n 角形 Bowen フローの完全位相共役不変量について
理工学研究科数理情報科学専攻 永松 一紀
概要
多角形のアトラクタを持つ平面上の
C
3級ベクトル場のBowen
フローを考える.Takens [4]
は2
角形の
Bowen
フローの局所位相共役に関する完全不変量の存在を証明した.本論文の目的は,一般のn
角形Bowen
フローにおける,位相共役を同値関係とする完全不変量の存在を証明することである.目次
1
本研究について2
1.1
研究の背景. . . . 2
2
定義2
3
ベクトル場に関する仮定3
3.1 n
角形Bowen
フロー. . . . 3
4 Palis
の不変量5
4.1
線形化されたベクトル場について. . . . 5 4.2 Palis
の不変量. . . . 5
5 Takens
の不変量7
5.1 Σ k
上の微分について. . . . 7 5.2 Takens
の不変量. . . . 8
6 n
角形Bowen
フローの完全不変量11
6.1
主定理. . . . 11 6.2 1
角形の場合. . . . 15 6.3 1
角形における完全位相共役不変量の証明. . . . 16
7
区分的C 3
級Bowen
フロー18
8
今後の研究について20
1 本研究について
1.1 研究の背景
はじめに,本研究の背景を説明する.
A, B
は集合,∼
はA
上の同値関係とする.任意のA
の元x, y
に対 し,f(x) = f (y)
がx ∼ y
の必要十分条件となる関数f : A → B
をA
の完全不変量という.Palis [2]
は2
つ の鞍点をもつ平面上のベクトル場のフローについて,位相共役に関する完全不変量を与えた.さらに,Takens [4]
は2
つのヘテロクリニック点である鞍点を頂点,安定多様体と不安定多様体を辺とする2
角形のアトラク タをもつベクトル場についても,同様に完全不変量が存在することを示した.各頂点をヘテロクリニック点で ある鞍点とし,各辺を安定多様体および不安定多様体とするn
角形のアトラクタをもつC 3
級ベクトル場のフ ローを,n
角形Bowen
フローという.本研究では,1
角形,2
角形を含む一般のn
角形Bowen
フローに関す る完全不変量について研究した.n
角形の場合,Takens [4]
の方法ではn ≥ 3
のn
角形において座標変換の 微分を揃えることができない.本研究では,n − 1
次連立方程式の解を考えることで一般のn
角形に対する解 法を得た.一般の多角形に対する位相共役の完全不変量を与えることで,より一般の,球面やトーラスなどの 閉曲面上のBowen
フローの完全位相共役不変量を考えることが可能になる.2 定義
最初に必要な概念を定義する.詳細は
[5]
を参照せよ.M, N
を位相空間とする.写像の族
ϕ t : M → M (t ≥ 0)
がϕ 0 = Id M ,
ϕ t+s = ϕ t ◦ ϕ s
(t, s ≥ 0)
をみたすとき,
ϕ t
をM
上のセミフローという.セミフローϕ t : M → M (t ∈ R )
がϕ t+s = ϕ t ◦ ϕ s
(t, s ∈ R )
をみたすとき,
ϕ t
をM
上のフローという.微分方程式,ベクトル場によってフローを定義できる.以降,
ϕ t
はM
上のフローとする.x ∈ M
とする.集合
{ ϕ t (x) } t ≥ 0
をx
の前方軌道,{ ϕ t (x) } t ≤ 0
をx
の後方軌道といい,{ ϕ t (x) } t ∈R
をx
の軌道という.ϕ t
に ついて,x ∈ M
に対し,ϕ s (x) = x
を満たすs ≥ 0
が存在するとき,x
を周期点といい,そのようなs
の中で 最小のものをx
の最小周期という.特に,s = 0
のとき,x
を不動点という.定義
2.1. ϕ t
が不動点x ∈ M
を持つとする.ϕ t
の不動点x
が双曲型であるとは,ϕ t
のx
でのヤコビ行列の 全ての固有値の実部が0
でないことをいう.定義
2.2. ϕ t
の双曲型不動点p
のヤコビ行列の固有値のいくつかの実部が正で,p
のヤコビ行列の固有値のい くつかの実部が負であるとき,p
を鞍点という.定義
2.3. ϕ t
が双曲型不動点p
を持つとする.W s (p) := { x ∈ M | lim
t →∞ ϕ t (x) = p }
を
p
の安定多様体という.W u (p) := { x ∈ M | lim
t →−∞ ϕ t (x) = p }
をp
の不安定多様体という.M
のなめらかな部分空間A, B
について,T p X = T p A + T p B
を満たすp ∈ A ∩ B
が存在するとき,A
とB
は点p
で横断的に交わるという.定義
2.4. ϕ t
が双曲型不動点p
を持つとする.p
の安定多様体W s (p)
と不安定多様体W u (p)
がp
以外の点q
で交わるとき,q
をホモクリニック点という.定義
2.5. ϕ t
が異なる二つの双曲型不動点p 1
,p 2
を持つとする.W u (p 1 )
とW s (p 2 )
が交わるとき,その交 点q
をヘテロクリニック点という.定義
2.6.
閉集合Λ ⊂ M
がアトラクタであるとは,ϕ t (B) ⊂ Int(B) (t ≥ 0)
であり,Λ = ∩
t ≥ 0
ϕ t (B)
を満たすコンパクト集合
B ⊂ M
が存在することである.定義
2.7.
2つのフローϕ t : M → M
とψ t : N → N
に対し,同相写像h : M → N
がh ◦ ϕ t = ψ t ◦ h (t ∈ R )
を満たすとき,
ϕ t
とψ t
は位相共役であるという.このときのh
を,ϕ
とψ
の位相共役写像という.位相共役はフローの同値関係を与える.
定義
2.8. A, B
を集合とし,∼
をA
上の同値関係とする.関数f : A → B
がx, y ∈ A, x ∼ y ⇒ f (x) = f (y)
を満たすとき,f
を,B
に値をとるA
の不変量という.関数f : A → B
がx, y ∈ A, x ∼ y ⇔ f (x) = f (y)
を満たすとき,f
をB
に値をとるA
の完全不変量という.3 ベクトル場に関する仮定 3.1 n 角形 Bowen フロー
この節では本修論で扱うベクトル場
X
について説明する.n ∈ N
とし,∆
をR 2
上のn
角形とする.∆
の 各頂点をA 1 , A 2 , . . . , A n
,端点がA k , A k+1
である辺をc k
とする(ただし,端点がA n , A 1
である辺はc n
と する).R 2
上のC 3
級ベクトル場X
は,以下の条件を満たすとする.1. A 1 , A 2 , . . . , A n
はベクトル場X
の鞍点である.A k
の正の固有値はα + k
,負の固有値は− α − k
である.2. c 1 , c 2 , . . . , c n
は鞍点の安定多様体であると同時に不安定多様体でもある.3. ∂∆
はX | ∆
のアトラクタである.4. ∏ n
k=1
α − k >
∏ n k=1
α + k
が成立する.
仮定
1
,仮定2
より,n ≥ 2
のとき,A 1 , A 2 , . . . , A n
はヘテロクリニック点である.上記の仮定を満たすベ クトル場X
のフローを,n
角形Bowen
フローと呼ぶ.特に,n = 2
のとき,∆
をBowen
の目と呼ぶ.α k := α − k
α + k
とする.ベクトル場X ′
の鞍点,固有値,各辺についても′
を付けた同様の記号を定義する.図
3.1 n = 1, 2, 4
の場合のBowen
フローの図次に,
c i
と横断的に交わる十分小さくなめらかな線分Σ k (k = 1, . . . , n)
を考える.[3]
の定理より,各A i
において線形化された局所座標表示が存在することが分かる.
定理
3.1 (Hartman [3]). ϕ
は2
次元多様体M
上の微分同相写像で,p ∈ M
はϕ
の鞍点とする.このとき,ϕ
について,p
のまわりでC 1
級の線形化された局所座標表示が存在する.特に,ϕ
がC 3
級のとき,ϵ > 0
と して,C 1+ϵ
級の局所座標表示が取れる.定理
3.1
で与えられるA k
のまわりの座標近傍をU (A k )
とする.X
はC 3
級であるから,局所座標表示はC 1+ϵ
級となる.以降の証明では0 < ϵ < 1
として一般性を失わない.A k
のまわりの線形化された局所座標 表示を(x, y)
とすると,(x, y)
は以下を満たす.1.
(x, y) ∈ Σ k ⇒ x = 1, (x, y ) ∈ Σ k − 1 ⇒ y = 1
が成立する.2. U (A k )
上において,ベクトル場X
はX = xα + k ∂
∂x − yα − k ∂
∂y
で表される.図
3.2 A
kの周りの線形化局所座標表示 次に先行研究である各不変量を見ていく.4 Palis の不変量
4.1 線形化されたベクトル場について
定理
3.1
により線形化されたU (A k )
上の座標でX
のフローを考える.点(x, y)
を通る軌道上の点は,X t (x, y) = (
x exp(α + k t), y exp( − α − k t) )
で表される.
s (> 0) :
十分小として,点(s, 1) ∈ Σ k − 1
はX
のフローにより,時間r (> 0)
後に(1, u) ∈ Σ k
に移るとすると,
{ s exp(α + k r) = 1, exp( − α − k r) = u
が成り立つ.これを解くと,r = − 1
α + k log s, (4.1)
u = s α
k(4.2)
を得る.
x(t) ⊂ ∆
を∂∆
に十分近い軌道とする.x(t)
がΣ 1
に初めてぶつかったときの時間をt 1 (> 0)
,次 にΣ 2
にぶつかったときの時間をt 2 (> t 1 )
とし,t 3
以降も同様に定義することで線分を通過する時間の列{ t i } i ∈N
を考える.4.2 Palis の不変量
定理
4.1 (Palis [2]).
次の極限が存在する.lim
i →∞
t ni+k+1 − t ni+k t ni+k − t ni+k − 1
= α − k
α + k+1 (k = 0, 1, . . . , n − 1).
ここで,
k = 0
のときの極限はα − n
α 1 +
である.証明
. k ∈ { 1, 2, . . . , n }
を固定して考える.x(t ni+k − 1 ) ∈ Σ k − 1
のy
成分をs > 0
とする.(4.1)
より,t ni+k − t ni+k − 1 = − 1
α + k log s. (4.3)
また,
x(t ni+k )
のU (A k )
の線形化座標におけるx
成分は,(4.2)
より,s α
kとなる.U(A k+1 )
の線形化座標 におけるx(t ni+k )
のy
成分をs ′ > 0
とすると,定理3.1
より,s ′ = f (s α
k) = as α
k+ O(s α
k(1+ϵ) ). (4.4)
ここで,f
はC 1+ϵ
級の関数で,a = f ′ (0) > 0
である.(4.1)
,(4.4)
とテイラー展開より,t ni+k+1 − t ni+k = − 1 α + k+1 log s ′
= − 1 α + k+1 log (
as α
k+ O(s α
k(1+ϵ) ) )
= − 1 α + k+1
( log a + α k log s + log(1 + O(s α
kϵ )) )
= − 1 α + k+1
( log a + α k log s + O(s α
kϵ ) )
. (4.5)
したがって,
lim
i →∞
t ni+k+1 − t ni+k
t ni+k − t ni+k − 1 = lim
i →∞
− 1 α + k+1
( log a + α k log s + O(s α
kϵ ) )
− 1 α + k log s
= lim
i →∞
( α k −
α + k+1 + O(s α
kϵ )
log s − α + k log a α + k+1 log s
) .
s → 0 (i → ∞ )
,α k ϵ > 0
より,O(s α
kϵ )
log s − α − k log a
α + k+1 log s → 0 (i → ∞ )
であるので,求める極限を得る.以降,
λ k := α − k
α + k+1 (k = 0, 1, . . . , n − 1)
で表す.定義から∏ n k=1
α k =
∏ n k=1
λ k
である.
Λ n := ∏ n
k=1 λ k
とする.補題
4.2 (Takens [4]).
i lim →∞
( t ni+k+1 − t ni+k − λ k (t ni+k − t ni+k − 1 ) )
= − 1
α + k+1 log a (k = 0, 1, . . . , n − 1).
証明
. (4.3)
,(4.5)
とt ni+k+1 − t ni+k = − 1 α k+1 +
( log a + α k log s + O(s α
kϵ ) )
より,
t ni+k+1 − t ni+k − λ k (t ni+k − t ni+k − 1 )
= − 1
α + k+1 (log a + α k log s + O(s α
kϵ )) + λ k α + k log s
= − 1
α + k+1 log a + O(s α
kϵ ) → − 1
α + k+1 log a (i → ∞ )
が成立する.定理
4.3 (Palis [2]). λ k
は位相共役を同値関係とするn
角形Bowen
フローの不変量である.証明
. X
,X ′
をn
角形Bowen
フロー,x(t) ∈ ∆
をX
の軌道,h : R 2 → R 2
をX, X ′
間の位相共役写像と する.h(Σ k ) ∩ c ′ k
を通る十分小さくなめらかな線分をΣ ′ k
とする.Σ ′ k − 1 , Σ ′ k , Σ ′ k+1
に対して定理3.1
を適用 し,線形の局所座標表示U (A ′ k ), U (A ′ k+1 )
を与える.h(x(t))
がΣ ′ j
をi
回目に通過する時間をt ′ ni+j
とする.h(Σ k ) ∩ c ′ k = Σ ′ k ∩ c ′ k , h(Σ k+1 ) ∩ c ′ k+1 = Σ ′ k+1 ∩ c ′ k+1
より,次を満たすl ∈ Z
が存在する.i lim →∞ (t n(i+l)+j − t ′ ni+j ) = 0 (j = k − 1, k, k + 1).
したがって,
λ k = lim
i →∞
t ni+k+1 − t ni+k
t ni+k − t ni+k − 1 = lim
i →∞
t n(i+l)k+1 − t n(i+l)+k
t n(i+l)+k − t n(i+l)+k − 1 = lim
i →∞
t ′ ni+k+1 − t ′ ni+k t ′ ni+k − t ′ ni+k − 1 = λ ′ k
が成立する.5 Takens の不変量
5.1 Σ k 上の微分について
図
5.1 Σ
kの移動による座標の変化U (A k )
における局所座標表示からU (A k+1 )
における局所座標表示への座標変換を考える.x(t ni+k − 1 ) ∈ Σ k − 1
のU(A k )
における局所座標表示のy
成分をs ni+k
とする.定理4.1
の(4.4)
よりs ni+k+1 = f k (s α ni+k
k) = a k s α ni+k
k+ o(s α ni+k
k(1+ϵ) ). (5.1)
ここで,
f k
はC 1+ϵ
級の関数で,a k = f k ′ (0)(> 0)
である.このとき,次の手順でa k = 1 (k = 1, 2, . . . , n − 1)
とすることができる.まず,Σ 1
を固定し,k = 2, . . . , n
についてΣ k
をr k
だけ動かしΣ ˜ k = X r
k(Σ k )
に置き 換えることを考える(
図5.1)
.線形の局所座標表示と合成関数の微分より,新しい局所座標近傍U ˜ (A k )
にお けるΣ ˜ k
上の座標変換の微分˜ a k (k = 1, 2, . . . , n − 1)
は次のようになる.˜
a 1 = a 1 exp( − α + 2 r 2 − α − 1 r n ),
˜
a 2 = a 2 exp((α − 2 + α + 3 )r 2 − α + 3 r 3 ),
˜
a 3 = a 3 exp( − α − 3 r 2 + (α − 3 + α + 4 )r 3 − α + 4 r 4 ), .. .
˜
a k = a k exp( − α − k r k − 1 + (α k − + α + k+1 )r k − α + k+1 r k+1 ), .. .
˜
a n − 1 = a n − 1 exp( − α − n − 1 r n − 2 + (α − n − 1 + α + n )r n − 1 − α + n r n ).
次に,以下の連立方程式を考える.
− α + 2 r 2 − α − 1 r n = − log a 1 , (α 2 − + α + 3 )r 2 − α 3 + r 3 = − log a 2 ,
− α − 3 r 2 + (α 3 − + α + 4 )r 3 − α 4 + r 4 = − log a 3 , .. .
− α − k r k − 1 + (α − k + α + k+1 )r k − α + k+1 r k+1 = − log a k , .. .
− α − n − 1 r n − 2 + (α − n − 1 + α + n )r n − 1 − α + n r n = − log a n − 1 .
この連立方程式の解が存在するとき,その解
(r 2 , r 3 , . . . , r n )
を代入することで,˜ a k = 1 (k = 1, 2, . . . , n − 1)
とできる.上の連立方程式の係数行列は,
− α + 2 0 · · · 0 0 − α − 1 (α − 2 + α + 3 ) − α 3 + 0 · · · 0 0
− α − 3 (α − 3 + α + 4 ) − α + 4 0 · · · 0
.. . .. .
0 · · · 0 − α − n − 1 (α − n − 1 + α + n ) − α + n
である.この係数行列の行列式は
( − 1) n − 1 (
(α − 1 α − 2 · · · α − n − 1 ) + (α − 1 · · · α − n − 2 α + n ) + · · ·
+ (α − 1 · · · α − i α + i+2 · · · α + n ) + · · · + (α + 2 α + 3 · · · α + n ) )
である.よって,係数行列は正則であるから,連立方程式の解が存在する.ゆえに,微分を
1
に揃えることが できる.以降,Σ n
以外の座標変換の微分は1
,Σ n
における座標変換の微分をa
(> 0
)とする.このとき,補 題4.2
のk = 1, 2, . . . , n − 1
の場合の極限は0
に等しい.5.2 Takens の不変量
定理
5.1 (Takens [4]).
次の極限が存在する.lim
i →∞
( t ni+n − t ni − Λ n (t ni − t ni − n ) )
= − ( ∑ n
k=1
1 α + k (
k ∏ − 1 j=1
α j ) )
log a.
証明
. x(t ni − n ) ∈ Σ n
のU (A 1 )
に お け る 線 形 局 所 座 標 のy
成 分 をs 1
と し ,k = 2, . . . , n
に つ い て ,x(t ni − n+k − 1 ) ∈ Σ k − 1
のU(A k )
における線形局所座標のy
成分をs k
とする.(4.1)
より,t ni − t ni − n = −
∑ n k=1
1
α + k log s k . (5.2)
(5.1)
より,log s k = α k − 1 log s k − 1 + O(s α k −
k−11 ϵ )
= α k − 2 α k − 1 log s k − 2 + O(s δϵ k − 2 ) .. .
= α 1 α 2 · · · α k − 2 α k − 1 log s 1 + O(s δϵ 1 ).
ここで,
δ(> 0)
は各計算過程におけるs k
の指数で最小のものとする.したがって,t ni − t ni − n = − ( ∑ n
k=1
1 α + k (
k ∏ − 1 j=1
α j ) )
log s 1 + O(s δϵ 1 ). (5.3)
次に,x(t ni ) ∈ Σ n
のU (A 1 )
における線形局所座標のy
成分をs n+1
とすると,(5.1)
より,s n+1 = as α 1
1α
2··· α
n+ O(s α 1
1α
2··· α
n(1+ϵ) ).
したがって,
t ni+n − t ni = − ( ∑ n
k=1
1 α + k (
k ∏ − 1 j=1
α j ) )
log s n+1 + O(s δϵ n+1 )
= − ( ∑ n
k=1
1 α + k (
k ∏ − 1 j=1
α j ) )
log(as α 1
1··· α
n+ O(s α 1
1··· α
n(1+ϵ) )) + O(s δϵ n+1 )
= − ( ∑ n
k=1
1 α + k (
k ∏ − 1 j=1
α j ) )
(log a + (
∏ n k=1
α k ) log s 1 ) + O(s δϵ 1 )
= − ( ∑ n
k=1
1 α + k (
k ∏ − 1 j=1
α j ) )
log a − ( ∑ n
k=1
1 α + k (
k ∏ − 1 j=1
α j ) )
Λ n log s 1 + O(s δϵ 1 ).
以上より,
t ni+n − t ni − Λ n (t ni − t ni − n ) = − ( ∑ n
k=1
1 α + k (
k ∏ − 1 j=1
α j ) )
log a + O ( s δϵ 1 )
.
O ( s δϵ 1 )
→ 0 (i → ∞ )
より,求める極限を得る.以降,定理
5.1
の極限をν
で表す.定理
5.2 (Takens [4]). ν
は位相共役を同値関係とするn
角形Bowen
フローの不変量である.証明
. X, X ′
をn
角形Bowen
フロー,ν, ν ′
をそれぞれX, X ′
の定理5.1
の極限,x(t) ∈ ∆
をX
の軌道,h : R 2 → R 2
をX, X ′
間の位相共役写像とする.x ′ (t) := h(x(t))
とする.x(t)
がΣ k (k = 1, 2, . . . , n)
を通る時間の列
{ t i }
とx ′ (t)
がΣ ′ k (k = 1, 2, . . . , n)
を通る時間の列{ t ′ i }
を考える(Σ ′ k = h(Σ k )
である必要はな い)
.t i , t ′ i
いずれかのi
をi + 2l
(l
は適当な自然数)に置き換えることで,t i − t ′ i
は一様有界となる.特に,X u ′
k(Σ ′ k ∩ c ′ k ) = h(Σ k ∩ c k ),
i lim →∞ (t ni+k − t ′ ni+k ) = u k .
また,定理4.3
より,Λ n =
∏ n k=1
λ k =
∏ n k=1
λ ′ k = Λ ′ n .
したがって,ν − ν ′ = lim
i →∞
( t ni+n − t ni − Λ n (t ni − t ni − n ) − (t ′ ni+n − t ′ ni − Λ ′ n (t ′ ni − t ′ ni − n )) )
= lim
i →∞
( (t ni+n − t ′ ni+n ) − (t ni − t ′ ni ) − Λ n ((t ni − t ′ ni ) − (t ni − n − t ′ ni − n )) )
= 0
が成立する.後の証明のために次の
2
つの補題を示す.x(t ni+k ) ∈ Σ k
のU (A k+1 )
における線形局所座標のy
成分を改 めてs ni+k
とする.(5.1)
のO(s δϵ ni+1 )
をR i
で表す.補題
5.3 (Takens [4]). ∑ ∞
i=0 i | R i |
は有限値に収束する.証明
. (5.1)
より,R i+1 R i
= O(s δϵ ni+n+1 ) O(s δϵ ni+1 ) = O
(( s ni+n+1 s ni+1
) δϵ ) .
一方,
O (
s
∏n
k=1
α
k(1+ϵ) − 1 ni+1
) → 0 (i → ∞ )
,∏ n
k=1 α k > 1
,s ni+1 → 0 (i → ∞ )
より,任意の0 < ϵ ′ < 1
に対して,次を満たすj ∈ N
が存在する.i ≥ j ⇒ s ni+n+1
s ni+1
= as (
∏n k=1
α
k) − 1
ni+1 + O
( s
∏n
k=1
α
k(1+ϵ) − 1 ni+1
)
< ϵ ′ .
したがって,d’Alembert
の判定法から,求める極限が有限値であることが分かる.補題
5.4.
i lim →∞
( t ni+1 − t ni − λ n (t ni − t ni − 1 ) )
= ν
1 + ∑ n − 1 k=1
(∏ k j=1 λ k
).
証明
.
補題4.2
より,lim
i →∞
( t ni+1 − t ni − λ n (t ni − t ni − 1 ) )
= − 1 α + 1 log a
= − 1 α + 1
− ( ∑ n
k=1
1 α + k
(∏ k − 1 j=1 α j
))
− ( ∑ n
k=1
1 α + k
(∏ k − 1 j=1 α j
)) log a
= ν
α + 1 ( ∑ n
k=1
1 α + k
(∏ k − 1 j=1 α j
)) .
また,
α + 1 ( ∑ n
k=1
1 α + k (
k ∏ − 1 j=1
α j ) )
= α + 1 ( 1
α + 1 + α 1
α + 2 + α 1 α 2
α + 3 + · · · + α 1 α 2 · · · α n − 1 α + n
)
= 1 + α − 1 α + 2 + α − 1
α 2 + α − 2
α + 3 + · · · + α − 1 α + 2
α − 2
α + 3 · · · α − n − 1 α + n
= 1 + λ 1 + λ 1 λ 2 + · · · + λ 1 λ 2 · · · λ n − 1 .
以上より,i lim →∞
( t ni+1 − t ni − λ n (t ni − t ni − 1 ) )
= ν
1 + ∑ n − 1 k=1
(∏ k j=1 λ k
)
が成立する.6 n 角形 Bowen フローの完全不変量
6.1 主定理
以下が本論文の主定理である.
定理
6.1. R 2
上のC 3
級ベクトル場X, X ′
をn
角形Bowen
フローとする.このとき,次の(1), (2)
は同値で ある.(1)
{ λ k = λ ′ k (k = 1, 2, . . . , n) ν = ν ′ .
(2) ∆
の境界を含む内側の近傍と∆ ′
の境界を含む内側の近傍の位相共役が存在する.定理
6.1
は,局所位相共役を同値関係とするn
角形Bowen
フローの完全不変量を与える.証明
.
定理4.3
,定理5.2
より,(2) ⇒ (1)
は成立する.(1)
が成り立つとする.Σ ′ n
における座標変換の微分をa ′
とする.∆ n
に十分近く,x(0) ∈ Σ n
なるX
の軌道x(t)
を取る.x(t)
がi
回目にΣ k (k = 1, 2, . . . , n)
を通る時間をt ni+k
とする.t 0 = 0
であり,t i < t j (i < j)
とする.次の手順で同相写像h
を構成する.まず,次を満たす時間の列
{ ˜ t i }
を構成する.
lim i →∞ (t i − ˜ t i ) = c,
˜ t ni+n − t ˜ ni − Λ n (˜ t ni − ˜ t ni − n ) = ν,
˜ t ni+k+1 − ˜ t ni+k − λ k (˜ t ni+k − t ˜ ni+k − 1 ) = 0 (k = 1, 2, . . . , n − 1), t ˜ ni+1 − t ˜ ni − λ n (˜ t ni − ˜ t ni − 1 ) = − 1
α + 1 log a.
T i := t ni+n − t ni
とする.次に,T 0 (i) , T 1 (i) , . . . , T i (i) = T i
をT j (i) − Λ n T j (i) − 1 = ν (j = 1, 2, . . . , i) (6.1)
で定義する.このとき,(5.3)
,(6.1)
より,T 0 (i+1) − T 0 (i) = (T 1 (i+1) − T 1 (i) )Λ − n 1
= (T 2 (i+1) − T 2 (i) )Λ − n 2 .. .
= (T i (i+1) − T i (i) )Λ − n i
= Λ − n (i+1) (
T i+1 − ( n
∏
k=1
λ k
) T i − ν
)
= Λ − n (i+1) R i+1 .
Λ n > 1
,R i → 0 (i → ∞ )
より,lim i →∞ T 0 (i)
が存在する.これをT ¯ 0
とおく.T ¯ 0
を始点に数列{ T ¯ i }
をT ¯ i − Λ n T ¯ i − 1 = ν
で定義する.
T 0 (j+1) − T 0 (j) = Λ − n j+1 R j+1
をj = i, i + 1, . . . , k
について両辺を足すと,T 0 (k+1) − T 0 (i) =
k+1 ∑
j=i+1
Λ − n j R j
を得る.両辺で
k → ∞
の極限を取ると,T ¯ 0 − T 0 (i) =
∑ ∞ j=i+1
Λ − n j R j . (6.2)
また,
T ¯ i
とT j (i)
の定義より,T i − T ¯ i = T i (i) − T ¯ i
= Λ n T i (i) − 1 + ν − Λ n T ¯ i − 1 − ν
= Λ n
(
T i (i) − 1 − T ¯ i − 1
)
.. .
= Λ i n (
T 0 (i) − T ¯ 0 )
. (6.2)
と合わせて,| T i − T ¯ i | ≤
∑ ∞ j=i+1
Λ i n − j | R j | (6.3)
を得る.また,
(6.3)
についてi → ∞
の極限をとると,i lim →∞
( T i − T ¯ i
) = 0 (6.4)
がわかる.補題
5.3
,(6.3)
より,∑ ∞ i=0
(T i − T ¯ i ) < ∞ (6.5)
が成立する.
(6.5)
の極限をc
で表す.{ ˜ t ni }
をT ¯ i = ˜ t ni+n − ˜ t ni
で定義すると,
(6.5)
より,lim
i →∞ (t ni − t ˜ ni ) = c
が成立する.次に,
t ˜ ni+2 − ˜ t ni+1 = λ 1 (˜ t ni+1 − t ˜ ni ), t ˜ ni+3 − ˜ t ni+2 = λ 2 (˜ t ni+2 − t ˜ ni+1 ),
.. .
˜ t ni+k+1 − ˜ t ni+k = λ k (˜ t ni+k − ˜ t ni+k − 1 ), .. .
˜ t ni+n − 1 − ˜ t ni+n − 2 = λ n − 2 (˜ t ni+n − 2 − ˜ t ni+n − 3 ),
˜ t ni+n − ˜ t ni+n − 1 = λ n − 1 (˜ t ni+n − 1 − ˜ t ni+n − 2 ),
(6.6)
で
{ ˜ t ni+1 } , { t ˜ ni+2 } , . . . , { t ˜ ni+n − 1 }
を定義する.˜ t ni+n
と˜ t ni
が与えられていることに注意すると,(6.6)
はM
˜ t ni+1
˜ t ni+2 .. .
˜ t ni+n − 1
=
λ 1 ˜ t ni
0 .. .
˜ t ni+n
と同値である.ただし,
M
はn − 1
次の正方行列で,M =
(λ 1 + 1) − 1 0 · · · 0 0
− λ 2 (λ 2 + 1) − 1 0 · · · 0 .. . · · · · · · · · · · .. . 0 · · · 0 0 − λ n − 1 (λ n − 1 + 1)
(6.7)
である.
(6.7)
の行列式は1+ ∑ n − 1 k=1
(∏ k j=1 λ j
)
> 0
であり,M
は正則なので,{ ˜ t ni+1 } , { t ˜ ni+2 } , . . . , { ˜ t ni+n − 1 }
が定義できる.{ ˜ t i }
は次を満たす.
lim i →∞ (t i − ˜ t i ) = c,
˜ t ni+n − t ˜ ni − Λ n (˜ t ni − ˜ t ni − n ) = ν,
˜ t ni+k+1 − ˜ t ni+k − λ k (˜ t ni+k − t ˜ ni+k − 1 ) = 0 (k = 1, 2, . . . , n − 1), t ˜ ni+1 − t ˜ ni − λ n (˜ t ni − ˜ t ni − 1 ) = − 1
α + 1 log a.
次に,
(1)
と中間値の定理から,次を満たすX ′
の点x ′ (0) ∈ Σ ′ n \ c ′ n
が存在する.lim
i →∞ (t ′ i − t ˜ i ) = c ′
ここ で ,
t ′ i = t ′ nj+k
はx ′ (t)
がΣ ′ k (k = 1, 2, . . . , n)
をj
回目 に 通る 時 間 であ る .lim i →∞ (t i − ˜ t i ) = c, lim i →∞ (t ′ i − ˜ t i ) = c ′
に注意して,h(x(0)) := x ′ (c ′ − c)
とする.さらに,
h
はx(0), x(t n )
を端点とするΣ n
上の線分をx ′ (c − c ′ ), x ′ (c − c ′ + t n )
を端点とする線分に 写すとする.c k
の十分近くの点z = y(r)(
ただし,y(0) ∈ Σ n
とする)
については,h(z) := X r ′ ◦ h (y(0))
と する.Σ ′ n ∩ c ′ n = lim
i →∞ x ′ (t ′ ni ) = lim
i →∞ x ′ ( c ′ + ˜ t ni
) = lim
i →∞ X t ˜ ′
ni
+c ◦ h(x(0)) = lim
i →∞ h (
x ( ˜ t ni + c ))
であるから,
h (Σ n ∩ c n ) := lim
i →∞ h (
x ( ˜ t ni + c ))
と定義すると,h (Σ n ∩ c n ) = Σ ′ n ∩ c ′ n
が成立する.また,h (
x ( t ′ ni+k ))
(k = 1, 2, . . . , n − 1)
について,補題4.2
,補題5.4
と,i lim →∞ (t ′ i − ˜ t i ) = c ′ ,
˜ t ni+1 − ˜ t ni − λ ′ n (˜ t ni − ˜ t ni − 1 ) = ν ′ 1 + ∑ n − 1
k=1
(∏ k j=1 λ ′ k
),
t ˜ ni+k+1 − t ˜ ni+k − λ ′ k (˜ t ni+k − ˜ t ni+k − 1 ) = 0 (k = 1, 2, . . . , n − 1)
より,h (
x ( t ′ ni+k ))
は
i → ∞
でΣ ′ k ∩ c ′ k
に収束する.さらに,h(A 1 ) := lim
t →∞ X t ′ ◦ h (Σ n ∩ c n ) , h(A k ) := lim
t →∞ X t ′ ◦ h (Σ k − 1 ∩ c k − 1 ) (k = 2, . . . , n)
で定義すれば,h(A k ) = A ′ k (k = 1, 2, . . . , n)
である.次に,定義した写像
h
が連続であることを示す.まず,x ∈ Σ k (k = 1, 2, . . . , n)
の場合を考える.V
をh(x)
の開近傍とする.h(x)
に対し,h(x) ∈ h( ˜ Σ k ) ⊂ V
なる端点を含まない線分h( ˜ Σ k ) ⊂ h(Σ k )
を取る.こ のとき,V
は開集合であるから,∪
| s | <δ
X s ′ ◦ h( ˜ Σ k ) ⊂ V
なるδ > 0
が存在する.U x := ∪
| s | <δ
X s ( ˜ Σ k )
とする.
U x
はx
の開近傍である.集合の一般論とh
の定義からh(U x ) = h( ∪
| s | <δ
X r ( ˜ Σ k )) = ∪
| s | <δ
h ◦ X r ( ˜ Σ k ) = ∪
| s | <δ
X r ′ ◦ h( ˜ Σ k ) ⊂ V.
したがって,
h
はΣ k (k = 1, 2, . . . , n)
上の点について連続である.点z = X r (x(t))
はh(z) = X r ′ ◦ h (x(t))
より,U z := ∪
| s | <δ
X s+r ( ˜ Σ k )
とすればよい.
A k (k = 1, . . . , n)
についても,A k
を通る十分小さい線分で同様に証明できる.最後に,
h
の単射性を背理法で示す.h( { x(t) } ) = h( { x(t) ¯ } )
なる{ x(t) } ̸ = { x(t) ¯ }
が存在すると仮定する.一般性を失わないので,
t 0 = ¯ t 0 = 0
としてよい.このとき,x(0), x(0) ¯ ∈ Σ n
である.次に,
x(0), x(0) ¯
のU (A 1 )
の線形化座標におけるx
成分をそれぞれs 0 , ¯ s 0
とし,x(t ni ), x(¯ ¯ t ni ) (i ∈ N )
のx
成分をそれぞれs ni , s ¯ ni
とする.s 0 , s ¯ 0
は十分小としてよい.このとき,¯ s ni
s ni
= a¯ s Λ ni
n− n + O(¯ s Λ ni
n− (1+ϵ) n ) as Λ ni
n− n + O(s Λ ni
n− (1+ϵ) n )
=
¯ s Λ ni
n− n
(
1 + O(¯ s Λ ni
n− ϵ n ) ) s Λ ni
n− n
(
1 + O(s Λ ni
n− ϵ n )
) = 1 + O(¯ s Λ ni
n− ϵ n ) 1 + O(s Λ ni
n− ϵ n )
( ¯ s n(i − 1) s n(i − 1)
) Λ
n.
したがって,
i lim →∞
¯ s ni s ni
=
{ 0 (s 0 > ¯ s 0 ),
∞ (s 0 < ¯ s 0 ). (6.8)
(5.3)
と(6.8)
より,t ni+n − t ¯ ni+n − (t ni − ¯ t ni )
はi → ∞
で発散する.次に,
x(t ni ), x(¯ ¯ t ni )
を通る軌道の像を考える.Σ n
を含み,双曲型不動点を含まない十分小さなコンパクト 集合N
を考える.x(t ni ), x(¯ ¯ t ni ), x(t ni+n ), x(¯ ¯ t ni+n )
を含む軌道の像は,h
の連続性と仮定から図6.1
の右図図
6.1 X
の軌道と単射でないh
により写ったX
′の軌道のようになる.
h
は連続写像であるから,h(N )
は双曲型不動点を含まない有界閉集合である.したがって,t ni − ¯ t ni
は一様有界となる.これはt ni+n − ¯ t ni+n − (t ni − ¯ t ni )
がi → ∞
で発散することに矛盾する.ゆえ に,h
は単射である.6.2 1 角形の場合
1
角形の場合のPalis
の不変量,Takens
の不変量,定理6.1
の証明について説明する.{ x(t) } ⊂ ∆
を∂∆
に十分近い軌道とし,
x(t)
が線分Σ 1
をi
回目に通過した時間をt i
とする.定理
6.2.
次の極限が存在する.i lim →∞
t i+1 − t i
t i − t i − 1 = α − 1 α + 1 .
証明.
定理4.1
の証明と全く同様にして示せる.次に,