大学学部授業「総合演習」における大学生の授業評 価についての授業実践II −情報機器を用いてポー トフォリオ的評価を構成して−
著者 川崎 謙一郎, 神保 敏弥, 南 春男, 重松 敬一, 日
野 圭子
雑誌名 教育実践総合センター研究紀要
巻 13
ページ 117‑125
発行年 2004‑03‑31
その他のタイトル Using self‑assessment in the teacher practice of Comprehensive Learning course II −A self‑assessment constructed with a portfolio using IT apparatus−
URL http://hdl.handle.net/10105/66
1.はじめに
1.1.ポートフォリオ
ポートフォリオとは、もともと「折りたたみカバン」
を意味している。折りたたみカバンから発展して、
「書類入れ」、「書類バサミ」などと日本語に訳されて もいる。ポートフォリオという言葉は、ポートフォリ オ分析、ポートフォリオ報告などというように、もと もとは企業での業績評価に使われていた。最近は、
「必要不可欠な情報をコンパクトに集約したもの」と いった、情報を取りまとめ保管している場所の意味で 使われているようである。ポートフォリオという言葉 は、教育界ではポートフォリオ的評価、ポートフォリ オ学習、と言った具合に少し広い意味で使われて来て いるようなので、本授業で受講生に提出してもらうポ
ートフォリオを、本報告では作品ポートフォリオと呼 ぶことにする(後述)。ポートフォリオについての解 説は、いろいろな文献であたることができる(1)、
2)などを参照)。
1.2.本授業の狙い
算数・数学の学校教育における教育指導内容の中か ら、算数・数学の指導において生徒が「楽しさ」を感 じられ得る教材を厳選し、生徒が意欲を持って学習し うる内容を本授業の「テーマ」と位置づけ、それを実 際の学校教育現場で実践することを最終目標として授 業構成を考えることを本授業の授業内容とした。本授 業の「テーマ」の選定は、算数・数学に関するもので あり、さらに次の総合演習の主旨に沿うものとした。
総合演習は「人類に共通する課題又は、我が国社会全
−情報機器を用いてポートフォリオ的評価を構成して−
川崎謙一郎、神保敏弥、南 春男、重松敬一、日野圭子
(奈良教育大学数学教育講座)
Using self-assessment in the teacher practice of Comprehensive Learning course II
−A self-assessment constructed with a portfolio using IT apparatus−
Ken-ichiroh KAWASAKI・Toshiya JIMBO・Haruo MINAMI・Keiichi SHIGEMATSU・Keiko HINO (Department of Mathematics Education、 Nara University of Education)
要旨:平成14年度から小学校・中学校で「総合的な学習の時間」が義務化され、学習領域の中に導入された。平成
15年度から高等学校においてもこの「総合的な学習の時間」は制度化された。「総合的な学習の時間」の授業評価に ついては、議論がなされ難しい課題の一つであると言われている。平成12年度の奈良教育大学(以下「本学」とす る)学校教育教員養成課程のデベート授業科目「基礎ゼミナール英」でポートフォリオによる授業評価が行われた(3)を参照)。平成13年度の本学授業科目「総合演習〜数楽探検〜」(以下「本授業」とする)では、参考文献 1)
に則って、算数・数学を題材としたこの総合演習にポートフォリオ的評価を導入した授業実践を試みた(4)を参 照)。平成15年度以下「本年度」とする)の本授業では、平成13年度に試行した実践をより発展させ、ポートフォリ オ的評価にホームページやe-mail等の情報機器を用いた要素を加え授業運営を図った。本報告は、その授業実践の報 告である。本実践研究は、平成12年度、平成13年度からの連続性という観点からも重要な意味合いを持つと考える。
また、本授業は平成14年度から引き続き、地域の学校教育現場と連携をして実践を行っている。地域連携、地域協 力の面からも本授業の意義は大きい。受講生は、短い時間で授業実践するために、長い時間でいろいろなアイデア を出し合い、そのなかからより良い方法を授業実践に向けて取捨選択して取り組んでいることが、作品ポートフォ リオから理解できた。
Key Words:ポートフォリオ的評価 portfolio assessment、自己評価 self assessment、構成主義 constructionism、
反省的思考 reflective thinking、教員養成 pre-service education.
体に関わる課題(国際理解、社会福祉、環境問題、家 族関係等)のうち一つ以上のものに関する分析及び検 討並びにその課題について幼児、児童又は生徒を指導 するための方法及び技術を含むものとする」。数学そ のものは世界共通の国際言語であり、算数・数学その ものを取り扱う時、既に総合演習の主旨に沿ったもの と考えられるが、最初の段階で、学校教育の算数・数 学科の内容から「身近な」算数・数学を見つけだすこ とから始めるよう受講生には指導した。そして、「与 えられるのではなく、受講生の皆さんが受講生自身の 手で見つけ出し考えて行く事」が本授業の狙いの基本 姿勢であるとした。
本授業では一つのやり方として「教科書作り」を通 して、テーマを設定して行くこととした。それととも に、「インターネット」や「算数・数学の本」等からも、
自由に受講生自身で探し出して見つけることとした。
受講生自身で考え出した独自のテーマは独自のテーマ といっても、もしかしたらそれはどこかにあるかもし れないが、それは全く問題ではなく、自分達の手で考 え作り上げて行くこと、目標を達成し高めてゆくこと が大切であるとした。どうしても見つからない場合は、
授業担当教員や教員代表者そしてティーチングアシス タントに相談しアドバイスを受けるように話し、指導 してゆくこととした。与えられるのではなく、「受講 生の皆さんが皆さん自信の手で見つけ出し考えて行く 事」が本授業の本来の狙いであることを強調した。
また、気づいたら常にメモを取ることとし、それを txt fileで作成して各受講生のフォルダーに保存するな ど、OA機器操作の習熟も狙いとした。
2. 「総合演習」授業の概要
2.1.本授業の概要
平成13年度の本授業で行った実践の反省点を踏ま え、ホームページやe-mail等のOA機器を通して、ポ ートフォリオ的評価を本授業に導入し授業実践を図っ た。本報告は、その授業実践の詳細を報告するもので ある。平成3年度の実践を、OA機器を活用すること を積極的に取り入れ発展させたものである。
2.2.本授業におけるポートフォリオ的評価の構成
図1は本授業におけるポートフォリオ的評価の概念 図である。これは、参考文献4)に掲げたものに手を 加えたものである。この概念図に沿って、平成13年度本授業で行ったポ ートフォリオ的評価を、本年度における本授業では OA機器を使って構成し実践して行くこととした。
実践の基本は次の4つである。
1.短期的な自己評価、短期的な予測、
2.自己評価の公開、情報交換、
3.情報の蓄積、
4.長期的な自己評価、長期的な予測。
実践の基本のそれぞれに、次の4つを対応させ実践 を試みるものとする。
1.自己評価チェックシート、
2.公開ディスプレイ、及び公開ディスプレイシート、
3.学習資料ボックス、
(1)学習ノート
(2)記録資料入れ
4.最終評価チェックシート。
これらは、参考文献[1, p.14]にある学習の活動 記録の3点セットを大学生用に再編し組み直したもの である。これらは、平成13年度の基本と実践と同じで あるが、公開ディスプレイシートについてはホームペ ージを活用し、学習資料ボックスは各自が持つアカウ ントのZドライブにホルダーとして作成したディレク トリとし、OA機器を活用することとした。これが、
本年度の本授業の平成13年度から発展させたところで ある。公開ディスプレイシート(図2を参照)はホー ムページによって学内外に公開し、自己評価チェック シート(図3を参照)は、受講生のみが閲覧できるよ うにした。
総合学習のカリキュラム類型として、1プロジェク ト学習、2パフォーマンス学習、3テーマ学習、4奉
来年度の授業へ伝える 反省し次へつなげる。
公開 短い自己評価
短い自己評価、予測
短い自己評価、予測
短い自己評価、予測
短い予測
ポートフォリオ的評価の観念図 ポートフォリオ的評価の具体図 公開
公開
公開
公開 5
2
1 4
3
長 期 的 な 自 己 評 価
作品ポートフォリオ
最終自己評価チェックシート
自己評価の日
自己評価の日
自己評価の日
自己評価の日
自己評価の日 公開ディスプレイ 自己評価チェックシート
公開ディスプレイ 自己評価チェックシート
公開ディスプレイ 自己評価チェックシート
公開ディスプレイ 自己評価チェックシート 5
2
1 4
3
最 終 評 価 チ ェ ッ ク シ ー ト
図1 本授業におけるポートフォリオ的評価の構成
仕学習、等があげられ類別されている(参考文献
[2, p.196]を参照)。本授業は、プロジェクト学習 に重きをおいてある。一方でパフォーマンス学習の要 素をはじめ、他の類別の要素が少なからず含まれてい ることも附記したい。
3. 「総合演習」授業の実際
3.1.授業計画
各学年には班分けが行われ、基本的には受講生自身 が自らの手で計画立案し行動する。さらに、5人の担 当教官がそれぞれアドバイスや支援をする。自己評価 をする日を設け、受講生各自が自己の目標の達成度を 評価することとした。
実際の授業は次の日程で行う予定とした。
1.4/17 オリエンテーション、
2.4/24 ポートフォリオの説明(自己評価の日No.1)、 3.5/1 テーマ調査、教科書等の作成、
4.5/8 テーマ設定(自己評価の日No.2)、 5.5/15 各ティームで、テーマ内容検討、教科書作
成及びその内容の検討、
6.5/22 続テーマ設定、講話「総合演習の素案」、
教科書作り締め切り(自己評価の日No.3)、 7.5/29 続テーマ設定、講話「不動点の話」、 8.6/5 テーマ中間発表(自己評価の日No.4)、 9.6/12 テーマの具体的な構成、
10.6/19 テーマ発表予行練習(自己評価の日No.5)、
11.6/26 テーマ発表予行練習(自己評価の日No.5)、 12.7/3 各ティームでテーマ内容の最終チェック、
13.7/10 テーマの「実践」(自己評価の日No.6)、 14.7/17 テーマの「実践」(自己評価の日No.6)、 15.7/31 反省会。
表2でのそれぞれの自己評価の日に、公開チェック シート、自己評価チェックシートを作成することとす る。 最後の反省会は、最終自己評価チェックシート の提出と、作品ポートフォリオとしてポートフォリオ のオブジュクト化をはかり、それを提出することによ って代用する。ここでのポートフォリオのオブジュク ト化とは、作品ポートフォリオを作成することとする。
すなわち、テーマの実践に向けて集約した情報を、講 演のプログラムやレストランのメニューのようにB5 の画用紙6ページほどで見出し書きを作成することで ある。そして反省会日はその提出期限とする。受講生 のOA機器操作の習熟度から判断して、デジタルポー トフォリオの作成はここでは採用しないこととした。
3.2.授業準備
本授業を遂行するために、次の教材を作成し受講生 に配布した。
1ポートフォリオ作成の手引き、
2公開チェックシート及びその解説、
3自己評価チェックシート及びその解説、
4最終評価チェックシート及びその解説。
これらは、平成13年度の授業実践に準じている
(4)を参照)。さらに公開チェックシート、自己評価 チェックシート、最終評価チェックシートの原本を教 員ホームページに掲載した。掲載URLは次の通りで ある:
http://mailsrv.nara-edu.ac.jp/˜kawaken/03sougou.html
3.3.授業内容の詳細
授業対象は学校教育教員養成課程 理数・生活科学 コース二回生男子5名、女子3名、総合教育課程科学 情報教育コース情報数理専修二回生男子2名の計10名 であった。以下は、本年度の本授業内容の詳細である。
授業実践経過
1.4/17(木)「オリエンテーション」(1)5名
の担当教官の挨拶を行った。(2)授業担当者の一人 が趣旨、説明を行った(「総合的学習の時間」と本授 業について)。(3)以下の通り班分けを行った。ティ ームの名称は、教科書を作成する学年で区別すること とした。教科書作り小学3・4年生ティームを理数・生活科学コース女子学生3名、教科書作り小学5・6 年生ティームを理数・生活科学コース男子学生3名、
教科書作り中学1・2年生ティームを科学情報コース 情報数理専修男子学生2名、教科書作り中学3年生テ ィームを理数・生活科学コース男子学生2名とし、以 表2 平成15年度半期授業予定と学習段階。
回 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
月日 4/17 4/24 5/1 5/8 5/15 5/22 5/29 6/5 6/12 6/19 6/26 7/3 7/10 7/17 7/31
自己評価
○No.1
○No.2
○No.3
○No.4
○No.5
○No.5
○No.6
○No.6
内容 オリエンテーション ポートフォリオの説明 テーマ調査、教科書の検討
テーマ設定 テーマ・教科書の作成
続テーマ設定 続テーマ設定 テーマ中間発表 テーマの具体的な構成
テーマ発表予行練習 テーマ発表予行練習 テーマ検討、最終チェック
テーマの実践 テーマの実践
反省会
学習段階 出会う
知る きずく 見とおす
考える 考える 広げる 決める 深める 表す 表す まとめる
伝える 伝える つなげる
上計10名を4班に分けた。ティーチングアシスタント 及び教員代表者は全体の受講生にたいして相談役を行 うこととした。(4)平成15年度の本授業の計画・日 程について連絡した。(5)4月18日までに連絡網の 作成し、e-mailにて教員代表者まで提出する。(6)
各人週予定授業計画を4月18日(金)を締め切りとし て e-mailにて教員代表者まで提出する旨、伝えた。更 に以下の件について注意を与えた。(i)Z−ドライブ にフォルダー「総合演習学習資料ボックス」を作成す る。(ii)作成するファイルはできるだけtxt fileで作成 し、フォルダー「総合演習学習資料ボックス」に保存 する。(iii)コマメに情報収集し、情報の蓄積を行う。
2.4月24日(木)
「ポートフォリオの説明」(1)班分けの写真を撮影した。(2)昨年の行われた総合 演習とポートフォリオを紹介した。授業担当者の一人 がポートフォリオの解説を行った。講話内容は「ポー トフォリオの特徴」((i)集める。そして選び出して 編集してゆく。(ii)学習過程を振り返る。(iii)メタ 認知)であった。更に本学大学院生によるデジタルポ ートフォリオの紹介があった。(3)今年度の総合演 習と実際のポートフォリオによる評価について以下の 内容を説明した。
(i)大きな目標は「小学4年生の前で、各班単位 で考えたテーマを実践する」ことである。(ii)7月 上旬に受け入れ校(飛鳥小学校)にて実践を行う予定 である(4月24日時点では詳細を交渉中であった)。
(iii)各ティームが自由に「テーマ」を設定して、楽 しい「授業」を構成して行くことを狙いとしている。
(iv)短いスパンの自己評価(自己評価チェックシー ト)、長いスパンの自己評価(最終自己評価チェック シート)を本授業でおこなう。(v)教員ホームペー ジの原本からtxt fileにコピーをして各自己評価のシー トを作成する。(vi)ティームの活動経過及び達成度 を教員ホームページにて公開する。教員ホームページ の原本からtxt fileでコピーして公開ディスプレイシー トを作成する。(vii)各受講生に与えられているZ−
ドライブに、「総合演習学習資料BOX」という名前の フォルダーを作成しそこに常に情報を収集する。(viii)
他のワープロソフトではなく、できるだけ容量が少な くて済むtxt fileで作成する。(ix)パックアップとい う概念(ファイルの保険と考えられる概念)を常に念 頭に置き、フロッピィーデスクやフォルダー「総合演 習学習資料BOX」に常に保存する。
(4)指導要領と教科書作成、昨年の教科書につい て以下の通り説明した。教科書を作成しながら「テー マ」を考える。昨年の教科書の内容を改善し、膨らま せる形で作成する。昨年の教科書は大切に各班で管理 する。作成した教科書を提出すると同時に昨年の教科 書も返却する。解答も必ず作成する。解答を作成しな がら、解く生徒の身になって問題を作成する。教科書
作りの締め切りは5月22日(木)とする。完成した教 科書は、本学課外活動団体である「数学・情報研究会」
に寄贈する形で「夏の算数・数学教室」で利用しても らう。
(5)班単位で自由に議論しテーマ設定及び調査す ることを指導した。
(6)本日は自己評価(No.1)を行う日であり、
自己評価チェックシート(個人で作成)と公開ディス プレイシート(ティームで作成)を4月25日(金)を 締め切りとしてe-mailにてティーチングアシスタント まで提出する旨、指導した。
3.5月1日(木)
「テーマ調査、教科書等の作成」本日は班単位で自由に議論し、テーマ設定及び調査を する日とした。
4.5月8日(木)「テーマ設定」決定したテーマ
をいかに演じるか、昨年の例(テーマ名「ドレッシン グ」)を検証するためにビデオ鑑賞(時間は60分)を 行った。残った時間は、各班にて、問題点の発表・テ ーマ設定、教科書作成及びその内容の検討をすること に当てた。本日は自己評価(No.2)を行う日であり、自己評価チェックシート(個人で作成)と公開ディス プレイシート(ティームで作成)をtxt fileで作成した ら5月9日(金)を締め切りとしてe-mailにてティー チングアシスタントまで提出する旨、指導した。
5.5月15日(木)
「テーマ内容検討、教科書作成」本日は班単位で自由に議論し、各班で、テーマ内容検 討、教科書の作成及びその内容の検討をする日とした。
6.5月22日(木)「続テーマ設定」授業担当者の
一人による講話を行った。講話題目「総合演習の素案」((i)建物や木の高さを測る。(ii)地図を描こう。(iii)
歩数と自転車の車輪の回転数との関係。など)。残っ た時間は、各班にて、テーマ設定に当てた。本日は自 己評価(No.3)を行う日であり、自己評価チェック シート(個人で作成)と公開ディスプレイシート(テ ィームで作成)をtxt fileで作成したら5月23日(金)
を締め切りとしてe-mailにてティーチングアシスタン トまで提出する旨、指導した。本日が教科書作りの締 め切り日であることも知らせた。
7.5/29(木)
「続テーマ設定」授業担当者の一人 による講話を行った。講話題目「不動点の話し」。テ ーマを見つける1つのヒントを提示するために講話を 行った。残った時間は、各班にてテーマ設定に当てた。8.6/5(木)
「テーマ中間発表」テーマの中間発 表会を行った。各ティーム各5分ぐらいで、今のテー マ設定の進行状況を授業参加者に報告した。順番は(1)教科書作り小学3・4年生ティーム、(2)教科 書作り小学5・6年生ティーム、(3)教科書作り中 学1・2年生ティーム、(4)教科書作り中学3年生 ティーム、としていたが、実際にはその時点で発表が できる班から報告することになった。テーマ設定で迷
った場合、担当教員に相談することとしたが、「テー マ設定で大切なことは、できるだけ受講生自身が考え ることであり、そしてまず教える自分たちが『楽しい こと』が重要である」ことを強調した。残った時間を、
各班にてテーマ設定やそのテーマを膨らますことに当 てた。本日は自己評価(No.4)を行う日であり、自 己評価チェックシート(個人で作成)と公開ディスプ レイシート(ティームで作成)をtxt fileで作成したら 6月6日(金)5:00pmを締め切りとしてe-mailにて ティーチングアシスタントまで提出する旨、指導した。
以下の順番で6/19(木)、6/26(木)に「テーマ 発表予行練習」を行う予定であることを連絡した。各 班の発表の持ち時間はおよそ20分間であり、予行練習 の際に「簡略指導案」を提出するように伝えた。(1)
教科書作り小学3・4年生ティーム:6月19日(木)、
(2)教科書作り小学5・6年生ティーム:6月19日
(木)、(3)教科書作り中学1・2年生ティーム:6 月26日(木)、(4)教科書作り中学3年生ティーム:
6月26日(木)。
9.
6/12(木)「テーマの報告会」先週に引き続き、各受講生全員が各班の持ち時間の中で一言づつ発表し た。各ティーム約5分間にて、今のテーマ設定の進行 状況を参加者に報告する。残った時間は、各班にてテ ーマ内容の改善に当てた。テーマを一つに決定し簡単 な指導案をこの授業の終わりにティーチングアシスタ ントに提出するよう指導した。後日受け入れ校に持っ て行き、受け入れ校の意見を取り入れる旨、伝えた。
次週、テーマ発表の予行練習ができるティームを2テ ィーム決めた。残りのティームは再来週に発表の予行 練習をする旨、連絡した。受け入れ校の都合により
「総合的学習の時間」の見学は中止となったことを、
この日の時点で伝えた。
10.6月19日(木)
「テーマ発表予行練習」テーマ 発表の予行練習を次の班が行った。(1)教科書作り 小学3・4年生ティーム:テーマ名「濃さと色と味」(2)教科書作り中学3年生ティーム:テーマ名「パ ズっとく?」この日は6月26日と合わせて自己評価
(No.5)を行う日であることを説明した。自己評価チ ェックシート(個人で作成)と公開ディスプレイシー ト(ティームで作成)をtxt fileで作成したら6月27日
(金)5:00pmを締め切りとしてe-mailにてティーチ ングアシスタントまで提出する旨、指導した。
11.6月26日(木)
「テーマ発表予行練習」テーマ 発表の予行練習を次の班が行った。(3)教科書作り 小学5・6年生ティーム:テーマ名「角度と対称」(4)教科書作り中学1・2年生ティーム:テーマ名
「単純思考的未来予測?」この日は6月19日と合わせ て自己評価(No.5)を行う日であることを説明した。
自己評価チェックシート(個人で作成)と公開ディス プレイシート(ティームで作成)をtxt fileで作成した
ら6月27日(金)5:00pmを締め切りとしてe-mail にてティーチングアシスタントまで提出する旨、指導 した。
12.7月3日(木)
「テーマ最終チェック」各ティ ームで、テーマ内容を検討し最終チェックをする日と した。受け入れ校の意見を踏まえた最終指導案を提出 するよう指導した。受け入れ校からの要請の重点は「授業内容は、学校教育の内容への『導入』にとどめ、
算数教育の内容そのものにはふれない」ことであった。
予行練習で教示された本授業参加者の意見を踏まえ て、6月12日(木)に作成した指導案の内容を更に深 めて最終的な指導案にして提出するよう伝えた。最終 指導案をtxt fileで作成したら7月4日(金)5:
00pmを締め切りとしてe-mailにてティーチングアシ スタントまで提出する旨、指導した。
13.7月10日(木)「テーマ発表『実践』」各班で
考えたテーマを実際の学校教育現場で、各班が『実践』を行った。その実践の内容や反省を踏まえ、作品ポー トフォリオと最終自己評価チェクシートを作成するこ ととした。作品ポートフォリオ、最終の自己評価
(No.6)をtxt fileで作成したら7月末日5:00pmを 締め切りとしてe-mailにてティーチングアシスタント まで提出する旨、指導した。作成に関して次の注意を 与えた。(1)作品ポートフォリオの作成にあたって、
作品にする期間は「本授業の開始から受け入れ校での 実践終了まで」とする。(2)上記の期間において、
ティームでどれくらい話し合いを持って作りあげた か、捨て去らねばならなかったアイデア、など、作品 ポートフォリオの狙いは、実践を含め実践まで積み上 げた記録や自己評価が総合的に集約された情報源とす ることにある。(3)取捨選択して内容を厳選してま とめる。成功例だけでなく失敗も積極的に載せる。(4)
ワープロ打ち、切り張りが基本である。
14.7月17日(木)「テーマ発表『実践』」この日
の「実践」は、受け入れ校と相談の上7月10日(木)に同時に行うことになった。
15.7月31日(木)
「反省会」作品ポートフォリオ、最終チェックシート提出することで反省会に代えた。
3.4.作品ポートフォリオと各班の感想
作品ポートフォリオについての内容は次の通りである。
平成13年度本授業と同様に、ワープロ原稿で作成し、
あとで付け足しが可能なように「張り付け」を基本と した。
第1枚目。表紙である;①学習のテーマ/サブテー マ、②ポートフォリオ制作者の名前、③一緒に取り組 んだグループの学年、クラス、氏名、④学習期間、学 習活動の回数、⑤ポートフォリオの制作完成年月日、
⑥自己評価についての簡単な記述、等が網羅される。
2枚目以降は次の内容とした。
第2枚目:この学習のテーマの概要、目的、
第3枚目:主な計画と経過、
第4枚目:主な結果と成果。学習活動の成果と検討、
第5枚目:発展。反省と感想。
これらはあくまで一例であり、実際には受講生の自 由な発想を優先させるものとした。
すべてのティームの作品ポートフォリオに達成感を 感じている記述があった。以下に、作品ポートフォリ オに掲載された反省と感想を列挙する。本研究報告の 統一性を保つため、実際の作品ポートフォリオとは数 字等が若干異っている。
1.教科書作り小学3・4年生ティーム(テーマ名
「濃さと色と味」)の感想:
Aさん:数楽探検で授業ができたことは、私にとっ てとても楽しかったし、勉強になりました。小学校四 年生を相手に教えるということの難しさも学びまし た。最初の実験の計画から、サンプルを作る、三択に する、計量器具を使わないなど、分かり易く伝え易く することを求めて、実験方法はどんどん変わりました。
その際三人で意見を出し合えたのは本当によかったと 思います。
Bさん:小学生を相手に数学をもとにどのように授 業を展開すればよいか、全く考えもつかない状態でス タートした数楽探検でした。同じティームの二人と共 に悩み考えた結果が、この授業を作りあげたのだと思 います。数学にはいろいろな可能性があるとこの授業 を通して考えさせられました。私たちの授業をきっか けに、少しでも数学に興味を持ってくれた子がいれば 幸いです。
Cさん:授業をするのに児童の行動を予測すること が一番苦労しました。自分たちが4年生のときどんな 行動をとったのかすっかり忘れてしまっていて、年を 感じました。みんなが思ったよりも積極的に声をかけ てくれて、とてもやりやすかったです。4年2組のみ なさん、先生、AさんBさん本当にありがとうござい ました!!感謝です!!
2.教科書作り小学5・6年生ティーム(テーマ名
「角度と対称」)の感想:
●教材を用意しすぎたために、配布するのに時間がか かってしまった。●説明に時間がかかってしまった。
本番で考えながら話していたので、ある程度台本を用 意しておけばよかったかも。●本論Ⅰの「図形の折っ て重なる線を見つける」というところでは、思ってい た以上に子どもが早く問題を解いていた。そのため、
子どもが手を空けている時間があった。●答え合わせ のとき、答えを間違っている子どもに対して上手に対 応できなかった。あせってしまい、答えを言いかけて しまった。●答え合わせのときに子どもに問い返すよ うにした。模擬授業のときにいただいた「子どもへの 投げ返し」というアドバイスを活かせたと思う。●本
論Ⅱの「折り紙を半分に折って切り取ることで対称の 図形を作る」というところでは、切る方向を間違った ため、対称の図形ができず、二つにばらけてしまった 子がいた。どうして失敗したのかを考える時間があれ ばよかった。●最後に自由に形を作ってもらうところ では、みんな楽しそうにしていたので授業の成果が感 じられたようで嬉しかった。●全体で時間が10分ほど 延びてしまい、担任の先生にも迷惑をかけてしまった。
想像以上にどたばたしてしまったので、内容をもっと 凝縮すればよかった。
授業の中で学んだこと
(1)授業を想定して準備はしっかりすべし。
(2)子どもの反応は十人十色。いろんな反応を想定 しておくべし。
(3)子どもの反応を見ながら臨機応変に進めるべし。
(4)子どもが考える時間を取るべし。
(5)楽しく、しっかりと学べる授業を目指すべし。
3.教科書作り中学1・2年生ティーム(テーマ名
「単純思考的未来予測?」)の感想:
A君:この授業は最初すごく大変そうだという印象 しかありませんでした。実のところ、小学校で授業を するなんて一生ないだろうと考えていたくらいです。
また飛鳥小学校に授業に行く少し前までかなりゆっく りしていたためギリギリになって焦ってしまったのを 覚えています。追い詰められて初めて真剣に取り組ん でいました。でも授業をしてみると今までに無い新鮮 な体験をすることができて本当によかったと思いま す。今まで教師という仕事について真剣に考えたこと がなかったけれど、今回の授業を通してもっと真剣に 考えたいです。
B君:教科書の作成から始まり、実際に授業を担当 することで終わりました。全体を通して見通しは甘く、
目標を高く設定しすぎたこともあり、常に期限のぎり ぎりまで焦り、駆け回ることとなったのですが、終わ ってみれば、それもまたそれ、なかなか何とかなるも のだとも思いました。小学校での実習では、打ち合わ せもあまり煮詰めることが出来ておらず、やはり直前 になって慌てたこともあり、前もって用意していた台 本どおりに事を運べずに、予定していた進行の流れさ えも崩れてしまうことになりました。結果、授業内容 自体は混迷を極めることと相成りましたが次に行う場 合に向けての数多くの課題、改善点を得ることが出来 たので結果は善しと致しましょう。相手が未成年ゆえ に、侮ることの適わぬ職業だと感じました。
4.教科書作り中学3年生ティーム(テーマ名「パ ズっとく?」)の感想:
★授業をし終えての結果発表☆○明るく楽しく元気 よく授業ができた!○児童たちと仲良く、笑顔で接す ることができた!○児童たちが楽しくパズルに取り組 んでくれた♪○準備はだいたい完璧だった。○児童た
ちが元気良すぎた!若い!○大勢の児童を相手に授業 をするのはとても大変だった!○児童たちは一度では なかなか言うことを聞かない・・
★授業からゲッツ!したこと☆○笑顔で接すれば、
たいていの児童は笑顔で反応してくれる♪○上から見 下ろしてではなく、生徒と同じ目線にまで膝を落とし て話したほうが、児童の反応は良いと思う。○先生に 聞きたくても聞けない児童がいるので、全体に目を向 ける!○一度ではなかなか言うことを聞かないが、注 意すれば言うことをちゃんと聞いてくれる。<<自分た ち的には、今回の授業にはとても満足しています☆>>
★クラスの担任の先生からのアドバイス☆
○紹介では口を大きく開いて発言をハツキリと!わか るようにゆっくり!○先生が発言するときには必ず!
おへそとひざを先生の方に向けさせる!○元気はいい が、大きすぎないように注意!○必ず!この時間何を するか、目当ても含めて黒板にタイトルを書く!○作 業させた時、班ごとに差が生じるので早く出来た班は 何をするのかを前もって課題を示しておく!○課題が できたり、質問があれば児童が主張するのは当然!だ から最初に約束を決めておくのもいいかも(例:良い 姿勢で黙って手をあげた子のところに行ってあげるか らね!など・・)。○その時間、その時間に合ったル ールを作ることも必要!
児童・生徒に算数・数学を教えるには!
(1)児童・生徒との信頼関係!
(2)興味をひく授業をする!
(3)先生も元気よく、楽しく!
(4)問題を児童・生徒と一緒に解く!
(5)楽しくだけではなく、けじめも持って!
(6)全員に目を向ける!
我思うに、児童・生徒と先生が別々なら講義なの だ!児童・生徒と先生が一緒に学んで授業なのだ!先 生にとっても授業は勉強なのだ!先生に必要なもの は!ガッツ!!!
4.本授業実践の反省
4.1.本授業実践のメリット・デメリット
考えられるメリット・デメリット又は注意点につい て、若干の感想を踏まえながら以下の通り記載する。
平成13年度の実践との比較も加えながら、本年度本授 業実践を振り返る。
メリット.ホームページで公開することで、ネットワ
ークに接続されたパーソナルコンピューターがあれ ば、時間や場所を問わずいつでも本授業の情報が入手 できる。授業時間外の活動を重視した本授業実践では 非常に有効であった。また事前にホームページで授業 内容を掲載しておいたので、本授業の内容の解説を順 序立てて行え、その内容を説明しやすかった。受講生も本授業の内容の説明をホームページを見ながら聞い てくれていたので、平成13年度の本授業実践と比較し て、ポートフォリオ的評価の概念を受講生はかなりス ムーズに理解してくれていたように感じた。日頃から e-mailでのやりとりを多くこなしているらしく、e- mailを使った本授業の学習に受講生は意欲を持って臨 んでいるように見受けられた。複雑なワープロソフト ではなく、今回はシンプルなtxt file(Windowsメモ 帳など)を使用したが、単純な故にコピー等の使い方 の説明もしやすかった。また、ホームページを活用す ることで、事前の配布資料が平成13年度の本授業実践 と比較して少なくて済んだ。
デメリット又は注意点.本年度本実践を遂行するにあ
たって、情報機器関連の設備が整っており、日々恒常 的に自由に受講生がその設備を使える環境であること が必要である。本授業授業全体を通して感じたことは、OA機器操作の習熟度が受講生によってばらつきがあ り、個々にその受講生のスキルに合わせて指導をする 必要があったことである。また、ホームページを作成 し、本授業で重要な事項をホームページ上で連絡した つもりであったが、受講生には伝わっていない場合が しばしばあり、授業中に教員と受講生との意識のずれ を感じたことがあった。常にホームページを見るよう に指導はしたが、ホームページをすべての受講生が見 ているとは限らないことを再認識した。細かいところ では、ファイルを扱う場合、容量が大きすぎないよう に配慮した。特に画像処理を行う場合は、使用ソフト の選択など工夫を要した。連絡網の作成と実際の小学 校での授業実践時間帯の調整を行うため、個人の連絡 先と個人の授業時間割を提出してもらったが、個人情 報の管理に細心の注意が必要であった。また、ティー チングアシスタントの助けを得たが、ホームページ作 成や公開デスプレイシート、自己評価チェックシート のまとめやその掲載に予想以上に手間と時間がかかっ た。公開デスプレイシートだけでも、直接web入力が できるようにしておくとよいかもしれない。これは今 後の課題として残った。
4.2.本授業実践の反省
一つのクラスで、本授業の受講生が「実践」をした 授業についてクラスの担任の先生から助言をしていた だいた。その受講生も真剣に受け止め、その助言にた いする記述が作品ポートフォリオにみられたのは非常 によかった。授業「実践」当日、受講生が開始時間に 間に合わず受け入れ側の先生方に、大変なご心配とご 迷惑をおかけした。残念なことに作品ポートフォリオ にもその反省点がどこにも見受けられなかった。当日 に遅れる場合は必ず「連絡をする」ことなど、教員が 常識と考えているこであっても今後指導しておかなけ ればならないことを感じた。
謝辞.受け入れ校である飛鳥小学校の高瀬校長、寺田 先生、本授業の関係でお世話になりました飛鳥小学校 の先生方皆様にここに厚く御礼申し上げます。
参考文献
1)「総合学習のポートフォリオと評価」大隅紀和著、
黎明書房、2003.3.25.
2)「総合学習のためのポートフォリオ評価」、加藤 幸治・安藤輝次著、黎明書房、1999.12.1.
3)「ボートフォリオによる大学生のデイベート授業 の評価」、鈴木洋子・日野圭子、奈良教育大学教 育実践総合センター教育実践総合センター研究紀 要、第10号、2001.3.103−107.
4)「大学学部授業「総合演習」における大学生の授 業評価についての授業実践〜「総合的な学習の時 間」の義務化に向けて〜」、川崎謙一郎、日野圭 子、神保敏弥、南春男、重松敬一、2002年3月奈 良教育大学教育実践研究指導センター研究紀要、
第11号、2002.3.193−200.
図2 公開ディスプレイシート
図3 自己評価チェックシート原本