A(1)4
型笹野系の有理解の分類
三重大学大学院
教育学研究科教科教育専攻数学教育専修
野田 真司
目次
序文 1
1 Painlev´e方程式に関する序論 2
1.1 ベックルント変換 . . . . 3
1.2 Painlev´e方程式の歴史. . . . 4
1.3 Painlev´e II型方程式のハミルトン系表示とベックルント変換 . . . . 5
1.4 Painlev´e II型方程式の有理解 . . . . 8
1.5 τ関数 . . . . 10
2 A(1)4 型笹野系の有理解の分類 13 3 行列II型Painlev´e方程式 18 3.1 q1= 0およびq2= 0での行列II型Painlev´e方程式の有理解 . . . . 18
3.2 行列II型Painlev´e方程式のベックルント変換 . . . . 19
3.3 q16= 0, q26= 0での行列II型Painlev´e方程式の有理解の構成 . . . . 22
序文
この論文では,岡本和夫氏や野海正俊氏など数々の数学者が研究を行なっているPainlev´e方程式を拡張した
「A(1)4 型笹野系」および「行列II型Painlev´e方程式」と呼ばれる方程式系の,有理解の構成について述べてい る.
第1章では, Painlev´e方程式の序論として,本論文を読み進めるにあたって必要な用語の定義や,本研究に有 用な定理等の説明, Painlev´e方程式の歴史,そしてPainlev´e II型方程式のハミルトン系表示とベックルント変 換から有理解の構成方法について記述している.さらに, Painlev´e方程式にとって重要な役割を果たすτ関数 を導入して,これを用いた有理解の表し方についても述べている.
第2章では, Painlev´e II型方程式を拡張した「A(1)4 型笹野系」について,ハミルトニアンの満たす微分方程 式および,H と独立変数zとの関係式を導き出し,その2つの方程式の有理解がYablonskii - Vorob’evの多項 式を用いて記述できることを示した.そして,その事実を利用してA(1)4 型笹野系の有理解を決定している. 第3章では,東京大学大学院数理科学研究科の川上拓志氏が発見した「行列II型Painlev´e方程式」につい て, この方程式系が有理解をもつときのパラメータの条件を調べ,三重大学大学院の吉田和史氏が導き出した ベックルント変換を利用して有理解を構成している.
研究対象に 有理解 を選んだ理由としては,有理解を調べることにより,変換群の構造がある程度分かり,さ らにいくつかある高階Painlev´e方程式の分類に有用であると考えたからである.
最後に,本論文の作成にあたり,熱心かつ丁寧に指導してくださった石谷寛教授および川向洋之准教授,そし て本研究に際して 行列II型Painlev´e方程式 という大変貴重な議題を提供してくださった川上拓志氏,並び に研究仲間の吉田和史氏に深い感謝をし,序文とする.
1 Painlev´e 方程式に関する序論
この章では,本論文を読み進めるために必要な用語や定理,そしてPainlev´e方程式が発見されるまでの歴史 およびその後の様々な研究を紹介し,さらにPainlev´e方程式の有理解の構成方法を, II型方程式PIIを例に とって紹介していく.
複素領域で定義された2階の有理関数係数の線形常微分方程式
y00+p(x)y0+q(x)y= 0 (1.1)
について考察していく(ただし,0 =d/dxである) .
定義1.1 微分方程式(1.1)について,p(x), q(x)がx=aで極をもち, (1.1)のどの解もx=aで正則であると き,x=aを見かけの特異点であるという.
定義1.2 方程式(1.1)におけるp(x), q(x)のx=cでの極の位数がそれぞれ高々1,2であるとき,x=cを
(1.1)の確定特異点といい,そうでない特異点を不確定特異点という.
x=cがp(x), q(x)の確定特異点になっているとき, (1.1)に p(x) = p−1
x−c +p0+p1(x−c) +· · · q(x) = q−2
(x−c)2 + q−1
x−c +q0+q1(x−c) +· · · y= (x−c)ρ{c0+c1(x−c) +c2(x−c)2+· · · } を代入したときの(x−c)ρ−2の係数をみると
{ρ(ρ−1) +p−1ρ+q−2}c0
となる.
定義1.3 f(ρ) = ρ(ρ−1) +p−1ρ+q−2としたときの変数ρについての代数方程式f(ρ) = 0を, (1.1)の x=cにおける決定方程式といい,その根ρ1, ρ2を特性指数という.
定義1.4 リーマン球面P1上の特異点がすべて確定特異点である微分方程式をFuchs型であるという.
定義1.5 方程式(1.1)に含まれるパラメータのうちで,特性指数と無関係なものをアクセサリー・パラメータ
という.
(1.1)の1次独立な解をy1(x), y2(x)とすると,y1(x), y2(x)は解空間の基底になる.今,x=cを正の向きに 一周する道Lに沿ってy1(x), y2(x)を解析接続したものをL∗y1(x), L∗y2(x)と表すと,L∗y1(x), L∗y2(x)は y1(x), y2(x)の線形結合で表すことができる.すなわち
L∗
( y1(x) y2(x)
)
=ML
( y1(x) y2(x)
)
, ML=
( α β γ δ
)
(1.2) と表される(α, β, γ, δ∈C).
定義1.6 関係式(1.2)における行列MLをモノドロミー行列という.
定義1.7 f(z)を0<|z−a|< Rにおいて正則な関数とし,z=aにおけるローラン展開を f(z) =
∑∞ n=1
c−n
(z−a)n +
∑∞ n=0
cn(z−a)n とする.このとき,係数c−1をz=aにおける留数といい, Res
z=af(z)dzと表す.
定義1.8 f(z)をR <|z|<∞において正則な関数とする.このときf(1/w)は0<|w|<1/Rで正則な関数 となる.f(1/w)のw= 0におけるローラン展開を
f ( 1
w )
=
∑∞ n=1
c−n
wn +
∑∞ n=1
cnwn としたときの−c1を,z=∞におけるf(z)の留数といい, Res
z=∞f(z)dzと表す. 定義1.9 1変数関数f(x), g(x)に対して,Dnf·gを,次が成り立つものとして定める.
Dnf ·g=
∑n j=0
(−1)jnCj
dn−jf dxn−j
djg dxj . この作用素(f, g) → Dnf·gを広田微分という.
定理1.1 Cを単純閉曲線,関数f(z)はCの内部にある有限個の特異点a1, a2, · · ·, anを除いて正則である とする.このとき次が成り立つ. ∫
C
f(z)dz= 2πi
∑n k=1
z=aReskf(z)dz .
定理1.2 f(z)はC上の点a1, a2,· · ·, an とz =∞で極をもち,それ以外のC上の点で正則であるとする. このとき,次が成立する.
∑n k=1
z=aResk
f(z)dz+ Res
z=∞f(z)dz= 0.
1.1 ベックルント変換
1階の連立微分方程式
q0 =p−q2− t 2 p0= 2qp+α+ 1
2
(1.3)
を考える(ただし,0 =d/dtで,αは複素パラメータである).この方程式に対して,次の変換
Q=−q , P=−p+ 2q2+t (1.4)
を施すと, (1.3)のp, q, αをP, Q,−αにしたものに等しくなる.実際 Q0 =−q0 =−
(
p−q2− t 2
)
=P−Q2− t 2 P0 =−p0+ 4qq0+ 1 =−
(
2qp+α+ 1 2
) + 4q
(
p−q2− t 2
)
+ 1 = 2QP −α+ 1 2
となり,確かにパラメータが−αに変換されている.
定義1.10 (1.4)のような,パラメータを動かすことは許して方程式を不変に保つ有理的な変換をベックルント
変換という.
1.2 Painlev´e方程式の歴史 (1) Painlev´e方程式が発見された経緯
物理的な現象を数式で表すと,微分方程式が現れることが多い.しかし,大抵の場合,その微分方程式の一般解 は初等的な関数で記述することはできない.そこで, 19世紀の解析学の問題意識として
微分方程式で定義される新しい特殊関数を見つける
というものが生まれた.そこで, 「極以外の解の特異点の位置が初期条件に依存しない」という性質(このよ うな性質をPainlev´e性という)を持つ代数的常微分方程式を考えることになった.線形微分方程式は常に Painlev´e性を持つが,非線形微分方程式でPainlev´e性を持つものは稀である. Painlev´e性を持つ1階方程式は 必ずリッカチ方程式,もしくは楕円関数の満たす微分方程式に変形できることがポワンカレとフックスによっ て示された.
P.Painlev´eは, Painlev´e性をもつ2階微分方程式を研究していて,そのような方程式でtの解析関数を係数 とする有理関数Rを用いて
y00=R(y0, y , t)
の形に表されるものは,適当な変形を加える違いを除いて50個の「標準形」に直すことができることを発見し た.さらに,このうちの44個は既知の関数を用いて解けることを示し,解として新たな特殊関数の導入が必要 である方程式は6個であることが分かった.
定義1.11 極以外の解の特異点の位置が初期条件に依存しないというPainlev´e性を備えた次の6種類の2階 非線形常微分方程式をPainlev´e方程式といい,それらの解をPainlev´e超越関数という.
PI y00= 6y2+t PII y00= 2y3+ty+α PIII y00= 1
y(y0)2− 1 ty0+ 1
t(αy2+β) +γy3+ δ y PIV y00= 1
2y(y0)2+ 3
2y3+ 4ty2+ 2(t2−α)y+ β y PV y00=
( 1 2y + 1
y−1 )
(y0)2− 1
ty0+(y−1)2 t2
( αy+ β
y )
+γy
t +δy(y+ 1) y−1 PVI y00= 1
2 (1
y + 1
y−1 + 1 y−t
) (y0)2−
(1 t + 1
t−1+ 1 y−t
) y0
+y(y−1)(y−t) t2(t−1)2
{
α+β t
y2 +γ t−1
(y−1)2 +δt(t−1) (y−t)2
}
ここで,0 =d/dtであり,α, β, γ, δは複素パラメータである.
(2) Painlev´e方程式発見後の進展(モノドロミー保存変形,ベックルント変換,ハミルトン構造)
Painlev´e方程式の発見後, R.Fuchsが,P1 上に4つの確定特異点と1つの見かけの特異点をもつ2階の
Fuchs型方程式を研究していた.そして1905年に,この方程式のモノドロミー表現を不変にするためには,アク
セサリー・パラメータの1つがPVIを満たさなければならないことを発見した. L.ShlesingerはこのR.Fuchs の結果をうけ,ベックルント変換を発見した.また,確定特異点だけでなく不確定特異点に対して, R.Fuchsと 同様の計算がR.Garnierによって行なわれ,PIからPVが導き出された.しかし, R.Garnierは形式的に計算 をしただけであったが,上野喜三雄氏によって正確な意味づけがなされた.さらに岡本和夫氏は,これらPIか らPVIのハミルトン構造を発見した.
(3) Painlev´e方程式の規約性に関する問題
Painlev´e方程式の一般解は本当に新しい関数になっているのかという問題があった.この問題に現代的な
定式化を与えたのは,梅村浩氏である.梅村氏は古典関数を
有理関数から出発して,既知関数の加減乗除と微分,既知関数を係数とする代数方程式を解く,既知関数を係数 とする線形常微分方程式を解く,アーベル関数に既知関数を代入する—以上の操作を有限回繰り返して得られ るもの
と定義し,古典関数でないものを 新しい関数 とした.さらに梅村氏は,「Painlev´e方程式の解が古典関数な らば,代数関数かまたは線形方程式の解を使って表すことができる」ということを証明した.このことにより
「Painlev´e方程式の古典解をすべて決定する」という問題が生まれた.この問題は2008年にPVIまでの代数
解が完全に発見されたことにより解決し, Painlev´e方程式の一般解は本当に新しい関数になっているというこ とが分かった.
(4)高階Painlev´e方程式
Painlev´e方程式の研究が盛んになるにつれ,この方程式を拡張する動きも盛んになってきた. Painlev´e性を もつ方程式について,2階の場合は定義1.11に挙げた6種類のみであることが分かっているので,それよりも 高階の方程式が研究されるようになってきた.その中で,東京大学准教授の坂井秀隆氏は,高階のPainlev´e方程 式にはどれほどの種類があるかを考えるようになった.東京大学教授の大島利雄氏の分類によると,アクセサ リー・パラメータを4つ持つFuchs型方程式は13個あり,そのうち(連続的な)モノドロミー保存変形を許す ものは4個ある.そのうち1つは変形の次元が2次元であり,2変数Garnier系に対応している.坂井氏は,後 の3つの変形方程式を計算し,多項式ハミルトン系としての記述を得た.それらは藤・鈴木系,笹野系,行列型の Painlev´e方程式と呼ばれている.
1.3 Painlev´e II型方程式のハミルトン系表示とベックルント変換
この論文では, Painlev´e方程式を拡張した高階化微分方程式の有理解をすべて決定することを研究の目的と している.ここでは,拡張する以前のPainlev´e II型方程式PIIのハミルトン系表示と,有理解を求めるために重 要な役割を果たすベックルント変換について再び触れることにする.
Painlev´e II型方程式
PII: y00= 2y3+ty+α (1.5)
について考察していく(ここで,0 =d/dtで,αは複素パラメータである).高階の非線形微分方程式は,それと 等価な1階の連立形の方程式に書き直しておく方が都合の良いことも多い.そこで,
q=y , p=y0+y2+ t 2
とおいて,q, pの方程式に書き改めると, (1.5)は次の連立形の方程式と等価である.
HII:
q0=p−q2− t 2 p0 = 2qp+α+ 1
2
(1.6)
今,3つの変数q, p, tについての多項式H=H(q, p;t)を H = 1
2p2− (
q2+ t 2
) p−
( α+ 1
2 )
q (1.7)
で定義する.このとき,HIIは
q0= ∂H
∂p , p0 =−∂H
∂q (1.8)
と表すことができる.
定義1.12 1個の関数H =H(q, p;t)を用いて(1.8)のような形に表される連立形の方程式をハミルトン系と いい,H をそのハミルトニアンという.
以上のことをまとめると,次の命題が得られる. 命題1.1 Painlev´e II型方程式PIIは
H = 1 2p2−
( q2+ t
2 )
p− (
α+ 1 2
)
q (1.9)
をハミルトニアンとする次のハミルトン系と等価である.
HII:
q0= ∂H
∂p =p−q2− t 2 p0=−∂H
∂q = 2qp+α+ 1 2
(1.10)
ここで,PIIの基本的なベックルント変換を,構成方法にも触れていくつか紹介しておく.まず,H0, H00を q, p, tで表すと
H0=−1
2p , H00=−1 2
(
2qp+α+ 1 2
)
となる.また,これよりq, pをH0, H00で表したものをそれぞれϕ(H0, H00, α), ψ(H0, H00, α)とすると q=ϕ(H0, H00, α) = 2H00+α+ 1/2
4H0 , p=ψ(H0, H00, α) =−2H0 (1.11) となる.このq, pを(1.9)に代入すると,ハミルトニアンが満たす微分方程式
(H00)2+ 4 (H0)3+ 2H0(tH0−H)− 1 4
( α+ 1
2 )2
= 0 (1.12)
が得られる.逆に, (1.12)を満たすH に対してq, pを(1.11)で定めると,これらは(1.10)を満たすことが言え る.ところで,Hの満たす微分方程式(1.12)は,αを−α−1に置き換えても不変である.従って,
Q=ϕ(H0, H00,−α−1), P =ψ(H0, H00,−α−1) (1.13)
とおくと,これらは(1.10)のq, p, αをQ, P,−α−1 に置き換えた方程式系を満たすことが分かる. よっ て, (1.11), (1.13)からH0, H00を消去して得られるq, p, Q, Pの関係式
Q=q+ α+ 1/2
p , P=p .
は,PIIのαを−α−1にする変換を与えていることが分かる. このことから,次の定理が得られる. 定理1.3 次のベックルント変換
Q=q+ α+ 1/2
p , P =p , H¯ =H (1.14)
を行なって得られるハミルトン系表示 dQ
dt = ∂H¯
∂P , dP
dt =−∂H¯
∂Q
は, (1.10)のq, p, αをQ, P,−α−1にしたものに等しい.また,このときのハミルトニアンH¯ は次のとおり である.
H¯ = 1 2P2−
( Q2+ t
2 )
P+ (
α+ 1 2
) Q . HIIには他にも基本的なベックルント変換があるので,それを以下にまとめておく.
定理1.4 Painlev´e II型方程式のハミルトン系HIIは,次の基本的なベックルント変換をもつ.
r1:
Q=−q− α+ 1/2 p P =−p+ 2
(
q+ α+ 1/2 p
)2
+t H¯ =H+q+ α+ 1/2
p α→α+ 1
r2:
Q=−q+ α−1/2 p−2q2−t P =−p+ 2q2+t H¯ =H+q α→α−1
r3:
Q=−q
P =−p+ 2q2+t H¯ =H+q
α→ −α
ただし,p= 0のときはベックルント変換r1が,p−2q2−t= 0のときはベックルント変換r2が定義できない ことに注意しておく.そこで,ベックルント変換r1, r2が定義できないときのパラメータαの条件を確認して おく.
命題1.2 Painlev´e II型方程式のハミルトン系HIIについて,以下が成り立つ. (1)p= 0ならば,α=−1/2である.
(2)p−2q2−t= 0ならば,α= 1/2である. 証明 (1)p= 0のときは,HIIの第2式より明らか. (2)p−2q2−t= 0のとき,両辺をtで微分すると
p−2q2−t= 0 −→ p0−4qq0−1 = 0
−→
(
2qp+α+ 1 2
)
−4q (
p−q2− t 2
)
−1 = 0
−→ −2q(p−2q2−t) +α− 1 2 = 0
となる.よって,p−2q2−t= 0ならばα= 1/2である. (証明終) この命題は,次節で有理解を構成していくときに使われる.
1.4 Painlev´e II型方程式の有理解
前節で紹介したベックルント変換を用いて,PIIの有理解を構成していく.その前に,PIIが有理解をもつとき のパラメータαの条件を確認することにする.そのために,いくつかの補題を用意しておく.
補題1.1 PIIの有理解yが有界な点t=cで極をもつとき,極の位数は1で, Res
t=cy dt=±1である. 証明 t=cでの有理解yの展開を
y= c0
(t−c)m + c1
(t−c)m−1 +· · · · (c06= 0, m >0 )
と表し,これをPIIに代入すれば,最低次の項からm= 1, c0=±1が分かる. (証明終) 補題1.2 PIIの有理解yは,無限遠t=∞で次のように展開される.
y=−α
t + 2α(α2−1) t4 + λ5
t5 +· · ·. 証明 t= 1/sと変換すると,PIIは
s3d2y
dt2 + 2s3dy
dt = 2y3+ y
s +α (1.15)
となる.よって,有理解yのs= 0における展開を
y=λ0sn+λ1sn+1+λ2sn+2+· · · (λ06= 0, n∈Z)
と表し,これを(1.15)に代入すれば,λ0=−α, λ1=λ2= 0, λ3= 2α(α2−1),· · · が得られる. (証明終) これらの補題および定理1.2から,次が成り立つ.
定理1.5 Painlev´e II型方程式PIIが有理解をもつとき,α∈Zである.
命題1.2より,α ∈ Zであればベックルント変換r1, r2はいつでも定義できる.従って,ベックルント変換 r1, r2を施していけば, Painlev´e II型方程式の有理解はα= 0での有理解を調べればすべて決定されることに なる.
定理1.6 α= 0のとき, Painlev´e II型方程式PIIの有理解はy= 0のみである. 証明 y= 0以外に有理解が存在するとして,その有理解を
y= P(t)
Q(t) (1.16)
と表す(P(t), Q(t)はtの多項式).補題1.2より,α= 0ならばt=∞でのローラン展開は y= λ5
t5 + λ6
t6 +· · · ·