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課題設定 L L L L

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Academic year: 2021

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(1)OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ. 産業循環論について 井. 安. 修 l. 課題設定. 拙稿 ( 1 勾において,われわれが示した恐慌・産業循環論の特徴は,次のこ点 にあった。(1)従来の実現論は,実現論と L、 L、ながらも,需要と供給をそれぞ れ明確に区別して与えることは少なかった。そのことは,従来の実現論が需給 一致の上に組み立てられている再生産表式分析のレベルから大きくふみだすこ とがなかったと L、う点に端的に表現されている。もちろん,かかる課題は,再 生産表式分析レベルから上向して,競争論レベルまで到達すれば実現されるこ とになると弁護することもできょう。しかし,それはし、まだ実現されたことの ない体系でしかないのであって,それならむしろ,需要・供給を個別資本や消 費者にそくして与えることからまず始めるべきではないだろうか。恐慌論体系 なるものがもしありうるとすれば,そうした具体的現実的な分析といままで積 み重ねられてきた抽象的な分析との相互作用のなかで始めて完成するものでは. 5J を利用して,需要・供給を個 ないだろうか。かかる問題意識の下に,置塩 [ 別資本や消費者にそくして与えようとしたのが,拙稿 [ 1勾の第一の特徴であっ た 。 (2)従来の恐慌・産業循環論では,産業循環論は,恐慌論でのべたことを もう一度くり返すという形になることが多かった。そのことは,恐慌の必然性 があるからこそ,産業循環の必然性もあるのだと理解するとすれば,当然のこ とのようにも思われるかもしれな L、。しかしそもそも恐慌論というのは,理 想的平均的状態から出発し,そこから必然的にあるいは偶然的な契機で講離す るとし,その講離・不均衡は累積し,最後に恐慌となって爆発するという構成 をとらざるをえなし、。そうすると,そのような説明は,周期的にくり返される ものとしての産業循環過程也、とりわけ好況過程から恐慌過程への展開過程を.

(2) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ .‑102ー. 7 7 8. 第5 4 巻 第 4号. 説明しうるものではなし、。というのは,、現実の産業循環過程は,前の循環の結 果を前提にして始まるのであり,決して理想的平均的状態から出発するのでは な L、からである。かかる問題意識の下に,恐慌論とは次元の異なる産業循環論 を構築しようとしたのが,拙稿 ( 1 2 Jの第二の特徴であっ T ; : : 本 稿 の 課 題 は , 上 述 の (2)の観点、から,従来の産業循環論を整理することに. 1 2 )で は 十 分 と り あ げ る こ と が で き な か ある。と同時に,そのなかから,拙稿 ( った産業循環論のいくつかの間題点をとりあげ,. より詳細な分析をつけ加える. こ し 、 。 ことにしT. E. 置塩産業循環論. 上述のように,恐慌論は,理想的平均的状態から出発し,そこから必然的に あるいは偶然的な契機で事離するとし,その粟離は累積し,恐慌となって爆発 すると L、う形をとるが,. このうち,;qe離する契機が必然的ではないもの,. 即. 弘一方で均衡経路が存在しうることを論証した上で,何らかの契機でここか ら;qe離すると,その;qe離が累積していくと L、う議論が,均衡経路の不安定性と よばれている議論である。そして,この均衡経路の不安定性論の延長上に産業 循環論を位置づけたのが,. 4Jである。そこで, 置塩(. われわれは,. まず置塩. 〔4)の検討から始めることにしよう。 (1) 拙稿 ( 1 2 )では,以上のこ点が,<実現理論の下向法的接近>という言葉の干に明 確に区別されることなく与えられていた。即ち, (1)の点は,本来,分析のための 基本モデルの組立ての問題であり, (2)の点は,そのモヂノレを活用して産業循環の 各局面を分析する場合の方法論の問題である。ところが,拙稿 ( 1 2 )では,基本モデ ルの叙述のなかで,すでにこのモデノレを特定の産業循環の局面にあてはめた場合の 問題が議論されており,叙述が少し不鮮明になっている。また,拙稿 ( 1 2 )では, (2)の点は与えられてはいるが,産業循環論の展開上十分生かされているとは!いえ. なかった。 (2) といっても,従来の恐慌・産業循環論では,産業循環論まで展開されることは少 なかったので,まだ論争点自体が十分明確になっていない状態にある。 まずこ,拙稿 日2 )以来のわれわれの課題は,実現論的な恐慌・産業循環論の検討にあったが,従 来の産業循環論を整理するとなると, どうしても実現論以外の産業循環論にもふれ ることになる。しかし,本稿では,かかる部分はできる限り制限し. (したがって, f f t 塩産業循環論については言及するが,たとえば霞塩 (4)の恐慌や反転の必然性・ 諸契機の是非については論じない,というように),それ故,宇野産業循環論も対象 としないことにする。.

(3) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 産業循環論について. 779. ‑103ー. 置塩 (4Jは,その第 3章で,産業循環過程を次のような構成で与えている。 <1.不均衡の累積過程 の仕方に,. 2 . 恐慌に関する諸説 3 . 恐慌 4 . 反転〉この構成. 置塩産業循環言論の特徴が端的に示されている。 即ち,. 置塩 [4Jで. . 不均衡の累積過程>で,均衡経路の不安定性を与えているが, は,まず,く1 これを産業循環過程に対応させれば,好況過程と恐慌後の縮小過程とを説明す るものとなる。〈第 1図と第 2図参照。〉. もちろん,. これだけでは,. 産業循環. g. g. g , )g , ..j. o > l( g , )g t ‑ 1 ). o=l( g , =g'‑l). o=l. , <g ぃ1 g. g , <g t ‑ 1 ) o ( l(. 一 ー 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ー 一 一 一 一‑t. 一. L. 一 一 一 一 一 一 一t. (g:資本蓄積率, o:稼働率〉. 第 1図. 第 2図. 過程全体を説明することにはならなし、から,く 3 . 恐慌>で,. 上方への累積過. .反転>で,下方への累積過程が逆 程が逆転される必然性と諸契機を与え,く4 転される必然性と諸契機を与えるという、形になっている。〈第 3図参照。〉この ように理解すれば,置塩 (4Jが,産業循環過程を均衡経路の不安定性論の延長 上に与える立場の,. 一つの典型的な例であることがわかる。そして,. そこか. ら,次のこつの問題点がうかびあがってくる。 第一の問題点について。これは,置塩 [4Jで、は,産業循環過程全体を説明し えないのではな L、かという点である。つまり,第 3図の破線で示された局面が それであって,その第ーは,恐慌が発生し, δω=1まで累積的に下降していく (3) 注 (2) でも述べたように,以下の問題点は,均衡経路の不安定性論の延長上に産. 業循環論を構築する場合の問題点であっ!て,置塩産業循環論のすべての問題をとり 扱うわけではない。.

(4) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑104‑. 第5 4 巻 第 4号. 7 8 0. g. 恐慌 ¥ ¥. ¥ ¥. ¥. o=l. . ' t. 第 3図. 局面であり,第二は,反転が始まって ,d ω=1まで回復過程が進行する局面で ある。 まず,第一の局面について詳しくみてみよう。一度恐慌が勃発すると,下方 への累積過程が始まることは必然的であるようにみえるが,決してそうではな い。置塩 [4Jが,yω=Y(ト. +F(d(ト 1 ) ) 'F(l)=O,F'>O,という投資関数をど. I ). の産業循環の局面でも通用するものとして採用 Lているとすれば,この局面は 説明できないことになる。というのは,この投資関数をこの局面で採用してい ( t刊 } く d (山 叩 1) る限り,ある期 (t+n期〉にたとえ過剰生産が発生し,その結果d. となったとしても,依然として九州 >1である以上は. Y (t+叫 1 ) > Y ( t +叫とい. う関係は維持されるからである。そして資本蓄積率が減退 Lないとすれば,下 , 方への累積過程は始まらないのである。かかる批判に対しては,置塩 [4Jは そのような場合には当然下方への累積過程は始まらないと反論するかもしれな い。たとえば,置塩 ( 5Jは,ハロヅドを批判しつつ,(逆のケースについてで. C なるとき, あるが),次のように主張しているからである。「われわれは Cく γ 資本家は『資本不足』を感ずると一応,ハロ. γ. ドとともにみてきたが,はたし. て芳うであろうか? Cの定義から分るように Cは限界資本係数である。だか ら ,. 仮りに. C<Cであっても資本不足どころか, γ. 資本過剰で、あることは充分. ありうる。はじめの状態で資本過剰であれば,限界資本係数が標準限界資本係.

(5) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 産業循環論について. 7 8 1. ‑105ー. 数よりも小であったとしても,資本過剰の度合が若干低下することはあっても 資本過剰という事態はなくならないかもしれなし、。それゆえ,資本家の投資が 資本の過不足に反応するのであれば,それは限界資本係数がその標準値との関 係でどうかというのではなし平均資本係数が標準平均資本係数よりどうかと いう点が重要であるはずである。J( 8 7頁ー傍点著者一‑) (ここで問題としてい. C rとよみかえ,資本過剰と資本不足をお るのは,逆のケースであるから ,G> きかえてよめばよい。〕もし, 置塩 [4Jがこのように主張するのであれば,下 方への累積過程はし、かに説明しうるのであろうか。置塩 [4Jに残された道は, 上方への累積過程がどんどん進行し,最後に置塩 [4Jのし、う恐慌の諸契機に衝 突しその後,恐慌の諸契機が Sω=1の水準に低下するまで作用しつづけ,. S ω く 1になって,. 下方への累積過程が始まると考えることであろう。 しかし,. かかる説明では,. 恐慌時における過剰生産の加速度的波及過程を説明するこ. とはできないであろう。かくして,下方への累積過程の説明と上述の投資関数 とは両立しえないのであるから, このような投資関数を下方への累積過程の説 明で採用することはできないといわなければならな L、。ところで,このような 批判をとりいれた説明が置塩 [4Jにないわけではない。たとえば,. r 下方 への ω. 累積過程は,蓄積需要の減退吟過剰生産→蓄積需要の一層の減退=争過剰生産の. ( 2 1 0頁〉と L、う説明がそれであって,ここでは,蓄積需 深化と L、う過程である J 要は,稼働率ではなく,需要供給関係(過剰生産〉に反応することになってい ¥. る。しかし,この投資関数の修正という点をより積極的に認めているのが,第 二の局面の説明の場合で、ある。 次に,第二の局面(反転が始まって, ()ω=1まで回復過程が進行する局面〉 についてみてみよう。この局面の分析に際しては,まず次の三点を確認しでお かなければならない。(1)先の第 3図では,下方への累積過程が逆転〈反転〉 すると,. すぐさま上方への累積過程が始まるという形になっているが,. 本来. (4) なお,投資関数を修正すれば,下方への泉積過程が説明できるかといえば,必、ず. しもそうではない。この点については,本稿 Nで詳し丈みることにする。 r 逆転によって開始させられた下方への累積過程ばこれまたなんらかの契機で必 2 4 9 頁 〉 ず上方へ逆転させられ,上方への累積過程に転じる J(置塩 (4). (5). ピ.

(6) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑106‑. 第5 4 巻 第 4号. 7 8 2. は,まずしばらく単純再生産に近い停滞期がつづよ〉その後回復過程〈新投資 は本格的に始まらず,既存設備の下で稼働率が回復してし、く局面〉がつづき, 最後に新投資の開始とともに好況過程〈上方への累積過程〉が始まるとすべき であろう。その意味で,第一の局面と第二の局面とは非対称的な形をとること になる。 (2)とすれば,置塩 [4Jがあげる反転の諸契機は,停滞期を形成する ものと回復過程から好況過程を導くものとにわけられるべきであろう。 (3)回 復過程が始まりふの =1に達するまでの局面では,置塩 (4Jの反転の諸契機〈の うちのいくつか〉が一定期間作用しつづけると考えるべきであろう。というの は,上方への累積過程が一度逆転すると,その後の下方への累積過程は,最初 の逆転の契機とはかかわりなく,く過剰生産→蓄積需要の一層の減退→過剰生 産の深化>という形に開始されることになるが,回復過程ではそのようなメカ ニズムは作用しないからである。以上のような点が確認できるとすれば,この 局面の説明は,置塩 [4Jの説明とは自ら異なったものとならざるをえないであ ろう。このうち,停滞期については,本稿 Nで検討することにし,回復過程に ついては,すでに拙稿 ( 1 勾で井村 [2Jの見解を一応承認する形で与えたので, ここではくり返さないことにする。したがって,ここでとりあげておくのは, 置塩 (4Jが,反転の諸契機のうち,ズ V新生産方法導入〉の説明のなかで,投 資関数の修正を次のように認めている点だけである。 決定の仕方は,. r ・ ・..資本家の蓄積需要 h. 一面では本章 ( W蓄積論』第 3章〉第 1節 C項で規定したよう. な性質をもちながら,. それだけではなく,. 他面では低い稼働率,. 低い利潤率. くそれはマイナスであるかもしれなしうであるにもかかわらず,いや,である からこそ蓄積需要を高めると L、う性質をももっているということを意味する。 稼働率や利潤率が致命的に低 L、からこそ資本家が蓄積需要を高めるのはどうし. (6) この停滞期という考えは,置塩(4)にもないわけではない。 i 資本家の個人消費 が景山気局面のいかんにかかわらず,最低一定値を保つということは,生産水準があ る一定限以下に低下しえないという意味で,下方運動を停止させるという役割りを 果すことは確かである J ( 2 4 5 頁ー傍点著者一〉 (7) 置塩(4J の場合,対称的な形でとらえられているのは,産業循環論を均衡経路の 不安定性論の延長上に与えているからであろう。.

(7) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑107ー. 産業循環論について. 7 8 3. てであろうか。それは,新しい生産方法を導入し,労働生産性を高めなければ. 2 4 8 資本家としては没落,破産してしまうと L、う事情の強制によるのである。 J( 頁 〉 かくして,置塩 [4Jの均衡経路の不安定性論の延長上に,産業循環論を与え ようとすると,二つの局面が説明不可能になるが,これを説明するためには,. gω=g ( t ‑ ! ) + F (( J (ト. 1)). とし、う投資関数を放棄しなければならなし、。ところが,. 実は,この投資関数こそが,均衡経路の不安定性(本稿第 3図でいえば,実線 部分〉の説明には欠かせないものであり,もし投資関数を修正するとすれば, 当然不安定性の論証も再検討されねばならないことになる。〈拙稿 [ 1勾参照。〉 第二の問題点について。ここでは,第 3図の実線部分が対象となる。問題は ご段階にわけられる。第一は,. 上述した点,. 即ち均衡経路の不安定性を置塩. (4Jの投資関数を前提にして与えてよ L、かどうかという問題である。しかし, 1 勾でも検討したので,本稿では省略する。第二の問 この点については,拙稿 [ 題は,そもそも均衡経路の不安定性によって与えられる上方(または下方〉へ の累積過程を産業循環の一局面としての好況過程〈または恐慌後の縮小過程〉 とおきかえてよ L、かどうかという問題である。以下では,この第二の問題をと. ' でもとりあげる あげるが,恐慌後の縮小過程(下方への累積過程〉は,本稿 N ので,ここでは,好況過程(上方への累積過程〉についてだけとりあげること にしよう。そもそも, は ,. 好況過程の説明には,. 二つの立場がある。第一の立場. くここでとりあげているような〕均衡経路の不安定性によって与えられる. 上方への累積過程を好況過程と考える立場である。. この立場では,. 好況過程. は,理想的平均的状態から出発して,何らかの契機でここから講離し,それが 必然的に累積していくという形で与えられ,恐慌過程は,外的な条件に衝突し て勃発するということになる。. この立場を代表するのが,. 4Jであ この置塩 [. る?ここでの問題点は,恐慌が外的な条件に衝突するという形で説かれている (8) これに対じては,上方への累積過程を生みだすメカニズムが作用し始めると,そ. の一定の展開の後に, 自己否定的な契機が必然的に内部に形成されてくるという反 論がありうるだろう。しかし,一見弁証法的にみえ(るこうした主張は¥i.'、まだかつ て論証されたことはないのである。かかる意味で,上方への累積過程を生みだすメ.

(8) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑108ー. 第5 4 巻 第 4号. 784. という点にあるのではない。問題は,好況過程というのは,必ず前の循環, と りわけ不況過程からの脱出のあり方に規定されて成立するものでありくたとえ ば,新生産方法の導入を伴う更新投資の集中が好況過程を生みだすというよう に),そうであるとすれば,理想的平均的状態からの事離としての好況過程は, 現実の好況過程とは異なったものになるのではなし、かという点である。これに 対して,第二の立場は,前の循環を多かれ少なかれ前提にして好況過程を説明 する立場である。この場合は,不況過程からの脱出の仕方に規定されて好況過 程が与えられることになるから,このように特定化された好況過程は一定期間 後必ず逆転が生ずるという形で,恐慌過程を与えることもできる。この立場を 代表するのが,林 ( 1 1 J,井村 (2Jである。乙こでの問題点は,恐慌を説明する ために恐慌がすでにあったことが前提となっていると L寸意味で,循環論法に なっているのではなし、かという点である。しかし,われわれは,拙稿(13 J1で のべたように,第一の立場と第二の立場を,マルクスの本源的蓄積と資本の蓄 積過程との関係に対比させて考えれば十分両立しうるものであると考える。 かくして,均衡経路の不安定性論の延長上に,好況過程や恐慌・不況過程を 説明するという立場は,誤りであるとはいえないが,それだけでは一面的なも のになるといわなければならな L。 、 補論高須賀・滝田の「産業循環の局面分析」論. 6Jは,産業循環そのものを描くのではなく,産業循環の各局面の特 高須賀 [ 徴を,表式分析を利用して明らかにしようとするものである。そして,、この分. カニズムにとってはあくまでも外的な条件に衝突することによって逆転が生ずるこ とにならざるをえ ないのである。もし,好況過程の一定の展開の後に, 自己否定的 な契機が必然的に形成されると主張しようとするなら,その萌芽が,好況過程に先 立つ不況・回復過程に存在しなければならない。そのように考えるのが,次にのべ る第二の立場である。 (9) もちろん,両立しうるためには,第一の立場による説明の一過程が,第二の立場 の産業循環論の一局面と結びつかなければならない。われわれは,不況過程こそが これにあたると考える。つまり,第一の立場によって恐慌の必然性と,恐慌後の不 況過程が与えられるが, これは, くり返されるものとしての産業循環過程の一局面 としての不況過程と一致するものと考えてよい。その意味でも,産業循環論は,不 況過程から始めるべきであろう。 i.

(9) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 7 8 5. 産業循環論について. ‑‑109‑‑. 析視角は, その後,滝田 (7],浅利 ( 1],滝田 (8Jによってうけつがれ, 展開 されていった。 しカミし, われわれは, この試みが結局置塩産業循環論の再現に ‑yfjhhp}TEt‑‑tlpz. ならざるをえないと考えている。以下, その理由を議論の展開過程をフォロー するなかから明らかにしてみよう。 高須賀 [6)では,産業循環の各局面を分析するための基本モデルを次の 3つ の式から構成している。 (1) 生産財の自由度方程式. X1 K2 ( t +J ) ω=Kw+1)+. (X:生産量〈物財表示), K:生産手段(物財表示),. サブスグリプ. ト1 ,2は部門を示す。〉. これを変形して,. αJ=GW)+QωG2(t). 仰. (1). ( α ;=X/K ,Q=KdKJ ,G (戸 K(t+l)/K ω ,〉 (2) 消費財の自由度方程式. ¥. X2ω=ωω ( L山 +1)+L2(t+ J ) ) (L:雇用労働者数, ω:実質賃金率〉. これを変形して, . B. 内A. ft. ︑ノ. ︑ ︑. •. αd ω ,(t)= β1GW)/Qω+β2G2 ω ( β : L/K). (3) 利潤率と価格の方程式 Xw , p ω=[K 山 , p ( の+ωωLJw ](l+( l (の 〉. … ・ ・ ・ (3) ( イ 〉 1. X2(t)=[K 2(t'pw + ω ωL2 ] ( 1 +l ( ω〉 I t). …(3)(ロ〉. (P:相対価格, (l:一般的利潤率〉 以上の方程式のうち, (1)と(2)認で,産業循環の各局面を基本的に明らか にし, (3)式は, (1)式と (2)式によって決ってくる K川. X川. L(の,倒的の. 変動過程を投入することによって,利潤率と価格がし、かなる運動過程を示すか を明らかにするものとなっ. τいる。そこ で,まず, 1. (1)式と (2)式のもつ意味. を明らかにしなければならない。(1)式は,直接的には,今期の生産手段生産.

(10) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑110‑. 第5 4 巻 第 4号. 7 8 6. 量は,次期の両部門の生産手段に等しくなることを示しているにすぎないが, 次期の生産手段量が決まれば,. α1. と α 2 を媒介にして,. 次期の生産量山. (X 1と. X2) が決定されるから,結局これは,両部門の供給量(物財表示〉の決定関係 を示す式であるということになる。これに対して, (2)式は,消費財の需要供 給 関 係 を 示 し て い る 。 即 ち , 左 辺 X2Wが, (1)式から与えられる消費財の供 給量を示すとすれば,右辺は,消費財に対する需要量を示している。というの は ,. X1 と X2(K lとんを媒介にして, L lと L2が決定され, 1 と K心 か ら ,s. それに ωをかけることによって,実質賃金の大きさが与えられる。労働者は, それを全部消費に炉支出すると想定され, るから,. 資本家の消費はゼロと想定されてい. L ! (件。 +L2(件 心 は , 消 費 財 へ の 需 要 を 示 す こ と に な る か ら で あ ω ω(. 6Jでは, る。需要・供給が不一致の場合,高須賀 [. ωが変化することになって. いるが,貨幣賃金率が階級闘争等によって外から与えられるとし,. 需要・供. 給の不一致が,価格によって事後的に調整されるとすれば, (2)式を次のよう 、 に変更すればよ L。. ん}口先ト品川)+L山+1)]. ‑ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・( 2 ) '. (w:貨幣賃金率〉 この. P2(のによって,. われわれは,. 消費財の市場価格を与えることができる。. ( 1 0 ) 拙稿 ( 1 3 )注 (8)でも,高須賀 (6)を批判的に検討したが,その批判は不十分なも のであった。即ち,拙稿 ( 1 3 )では,高須賀 (6)を次のように理解した。生産財の自 由度方程式と消費財の自由度方程式との交点がない場合に,実質賃金率を調整因子 として作用させ,交点をつくりだしている,と。そして,このような理解の上に, 調整作用は,価格メカニズム以外にないのではないかと批判したのである。しかし, このように理解すると,実質賃金率が変化すれば,交点は無限に存在しうることに G2ω= なる。高須賀 (6)の主張は,生産財の自由度方程式と, (後にみる) Gω 1/ α,α>1,との t+1期の交点に ,t+1期の消費財の自由度方程式が重ならないので, これを重ねらせるために,実質賃金率を調整因子として作用させていると理解す!ぺ 、きである。しかも,実質賃金率が調整因子として作用するといっても, (2)'式を考 慮すれば,調整メカニズムはやはり価格機構によっでなされ ていると理解すること もできる。とはいっても,高須賀 (6)では,後にみるように,生産財についての需 給分析が行ないえない体系になっており,その意味でも,価格機構による調整作用 の分析はやはり不十分なものである。 ( 1 1 ) なお,ここでは,物財単位での需要ミ供給が生じた場合,すべて価格変化によっ て事後的に一致していくと理解しており,その意、味で, i 市場清算的市場価格J ( 滝 1.

(11) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 7 8 7. ‑111ー. 産業循環論について. ω の決定関係とするにせよ ,P 2<tlの決定関係とするにせよ,それを変数とする. 以上, (2)式を追加しても,体系は依然として未決定のままである。そこで高 須賀 [ 6Jは,たとえば好況過程という局面の分析の場合には,第 I部門の不均. BJ 〆. ft. dιz. ︑ ︑. •• • •. G1 ωjG2ω=α,α>1. ︑. 等発展が成立するものと特定化し,次の式を追加する。. これによって体系(基本モテソレ〕は完結し,この体系を前提にして,各局面の 分析を行なうことになる。 このように,高須賀 [ 6Jの体系が理解できるとすれば,その問題点は次のよ うになろう。第一の最も重要な問題点は,この局面分析がその最も中心的な箇 所でトウトロジーになってしまっていることである。たとえば,好況過程を分 析する場合,. G1 ωjG2ω=α,α>1を前提にしているが,. 析の結果として説明されるべきことであろう。もし. これは,本来局面分. Gl(のjG2<tl を決定する関. 係を外から与えるのではなく,内部から説明しようとすれば,何らかの資本家 の行動様式を新しく導入しなければならないだろう。但し,高須賀 [ 6 )のよう に , G1 ωjG2ω=α,α>1を与えてしまうと,. (2)式から,. 実質賃金率は決定. されることになるから,好況局面の実質賃金率の運動は分析ができることにな る。その意味では,完全なトウトロジーではなく,好況局面の分析のー側面は 明らかにされることにはなっている。そして,. かかる分析をうけついだもの. に,都留 [9J . 由井 [ 1 4 Jが あ ど 第 二 の 問 題 点 は , 好 況 過 程 を 第 i部門の不均 国 (8))である。しかし,浅利(1)が指摘するように,需要>供給の場合はそれで いいとしても,需要く供給の場合は,意図せざる在庫が生じうる場合もある。そし てその場合には,そこに登場してくる物財表示の供給量:li.,すべて販売されるわけ ではないことに注意しなければならない。 ( 1 2 ヴ 都留 ( 9),白井 ( 1 4 )では,第 I部門の不均等発展下では,必然的に実質賃金率は 低下するとしている。第 I部門の不均等発展の中味を,たとえば,高須賀 (6)のよ α>1と特定イじすれば,実質賃金率は必ず低下しなければなら うに ,G山 )/G2ω=α, ないが,そうした特定化をしなければ,高須賀 (6)が指摘するケースくん>βiで , 第 I部門の急速な発展があると, (2)式は,供給>需要となり,消費財価格が低下 , ) し,実質賃金率が上昇する〉が生じうるのである。更に,高須賀 (6),都留(,9 白井 ( 1 4 )では,資本家の消費を捨象しているが, もしこれをあらかじめ導入してお いて, しかもある期に資本蓄積率の上昇によづて,資本家の消費(の増加率〉が為低 下するとすれば〈これは十分ありうることである),同じように (2)式は,供給>需 要となりうるのであり,実質賃金率は不変または上昇しうるであろう。.

(12) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ヮ. 第5 4 巻 第 4号. 7 8 8. 等発展としながら,利潤率は, (3)式(イ)(ロ〉によって,両部門とも等しくな るように決定されていることである。第 I部門の不均等発展が生ずるために は,第 I部門の蓄積率が第 E部門の蓄積率よりも上昇しなければならないが, 利潤率が等しいのに,それが何故可能であろうか。第三の問題点は, (3)式で , 決まる Pω の意味についてである。高須賀 (6)は. これを理想的平均的な再. 生産における生産価格(但し,相対価格〕ではなく,再生産の実体的構造の変 化を反映した生産価格であると説明している。しかし,再生産の実体的構造の 変化を反映したといっても,一種の生産価格であって,決して産業循環の各局. 2 ω を与える 面で変化する市場価格ではなL、。先にみたように, ( 2 ) '式から ,P ことができるが, これは市場価格である。これに対して,同じような意味での. p山〉は, I 高須賀 [6Jの体系では,生産財に対する需要方程式が欠如しているた めに与えることができなし、。生産財に対する需要方程式が与えられ, (1)式と の関係で,. 生産財への需要・供給による. P1ω の決定が与えられれば. P1ω/. P2ω の循環的変動もとり扱うことができることになる。 さて,高須賀 [6Jの枠組をうけいれつつトその問題点を克服する試みは,ま ず,上述の第ごの問題点への批判から始まった。滝田 [7]では, まず,両部門 の利潤率を別々に規定することが提起された。こうして,利潤率を別々に規定 すれば,. この利潤率の格差を基準にして. G!(t) / G 2 ω. を決定するという関係. を導入することができる。それは,滝田 [7Jでは次のように与えられているブ〉. ……… ( 4 ) '. 9 1(t)‑ 9 2 ω =j[( l1ω‑( 12ω ]. 。. ! ( ω 霊( l2(t) に応じて,. 1呈o .(めω=G )‑1) 仰. glωー のω= f [(ll(t‑l)‑ (l2(t‑1 l ) , . 1 '>0, 1(0)=0 この差異については,両者の関に論争があるが,問題はラッグのとり方に あるのではない。滝田 (8)では,この gt<tlは,事後的に実現した資本蓄積率で、ある (需要・供給関係から,価格が変化し,それに対応して,各部門の利潤率が変化し, その変化を反映しで,各部門への追加的生産手段の配分比が決まってくることにな ω ,/K ω , のI ω っている〉のに対し,浅利(1)では,需要・供給の区別がないため, 1 に,投資需要の大きさという窓味と追加的生産手段の供給量:という意味とを同時に 含ませてしまっている。この場合,滝田 (8)の扱いが正しいといわなければならな い。但し,滝田 [8Jの場合,資本家の行動様式は, (後にみる )(5)式で与えられる ことになるが,その (5)式とこの (4)'式との関係をもう少し明確にする必要があろ う 。. ( 1 3 ) 浅利(1)で、は,次のようになっ ている。 l.

(13) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 7 8 9. ‑113ー. 産業循環論について. このように,. 成長率(蓄積率〉比の決定に,. (7J,浅利 (lJでは,. 高須賀 [6J のように,. 利潤率比を導入するから,. 滝田. (1)(2)(4)式とく 3)(イ)(ロ〉. 式が分離されるのではなく, (3)(イ)(ロ〉式を含む形でー但し, J ( ω ではな<(, J (l ω ,J (2 ω と変化している一, (1)(2)(4)'式が考えられることになる。こう して,高須賀 (6)の第二の問題点だけでなく,同時に,第一の問題点も解決さ れることになり,第 I部門の不均等発展は,もはや前提されることではなく, 説明されるべきこととなったのである。 ところで,このように,利潤率を各部門で別々に規定すると,変数が一つ増 加したことになるから,. 高須賀 [6Jのく 3)(イ)(ロ〉式ー但し(J(のでなく,. P山), J (2 ω と変化しているーは,. たとえ実質賃金率を与えたとしても,. もはや. 価格と利潤率を決定するものではありえないことになる。したがって,体系を 完結させるためには,価格か利潤率を決定する関係をもう一つ新しくつけ加え なければならなし、。その関係とは,高須賀 [6Jの第三の問題点ですでにのべた ように,. 生産手段に対する需要を説明する方程式を追加することによって,. Pl(のを決定し,他方, ( 2 ) '式から説明される P2ω との関係で ,Pl(t)/P2(のを与 えるということでなければならなし、。こうした方向は,滝田 ( 8Jによって始め て提起されていど滝田 [ 8Jでは,生産財需要額の変化率を とし,. 匂 e{ ω t 戸. Dw/D< t ト . ‑. この投資需要関数を次のように与えている。. ( 1 4 ) 但し,滝田 ( 8 Jでは ,P1 t <)=D ω (D:生産財への需要額〉から ,P1 ωX1 ω を求め / PW‑ ) 1=D ω/D< t ‑ 1 )・ X1 ( ト1 )/XW)から ,P1 P ! ( ト1)を求 るということはせず,PW) ω/ めるということをしている。(この式の意味は,価格の変化は,需要の変化に比例し, 供給の変化に反比例するというものである。〉消費財については ,p. 以叫が求められ ているのに,生産財については,価格の変化率が求められているのだから, このま までは ,P1 ! (。をいかに与えるかは, ω/P 2ωを求めることはできないことになる。 P 依然として未解決の問題である。たとえば,滝田 (8Jは,P1(, )X ω によって 1 ω=D きまる P1ω を貨幣賃金率で測った生産財価格といっているが,正しくは貨幣賃金率 で測られてはいないように思われる。 というのは , (2)'式から明らかなように, P2ω には,貨幣賃金率がそのー要素として入ってくるが ,P1WX 山 ) ' ; ' Dω から P ! (叫 を求めても ,Dω に貨幣賃金率が入っていなければ,P1ω にも貨幣賃金率は入って 8 Jでは ,Dω は求められず, こないからである。そして,上述したように,滝田 [ Dω / D (, ̲ 1 )が求められているのである。〈更に,次にみるように ,Dω/D ト 1) は,利 潤率と関係づけられ,利潤率には賃金率が入ってくる。 しかし,その場合の利潤率 それ故賃金率は,前期のものであり,すでに与えられたものであり ,P2ω に登場し ,てくる今期のものではないのである。〉.

(14) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑114‑ ‑ ‑. 第5 4 巻 第 4号. 7 9 0. . ̲ " . . . … (5). s ( t )= r p t ̲ l+(l‑r),r>O. こうして,基本モテールは,滝田 (8Jで始めて完成することになり,それは,需 要・供給を明確に区別して規定しているとし、う意味で,それ以前のモデルと質 的に異なったものとなっている。しかし, 稿[ 1 勾で詳しくみたように,. こうしたモ町デルの構成の仕 方は,拙 i. くそして,本稿 Iでもう一度強調しておいたよう. に),実は,置塩 [ 5Jの後半部分ですでにとり扱われていたものであった。. 6)から始まって,滝田 [8Jで一応完結した基本モデルに かくして,高須賀 [ よって,産業循環の局面分析がなされることになるが,滝田 [8Jや浅利[1]の 説明の仕方は,. 当然高須賀 (6Jのやり方とは呉なり,. これらの方程式体系か. ら,まず均衡経路(滝田 [8Jでは, ε ω 一定の時は,均等発展経路, ε ω が (5) 式で与えられると,単純再生産〉の存在を証明し,次にそこでの安定性・不安 定性(不安定性の一方が,. 第 l部門の不均等発展で,. それが好況局面を表現. し,他方が第 E部門の不均等発展一単純再生産広近づくーで,それが恐慌後の 縮小過程を表現する〉を証明するという形になっている。この分析手法こそ, 基本的に,置塩産業循環論の再現にほかならなし、。. 8Jでは,置塩体系とは異なった側面も含まれている。それ とはいえ,滝田 [ は,滝田 [ 8Jの投資需要関数 ε ω は , γ が変化することになっているので,. 産. 業循環を通して同ーのものではなく,種々に変化しうるという点である。)γ が ( 1 5 ) 再生産表式分析を利用して,恐慌・産業循環論にアプローチする試みは,本稿で とりあげたもの以外にも,くり返しくり返しるらわれてきている。 しかし,いかな る恐慌・産業循環論を構築するかという問題意識もなしに,再生産表式分析だけを 級密化するとすれば,それは, ただ種々の成長経路を羅列するだけのことになって しまうであろう。もし,商品過剰説を構築するという問題意識の下に,表式分析を 利用するなら,井村 (3)が指摘しているように, (1)需要と供給を明確に区別し, その霧車監の問題を設定すること, (2)固定資本の存在を無視してはならないこと, のニ点が必要不可欠であろう。滝田 (8)に商品過剰説を構築するという問題意識が あるかどうかわからないし,固定資本の問題は依然、として捨象されているが,それ でも,需要と供給を明縫に区別し,その:lJE離→価格による調整→:lJE離の累積を導入 した点、で,従来の立場を一歩こえたものであるといってよい。 ( 1 6 ) もう}っつけ加えれば,滝田 [8]では,投資需要関数を設定する際に,変数を置 4)のように I ω/K ω , としないで ,L ω/ I (ト1l (滝田 (8)では,Dω/D< t‑ l ) ) として 塩[ いることも重要である。というのは,拙稿 ( 1 2 )でみたように,変数を I ( ( t) /K ω , とす ることが,置塩C4)の不安定性論で重要な意、味をもっているからである。.

(15) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 7 9 1. ‑ ‑ 1 1 5ー. 産業循環論について. 変化するということは,資本家の利潤率に対する反応係数が変化するというこ とであるが,ただ理由もなく,強気になったり弱気になったりするということ であってはならなし、から, γ の変化を生むような実体的変化が必然的に発生し ていなければならなし、。しかしそうした実体的変化は,この基本モデルそれ 自身からは与えることができないのであり,それを与えるためには,われわれ が主張するような産業循環論の理解(不況・回復過程の中味が,好況過程の中 味を特定化し,それ故,好況過程の一定期間後に γ の逆転が必然化するという 理解〉が必要不可欠なのである。. E. 富塚産業循環論. Eでみたように,産業循環論の説き方には,置塩 [4)と井村 (2Jに代表され るこ通りのやり方があるが,. その中間に位置するのが富塚 ( 1 0 Jである。富塚. ( lO Jでは,その第 4章が産業循環の分析にあてられているが,そこでは,一方 で,第 3章ですでに恐慌の必然性を説いているので. 1 われわれはすでに事実. 上,(:産業循環》の過程における最も決定的な契機たる好況期から恐慌期への 移行の必然性を規定する論理を解明し把握しえている J (176~~177頁〉といわ ざるをえず,それ故産業循環の展開は,恐慌の必然性の論定に. 1 その確定性. 1 7 6 頁〉ることにある,ということになる。しかし他方では, を充分に与え J( 実際に産業循環論を展開するに際しては,理想的平均的状態から出発するので はなく,不況期の新生産方法の導入を伴う更新の集中から始めることになって おり,その展開過程は,恐慌の必然性で説いたものとは自ら呉なったもの ( 1 確 定性を充分に与え」るだけのものとはいえないもの〉になっている。では, こ のこつの議論は,富塚 ( 1 0 Jではどのように結びついているのであろうか。. 1 0 Jの第 4章産業循環論は,次のように構成されてい広まず,不況期 富塚 ( における新生産方法の導入を伴う更新の集中から始め,更新の集中にもとづい て,生産の回復・増加があり,それが雇用増加一消費需要増加と結びついてい く。つづいて,好況過程が新投資の活発化によって与えられ,実質賃金率低位. ( 1 7 ) i.旦し,信用の問題は本稿では一貫してとり扱わないことにする。.

(16) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 第5 4 巻 第 4号. ‑‑116ー. の下で,市場利潤率が上昇. L. 792. 投資と市場価格・市場利潤率との間で自己累積. 的な過程が展開されて L、く。そして,更新の減退に対しては,長期の建設期間 による供給の遅れが対応し,建設期間終了後の生産能力拡大に対しては,消費 需要の増大〈雇用量の拡大,賃金率の上昇,資本家の消費の拡大〉が対応し, 好況過程を持続させる。そして,最後に,資本の絶対的過剰生産に衝突するこ とによって,消費需要の増大に限界が与えられ,恐慌が勃発することになって いる。このように要約してみると,富塚 [ 1 0 Jの第 4章の説明は,産業循環過程 の回復過程から好況過程にかけて発生する特殊要因を次々と導入し,最後の特 殊要因である消費需要の増大が,資本の絶対的過剰生産で消滅するところで恐 慌が説かれることになっている。したがって,もし,く更新の集中と減退,建 設期間の存在と終了〉等の産業循環固有の諸要因を捨象し,最後の消費需要の 増大と資本の絶対的過剰生産による消費需要の減少だけに注目するとすれば, 第 8章の恐慌の必然性でのベた論理と一致することになる。そして,第 3章の 課題が,産業循環過程のうちの好況期から恐慌期への移行過程を説明す町ること にあったとすれば,第 3章と第 4主主は一応矛盾しないことになる。 しかしより詳細にみれば,このこつの論理ほ明らかに異なっている。そこ. 1 3 Jで検討した吉塚 [ 1 0 )の第 2 ・3章の議論をもう一度要約してみよ で,拙稿 [ う。まず,均衡蓄積軌道を設定し,次にそこから必然的に講離したものとして 第 l部門の自立的発展を描き,そこでは「生産と消費の矛盾」が激化し,不均 衡が累積しているとした。そして最後に,この不均衡は,消費需要が拡大して いる限り顕在化しないとした上で,投資需要が資本の絶対的過剰生産にし、きつ く形で減退すると,投資需要とワンセットであった消費需要も減退し,不均衡 が顕在化してくるとした。以上の要約と先の第 4章の要約とを比較すれば,両 者の差異は明らかになってくる。第一に,第 2・3章の説明の仕方は,均衡蓄 積軌道から出発していることから明らかなように,置塩産業循環論の方法と共 通し,第 4章の説明の仕方は,更新の集中から出発していることから明らかな ( 1 8 ) 正確には,建設期間+生産期間による供給の遅れとすべきであるが,以下では,. 建設期間だけぐこの遅れを代表させることにする。.

(17) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 産業循環論について. 7 9 S. ‑117ー. ように,井村産業循環論の方法と共通する。この方法論上の差異は,単に「確 定性を充分に与え」るだけのものとはし、えないであろう。第二:に, より重要な 点であるが,第 2 ・3主主では,消費需要の橋大によって顕在化しない不均衡と は,第 I部門の自立的発展= I 生産と消費の矛盾」の激化であるのに対し,第. 4草では,長期の建設期間の終了に伴う生産能力拡大であり,またそれに先立 つ更新投資の減少である。く更新の集中と減退,. 長期の建設期間の存在と終. 了>等の問題は,第 I部門の自立的発展を前提しなくても説きうるものである ことを考慮すれば,両者が別のものであることは明らかである。したがって, 8章も第 4章も, 確かに, 第 2・. 消費需要の増大と資本の絶対的過剰生産によ. る消費需要の減退が最後に設定されているという点では共通しているが,それ と関連する不均衡の内容が全く異なるので,その共通する部分が全体に占める 位置も全く異なったものとならざるをえない。 そして,第 2・3章と第 4章が異なったものであるということから,更に, 次のような結論が導かれるであろう。拙稿 [ 1 3 Jで批判したように,第 I部門の 自立的発展と資本の絶対的過剰生産は両立しえないので,第 2・ 3章では,結局 資本過剰説に近い恐慌論だけが残ることになる。これに対して,第 4章では, 商品過剰説に近い産業循環論が残ることになる。たとえば,第 4章で,資本の 絶対的過剰生産によって雇用量の増加と賃金率の上昇とが減退するとし、う説明 を与えた後. I かくして,すでに投下された諸生産部門の巨大な固定設備が続. 々と建設期聞を経過して現実に生産能力を発揮しはじめ,生産段階を下降して 消費財生産の増大に結実してゆくべきまさにそのときに,消要需要の増加速度. 2 0 3 頁 〉 が鈍化する J (. といっている。このような説明では,建設期間終了後. の生産能力拡大を一時的にひきのばしていた消費需要の増大が,資本の絶対的 過剰生産でストップすることにより,過剰生産が顕在化するかのように説かれ ており,資本過剰説的立場は,商品過剰の発現過程のー撹乱要因として扱われ. ( 1 9 ) 第 2・3主主でも ,fミGFの問題や長期の建設期間の問題は登場してくるが,それ. 章では一般的な形で与え は一般的な形で与えられているにすぎず〈また,第 2 ・s る以外にない),第 4章のように特定の局面を規定するものとして与えられているわ 、 けではな L。.

(18) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 794. 第5 4 巻 第 4号. ‑118ー. ているにすぎないように思われるからである。 このように,富塚産業循環論を商品過剰説的な産業循環論であると理解する と,そこから,消費需要の増大と資本の絶対的過剰生産による消費需要の減退 という項目を否定すれば,井村 ( 2Jや拙稿 ( 1勾にきわめて近い産業循環論であ るということになる。かくして,われわれにとって富塚産業循環論の最後の問 題点は,その点即ち,長期の建設期間終了による生産能力拡大効果を打消すも のとして登場してくる、消費需要の増大を L、かに理解するかという点である。富. 1 0 Jの消費需要の増大の理由には,雇用の拡大,賃金率の上昇,資本家の消 塚( 費の拡大があげられているが,このうち,建設期間の終了と必然的なつながり をもっているのは(建設期間終了後の〉雇用拡大による消費需要の拡大であ , り 更にく雇用拡大による〉賃金率の上昇,. それに伴う消費需要の拡大であ. る。そこで,まず,雇用拡大による消費需要の拡大に焦点をあててみることに しよう。 今,更新の減退が発生したので,新投資が大きく拡大しなければ,需要〉供 給関係が逆転してしまうとしよう。もちろん,好況過程に入っているので,新. F を十分補うだけあるとは限らないのである。 投資は拡大しているが, f>a 社会的総生産物の填補における続完と販売(拡大再生産). =Wlr. r (購買)一│GF+cF+mFG I R部門{ f +mFs. =WIR. r (購買)一 │GF+cF+mFG I I部 門 { l (販売)‑ イ f +mFs. =WII. l<販売)ー. 〈井村 (3)2 8頁より引用〉 第 4図.

(19) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 産業循環論について. 7 9 5 そして,. ‑ . ‑ 1 1 9ー. そこに建設期間の問題が入ってくる。そこで,まず,. 再生産表式分. 3Jの拡大再生産の記号一うを使って,建設期間の問 析の記号(第 4図一井村 ( 題を考えてみよう。第 4図では,各部門のく閤定資本を中心とした〉投資需要. CcF+mFa) に対応して,固定資本の供給 [IF(mFs+mrs+mvs)]が存在す ることになっているので,. それによって,. る。但し,. 設備は稼働しないので,. 建設期間中は,. 固定資本の設置が始まることにな 追加的流動不変資本や追. 加的消費手段に対する需要 ( mra十 mVa)は登場してこない。建設期間が終了 し,設備が稼働し始めると, れに対応して,. 例. ra+nもりoが登場してくるが, 第 4図では, そ. I R (伽 Fs 十 m何 十 m vs) 流動不変資本や消費手段の追加供給 [. 十I I(mFs+mrs+n 仰. s ) ]が存在す?ることになっているので,生産は順調に始. まることになる。ところが,以上のように説明すると,そこには,建設期間の 問題一<投資需要は拡大するが,建設期間があるので,供給は拡大せず,その 結果,建設期間が終了するまで,需要>供給関係は維持される。しかし,建設 期聞が終了すると,供給が拡大し,需要く供給関係が発生する>ーは,登場し てこないことになってしまう。その理由は明らかである。第 4図は,再生産表 式分析上の記号であるから,資本家の剰余価値からの蓄積部分が前提にされて 十制作十m いて,これが一方で販売される (mF vs)ことによって投資資金を s. 形成し,. う 他方でこの投資資金によって購買されるらF+mFa+mra+mva. 際の素材となっている。したがって,需要にいつも供給が対応しているから, 需要ミ供給関係は発生しょうがないのである。需要ミ供給関係を問題にするた めには.,再生産表式分析の前提から離れ,以下のような関係を導入しなければ ならない。 まず,. 需要>供給関係のためには,. 各部門で投資需要一oF+mFa+mra+. 十 悦rs+n mVa ーがあっても, 生産手段や消費手段の追加供給‑.mF 叩 S ーが s. ( 2 0 ) 正確にいえば,生産手段生産部門にせよ消費手段生産部門にせよ,周定設備の建. 設が始まれば,固定設備のほかに,建設のための労働力が必要となり,それは,設 備が稼働し始めた場合に必要となる労働力とは別であるが,労働力が必要となる限 りで、は,消費財への需要をつくりだすことになる。 しかし,以下では,こうした労 働力への需要とそれに伴う消費財への需要につい ては捨象することにする。 l.

(20) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑120ー. 第5 4 巻 第 4号. 7 9 6. 存在しないという関係が成立しなければならな L、。といっても,素材がなけれ ば,そもそも建設期間も考えられな L、から,在庫の存在を前提にして,ひとま ず建設が開始されるとしなければならなし、。次に, 需要く供給関係のために は,遅れていた供給が登場してくればよいが,問題となるのは,それがいつ登 場してくるかである。通常,この供給増加は,建設期間が終了し,設備が稼働 し始める時に発生すると考えている。しかし,設備が稼働し始めて問題となる のは,いわば補填部分である。但し,補填部分も,固定資本部分とそれ以外の. 1 2 Jで 部分にわけて考察しておく必要がある。回定資本部分については,拙稿 [ 強調したように,建設期間終了後新投資に伴う積立てが開始されるが,それに 対応する更新はしばらくの聞は存在しないので,需要く供給関係が発生する。 これに対して,流動不変資本部分や消費手段部分については,補填部分として 供給が増加するのに対応して,需要も増加するので,需要・供給関係は変化し ないことになる。くもちろん,それ以前が,需要>供給関係にあったとすれば, 需要と供給が同じように増加するので,需要>供給関係は全体として緩和され ることになる。),¥ 、ずれにせよ,これは,. いわば補填部分であって,. われわれ. が遅れている供給といったのはあくまでも資本家の蓄積部分でなければならな い。不況期には,資本家の消費のみの単純再生産が支配するので,資本家の蓄 積はゼロであるが,回復過程の進行とともに,稼働率が上昇し,利潤率が回復 してくるので,それに対応して,資本家の蓄積部分も拡大してくる。しかし, 好況過程に突入 Lて,新投資が活発になってくる時に,今,資本家の菩積部分 を源泉とする生産手段や消費手段の追加供給が追いつかないとしているのだか ら ,. 回復過程での蓄積拡大では不十分であったということになる。. したがっ. て,この意味での供給増加は,建設期間中のより一層の稼働率上昇による利潤 増加・蓄積増加によるか,建設期間終了後の新しい利潤獲得・蓄積増加によら ねばならない。. C ¥,、ずれの場合も,新投資は,将来の剰余価値または刺潤の先. 取りであったということになる。〉 以上の点を考慮して,建設期間の問題をもう一度説明すると,次のようにな る。まず第一に,各部門で,固定資本を中心とした投資需要 CcF+mF G)が登.

(21) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 7 9 7 場してくるが,. 産業循環論について. ‑ ,1 2 1ー. 固定資本の追加供給が存在しないので, f>oF を相殺する要. 因が発生する。第二に,供給不足に対して,在庫のとりくずしによって(また は, fマイナス oFの利用によって),. 設備の建設が始まるが,. 建設期聞があ. るため,設備がまだ稼働していない段階がくる。第三に,建設期聞が終了し, 設備を稼働させるために,追加的流動不変資本と(マルペスの場合であれば〉 追加的消費手段を準備しなければならない段階がくる。ここで,各部門ともか かる需要 (mro+仰向〉を増加させるが,それに対する供給 [1R(mF s+mrs+. mvs)+II(mFs+mrs+m v s ) ]が存在しないので,今度は ,1R,1 1 部門を中心 として,需要〉供給関係が発生す町る。第四に,在庫のとりくずしによって,設 備が稼働し始める。そして最後に,供給の増加が始まる。これには,二つのル ートがあり,一つは, (補填部分ではあるが),建設期間終了後開始される〈新 投資部分に対応する〕固定資本の一方的積立てであり,もう一つは,各部門の 資本家の蓄積・それによる(固定資本を含む〉追加的生産手段や追加的消費手 段の供給増大である。こうして,この間続いていた需要>供給関係は逆転する こなる。 こと U このように建設期間の問題が理解できるとすれば,富塚 [ 1 0 Jのように , f>. oFの出現に,建設期間の存在を与え,建設期間の終了に,雇用拡大による消 費需要の増大を与えるのは無理であることがわかってくる。上述の説明では, マルクスにしたがって,資本家の蓄積部分に追加的消費手段(可変資本〉を含 めているが,これを含めないとすれば,要するに,設備が稼働し始めれば,雇 用労働力は拡大し,消費需要も拡大するが,それに対応して,若干の時間的な 遅れを伴いつつも,消費財供給も(補填部分として〉増加するのであるから, 消費財部門で需要>供給関係が生ずる余地 t まないのである。 すると,残された道は,雇用拡大による賃金率の上昇,それに伴う消費需要 の拡大である。もし,賃金率が上昇すれば,一方で,建設期間終了後,生産財 価格の上昇率が鈍化しており,他方で,消費需要が拡大するから,消費財部門 の状況は好転し,それがこの部門の投資需要の拡大をもたらす可能性は残って いる。しかし,たとえ賃金率が上昇するとしても,富壕 ( 1 0 Jが. r 好況過程の.

(22) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑122ー. 7 9 8. 第5 4 巻 第 4号. 経過につれて,雇用量も増大し,それにともなって賃銀率も漸次に上昇じてゆ. 1 9 5 頁〉としているように,漸次的なものであるから,状況を大 くであろう J( きく変化させる要因にはならないように思われる。しかし,この問題は,実現 論的産業循環論を主として検討する本稿では,これ以上とり扱うことができな い問題であり,資本過剰説を検討する際に改めてとりあげることにしよう。. N. 井村産業循環論. I, Iでみた産業循環論とは異なって,不況過程や回復過程のあり方が好況 過程のあり方を特定化し,更には恐慌の発生を規定していくと L、う形で,産業 循環論を構築した代表的な例が井村 (2Jである。とはいえ,井村 [2Jで吋,か かる性格づけは明示的には与えられていない。たとえば. r 不況からの回復の. 要因と回復の過程の分析から出発するということは,決して前周期の特定局面 での特定の条件を前提にし,その結果として回復を説明するものではない。む しろ反対に,そこでは,そのような『循環論法』を排して,全般的に非常に低 い利潤率が支配し,市場拡大も,新投資もみられぬ不況の状況から,好況出現 をうみだしてし、く要因が資本の運動に内在することを明らかにする点に中心が おかれているのであり,この点において,回復の要因と回復過程から分析を始. 1 9 0 頁ー椋点著者一う確かに,更新の めることが望ましいというのである。 J ( 集中等は,前周期の特定局面の特定の条件を前提にしなくても生じうるかもし れない。しかし,井村 (2]でも,不況・回復過程から出発していることに変り はないのであって,決して理想的平均的状態から出発しているのではない。も い理想的平均的状態から出発するのであれば,固定資本の年令構成も理想的 平均的に与えられていることになり,更新の集中が生ずる余地はないはずだか らである。したがって,井村 (2Jの場合も,広い意味では「循環論法j になり うるのであって,その批判に答えるためには,やはり,われわれが拙稿 ( 1 勾I 、や本稿 Eでのべたような位置づけが必要になると思われる。 かくしてわれわれは,産業循環論の方法については,井村 (2Jとほぼ共通し た見解に立っているといってよい。すると次の問題は,その方法論に立脚して.

(23) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 799. ‑123ー. 産業循環論について. 展開される産業循環論の具体的な中味である。しかし,産業循環の中心的な局 面である好況過程から恐慌過程への展開については,すでに拙稿 [ 1 勾でわれわ れ独自の見解を与えたので,. ここでは省略することができる。そこ で本稿で l. は,恐慌発生後の下方への累積的波及過程についてだけとりあげることにしよ う。その分析に入る前にあらかじめ次の点を注意しておこう。恐慌・産業循環 論は,商品過剰説と資本過剰説とに大きくわかれ,商品過剰説は実現理論に立 脚し,資本過剰説は資本の絶対的過剰生産に立脚する。とはし、え,その場合の 実現理論とはあくまでも恐慌勃発の契機・必然性として商品過剰=実現不能を 設定する立場であって,逆にいえば,一度恐慌が勃発した後,実現不能が累積 的に波及していくこと自体は,本来いずれの立場にあっても否定する必要のな いことである。したがって,以下の検討も,井村産業循環論に限定されるべき 内容のものではないということができる。 さて,下方への累積過程を説明する場合,その説明の中心点の一つは,需要 側の運き,とりわり投資需要の累積的変動にあり,そもそもこれを欠いては, 下方であろうと上方であろうと累積過程は説明できなくなるであろう。そし て,いうまでもなくこの説明の一つの代表的な例が,置塩 [4Jの投資関数論で ある。これに対して井村 [2Jの場合は,. (投資需要の累積的変動という点は指. 摘しながらも,そのほかに),下方への累積過程が,. 躍大な余剰生産手段がう. みだされていると L、う基礎の上でのみ生ずるという点が強調されているのが特 徴である。投資関数が需要面からのアプローチであるとすれば,これは供給面 からのアプローチであるかのようにみえる。たとえば. I 下方への逆転につい. てとくに注目しなければならないのは,かかる下方への逆転が,好況における. n部門の不均等的拡大』の急速な進展を通じて魔大な『余剰生産手段』がう F が深化し n みだされるようになったもとで,さらにそれに加えて:, f>a 部門用労働手段の『実現』条件の悪化が生じ部門によって吸引・利用し ていくべき『余剰労働手段』が累積的に増大していっているという関係の基盤. 2 3 6 頁一暢点著者一〉しかし,躍大 の上において生じるということである。 J ( な余剰生産手段の存在が,下方への累積過程にとっ!て,何故いかにして不可欠.

(24) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 800. 第5 4 巻 第 4号. ‑124ー. であるのかは,この説明だけでは不十分であろう。そこで,この点を中心にし てより詳細な検討を加え ることにしよう。 i. ことでは,個別資本や消費者の運動にそくしてこの過程をとらえるために, 拙稿 ( 1 2 )で整理した置塩 (5J の体系を若干修正して使用することにする。(第J. 5図参照。〉但し,置塩 C5)の場合は ,Pω に反応するのは , G (L 1YjY)であ. t 期末. . . t+l期 期 首 … p. t+2 期期首. 期末. 1 : : : yイ 7. ) 三 I附(仇t+1υ)~D(αt+ リ 1 )~p(仇t+υ 1. C(t)/. /. : 立 出 S に 日 : 日 口ノ ノ ノω 山 C 山 ω ( 川 t は 刊 + 川 + 肘 イ 1 J リ 1 山 川 イ ) い ( 刊 Yt. o(t+2). !¥ 引. Y ( t ). ¥ 、 sY(t). Y(t+2). sY(t+1 ) K(t+2). K(t+1)ー 第 5図. った一第 5図でいえば, 稼働率 8にあたるーが,. ここでは Pω に反応するの. は,投資の大きさにしてある。これは, Iでもみたように,恐慌勃発後の状況 を考察する場合には,過剰生産・価格下落に反応する投資関数を設定すべきで あると考えたからである。 また ,oがどのように決定されるかは,. 以下で重要な論点となるので,第 5. 図、には記入されていない。まず,t期末に,何らかの契機でく但し,下方への 累積過程だけを純粋にとらえるために,その契機自体は,実現不能=商品過剰 である必要はないとしておこう),両部門とも投資が低下したとする。そして,. ω ,( 過剰生産〉が生 その他の関係は不変であるとして ,t期末には, Dω<y. じ, P ( めが低下したとする。かかる変化をふまえて , t+1期には L、かなる状 況が発生するのであろうか。第 5図にそって,供給側からみてみよう。. Y(t+1). は,期首に資本家によって決定されるが,これは更に , K( 件。と九十 1) とによ ってきまる。そのうち. K(件。は ,sY ω , によってきまってくるが, もし ,D.

(25) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 8 0 1. ‑125ー. 産業循環論について. <Yの時,価格変化によって Yに等しい D が事後的に実現するとすれば, sY ω , は,過剰生産が発生していても物財的には変化しないことになり ,K (t+l) は,t 期と同じ方向で増加しつづけることになる。もし ,Dく Y の時,過剰在. ω , は減少することになる。その場合には,t+l期の 庫になったとすると ,sY. K(t+1) はその伸び率が鈍化することになる。 しかしいずれの場合も ,K(件。が. (t+l) の大きさを決定す 増加することに変りはないであろう。これに対して , Y るもう一つの要素であるふ削)はどのように決まるのであろうか。 この点につ いて井村 (2Jは次のように主張している。. r 競争市場では,市場条件の悪化に. よりかなり低い市場利潤率が支配しても,個別資本は自らすすんで固定設備の 稼働率の低下=生産規模の縮小を断行しようとすることは決してない。それば かりか,平均以上の優れた生産諸条件をもっ資本は,かえって間定設備の利用 度を正常度以上に高め,生産をぎりぎりにまで拡大させ,それら生産物を若干 の安売りによって確実に販売し,低い利潤率を生産物量の増大で補い,利潤量少 の確保に努めるであろう。 J C176~177頁ー傍点著者一〉この主張は,. r 需要が. 供給をかなり下回り,市場利潤率が下落する状態」一般についていっているの であって,必ずしも恐慌勃発後の状況を指していっているのではないが,少なく とも,資本家が稼働率をある程度維持しようとすることは認めてもよいであろ う。というのは,一般的にい、って,稼働率を低下させれば,固定費部分がある 以上,生産物 1単位当りのコストは上昇してくるのであり,価格が低下してい くこの時点にあっては,単位当りコストの上昇は,利潤に対する重大な脅威と なってくるからである。したがって資本家は,d (削)与 d (ぬという行動をとらざ. (件。の増加率がたとえ鈍化したとしても, るをえないでるろう。かくしで,K Y (t+1) は,d(t+1)与3 ω である以上は,依然として増加しつづけるということに なる。そして,この生産・供給の動向は,生産財部門であろうと消費財部門で あろうと等しくあてはまることになる。 次に需要面をみてみよう。第 5図に示されているように,. このような生産. ・供給の決定は,他方で,その期間における労働力に対する需要を決定し,そ れは消費財に対する需要の大きさを決定する。(置塩 [ 5J では,これは,C(t+l).

(26) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑126ー. 第5 4 巻 第 4号. 802. =ω ・ n . Y (t+l) として与えられる。拙稿 [ 1 勾参照。〉したが、って,消費財に対す. る需要も,増加率は鈍化するが,増加しつづけるということになる。これに対 期末の過剰生産の発生に反応して,激減することに して,投資需要の方は ,t なる。 以上の需要・供給の分析から次のことが確認できる。生産・供給の決定は, どの部門でも等しくあてはまると考えているから, 消費財部門でも , Y (件. 1)>. Y ω としづ関係が成立する。他方,消費財部門への需要も, C (件I)>C(のとな るから,結局消費財部門では需要供給関係が大きく変化しないことになる。と ころが,生産財部門のうち労働手段生産部門では異なった状況が発生する。こ の部門の供給も,. 同じように, 増加率は鈍化するが, 増加しつづける。. しか. し,この部門への需要は ,Pω に反応して激減することになるから,この部門 では需要供給関係が一段と悪化する。この悪化は,先の供給態度を前提とする 限り,累積的に進行し,労働手段部門の生産縮小を強制していくことになる。 そして,その結果労働力に対する需要それ故消費財に対する需要も減少し,そ れが消費財部門にも影響を与えるという形で波及していくことになる。但し,. 井村 (2)によれば,この波及は,直接的に稼働率や生産水準を低下させるとい う形で生ずるのではなく. r 投下固定資本の基礎上で生産縮小が余儀なくされ. る過程は複雑ではあるが,ともあれ,生産諸条件の最劣等な資本,なかでも相 対的な小資本より,生産の縮小・停止,さらには破誠が余儀なくされていくの であり,かかる結果を通じてのみ,全体としての投資・生産の縮小が行なわれ. 17 8 頁ー傍点著者一〉ということになる。 ていくのである。 J r では,この波及過程はどこまで進行するのであろうか。いうまでもなく,新 投資がゼロになるまで進行しうるのであり,新投資がゼロとなり,更に更新投 資もゼロになった時が瞬間的には底となるであろう。更新投資の方はいつまで もひきのばしておくわけにはいかないから,全体としては,労働手段需要ゼロ がいつまでもつづくわけではなく,新投資だけがゼロの状態で,停滞・不況期 ( 2 1 ) 置塩体系では,生産財部門のうち原材料生産部門は対象のなかに入っ てこないが, 1. この部門も消費財部門と同じように扱うことができるであろう。.

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