力の付与が自己生成される特徴をもつ「二球転動式動揺減衰装置」の提案 を行うとともに,その効果について,数値シミュレーションおよび実験により確認している こと.

(5)運転限界風速の推定方法の提案と検討

 搬器の運行停止風速については,これまで主として経験的に決められていたが,本研究で は,風特性のデータに基づき決定するために,運転限界風速を推定する方法の提案と検討を 行っていること.

1.5 本論文の構成

 本論文は,7章より構成され,各章の概要は次のとおりである.

 第1章「序論」では,本研究の背景とこれまでに発生している事故の事例やその対策に関 する研究の事例について説明し,さらに研究の目的と構成について述べた.

(30)

 第2章「風によるロープウェイの事故分析」では,風のもとでのロープウェイにおける輸 送の安全性の現状を把握することを目的に,複数年度(1990 年から 2000 年までの 11 年間)

にわたる風による事故について,広範囲にデータを収集して分析を行った結果について記述 した.

 事故分析に当たっては,単年度毎のロープウェイ事故の発生状況に関する調査結果データ から,風による事故を抽出し分類を行うとともに,その内容について統計的に分析し,その 発生要因等の特徴について考察した.その結果,風による事故は搬器衝突事故や搬器落下事 故といった重大事故に高い確率で結びついていることを明らかにした.

 第3章「実搬器の空力特性および耐風性に関する風洞実験」では,搬器横方向の空力特性 や耐風性を把握することを目的に,実搬器の風洞実験を行った結果について記述した.

 風洞実験に当たっては,第2章で明らかにした事故分析結果に基づき,風による事故の発 生確率の高い普通索道の搬器を対象とした.特に,その中でも単線式の搬器が風により揺れ 易く,事故の発生確率も高いことから,この種類の代表的な二型式の搬器を選定し,横風に 対する搬器の空気力学特性および耐風性を実験的に明らかにした.

 第4章「空力的方法による耐風性向上に関する検討」では, 実搬器の風洞実験結果をも とに空力模型搬器を製作して用い,空力付加物の装着による搬器の耐風性向上の可能性につ いて,風洞実験により検討を行った結果について記述した.

空力付加物としては,フェアリングおよびウイングを考案し,それらの装着条件に関して は,フェアリングでは三種類の条件(搬器の上面のみ,下面のみ,そして上面及び下面)に ついて,ウィングでは三種類の形状(平板,だ円,半だ円)についてそれぞれ検討を行った.

さらに,この中で効果の高かった場合について,風向の範囲を広げて実験を行い,空力付加 物の空力的効果について調べた.その結果,フェアリングを搬器下面のみに装着した場合で は,ローリングモーメントが最大で約 32% 減少する顕著な効果が認められた.また,半だ円 ウイングを装着した場合には,ローリングモーメントが最大で約 21% 減少する効果が確認さ れた.

 第5章「動揺減衰装置の装着による耐風性向上に関する検討」では,風等によるロープ ウェイ搬器の動揺の低減を目的に,二つの球を可動質量として使用した二球転動式動揺減衰

(31)

 この二球転動式動揺減衰装置は,可動質量への減衰力が二つの球により自己生成されるた め,特別の減衰力付与機構を必要とせず,構造がシンプルになるとともに,装置が安価とな る可能性のある装置である.まず,この二つの球を可動質量に使用した二球転動式動揺減衰 装置の提案を行うとともに,本装置のパラメーターの調整方法を明らかにした.また,最良 調整された本装置を搬器に装着した場合の効果について数値シミュレーションを行い,主系 および付加系の周波数応答,初期変位に対する時間応答,ランダム風に対する時間応答特性 を明らかにした.

 次に,本減衰装置における二球間の押し合う力を解析し,この結果から,等価粘性減衰係 数と二球間の摩擦係数の関係,および理論的に求めた最良減衰係数比と二球間の摩擦係数の 関係を求め,二球間における好ましいダンピング(ここでは,二球間における摩擦係数)の 付加方法を明らかにした.また,模型実験を行い,その方法の有効性を確認し,さらに,模 型実験および実機のチェアリフトを用いた実験により,本減衰装置を装着した場合の効果を 明らかにした.

 第6章「運転限界風速の推定方法に関する検討」では,ロープウェイの運転保安の向上と 風に対する運行管理の適正化を図ることを目的として,風のもとで搬器を運転する際の限界 となる風速の推定方法の提案とその推定例について記述した.

 まず,二つのロープウェイ施設において風特性および風に対する搬器の動揺特性の調査・

解析を行った結果について説明するとともに,その調査・解析結果をもとに,風に対する搬 器動揺の数値シミュレーション方法について検討した結果について述べた.次に,その風応 答シミュレーションを用いて搬器の運転限界風速を推定する方法を提案し,その検討例とし て,測定を行った二つのロープウェイ施設における運転限界風速の推定結果について記述し た.

 第7章「結論」では,本論文の全体を要約し,結論を述べた.また,今後の課題として,

特に風対策はロープウェイにとってきわめて重要な技術課題であり,ハードとソフトの両面 から一層の安全対策を講じて,より安全でより快適な交通機関としてのロープウェイの発展 を図ることが重要なことを指摘した.

(32)

第1章の参考文献

(1) (財)日本鋼索交通協会編,索道施設設計標準・管理標準及び同解説,(2006-8),4-5 (2) 56th ITTAB2006 (Aix-Les-Bains, France) Documents,(2006-9)

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(4) 日本機械学会編,機械工学便覧 応用システム編 γ 6 交通機械,(2006)、167-169  (5) 日本索道工業会,都市型索道の実用化技術に関する調査報告書,(1993-3)

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(33)

592

(23) 藤井俊茂・前田達夫・石田弘明,強風による列車の脱線・転覆,鉄道と電気技術,10- 5(1999-5),48-52

(24) 島村誠,強風,日本鉄道施設協会誌,43-10(2005-10),725-727

(25) 藤井俊茂,強風災害防止に関する研究開発の現状と今後の展望,鉄道総研報告,19-10 (2005-10),1-4

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(28) 例えば,(財)日本鋼索交通協会,索道技術管理者研修会テキスト,(2007-8),58-65 (29) 廣瀬道雄,事故防止に向けた調査への取組,鉄道と電気技術,13-6(2002-6),3-6 (30) 航空・鉄道事故調査委員会,鉄道事故調査報告書(東日本旅客鉄道株式会社 羽越線

砂越駅〜北余目駅間 列車脱線事故),2008 年 4 月 2 日

(31) 国土交通省における鉄道事故統計資料,http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/08/

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(33) 三和雅史,鉄道事業における安全管理体制構築のための数理モデル分析手法の適用に 関する研究,政策研究大学院大学博士論文,(2007-4)

(34) (財)日本鋼索交通協会,索道技術管理者研修会テキスト,(1991-8),68-76

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36

(38) 鈴木実・種本勝二,横風に対する車両の空力特性に関する実物大試験と風洞試験,J- RAIL2007,(2007-12),231-234

(39) 種本勝二・鈴木実・前田達夫,横風に対する車両の空気力学的特性風洞試験,鉄道総 研報告,13-12(1999-12),47-52

(34)

(40) 鈴木実・種本勝二・斎藤寛之・今井俊昭,自然風を模擬した車両に働く空気力に関す る風洞試験法,鉄道総研報告,17-11(2003-11),47-52

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(43) 安全索道(株),「ロープウェイゴンドラ(6人乗り)の風洞試験」報告書,(1981-12) (44) 天龍工業(株),「ゴンドラリフト搬器の風洞試験」報告書,(1990-2)

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(52) 横井進一・庄司雅臣・皆川一四,羽越本線第 2 最上川橋梁付近防風柵新設,日本鉄道 施設協会誌,46-1(2008-1),51-53

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(35)

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(36)

(71) 今井俊昭・島村泰介・福原隆彰,風速の空間的な変動特性を考慮した強風発生確率モ デル,鉄道総研報告,21-1(2007-1),7-12

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(73) 日比野有・今井俊昭・種本勝二,自然風下の実物大車両模型に働く空気力の観測,鉄 道総研報告,18-9(2004-9),11-16

(74) 今井俊昭・藤井俊茂・種本勝二・島村泰介,鉄道強風規制のための風速評価の試み,鉄 道総研報告,11-10(1997-10),29-34

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(76) 石浜順吉,強風に伴う運転規制,鉄道と電気技術,10-5(1999-5),53-54

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115-116

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(83) 国土交通省鉄道局監修,注解鉄道六法(平成 19 年度版),(2007-11),第一法規 (84) 北陸信越索道協会編,索道関係法令・通達集,(2007-10)

(37)

第2章 風によるロープウェイの事故分析

2.1 はじめに

ロープウェイにおいては,風による過大な搬器動揺は,搬器の支柱との衝突,あるいは,

搬器落下といった重大な事故に結びつく可能性があり,風のもとでの輸送の安全性および信 頼性をより高めることが求められている.

このロープウェイにおける風に対する輸送の安全性を検討する上で,風によるロープウェ イ事故の現状を把握し分析を行うことは非常に重要である.一方,これまで,風により発生 した事故に着目し,複数年度にわたる事故データについて統計的に分析し,その特徴等につ いて考察を行った文献は見受けられない.

本章では,風のもとでのロープウェイにおける輸送の安全性の現状を把握することを目的 に,複数年度にわたる風による事故について統計的分析を行った結果について述べる.

風による事故分析については,単年度毎のロープウェイ事故の発生状況に関する調査結果 データ(1)(2)から,風による事故を抽出し分類を行うとともに,その内容について統計的に 分析し,その特徴を明らかにした.調査・分析対象は,1990 年度から 2000 年度までの11 年間のロープウェイ事故データである.

2.2 ロープウェイにおける輸送の状況

ロープウェイの種類としては,閉鎖式の搬器を使用する普通索道と,いす式の搬器を使用 する特殊索道に分けられる.普通索道としては,主なものとして,交走式のロープウェイや ゴンドラリフトがあり,特殊索道としては,チェアリフトや滑走式のリフトがある.

我が国のロープウェイの設置基数の推移を図 2-1 に,輸送人員の推移を図 2-2 に示す.設 置基数については,1994 〜 1996 年度において最も多く約 3,200 基であり,その後少し減少 傾向を示している.2000 年度の設置基数は,約 3,000 基であり,その約94%が特殊索道で あり,約6%が普通索道となっている.また,輸送人員については,1993 年度において最も 多く約8億8千万人であり,その後減少傾向を示している.2000 年度の輸送人員は,約5億 6千万人であり,その約89%が特殊索道であり,約11%が普通索道となっている.

(38)

0 1000 2000 3000 4000

1990 1992 1994 1996 1998 2000

Year

Reversible trams & gondolas Chairlifts & surface lifts

Number of installations

0 200 400 600 800 1000

1990 1992 1994 1996 1998 2000

Year

Reversible trams & gondolas Chairlifts & surface lifts

Passengers carried ( ¥ 1,000,000 )

図 2-1 ロープウェイにおける設置基数

図 2-2 ロープウェイにおける輸送人員

(39)

2.3 ロープウェイ事故の現状

2.3.1 ロープウェイの運転事故件数 

ロープウェイの運転事故件数の推移を図 2-3 に示す.運転事故は,年平均で約18件の発 生となっている.

ロープウェイの運転事故は,鉄道事故等報告規則(昭和62年運輸省令第8号)により,

次の5項目に定められている.(1)索条切断事故,(2)搬器落下事故,(3)搬器衝突事 故,(4)搬器火災事故,(5)人身障害事故 である.ここに,人身障害事故は,搬器の運 転により人の死傷を生じた事故(前各号の事故に伴うものを除く)である.

1990 年度から 2000 年度までに発生したロープウェイの運転事故での事故内容別の割合を 図 2-4 に示す.運転事故の事故内容別割合は多い順に,人身障害事故76%,搬器落下事故 13%,搬器衝突事故10%,索条切断事故1%となっている.人身障害事故の占める割合 が高いが,ここでの人身障害事故のほとんどは,乗客の不注意あるいは係員の対応不備で発 生したものである.

2.3.2 ロープウェイの運転事故における死傷者数

ロープウェイの運転事故における死傷者数の推移を図2-5に示す.1992年度における死傷 者数が 92 名と多くなっている理由は,交走式ロープウェイの搬器衝突事故により,70 名の 多くの乗客が負傷したためである.運転事故における死傷者数は,年平均で31人となって いる.

1990 年度から 2000 年度までに発生したロープウェイの運転事故における死傷者数の,事 故内容別の割合を図 2-6 に示す.死傷者数の事故内容別割合は多い順に,人身障害事故56

%,搬器衝突事故30%,搬器落下事故13%,索条切断事故1%となっている.

2.4 風によるロープウェイの事故分析

2.4.1 風によるロープウェイの運転事故件数  

 我が国における 1990 年度から 2000 年度までに発生した風によるロープウェイの運転事 故件数の推移を図 2-7-1 に,風による運転事故件数の割合を図 2-7-2 に示す.風による運 転事故は23件発生しており,全体の運転事故の約11%を占めていることがわかる.

(40)

0 5 10 15 20 25 30

1990 1992 1994 1996 1998 2000

Year

Number of accidents

Rope break ( 1% )

Carrier fall ( 13% )

Carrier collision

( 10% ) Human injury

( 76% )

Total number of accidents for 11 years : 202 図 2-3 ロープウェイの運転事故件数

図 2-4 ロープウェイの運転事故における事故内容別割合

(41)

0 20 40 60 80 100

1990 1992 1994 1996 1998 2000

Year

Number of casualties

Rope break ( 1% )

Carrier fall ( 13% )

Carrier collision ( 30% ) Human injury

( 56% )

Total number of casualties for 11 years : 341 図 2-5 ロープウェイの運転事故における死傷者数

図 2-6 ロープウェイの運転事故における死傷者数の事故内容別割合

(42)

0 5 10 15 20 25 30

1990 1992 1994 1996 1998 2000

Year

Accidents due to wind Others

Number of accidents

Accidents due to wind ( 11% )

Others ( 89% )

Total number of accidents for 11 years : 202 図 2-7-1 風によるロープウェイの運転事故件数

図 2-7-2 風による運転事故件数の割合

(43)

また,1990 年度から 2000 年度までに発生した風によるロープウェイの運転事故における 事故内容別割合を図 2-8 に示す.風による運転事故の事故内容別割合は多い順に,搬器衝突 事故43%,搬器落下事故35%,人身障害事故22%となっている.

ロープウェイにおける全体の搬器落下事故の中での風による事故の割合を図2-9に,全体 の搬器衝突事故の中での風による事故の割合を図2-10に示す.風による搬器落下事故は,全 体の搬器落下事故の31%を占め,風による搬器衝突事故は,全体の搬器衝突事故の50%

を占めている.これらの風による運転事故は,搬器横方向の風により起こっており,支柱近 傍において,搬器衝突事故や搬器落下事故といった重大事故に高い割合で結びついているこ とがわかる.これは,ロープウェイの搬器が風により揺れやすい構造になっていることによ ると考えられ,搬器が風により横方向に大きく振られた場合,支柱に衝突するといった事故 やその反動で搬器が落下する事故に結び付いているためである.

風による運転事故におけるロープウェイの種類別割合を図 2-11 に示す.特殊索道が74

%,普通索道が26%となっている.一方,1施設当たりの風による平均的年間運転事故件 数について,ロープウェイの種類別に比較したものを図2-12-1に示す.普通索道では0.0030 件/基,特殊索道では 0.00054 件/基となっており,普通索道の方が約5.5倍高くなって いることがわかる.これは,普通索道の場合,閉鎖式の搬器を使用していること,および,

地上から高い位置に設置されていることにより,風の影響を受け易いためであると考えられ る.

また,普通索道における1施設当たりの風による平均的年間運転事故件数について,単線 式と複線式のロープウェイの種類別に比較したものを図2-12-2に示す.単線式では,0.0038 件/基,複線式では,0.0020 件/基となっており,単線式ロープウェイの方が約2倍高く なっていることがわかる.これは,単線式の場合,複数のロープで支持されている複線式の 場合より搬器が揺れ易いためであると考えられる.

2.4.2 風による運転事故における死傷者数  

風による運転事故における死傷者数の推移を図 2-13-1 に,風による運転事故における死 傷者数の割合を図2-13-2に示す.風による運転事故における死傷者数は41人であり,全体 の死傷者数の約12%を占めていることがわかる.

(44)

Carrier fall ( 35% ) Carrier collision

( 43% ) Human injury

( 22% )

Total number of accidents due to wind for 11 years : 23

Accidents due to wind ( 31% ) Others ( 69% )

Total number of carrier fall accidents for 11 years : 26 図 2-8 風による運転事故における事故内容別割合

図 2-9 搬器落下事故における風による事故の割合

(45)

Accidents due to wind ( 50% ) Others

( 50% )

Total number of carrier collision accidents for 11 years : 20

Reversible trams &

gondolas ( 26% ) Chairlifts & surface lifts

( 74% )

Total number of accidents due to wind for 11 years : 23 図 2-10 搬器衝突事故における風による事故の割合

図 2-11 風による運転事故におけるロープウェイの種類別割合

(46)

0 0.001 0.002 0.003 0.004

Reversible trams & gondolas Chairlifts & surface lifts Type of ropeway

(Number of accidents due to wind) / (Number of installations)

Type of ropeway 0

0.001 0.002 0.003 0.004

Single-wire system (Gondolas)

Multi-wire system (Reversible trams)

(Number of accidents due to wind) / (Number of installations)

図 2-12-1 1施設当たりの風による運転事故件数の割合の,

ロープウェイの種類別比較

図 2-12-2 普通索道における1施設当たりの風による運転事故件数の割合の,

単線式と複線式の種類別比較

(47)

0 20 40 60 80 100

1990 1992 1994 1996 1998 2000

Year

Accidents due to wind Others

Number of casualties

Accidents due to wind ( 12% )

Others ( 88% )

Total number of casualties for 11 years : 341 図 2-13-1 風による運転事故における死傷者数

図 2-13-2 風による運転事故における死傷者数の割合

(48)

Carrier fall ( 44% ) Carrier collision

( 37% ) Human injury

( 19% )

Total number of casualties in accidents due to wind for 11 years : 41

Reversible trams &

gondolas ( 32% ) Chairlifts & surface lifts

( 68%)

Total number of casualties in accidents due to wind for 11 years : 41

図 2-14 風による運転事故における死傷者数の事故内容別割合

図 2-15 風による運転事故の死傷者数におけるロープウェイの種類別割合

0 0.002 0.004 0.006 0.008

Reversible trams & gondolas Chairlifts & surface lifts Type of ropeway

(Number of casualties in accidents due to wind) / (Number of installations)

図 2-16 1施設当たりの風による運転事故における死傷者数の割合の,

ロープウェイの種類別比較

(49)

風による運転事故における死傷者数の,事故内容別の割合を図 2-14 に示す.風による運 転事故における死傷者数の事故内容別割合は多い順に,搬器落下事故44%,搬器衝突事故 37%,人身障害事故19%となっている.

風による運転事故における死傷者数の,ロープウェイの種類別割合を図 2-15 に示す.ま た,1施設当たりの風による運転事故における平均的年間死傷者数について,ロープウェイ の種類別に比較したものを図 2-16 に示す.風による運転事故における死傷者数の,ロープ ウェイの種類別割合は,特殊索道が68%,普通索道が32%となっている.一方,1施設 当たりの風による運転事故における平均的年間死傷者数は,普通索道では0.0064人/基,特 殊索道では 0.00088 人/基となっており,普通索道の方が約7.3倍高くなっていることが わかる.

2.4.3 風による運転阻害事故件数  

ロープウェイの事故については,「運転事故」以外に「運転阻害事故」が鉄道事故等報告 規則に分類されている(2001 年 10 月以降は本規則の改正により,「運転阻害事故」の報告義 務が廃止されている).この運転阻害事故は,搬器の運転に障害を生じた事故で,24時間 以上運転を休止したものである.

1998 年度から 2000 年度における風による運転阻害事故件数の推移を図 2-17-1 に,風によ る運転阻害事故件数の割合を図2-17-2に示す.風による運転阻害事故は972件発生してお り,全体の運転阻害事故件数の約73%を占めていることがわかる.

風による運転阻害事故におけるロープウェイの種類別割合を図 2-18 に示す.普通索道が 67%,特殊索道が33%となっている.一方,1施設当たりの風による平均的年間運転阻 害事故件数について,ロープウェイの種類別に比較したものを図2-19に示す.普通索道では 1.16 件/基,特殊索道では 0.038 件/基となっており,普通索道の方が約31倍高くなって いることがわかる.このように運転阻害事故においては,「風による運転阻害事故件数」お よび「1施設当たりの風による運転阻害事故件数の割合」の両者で,普通索道の場合に顕著 に高いことが大きな特徴となっている.これは,普通索道の場合,閉鎖式の搬器を使用して いること,および,地上から高い位置に設置されていることにより,風の影響を受け易いた めであると考えられる.

(50)

0 100 200 300 400 500 600

1998 1999 2000

Year

Obstruction accident due to wind Others

Number of obstruction accidents

Obstruction accidents due to wind ( 73% )

Others ( 27% )

Total number of operation obstruction accidents for 3 years : 1,331

図 2-17-1 風による運転阻害事故件数

図 2-17-2 風による運転阻害事故件数の割合

(51)

Reversible trams & gondolas ( 67% )

Chairlifts & surface lifts ( 33% )

Total number of operation obstruction accidents due to wind for 3 years : 972

0 0.4 0.8 1.2 1.6

Reversible trams & gondolas Chairlifts & surface lifts Type of ropeway

(Number of obstruction accidents due to wind) / (Number of installations)

図 2-18 風による運転阻害事故におけるロープウェイの種類別割合

図 2-19 1施設当たりの風による運転阻害事故件数の割合の,

ロープウェイの種類別比較

参照

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