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これからの社会における新しい価値観の創造と技術革新

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Academic year: 2021

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巻頭言

これからの社会における新しい価値観の創造と技術革新

フォトニクス研究所長 吉田淳一

2011311日の東日本大震災により我国は種々の面で大きな損害を被るとともに、

これまでの人々の暮らしにも極めて大きな影響を受けた。1995117日の阪神・淡路 大震災もまだその記憶が薄れていない中、人的被害に加え大量の放射能漏洩を伴う原子力 発電所の初めての重大事故を伴った被害を目の当たりに見て、自然の力に対してこれまで 培ってきた科学技術が、たとえ最先端といえども、いかに未熟で小さなものであるかを思 い知らされた。同時に、「我々は技術を過信していなかったか?」、「考えられるリスクを明 らかにできていたのか?」という疑問に対して、科学技術の教育・研究開発に携わる者と して、「技術者は技術に対して謙虚でなければならない」ことの大切さを再確認する大きな きっかけとなった。

一方、安全性や高レベル放射性廃棄物の問題がクローズアップされ、原子力発電所の運 転停止に伴った全国的な節電や代替エネルギー確保など、全国民が真剣に自らの生活の将 来を考えるようになり、このような認識が新たな世界観に発展する兆しが見えてきている 感がある。地球温暖化問題が叫ばれて以来、エネルギーの主流として、これまでの化石燃 料に代わり、究極の選択として原子力エネルギーが我国の唯一のターゲットのように推進 されてきた。しかし、直接的ではない部分の投資や万一の場合のリスクがあまりにも大き いことを誰もが知ることとなり、目を世界に転じれば、それぞれの国が自国の特徴を踏ま えた幅広い戦略的見地でエネルギー確保の問題を位置付けているということが分かってき た。我国のエネルギー自給率は、石炭火力を主としていた時代には 50%以上であったが、

現在は4%である(2011年度エネルギー白書)。他国の資源に頼らず自給率を向上すること

を望むとすれば、我国で調達できるエネルギー源が必要なことは明らかである。そういう 意味で、今後のエネルギー源を原子力のみに委ねるのでなく、利用可能なエネルギー源を 広く開拓し、我国の資源事情を踏まえてバランスよく戦略的に技術開発を進めるという方 向が望ましいのではないかとの考え方は、我国の選択肢として大いに議論すべきであると 考える。

我国の経済状況は、ここ10年来苦境にある。ほぼ無尽蔵の自然エネルギーを最大限利用 し、他のエネルギー源と調和を図る技術をトータル的な見地で開発することは、我国の将 来を見据えてすぐに実行すべき課題であり、新たな産業への投資が、人と技術の新たなダ イナミズムを生むうねりとなるはずである。学部での私の講義に「イノベーションと国際 標準」という科目があり、将来の基幹イノベーションとなるべき技術の種を毎年学生と議 論している。そこでは、環境・エネルギー・医療・ITがコアテクノロジーであろうという のが、大方の一致するところであり、コンドラチェフの第5波を導く技術革新の芽がすで に誕生しているという認識も意見が合う。それら革新的技術の芽は、単独の技術領域に収 まるものではなく、多くが複数の技術領域を融合した新しい技術あるいは応用であり、そ こに時代の考え方やライフスタイルを変革する新たな価値観を創造する力が秘められてい る。大学教育に携わる身としては、インターディシプリナリティを超えて、音楽で言えば フュージョン・クロスオーバーの創造性が求められる時代にふさわしい教育と人材育成、

という難題に立ち向かわなくてはならないことになる。日本の北の地から、ユニークでク リエイティブな人材と技術の成果を世界に発信し、新しい価値観の創造と技術革新に少し でも貢献できるように活動したいものである。

参照

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