港湾コンクリートのシラスコンクリートの適用に関する基礎調査の紹介
前村政博
鹿児島大学大学院理工学研究科技術部
1. はじめに
鹿児島大学理工学研究科(工学系)海洋土木工学専攻の武若耕司教授および山口明伸准教授を中心に港湾コンクリート のシラスコンクリートの適用に関する基礎調査を行なっている。
無筋シラスコンクリート供試体を実海洋環境下に曝露し、長期的な基礎物性(圧縮・引張強度・静弾性係数・塩化物イ オン浸透量)調査を行う。一方、鉄筋シラスコンクリートのひび割れ有り、無しの供試体を用いて鉄筋の腐食量調査、コ ンクリート中の塩化物量調査、鉄筋自然電位分布の測定を行い、シラスコンクリートの RC への適用を検討する。
本報告では、実構造物を模した大型 RC 供試体の海洋曝露実験の概要および一部の長期的な基礎物性(圧縮・静弾性係 数)について示す。
2. 大型 RC 供試体の概要
25cm 30cm
かぶり
2,3,4,5cm
4.5m
飛沫帯
干満帯
海中
H.W.L
L.W.L
照合電極 塩化物イオン浸透モニタリングセンサ
25cm 30cm
かぶり
2,3,4,5cm
4.5m
25cm 30cm
かぶり
2,3,4,5cm
4.5m
飛沫帯
干満帯
海中
H.W.L
L.W.L
飛沫帯干満帯
海中
H.W.L
L.W.L
照合電極照合電極 塩化物イオン浸透モニタリングセンサ塩化物イオン浸透モニタリングセンサ
大型 RC 供試体の概要図を図‑2.1 に示す。供試体の形状は断面 25×30cm で、供試体長を 4.6m とすることで一つの供試体で海中部から飛沫帯までの 海洋環境をカバーできる形状となっている。供試体内には、合計 4 本の D19 鉄筋をかぶり 2,3,4,5cm の位置にそれぞれ配筋し、さらに鉄筋の腐食状 況を非破壊的かつ連続的にモニタリングするための照合電極を、海中・干満 帯および飛沫帯の位置に埋設した。併せて、供試体内への塩化物イオンの浸 透状況をモニタリングするために開発したセンサも埋設した。図‑2.2 に塩化 物イオン浸透モニタリングセンサの概要を示す。このモニタリングセンサは、 4.6
ポリマーセメントモルタルで作られた円筒状の本体と、この本体側面にリン グ状に設けられた箇所の溝(深さ,幅ともに約 0.15cm)の中に巻き付けられ たφ0.1mm径の極細鉄線、およびステンレス製の取っ手から構成されている。
また、各極細鉄線の両端はそれぞれリード線とつながっており、鉄線の情報
を外部計測器へ読み取ることが可能である。この本体端面をコンクリート表 図‑2.1 大型 RC 供試体概要図 面に合わすことにより、かぶりを 0.5,1.5,3.0,4.5cm の 4 種類とってある。
そこで、外部から浸透する塩化物イオンは、コンクリート表面に最も近い鉄 線位置でその防食上の許容値を超えると、鉄線の腐食が始まることになり、
鉄線が腐食すると電気抵抗が増加する仕組みとなっている。また、供試体は 図‑2.3 に示すように、鹿児島谷山港の岸壁に 4 体とも垂直に設置し、曝露開 始から 3 ヶ月おきに鉄筋の自然電位および塩化物浸透センサ電位を測定して
鉄線
(φ=0.1mm)
モルタル
鉄筋
正面 側面
鉄線
(φ=0.1mm)
モルタル
鉄筋
正面 側面
図‑2.2 塩化物イオン浸透 モニタリングセンサ概要 いる。
3. 実験概要
既往の塩害に関する研究により、海中部・干満帯および飛沫帯のそれぞれの海洋環境がコンクリート中への塩化物イオ
ン浸透や内部鉄筋の腐食性に及ぼす影響については、ある程度、知見が得られている。
しかしながら、実際の構造物は、海中部から干満帯,飛沫帯と連続しており、それぞれ の環境がコンクリート中への塩化物イオン浸透性や内部鉄筋の腐食性に相互に影響して いるものと考えられる。ここでは、海中部から干満帯および飛沫帯にかけて、実構造物 を模した長さ 4600mm の供試体(以下,大型 RC 供試体)を設置し、最長 10 年間にわたっ て、次の 3 項目を調査・検討する。
① 鉄筋腐食に関するモニタリングデータの収集
② 定期的な供試体の引上げ調査
③ 最終的な供試体の解体調査による鉄筋腐食量の調査
大型 RC 供試体に用いたコンクリートの水セメント比は 50%一定とし、細骨材には鹿児 島県横川町産シラスと、比較用として鹿児島県鹿児島市産海砂を用いた。セメントには 普通ポルトランドセメント(以下,OPC)と海洋コンクリートに一般的に用いられる高炉
RC 大型供試体 海中部 干満帯 飛沫帯
セメント B 種(以下,BB)の 2 種類を使用した。その時のコンクリート配合を表 3.1 に 示す。また、表‑3.2 に大型 RC 供試体に用いたコンクリートの使用材料および各種物性
図‑2.3 供試体曝露状況 を示す。
表‑3.1 コンクリート配合表
表‑3.2 使用材料よび各種物性
使用材料 材料の各種物性
鹿児島県横川町産シラス
(表乾密度:2.15g/m3,吸水率:7.59%)
鹿児島県鹿児島市産海砂
(表乾密度:2.48g/m3,吸水率:3.03%)
普通ポルトランドセメント(密度:3.15g/m3) 高炉セメントB種(密度:3.04g/m3) ポリカルボン酸系高性能AE減水剤 チューポールHP−8(密度:1.1g/m3)
AE減水剤標準型(Ⅰ種)
ポゾリス(密度:1.08g/m3) 粗骨材 鹿児島県鹿児島市産砕石(Gmax:20mm,
表乾密度:2.64g/m3,吸水率:1.03%)
混和剤 細骨材
セメント
OPCシラス
BBシラス
海砂 シラス
34.5 202 404 - 464 1085 0.70% 4.6 8.0 34.5 199 398 - 464 1085 0.70% 4.7 9.0 OPC海砂 41.6 174 348 692 - 1034 0.85% 3.9 10.0
BB海砂 41.5 172 344 689 - 1035 0.85% 4.9 11.5 50
W C s/a
(%) W/C
呼名 (%) S
G 単位水量(kg/m
3)
混和剤 空気量
(%)
スランプ
(cm)
飛沫帯 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
シラス普通 シラス高炉 海砂普通 海砂高炉 静弾性係数(×104N/mm2)
干満帯 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
シラス普通 シラス高炉 海砂普通 海砂高炉 静弾性係数(×104N/mm2)
海中部 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
シラス普通 シラス高炉 海砂普通 海砂高炉 静弾性係数(×104N/mm2)
飛沫帯 0 10 20 30 40 50 60
0 100 200 300 400
材齢(日)
圧縮強度(N/mm2)
シラス普通 シラス高炉
海砂普通 海砂高炉
干満帯 0 10 20 30 40 50 60
0 100 200 300 400
材齢(日)
圧縮強度(N/mm2)
シラス普通 シラス高炉
海砂普通 海砂高炉
海中部 0 10 20 30 40 50 60
0 100 200 300 400
材齢(日)
圧縮強度(N/mm2)
シラス普通 シラス高炉
海砂普通 海砂高炉
4. 定期観測の結果および考察
現在曝露を開始してから 3 年が経過してお り、曝露 3 年時における圧縮強度および静弾 性係数は現在調査中であるため、ここでは曝 露期間 1 年時における結果を示す。まず圧縮 強度試験結果を図‑4.1 に、静弾性係数を図‑4 .2 に示す。なお、打設直後からのコンクリー ト材齢は 1 年 2 ヶ月になる。海砂コンクリー トに比べシラスコンクリートは、材齢 28 日か らの圧縮強度の増進がどの環境においても確 認され、細骨材にシラスを使用すると長期強 度では、海砂コンクリートと同等もしくはそ れ以上になる結果となった。また、静弾性係 数に関しては、どの種類のコンクリートも明 確な違いは認められず、曝露環境による違い
図‑4.2 静弾性係数結果 図‑4.1 圧縮強度試験結果
も確認されなかった。
謝辞:報告書の資料およびデータを提供下さいました武若耕司教授ならびに山口明伸准教授に深く感謝いたします。