Shukugawa Gakuin College
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中元 :ニ ュ ーラル ネッ トワーク
ニ ュ ー ラ ル ネ ッ トワ ー ク
中 元 信 之
1. は じめに
21世 紀は 『脳の世紀』といわ れてい る。 現在、 医学関連はも ちろん、生 化 学、薬理 学、分 子 生物学、神 経 解 剖 学、神 経 生 理 学、認 知 科 学、心 理 学、言 語 学、電 子 ・通 信工学、情報 科学、
人工知能、物理 学 な ど 多 数の学 問 領 域 が 脳の解 明に、或いは新しい 知 見の応 用に関与し て き て
い る。
脳の解明とい って も非常に その 範囲は広い 。解 剖、生 体 計 測によ る 解 析 的 な 解 明、分 子 レベ
ル での構成 ・機 能 (情報伝達 も当 然 含 まれる〉の解 明、知 覚 ・学 習 ・認 知 等で の (機 能の一部
で ある) 情 報 伝達機 構へ の ア プロ ーチ等が あ る (甘利俊一他)。 理 工学的な分 野で は、脳の ダ イ ナ ミッ クス な状態での計測法の 開発が行われる と ともに、 脳モデル による脳の情 報 処 理シ ミ
ュ レーシ
ョ ンが20世 紀 後 半か ら盛ん に なっ て き た。 こ の中で、 脳の知的機能をコ ン ピュ ータ上
で実現し活 用 されて きたの が人工知能である。一方、脳の情 報 処 理 機 構か ら脳の機 能の モデル を構築し て 、こ の モデル に適 応した解析手法 を考案し て コ ンピュ ータ上で シ ミュ レ ーシ ョ ン を 行い実 験結果 と比較する といっ たモ デル シ ミュ レーシ
ョ ン の手 法 が ある。モデル シ ミュ レーシ
ョ ンを用い ると、生 理 体に対し て直 接 実 施 出 来ない 特 定 条件の テ ス ト、た と えば、あ る神経細 胞 (ニ ュ ーロ ン)に障 害 を 持た せ た脳の機 能テス ト等に より新しい 知見 を得ることも出来る
(SpitZer, M .)。こ の種のアプロ ーチ では、脳の実 体に対 応 し た理 論で な け ればな ら ない ので、 脳に関する生 理学的な知見はもと より実験的知 見の幅広い理解が重要と なる。
こ こで は、神経細胞 (ニ ュ ーロ ン)の シ ミュ レーシ
ョ ン モデル で あ るニ ュ ーロ ネ
ッ トワーク
の概 略 を解 説し、今 日で はパ ソコ ン上で 実 現で き るその簡単な例 を 1〜2取 り上げて み る。
2.神 経細胞 (ニ ュ ーロ ン)とその モデル
(1 )神 経 細 胞 〔ニ ュ ーロ ン)
重 量、概 ね1400グ ラム程 度の ヒ トの脳に100億 個とも250億個ともい われてい る神経細胞 (ニ
ュ ーロ ン)が集っ てい る。図 1 (Alberts, et al)に神 経 細 胞 (ニ ュ ーロ ン) を示 す
。 ニ ュ ーロ
ン は細 胞 体 (直 径、約100μm 一数
μm 程 度 )と その突起か ら な る。 ニ ュ ーロ ン の細胞体か ら
一 43 一
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出 る突 起 に は枝分 れ をした樹状突起 と、太 さほ ぼ一定で電線の形 を示すも軸索がある。こ の軸 索 とこれ を 囲 む被膜 な ど を合わせた ものを神経繊維とい う。 神経細胞 (ニ ュ ーロ ン)は他の神 経細 胞 (ニ ュ ーロ ン)か らの神 経 性 刺 激、或いは外 界か らの非 神 経性刺激を感受する こ と が出 来る と同時に、自ら他のニ ュ ーロ ンあ るいは非ニ
ュ ーロ ン に刺 激 を伝 達するこ とが出来る。
神 経 細 胞 (ニ ュ ーロ ン)は アセチル コ リ ン、 ノ ル ア ドレナ リ ン、 ドーパ ミ ン、γ 一ア ミノ酪 酸 (GSVA )、グ リシ ン、エ ンケフ ァ リンな どの物 質 を生 合 成 し、そ れらを化 学 的伝達物質 (神 経伝達物質)と し て利用 し てい る。
c
25μm
図1 神 経 細 胞 (Alberts, et al)
軸 索は別の神 経 細 胞 (ニ ュ ーロ ン)に結 合 し て 巨 大 な網 目構造 を形成してい る。
一つ の神経 細 胞 (ニ ュ ーロ ン)に結 合 す る 他の神 経 細 胞 (ニ ュ ーロ ン)の数 は、数 千 程 度にも なると言 わ れている。
神経細胞 (ニ ュ ーロ ン)が他の神経 細 胞 (ニ ュ ーロ ン)か ら刺 激 を 受 け興 奮する と電気パ ル
ス が発生し て軸索を伝播し、 これが軸索の 末端に到達する とあ る種の神 経 伝 達 物 質 が放出され る。 こ の 部 位 をシナプス と呼び、一つ の ニ
ュ ーロ ン の神 経 突 起 が 前シナプス と なり、他の ニ ュ ー
ロ ン の 樹状突 起が後シ ナプス となっ て、前者か ら後者に向か う伝達が行 わ れる 。結合されてい る神 経 細 胞 (ニ ュ ーロ ン)がこ の神 経 伝 達 物 質 を受 け取 り、ある状態 (閾値 )を超 え る と興奮 する。 こ の興奮状態が神経回路網上 を次々 に伝播する。 こ の興奮信 号の神 経 回 路 網 上の伝播に よっ て、脳 は 高 度 な情 報 処 理 を行 うのであ る。シナ プス にお ける信号の伝わ りやすさ が変化す
ることに よっ て、学 習 や 記 憶 が行 わ れ る と考 え られてい る,
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(2)神 経 細 胞 (ニ ュ ーロ ン)の モデル
こ の よ う な脳の情報処理 をコ ン ピュ ータ で シ ミ
ュ レーシ
ョ ン し、ヒ トの脳の機 能 解 明や、新 た な情報処 理技術の開 発に役 立てよ うとい うの がニ ュ ーラ ル ネッ トワーク で あ る
。神経細胞 (ニ
ュ ーロ ン)の単純モデル化 は 図 2と考 えられる。
y
図2 ニ ュ ーロ ンのモ デ ル
このモデル は多数の他の神 経 細 胞 (ニ ュ ーロ ン)か らの入 力 刺激 Xl、 X2、… 、k 、… 、
k を受 けて一つ の
出 力、即 ち、一入 カー出力の演算素子で、以下これを単にニ ュ ーロ ンと呼ぶ
こと にする。 こ こ で は、i番 目の入 力 を k、各 入力の シナプス結合の強度 を表す結合荷重 をWi
とする。ニ ュ ーロ ン の 内部状態 (興奮状態)u は、各入 力信号にこ の結 合 係 数 を掛 け、全 入 力 につ いて総和 をと る こ と によ り決 定 され る。
(3)ニ ュ ーロン の特 性 関 数
ニ ュ ーロ ン か ら はこの内部状態に依存し た信 号が出 力され、結 合 し て い る隣の ニ ュ ーロ ンへ
の入 力信 号 と なる。内部状態 u か ら出力 y を決定する関 数をニ ュ ーロ ン の特 性 関 数 と呼ぶ
。 特
性関 数に は式 (1)で表され る よ うなス テッ プ関 数がよ く用い られるが、この場合にニ ュ ーロ
ン の 出 力 は {O,1}の 二値 と なる。
f(・)一 {
二
芻
… … … (1)一 45 一
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出 力 を {−1, li と し たス テ ッフ゜関 数が用い ら れ る場合もあ る。 また、 次の式 (2)で 与え ら れるロ ジス テ ィ ック関数も よ く用い られるが、こ の場 合の 出 力 は {O,1}閲の連 続 値 をとる。
1
− 一一一一一一一(2) ブ(η)=
1+ e一η
ス テッ プ関数とロ ジス テ ィ ッ ク関 数の形 を 図3、図4 に示 す。
η
図 3 段 階 関 数
図4 ロ ジス テ ィ ッ ク関数
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ッ トワーク
(4) ニ ュ ーロ ン モデル の数 式 化 図 2を用い て のニ ュ ーロ ンモ デル の
数 式 化 を 行 う。入 力 信 号に関 わるニ ュ ーロ ンが n 個あ る
と き、それに対応す る 結 合 荷 重 もn 個存在する。
ニ ュ ーロ ンに は膜 電 位があ り、入 力 信 号 k によっ て膜電位が上昇し て行 く。 そ れ ぞ れの 入力 に結 合 荷 重Wiの値をか け て総和 をと る。これ を一般に ネ
ッ ト値 と言 わ れ 、次式 (3)で示さ れる。
γ・ Zx, m,一一一一一一一一(3)
1=1
膜電位 (つ まり ネッ ト値 )がある閾 値 を超 え る とニ ュ ーロ ン は発 火 する。 生 態 系でい え ば、 神 経 細 胞が興 奮して シ ナプス を通じ次の神経 細 胞に興奮信号を伝播で き る状態 を、ニ ュ ーロ ネ
ッ トワーク で は 『発 火』とい う。 閾値 をθとする と、(Y 一θ)が正であ れ ば 発火する。
先で述べ た特性関 数の 一つ で あるス テ ップ 関 数 を用い る と、ネッ ト値が閾値を 超えて い れ ば
「lj 、超 えて い な けれ ば 「0」を出力する。これ をニ ュ ーロ ン の 入力信号 k と結合荷 重Wi で
あ ら わ す と、式 (4)と な る。 但し 、0番目の入力Xoは 「1」 結 合 荷 重W 。は 「一θ」と し て あ
る。
ア= 〆(Σx,nつ一一一一一一(4)
i=0
こ の よう に、ニ ュ ーロ ン の 出力値に変換する出力関数に は階段関 数 やロ ジス テ ィッ ク関 数 が 用い られる が 、多くの場合ロ ジス テ ィッ ク関 数 を用い る。
3.ニ ュ ーラル ネッ トワー ク とは
多数のニ ュ ーロ ン が互い に相 互 作 用 す る回 路 網 をニ ュ ーラ ル ネ
ッ トワーク とい う
。 現 実の脳
もニ ュ ーロ ン間で相互作用 し てい る が、ニ ュ ーラ ル ネ
ッ トワークとして考 えること は多くない。
こ の言葉は主に数 理 的 なモ デル に用い ら れる。脳に関し て知られた事実 を使っ て、回 路 網 を含 めた数 理モ デル を提案し、その回路網と して の機 能 を 議 論 する場合にこ の神経回路網 をニ ュ ー
ラ ル ネッ トワークとい う。脳の 中に あ る莫大な数のニ ュ ーロ ンの各々 は、そ れ ぞ れ が 数 千の結 合を通し て他のニ ュ ーロ ンか ら入力 信 号 を 受 け、細 胞 膜 電位によっ て出力信号を生み出 し、多 数の シナ プス結 合 を 通し て他のニ ュ ーロ ンに信号を伝え る。
一 47 一
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4.い ろい ろ なネッ ト ワー ク
これ まで、構造、特性関 数、学 習 法の違い に よ り多数のニ ュ ーラル ネ
ッ トワークが提 案 され
て き てい る。大 き く分 け ると、階 層 型ニ ュ ーラル ネッ トワーク (パ ーセプ トロ ン、マ ダ リン、
ア ダリン、バ ッ クプロ パ ゲーシ
ョン等)と相互 結 合 型ニ ュ ーラルネ
ッ トワーク (ホッ プフ ィー
ル ド、LVQ 等)が あ る。 それらの中の 代 表 的な もの を紹介する。
(1)階 層 型ニ ュ ーラルネッ トワークと相互 結 合 型ニ ュ ーラル ネッ トワークの違い
ニ ュ ーラル ネッ トワ ーク の 結合方法に は、階層型と相互結合型と がある。 図5に示すよ うに、 順方向の層のニ ュ ーロ ン に完 全に結合するネッ トワークを階層型とい い 、自分 自 身の層や次の 層の、更にその次の層まで結合するネッ トワークを 相 互 結 合 型 は とい い 、その比較が表1で あ
る。
図 5 階 層 型ニ ュ ーラ ルネッ トワーク (上 図 ) と相 互 結 合 型ニ ュ ーラルネッ トワーク (下 図) 表ユ 階層型ニ ュ ーラルネッ トワークと相互結合 型ニ ュ ーラルネッ トワークの比 較
階層型ニ ュ ーラルネッ トワーク 相 互 結 合 型ニ ュ ーラルネッ トワーク 例
パーセプ トロ ン
、バ ックプロパゲーショ
ン、アダリ ン 、マ ダリ ン
ホ ップフィール ド
、 LVQ
特徴
計算 プロ セ スへ の定式化は比較的容易。
実 際の神 経 細 胞 網は あ ま り見ら れ ない ネッ トワーク
実際の神 経 細 胞 網に近い 。 LVQ は パ ターン認 識に優れてい る
応 用
制 御、 認 識 予 測、最 適 化 解 検 索、同 定 分類
データ圧 縮
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〔2)階 層型ニ ュ ーラル ネッ ト ワーク ア)概 要
階層型ニ ュ ーラルネ
ッ トワーク は図6に示すよ う に、ニ ュ ーロ ン を階層構造に並べて結 合し た もので、 特性関数に はロ ジス テ ィ ッ ク関数を使う。 入力層のニ ュ ーロ ンへ は外部か らの信号 が 入 力 され、出 力 は次の層の入 力 として次々 に後の層に伝 え られ、最 後の出 力層か ら結 果が出 力される。 入力層と出力層の問に は、中間層と か隠れ層と呼ば れる層が何層か設 け られる。
入 力層 中間層 出力層
↓ ↓ ↓
図 6 パ ーセプ トロ ン
こ のニ ュ ーロネッ トワーク では、入力と出 力の間に隠された関 数 関係が分か る と ともに、入
力信号の パ ターンを 予 め 決 め られ たカ テ ゴ リ に分 類することがで き る。 イ) 学 習 法の ア ル ゴ リズム
ネッ トワ ーク の 全 て の結合荷重に ラ ン ダムな値を初期設 定する。
ネッ トワ ーク の入 力 層に学 習 用の 入 力パ ターンを入れ、結 合 荷 重と特 性 関 数によ り ネッ ト ワーク の 出 力 を す る
。
この 出力と教師信号との誤 差 が 小 さ く なるように、結 合 荷 重の値 を徐々 に調 整 し て い く。
上 記 か ら につ いて これを学習 用 データ の
数だ け繰 り返す.
学習が進む につ れて、 誤差は少しずつ 減 少し て 正しい 入出 力 関 係 を獲 得 する。学 習が き ちん と 終 わ る、つ ま り、正しい入 出 力 関 係 を獲得 する と、学 習用の データ と は異な るデータ 入力に対
し て も学習し た関数 関係に対応 し た出力信号 を示すよ う に な る。
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