• 検索結果がありません。

教育資料館だより

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "教育資料館だより"

Copied!
17
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

教育資料館だより

第 5 号

平成10年3月 奈良教育大学教育資料館

目   次

5歳を迎える教育資料館………館長 松 村 佳 子………1 本学所蔵往来物の検討を終えて……… 梅 村 佳 代……… 3 教育資科館へのメッセージ

「人権教育関係資料・教材の充実に期待する」……… 中 川 喜代子……… 5 インターネットと教育資料館データベース ……… 藤 原 公 昭………10 故乾鍵堂教授から教科書等の寄贈を受けて ……… 松 本 宏 揮………13

「書道教室教官作品展及び書道教科書展」を開催………・‥………14 平成9年度、科学研究費補助金

「研究成果公開促進費」(データベース)を受けて ………17 教育資料館教育資料寄贈者一覧………17

館 長 松 村 佳 子

5歳を迎える教育資料館

平成5年5月7日に開館した本資料館も、今年で 5年、人間に例えれば5才になる。この間に多くの方々 からのご厚意でたくさんの資料をご提供いただいた。

これらの総数は約20,000点を越える。また、学内 外、国内外から多くのみなさんに足を運んでいただい

−1−

た。入館者数は、開館以来およそ11,000名になる。

本教育資料館は、都市化と過疎化が同時進行する 中で、貴重な教育資料が散逸することが危ぶまれる なか、教育資料収集への関心の高まりと共に、昭和 50年より教科書、教育に関する文献、教材や教具、

(2)

をし、データベース化されてネットワークへの対応が 進められている。教育資料館のホームページを開い ていただくと、どこからでも情報を見たり、聞いた りしてもらうことができるようになってきた。展示 については、整理された教育資料の常設展示と大学 祭の折にテーマ展示として、絵画、彫刻、書道展を 行なってきた。これも、資料や作品をお貸しいただ いた元本学教授やご家族のご協力があればこそでき たことで、関係の方々に感謝申し上げる次第である。

教育資料館としての教育・研究活動については、

これまで、教育資料館運営委員や教科教育分野の教 官などを中心に資料の調査、分析、研究が進められ

てきている。それらの1部は教育資料館だよりに掲 載したり、学長裁定経費をいただいて、3本のビデ オ作成を行なったりしてきた。また、ホームページ にも載せてあるので、ご利用いただきたい。そして、

少しでも多くの方々にこの活動に協力をいただ けるよう、お願いを申し上げる。

普及、啓発活動に関しては、これまで述べて きたようにデータベース化して情報ネットに載せ ることや、印刷物にすることなどに加えて平成8 年度には、文部省の予算を得て、公開講座「 ̄読む、

書く、調べる。…秋の夜長に!」を開催した。

これからも本資料館が所蔵する資料に関係する様 な、教養講座なり、公開講座なりを計画して、地 域へ貢献をする活動を続けるのが良いであろう。

このようにして過ごしてきたあいだに、奈良 教育大学教育資料館が、「文教速報」(官庁通信 社)や、雑誌「ェコノミスト」(毎日新聞社)

に[博物館この逸品]としてとりあげられる機会も えた。少しずつではあるが、世の中に出て知っても

らえる機会を得ているといえよう。

まだまだ未熟な教育資料館も、増えつつある資料 を収納する倉庫がそろそろ必要になってきた。要求 を続けている、常時資料の整理など担当する職員の 配置も1日も早く認められることを期待したい。や がて6才になれば、子どもは学童期に入る。それに ふさわしい環境と条件が、そろうことを望むこの頃 である。      (理科教育 教授)

実験機具等の収集をすることから始めて、平成5年 の開館を迎えた。この教育資料館の理念と役割につ いて、「これまでこれから−附属施設・附属校園編−」

と「教育資料館だより 第2号」に述べられている。

「奈良県下の初等、中等教育に関する資料を中心と して、江戸期の庶民教育に関する歴史的資料や、ア ジアやヨーロッパなど国際的な教育資料の収集と整 理、体系化を行ない、その成果を展示・公開するこ

とによって、学校教育はもとより、広く生涯学習の 実践と研究に資すること。そして、「地域に開かれ た大学」を目指して、地域活動の活性化と交流の促 進、市民文化の創造と伝統文化の保存や振興等に役 立つ教育情報の収集と提供、学習機会の拡大等の役 割を担う。」とある。これらのことを図示すれば、

図1のようになる。

資料の収集については前述のように、県民、卒業

図1奈良教育大学教育資料館 概念図 生、元本学の教職員など多くの方々のご厚意と努力 により、年々その数が増え続けている。ありがたい ことと、感謝している毎日である。整理については、

資料に対する専門的知識を必要とするので、適当な 人材が求められるところである。しかし、本資料館 が現在のところ学内施設として認められている段階 なので、人件費を捻出するのが難しい状況にある。

これもまた、卒業生のご協力にあまえながら、今日 まで作業を進めてきている。幸いに平成8、9年度 には科学研究費が認められたので、教育資料の整理

−2−

(3)

本学所蔵往来物の検討を終えて

ここ数年、本学所蔵の往来物48点について未熟 ながら分類と内容的な検討を加え、「本学所蔵の往 来物の研究」(I)(Ⅱ)(本学教育研究所紀要32号・

33号1996年・1997年)としてまとめ、(Ⅲ)は同 紀要34号に投稿中である。また、本学ホームペー

ジの教育資料館紹介のひとっとして往来物も取り上 げられ、48点全部の往来物の解説を担当した。そ して藤原公昭教授のお力により、多数の往来物につ いて全頁にわたりカラーで画像として再現していた だき、史料を細部にわたって見ることができること となった。江戸時代当時の往来物の姿を彷彿とさせ る、色彩のすばらしい見事な再現であり、ご覧いた だければ幸いである。また本学所蔵の往来物のなか では、色彩が多彩で内容もよく工夫されて編集がさ れている「商売往来絵字引」について、本城正徳教 授「『商売往来絵字引』を読んで」(本学教育資料館 編『教育資料館だより』第4号1997年3月発刊)

により色彩の美しさや木版技術の確かさと高さを指 摘していただけた。さらに本城正徳教授は「『商売 往来』から近世社会を考える」(高円史学会編『高 円史学』第13号1997年11月1日発刊)において、

「商売往来」の内容の特徴である多彩な商品名称が 元禄から享保期以降の著移品と庶民の消費生活に必 要とされていた物資の名称であり、上方の商品市場 や流通の活発化とくに農民的商品生産の発達の結果

もたらされた農民の商人化ともいえる消費生活を映 し出していることを述べられた。

本学所蔵の往来物を一通り読み、検討してきて分 かってきたことは、近世社会に流布した往来物の多 様性と多彩性であった。往来物研究の先駆者である 生物分類学者である故岡村金太郎氏によるこれらの 整理と分類を基本として、教育史学者である故石川 謙・石川松太郎父子による近世社会の往来物の分類

−3−

梅 村 佳 代

と分析がなされ、そして近世以前の古往来物の研究、

さらに女子用往来物の独立化などの進展をみるに至っ ている。そして現在までに、7000種類の往来物と そのうち女子用往来物1500種類が存在すること、

それぞれの内容の特徴や系譜、流布状況などが判明 してきている。その分類では10種類はどの区分と なるが、江戸時代に特に発達するのが実業類つまり 商売往来や百姓往来・諸職往来などを内容とする分 野である。江戸時代は農業や商業、技術の発展が著 しく、その種の往来物が広い読者層を持ったことは 当然ではあるが、それほどに読まれた要因のひとつ

は農商人に深く浸透した文字っまり識字層の進展に あり、農民の経済活動の発展により彼らが文化・学 習主体として成長してきていたことを示している。

本学にも実業類の往来物が最も多く収集されており、

18点に及ぶ。「商売往来」などは絵字引以外に講釈 付、「現金商売往来」などあり、明治以降には「世 界商売往来」「開化普通商売往来」など文明開化と 外国交易に必要な知識を摂取できる内容となってい る。商売往来以外にも商業に関して「商家往来」

「問屋往来」など年季奉公人の仕事内容や問屋の仕 事など簡潔に述べられている。また商業以外には絵

ジカタ

入りの「百姓往来」「地方往来」「農業往来」など農 耕道具や農事暦を伝えるもの、「柱立往来」「百工往 来」などの建築用語や道具を説明したもの、「諸職 往来」のように近世社会の身分編成と不可分とされ た職業編成とそれぞれの役割を簡潔に説いたものな ど重宝な実用性、巧みな工夫性や色彩の美しさなど 目を見張るものがあり、江戸時代庶民文化の豊かと 奥の深さを示している。近世社会では子ども達に実 業内容を確実にきっちりと伝えようとしていたので ある。

さらに、近世社会の往来物として普及していたの

(4)

が地理類とされる。地理類とは国尽型・地誌型・都 路型・参詣型・特殊型にさらに小分類されているが、

本学往来物は地誌型や名所旧跡めぐりあるいは神社 仏閣への参詣を内容とするものである。当時、地理 類では最も人気が高かったとされる「江戸往来」

(自遣往来とも称される)、そして絵入りで五畿七道 六十六ヶ国について地誌を概観した内容の「日本往 来」、神社や仏閣の参詣を内容とする「神社仏閣往 来」、江戸及び周辺の寺社や名所参詣のための「隅 田川往来」がある。そして明治以降では銅版絵入り の「万国往来」、さらに「地学往来」「世界風俗往来」

「世界の富一名産物往来」など世界の地誌や風俗、物 産などがわかる往来物8点がある。近世社会は民衆 が伊勢まいりや、金毘羅詣、善光寺参りなど参言旨や 娯楽の旅はとても盛んとなった社会である。最近、

女性の旺盛な活動を旅日記より明らかにされた柴桂 子『近世おんな旅日記』(吉川弘文館1997年4月

1日発刊)からも、女性が各地を旅をして見聞を広 め交流をしている様子が明らかにされている。近世 社会では庶民は実業の必要性のみならず娯楽や教養

のためにもかなり広範に活動しているのであり、そ のためにも文字や計算力は獲得されていると共に、

俳句や和歌などの趣味的な繋がりの文化的ネットワー クが形成されており、それらの民衆層に流布し読ま れたものとみてよいであろう。

次いで多かったのが消息類である。手紙文の往来 が往来物の語源とされるように往来物の原型ともい えるのが消息類である。近世社会の子どもは寺子屋

(手習塾)において伊呂波や仮名、村名、人名、国 名を学習すると続いて学ぶものが実用的な文章っま り用文章である。さらに進展すれば「消息往来」や

「商売往来」、「実語経」、「庭訓往来」などを学ぶ。

そのように子どもの学習教材として重宝されたのが 消息類であった。手紙文の用語を四季に合わせて多 彩な消息用語を集め、講釈している「消息往来」、

「十二月往来」を模範型にして一年の十二ケ月の往 復一対の消息範例を示している「風月往来」、商売 の取引に必要な実用文章や日常生活の祝儀文、挨拶 文の雛型を集めて綴った「商家用文章」、日常生活

−4−

の挨拶文を男女同じ書き下し文として纏めた「書簡 用文章」、日用の漢語交じり文の雛型を集めた「通 俗漢語用文章」の4点がある。

本学の所蔵点数としては1点ながら、見逃せない ものに歴史類の「今川」がある。歴史類には古状型、

伝記型、史詩型(漢詩型と国歌型がある)の三類型 があるが、「今川」は歴史類では最も多い舌状型の 往来物である。古状とは近世以前の社会で作られた 武将の家訓や書状を手習いの手本として編集された

ものであり、江戸時代に武家のみならず19世紀以 後には盛んとなる農民や商人の家訓の範型とされて、

繰り返し「舌状揃」として編集されて広汎に流布し たものである。弁慶状、源義経含状などよく読まれ たが、その中でも著名なものが「今川状」である。

正式には「今川了俊子息仲秋制詞条々」であり、他 の往来物の頭書にも頻繁に登場する。内容は武将と

しての心構えのみならず、人として行うべき道、行っ てはならないことなど深い人間洞察に裏付けられた

ものが家訓として伝えられたものである。近世社会 の小農民の家の成立が18世紀以後とされることか らも、このような家訓が盛んに読まれたのではなか ろうか。往来物はその時代と社会における人々の生 活を濃やかに伝えてくれる貴重な史料である。そし て子どもの学習テキストとして、大人は楽しみなが らの読み本として、知識を広める実用的で重宝なも のであった。

ー 〜

︵ .

+ T l

磁束Ilいl︑・−・〜

γ I r 1 L L

i   h

1

釦率針鰍㈲酔

ー九日日月u相場絹附田淵憫膿

す旬−﹂1.−..日=﹁

r ′ ︻ ︻ . L ︑ ︒ . J J q ㌣ ︑ ・ 1 日 日 月 u 用 爛 澗 椚 田 腿

1

㌧   へ

L

▼       1

・  

・ し ハ   l J

調

1 1

ヰ昔磁條恩首

「日本往来」大和国の部分より

(学校教育 教授)

(5)

教育資料館へのメ ッ セ ー ジ

ー人権教育関係資料・教材の充実に期待する−

「人権教育」は世界のキィ・ウード

1995年から2004年までの10年間を、『人権教 育のための国連10年』とする国連総会(1994年12 月)の決議を受けて、わが国においても「『人権教 育のための国連10年』に関する国内行動計画」が、

1997年7月に策定・発表された。地方自治体レベ ルでの行動計画づくりも推進されてきており、大阪 府・大阪市がすでに1997年中に策定したのに続い て、『人権教育のための国連10年奈良県行動計画』

も,97年度内の策定に向けて取組が進んでいる。

権力や富を持ったごく一部の人びとのためではな く、普通の人びとの人権について真剣に考えるよう になったのは、世界の歴史のなかで、それほど遠い 昔のことではない。それはせいぜい、アメリカの

『独立宣言』(1776年)やフランスの『人権宣言』

(1789)年などが出された18世紀の後半に入ったお よそ200年はど前からのことである。

世界の人びとが「人権」の大切さを意識し、取り 組みはじめた歴史を私たちがこれからどのように引

き継ぐのかが、今問われている。戦後50年が経過 した現在、科学技術の発達によって、ゆたかな生活 を享受している人びとがいる半面、環境汚染、南北 問題、歴史的・政治的・経済的要因を背景とした民 族対立、紛争の激化による難民の発生などの深刻な 状況が生み出されている。

こうして、地球規模での人びとの大移動と、もの・

情報が瞬く間に世界をかけめぐる国際化と多民族・

多文化社会の進行のなかで、『人権教育のための国 連10年』が提起している人権文化を世界中に築く ために、私たち一人ひとりが、知識レベルだけでな く、問題解決の積極的態度と実践力とを身につける ことが求められているのである。

−5−

中 川 喜代子

わが国における人権教育・人権問題研究の拠点となること 奈良県は、大正11年3月3日、約3,000人の被 差別部落の人びとが全国から集まり、自ら立って人 間の尊厳と 差別 からの解放を訴えた全国水平社 の発祥の地であり、戦後の混乱した日本社会のなか で生じた長期欠席・不就学児童・生徒問題に対する 教師たちの取り組みからスタートした「同和教育」

において、奈良県の教師たちが果たした役割は非常 に大きい。わが国における 人権教育 の原点とも いうべき「同和教育」関係の諸資料を体系的に収集・

整理・分類し、向後の 人権教育,,の研究に資する ことは、奈良県にある教育大学としての本学の重要 な社会的役割であろう。

『人権教育のための国連10年』国連行動計画で は「人権教育」の概念を、(1)人権についての教育

(Education on/about Human rights)という

知識について学ぶだけでなく、(2)人権としての教育

(Education as Human rights)、(3)人権のための 教育(Education for Human rights)、(4)人権を 通じての教育(Educationin/throughHuman rights)など幅広い概念でとらえている。すでにユ ネスコの『学習権宣言』に謳われた 人間として 生きるために教育を受ける権利を、世界の非識字人

口の75%を占めるアジアの人びとに保障していく 取り組みのノウハウを、わが国の「同和教育」で培っ た実績を活かすために、 人権教育 関係資料の充 実を図ることは、 水平社発祥の地 にある本学の 責務であるといえよう。

1980年代に入って、ユネスコに続いて、ヨーロッ パ評議会は、青少年のあいだにとくに顕在化してき

た人種差別・外国人排斥などの行動に典型的にみら れる「非寛容」・「暴力的行動」・「テロリズム」

などの社会的風潮や、長びく不況、世界的レベルで

(6)

の貧困・不平等などの顕在化と進行を憂慮し、『学 校における 人権 についての教育と学習に関する 勧告』を行い、「学校が、個人の尊厳を尊重し、差 異(違い)、寛容性、機会の平等を学ぶ 場 であ る」ことを確認した。 ベルリンの壁崩壊 に象徴 される東ヨーロッパ共産圏の解体以来、多文化・多 民族社会の進行のなかで、「寛容性」にもとづく

人権教育 の普及は世界的な課題となりつつある。

また、南北の格差や地球環境の問題など、グローバ ルな視点からの教育が時代的要請となりつつある今 日、アジアだけでなく、ヨーロッパ、アメリカ、オー ストラリア等における 人権教育 や「開発のため の教育」に関する資料・教材の収集を行い、 人権 教育,,のコンセプトをはじめ、教育内容・教育方法 等に視点を当てて、分析・検討し、わが国において

は比較的新しい分野である 人権教育ガやユニセフ の「開発のための教育」、さらには地球市民の育成を めざす「グローバル教育」等に関する教材の充実と手 法の開発のための基礎資料の整備につとめることも 教育大学に対する強い社会的要請であるといえる。

わが国においても、近年、外国人の定住が激増し ている。これら定住外国人の児童・生徒をめぐる学 校教育現場における取り組みについて、例えば、奈 良県教育委員会は、1986年6月に「在日外国人

(主として韓国・朝鮮人)児童生徒に関する指導指 針」を出しているし、「本名を呼び名乗る」取り組 みをはじめとする20余年問にわたる大阪市外国人 教育研究協議会の業績は、全国的にも高い評価を受 けている。また、ユネスコの『学習権宣言』や人権 としての教育(Education as Human rights)と も関連して、社会教育の課題として、定住外国人に 対する日本語教育(「識字」)も、特に、近年、大き くクローズアップされてきており、識字ボランティ アの活動も活発化している。

このように、近年のわが国における国際化の進展 にともない、学校教育・社会教育の現場の要請に応 えて、たしかな 人権感覚,,に裏付けられ、実践的 な技能(スキル)と具体的な「ノウハウ」をもった 人材の養成も大きな社会的要請となっている。

−6−

人権教育関係資料・教材の整備を!

学校教育・社会教育を問わず、教育現場から寄せ られる要請に対して、広く、全国的視野での「社会 に開かれた大学」としての役割期待に応えていくた めに、ユニセフやユネスコなど国連関係機関の人権 教育の推進によるヨ一口ッノ1各国での研究・実践を 視野に入れた研究業績が、積み重ねられつつある。

体系的な教育資料・情報のデータベース化を進める ことは、将来、教育現場で適切に対応できる教師の 育成にもつながる。

先述したように、幅広い概念での取り組みが求め られているこれからの人権教育では、人権問題の歴 史と差別の厳しい現実/実態について学習すること が中心であったこれまでの「人権についての教育

(Education on/aboutHuman rights)」から一

歩進んで、人権のために具体的行動に移せる態度と 技能(スキル)を育む「人権のための教育(Educa−

tion forIIuman rights)」、学習を通じて優れた 人権感覚 と実践的力をっける「人権を通じての 教育」(Educationin/throughHuman rights)

を効果的に進めるために、最近、人権教育/人権啓 発の現場においても<参加体験型学習>の開発につ いての期待がとくに強い。

ところで、就学年齢の子どもたちに対する学校教 育の場での魅力的な人権学習の必要性を訴えてきた

ヨ一口ッノ1諸国を中心として、国際的な人権教育の 流れのなかでは、すでに1980年代後半から、従来 の印刷媒体による資料・教材だけでなく、ビデオや CD−ROMなどビジュアルな学習教材の開発への取 り組みが積極的に推進されてきた。わが国でも、筆 者らがヨーロッパの人権教育の手法に学ぶとともに、

微力ながら具象的/ビジュアルな学習資料の収集や 教材づくりを進めてきているので、その幾っかを写 真によって紹介しておこう。

新しい視点から作られた人権学習教材の紹介

(1)人権教育ビデオ『DoetorIn The Sky』

国連ヨ一口ッノ1人権センター制作のビデオで、戦 争・抑圧・貧困など地球上で生起するさまざまな人

(7)

一7−

権問題に汚染されて病気になった地 球が、宇宙の病院に救急入院し、病 気の原因を検査し、それを摘出して もらい、症状の治療を受けて、健康 を回復して宇宙にもどっていくとい うストーリーから、『世界人権宣言』

の趣旨を、わずか7〜8分の短いビ デオであるが、言語の壁を超えて、

人びとに理解させようとするユーモ ラスな優れた教材である。

佗) rもし、難民になったら、あな たは何をもって逃げますか?J

人権という普遍的概念を、人びと が自分のこととして理解し、それが 保障されなかったときには、どんな 事態になるかを考えさせるく参加体 験型学習>として、突如、体制の崩 壊によって難民となった場合を想定 して、そのとき、何を考え、どんな 行動をし、何をもって逃げようとす るか?を考えさせるために、1993 年に大阪市主催の人権啓発リーダー 養成セミナー用に、筆者らが開発・

作製した具体的な教材の一つである。

難民となって国外へ逃げるために 残された時間が30分しかない切羽 詰まった状況下で、1家族10〜15 kgという重量制限のなかで、持ち 出す荷物を家族構成を変えて、グルー プで考え・選択させるための品物カー ド、持ち出したいが事情が許さず持 ち出せない大型の物品のカード等と、

それを貼りつける鞄である。

(8)

5kg 5 kg 0 .5kg 0 .1kg

二 ∴

預 金通 帳 ク レ ジ ッ トカー ド

霞 露 0 ・1kg

t 琶∃

r.・4れ聖r ̄

藤 潤

。 漢M i玉=案案m

0 .1kg 盛 ;

犬や猫 などの ペ ッ ト

転転 言 、

∴\ ク 虹 \よ敵

l  パ ソ コ ン

l

ミ薫

救 急 医薬 品

/  野声 

ノJ毒

大学 な どの卒業証書 i還 、;3kg

十 一 携 帯 用 カセットテープレコーダー

0 .2kg

l 携 帯 用 ラ ジ オ

0 .5kg

l 工 .∵

相 .\

着 替 え ・下 着 類

0 ,5kg

先 祖 の 位 牌

0 .2 kg :紛

′表 彰

お に ぎ りな ど の お 弁 当

2kg

し    1 !

お気 に入 りの 洋服 和 服 ・履 物 0 ・2 kg 0 .1kg 0 .1kg 0 .1kg 0 .1kg 0 .8 kg ≡ 章

S S S S 寡月田 昌案〇〇〇m 印  銘 印 鍍証 明 力 疇 ド

t  T ¶°tqい 国遠 …重至

帥柵だ胱凛

自動 車 運 転 免 許 証

三 ●喧

e o e

■8 8 m 造■l目案書喜 国 家 試 験 合 格 資格 証 書

化 粧 品 0 ・8 kg

携 帯用 テ レ ビ

0 .5 kg 0 .1kg 0 .5 kg 1kg 0 .1kg

魂 評 。 炉

ハンカチ・タオル働 下 手袋・スカーフなどの小物

R i駕 q .1

−  1よ二 ミ=㌣ /ク た訂

■S S E 那席頚8 8 m

_−;起 算

C D ・レコ ー ド ビデ オ テ ー プ

β〃如4メよ 

愛読 書 ・仕 事 に 必 要 な図 書

∈雛 

。  寡当泰l…iE 獲S S

1kg 2kg 0 .5 kg 0 .1kg 0 .1kg lkg

l

l

金 の 延 べ 棒 な ど 一・・

l′.T.ノ  コ レク シ ョン

愛 用 品 な ど

∈ 竺 ∋

1㌧_

キ ャンプ用 の鍋 釜など調理器具、什器具

往 月刃 ハム・ソーセージ・梅干し

昆布、佃煮などの保存食品 不 動 産 の 登 記 証 書 1kg

示封 ゴ ル フ の会 員 権

1kg

0 ・1kg 0 .2 kg 9   2kg ∴二一ご  0 ・5kg

債 権 ・株 券 な ど

∵ .

l ア ー ミー ナ イ フ コ ー ト 防 寒 具

逗嬰 . シ ス テ ム手 帳

携 帯 電話 家 族 の ア ル バ ム

こき1  1

_、ミ威勢lf 二義藍.

一  h一

書S S 浣 案巨

ー8−

(9)

(3) r難破船』(CD−ROM)

楽しい船旅に外洋へ出た途端、天候の激変によっ て暴風雨で船が座礁、救助を求めた近くの船は小 型ボートで、6人しか乗れない、という条件のも とで10人の乗客から、どのようにして救助船に 乗せる6人を選ぶか?何としても助けてはしいと 懇願する10人の乗客の言い分を聞き、選択に苦

しむ船長… という、これも1993年の大阪市リー ダー養成セミナーのために製作した<参加体験型 学習>のための教材を、昨年、大阪市職員の友人 がCD−ROM化したものである。

因みに、大阪市市民局では、われわれの意見具 申と提案を受けて、企業・職域における人権啓発 リーダーのために「同和問題」をテーマとする CD−ROMの製作に取りかかっている。自治体レ ベルにおける初めての取組でもあり、その成果が 期待されているところであるが、そのCD−ROM 1枚で、初歩的な啓発的な知識・情報から、専門 的な高度のリーダーのための知識・情報・教材・

指導/学習方法まで、多岐かつ膨大な情報を得ら れるというものである。

周知のように、同和対策事業特別措置法のもと での総合的な事業の推進のなかで、かなりの府県 や指定都市が、「同和問題」をテーマとする啓発 映画・ビデオを製作してきたが、中学校や高校に おいてパソコン教育のための条件整備が進みつつ ある現在、人権学習教材のCD−ROM化は、緊急 の課題となりつつある。今後、本学教育資料館に おいても、新しいメディアによる教育資料・教材 の収集と、さらには本学教育資料館によって開発 された学習教材が、奈良県だけでなく全国の教育 現場に拡がっていくことを夢見て、一層の積極的

な取り組みを期待したい。

(学校教育 教授)

診凪亀沙嗣沙臼沙匪あ咽栂幽』穐曲9邑留

こねはただのゲしムでは1日目トせん.少しシリアスなゲームです.

ゲーム良し.ステージ1一ステージ2・.ステージ3と進んせい合ます が.モわそれの増稀で.あなた白身.貴重小月択香しなければなり ません一 _

ゲームt始める前に メモと絶義奮用意してください.

で課、始めましょう.下のボタン香クリックしてください.

−9−

(10)

教育資料館だより 第5号

インターネットと教育資料館データベース

藤 原 公 昭

はじめに

教育資料館において収集整理されてきた、各種の 教育資料をデータベース化する作業が進行している。

このデータベースはマルチメディアを活用し、イン ターネットを介してのアクセスが可能であり、全国 の研究者、教育関係者に対して開放されている。

本学では、主に近世以降の初等中等教育に関する 教育資料の収集が進められており、平成5年度の教 育資料館設立以来、教育資料館において収集資料の 整理分類作業が行われている。また、資料館展示室 においては常設展示とともに、企画展示も開催され、

関係者の関心を集めている。これらは、奈良県下の 山間僻地における分校や都市部の学校の統廃合など の要因で、散逸・滅失していく傾向にある貴重な教 育資料を中心に収集したものであり、全国的にもユ ニークな内容をもっている。初等中等教育における 実践的教育研究に関する資料をはじめとして、歴史 的資料や教材の実物も含むものであり、特に、作文・

文集に見られる国語教育の実践記録や近世における 庶民教育に大きな役割を果たした往来物の収集が特 筆すべきものである。

これらの教育資料を広く公開し、研究者や教育関 係者の利用に供するために、そのデータベース化が 急がれていた。平成7年度より、小柴幸文先生によっ て、これら教育資料の書誌データの作成作業が開始 され、資料の調査分類と書誌情報のノ1ソコンへの入 力が進められてきた。平成8年度からは、教育資料 館運営委員を中心に教育資料データベース作成グルー

プを組織し、科学研究費補助金(研究成果公開促進 費)を受け、外部委託による入力作業を含む本格的 なデータベース構築が開始された。その成果は、奈 良教育大学のホームページにリンクされ、インター ネットを介して、全世界からオープンに利用可能と

−10−

なっている。また、このデータベースは、資料の写 真、古文書の全文、民謡・仕事歌の音声収録など、

マルチメディア技術をフルに活用したものである。

教育資料データベースの内容

平成8年度から開始した教育資料データベースの 構築作業は、1)資料館所蔵資料リストの作成を中 心とし、平成9年度からは2)往来物の解説と全文 収録、3)「大和の歌」の録音収録を加え、教育資 料館ホームページ(http://www.nara−edu.ac.jp

/ARCHIVE/、図1)にリンクされた。

centerforHistoricalMaterialsofEducation

Il′l ヽ −l L、へ可点し

教育資料館のホームページ

錮⊥墾 各部岸の紹介 利用室内

教書合約倍だより(第1−4号)

総元娠

スタッフ紹介(平成8年9月1日現在)

譜恕離軋事業)岬 馳果公開促進」事業)

書記袈鬼法豊きる大和のうた」より,

蛙前・紐由の播紬右訪ね丁(予告篇)

套良麹音大撃ホームページヘ

図1http://www.nara−edu.ac.jp/ARCHIVE/

(1)教育資料館所蔵資料リスト

教育資料館所蔵の1次資料は、小柴幸文先生氏に よって整理・分類され、インデックスシートへの記 入が行われている。インデックスシートには、基本 的な書誌情報とともに、解説も付記されている。記 入されたインデックスシートは、パソコンを用いて

(11)

データ入力が行われている。同時に、資料としての 形態を示すために、資料表紙のスキャナー取り込み も平行して行われており、画像ファイルとして蓄積・

保存されている。

パソコンへの入力データは学内LANを介して、

情報処理センター内のWindows−NTサーバー機の ディスクに逐次保存される。現在(平成9年12月)、

資料館での収集資料12,500件の内、約8,500件の インデックス情報が入力済みとなっている。

スキャナーによる、資料の表紙の画像データとと もに、インデックスデータはwwwサーバーであ るUNIX機(cancer.nara−edu.ac.jp)へ転送され、

インターネットからの検索が可能となる。

インターネットからの検索では、1)リスト形式 での一覧検索と、2)キーワードによる検索が用意 されている。リスト形式による検索では、資料番号 順リストからの選択となり、一覧性には優れている

が、資料内容による検索は難しい。一方、キーワー ド検索では、「複式学級」、「作文教育」など、自由 な譜(フリーターム)での検索が可能である。ここ では、予めキーワードを抽出するのではなく、検索 時に、「書名」、「著者名」、「出版所」、「説明」の全 文を走査し、指定キーワードがいずれかに含まれる 書誌を表示する方式である。従って、シソーラスは 必要がない反面「国語」と「国語」、「僻地」と「へ き地」のような、表記の揺れについては留意して、

複数回検索する必要がある。

上記いずれの検索形式でも、検索結果の表示項目

育 資 料 館 資 料 リ ス ト イ ン デ ッ ク ス 修 小 乗 幸 文

a st 。。。at。T。e 。。C 23 2。37 46 ,,。7 困 却 埋 】 キーワー ド検索

=車重 『 二 二 1二重 垂 二 〔二重 弓

素には少し時間が かかりますの て、お待ち下 さい リスト番 口先皇貞の餞別番号 先ラ貞昔料の タイトル リスト 1 100 − V 十津川 学校 史 りストク 19 00 ノ 〉 川上村 更  通 史編

l 9 00 ′ − 童斤しい音楽 (学習指 聖書川 、 学校用  6 年 リスト4 59 00 − 禁 良吉 城ブラン  単元展開例集 リスト5 81 00 ′ − 園修 身訓 巻 之七 尋常科

りスト6 120 00 ′ 〉 1 、 学 書方手本  第四学 年(下) 乙種  尋常科用 リスト7 40 00 ′ − 初等 科習字  一  教師 用

リスト8 60 00 〜 ズノホン 三

リストq t84 00 ・ − 第 1 0 回 全国へき地教育研究 大会  分会場要等 (第5 )

図2 www検索画面(一部)

は、「書名」、「著者名」、「出版年」、「出版所」、「説 明」であり、スキャナー画像がある場合は、その画 像へのリンクが表示される。平成9年12月現在、

スキャナーで収録された資料の表紙画像は5,700件 となっている。

現在、収集済みの教育資料12,500件に関しての インデックス情報の入力作業は、平成11年度中に は完了すると見込まれるが、教育資料の収集自体は 随時行われているので、年間3,000件程度の新規収 集・整理・入力作業が定常的に継続していくものと 予想される。

(2)往来物解説と全文収録

江戸期、寺子屋での庶民教育の教科書として用い られた往来物、48点が本学附属図書館に所蔵され ている。商業・農業などの職能に関連する語彙や用 具名称を教科書として編纂した、実業類の往来物と 呼ばれるものを中心に、教訓・消息・地理・歴史や 女子用往来物などが含まれる。近世の教育史におけ

る貴重な資料であり、本学では梅村佳代先生による 研究が進められている。

このような歴史的資料のデータベース化に当たっ ては、印刷技術、保存状態も含め、できる限り現物 の姿をそのままの形で収録することが望ましい。そ のことによって、多くの研究者の利用に供すること ができるとともに、広く一般の関心を呼び起こすこ とが可能になる。実際、図解や図絵の木版による鮮 やかなカラー印刷は、当時の印刷技術水準の高さを 示すものであり、また、当時の風物や庶民の生活を 知る手がかりとなるものである(『教育資料館だよ り』No.4本城正徳先生「『商売往来絵字引』を読ん で」も参照されたい)。

今年(平成9年)度は、48点中20点について、

スキャナーによる全文画像収録を行った。虫食いな どで、傷みの激しいものもあるが、おおむね良好 な状態で収録ができている。梅村先生による概要の 解説とともに、資料館ホームページにリンクされ

(http://www.nara−edu.ac.jp/LIB/collection/

coHection.htm)、インターネットからの検索が可

−11−

(12)

能となっている。平成10年度には、残りの28点に ついて、スキャナー収録を完了する予定である。

嶋13/33血豆会 直接検索頁

⊥224墨色28旦」坦 上し121ユ141亘jjul皇1旦皿 2⊥222ユまま之亘2五ま呈出2旦迎

且1ユ之ユ3 嶋酌副こ戻る ■一冒に戻る

図3 往来物「商売往来絵字引」全文収録より

(http://www.nara−edu.ac.ip/LIB/collection/C2−013.htm)

(3)「大和のうた」録音資料

本学名誉教授牧野英三氏は昭和30年代から40年 代前半にかけて、奈良県下の民謡を録音、採譜し、

その成果を『五線譜に生きる大和のうた』として出 版した。この中に収められている「うた」は、日本 が高度成長期を迎え、奈良県においても農林業従事 者が減少し、産業や生活様式が大きく変化していく 時期に、消えつつあった仕事歌、祭り歌、童謡、民 謡などである。

教育資料館では、平成8年度、教育研究学内特別 経費を受け、牧野氏の所有する録音テープを借用し、

久保田敏子先生のご協力を得て、デジタルテープ

(DAT)化と編集作業をおこない、教育資料館に永 久的に保存するプロジェクトを実行した。これは、

また、「うた」と結び付いた地域の生活の調査研究 にも資するものである。

今回、これらの音声データの一部をWAV形式 のファイルとしてwwwサーバーに登録し、イン ターネットから、その音声データを検索可能とした

(資料館ホームページからhttp://www.nara−edu.

−12−

ac.jp/ARCHIVE/songs.htmへリンクされて いる)。

録音・保存状態は必ずしも良好ではないが、

当時の人々の声と演奏を伝えるものとして、貴 重な資料である。

牧野氏所蔵の録音テープには250曲以上が収 録されているが、平成9年度は、77曲につい て、各曲を30秒ないし60秒程度に編集し、デ ジタルデータとしてwwwサーバーに登録し た。平成10年度以降、さらにサーバーへの登 録作業を継続していく予定である。

今後の構想

教育資料データベースの利用を促進し、学内 外の研究活動をより活性化させるために、利用 統計の収集と、データベースの広報、出版を行っ ていく必要がある。

インターネットからのアクセスに対しては、

カウンターを利用することにより、容易に利用 統計をとることができる。この機能を用いて、長期 的に利用状況を把握するとともに、ホームページの メニュー上の配置、表現などの工夫により、より多 くのアクセスを引き出すことが可能となるであろう。

また、データベース目録の作成と配布による、広 報活動を行っていきたい。同時に、全データベース をCD−R(Recordable)に収録し、関連機関へ配 布するサービスも行う予定である。

参照:

1)梅村佳代:「本学所蔵の往来物の研究(I)」、

『奈良教育大学教育研究所紀要』、32巻、1996、

pp75−87

2)梅村佳代:「本学所蔵の往来物の研究(Ⅱ)」、

『奈良教育大学教育研究所紀要』、33巻、1997、

p55−67

3)牧野英三:『五線譜に生きる大和のうた』、音 楽の友社、1992

(教育実践研究指導センター 教授)

(13)

故 乾鍵堂教授から教科書等の寄贈を受けて

このたび、放乾鍵堂先生のご遺族から、先生のご 愛蔵図書を多数ご寄贈いただきました。

その図書を書道科が中心となり、本年夏から整理 していましたが、ようやく大まかな整理を終え、教 育資料館に運び込みました。

ご愛読の図書の中には、書道の専門書のはか、貴 重な法帖や図版、月刊雑誌、明治以来の書道の教科 書などが、多数含まれています。これらのなかから 書道教科書と書道教育研究室に所蔵しているものと 合わせて、今回、展示することにいたしました。

また、そのほかに、講義等に使用されていた多数 のノート類には、私が学生として在籍していたころ、

授業で習ったときの講義録が含まれていて、大変懐 かしいものです。先生は、書道実技のほか、書道教 育や書道史、書道理論などの講義も担当しておられ、

いま、それらの広範囲な領域のノートを見ると、わ れわれが指導を受けていたころ(昭和30年代後半)

は、乾先生の40代後半にあたり、特設書道科の発 展のために、大変緻密な研究をしておられたことが しのばれます。整理途中で手を休めて、夢中で読み 耽ってしまうことがしばしばありました。

このノートの類は、ご遺族にお返ししたはうが良

(乾鍵堂遺作と遺族乾芳和氏)

松 本 宏 揮

いのではないかと思っています。

最後に、書道史や書道理論に関する図書は、貴重 なものが多いので、書道教育研究室で使わせていた だく予定であります。

なお、奈良教育大学書道科の沿革と乾先生との関 わりについて、次のとおり年譜風に示させていただ きます。

奈良教育大学書道科沿革と乾先生 昭和13年 乾鍵堂先生 奈良師範学校にご着任。

昭和24年 奈良学芸大学と名称変更、書道科は芸 術科に所属。

昭和25年 辻本史邑先生(乾先生の奥様のご叔父)

が非常勤講師として着任。

「昭和32年12月逝去まで勤務」

昭和33年 高等学校特別教科教員養成課程書道科

(特設書道科)を開設

「東京学芸大学に次いで全国二番目」

に設置 定員15名。

昭和40年 教育専攻科(書道専攻)開設 定員5名。

昭和41年 奈良教育大学と名称変更。

昭和45年 カリキュラム改訂、授業科目も充実し、

助手定員が付く。

昭和46年 書道棟が完成、その際、LL教室が同 二階に同居(昭和53年に教育工学セン ターに移る)。そのため、実習室は第一 と第二の壷軍であった。

昭和50年 4月乾鍵阿先生、ご逝去。

昭和58年 大学院開講、書道は教育学研究科修士 課程美術教育専攻に所属。

平成7年 本学に新課程を設置、その際、書道は 書法芸術専修を開設。定員10名。

(特別書道科は定員10名に変更)

(美術教育(書道) 教授)

−13−

(14)

「書道教室教官作品展及び書道教科書展」を開催 平成9年度教育資料館特別展として、平成9年11

月7日から11月20日までの間、「書道教室教官作品 展及び書道教科書展」を開催した。

開催期間中には、11月7日本学当番の「新課程全 国協議会」、11月20日には本学退官教官との懇談会 等で、多数の来館者があり盛況であった。

特に、今は亡き先生方の作品、また、明治から昭和 までの書道関係教科書等を展示していたため、大変好 評であった。

なお、この特別展を開催するにあたり、ご協力を頂 きました書道科教室の学生さん、図書館職員の皆様に 対し、厚く御礼申し上げます。

今回、展示した作品及び教科書は次の通り。

展示作品

1.乾鍵堂先生 平城懐古  懐素 「聖母帖」臨書

昭和 13年の作)

2.平田華邑先生

何事もみな昔とぞなりにける はなに涙をそそぐ今日かも)

3.小坂奇石先生 文質彬々」

4.辻本史邑先生 一片湘雲」

5.杉岡華郡先生 もゆるまなこ

うらみわびたちあかしたるさを 鹿のもゆるまなこに秋の風ふく 6.炭山南木先生 好風瀧月」

7.天石東都先生 龍跳天門」

8.辻本翔鶴先生 永受嘉福」

展示法帖(乾家寄贈分)

1. 停 雲 館 法 帖 明 ・文教 明 の刻 ・嘉 靖 16 年 刊 ・ 1560 年 )

2. 正続 三稀 堂法帖 (清 ・乾 隆 帝 の勅 刻 ・乾 隆 20 年 刊 ・1775 年 ・石 印本 ) 3. 降 帖 (北 宋 ・藩 師 旦 の 刻 ・重 刻 本 )

展示書道関係教科書 (★印は故乾鍵望先生寄贈分)

年  号 教科書名及 び著者名等 明治期

★ 明治 20 年 『小学 習字 帖』      村田海石 明治 26 年 『仮名字源』       巻菱湖 明治 36 年 『尋常 小学校 書 キ方手本』国定教科書 明治 36 年 『中等習字 帖』      日下部鳴鶴 明治 42 年 『尋常小学校書 キ方 手本』 日高秩 父 明治 43 年 『尋常小学校書 キ方 手本』 香川熊三

明治 44 年 『尋常小学校書 キ方 手本』女子 用

★明治 45 年 『新訂  筆 の志を理 』   小野鷲堂 大正期

大正元年 『高等 小学校書 キ方手本』

二 年上 甲 ・女子 用  日高秩父 大正 4 年 『高等 小学校書 キ方手本』一年 甲 大正 4 年 『高等小学校書 キ方手本』

女子用 (一年 、二年 ) 大正 4 年 『高等 小学 校書 キ方手本』

二 年下 ・甲  日高秩父 大正 4 年 高等 小学 校書 手方手本』

二 年下 ・乙  板倉折枝

★大正 5 年 『仮名書式』

★大正 7 年 『国語 書 キ方手本』

1 年か ら 6 年 まで

大正 7 年 『新編書鑑 』       日高秩父 大正 7 年 『尋常 小学 校 国語書 キ方手本』

二 年上

大正 8 年 尋常 小学 校 国語書 キ方手本』

二 下か ら六下

大正 9 年 『成申詔書』       禾木元三郎 大正 11年 『尋常 小学 校 国語書 キ方手本』五下 大正 12年 『改訂 新編女子習字 帖』  小野鷲堂 大正 13年 『中等 習字帖』  下丹羽正長 (海鶴 ) 大正 14 年 『現在書鑑』       山口彦総

★大正15年 『中等習字帖』      日下部鳴鶴

−14−

参照

関連したドキュメント

本資料は Linux サーバー OS 向けプログラム「 ESET Server Security for Linux V8.1 」の機能を紹介した資料です。.. ・ESET File Security

燃料デブリを周到な準備と 技術によって速やかに 取り出し、安定保管する 燃料デブリを 安全に取り出す 冷却取り出しまでの間の

鉄)、文久永宝四文銭(銅)、寛永通宝一文銭(銅・鉄)といった多様な銭貨、各藩の藩札が入 り乱れ、『明治貨政考要』にいう「宝貨錯乱」の状態にあった

1地点当たり数箇所から採取した 試料を混合し、さらに、その試料か ら均等に分取している。(インクリメ

わな等により捕獲した個体は、学術研究、展示、教育、その他公益上の必要があると認められ

● 生徒のキリスト教に関する理解の向上を目的とした活動を今年度も引き続き

 大学図書館では、教育・研究・学習をサポートする図書・資料の提供に加えて、この数年にわ

● 生徒のキリスト教に関する理解の向上を目的とした活動を今年度も引き続き