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(拡張現実)を用いたプログラミング教材の試作

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Academic year: 2021

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宮崎英一 ,有友誠 ,渡邉広規

 要旨 最近,多くの場面で目にするようになったAR(拡張現実)であるが,これは目に見な い現象を可視化する事で,従来の教材と比較して生徒の理解をより促す可能性を持つと考えられ る。本研究では,このARを応用したプログラミング教育における制御教材システムの開発を行 う。プログラミング教育における信号機制御教材の多くは信号機システムだけであり,実空間 での信号機モデルを作成してもそこに実際に車が走る訳ではない。そこで本研究では,これと ARを組み合わせ,信号機の点灯に応じてARで車モデルを走行させる。これは単に車の走行アニ メーションの提示ではなく,外部からのデジタル信号の入力や信号の点滅に応じて車が走行す る。これがプログラムの成否を車の走行という形で可視化して生徒にフィードバックし,より深 い学習が可能になると考えられる。

キーワード 計測・制御,プログラミング教育,ソフトウェア,教材開発,AR

1 香川大学教育学部 2 香川大学附属高松中学校 3 香川大学附属坂出中学校

1.はじめに

 現在,文部科学省の審議会において2020年 度を目途に小学校におけるプログラミング教 育の必修化が決定され,この点が新学習指 導要領の情報教育の変更点として大きく取り 上げられる事が多い。しかし,実際は小学校 だけでなく,中学校,高校の各校種において も情報教育の内容は大きく変貌している。

 文部科学省の新学習指導要領における情報 教育の充実(小学校:2020年度~,中学校:

2021年度~,高等学校:2022年度~実施)に おいては,「情報活用能力」を「学習の基盤 となる資質・能力」と位置付け,教科横断的 に育成する旨を明記するとともに,小・中・

高等学校を通じてプログラミング教育の充実

を図った。更にこれらは

 ●「情報活用能力」を言語能力と同様に「学 習の基盤となる資質・能力」として位置付け,

育成

 ●情報活用能力の育成を図るため,学校の

ICT環境整備とICTを活用した学習活動の充

実を図ることに配慮

 ●小学校でプログラミング教育を必修化と するなど,小・中・高等学校を通じてプログ ラミング教育を充実

を3つの柱としている。具体的には,各学種 において

1)小学校

 文字入力など基本的な操作を習得,新 たにプログラミング的思考を育成(プロ

(2)

グラミング教育の必修化)。

2)中学校

 技術・家庭科(技術分野)においてプ ログラミング,情報セキュリティに関す る内容を充実

3)高校

 情報科において共通必履修科目「情報

Ⅰ」を新設。全ての生徒がプログラミン グのほか,ネットワーク(情報セキュリ ティを含む)やデータベースの基礎等に ついて学習「情報Ⅰ」に加え,選択科目「情 報Ⅱ」を開設

と定義されている。ここでは,従来の学習指 導要領になく,新しく追加された重要な部分 を下線部で示している。

 特に中学校技術におけるプログラミング教 育においては,

(3)生活や社会における問題を,計測・

制御のプログラミングによって解決する活 動を通して,次の事項を身に付けることが できるよう指導する。

  ア 計測・制御システムの仕組みを理解 し,安全・適切なプログラムの制作,

動作の確認及びデバッグ等ができるこ

  イ 問題を見いだして課題を設定し,入 出力されるデータの流れを元に計測・

制御システムを構想して情報処理の手 順を具体化するとともに,制作の過程 や結果の評価,改善及び修正について 考えること

とされ,プログラミング教育においてのより 具体的な内容が提示されている。つまり,こ れからの中学校技術教育におけるプログラミ ング教育には,上記ア,イの下線部の内容を 網羅する事が求められるようになってくる。

そこで本研究では,これらの内容を満足でき

るプログラミング教材の開発を行う。

 具体的には従来のプログラミング教育で多 く取り上げられてきた信号機の制御プログラ ミング教材に拡張現実であるAR(Augmented

Reality)を加える事で,従来のプログラミン

グ教材のように計算結果が数値だけで表示さ れる概念的なプログラミング教材ではなく,

結果が視覚的にフィードバックされるよう なプログラミング教材を試作した。これによ り,プログラミング教育の初学者でも,プロ グラミングの結果を理解しやすくなり,手順 を具体化するだけでなく,課題設定に対しい て興味・関心を持たせやすい教材となる。こ れが学習者の繰り返し学習を促し,新学習指 導要領における新しい『プログラミング的思 考』を学ぶ教材が実現できると考えた。

2.ARシステム

 本研究で試作するプログラミング教材は,

ARを主眼としたものでなく,従来のプログ

ラム教材を主体とし,これと組み合わせて使 用する。このため,現場においても導入しや すいprocessing言語とAR用にNyARToolkit 組み合わせた。

 NyARToolkitは,ARToolKit

を元に実装し たビジョンベースARライブラリであり,こ れを利用すればARオブジェクトの表示だけ なら30行程度で済み,簡単にARが実現でき る。

 本研究で試作したAR表示例を図1に示 す。同図で表示される3Dオブジェクトは,

NyARToolkitに同梱されているサンプルプロ

グラムであり,あらかじめprocessingのプロ グラムで,表示する3D直方体と定義してい る。

 ここで紙に印刷したマーカを利用するAR は,いわゆるマーカ型ARであり,他のマー

(3)

カレスARやGPS型ARにくらべて,あらかじ め実空間上に紙等に印刷されたマーカを配置 しておく必要があるが,表示自体は簡単なプ ログラムで実現可能である。よって本研究で は,このマーカ型ARを用いている。

 同図a)がマーカ本体を示しており,この 上にプログラムで定義された3Dオブジェク トが同図b)のように表示される。ここでは マーカの移動に伴い,表示されている3D オブジェクトも自動的に追尾されている。

勿論,マーカ側だけでなく,撮影している

WEBカメラが移動(視点の移動)を行っても,

それに追尾して3Dオブジェクトの表示が変 更されるので,あたかも実空間上に3Dオブ ジェクトが存在するように見える。

3.信号機制御プログラム

 中学校技術の情報教育において信号機の制 御プログラムは比較的多くの教材例として取 り上げられている。これは,信号機教材が  1)信号機は生徒自身の身の周りに多く存

在し,その働きが日常生活と深く結びつ いているので,自分自身で問題点を見つ けやすい。

 2)信号機の制御はLEDの点灯・消灯といっ た単純なプロセスで構成されていので,

初心者にも制御が簡単である。

 3)単純な信号機から歩行者信号機との組 み合わせ等,単純なものから複雑な制御 まで段階的な思考が可能である。

 4)信号機は実際に様々な人々が日常生活 で利用することから,お年寄りや子供,

障がい者等の交通弱者への配慮を行うこ とがUD(Universal

Design)に気づきを

与える基になる。

 5)信号機の点灯に伴うエネルギーに関し ての環境負荷の低下及び省エネルギーの 取り組み

等,様々な観点からの教材としての可能性を 有するからである。更に,信号機は多くの教 材キットが市販されているので,予算面さ え確保できればプログラミング環境の構築は 容易である。

 また,実際の信号機を制作する場合におい てもLEDの点灯のように抵抗器,LED,電源 間の簡単なはんだ付けだけで完成するので,

中学校の生徒を対象とした教育現場でも導入 がし易いと考えられる。

3.1 信号機教材の問題点

 このようにプログラミング教材として多く の利点がある信号機教材であるが,実際の授 業においてはLEDの制御しか実現出来ていな いという問題点がある事も分かった。これは 図1b) 表示された3Dモデル

図1a) AR用マーカ

(4)

LEDで点灯する信号機を作成しても,そこを

実際に走行する車や,歩行者等がいないとい う事である。そのため,信号機の点灯の制御 の可否は,人間が見るだけの判定で終わって しまい,どうしてもリアリティに欠けるも のであった。そこで本研究では上記のARを 用いてLEDで作成した信号機モデルの車等の 3Dオブジェクトを重ね合わせて配置し,単 なるリアリティの向上だけでなく,信号機制 御の可否も3Dオブジェクトの動作で評価し ようというものである。

 具体的なARの表現においては,図1b)

においてprocessingのAR表示部分で示した直 方体モデルを車等の乗り物モデルに置き換え るだけである。このオブジェクトを置き換え た図2に示す。ここでは3Dオブジェクトと して車を取り上げた。この3Dオブジェクト はWEB上の著作権フリーのモデルを使用さ せて頂いた。同図では2台の車(3Dオブ ジェクト)が直交して配置されているが,想 定する信号機モデルが4つ角の信号機を想定 しているためであり,それぞれの3Dオブ ジェクトが東西方向と南北方向に進行してい る様子を示している。このようにAR表示部 分のモデルを変更するだけで簡単に3Dオブ

ジェクトと実空間の重ね合わせが実現でき る。

4.信号機の色判定

 本研究では既存の信号機制御教材にARを 利用して3Dオブジェクトを実空間に表示す る。この場合,問題になるのが信号の色に応 じて,車などの3Dオブジェクトが静止(赤 信号時)したり,発進(青信号時)したりす る必要がある。

 一般的な場合にはLEDの制御線から電気 信号を取り出し,A/D変換器を介してコン ピュータに信号を取り込み,信号の制御状態 をモニターする事が考えらえる。この方法で は電気的に信号を直接測定するので,ノイズ が入らず,一番安定した計測が可能である。

しかしこの方法では,新たにA/D変換器やコ ンピュータとのI/Oボード等のハードウェア が必要になり,教育現場においてはこれらの 環境構築には負担が高いと考えらえる。そこ で本研究では一般的なWEBカメラを用いて 信号機を撮影し,色解析プログラムによっ てLEDの点灯状態をモニターする事を提案す る。これはハードウェアとして普通のWEB カメラを準備するだけで済むので,多くの教 育現場において導入の負担が少ないと考えら れる。

4.1 色判定アルゴリズム

 最近,このように撮影されたビデオ画像か ら画像認識を用いて色判別を行う場合,機械 学習等を用いる事が多いが,学習アルゴリズ ムの構築等で時間的なコストが発生してしま う。この色判別において本研究では,WEB カメラで撮影されたビデオ画像から,RGB 成分(赤・緑・青)をリアルタイムで検出し,

予め規定した各色成分と比較することで色判 別を行った。

図2 移動体モデル表示

(5)

具体的な判別部分を図3に示す。ここで,

WEBカメラで撮影された各画素においては red,green,blueの各色成分の強度を測定し,

赤成分<60,緑成分<180,青成分>250を満 足するならば,この画素は青色を持つと判定 している。ただし,60,80,250のような色 成分境界値はLEDの発色や光強度によって異 なるため,事前に光強度測定を行い,各色成 分の境界値を決定しておく必要がある。この 境界値は一度決定すれば,測定が終了するま で変更する必要は無い。このように極めて簡 単なアルゴリズムであるが,WEBカメラで 撮影された動画からリアルタイムで色判別を 行う事が実現出来た。

 このアルゴリズムを用いてLEDの色判別を 行った結果を図4に示す。同図では青色LED が点灯し,画面上に「BLUE」と判別された 色が表示されており,WEBカメラで撮影さ れた動画からリアルタイムで信号機の色判別

が実現できた。

5.システム全体図

 本研究で試作したシステムの全体を図5に 示す。本システムでは,ARを表示するため のマーカを撮影するカメラと信号機の色検出 を行うカメラという2種類のWEBカメラを 用いている。

 本研究では,ARの制御,信号機の色判別 制御に加えて,信号機を点灯させる点灯制御 の3種類のプログラムを全く独立して同時に 実行している。システムの制御の簡単な流れ としては

1)信号機の点灯制御 2)信号機の色判別 3)ARの制御

となる。実際の中学校における信号機の制 御授業に関しては,信号機色検出用のWEB カメラを用いるだけで,A/Dコンバーターや マイクロコントローラのような特別なハード ウェアの追加する事無く,従来行われていた 信号制御プログラムをそのままに置き換える 事ができる。

 よって,今まで構成してきた制御教材がそ のまま使用できるだけでなく,教育現場の生 徒・先生は色制御やARの制御プログラムを 全く意識せずに従来通りの授業構成がそのま ま使用出来るので,授業現場においても導入 が極めて簡単になると考えられる。

6.おわりに

 本研究で試作したシステムではAR環境下 において3Dオブジェクトを簡単に外部プロ グラムから制御する事が実現できた。これを 応用すれば,信号機を模したLEDをARオブ 図3 色判別アルゴリズム

If (red (c_r_r) <60 &&

green (c_r_r)<180 &&

blue (c_r_r) >250)

図4 WEBカメラを用いたLED色判別

(6)

ジェクトで置き換える事で,全くハードウェ アを準備せずに信号機の制御シミュレーショ ンも実現可能である。

 今後は実際の信号機制御プログラムと組み 合わせて,生徒の興味や学習効果等の実際的 なAR教材の効果について検証を行っていく 予定である。学習効果まで含めた実践例への 応用を試みる。

7.謝辞

 本研究では香川大学教育学部における平成 30年度「学部教員と附属学校園教員による共 同研究プロジェクト」の一部として行われた ことを記して謝意を示す。

8.参考文献

新学習指導要領について 文部科学省

 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/

chousa/shisetu/044/shiryo/__icsFiles/afieldfi le/2018/07/09/1405957_003.pdf(最終閲覧

日:2019年5月30日)

第3期教育振興基本計画を踏まえた,新 学習指導要領実施に向けての学校のICT環 境整備の推進について 新学習指導要領 のポイント(情報教育・

ICT活用教育関係),

文部科学省

 http://www.mext.go.jp/component/a_menu/

education/micro_detail/__icsFiles/afieldfi le/2018/07/20/1407394_2_1.pdf(最終閲覧

日:2019年5月30日)

馬文鵬,伊藤陽介:電気回路を対象とす る拡張現実技術を用いた実験学習支援シ ステムの有用性:日本産業技術教育学会 誌:第59巻第1号:

pp.9-18,2017

NyARToolkit project

 https://nyatla.jp/nyartoolkit/wp/(最終閲覧 日:2019年5月30日)

奈良先端科学技術大学院大学 加藤研究室

 http://imd.naist.jp/(最終閲覧日:2019年5

月30日)

JA制 御  ヒ ダ ピ オ シ ス テ ム  マ イ コ ン

ボードと組み合わせた信号機ボード 図5 システム全体図

(7)

 http://www.hidapio.jp/(最終閲覧日:2019

年5月30日)

低ポリ車 3Dモデル

 https://free3d.com/ja/3d-model/low-poly- car--49763.html(最終閲覧日:2019年5月

30日)

ARを用いた可視化教材システムの試作,

宮崎英一,有友誠,渡邉広規,第61回日本 産業技術教育学会全国大会,2018

参照

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