長 谷 川
明*
IInprovement of rnusic sand at Shirahama coast
Akira HASEGAWA・
Abstract
山【usic sands are distributed at seashores in Japan. The sound has been faHliliar for people
、
vho M/alks at the seattore froHi old tilnes ln Aomori prefecture,Shirahama,Deto,Onodasa、 va and Sarugamori are famous for the seashores、 vith music sand However,the sound of music
sand at Shirahama seaShore is not better than others, In this paper,a simple rnethod to improvethe sOund is intrOduced,and the properties of the music sand are described.
Keywords: music sand,shirahama coast
1.序
論
鳴 き砂 (鳴 り砂 ともい う
)は ,日本各地の海 岸 に分布 し
,古くか ら海岸 を散策す る人々 に親 しまれて きている。特 に
,有名 な鳴 き砂の浜 に は
,九九鳴浜 (宮 城県
),十八鳴浜 (宮 城県
),琴引浜 (京 都府
)などの名称が付 けられ
,海岸の 風向明媚 なことと併せて鳴 き砂が海浜 の環境 と
して親 しまれている。
日本では , 鳴 き砂 は耳ヒ九ザ ‖ 寸 か ら耳ヒ陸に至 る日 本海側 と ,東 北地方の太平洋側 に分布 している。
この うち青森県で は ,白 浜 ,出 戸 ,小 田野沢 ,猿 ヶ 森お よび尻労
(しっか り
)に分布 しているとさ れている
1ちこの うち白浜 を除 く地点 で は感度 の良い鳴 き砂であるのに対 し
,白浜の砂 は感度
の少ない鳴 き砂 と評価 されている。
そ こで
,大須賀海岸の砂 をで きるだけ簡単 な 手法で処理す ることで
,鳴き砂 を復活 させ る方 法 を検討す ることとした。 白浜海岸 は
,夏期 に は白浜海水浴場 として多 くの市民 に親 しまれて いる海岸であ り ,海 水浴が楽 しめない季節 にお いて も風 向明娼 な海岸 として市民の憩 いの場 と
平成 9年 10月 15日 受理 事土木工学科・教授
なっている。 この様 な海岸で鳴 き砂 を復活 させ る背景 としては
,市民が鳴 き砂の音 を楽 しむ こ ととともに次の ような ことが考 えられ る。
(1)最 近 の海岸利用者の増大 に ともなって
,ゴ ミの処理 な ど海岸付近の環境の悪化が
,心配 さ れているが ,鳴 き砂 を復活 しこれ を保護するこ とが契機 となって
,海岸の環境保全 に役立つ こ とが考 えられ る。
(2)鳴 き砂 を大須賀海岸 の観光資源 として 利用す ることによって
,観光事業 に役立てるこ
と力ゞ で きる。
2.調 査地点 と改善方法
調査では
,対象 とす る白浜海岸 を含 め青森県 の主要 な海水 浴場 5ヶ 所 の砂 につ いて調査 し た。 これ らに
,感度の良い砂 とされ る猿 ヶ森砂 丘 を加 え
6地点 を調査地点 とした。採取地点 は
,猿 ヶ森砂丘
,七里長浜
,合浦公園
,砂浜海岸
,はまなす公園
,白浜海岸の
6地点である。採取地 点 を図
‑laおよび
bに示す。 白浜海岸 について は
,海岸線 に沿 って
100m毎に計
18地点採取 した。
今回の実験では
,広い海岸 に適用することを
芸 ヶ森
(SA)
'ノ
`浜海 岸
(SU)
え .
:牝
七 里 '浜
(S
大 須 賀(白浜
:S
I森弘 前
ら
図
la
調査地点 その1配慮 しご く簡単 な改善方法 を とった。それ は,
① 砂 を器 に入れ,水(約25°
C),お
湯 (60,100℃)で3分間洗浄 し浮 いて きた不純物 は取 り除 く,
② 水をきリパットに移して水分が抜けるまで
自然乾燥 させ る,方法 で あ る。
観測者
洗わない砂
観測者
洗った砂
4:よく鳴 る 3:普通 2:微かに鳴 る 1:全く鳴 らない
普
4「
コ̲…H「「#一―… ― ― 図
lb
調査地点 その2
―み
表 1 耳で聞いた鳴 き砂 の洗争
(約
25°C水)に
よる改善平 均
平 均 A B C
A B C
1 33 1 06 1.17
3̲50 3 50 3 61 1̲19
平 均
2
1.00 2̲33 1 00 2 00 1̲00 1 67 1 00 1 00 1 33 1.00 1̲00 1 00 1̲00 13
1̲00 14
1 00 15
1 00 16
1̲00 17
1 00 18
観
測 地点
4 00 4 00 1.67 2 33 3 00 3 00 3̲00 4.00 3̲67 4 00 10
4 00 11
3 67 12
4 00 13
3 67 14
4.00 15
4.00 3 67 17
4 00 18
観
測 地点
平 均
3.54
3.実 験 結 果
3.1耳で聞いた鳴 き砂の改善状況
白浜海岸の
18地点の砂 について ,直 接試験者 が耳で聞 くことで音の改善状況 を調査 した。洗 浄 しない砂
,水 (25°C)で 洗浄 した砂 について 比較 した。発生音 を試験者
(A,B,C)3名が 4 段階評価で評価す ることとし
,洗浄 しない猿 ヶ 森 の砂の評価 を 4と して ,「 鳴かない」を 1と し て評価 した。
測定結果 を表‑1に 示す。砂 を水洗いす ること によって評価 は大 き く改善 されている。多 くの 鳴かなかった砂が良 く鳴 く砂 と評価 された。 し か し
,採取地点 によっては改善 の小 さい もの も 見 られた。
3。 2 発生音のスペ ク トル特‖ 生
鳴 き砂の発生音 を収録 し
,これ をスペ ク トル 解析することで鳴 き砂の発生音の特徴 を調査 し た。図
‑2に白浜海岸の地点
1の砂の発生音のス ペ ク トル図を描 く。左側 の洗浄 をしない自然乾 燥 させた砂 に対 し ,100°
C洗浄 した砂 が 1,000
SIo01 2.FFT
>
Hz
図
2洗浄による発生音の変化 :白 浜 1(S11)
Hz付
近 に大 きなスペ ク トル成分 を持 ってい る こ とが示 されてい る。 スペ ク トル図 は
,突き方 に よって異 なった もの と考 え られ るが
,ここで
は
3回の発生音 に対 してスペ ク トル図 を描 き代 表 的 な図 を示 してい る。猿 ヶ森 の場 合 には洗浄 の効 果 が 見 られ るが 洗 浄 しな い砂 で も 1,000
Hz付
近 が卓越 した スペ ク トル図が描 かれ て い る。七里長浜
,砂浜海岸
,合浦公 園 お よび は ま なす公 園の砂 の場合 には
,洗浄 に よって若干音 の変化 が見 られ るが
,白浜海岸 ほ どの変化 は少 ない。
図 ‑3に 洗 浄 温 度 の違 い に よ る発 生 音 の変 化 を示 す。洗浄温度が高 い場合 には 1,000 Hz付 近 の ピー クが明瞭 になってい る ことが示 されてい るが,100°
C洗浄 の時 には ,1,600 Hz,2,200 Hz 付 近 に も小 さな ピー クが見 られ
,高い温度 の洗 浄 に よって これ らの成分 が成長 してい る こ とが 示 され てい る。
3.3
粒度試験
図
‑4は砂 の発生音 が きれ いな猿 ヶ森 の砂 と 白浜海岸 (地 点 18)の 粒度 を示 した ものである。
S13011.FFT
>
Hz 0
0
洗浄せず
100℃洗浄
S10012.FFT
>
Hz 洗浄せず
S12013.FFT
>
Hz
洗浄 (60℃)
図
3
どち らも急な勾配 を示 していて単粒度の性質 を 有 していることがわかるが,猿ヶ森の曲線が右 側 にあることか ら,猿ヶ森の方が粒径が大 きい ことが示 されている。他の砂 について調べ ると,
合浦公園の砂 は種々の粒径の砂で構成 されてい ることが,七里長浜 と砂浜海岸の曲線 は急激 な
Sl1012.FF「
>
0
洗浄 (25℃)
Si301 2.FFT
O.004
洗浄 (100℃ )
洗浄温度 による発生音 の変化 :白浜1(S11)
勾配 を有 しているが勾配の立 ち上が る位置が小 さい粒径 となっていて猿 ヶ森や白浜海岸 に比べ 粒径が小 さい砂であることが,それぞれわかっ た。
0 0
Hz
>
Hz
4
%
100 SA,S118(NO,100)
刊04 μ
m白浜
Щ く 森 抑 姫 ケ 中
△⁚白
・ 肴
線
保
の中 脚 胸
図
写真
1顕微鋭写真
大須賀 1(S11) 1目 盛 りが
lmm/ヤロ 電ド
嘘 .
,I●
●
︺ 日 F
恥
恥
■ H
●
鶴
!れ
ゼ ●
写真
2顕微鏡写真
猿 ヶ森 (SA) 縮尺 は写真 1と 同 じ
3.4
顕微鏡写真 による観察
鳴 き砂 の現 象 は
,粒子形状 や粒子 の分類 とど の よ うな関係 にあ るのか を知 るた めに
,鳴き砂
で ある猿 ヶ森 の砂 を含 めた
7種類 の砂 を顕微 鏡 写真 を撮 って
,調査 した。
写 真 1,2,3に そ れ ぞ れ 白浜 海 岸 (地 点
1),猿 ヶ森 お よび七 里 長 浜 の砂 の顕 微 鏡 写 真 を示 す。 白浜海 岸 (地 点
1)には様 々 な形
,大きさ
,色 の粒子が見 られ る一 方
.猿ヶ森 の砂 の場合 は 粒 子 の大 き く角 のない形 で 白い透 き通 つた色 の 粒 子 が多 い。七里長 浜 の粒 子 は細 か い こ とが示
されてい る。
次 に ,こ れ らの顕微鏡写真 の粒子 の数 を数 え
,その うちガ ラス質 と思われ る粒子 の数 の比 をガ ラス質含有率 として求 め表
2に示 す。白浜海岸 の砂 の ガ ラス質 含 有 率 は
49%から
62%であ る。これ に対 し猿 ヶ森 は 66〜
69%で大 きな含 有
♪
写真
3顕微銃写真
七里長浜 (SH) 1目 盛 りが
lmm率 となっている。この他では
,砂浜海岸で
58%か ら
64%と高 い の に対 し
,七里 長 浜 の砂 は
34%か
ら
38%と少なかった。
4.結 論
本研 究 か ら,次 の よ うな こ とが ま とめ られ る。
(1)猿 ヶ森 の砂 と白浜海 岸 の砂 の発 生 音 の スペ ク トル は卓越 周 波 数 が 1,000 Hz付 近 で 現 れ ,ま た
,大きな周波数側 に第
2,第 3の卓越値 が現 れ る点 で似通 った性格 を持 って いた。 その 他 の海岸 の砂 に は大 きな卓越 す る周波数 が見 ら れ なか った。
(2)猿 ヶ森 の砂 と白浜海岸 の砂 は,時 間軸 波
猾 、写真番号
合 計
写真番号
合 計
写真番号
合 計
写真番号
合 計
写真番号
表
‑2
砂 に含 まれてい るガラス質 白浜1(洗浄せず)猿 ケ森
(洗
浄せず)砂浜
(洗
浄せず)合浦
(洗
浄せず)七里
(洗
浄せず)ガラス質%
56.5 51.4 53.3
62.9 72̲3 72.7
57.6 57.5 57̲6
74.0 49.0 45.2
38.1 23.5 38.9 53.6
ガラス質%
69.0
ガラス質%
57̲6
ガラス質%
56.3
ガラス質
%
‑6‑
194
全 体
104 ガラス質
171
全 体
118 ガラス質
257 66 106
85
全 体
148 ガラス質
208
全 体
117 ガラス質
259
全 体
87 ガ ラス質
合 計 33.6
形の結果が良 く似 てお り
,振幅が大 き く発生時 間が長い特徴がある。 しか し
,白浜海岸の砂 は 採取地点 ごとにデータにばらつ きが見 られる。
(3)粒 度試験では
,猿ヶ森の砂 は粒径が
0.5mm付
近 ,白 浜海岸 の砂 は,粒径が
0.3mm付近 の砂が約
70%と多 く分布す る特長が見 られ る。
合浦の砂 は
,0.8mm〜 0.lmmに約
20%ずつ分 布する特長が見 られる。その他の海岸の砂 は
01mm付
近 に約
60%と多 く分布 す る特長 が見 ら れる。
(4)顕 微鏡写真 による砂 の粒子で は ,猿 ヶ森 と白浜海岸の粒形が全体的 に丸 く大 きい ことが 示 された。 また
,その他の砂 は全体的に角張 っ ていた り粒子が小 さい ことな どが示 された。
(5)ガ ラス質の含有率 で は
,猿ヶ森が
60%以上の含有率 を示 し
,白浜海岸の一部や砂浜海 岸で高 い含有率 を示 した。
この結果 ,白 浜海岸の砂 を○ ,△ ,× として評 価す ると次のようにまとめ られ る。
○
△
△
○ 評 価
○
音 のスペ ク トル
評 価 項 目
粒 度
粒 子 の 大 き さ
壮 子 の 形
ガ
ラ
ス
質
また
,洗浄温度 については
,水(常 温
)で洗 浄 した砂 よ り
,お湯 (60℃
,100℃)で洗浄 した
砂の方が音 のスペ ク トル は良い結果 となってい ることが示 されているが
,水(常 温
)による洗 浄 によって も
,改善効果 は期待で きるもの と推 測す る。
白浜海岸では
,地点 によって異なった性質が 見 られているため
,季節の変化
,年次変化 な ど について も検討が必要 と思われ る。 また ,改 善 された砂が
,連続 して音 を発生 し続 けるかにつ いて も今後の課題 となる。
謝 辞
本研究 は平成
8年度八戸工業大学特別研究助 成 (特 定研究
)を受 けた ものである。関係者 に 感謝 申し上 げます。本研究 を進 めるにあたって 金沢工業大学川村國夫教授
,八戸工業大学諸戸 靖史教授
,坂尻直巳教寸 受か ら貴重 な助言 をいた だ きました。 また
,青森県八戸土木事務所
,八戸市役所環境保全課お よび八戸工業大学土木工 学科長谷川研究室卒業研修生 には
,本研究 に関 して理解 と協力 をいただ きました。 ここに深 く 感謝 申し上 げます。
参 考 文 献
1)川
村 國夫
,船越 晴世
,佐久 間敏 昭
,髭本裕 昌 (1994):日 本 の鳴 り砂
,上と基礎 42‑4(435), pp 3〜
82)川